可動プレート・バルブを備えたエアマネージャを有するバッテリ
バッテリへの空気の流れを調節するための空気調整システムが、気体消費バッテリに設けられる。バッテリは、セル・ハウジングへの、空気中に含まれる気体の通過のための空気侵入ポートを備えたセル・ハウジングを有する気体消費セルを含む。第1の気体消費電極及び第2の消費電極が、セル・ハウジング内に配置される。空気調節システムは、可動プレートが別のプレートに隣接して配置されたバルブを含む。一実施形態において、可動プレート及び他方のプレートの両方とも、開放バルブ位置において少なくとも部分的に位置合わせされ、閉鎖バルブ位置において位置合わせされない、貫通する1つ又はそれ以上のアパーチャを有する。空気調節システムはまた、バルブを開閉するために、可動プレートを固定プレートに対して移動させるためのアクチュエータを含むこともできる。流体封じ込め層と、流体封じ込め層内に部分的に含まれる流体とを含む封止媒体が、可動プレートと固定プレートとの間に配置され、バルブ動作及び封止の有効性を向上させる。流体封じ込め層は多孔性材料を含み、流体は、多孔性材料の垂直方向ストリップ上に、バルブ・プレート間の最大界面寸法に等しいか、又はこれを上回らない最大ウィッキング高さを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体消費電極を備えた電気化学バッテリ及びセルに出入りする空気及び他の気体の侵入速度を制御するための空気調節システム、並びにこうした空気調節システムを用いるバッテリ及びセル、特に、空気減極セル、空気補助セル、及び燃料セル、並びにバッテリに関する。
【背景技術】
【0002】
空気減極、空気補助及び燃料セル・バッテリのセルのような、電気エネルギーを生成するための活物質としてセルの外部からの酸素及び他の気体のような流体を用いる、電気化学バッテリ・セルは、種々の携帯型電子部品に電力を供給するのに用いることができる。例えば、空気は、空気減極又は空気補助セルに入り、そこで、正極活物質として用いられるか又はそれを再充電することができる。酸素還元電極は、酸素とセル電解質との反応を促進し、最終的には、酸素による負電極活物質の酸化を促進する。酸素と電解質との反応を促進する酸素還元電極内の材料は、しばしば触媒と呼ばれる。しかしながら、酸素還元電極において用いられる幾つかの材料は、特に比較的高速度の放電中に少なくとも部分的に還元されることがあるので、真の触媒ではない。
【0003】
1つの種類の空気減極セルは、亜鉛/空気セルである。この種類のセルは、負電極活物質として亜鉛を用い、かつ、水性アルカリ(例えば、KOH)電解質を有する。亜鉛/空気セルの空気中で用いることができる酸化マンガンは、特に、空気電極中への酸素の拡散速度が不十分である場合は、負電極活物質の酸化に合わせて電気化学的に還元され得る。その後、これらの酸化マンガンは、低率放電又は停止の期間中に酸素によって再酸化され得る。
【0004】
空気補助セルは、消費可能な正及び負電極活物質、並びに酸素還元電極を収容するハイブリッド・セルである。正極は、相当な期間にわたって高放電率を維持することができるが、酸素還元電極を通じて、酸素は、低又は非放電期間中に部分的に正極を再充電することができるので、酸素を、全セル放電容量の実質的な部分のために用いることができる。これは、セルに入れられる正極活物質の量を減らすこと、及び、負電極活物質の量を増やして全セル容量を増大させることができることを意味する。空気補助セルの例は、同一出願人による特許文献1及び特許文献2に開示されている。
【0005】
空気減極、空気補助及び燃料セルの利点は、少なくとも一方の電極の活物質の少なくとも一部分が、セルの外部からの空気中に含まれる気体由来であるか、又はその気体により再生されるために、その高いエネルギー密度が高いことである。
【0006】
これらのセルの欠点は、可能な最大放電率が、酸素が酸素還元電極に侵入する速度により制限される可能性があることである。これまで、酸素還元電極に酸素が侵入する速度を高める努力、及び/又は無駄な反応を引き起こす可能性がある二酸化炭素のような望ましくない気体の侵入速度及び量が増えていく反応生成物を収容するか又はセルを乾燥させることが意図されるセルの空隙空間を満たす可能性がある水の侵入速度又は損失速度(セル外部及び内部の相対水蒸気分圧に依存する)を、それぞれ制御する努力がなされてきた。これらの手法の例は、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、及び特許文献8に見出すことができる。しかしながら、これらの気体の1つの拡散速度を変化させると、一般的に、他の気体にも影響が生じる。高い酸素拡散速度、及び低いCO2及び水拡散速度に対する必要性のバランスを取る努力がなされた場合でも、限られた成功しか得られていない。
【0007】
放電率が高いときには、十分な酸素を酸素還元電極内に取り込むことが重要であるが、低放電率の期間及びセルが使用されていない期間には、CO2及び水の拡散を最小にする重要性が高まる。高率放電の期間だけセルへの空気流を増大させるために、ファンを用いて空気をセルに強制的に取り込んできたが(例えば、特許文献9)、そのファン及びそれらに対する制御により、製造のコスト及び複雑さが加わり、ファンは、マイクロ・ファンであっても、個々のセル、複数のセル・バッテリ・パック、及び装置内で貴重な容積を占める可能性がある。
【0008】
提案されている別の手法は、セルに流入する空気の量を制御するためにバルブを用いることであるが(例えば、特許文献10及び特許文献11)、このバルブを作動させるためには、ファン及び/又は比較的複雑な電子部品のような外部手段を必要する可能性がある。
【0009】
更に別の手法は、酸素還元電極と外部環境の間に、例えば、バッテリが放電するときの酸素の消費による空気圧の差により開閉することができるフラップを有する水不透過膜を用いることである(例えば、特許文献12)。しかしながら、圧力差は、小さいことがあり、バッテリ外部の大気条件により影響を受けることがある。
【0010】
摺動磁気プレート・バルブと固定プレートとの間に、ポリエチレン・フィルムのようなポリマーフィルムの層、又は、シリコン油のような、摩擦抵抗を減少させるための他の何らかの手段を適用することによって、摺動プレート・バルブのプレート間の摩擦を減少させることが、特許文献13に開示されている。特許文献14は、閉鎖位置における摺動プレート・バルブ・シールの有効性を改善するために、隣接するバルブ・プレートの界面に、ポリマー・コーティング若しくはフィルム、又はシリコン・ベースの油などの液体といった材料を適用することを開示し、この改善は、摩擦の減少、界面の欠陥の充填、又は油が用いられた場合には、プレート間の毛管引力の結果もたらされ得るものである。特許文献15は、摺動プレート・バルブのシールの有効性及び動作をさらに改善するために、バルブ・プレート間の流体に丸い部材を添加することを開示する。
【0011】
気体消費セルへの空気の流入を制御するための空気調節システムの動作及び有効性をさらに改善し、これを行おうとするこれまでの試みにおける不利な点を克服することが望ましい。本発明の目的は、2つのプレートを有し、かつ、長期間バルブが閉鎖されたときにプレート間にシールを設けることができるバルブを備えた空気調節システムを提供することである。本発明の目的はまた、長期間にわたってしっかりと密封することができ、かつ、小さな力を加えるだけで動作することができるバルブを含む空気調節システムを提供することである。本発明の更に別の目的は、気体消費電極と、バッテリ内への空気の通過を制御するための改善された空気調節システムとを有するバッテリを提供することであり、この空気調節システムは、バッテリの性能に悪影響を与えることなく、長時間有効である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第6,383,674号明細書
【特許文献2】米国特許第5,079,106号明細書
【特許文献3】米国特許第6,558,828号明細書
【特許文献4】米国特許第6,492,046号明細書
【特許文献5】米国特許第5,795,667号明細書
【特許文献6】米国特許第5,733,676号明細書
【特許文献7】米国特許公開第2002/0150814号明細書
【特許文献8】国際公開第02/35641号パンフレット
【特許文献9】米国特許第6,500,575号明細書
【特許文献10】米国特許第6,641,947号明細書
【特許文献11】米国特許公開第2003/0186099号明細書
【特許文献12】米国特許公開第2003/0049508号明細書
【特許文献13】米国特許第5,554,452号明細書
【特許文献14】米国特許公開第2005/0136321号明細書
【特許文献15】米国特許公開第2009/0081519号明細書
【発明の概要】
【0013】
本発明の一態様によると、空気中に含まれる気体を活物質として用いるバッテリ・セルへの空気の通過を制御するための空気調節システムが提供される。この空気調節システムは、貫通する少なくとも1つのアパーチャを有する第1のプレートと、貫通する少なくとも1つのアパーチャを有する第2のプレートとを含むバルブと、第1のプレートを第2のプレートに対して移動させてバルブを開閉し、セルへの空気の通過を調節するためのアクチュエータと、第1のプレートと第2のプレートとの間に配置された封止媒体とを含む。封止媒体は、流体封じ込め層と、該流体封じ込め層内に部分的に収容される流体とを含む。流体封じ込め層は、毛管流ポロメータを用いるバブルポイント法により求められる、0.03マイクロメートルから15マイクロメートルまでの平均細孔径を有する多孔性ポリマー材料を含む。多孔性ポリマー材料での流体の最大ウィッキング高さは、第1及び第2のプレートの最大界面寸法に等しいか又はこれを上回り、流体の試料の表面の上に多孔性ポリマー材料のストリップを垂直方向につり下げることによって求められる。
【0014】
本発明の別の態様によると、セル外部からの空気中に含まれる気体を活物質として用いる気体消費電極を含むバッテリ・セルと、対電極と、電解質と、電極及び電解質を収容し、かつ、空気がそこを通ってハウジングに入ることができる少なくとも1つの開口部を有するハウジングと、上述の空気調節システムとを含むバッテリが提供される。
【0015】
本発明のこれら及び他の特徴、利点、及び目的は、以下の明細書、特許請求の範囲、及び添付図面を参照して、当業者によりさらに理解され、かつ認識されるであろう。
【0016】
