説明

古紙処理装置

【課題】品質の不安定な部位を含む初期再生紙および終期再生紙の発生量を抑制することができる古紙処理装置を提供する。
【解決手段】古紙もしくは古紙の裁断紙片を再生原料として貯留する定型用紙タンク11およびシュレッダタンク12を有し、後段の再生パルプ部へ再生原料を供給する原料貯留部と、再生原料を離解して再生パルプを調製するパルパー14を有し、後段の脱墨パルプ部2へ再生パルプを供給する再生パルプ部1と、再生パルプを漂白して脱墨パルプを調製する脱墨部23を有し、後段の抄紙部3へ脱墨パルプを供給する脱墨パルプ部2と、脱墨パルプを抄紙して再生紙を調製する抄紙部3を備える古紙処理装置において、再生パルプをパルパーから脱墨部へ移送する移送経路の途中に、移送経路の上流側から流入する再生パルプの所定量を貯留しつつ再生パルプを下流側へ連続供給する貯蔵タンク21を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、古紙を離解させた再生パルプから紙を製造する技術に関し、古紙の発生場所であるオフィス等に設置して紙を再生することができる小型の古紙処理装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、わが国においては、一度使用した古紙、例えば代表的なものとしては古新聞紙を回収して紙を再生する技術ならびに社会システムが確立している。
一般的な製紙工場で行なっている製紙方法は、パルプ工程、抄紙工程、仕上工程からなり、古紙を原料として使用する場合には古紙パルプ工程が加わる。
【0003】
パルプ工程では、木材から繊維を取り出すパルプ化の一つの方法である化学的方法により、蒸解、洗浄、漂白、精選等の工程を経ることで、木材チップからパルプを生成する。
古紙パルプ工程では、原料である古紙を水に溶解し、機械的な力や薬品を利用して紙繊維以外の異物である金属やフィルム、粘着性樹脂、印刷インク(染料系、顔料系)、コピートナーなどを分離、除去し、漂白処理、脱水、乾燥して古紙パルプを得る。
【0004】
抄紙工程では、抄紙機のワイヤーパート、プレスパート、ドライヤーパート、カレンダーパート、コーターパートを経て製品の紙とする。ワイヤーパートでは調製(再生)されたパルプを抄紙用の網(ワイヤー)に乗せて脱水して紙を抄き、プレスパートではワイヤーパートから出た水分を多く含んだ湿紙の水分を除去する。ドライヤーパートでは蒸気で加熱されたドライヤーに紙を通して乾燥させ、カレンダーパートではロール間に紙を通して表面の凹凸を平滑化し、コーターパートでは原紙に塗料を塗工する。
【0005】
仕上工程では、スーパーカレンダーパートではコーターパートで塗工した紙面のミクロの凹凸を平滑化して光沢を出し、カッターおよびワインダーパートでは所定の製品寸法にカットし、あるいはロールに巻き取る。
【0006】
ところで、古紙から再生紙を製紙する場合には以下の問題がある。紙の消費により古紙が発生するオフィス等の消費場所と古紙から紙を再生する製紙工場とは離れており、古紙の運搬にコストとエネルギーを要する。また、古紙の持ち出しにより用紙に記載された機密情報等が外部へ漏洩するおそれがある。このため、シュレッダーで用紙を細かく裁断処理することが行なわれているが、細かく裁断したシュレッダーダストは繊維が短くなり過ぎるために、再生が困難である。
【0007】
特許文献1には、再生紙の製造方法として、原料古紙を離解し、ソーキング、脱墨後に、凝集性を有する酵母を添加し、酵母によりインク(染料系、顔料系)に含まれる微細な無機顔料、カーボン粒子などを凝集させ、ついでフローテーションにより凝集物を分離除去する構成が記載されている。
【0008】
また、特許文献2には、古紙再生方法および装置として、文書裁断機によって裁断した古紙を離解して再生パルプとする工程と、再生パルプを貯蔵する工程と、再生パルプを噴射装置に充填して繊維シートに吹きかける工程と、繊維シートに吹きかけた再生パルプを抄紙する工程とからなる構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平8−60570号公報
【特許文献2】特開平10−317290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記した特許文献においては装置を小型化することが提案されている。しかしながら、複数枚の古紙をバッチ処理する構成であるために、バッチ処理の処理単位量毎に行う抄紙動作において、その起動時の初期再生紙の先端に、あるいは停止時の終期再生紙の後端に不安定な部位が発生していた。
【0011】
また、再生紙を定型にカット形成する際に発生する余剰紙片は、一度は脱墨処理を行なったものであり、この余剰紙片を再度脱墨処理することは無駄である。
本発明は上記した課題を解決するものであり、品質の不安定な部位を含む初期再生紙および終期再生紙の発生量を抑制することができ、再生紙を定型にカット形成する際に発生する余剰紙片を脱墨処理することなく再生紙に再生することができる古紙処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の古紙処理装置は、古紙もしくは古紙の裁断紙片を再生原料として貯留し、後段の再生パルプ部へ再生原料を供給する原料貯溜部と、再生原料を離解して再生パルプを調製するパルパーを有し、後段の脱墨パルプ部へ再生パルプを供給する再生パルプ部と、再生パルプを漂白して脱墨パルプを調製する脱墨部を有し、後段の抄紙部へ脱墨パルプを供給する脱墨パルプ部と、脱墨パルプを抄紙して再生紙を調製する抄紙部を備える古紙処理装置において、再生パルプをパルパーから脱墨部へ移送する移送経路の途中に、移送経路の上流側から流入する再生パルプの所定量を貯留しつつ再生パルプを下流側へ連続供給する貯蔵タンクを設けたことを特徴とする。
【0013】
本発明の古紙処理装置は、古紙もしくは古紙の裁断紙片を再生原料として貯留し、後段の再生パルプ部へ再生原料を供給する原料貯溜部と、再生原料を離解して再生パルプを調製するパルパーを有し、後段の抄紙部へ再生パルプを供給する再生パルプ部と、再生パルプを抄紙して再生紙を調製する抄紙部を備える古紙処理装置において、再生パルプをパルパーから抄紙部へ移送する移送経路の途中に、移送経路の上流側から流入する再生パルプの所定量を貯留しつつ再生パルプを下流側へ連続供給する貯蔵タンクを設けたことを特徴とする。
【0014】
本発明の古紙処理装置において、貯蔵タンクは、パルパーの処理単位当たりにおける再生パルプ処理量に対してN倍以上の容量を有することを特徴とする。
本発明の古紙処理装置において、貯蔵タンクは、パルパーの処理単位当たりに要する処理時間内に再生パルプを下流側へ供給する再生パルプ供給量がパルパーの処理単位当たりにおける再生パルプ処理量を超えないことを特徴とする。
【0015】
本発明の古紙処理装置は、古紙もしくは古紙の裁断紙片を再生原料として貯留し、後段の再生パルプ部へ再生原料を供給する原料貯溜部と、再生原料を離解して再生パルプを調製するパルパーを有し、後段の脱墨パルプ部へ再生パルプを供給する再生パルプ部と、再生パルプを漂白して脱墨パルプを調製する脱墨部を有し、後段の抄紙部へ脱墨パルプを供給する脱墨パルプ部と、脱墨パルプを抄紙して再生紙を調製する抄紙部を備える古紙処理装置において、複数のパルパーを任意選択的に切替可能に設け、各パルパーから脱墨部へ再生パルプを連続的に供給することを特徴とする。
【0016】
本発明の古紙処理装置は、古紙もしくは古紙の裁断紙片を再生原料として貯留し、後段の再生パルプ部へ再生原料を供給する原料貯溜部と、再生原料を離解して再生パルプを調製するパルパーを有し、後段の抄紙部へ再生パルプを供給する再生パルプ部と、再生パルプを抄紙して再生紙を調製する抄紙部を備える古紙処理装置において、複数のパルパーを任意選択的に切替可能に設け、各パルパーから脱墨部へ再生パルプを連続的に供給することを特徴とする。
【0017】
本発明の古紙処理装置は、古紙もしくは古紙の裁断紙片を再生原料として貯留し、後段の再生パルプ部へ再生原料を供給する原料貯溜部と、再生原料を離解して再生パルプを調製するパルパーを有し、後段の脱墨パルプ部へ再生パルプを供給する再生パルプ部と、再生パルプを漂白して脱墨パルプを調製する脱墨部を有し、後段の抄紙部へ脱墨パルプを供給する脱墨パルプ部と、脱墨パルプを抄紙して再生紙を調製する抄紙部を備える古紙処理装置において、複数のパルパーを任意選択的に切替可能に設け、少なくとも一つのパルパーは再生パルプを抄紙部へ供給し、他のパルパーは脱墨部へ再生パルプを供給し、前記少なくとも一つのパルパーには再生紙の余剰紙片の裁断紙片を投入することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
以上のように本発明によれば、パルパーの処理単位量に制限されることなく、連続して再生作業を行なうことができ、機械全体としての作業効率が向上する。抄紙部へ再生パルプを途切れることなく供給し、連続して抄紙動作を行なうことで、品質の不安定な部位を含む初期再生紙および終期再生紙の発生量を抑制することができる。
【0019】
再生紙を定型にカット形成する際に発生する余剰紙片は、離解が早くて脱墨処理が不要であるので、パルパーの処理時間を短縮し、脱墨処理することなく再生紙に再生することができ、古紙再生率が高まって環境機器としての有用性が増し、脱墨処理を省くことで作業効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態における古紙処理装置を示す模式図
【図2】同古紙処理装置を示すブロック図
【図3】同古紙処理装置の再生パルプ部を示す模式図
【図4】同古紙処理装置の再生パルプ部における繊維濃度調整部の作用を示す模式図
【図5】同古紙処理装置の脱墨部を示す模式図
【図6】同古紙処理装置の乾燥ローラを示す模式図
【図7】同古紙処理装置の余剰紙片搬送部を示す模式図
【図8】同古紙処理装置の制御部のブロック図
【図9】同古紙処理装置の制御を示すフローシート図
【図10】同制御における稼動開始条件チェックを示すフローシート図
【図11】同制御における稼動停止条件チェックを示すフローシート図
【図12】同制御における稼動準備動作を示すフローシート図
【図13】同制御における停止準備動作を示すフローシート図
【図14】本発明の他の実施の形態における古紙処理装置の要部を示すブロック図
【図15】本発明の他の実施の形態における古紙処理装置の要部を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1および図2において、古紙処理装置は、再生パルプ部1、脱墨パルプ部2、抄紙部3、仕上げ部4、排水処理部5を一体的に備え、古紙6から再生紙を調製(再生)するものであり、再生パルプ部1、脱墨パルプ部2、抄紙部3、仕上げ部4、排水処理部5の運転を制御する制御部7を有している。
(再生パルプ部)
再生パルプ部1は、古紙6の裁断紙片を離解して再生パルプを調製(再生)するものであり、再生原料の古紙6を定型のままに貯留する原料貯留部をなす定型用紙タンク11と、再生原料の古紙6を裁断処理して再生に適した所定の大きさに紙片化した裁断紙片を一時的に貯留する原料貯留部をなすシュレッダータンク12と、繊維量調整部13と、パルパー14と、繊維濃度調整部15を備えている。
【0022】
図3に示すように、シュレッダータンク12は、上方に向けて開放した上部開口121を有し、底面122が排出口123に向けて傾斜する傾斜面をなす。排出口123には裁断紙片61を排出する排出装置124を設けており、排出装置124は種々のものがあるが、ここでは複数の羽根を回転軸の周りに放射状に配置した構造をなす。シュレッダータンク12の上方には分量測定センサ125が配置してあり、分量測定センサ125はシュレッダータンク12の内部に貯留する再生原料としての裁断紙片の分量を測定するもので、光センサ等により嵩量を測定することで裁断紙片の分量を推量する。