本明細書に特に別段の指定がない限り、全ての開示された特性、範囲及び試験は、室温(20−25℃)におけるものであり、非SI単位の値が示される場合、非SI値はオリジナルの値であり、SI値は計算された換算である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】バッテリの上部を示す、本発明の第1の実施形態に従って構成されたバッテリの斜視図である。
【図2】バッテリの底部を示す、図1に示されるバッテリの斜視図である。
【図3】バッテリに用いられる空気調節システムを形成する構成要素と共にバッテリの底部を示す分解斜視図である。
【図4A】開放位置の空気調節システムのバルブを示す部分断面図である。
【図4B】閉鎖位置の空気調節システムのバルブを示す部分断面図である。
【図5】アクチュエータ・ピンを用いる空気調節システムの上面図である。
【図6】本発明の種々の実施形態に用いることができる空気調節システムの代替的な較正である。
【図7】本発明の第1の実施形態のバッテリの変形の分解斜視図である。
【図8】図7に対して逆方向の、図7に示されるバッテリ構成の1つの可能な実施の部分断面図である。
【図9】本発明の実施形態に従って構成されたバッテリの断面図である。
【図10】本発明の実施形態に従って構成されたバッテリの断面図である。
【図11】バルブが閉鎖位置にある、図10に示される閉鎖位置のバッテリの一部分の部分断面図である。
【図12】図10に示されるバッテリに有用なバルブ部材の斜視図である。
【図13】圧力解放空気経路がシャーシ内に設けられた空気調節システムを有するバッテリの斜視図である。
【図14】図13に示される圧力解放経路を備えた空気調節システムを有するバッテリの分解斜視図である。
【図15】図13の線XLVIII−XLVIIIを通るバッテリ及び空気調節システムの一部の断面図である。
【図16】蛇行流体通路を形成するバッフルを示す、図14の線XLIX−XLIXを通るシャーシの断面図である。
【図17】別の実施形態による、圧力除去流体経路を備えた空気調節システムを有するバッテリの分解斜視図である。
【図18】別の実施形態による、開放バルブ位置で回転可動プレートを用いる空気調節システムの上面図である。
【図19】別の実施形態による、閉鎖バルブ位置で示される図18の空気調節システムの上面図である。
【図20】バルブ・プレート間に配置された球状部材を含む封止媒体を有する空気調節システムの分解図である。
【図21】封止媒体を示す、図20に示される空気調節システムの一部分の拡大分解図である。
【図22】開放位置のバルブ・プレートを示す、図20のバルブの部分断面図である。
【図23】閉鎖位置のバルブ・プレートを示す、図20のバルブの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態は、一方の電極のための活物質としてセルの外部からの空気中に含まれる気体(酸素又は別の気体など)を用いる電気化学セルを含むバッテリを含む。セルは、酸素還元電極のような気体消費電極を有する。気体消費電極を有することができるセルの例として、空気減極セル、空気補助セル、及び燃料セルが挙げられる。低率又は非放電期間中に気体消費電極に入る空気とセルに入る水獲得又はセルからの水損失とを最小にする一方で、高率でのセルの放電のためには十分な量の気体を外部から供給するように、気体消費電極(例えば、空気減極セル及び空気補助セルの空気電極)までの空気の通過速度を調節するための、以下にエアマネージャとも呼ばれる空気調節システムが、バッテリと共に用いられる。
【0019】
空気調節システムは、セル電位の変化にすばやく応答し、サイクル寿命が長く、放電時のセル電圧範囲に良好に適合する低い作動電圧を有し、高効率であることが好ましい。さらに、調節システムは、閉鎖位置で管理される空気又は他の気体に対して低透過性であり、セル内での活性気体に対する必要性に応じて開閉し、非常に少量の全セル放電容量しか必要とせず、容量が小さく、製造が容易かつ安価であり、セル内又はセル上に組み込まれることが好ましい。
【0020】
エアマネージャは、バルブを開閉するために1つのプレートが別のプレートに対して移動する、摺動プレート・バルブ又は座屈プレート・バルブのような可動プレート・バルブを含む。一方のプレートを固定プレートとし、他方のプレートは可動プレートとすることができ、又は両方のプレートとも移動することができる。プレートのうちの少なくとも1つは、空気がバルブを通過するための、貫通する少なくとも1つのアパーチャを有する。摺動プレート・バルブにおいて、プレートは、典型的には互いに平行である。プレート間の相対運動は、プレートが典型的には互いに平行なままであるように、直線運動又は回転運動(例えば、1つのプレートが回転軸の周りを回転する)とすることができ、各プレートは少なくとも1つのアパーチャを有する。1つのプレートのアパーチャは、バルブが閉鎖されたときに位置ずれし、バルブが開放位置にあるときに少なくとも部分的に位置合わせされる。座屈バルブにおいて、可動プレートは変形して他方のプレートから引き離され、プレート間に開口部を生成し、空気は、その開口部、及び開放位置における一方又は両方のプレートの1つ又は複数のアパーチャによって形成された通路を通って流れることができるが、プレートの各々の少なくとも一部分は、本質的に他方のプレートの少なくとも一部分に押し当っているので、バルブが閉鎖したときに空気通路は存在しない。
【0021】
封止媒体が、可動プレート・バルブのプレートの界面の間に配置される。封止媒体は、流体封じ込め層を形成するプレートの一方又は両方上のフィルム又はコーティングと、封止流体とを含む。流体は、プレート間のシールを向上させ、フィルム又はコーティングは、プレート間の界面の所望の領域内に流体を保持する細孔を有する。フィルム又はコーティング、及び流体の一方又は両方は、封止媒体がないプレート間の摩擦と比べて、摩擦の減少ももたらす。
【0022】
プレート上のフィルム若しくはコーティングだけから成る媒体、又はプレート間の流体だからなる媒体を使用することは、欠点を有する可能性があることが発見された。フィルム又はコーティングは、プレート間の摩擦を減少させ得るので、摺動プレートはより容易に摺動し、動作するのに必要なエネルギーはより少ないが、こうしたフィルム又はコーティングだけでは、バルブの閉鎖時のプレート間のシールの有効性をほとんど改善させることができない。流体をプレートの界面に適用することで、より有効なシールをもたらすことができ、プレート間の摺動摩擦を減少させることもできる。しかしながら、流体が、良好なシールを維持することが必要とされるバルブ・プレート間の界面から流出して、エアマネージャ及びセルの他の部分に入るのを防ぐのに、流体とプレートとの間の表面張力では不十分であることが分かった。プレート間の改善したシールを維持するためには、流体は、両プレートの界面と接触して、一方のプレートのアパーチャと他方のプレートのアパーチャとの間に空気又は他の気体が直接通ることができる開放通路が存在しないようになっていなければならない。表面張力を増大させるように、プレートの表面特性及び流体のタイプを選択することにより、プレート間の界面からの封止流体の流出を減少させることができるが、試験された最良の組み合わせは、依然として不十分なものである。プレート間の流体の保持は、温度、バルブの開閉、バルブの向き(重力の影響による)及びバルブの設計によっても影響を受け得る。
【0023】
しかしながら、フィルム又はコーティングは、流体を2つのプレート間の界面に保持するのを助けることができる流体封じ込め層として機能するので、封止流体と、一方又は両方のプレート上の特定のフィルム又はコーティング材料との適切な組み合わせを用いることにより、別個に使用されるときにそれぞれと関連した問題を克服することができることも発見された。実施形態においては、より小さい表面積を有するプレートの少なくとも一部分が、フィルム又はコーティングで覆われる。代替的に、可動プレートの全可動範囲にわたる界面面積全体といったより大きい表面積のプレートの限られた部分だけを、フィルム又はコーティングで覆うことができる。
【0024】
フィルム又はコーティングは、一方又は両方のバルブ・プレートに適用するのが容易であり、かつ、予想される貯蔵及び使用条件の間、プレートから引き離されることなく、プレート間の所定位置のままであることが望ましい。さらに、フィルム又はコーティングは、その流体で濡れることができること、すなわち流体をはじくべきではないが、流体を実質的に保持するための、例えば毛管引力及び/又は吸収による十分な引力を提供し、かつ、長期間にわたって流体の流動を最小にすることも望ましい。厚さ、多孔性、平均細孔径、及び屈曲度は、フィルム又はコーティングが流体を保持する能力に影響を与えることがある。フィルム又はコーティングは、バルブが閉鎖されたときにフィルム又はコーティングを通る気体の流れを最小にするために、酸素、二酸化炭素及び水蒸気のような空気気体に対して比較的低い透過性を有することも好ましい。後述のように、フィルム又はコーティング材料を選択する際、フィルム又はコーティングと流体との間の相互作用も考慮すべきである。好適であり得るフィルム又はコーティングとして、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリプロピレン、及びポリエチレンのようなポリマー材料が挙げられる。ポリマー材料は、非焼成のものであることが好ましい。紙もまた好適であり得る。フィルム及び紙は、織布であっても又は不織布であってもよい。
【0025】
封止媒体に用いるのに適した流体は、蒸発を最小にするために、予想される範囲の貯蔵及び使用条件にわたって低い揮発性を有することが望ましい。流体の粘度も、その有効性に影響を与えることがあり、粘度が低すぎる場合、流体が容易に流れすぎ又は流体封じ込め層内に多量に吸収されすぎる可能性があり、粘度が高すぎる場合、バルブを作動させるのに、過度のエネルギーを必要とし得る。流体が、エアマネージャのどこか違った場所に又はエアマネージャから外に流れ出てバッテリ内に入ることなく、バルブ・プレート間の界面に実質的に保持されるように、フィルム又はコーティングにより十分に誘引されることも望ましい。幾つかの実施形態において、流体はまた、プレート間の摩擦も減少させる。後述のように、流体を選択する際、流体とフィルム又はコーティング材料並びに界面面積における覆われていないプレート表面との間の相互作用も考慮すべきである。適切な流体の例には、これらに限られるものではないが、ペルフルオロアルキルエーテル(例えば、DuPont de Nemours International S.A.社からのKRYTOX(登録商標)102汎用オイルのようなKRYTOX(登録商標)100シリーズ汎用潤滑剤)のようなフルオロカーボン液体、シロキサンポリマー含有流体(例えば、Dow Corning社からのグレード702、704、及び705拡散ポンプ油)のようなシリコーン・ベースの流体が挙げられる。他の実施形態に従って、他の適切な流体を用いることもできる。用いられる流体の量は、組み合わせられたプレートの界面面積の合計、界面間の間隙のサイズ、及び流体と界面との間の表面張力の関数となる。