【0023】
図示を省略するが、定型用紙タンク11にも再生原料としての定型の古紙6の分量を測定する分量測定センサが設けてある。
繊維量調整部13は、シュレッダータンク12の排出口123の下方に配置してあり、排出口123から排出する裁断紙片61を受け止める受け皿部131と、受け皿部131を支持する計量部132を備えており、計量部132は受け皿部131に投入した裁断紙片61の重量を計量し、計量に係る設定重量を変更することでパルパー14へ投入する裁断紙片61の量、すなわち繊維量を調整する。また、同様に繊維量調整部13は定型用紙タンク11から投入される定型の古紙6の重量を計量し、計量に係る設定重量を変更することでパルパー14へ投入する定型の古紙6の量、すなわち繊維量を調整する。
【0024】
図4に示すように、受け皿部131は受け皿131aが水平姿勢からパルパー14へ向けて傾斜する傾斜姿勢にまで傾動するものであり、受け皿131aを傾動させるモータ等の駆動手段を有する。また、受け皿131aはパルパー14に隣接する側壁部131bが立ち姿勢の通常位置とパルパー14へ向けて傾倒する傾倒位置とにわたって開閉可能に設けてあり、側壁部131bは受け皿131aの傾動に伴って傾倒し、受け皿131aの復動に伴って立ち姿勢に復帰する。
【0025】
受け皿131aには、排出装置124によって裁断紙片61を徐々に投下し、計量部132で測定する測定値が設定した値になった時点で排出装置124を停止し、受け皿131aを傾動させて裁断紙片61をパルパー14へ投入する。定型の古紙6についても同様にしてパルパー14へ投入する。
【0026】
パルパー14は、上水、白水等の溶媒中において裁断紙片61を繊維、つまり再生パルプにまで離解させるものであり、裁断紙片61を投入する槽体141と、槽体141の内部で旋回する攪拌翼142と、攪拌翼142を回転駆動するモータ等の駆動手段(図示省略)を有している。槽体141には溶媒を所定温度に加温するためのヒータ143および温度センサ144が設けてあり、排水処理部5から溶媒を供給する溶媒供給系101が連通している。
【0027】
パルパー14は繊維濃度調整部15に連通し、繊維濃度調整部15には再生パルプ含有液を脱墨パルプ部2へ移送する移送系102と、排水処理部5から溶媒を濃度調整液として供給する濃度調整液供給系103が連通している。
【0028】
パルパー14および繊維濃度調整部15では、再生原料の紙量に応じた量の溶媒、ここでは水を槽体141に投入し、攪拌翼142を回転駆動して裁断紙片の繊維を離解させ再生パルプを調製(再生)し、再生パルプを含む再生パルプ含有液を繊維濃度調整部15を通して脱墨パルプ部2へ送る。
(脱墨パルプ部)
脱墨パルプ部2は、貯蔵タンク21と脱墨前希釈タンク22と脱墨部23とを備え、貯蔵タンク21と脱墨前希釈タンク22の間には管路、ポンプ等からなる移送系201を設け、脱墨前希釈タンク22と脱墨部23の間には管路、ポンプ等からなりバルブ202bを有する移送系202aを設け、脱墨前希釈タンク22と後述する抄紙部3のヘッドボックス31の間には管路、ポンプ等からなりバルブ202dを有する移送系202cを設けている。
【0029】
バルブ202b、202dの切替操作により、脱墨前希釈タンク22の再生パルプ含有液は移送系202aを通って脱墨部23へ流れる場合と、移送系202cを通って直接にヘッドボックス31へ流れる場合とを切り替えることが可能である。
【0030】
脱墨前希釈タンク22の再生パルプ含有液が移送系202aを通って脱墨部23へ流れる場合に、貯蔵タンク21は、再生パルプをパルパー14から脱墨部23へ移送する移送経路の途中にあり、移送経路の上流側にある繊維濃度調整部15から送られてきた再生パルプ含有液を貯留しつつ、再生パルプ含有液を下流側の脱墨前希釈タンク22へ連続供給し、脱墨部23を介して抄紙部3へ再生パルプ含有液を連続供給する。
【0031】
また、脱墨前希釈タンク22の再生パルプ含有液が移送系202cを通って直接にヘッドボックス31へ流れる場合に、貯蔵タンク21は、再生パルプをパルパー14から抄紙部3のヘッドボックス31へ移送する移送経路の途中にあり、移送経路の上流側にある繊維濃度調整部15から送られてきた再生パルプ含有液を貯留しつつ、再生パルプ含有液を下流側のヘッドボックス31へ連続供給する。
【0032】
このため、貯蔵タンク21の無い構成でパルパーの処理単位量を1ロットとして抄紙部3を稼動させる場合に比べて、抄紙部3におけるロットが大きくなる。例えば、本実施の形態では貯蔵タンク21がパルパー14のバッチ処理の処理単位当たりにおける再生パルプ処理量に対して3倍以上の容量を有しているので、抄紙部3の稼動前に貯蔵タンク21に再生パルプ含有液を十分に貯蔵することで、抄紙部3における1ロットの大きさは、パルパー14の処理単位量の3倍以上となり、パルパー14の処理単位量に制限を受けることなく抄紙部3を連続的に稼動させることができ、品質の不安定な部位を含む初期再生紙および終期再生紙の発生量を抑制することができる。貯蔵タンク21の容量はパルパー14のバッチ処理の処理単位当たりにおける再生パルプ処理量に対してN倍以上の容量であれば良く、1倍でも可能である。
【0033】
この場合に、パルパー14が処理単位当たりに要する処理時間内において貯蔵タンク21が再生パルプを下流側へ供給する再生パルプ供給量を、パルパーが処理単位当たりに処理する再生パルプ処理量を超えるものとすると、パルパー14からバッチ処理毎に処理単位量の再生パルプ含有液を貯蔵タンク21へ供給しても貯蔵タンク21が初期貯蔵量を回復することはなく、経時的に貯蔵タンク21の貯蔵量は減少し、貯蔵タンク21の貯蔵量が無くなるまでが抄紙部3の1ロットの大きさとなる。
【0034】
また、パルパー14が処理単位当たりに要する処理時間内において貯蔵タンク21が再生パルプを下流側へ供給する再生パルプ供給量を、パルパーが処理単位当たりに処理する再生パルプ処理量を超えないものとすると、パルパー14からバッチ処理毎に処理単位量の再生パルプ含有液を貯蔵タンク21へ供給することで、貯蔵タンク21が初期貯蔵量を回復することが可能となり、貯蔵タンク21には常に再生パルプ含有液が貯留されており、パルパー14からの供給が続く限り貯蔵タンク21から下流側の脱墨前希釈タンク22へ常に再生パルプ含有液を供給可能で、抄紙部3の1ロットの大きさは無限となる。
【0035】
脱墨前希釈タンク22は再生パルプ含有液を脱墨に適した繊維濃度、ここでは1重量%程度にまで希釈するものであり、排水処理部5から溶媒を希釈用水として供給する希釈水供給系104が連通している。
【0036】
脱墨部23は、フローテータと呼ばれ、インク、トナー等の異物を繊維から分離するものであり、本実施の形態では図5に示す構成を有する。脱墨部23は前槽231と後槽232を有しており、越流堰を形成する仕切り壁233の上端側の開口において前槽231と後槽232とが連通している。前槽231と後槽232にはそれぞれヒーター234、235を配置し、前槽231には微細気泡の噴出口236および攪拌翼237を配置しており、後槽232には温度センサ238を配置している。
【0037】
前槽231では、界面活性剤が存在する下で、インク、トナー等の異物の粒子を含む再生パルプ含有液を攪拌翼237で攪拌しつつ、再生パルプ含有液中に噴出口236から細かい気泡を吹き込み、疎水性の異物の粒子を界面活性剤の気泡表面に付着させて浮上分離し、親水性の繊維を仕切り壁233の上端側の開口から後槽232へ移送することで脱墨する。この際にヒーター234、235で再生パルプ含有液を所定温度に加熱し、温度センサ238で温度制御を行う。
(抄紙部)
抄紙部3は、脱墨パルプを抄紙して再生紙を調製(再生)するものであり、図1に示すように、ヘッドボックス31、ワイヤー部32、脱水部33、プレス部34、ドライヤー部35からなる。
【0038】
ワイヤー部32は両側のロール321、322の間に掛け渡して展張したメッシュベルト323を有し、メッシュベルト323が無端軌道を形成している。メッシュベルト323にはヘッドボックス31から脱墨パルプを含む脱墨パルプ含有液を均一に噴出させ、水切りして繊維の層を形成する。
【0039】
脱水部33は、複数のローラ331の間に掛け渡したフェルトからなる上下一対の吸水ベルト332からなり、抄いた紙333をメッシュベルト323から吸水ベルト332に転移させ、上下の吸水ベルト332の間に挟んで吸水して脱水する。吸水ベルト332は走行軌道上に設けた上下一対の脱水ローラ334の間において脱水する。
【0040】
プレス部34は、抄いた紙333を吸水ベルト332の間に挟み、上下一対の脱水ローラ341を通して圧搾、脱水する。
ドライヤー部35は、複数のローラ351の間に掛け渡した上下一対の布製の搬送ベルト352の間に抄いた紙333を挟み、複数の乾燥ローラ353に圧接させて抄いた紙333を乾燥させるものであり、搬送ベルト352は布の他、ゴムや樹脂などの材料を用いてもよい。
【0041】
図6に示すように、ドライヤー部35は、内部にヒーターを備えた乾燥ローラ353の周囲に搬送ベルト352を配置し、乾燥ローラ353の表面の温度を測定する温度センサ354を有している。
(仕上げ部)
仕上げ部4はカレンダー部41とカット部42を有しており、カレンダー部41は抄いた紙333を複数のプレスローラ411の間に通し、紙の平坦度を上げ、カット部42で所定のシートサイズにカットして再生紙100が完成する。
(排水処理部)
排水処理部5は、白水タンク51、排水処理部52の各槽体を有し、白水タンク51は抄紙排水系105を通してワイヤー部32から流入する再生パルプを含む排水を貯留し、再度各工程へ供給する。排水処理部52は脱墨排水系106を通して脱墨部23から流入する脱墨廃液を処理するものであり、フィルターに通して繊維、インク、トナーを除去し、薬剤の添加により中性化して公共下水等へ排水可能な水質にまで処理する。白水タンク51には補給水として上水を供給する補給水供給系107が連通している。
(制御部)
図8に示すように、制御部7は、CPU71に設定する機能回路として、以下の機能部を有している。つまり、再生パルプ部1の運転を制御する再生パルプ部制御機能部711と、脱墨パルプ部2の運転を制御する脱墨パルプ部制御機能部712と、抄紙部3の運転を制御する抄紙部制御機能部713と、仕上げ部4の運転を制御する仕上げ部制御機能部714と、排水処理部5の運転を制御する排水処理部制御機能部715と、稼動開始から稼動停止までの運転プロセスを逐次実行する自動運転制御機能部716と、分量測定センサ125から入力する裁断紙片の有無信号に応じて自動運転制御機能部716へ稼動開始の許可指示または不許可指示を入力する運転ロック制御機能部717と、調製(再生)する再生紙の目標枚数を設定する目標枚数設定機能部718と、調製(再生)した再生紙の枚数を数えるカウンター機能部719と、再生パルプ部1と脱墨パルプ部2と抄紙部3において運転終了時に所定の排水動作を行なう排水動作制御機能部720と、所定の洗浄動作を行なう洗浄動作制御機能部721と、分量測定センサ125で測定した原料の分量から再生可能な最大可能枚数内で、再生運転終了までに再生可能な再生予想枚数を算定する再生予想枚数算定機能部722と、運転開始予定時刻と運転終了予定時刻の少なくとも何れか一方の予定時刻を任意に設定する機能および運転時間を任意に設定する機能の少なくとも一つを有する時間設定機能部723と、再生運転の運転時間を積算する運転時間積算機能部724と、カウンター機能部719で積算する再生完了枚数が目標枚数設定機能部718で設定する再生目標枚数に達した時に再生運転を停止するか、運転時間積算機能部724で積算した運転時間が時間設定機能部723で設定する運転時間に達した時に再生運転を停止するかを選択設定する運転停止選択機能部725と、再生目標枚数の再生運転終了までに要する再生予想時間を算定する再生予想時間算定機能部726、再生運転終了後に省電力モードとオートパワーオフモードの何れを実行するか選択設定するパワーモード選択機能部727と、再生運転を停止している間の運転停止時間を測定する運転停止時間測定機能部728と、運転停止原因を判定する運転停止原因判定機能部729を有している。