【0026】
プレート、フィルム及びコーティングの表面は、これらの表面と流体との間の相互作用の妨げとなるのを回避するために、使用前に清浄であることが望ましい。流体とフィルム又はコーティング表面との間の引力が、流体とどちらかの裸のプレート表面との間の引力より有意に大きい場合、その界面が垂直位置になるような向きにプレートが方向付けられたときでさえ、著しく長期間にわたって流体をプレートの間に保持することができる。流体とフィルム又はコーティング表面との間の表面張力が重力により及ぼされる力より有意に大きく、そのため、バルブ・プレートが垂直位置にあるときに、重力下で、表面張力が流体の流量を支配することが好ましい。
【0027】
バルブ・プレートは、いずれかの適切な材料から作製することができる。選択される材料は、装置及びバッテリが使用されると予想される環境において機械的に安定しており、腐食に耐えるものであるべきである。幾つかの実施形態においては、選択される材料は、導電性とすることも又は非導電性とすることもできる。フィルム又はコーティングで覆われていないプレートの界面は滑らかであるべきであり、プレート間のシールの有効性を最大にするために、バルブが閉鎖されたとき、プレートの界面の密封面の形状は互いに適合するべきである。
【0028】
幾つかの実施形態において、一方又は両方のバルブ・プレートを磁性材料から作製することができるので、隣接するバルブ・プレートは互いに引き付けられて、プレート間のシールの有効性を最大化する。磁気プレートは、強磁性体(例えば、バリウム/ストロンチウムフェライト)とエラストマー材料とのブレンドのような、いずれかの適切な磁性材料から作製することができる。磁気プレートは、十分な磁力を維持するためにバッテリからのエネルギーを消費しない永久磁石とすることができる。プレートの少なくとも一方が磁性である場合、他方のプレートが完全に平坦ではない場合でも、他方のプレートの形状に適合させるように、一方のプレートを可撓性とすることができる。
【0029】
図1−図3を参照して以下に更に説明するように、本発明によるバッテリ10は、気体消費セル20及び空気調節システム50を含む。空気調節システム50は、気体消費セル20の気体消費電極への気体を含む空気の流れを調節する。空気減極セルでは、空気調節システムは、気体消費セル20のセル・ハウジング30の内部及び外部、並びに酸素還元電極の空気側(すなわち、セル・ハウジングの外部からの空気に到達することができる酸素還元電極の表面又はその一部)上に配置される。
【0030】
図示のように、セル20(この場合は、空気減極セル)は、それぞれ缶34及びカバー36を含むことができる、又は他の場合には缶又はカバーと見なされるものとは異なる形状又はサイズを有することができる、第1のハウジング構成要素及び第2のハウジング構成要素を含むセル・ハウジング30を含む。例証のために、第1のハウジング構成要素は、以下、缶34と呼び、第2のハウジング構成要素は、以下、カバー36と呼ぶ。缶34及びカバー36は、両方とも導電性材料で作製されるが、ガスケット38によって互いから電気的に絶縁される(図8を参照されたい)。缶34は、セル20の外部正接点端子として働き、カバー36は、外部負接点端子として働く。以下にさらに説明するように、セル20はまた、気体消費電極(例えば、正の空気電極、すなわちカソード)とすることができる第1の電極40、負電極(すなわち、アノード)とすることができる第2の電極42、及び第1の電極と第2の電極との間に配置されたセパレータ44(図8を参照されたい)をさらに含む。第1の電極40は、缶34に電気的に結合されることが好ましく、第2の電極42は、カバー36に電気的に結合されることが好ましい。
【0031】
缶34は、空気が気体消費電極40に到達するためにセル・ハウジング30の内部へと通ることができるように、複数の空気侵入ポート32が設けられる底面35を含む(図8を参照されたい)。
【0032】
図1−図3に示す実施形態においては、空気調節システム50は、缶34の底面35の外面に固定される。空気調節システム50をセル20の外面に取り付けることができる特定の方法の例は、以下でさらに説明される。さらに、空気調節システム50が気体消費セル20の内部に組み込まれる更に別の実施形態が説明される。
【0033】
この特定的な実施形態による空気調節システム50は、複数のアパーチャ64(空気侵入ポート32に対応し得る)を有する第1のプレート62(缶34の底面35に対応し得る)と、サイズ、形状、数、及び位置が第1のプレート62に形成されたアパーチャ64に対応する複数のアパーチャ68を含む可動の第2のプレート66とを含むバルブ60を含むことができる。アパーチャ64及び68のサイズ、形状、数、及び位置は、気体消費電極に与えられる空気の望ましい容積及び分布をもたらすために最適にされることが好ましい。アパーチャ64のサイズ、形状、数及び相対的位置は、アパーチャ68のサイズ、形状、数及び相対的位置と同じである必要はない。例えば、アパーチャ64のサイズがアパーチャ68と僅かに異なる場合には、プレート62及び66を通る最大の全開放面積を達成にするのにアパーチャ64及び68の正確な位置合わせは必ずしも必要ではない。
【0034】
空気調節システム50は、第2のプレート66が配置される開口部74を備えた環状本体部分72を有するシャーシ70をさらに含むことができる。開口部74は、好ましくは、プレート66が最も長い寸法と平行な軸線に沿って直線状に摺動することができるように、プレート66の短い方の辺に余分な空間を設けながら、プレート66の細長い側縁に接触するような形状及びサイズにされる。従って、図5A及び図5Bに示すように、第2のプレート66のアパーチャ68は、第1のプレート62のアパーチャ64と位置合わせするように及びそれから外れるように移動することができ、それによってバルブ60を開閉することができる。以下にさらに説明するように、シャーシは、第2のプレート66を案内し、場合によっては第1のプレート62に隣接して保持するように構成されることが好ましい。
【0035】
図5A及び図5Bに示すように、流体層69を含む封止媒体をプレート62と66との間に配置する。封止媒体はまた、流体層69を長期間プレート62と66との間に保持するために、プレート62及び66の界面の少なくとも1つの少なくとも界面部分を覆うフィルム又はコーティングの層も含む。以下に説明される他のバルブの実施形態は、図5A及び図5Bにおけるもののような封止媒体を含む。
【0036】
図3及び図7に示す実施形態においては、可動の第2のプレート66の上部及び底部を蓋100(以下にさらに説明する)及び缶34の底面35により拘束することができる。代替的な実施形態においては、バッテリ10は、蓋100と可動プレートとの間の空気の移動を容易にするように、図3及び図12のシャーシ70より背の高いシャーシを含む空気調節システムを有し、これにより、可動プレートの表面にわたって空気がより均一に分配され、プレートが開放位置で位置合わせされたときに、アパーチャを通る空気がより均一に流される。
【0037】
シャーシ70は、プレート66が摺動することができるレース又は溝を生成することができる、内向きに延びる棚を含む。棚の垂直位置は、表面35に対してプレート66を確実に保持し、プレート66及び62が閉鎖位置で位置合わせされたときに良好にシールするが、プレート66の望ましい摺動運動を妨げる程はきつくないようにするのに望ましい寸法のレースを生成するように選択することができる。棚は、シャーシ70の一体部分とすることができ、又は別々の構成要素とすることができる。例えば、棚は、シャーシ本体72’内に鋳造された平座金又はストリップ挿入体の形とすることができ、シャーシ本体72に取り付けられ別々の構成要素とすることができる。棚は、シャーシ本体72と同じ材料又は異なる材料で作製することができる。シャーシ本体72及び棚の材料は、望ましい強度及びレース内でのプレート66の滑らかな摺動の両方をもたらすように選択することができる。シャーシ本体72又は棚のどちらかが導電性材料で作製される場合には、アクチュエータの電気部品及び制御回路90からの絶縁が必要とされることがある。連続棚の代替物として、不連続の棚又は一連の突起部を用いることができる。
【0038】
棚及び/又はシャーシ本体72を改造して、プレート66の上に、開口部74にわたって延びるリブのような1つ又はそれ以上の付加的な構造を組み込み、プレート66の中心部分を平らに保持することもできる。代替的に、蓋100からの下向き突起部を用いてプレート66の中心部分を平らに保持することもできる。
【0039】
別の実施形態においては、シャーシ70は、蓋を保持する第2のレースを含むことができる。この第2のレースは、1つ又はそれ以上の付加的な棚によって形成することができる。この構成は、製造プロセスの別の段階で気体消費セルに付加される、蓋及び空気調節システムの構成要素の事前組立を容易にすることができる。固定プレート62が缶34の表面35ではない別の実施形態においては、シャーシ70は、第1の棚の下に、固定プレート62及び可動プレート66を保持するより大きなレースを形成する別の棚を含むことができる。
【0040】
棚は、開口部74の全周の周りに延びる連続棚とすることができ、又は周囲の一部にのみ沿って延びる不連続の棚とすることもできる。不連続の棚が適切に配置され、可動プレート66が十分に可撓性である場合、セル内の圧力が過度のものになった場合、可動プレート66の縁部は、不連続の棚の端部の間で外向きに撓み、バルブが部分的に開閉されるときに、これを通って気体が外部環境に逃げることができる通路を両方のプレート62とシャーシ・フレーム72との間に与えることができる。このような実施形態においては、プレート66は、ばねのような特性を有するのが好ましく、内部セルの圧力が十分に減少されると、プレート66は再び缶34の表面35の形状に適合するようになる。
【0041】
蓋が固定バルブ・プレートとして働き、可動プレートが蓋に隣接して配置された代替的な実施形態においては、シャーシは、可動プレートと缶底部の表面との間に空間を維持しながら可動プレートを蓋に対して保持して、缶のアパーチャに空気を均一に分配することを容易にするための棚を含むことができる。上に説明したように、この実施形態は、蓋を保持する第2のレースをシャーシ内に含むこともできる。
【0042】
空気調節システムは、以下に説明するように、気体減極セルの電圧に応じて作動させることができ、又は使用者が作動させることができ、或いは方法の組み合わせを用いることができる。例えば、装置によって給電される装置の使用者が装置のスイッチをオン位置にすると、バルブは、機械的作用により最初に開放され、使用者が装置のスイッチをオフ位置にすると、バルブは、機械的作用により最初に閉鎖され得る。装置のスイッチがオン位置のままである間、制御回路は、バルブの動作を制御することができる。別の例では、装置がオンにされると、セルからの電力が空気調節システムに印加され、最初にバルブを開放し、装置がオフにされると、バルブを作動して閉鎖することができる。
【0043】
アクチュエータは、バルブ60を作動させるために空気調節システム50の一部として設けられることが好ましい。アクチュエータは、気体消費セル20の電圧を感知し、検出したセル電圧に応じて制御信号を生成する制御回路90を含むことができる。回路90は、好ましくはシャーシ70の表面上に実装される特定用途向け集積回路(ASIC)とすることができる。以下にさらに説明するように、シャーシ70の本体72は、トレースをシャーシの表面上に印刷することができるように非導電性材料で作製されることが好ましい。従って、シャーシ70は、プリント回路基板とすることができる。シャーシは、鋳造又は成形することができ、電気接続の殆ど又は全てを圧力接点とし、アセンブリの精巧化を最小にすることができる。しかしながら、シャーシが、何らかの機械加工及び何らかの電気接続を必要とし、かつ、何らかのはんだ付け又は溶接を必要とすることがある。シャーシ材料の選択は、バルブを収容するフレームとして、電子部品のためのプリント回路基板として、及びセルへの取り付けの能力/適合性のために、その多機能用途との適合性に基づいて行うことができる。制御回路90を装着するために、シャーシの層状構成内及び/又はその上に戦略的な陥凹部を設けることができる。これにより、セルとの組み立てを容易にするために、あらゆる装着部品をシャーシの表面と同一平面上に維持することが可能になる。さらに、金属蓋100又は缶34に押し付けられたときに短絡しないように、プリント回路のトレースを非導電性材料で被覆することも望ましい。代替的に、制御回路及びアクチュエータの1つ又はそれ以上の構成要素の全て又は一部分を収容するために、鋳造又は機械加工等により、シャーシ内に1つ又はそれ以上の凹部を設けることもできる。以下に説明するように、これらの凹部は、構成要素をシャーシ上の異なる位置に位置決めすること、及び、シャーシ・フレームを超えて延びる構成要素を固定することを可能にするのに有用であり得る。
【0044】
電子部品のためのプラットフォームとして、シャーシ70の基材は、既存のPCB材料であることが望ましい。最も一般的な基材は、エポキシ樹脂及びガラス繊維強化材を含有する。シャーシ70は、電子回路構成要素を統合及び保護し、かつ、平坦な表面を缶34の底面35に平行に維持するために、層状構成のものとすることが望ましい場合がある。
【0045】
図3及び図4に示す実施形態においては、アクチュエータは、特に第1のSMAワイヤ82a及び第2のSMAワイヤ82bを含む複数の形状記憶合金(SMA)構成要素をさらに含む。SMAワイヤは、シャーシ70の両端部に固定され、制御回路90から延びるトレースに電気的に結合される。SMAワイヤ82a及び82bに電流を通す制御信号を与えることにより、制御回路90は、SMAワイヤを加熱させることができ、それによりSMAワイヤは特定の長さまで拡張又は収縮する。これによって、次に、SMAワイヤ82a及び82bは第2のプレート66を一方向又は反対の方向に引っ張り、従って、プレート66が開放位置又は閉鎖位置に摺動して出入りし、流体(すなわち、空気)がセル・ハウジング30の内部に選択的に通ることを可能にする。
【0046】
セル20の正端子及び負端子を接続するために、シャーシ70上に2つの接点端子92及び94が設けられる。接点端子92及び94は、シャーシ70のいずれの表面上にも設けることができ、シャーシ70の外側に向いた縁部表面上に、接点端子の1つ、特に端子94を設け、それを、セル20のカバー36に後で接続することができるようにバッテリ・アセンブリの外部に露出させることができる。一方、接点端子92は、蓋100の導電性部分と電気的に接触するように圧入された内面上、又は缶34の底面35と電気的に接触する反対側の表面上のいずれかに設けることが最良であり得る。接点端子94から、缶34の側壁の外側の周りにカバー37まで延びる導体110等により、セル20の缶34及びカバー36に対して接点端子92及び94の電気的接続をなすことができる。導体110は、セル・ハウジング30と導体箔との間の短絡を防ぐ2つの絶縁層間に配置された箔ストリップを含むタブとすることができる。
【0047】
図3に示すように、空気調節システム50は、シャーシ70を覆って随意的にその周りに延び、空気調節システム50を保護し、遮蔽する蓋又はカバー100をさらに含むことができる。蓋100は、セル20内への空気の選択的な通過のための、空気が外部からバルブ60に通るのを可能にする1つ又はそれ以上の穴102を含むことが好ましい。上述のように、蓋100は、第1のプレート62として働くことができる。
【0048】
好ましくは、バルブ60は、セル20が使用中であることを示す電流の印加時には開放状態であり、セルが使用中でないことを示す電流の非印加時には閉鎖される。SMAワイヤ82a及び82bは、第2のバルブ・プレート66を引っ張るが押さないことが好ましい。従って、図3及び図12において、第1のSMAワイヤ82aは、バルブを引っ張って開放し、第2のSMAワイヤ82bは、バルブを引っ張って閉鎖する。1つ又はそれ以上のワイヤ82aを用いてバルブ・プレート66を一方向に引っ張り、1つ又はそれ以上の他方のワイヤ82cを用いてプレートを反対方向に引っ張る。SMAワイヤ82をバルブ・プレート66の中心点の周りに対称に配置して同等の力を与えて、プレート66がシャーシ70内で結合しないようにすることができる。一般的に、SMAワイヤに印加される電流がセルから供給されるときには、セル容量を不必要に用いないように、電流は、アクチュエータの移動の開始のためだけに印加し、アクチュエータが固定状態にある間は印加しないようにすることが有利であり得る。SMAワイヤは、プレート66が移動する方向と平行に(図3におけるように)又はプレート66が移動する方向に対して垂直に(図5を参照されたい)延びるように装着することができる。
【0049】
SMAワイヤは、従来の形状金属合金で作製することができる。形状記憶合金は、ある温度で変形することができるが、加熱又は冷却されると、以前の形状に戻る合金である。この特性は、マルテンサイト相とオーステナイト相との間の固相変形から生じる。好ましい形状記憶合金は、2方向の形状記憶を有する、すなわち加熱時及び冷却時の両方において変形が可逆的である。形状記憶合金の例には、ニッケル−チタン、ニッケル−チタン−銅、銅−亜鉛−アルミニウム、及び銅−アルミニウム−ニッケル合金が含まれ、ニッケル−チタン及びニッケル−チタン−銅が好ましい。ニッケル−チタン−銅(例えば、約5−10重量パーセントの銅を有する)の使用は、耐疲労性があるために、多数回作動されることがあるアクチュエータには有利であり得る。ニッケル−チタン及び他の形状記憶合金の製造業者には、Specialty Metals、Shaped Memory Alloy Division」(米国ニューヨーク州New Hartford)、Memry Corporation(米国コネチカット州Bethel)、及びDynalloy,Inc.(米国カリフォルニア州Mesa)が含まれる。
【0050】
シャーシ70が、シャーシ本体72の上面に形成された制御回路90及び回路トレースを有するように示されている。さらに、SMAワイヤ82a及び82bは、回路トレースと電気的に接触した状態でシャーシ70の上面に取り付けられる。シャーシ70は、シャーシ70上に設けられる構成要素を封入して保護するように、制御回路90及び回路トレースを覆って形成されるオーバーモールド本体300(図5)を有することができる。従って、オーバーモールド本体300は、シャーシ70の一部として働く。オーバーモールド本体300は、非導電性エポキシ又は他のオーバーモールド材料を含むことができる。さらに、オーバーモールド本体300は、可動プレート66の上の開口部74にわたって延びる一体形成されたリブ302を含むことができる。
【0051】
図5に示す実施形態においては、空気調節システム50において用いられるアクチュエータ・ピン304が示されている。ピン304は、SMAワイヤ82aが部分306aに係合し、SMAワイヤ82bが部分306bに係合するように、ほぼ矩形のピン304の残りの上に隆起された第1の部分306a及び第2の部分306bを含むように示されている。部分306a及び306bは、図示のような直立部材を含むことができる。代替的に、部分306a及び306bは、ピン又は他の構造304内に形成されたスロットを含むことができる。従って、単一又は複数のアクチュエータ係合構造を用いて、SMAワイヤ82a及び82bが、可動プレート66をいずれかの方向に作動させ、バルブを開閉することを可能にする。
【0052】