【0042】
また、制御部7は、自動運転制御機能部716へ稼動開始と稼動停止の少なくとも何れか一方のタイミングを指示信号として入力するタイミング入力部73と、表示部74と、ユーザが再生運転を中断指示する運転中断指示手段75を備えている。
【0043】
タイミング入力部73は本実施の形態では制御部7の内部に配設する内部時計からなり、内部時計が予定時刻に達したときに指示信号を自動運転制御機能部716へ入力するものである。しかしながら、タイミング入力部73は制御部7の外部に配設する外部時計が予定時刻に達したときに発する指示信号または外部機器から発する指示信号を入力するための入力ポートとすることも可能である。
【0044】
制御部7は、再生パルプ部1と脱墨パルプ部2と抄紙部3と仕上げ部4と排水処理部5における上述した運転を、それぞれ再生パルプ部制御機能部711、脱墨パルプ部制御機能部712、抄紙部制御機能部713、仕上げ部制御機能部714、排水処理部制御機能部715で制御する。
(運転制御)
ユーザは表示部74に設けるタッチパネル等の各種のスイッチを操作することにより、運転開始予定時刻と運転終了予定時刻の少なくとも何れか一方の予定時刻、あるいは運転を連続的に継続する運転時間を、制御部7の時間設定機能部723に設定する。運転開始予定時刻のみを設定する場合に、装置の運転を停止する再生運転終了までの運転可能時間は運転開始予定時刻から再生運転を完了するまでの不定的時間となり、運転終了予定時刻のみを設定する場合に、装置の運転を停止する再生運転終了までの運転可能時間は現在時刻から運転終了予定時刻までの限定的時間となり、運転開始予定時刻および運転終了予定時刻を設定する場合に、装置の運転を停止する再生運転終了までの運転可能時間は運転開始予定時刻から運転終了予定時刻までの限定的時間となる。
【0045】
運転を連続的に継続する運転時間を設定する場合に、装置の運転を停止する再生運転終了までの運転可能時間は現在時刻から設定した運転時間が満了するまでの限定的時間となり、運転開始予定時刻を合わせて設定する場合に運転可能時間は運転開始予定時刻から設定した運転時間が満了するまでの限定的時間となる。
【0046】
制御部7の再生予想枚数算定機能部722は、分量測定センサ125で測定した再生原料の分量から再生可能な最大可能枚数を算定するとともに、最大可能枚数内で、かつ再生運転終了までに再生可能な再生予想枚数を算定し、算定した再生予想枚数を表示部74に表示する。
【0047】
ユーザは表示部74に設けるタッチパネル等の各種のスイッチを操作することにより、再生予想枚数内で所望の再生紙の数を再生目標枚数として目標枚数設定機能部718に設定する。再生予想時間算定機能部726は、再生目標枚数の再生紙を再生する再生運転終了までに要する再生予想時間を算定し、再生予想時間を表示部74に表示する。再生目標枚数が再生予想枚数の全数である場合には再生目標枚数の設定を省略することが可能であり、再生予想時間算定機能部726は、再生予想枚数の全数を再生する再生運転終了までに要する再生予想時間を算定し、再生予想時間を表示部74に表示する。
【0048】
通常、再生運転は運転時間を基準に終了するが、ユーザは表示部74に設けるタッチパネル等の各種のスイッチを操作することにより、運転停止選択機能部725に再生目標枚数と運転時間の何れを基準として再生運転を停止するかを選択設定することができる。再生目標枚数を基準に設定すると、時間設定機能部723で設定する限定的時間に拘束されることなく、カウンター機能部719で積算する再生完了枚数が目標枚数設定機能部718で設定する再生目標枚数に達するまで再生運転を行う。運転時間を基準に設定すると、カウンター機能部719で積算する再生完了枚数が目標枚数設定機能部718で設定する再生目標枚数に達していなくとも、運転時間積算機能部724で積算した運転時間が時間設定機能部723で設定する限定的時間に達した時に再生運転を停止する。
【0049】
さらに、ユーザは表示部74に設けるタッチパネル等の各種のスイッチを操作することにより、パワーモード選択機能部727に省電力モードとオートパワーオフモードの何れか一方を選択設定する。省電力モードでは再生運転終了後に必要最小限の電力で古紙処理装置を待機状態とし、オートパワーオフモードでは再生運転終了後に古紙処理装置を完全に停止する。
【0050】
制御部7による自動運転の開始から停止までの制御は、図9に示すフローシートに沿って行う。つまり、停止状態900から稼動開始条件チェック910、稼動準備動作920、再生紙作製930、稼動停止条件チェック940、停止準備動作950の各工程を経て装置停止960となる。
【0051】
稼動開始条件チェック910では、図10に示すように、稼動開始信号の有無の判断911を行う。稼動開始信号は、タイミング入力部73から自動運転制御機能部716へ入力する指示信号であり、本実施の形態では時間設定機能部723で設定する予定時刻に内部時計が達したときに入力する指示信号である。
【0052】
稼動準備動作920では、図12に示すように、タンクへの注水921を行なう。そして、イニシャル動作時にポンプや配管などの残水を清水で洗浄排出することで、品質の低下を抑える。残りの部位へは必要に応じて所定のタイミングで注水を行なう。つまり、パルパー14および脱墨前希釈タンク22へ必要量の注水を行う。
【0053】
次に、各ヒータ143、234、235に通電して加熱操作922を行なう。
次に、各温度センサ144、238により測定するパルパー14および脱墨部23の水温および、温度センサ354で測定する乾燥ローラ353の表面温度が設定温度に達したか否かの判断923を行なう。