図6は、本発明の様々な実施形態において用いることができるバルブ60の別の実施形態を示す。バルブ60は、複数のアパーチャ64を含む第1のプレート62を含む。プレート62は、シャーシ70に対して固定状態で保持される別々のプレートとしてもよく、又は、セル・ハウジング30の缶又はカバーの一部分としてもよい。プレート62は、磁性又は非磁性とすることができる金属で作製することができる。バルブ60は、数、サイズ、形状、及び位置が第1のプレート62のアパーチャ64に対応する複数のアパーチャ68を含む第2のプレート66をさらに含む。プレート66は、磁性金属又は非磁性金属とすることができる。上述の実施形態と同様に、シャーシ70は、非導電性材料で作製されることが好ましく、プレート66を受けるために中心開口部74を備えた環状本体72を含む。開口部74は、プレート66がプレート62に対して直線的に摺動するのを可能にするように、一方向がプレート66より僅かに大きくなるように構成され、アパーチャ64及び68を位置合わせするように及びそれから外れるように移動させて、バルブを開閉することができる。示される実装において、図6は、レバー・アーム84がアクチュエータ80の一部として用いられる限り、上述された実装とは異なる。レバー・アーム84は、レバー・アーム84をシャーシ70にピボット回転可能に固定することができるように、シャーシ70内に形成されたアパーチャ又はスロット又は凹部78に受けられるピボット・ピン86を含む。このことは、例えば、ピボット・ピン86を凹部78内に捕捉するが依然としてレバー・アーム84が凹部78内でピボット回転することを可能にするように、凹部78を拡大及び再成形して、ピボット・ピン86の周りに適合させ、かつ、ピボット・ピン86とレバー・アーム84の本体との間のネック領域内に部分的に延びるようにすることによって実行することができる。凹部78の底部の棚の穴に受けられるピボット・ピン86からの下向き突起部のような、ピボット・ピン86をシャーシに固定する他の手段を用いることができる。アクチュエータ・ピン88は、これを第2のプレート66内に形成された穴67に受けることができるように、レバー・アーム84の本体から下向きに延びることが好ましい。これによってレバー・アーム84は、プレート66に係合し、従って、第1のプレート62に対して第2のプレート66を摺動させることが可能になる。この特定の構成においては、1対のSMAワイヤ82a及び82bは、取付点89を通じてレバー・アーム84の上面に取り付けられる。ワイヤ82a及び82bの他端は、シャーシ70に取り付けることができる。ワイヤ82a及び82bは、例えば、凹部78と類似した、シャーシの凹部に固定することができる。これらは、接着剤を用いて、ピンを用いて、又は拡大ヘッドを制限された開口部を有する凹部に嵌め込むことによってなど、いずれかの適切な方法で固定することができる。代替的に、レバー・アーム84は、可撓性ヒンジのように機能する狭い部分を有するように、シャーシ70と同じ材料で作製することができ、シャーシ70の一部として一体形成することができる。
【0053】
SMAワイヤは、第2のセル電圧に応じてSMAワイヤ82a及び82bに選択的に電流を印加する制御回路(図6には示されていない)に電気的に結合される。このように、SMAワイヤ82a及び82bは、2つの対向する方向のいずれかにレバー・アームを引っ張り、これにより、レバー・アーム84が、第2のプレート66を第1のプレート62に対して摺動させることができる。この場合、シャーシ70は、プレート62に対してプレート66を案内するための指針を示しながら、レバー・アーム84及びSMAワイヤ82の端部のピボット点のための取付位置として働く。SMAワイヤ及びレバーの他の構成を用いて、空気調節システム内のバルブを作動させることができ、SMAワイヤは、任意の適切な方法で空気調節システムの構成要素に接続することができる。
【0054】
制御回路を用いて、バルブを開放又は閉鎖位置に移動させるのに必要な時にだけ、SMAワイヤを通る電流の流れを制限する実施形態においては、SMAワイヤは、電流が停止された後に、そのオリジナルの長さに戻る(例えば、伸長する)ことができる。これが起こると、SMAワイヤは、プレートを所望の位置に保持することができず、例えば、該プレートが部分的に開放された位置又は部分的に閉鎖された位置に摺動することがある。これは、摺動プレートを別の位置に移動させるための対向するSMAワイヤが存在するときに特に当て嵌まり、電流の中止に続いて作動されたSMAが伸長するときに、作動されていない対向するSMAからの弾性張力が摺動バルブを引っ張ることができる。このような状況では、摺動プレートは、その位置から意図的に移動されるまで、望ましい位置に保持することができる。摺動プレートを望ましい位置に保持する手段の例は、ラッチ機構である。いずれの適切な機構も用いることもできる。一実施形態では、ばね付勢戻り止めが、摺動プレートの表面からの突起部又はその凹部と協働することができる。ばね力は、プレートが意図せず摺動しないように保持するのに十分であるが、対向するSMAワイヤがプレートを別の所望の位置に摺動させる作用に容易に克服されるのに十分なほど弱くなるように選択することができる。
【0055】
別の実施形態においては、摺動プレートは、摺動プレートと固定プレートとして機能する別のセル又は空気調節システム構成要素との間の摩擦により意図せずに摺動しないように保持される。プレートと他の構成要素との間の摩擦は、意図せずに摺動するのを防止するのに十分であるが、対向するSMAの作用により別の位置に効率的に移動するのを妨げるほどは大きくない。摩擦は、可動プレート及び他の構成要素の材料の選択、可動プレート及び他の構成要素の一方又は両方に塗布されるフィルム又はコーティング、プレートと他の構成要素との間に用いられる封止流体のタイプ、或いは隣接する表面の一方又は両方のテキスチャ加工により制御することができる。
【0056】
空気調節システム50は、以下に説明される様々な技術を用いてセル20の外面に固定することができる。図7に示すように、蓋100は、スタンドオフ104を缶34の底部35に取り付けることができるように、該蓋100の内面から下向きに延び、かつ、その後シャーシ70上の対応する位置の穴75を通過する複数のスタンドオフ104を有するように構成することができる。図8において、蓋100がプラスチックで形成される構成が示される。この場合には、スタンドオフ104は、超音波により缶34の底面に溶接することができる。この場合、蓋100と缶34との間には電気的接続は存在しない。別の構成においては、スタンドオフ104は、打ち抜き加工等によって形成することができる金属蓋100内の陥凹部/突起部106として設けられる。この場合、金属蓋100は、缶34の底面35に抵抗溶接又はレーザ溶接することができる。さらに別の構成においては、蓋100を缶34に溶接する働きをするシャーシ70の穴75を通ってビア105が設けられる。この溶接では、蓋100とセル20の間に電気的接続も与えられる。
【0057】
金属蓋100を缶34に固定するために、シャーシ70の穴75に与えられる導電性エポキシ107、接着剤、接着剤とラベルの組み合わせ、缶34の底面に鋳造された1つ又はそれ以上の溝にシャーシを圧入すること、接着剤と組み合わせたシャーシを圧入すること、一番外側の缶が蓋100を置換できる場合に第2の缶内に缶34を圧着すること、層状シャーシをはんだ付け又は溶接すること、又は空気調節システム50をエポキシに封入することによる等の他の技術を用いることができる。
【0058】
アクチュエータ80の好ましい構成要素としてSMAワイヤの使用を上記に説明したが、人工筋肉に関連した線状電極活性ポリマー及び屈曲電気活性ポリマーのような他の構成要素又は材料を用いることもできる。このような材料では、より簡単な設計、簡単化された電子部品、及び電圧への比例応答を含む潜在的な利点が得られる。
【0059】
別の考慮事項は、バッテリの初期活性化に関するものである。バッテリは、開放位置のバルブと、従来のボタン空気セルと類似したタブで保護された穴102とを用いて構成することができる。タブの除去後に空気に触れると、セルが活性化し、バルブの電子制御が開始され、バッテリの貯蔵寿命が最大化される。代替的に、バッテリは、機能する空気調節システムを有するように構成することができる。これによって消費者がバッテリを直ちに使用できるようになるが、高湿度環境での湿気進入及び乾燥環境で湿気が出ていくのを防止するために、倉庫、店舗の棚等において適切な包装及び保存条件が必要である場合もある。
【0060】
上述した構成においては、缶34は、バルブ60の固定プレート62として働くことができる。しかしながら、缶底部が穴パターンを維持することができるがバルブ・アセンブリの一体部分ではなく空気拡散器のように働くことができるように、缶34を用いるのではなく、別個の固定プレート62を設けることが望ましいこともある。さらに、缶34が膨らむか、撓むか、場合によっては皺が寄った場合に、缶34がバルブ60の作動を中断することにならないように、固定プレート62を缶底部から離間配置することができる。缶34は、より強い材料、より厚い厚さ、又は異なる形状(例えば、底部内の隆起部)で作製できることに留意すべきである。別個の固定プレート62を用いる付加的な利点は、バルブ60を完全に事前組み立てすることができ、従って、潤滑流体層69の安定性が大きくなることである。しかしながら、このことは、バッテリが厚くなるという代償を伴うことがある。
【0061】
図面には示されないが、セル・ハウジング30の外面にラベルを設けることができる。このようなラベルは、導体タブ110及び空気調節システム50とセル20との間の界面をさらに覆い、かつ、缶34とカバー36との間の界面を覆うように、セルの周囲の周りに延びることができる。カバー36及び缶34及び/又は導電性蓋100の十分な部分を露出したままにし、バッテリの外側上に電気接点端子をもたらすことができる。
【0062】
図1−図3に示す特定のセル構成は、角柱型のセル設計である。この構成では、このセルの相対的なサイズと矩形の性質が、従来のボタン型空気セルとは異なっている。従って、セル20内に、従来の空気セルに現在用いられているものと類似した空気電極、アノード、セパレータ、及び缶/カバー材料を用いることができる。しかしながら、当業者であれば、セル20が、図面に示されるもののような特定の形状、サイズ、又は相対的寸法を有する必要がないことを理解すべきである。
【0063】
図9−図12は、本発明の別の実施形態を示す。この実施形態によると、異なるタイプのバルブ170が、内部に装着された空気調節システム内に用いられる。バルブ170は、複数のアパーチャ174を有するバルブ・プレート172を含む。しかしながら、これらのアパーチャを、缶34の底部の空気侵入ポートに対応するようなサイズ、形状及び配置にする必要はない。これは、バルブ・プレート172が、缶34の底面35との相対的に平行な関係(弁閉鎖位置)と、図9に示されるような撓み/屈曲位置(弁開放位置)との間で移動するためである。この構成においては、プレート172のアパーチャ174は、プレート172が缶34の底部35と平行なときに空気がセル内に通ることができないように、空気侵入ポート32のいずれとも整列せず又は重なりもしない。プレート172が缶34の内面に十分に押し付けられ、セルを閉鎖位置に封止することを確実にするために、ガスケット38が、プレート172の周縁部を缶34に押し付ける。バルブ170が閉鎖されるときに封止媒体がもたらすシールは、バルブ・プレート172が開放位置に移動したときに破損し、その結果、缶34の空気侵入ポート32とプレート172のアパーチャ174との間の空気の流れのために、封止媒体の流体により妨げられない通路が形成される。
【0064】
一端のみがガスケット38の下に固定され、ラッチ180が缶底部34内に形成されたバルブ・プレート172を用いる代替的な構成が、図10及び図11に示される。図10は、開放位置のバルブを示しており、図11は、閉鎖位置のバルブを示している。図12は、プレート172が持ち上がる、及び/又は屈曲して開放位置になるように、SMAアクチュエータ175がプレート172に固定されたプレート172の斜視図を示す。開放位置のプレート172の移動は、空気電極(図示せず)により制限されることがある。可撓性プレート172を有する構成の一実施形態においては、図10及び図11に示されるように、ガスケット38を通してカバー36と接点端子94との間を電気的に接続するために、導電ピン157を用いることができる。
【0065】
図13−図17を参照すると、2つの実施形態による、バッテリ・セル20と、セル20と外部環境との間を均圧にするために提供されるシャーシ本体300を通る空気通路を有する空気調節システム50とを有する気体消費バッテリ10が示される。示される実施形態においては、シャーシは、一般的に、中心開口部332及び内向きに延びる棚354を有するオーバーモールド本体300により示される。空気セルのような気体消費バッテリ・セル20は、シャーシ300の上面上に接続される。空気侵入ポート64を備えた固定プレート62が、シャーシ300の底面に接続され、ポート68を備えた可動プレート66が、内向きに延びる棚354の下部壁と固定プレート62との間に配置され、プレート66は、プレート62に対して移動することができる。
【0066】
図13−図16に示される実施形態においては、オーバーモールド・シャーシ本体300が、一般的に、流入口350とも呼ばれ、概ねセル20と可動プレート66の間に配置され、開口部332及びセル20と流体連通する第1のポートを有するように示される。さらに、シャーシ本体300は、流出口352とも呼ばれ、外部環境に至るオーバーモールド材料の外部に設けられる第2のポートも有する。オーバーモールド・シャーシ300は、無孔性外側層360及び空気通路356をもたらす多孔性内部容積を有するように製造される。無孔性外側層360は、一般的に、空気非透過性であり、一例によれば、エポキシを含むことができる。多孔性内部容積により、流入口350から流出口352まで延びる均圧空気流通路356が設けられる。多孔性内部容積は、微孔性ポリテトラフルオロエチレン材料、又は通路356を通る低拡散速度で制限された空気が流れるのを可能にする不織多孔性材料のような空気透過性材料を含むことができる。代替的に又はこれに加えて、空気通路356は、低拡散速度で空気が流れるのを可能にする十分に制限的な通路をもたらす空の空隙容積を含むことができる。有利なことに、空気通路356は、空気が流入口350から流出口352までゆっくりと通過するのを可能にするが、空気又は気体が、流入口350と流出口352との間でいずれかの方向に通過し、セル20と外部周囲環境の間を均圧にすることを可能にする。
【0067】
空気通路356の流入口350は、バッテリ・セル20とバルブ・プレート66及び62との間の開放容積と流体連通している。バッテリ・セル20内の気体と外部環境内の気体との間に存在する圧力差により、気体が、空気通路356を通って移動することが可能になる。バッテリ・セル20が気体を生成するとき、気体は、制限された空気通路356を通って外部環境に移動し、バルブ・プレート66とバルブ・プレート62との間のシールを損なわないようにすることができる。これに反して、気体は、流出口352から流入口350まで流れることができるが、一般的に、空気がバッテリ・セル20に自由に供給されず、従って、一般的にバルブが閉鎖されたときに、セル20が高速で放電しないように制限される。
【0068】
一実施形態によると、空気通路356は、水分獲得又は損失のために室温で1年毎にセル容量の10パーセント以下の損失をもたらす空気拡散速度を有する。空気通路356の多孔性容積は、膜を含むことができ、この膜は、一般的に気体に対して多孔性であり、蛇行性の又は制限された空気流路をもたらすが、空気の制限されていない流れがセル20内に自由に流れることはできないことを理解するべきである。一実施形態によると、多孔性容積356は、図16に示すようなバッフル358により与えられるもののような蛇行性空気通路356を含むことができる。バッフル358は、本質的に、オーバーモールド・シャーシ300を通る空気流路356の有効長を増大させ、従って、正味有効空気流路長を増大させる。他の実施形態によると、蛇行性空気流路は、一般的に多孔性であり、過剰な気体をセル20から外部環境に逃がすと同時に、セル20に入る空気の量を最小にすることができるハチの巣パターンを用いることができる。
【0069】
図17に示される実施形態においては、オーバーモールド・シャーシ本体300の上面は、矩形状の内側開口部332から開口部332の周りに約360°延び、シャーシ300の外面に至るほぼ蛇行形状のスロット334を有する。スロット334に収まる大きさにされ、それに嵌合するように適合された一般的な構成を有する中空管336が、スロット334内に配置される。管336は、シャーシ300の内側開口部332及びセル20と流体連通する一方の端部に、流入口338とも呼ばれる第1のポートを有し、外部環境と流体連通する他方の端部に流出口340とも呼ばれる第2のポートを有する。固定プレート62は、シャーシ300の底面上に接続されるように示されている。可動プレート66は、棚354の下に配置され、かつ、固定プレート62に隣接してそれと封止関係にあるので、プレート66は、バルブを開閉するために、プレート62に対して移動可能である。
【0070】
シャーシ300内に設けられた管336は、流入口338と流出口340の間に延びる空気通路を提供し、バッテリ・セル20から放出される気体が外部環境まで管336の空気通路を通過することを可能にする。一実施形態によると、流入口338は、バッテリ・セル20と固定及び可動プレート62及び66との間の開口部332の容積内の所定位置に配置される。従って、管336の伸長した長さ及び小さな直径により、気体が十分に低い拡散速度でセル20から漏出するのを可能すると同時に、低拡散速度のためにセル20への空気進入を十分に制限する、蛇行性空気通路が提供される。一実施形態においては、管336の内径は0.5mm未満に十分に制限され、有効長は少なくとも200mmである。別の実施形態によると、管336を用いる代わりに、スロット334を覆って空気通路として用いることができる。
【0071】
図13−図17の説明された実施形態においては、バッテリ・セル20内の気体とセル20が露出される周囲外部環境内の気体との間に存在する圧力差が、破損をもたらし、それによって後にシール障壁が損傷することがある。従って、バルブ・プレート62と66との間の意図された一次シール障壁が損なわれることがあり、そのため場合によっては、水、酸素、水素、及び二酸化炭素のような気体が制御されずに出入りすることが可能性になり、そのことはバッテリの貯蔵寿命の容認できないほどの損失をもたらすことがある。シャーシ300に設けられた均圧空気通路336又は356により、空気及び他の気体が、空気通路を通って移動し、出入りすることが可能になる。適切な長さの適切なサイズの穴を設けることにより、空気通路は、セル20への酸素及び二酸化炭素の過剰な進入を防ぎながら、金属−空気セル内で生成された水素のような気体の放出を可能にする。
【0072】
図18及び図19を参照すると、空気調節システム50が、一般的に、回転可能なプレート・バルブ・アセンブリを有するように示される。この実施形態においては、レバー484は、一般的にテーパ状のスロット開口部468を有する回転可能プレート466に接続するように示されるが、他の形状を用いることもできる。同様に、空気がバッテリ・セル(図示せず)に浸入するのを可能にする開放バルブ位置で開口部468と位置合わせすることができるスロット開口部464(テーパ状の又は他の形状を有する)を含む固定プレート462が、回転可能プレート466の下にある。プレート462が固定された状態で、回転可能プレート466は、時計回り及び反時計回りに回転してバルブを開閉する。
【0073】
一般的に、シャーシ470のようなフレーム・プレート内に配置されるピボット回転腰部486を有するレバー484が示される。レバー腰部486は、ほぼ丸い形状にすることができは、弾性アーム490によりフレーム・プレート470内に係合される。アーム490は、丸い腰部486を所定位置に保持して、アクチュエータ・ピン488の位置の変動の程度を小さくし、これにより開口部464及び468の位置合わせの変動を小さくするのを助けることができる。腰部486は、SMAワイヤ82a及び82bがもたらす作動に応じて、レバー484が、図18に示されるような1つの肩部492がプレート470と接触する反時計回り位置から、図19に示されるような他の肩部494がプレート470に接触する位置に回転することを可能にする。肩部492及び494は、移動停止端部の役割をし、別の実施形態では省略することができる。SMAワイヤ82a及び82bは、1対の圧着部496及び498によりフレーム・プレート470に接続されるように示され、さらに、別の圧着部499を介してレバー484内に共に接続される。圧着部499は、電気接地経路を含み得ること、又は、代替的な導電経路を通して接地経路をもたらし得ることを理解すべきである。
【0074】
作動において、図18及び図19に示される実施形態の空気調節システム50は、SMAワイヤ82a又は82bの1つに通電してレバー484を回転させ、開放バルブ位置と閉鎖バルブ位置との間でプレート466を移動させることによって作動される。スロット464及び468は、腰部486からの半径が増すにつれてストロークが増大した後に、SMAワイヤ82a及び82bからの作動のギアを提供することを理解すべきである。
【0075】
図18及び図19に示される回転バルブは、固定プレートに対して可動プレートを回転させる。他の実施形態によると、代替的に、プレートの線形の作動を達成することができること、又は固定プレートに対する可動プレートの線形運動及び回転運動の組み合わせを達成することができることを理解すべきである。さらに、バルブが、可動プレート及び固定プレートに関して説明されたが、バルブは1つ又は2つの可動プレートを含むことができ、1つのプレートが他のプレートに対して移動してバルブを開閉することができることを理解すべきである。