【0054】
再生紙作製930では、再生パルプ部制御機能部711、脱墨パルプ部制御機能部712、抄紙部制御機能部713、仕上げ部制御機能部714、排水処理部制御機能部715で、それぞれ再生パルプ部1と脱墨パルプ部2と抄紙部3と仕上げ部4と排水処理部5を制御して上述した運転を行う。
【0055】
再生紙作製930の途中で、制御部7の再生予想枚数算定機能部722は、カウンター機能部719で積算した再生完了枚数と、運転時間積算機能部724で積算した運転時間から算出する残り時間とから再生運転終了までに再生可能な再生予想枚数の総数を再算定し、表示部74に再算定の再生予想枚数を表示する。
【0056】
また、ユーザが時間設定機能部723で時間を設定変更した場合に、制御部の再生予想枚数算定機能部722は、カウンター機能部719で積算した再生完了枚数と、運転時間積算機能部724で積算した運転時間から算出する設定変更後の残り時間とから再生運転終了までに再生可能な再生予想枚数の総数を再算定し、表示部74に再算定の再生予想枚数を表示する。
【0057】
また、制御部7は、運転停止時間測定機能部728で再生運転を停止している間の運転停止時間を測定し、運転停止原因判定機能部729で判定する運転停止原因および運転停止時間に応じて予め設定したメンテナンス動作を実行する。
【0058】
例えば、ユーザが運転中断指示手段75により再生運転を中断指示する場合に、制御部7の運転停止原因判定機能部729は運転中断指示が運転停止原因である判定し、かつ運転停止時間が所定時間内であるときには、予めメンテナンス動作として設定した抄紙部3の洗浄動作を実行する。運転停止原因判定機能部729が運転中断指示を運転停止原因と判定し、かつ運転停止時間が所定時間を超えるときには、再生運転途上の再生紙を廃棄する廃棄動作と排水動作と予めメンテナンス動作として設定した洗浄動作を実行する。
【0059】
また、停電が発生した場合に、制御部7の運転停止原因判定機能部729は停電が運転停止原因と判定し、かつ運転停止時間が所定時間内であるときに、停電復旧動作を実行した後に、予めメンテナンス動作として設定した抄紙部3の洗浄動作を実行し、運転停止原因判定機能部729が停電を運転停止原因と判定し、かつ運転停止時間が所定時間を超えるときに、停電復旧動作を実行した後に、再生運転途上の再生紙を廃棄する廃棄動作と排水動作と予めメンテナンス動作として設定した洗浄動作を実行する。
【0060】
運転停止時間に対するメンテナンス動作の内容はユーザが任意に設定変更できるようにすることも可能であり、運転停止時間の基準値をユーザが任意に設定変更できるようにすることも可能である。緊急停止時には全ての動作を停止する。
【0061】
ユーザの任意の中断要求や異常停止時(停電、緊急停止)においては、停止前の状況をバックアップし、途中復旧が可能な処理を行なうようにすることも可能である。停電時や緊急停止時はLANなどの通信手段や装置緊急停止ランプ、ブザー音で警告を発するようにすることも可能である。ユーザの任意の中断要求時において、その中断時に作業を継続可能とする特定部位、例えば各タンクの攪拌等を予め設定、登録できるようにすることも可能である。
【0062】
乾燥中において停電となった場合、仕上げ部4に予備電源から電力を供給し、ドライヤー部35の余熱により紙を乾燥させた後に用紙を排出する。完全に乾燥していない場合はリジェクトトレーに排出するように構成することも可能である。
【0063】
予備電源として備えるバッテリーには商用電源や太陽光発電により充電するが、予備電源としては燃料電池の採用も可能であり、バッテリー残量が不足する場合には手動により紙を排出できるようにすることも可能である。
【0064】
稼動停止条件チェック940では、図11に示すように、終了時刻に達したか否かの判断941を行なう。この終了時刻は、タイミング入力部73から自動運転制御機能部716へ入力する指示信号で指示するものであり、本実施の形態では内部時計が予定時刻に達したときに、稼動開始から予定した運転時間が経過したときに入力する指示信号であり、終了時刻である場合は停止準備動作へ移る。
【0065】
終了時刻でない場合は、設定分の処理が完了したか否かの判断942を行なう。制御部7は、抄紙部3の駆動回数等を数えることにより、あるいは仕上げ部4に設けるセンサ(図示省略)によって完成した再生紙を検知することにより、調製(再生)した再生紙の目標枚数をカウンター機能部719においてカウントし、カウンター機能部719のカウント値がユーザが目標枚数設定機能部718に設定した目標枚数になったときに運転を停止する。よって、過剰な運転を抑制し、ユーザが必要とする最小限の稼動だけを実現する。設定分の処理が完了した場合は停止準備動作へ移る。
【0066】
設定分の処理が完了していない場合は、分量測定センサ125により定型用紙タンク11およびシュレッダータンク12の内部にある裁断紙片の有無の確認943を行なう。裁断紙片が無い場合には、表示部74に警告944を表示し、停止準備動作へ移る。裁断紙片が有る場合は運転を継続する。
【0067】
停止準備動作950では、図13に示すように、各ヒータ143、234、235への通電を停止951する操作を行い、温度センサ354で測定する乾燥ローラ353の表面温度が設定温度以下になったか否かの判断952を行い、繊維と水の処理953を行う。
【0068】
繊維と水の処理953では、排水動作制御機能部720により運転制御し、抄紙部3に残った繊維は最終位置まで送って再利用し、他の繊維は廃棄のための処理を行い、排水動作として水は異物を取り除いて薬剤で中性に戻して排出する。
【0069】
次に、駆動の停止954を行い、メンテナンス動作として行なう各部の清掃955では、洗浄動作制御機能部721により運転制御し、槽内やベルトに付着している繊維を水で自動的に洗い流す洗浄動作を行ない、さらに防腐剤を含む洗浄水で洗浄動作を行なう。防腐剤を含む洗浄水による洗浄動作はユーザが任意に設定するようにすることも可能である。次に、発生したゴミの処理956では、繊維、インクともに水分を除去して固形化させる。