【0076】
一実施形態によれば、図20−図23を参照すると、空気調節システム50が、固定バルブ・プレート62と可動バルブ・プレート66との間に配置された丸い部材500を含む封止媒体502を有するように示される。この実施形態においては、空気調節システム50は、環状本体部分72を有するシャーシ70と、内向きに延びる棚71と、可動バルブ・プレート66が配置される開口部74とを含むように示される。内向きに延びる棚71は、プレート66がその最も長い寸法と平行な軸線に沿って直線状に摺動できるように、該プレート66の短い方の辺に余分な空間を設けながら、可動バルブ・プレート66の周囲の細長い上側縁に接触するような形状及びサイズにされる。固定バルブ・プレート62は、シャーシ70の底部側表面に接続される。固定バルブ・プレート62をシャーシ70の底面に接着、締結、又は他の方法で接続することができる。
【0077】
可動バルブ・プレート66は、バルブが開放位置にあるとき、固定プレート62の複数のアパーチャ64と位置合わせされる複数のアパーチャ68を有する。プレート66は、開放バルブ位置と閉鎖バルブ位置との間で移動するように、シャーシ70の開口部74内で摺動可能である。閉鎖バルブ位置にあるときには、空気がアパーチャ64及び68を通って、気体消費バッテリ・セルに到達するのを防止するように、アパーチャ68及び64は位置合わせされない。空気(例えば、酸素)を受けるために、図14及び図15に示されるシャーシ300上のバッテリ・セル20の、バルブと流体連通しているバッテリ・セル20の1つ又はそれ以上の空気侵入ポートとの組み立てと同様に、気体消費バッテリ・セルをシャーシ70の上面に取り付け得ることを理解すべきである。
【0078】
空気調節システム50は、可動バルブ・プレート66と固定バルブ・プレート62との間に配置された封止媒体502を含む。封止媒体502は、例示的な実施形態においては球状部材500として示され、説明される複数の丸い部材を含む。丸い部材は、ほぼ直線の又はテーパ状のシリンダのような他の形状を有することができる。球状部材500は、流体層69内に配置され、可動バルブ・プレート66が固定バルブ・プレート62に対してより容易に摺動するのを可能にする役目をする。従って、封止媒体502は、バルブ・プレートが、一実施形態によりSMA構成要素82a及び82bとして示されるアクチュエータによる力をあまり必要としない方法で互いに対して移動し、バルブを開閉するのを可能にする。さらに、球状部材500は、制御されたスタンドオフ高さを与え、可動プレート66と固定プレート62との間の最小分離距離を維持するように働く。
【0079】
流体層69内の流体は、バルブを通る空気の漏れを防ぐためのシールとしても、摩擦を減らすための潤滑剤としても働く。流体の使用は、他の方法で良好なシールをもたらすために、バルブ・プレート62及び66の複雑で高価な機械を必要とすることなく、バルブの密封特性が向上させることを理解すべきである。球状部材500により維持される制御された高さの間隙は、摺動プレート66と固定プレート62との間に一定の距離を与え、流体の漏出速度及び厚さの制御をさらに助ける。前の実施形態で説明されたように、封止媒体502はまた、長期間にわたって流体を保持し、かつ、流体層69をプレート62とプレート66との間に維持するために、プレート62及び66の一方又は両方の界面上に多孔性材料のフィルム又はコーティングも含む。
【0080】
封止媒体502が、固定バルブ・プレート62の上部に適用された状態で図20及び図21に示される。しかしながら、空気調節バルブの組み立て中、封止媒体502を、固定プレート62の上面、可動プレート66の底面、又は両方の面に適用してもよいことを理解すべきである。見られるように、球状部材500は、該球状部材500が一般的にバルブ・プレート62とバルブ・プレート66との間の界面領域の異なる領域内に存在するように、流体層69の全体にわたって分散される。球状部材500は、示されるように流体層69内にランダムに分散させてもよく、又は所望のパターンで配置してもよい。
【0081】
球状部材500は、流体中で及びバッテリが露出されることが予想されるタイプの環境において相対的に不活性であるいずれかの材料で作製することができる。適切な材料の例として、ポリエチレン及びポリプロピレンのようなプラスチック、ガラス、セラミック、ステンレス鋼のような金属が挙げられる。好ましい材料は、ポリプロピレンビーズ、セラミックビーズ、ガラスビーズ、及びステンレス鋼ビーズを含む。更に別の実施形態によると、他の材料を用いて摩擦減少媒体502の丸い部材500を形成できることを理解すべきである。最小量の材料でプレート62とプレート66との間の所望の距離をもたらすように、球状部材500のサイズは均一であることが好ましい。
【0082】
特に図22及び図23を参照すると、空気調節システム50のバルブ・プレート66及び62が、気体消費バッテリ・セルへの空気の侵入を可能にする図22の開放バルブ位置及びセルへの空気の侵入を防止する図23の閉鎖バルブ位置で示される。図22に見られるように、プレート66のアパーチャ68がプレート62のアパーチャ64と位置合わせされるように可動プレート66が開放位置に摺動により移動された場合、流体は、空気調節装置を通過できるようになる。封止媒体502は、流体層69内に配置された球状部材500で構成され、プレート62及び66の一方又は両方の界面上の材料(図示せず)のフィルム又はコーティングによって可動プレート66と固定プレート62との間に保持されている。流体の表面張力特性のために、流体はシールをもたらし、プレート上のフィルム又はコーティングは、流体を収容するのを助けるので、流体は2つのバルブ・プレート66と62との間に配置されたままであり、その結果、流体はアパーチャ68又は64を通って流れない。可動プレート66を図23に示されるような閉鎖位置に動かすことによって、アパーチャ68及び64はもはや互いに位置合わせされず、空気流がそこを通るのが防止される。可動プレート66が固定プレート62に対して移動するにもかかわらず、表面張力及びフィルム又はコーティングによる封じ込めのために、流体は、有効にアパーチャ68及び64から離れたままであり、代わりに、アパーチャ68及び64の周りに流れ、流体及び摩擦減少媒体の球状部材500がバルブ・プレート66及び62の非開放部分間に配置されたままである。従って、流体は、空気の漏れを防ぐためにプレート66とプレート62との間にシールを形成する。
【0083】
示される例示的な実施形態においては、特定的には球状部材500を含む封止媒体は、可動プレート66と固定プレート62との間の最小スタンドオフ距離をもたらす高さHを有する。球状部材500は、可動プレート66の移動中に転がる又は回転することがあり、かくして、摩擦を減少させるための、従って可動プレート66を作動させ移動させるのに必要とされる力を減少させるための転がり軸受として働く。その結果、可動バルブ・プレート66を作動させるのに必要とされるバッテリ・エネルギーがより少なくなる。球状部材500はまた、2つのバルブ・プレート間の最小スタンドオフ距離も提供する。球状部材500は、特にバルブを循環させたときに、プレート66とプレート62との間の間隙が連続的に減少するのを防止する。流体は、特に、封止媒体502に組み込まれた制御された高さを提供する球状部材500を用いる場合に潤滑特性をさらに高める。
【0084】
一実施形態によると、球状部材500は、1ミクロンから200ミクロンまでの範囲の直径を有する、微小球とも呼ばれる小さい球として形成される。より特定の実施形態においては、微小球は、約6−20ミクロンの直径を有する。一実施形態においては、潤滑流体内に配置された球状部材500の量は、流体の約1重量パーセントから10重量パーセントまでの範囲である。
【0085】
一例によると、固定バルブ・プレート62は、約20ミル(508ミクロン)の厚さを有する固定バルブ・プレート62と比べて、約10ミル(254ミクロン)の厚さを有する。この例においては、封止媒体502の球状部材500は、約1/3ミル(8.5ミクロン)の直径を有する。他のサイズの丸い部材502を、様々な厚さを有するバルブ・プレート間の封止媒体502に用い得ることを理解すべきである。
【0086】
封止媒体502に従って球状部材500をここに示すが、他の丸い部材500を用いて、摩擦の低減及びバルブ・プレート66と62との間のスタンドオフ距離を提供できることを理解すべきである。例えば、丸い部材500は、可動プレート66の固定プレート62に対する移動の方向に転がる又は回転するように配置されたシリンダを含むことができる。さらに、丸い部材500を成形された表面輪郭で配置することによって、丸い部材500をバルブ・プレート66及び62に対して所定位置に保持できることを理解すべきである。一実施形態によると、半円の形態の戻り止めを、固定プレート62の上面及び可動プレート66の底面のいずれか又は両方に組み込むことができる、戻り止めは、丸い部材500を受け、該丸い部材500をバルブ・プレートの1つに対する特定の位置に保持する。別な例によると、丸い部材500の1つ又はそれ以上の位置を維持するために、固定プレート62の上面及び可動プレート66の底面のいずれか又は両方に形成されるスロットとして、戻り止めを実装することができる。
【0087】
従って、有利なことに、丸い部材500を利用する封止媒体502は、可動プレート66と固定プレート62との間の摩擦を減少させ、可動プレート66を動かすためにアクチュエータに給電するのに、バッテリから要求するエネルギーがより少ない。さらに、丸い部材500は、向上したバルブ動作を達成するために適切な距離を維持することによって、バルブ・プレート62とバルブ・プレート66との間にスタンドオフ距離を与えて、向上した流体の潤滑及び密封特性をもたらす。これにより、丸い部材500を利用することによって、向上したエアマネージャ・バルブが実現される。
【0088】
空気が漏れることがある経路を生成することなく、流体を封止媒体内に適切に保持するために、毛管流ポロメータを用いて、以下に説明されるようなバブルポイント法により求められる0.03マイクロメートルから15マイクロメートルまでの平均細孔径を有する多孔性材料から、適切な流体封じ込め層を作製することができる。平均細孔径は、0.04マイクロメートルから15マイクロメートルまでであることが好ましい。平均細孔径は、少なくとも10マイクロメートルであることがより好ましい。平均細孔径が12マイクロメートル未満であることがより好ましい。
【0089】