【0070】
本実施の形態によれば、貯蔵タンク21を設けるとともに、その容量をパルパー14のバッチ処理の処理単位当たりにおける再生パルプ処理量に対してN倍以上の容量とすることで、パルパー14の処理単位量に制限を受けることなく抄紙部3を連続的に稼動させることができ、品質の不安定な部位を含む初期再生紙および終期再生紙の発生量を抑制することができ、機械全体としての作業効率が向上する。
【0071】
また、パルパー14が処理単位当たりに要する処理時間内において貯蔵タンク21が再生パルプを下流側へ供給する再生パルプ供給量を、パルパーが処理単位当たりに処理する再生パルプ処理量を超えないものとすることで、パルパー14からの供給が続く限り貯蔵タンク21から下流側の脱墨前希釈タンク22へ常に再生パルプ含有液を供給して抄紙部3を連続稼動させることができる。
【0072】
よって、品質の不安定な部位を含む初期再生紙および終期再生紙の発生量を抑制することができる。
本実施の形態では、パルパー14が1台である場合に、貯蔵タンク21を設けることで、パルパー14の処理単位量に制限を受けることなく抄紙部3を連続的に稼動させることを実現した。
【0073】
しかし、図14に示すように、パルパー14を複数台とすることでも、パルパー14の処理単位量に制限を受けることなく抄紙部3を連続的に稼動させることが実現できる。すなわち、各パルパー14から繊維濃度調整部15へ再生パルプ含有液を供給可能とし、かつ複数のパルパー14を任意選択的に切替可能に設けることで、各パルパー14から脱墨部23を介して、抄紙部3へ再生パルプ含有液を連続的に供給することが可能である。
【0074】
ここでは、2台のパルパー14を開示しているが、パルパー14の台数は、パルパー14が処理単位当たりに要する処理時間と、貯蔵タンク21が再生パルプを下流側へ供給する再生パルプ供給量との関係において設定する。例えば、パルパー14が処理単位当たりに要する処理時間内において貯蔵タンク21が再生パルプを下流側へ供給する再生パルプ供給量を、パルパーが処理単位当たりに処理する再生パルプ処理量と等しくする場合には、2台のパルパー14から交互に再生パルプ含有液を供給することで、貯蔵タンク21から下流側の脱墨前希釈タンク22へ常に再生パルプ含有液を供給可能である。
【0075】
また、図15示すように、パルパー14を複数台とし、各パルパー14から再生パルプ含有液を供給可能とし、かつ複数のパルパー14を任意選択的に切替可能に設け、少なくとも一つのパルパー14には再生紙の余剰紙片の裁断紙片を投入し、このパルパー14は再生パルプ含有液を直接に抄紙部3へ供給し、他のパルパー14は再生パルプ含有液を脱墨部23へ供給することでも、パルパー14の処理単位量に制限を受けることなく抄紙部3を連続的に稼動させることが実現できる。
【0076】
すなわち、図7に示すように、カット部42と所定のパルパー14の間に余剰紙片搬送部43を設ける。余剰紙片搬送部43は、スリット・カットユニット421の下方に配置するホッパー431と、パルパー14の上方に配置するサイクロン分離機432を備え、ホッパー431とサイクロン分離機432の間に送風機433を有した空気搬送系434が設けてある。
【0077】
このように、空気を利用して余剰紙片を搬送することにより、空気搬送系434は自由なレイアウトで配置することができる。この自由度の高い空気搬送系434の採用によって、カット部42からホッパー431までの距離が大きい場合にあっても、従来の余剰紙片のベルト搬送方式に比べて、簡易な構成で余剰紙片の搬送を実現できる。
【0078】
余剰紙片搬送部43は、カット部42のスリット・カットユニット421で生じる余剰紙片の裁断紙片をホッパー431に投入し、送風機433から空気搬送系434に供給する空気を搬送媒体として裁断紙片をサイクロン分離機432へ搬送し、サイクロン分離機432で分離した裁断紙片を所定のパルパー14へ供給する。そして、このパルパー14は再生パルプ含有液を直接に抄紙部3へ供給する。
【0079】
各パルパー14から交互に再生パルプ含有液を供給することで、抄紙部3へ常に再生パルプ含有液を供給可能である。
再生紙を定型にカット形成する際に発生する余剰紙片は、離解が早くて脱墨処理が不要であるので、パルパー14の処理時間を短縮し、脱墨処理することなく再生紙に再生することができ、古紙再生率が高まって環境機器としての有用性が増し、脱墨処理を省くことで作業効率が向上する。
【0080】
また、一度再生した再生紙は、パルパー14の処理時間を短縮したりして離解エネルギーを低減させても十分に離解することができるので、以下のような処理を行なうことも可能である。
【0081】
実施例1
市販の紙(非再生紙)と古紙処理装置で再生した紙とで離解時間の設定を切り替える。この場合、原料となる紙が市販の紙であるのか、古紙処理装置で再生した再生紙であるのかはユーザーが設定指示する。
【0082】
実施例2
市販の紙(非再生紙)と古紙処理装置で再生した紙とが混在している場合には、市販の紙を先に離解し、古紙処理装置で再生した再生紙を後に離解することで、トータルの離解時間を短縮することができる。
【符号の説明】
【0083】
1 再生パルプ部
2 脱墨パルプ部
3 抄紙部
4 仕上げ部
5 排水処理部
6 古紙
7 制御部
11 定型用紙タンク
12 シュレッダータンク
13 繊維量調整部
14 パルパー
15 繊維濃度調整部
21 貯蔵タンク
22 脱墨前希釈タンク
23 脱墨部
31 ヘッドボックス
32 ワイヤー部
33 脱水部
34 プレス部
35 ドライヤー部
41 カレンダー部
42 カット部
43 余剰紙片搬送部
51 白水タンク
52 排水処理部
61 裁断紙片
71 CPU
73 タイミング入力部
74 表示部
75 運転中断指示手段
100 再生紙
101 溶媒供給系
102 移送系
103 濃度調整液供給系
104 希釈水供給系
105 抄紙排水系
106 脱墨排水系
107 補給水供給系
121 上部開口
122 底面
123 排出口
124 排出装置
125 分量測定センサ
131 受け皿部
132 計量部
131a 受け皿
131b 側壁部
141 槽体
142 攪拌翼
143 ヒータ
144 温度センサ
201 移送系
202a、202c 移送系
202b、202d バルブ
231 前槽
232 後槽
233 仕切り壁
234、235 ヒーター
236 噴出口
237 攪拌翼
238 温度センサ
321、322 ロール
323 メッシュベルト
331 ローラ
332 吸水ベルト
333 抄いた紙
334 脱水ローラ
341 ローラ
351 ローラ
352 搬送ベルト
353 乾燥ローラ
354 温度センサ
411 プレスローラ
421 スリット・カットユニット
431 ホッパー
432 サイクロン分離機
433 送風機
434 空気搬送系
711 再生パルプ部制御機能部
712 脱墨パルプ部制御機能部
713 抄紙部制御機能部
714 仕上げ部制御機能部
715 排水処理部制御機能部
716 自動運転制御機能部
717 運転ロック制御機能部
718 目標枚数設定機能部
719 カウンター機能部
720 排水動作制御機能部
721 洗浄動作制御機能部
722 再生予想枚数算定機能部
723 時間設定機能部
724 運転時間積算機能部
725 運転停止選択機能部
726 再生予想時間算定機能部
727 パワーモード選択機能部
728 運転停止時間測定機能部
729 運転停止原因判定機能部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
古紙もしくは古紙の裁断紙片を再生原料として貯留し、後段の再生パルプ部へ再生原料を供給する原料貯溜部と、再生原料を離解して再生パルプを調製するパルパーを有し、後段の脱墨パルプ部へ再生パルプを供給する再生パルプ部と、再生パルプを漂白して脱墨パルプを調製する脱墨部を有し、後段の抄紙部へ脱墨パルプを供給する脱墨パルプ部と、脱墨パルプを抄紙して再生紙を調製する抄紙部を備える古紙処理装置において、
再生パルプをパルパーから脱墨部へ移送する移送経路の途中に、移送経路の上流側から流入する再生パルプの所定量を貯留しつつ再生パルプを下流側へ連続供給する貯蔵タンクを設けたことを特徴とする古紙処理装置。
【請求項2】
古紙もしくは古紙の裁断紙片を再生原料として貯留し、後段の再生パルプ部へ再生原料を供給する原料貯溜部と、再生原料を離解して再生パルプを調製するパルパーを有し、後段の抄紙部へ再生パルプを供給する再生パルプ部と、再生パルプを抄紙して再生紙を調製する抄紙部を備える古紙処理装置において、
再生パルプをパルパーから抄紙部へ移送する移送経路の途中に、移送経路の上流側から流入する再生パルプの所定量を貯留しつつ再生パルプを下流側へ連続供給する貯蔵タンクを設けたことを特徴とする古紙処理装置。
【請求項3】
貯蔵タンクは、パルパーの処理単位当たりにおける再生パルプ処理量に対してN倍以上の容量を有することを特徴とする請求項1または2に記載の古紙処理装置。
【請求項4】
貯蔵タンクは、パルパーの処理単位当たりに要する処理時間内に再生パルプを下流側へ供給する再生パルプ供給量がパルパーの処理単位当たりにおける再生パルプ処理量を超えないことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の古紙処理装置。
【請求項5】
古紙もしくは古紙の裁断紙片を再生原料として貯留し、後段の再生パルプ部へ再生原料を供給する原料貯溜部と、再生原料を離解して再生パルプを調製するパルパーを有し、後段の脱墨パルプ部へ再生パルプを供給する再生パルプ部と、再生パルプを漂白して脱墨パルプを調製する脱墨部を有し、後段の抄紙部へ脱墨パルプを供給する脱墨パルプ部と、脱墨パルプを抄紙して再生紙を調製する抄紙部を備える古紙処理装置において、
複数のパルパーを任意選択的に切替可能に設け、各パルパーから脱墨部へ再生パルプを連続的に供給することを特徴とする古紙処理装置。
【請求項6】
古紙もしくは古紙の裁断紙片を再生原料として貯留し、後段の再生パルプ部へ再生原料を供給する原料貯溜部と、再生原料を離解して再生パルプを調製するパルパーを有し、後段の抄紙部へ再生パルプを供給する再生パルプ部と、再生パルプを抄紙して再生紙を調製する抄紙部を備える古紙処理装置において、
複数のパルパーを任意選択的に切替可能に設け、各パルパーから脱墨部へ再生パルプを連続的に供給することを特徴とする古紙処理装置。
【請求項7】
古紙もしくは古紙の裁断紙片を再生原料として貯留し、後段の再生パルプ部へ再生原料を供給する原料貯溜部と、再生原料を離解して再生パルプを調製するパルパーを有し、後段の脱墨パルプ部へ再生パルプを供給する再生パルプ部と、再生パルプを漂白して脱墨パルプを調製する脱墨部を有し、後段の抄紙部へ脱墨パルプを供給する脱墨パルプ部と、脱墨パルプを抄紙して再生紙を調製する抄紙部を備える古紙処理装置において、
複数のパルパーを任意選択的に切替可能に設け、少なくとも一つのパルパーは再生パルプを抄紙部へ供給し、他のパルパーは脱墨部へ再生パルプを供給し、前記少なくとも一つのパルパーには再生紙の余剰紙片の裁断紙片を投入することを特徴とする古紙処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−127227(P2011−127227A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−283520(P2009−283520)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【出願人】(390002129)デュプロ精工株式会社 (351)
【Fターム(参考)】