多孔性ポリマー材料の透気度は、ガーレー透気度値が、後述される方法によるガーレー透気度試験機を用いて求められる3秒から500秒までであることが好ましい。
【0090】
流体封じ込め層内の材料と流体は相互作用するので、空気調節システムのプレートが水平でないようにバッテリが配向されたときに、流体は、空気調節システムのプレート間の界面内に保持される。この流体保持能力は、最大ウィッキング高さに関して定めることができる。最大ウィッキング高さは、プレートの最大界面寸法に等しいか又はこれより大きい。最大ウィキング高さを計算する方法のような、ウィッキング高さを求める方法は、以下に説明される。最大ウィッキング高さは、一定期間後のウィッキング高さの関数であるので、単に18時間などの比較的長い時間でウィッキング高さを測定することは便利である。好適な流体封じ込め層の材料は、18時間後に10mmから100mmまでのウィッキング高さを有することができる。18時間後のウィッキング高さは、11mmより高いことが好ましく、15mmより高いことがより好ましい。18時間後のウィッキング高さは61mm以下であることが好ましく、50mm以下であることがより好ましい。
【実施例】
【0091】
実施例1
試験装置を用いて、バルブの固定プレートと摺動プレートとの間のオイル層からなる封止媒体を有する摺動プレート・バルブの機能を評価した。この装置は、その開放端にわたってバルブが取り付けられた空の矩形状の缶を含んでいた。両方のプレートは、貫通するアパーチャ(穴)を有しており、プレートは、穴が位置合わせされていない閉鎖位置で組み立てられた。摺動プレートは、固定プレートより小さく、透明な材料で作製され、バルブの外側に取り付けられた。バルブに圧力バイアスをかけることを可能にするためにシリンジを装置に接続し、高温での試験を可能にするために電気発熱体を固定プレートに取り付けた。缶内の内圧は圧力計で測定することができ、固定プレートの温度は熱電対で求めることができ、オイル・メニスカスは顕微鏡で観察することができた。摺動プレートの全周囲の周り及び両方のプレートの穴の縁部にメニスカスが形成されるまでオイルを加えて、プレート間の界面を充填した。幾つかのタイプのオイルを試験した。
【0092】
様々な温度及び印加圧力でバルブを観察した。圧力バイアスが増大するにつれて、プレート間のオイル・シールの断続的な破れ(breach)が生じる。これは、透明な摺動プレートの周りで及びこれを通して観察される、オイルとプレートと間のメニスカスから明らかであり、メニスカスが移動して、固定プレートの1つ又はそれ以上の穴と摺動プレートの少なくとも1つの穴及び/又は縁部との間に開放経路が形成された。オイル粘度は、時間の経過だけでオイル・シールが破れることなく耐えることができる内圧に影響を与えるように見えた。時間が経つにつれて、メニスカスは、特に温度が高いほど(オイル粘度が低いほど)、固定プレート上で外向きに、摺動プレートの周囲から遠ざかる方向に移動し、より低い内圧でオイル・シールの破れをもたらすことが観察された。さらに、オイルとプレートとの間の表面張力(プレート面に対するオイル・シール・メニスカスの測定された接触角から求められる)が大きいほど、破れる前にオイル・シールが耐えることができた圧力は高かった。
【0093】
実施例2
改造された試験装置を用いて、さらなる試験を行った。改造された試験装置は、その開放端にわたって摺動プレート・バルブが取り付けられた空の矩形状の缶を含んでいた。バルブは、図18及び図19に示されるバルブと同様の、両方のプレート内に台形のスロットを有する回転バルブとした。回転バルブ・プレートは、バルブの外側に置いた。両方のプレートは、洋銀(NS106、硬質)で作製された。図18及び図19に示され、上述されたように、バルブはさらに、アクリル製フレーム・プレートに取り付けられたアクリル製レバー・アームと、2つのSMAアクチュエータとを含んでいた。
【0094】
バルブを閉鎖し、バルブ・プレート間の間隙を58乃至64μmにして、直径7μmのポリメチルメタクリレートビーズを1重量パーセント含むKRYTOX(登録商標)102グレード・オイル(透明で無色のフッ素化合成油)を、両方のプレートのスロットの周り及び回転プレートの周縁部にオイル・メニスカスが観察されるまで、プレート間の界面内に吸い込ませた。
【0095】
プレート間の界面の平面が水平位置になるように装置を置き、バルブを室温で168時間にわたって観察した。24時間後、オイル内にあるビーズの存在により確認されるように、オイルは、固定プレートの表面にわたって広がった。168時間で、オイル・メニスカスは、固定プレートのスロットの幾つかの縁部から引っ込んだ。これらの効果は、バルブの使用(回転プレートの回転)、バルブの内側にかかる内圧の存在、及び、バルブを水平以外の他の位置に方向付けることにより加速されることが予想された。この観察結果は、時間が経つにつれてプレート間のオイル層がプレート間の界面から流出して、もはやプレートの隣接面間に有効なシールをもたらさなくなる可能性があり、密封媒体の流体をプレート間の界面内に封じ込める手段が必要とされることを示した。
【0096】
実施例3
種々のフィルムを、密封媒体の流体をバルブ・プレート間に保持するその能力を評価するために選択した。選択された材料及び典型的な特性を表1にまとめる。厚さは、ASTM D−374に従って求めることができる。見掛け密度は、2.286cm(0.900インチ)×20.27cm(7.98インチ)の試料から、試料重量を5回の厚さ測定の平均に基づいた試料容積で割ることによって求めることができる。ガーレー透気度は、0.254cm(0.1インチ2)のオリフィスを備えたガーレー透気度試験機を用いて、30.99cm(12.2インチ)の水の圧力損失で2.5cm2の空気が試料を通過する時間として求めることができる。平均細孔径は、毛管流ポロメータ(米国ニューヨーク州Ithicaの、Porous Materials,Inc.,社によって製造された、型番CFP−1500−AEXMCなど)を用いて、アルコール・バブルポイント試験において試料を通過する最初の窒素気泡を生じるのに必要とされる圧力を測定し、この圧力に反比例する細孔半径を計算することによって、求めることができる。試料をバブルポイント試験機の固定具内にクランプし、イソプロピルアルコールを容器内に注ぎ入れて、アルコールの液面が試料と固定具の上部との間のほぼ中間になるようにし、試験機を窒素で加圧し、最初の気泡が試料から出てきたときの圧力計内の水銀の液面を記録する。細孔半径(r)は、次式
r=(43.4×COSシータ)/(3.39×P)
からマイクロメートル単位で計算され、ここでシータは、試料上でのアルコールの接触角であり、Pは、水銀のインチで表した圧力である。
【0097】
バルブが、プレート間の界面の平面が垂直位置になる方向に向けられている場合、密封媒体の流体をバルブ・プレート間の界面内に保持するためには、毛管圧は、プレート間の界面内に収容されている流体の容積に作用する静水圧を上回らなければならない。プレート間の多孔性材料の層により支持することができる流体柱の高さは、多孔性材料の多孔度、孔径、及びねじれの関数であり、これを等価な毛管圧に変換することができる。従って、多孔性材料が摺動プレート・バルブ内の垂直プレート間に封止流体を保持するのを補助するためには、流体は、多孔性材料の垂直ストリップでの吸い上げが可能でなければならない。
【0098】
吸上(ウィッキング)試験を用いて、封止流体が多孔性材料の垂直ストリップで吸い上げられる高さを時間の関数として求めることができ、吸い上げが大きい程、その多孔性材料はプレート間に流体を保持するのにより有効である。ウィッキング試験は、各試料のストリップを一端から垂直に吊るして、他端を流体内に浸漬し、流体が各試料上で吸い上げられた高さ(ウィッキング高さ)を定期的に計測し、その時間とウィッキング高さとを記録することによって行われた。流体内に浸漬された試料の端部を流体の表面下に固定して、試験中、ストリップをピンと張った状態に保持することができる、次式を用いて、試験された各試料について、最大ウィッキング高さと、細孔の幾何学的形状に関連した時定数とを計算することができ、
h/hmax+Ln[1−(h/hmax)]=−at
ここで、hは、時間tにおけるウィッキング高さであり、hmaxは、最大ウィッキング高さであり、aは、時定数である。
【0099】
表1
【0100】
(表1続き)
*試験において、1日を超える間、本質的に空気は試料を通過しなかった。
【0101】
KRYTOX(登録商標)102オイル及び表1の多数のフィルムを用いて、ウィッキング試験を行った。試験されたフィルムタイプの各々についての計算を含む結果を、表2にまとめる。
表2
【0102】
プレートの界面の平面が垂直位置にある場合に流体をバルブ・プレート間に保持するためには、hmax値は、少なくともバルブの最大界面寸法と同じくらいの大きさであることが好ましい。この試験は、試験された全ての微孔性フィルムが、KRYTOX(登録商標)102オイルをバルブ・プレート間に保持するのを補助することを示し、大きめのバルブのためにはGoodfellow FP301220 PTFEフィルムが最も有効であり得ることを示唆する。試験されたフィルムについての大きい時定数(表2における1/aの値)は、オイルがフィルムを通って移動するためにはかなりの時間が必要であることを示唆するので、フィルムは、バルブ内に流体封じ込め層としてのフィルムがない場合よりも実質的に長い時間にわたってオイルを保持するはずである。
【0103】
実施例4
上述したウィッキング試験を、封止流体及びフィルムの種々の組合せに対して行った。KRYTOX(登録商標)102汎用潤滑剤(ぺルフルオロポリエーテル)に加えて、Dow Corning 200(登録商標)20cSt流体(シリコーン・ベースの流体)、Dow Corning 705拡散ポンプ油(シリコーン・ベースの流体)、及びDow Corning 704拡散ポンプ油(シリコーン・ベースの流体)を含めた。これらの材料の特性を表3にまとめる。
表3
【0104】
ウィッキング高さhを種々の時間において測定し、結果を表4にまとめる。
【0105】
DeWaI IndustriesのD/W202材料(焼成PTFE)は、試験された流体を実質的に吸い上げなかった。バッテリのセパレータ材料として典型的に用いられる材料(例えば、Tonen SETELA(登録商標)ポリエチレンセパレータ、Kimberly Clark S3703クラフト紙セパレータ、及びCelgard#3501セパレータ材料)は、他のフィルムよりも流体を良く吸い上げる傾向にあった。一般に、Dow Corning 705(登録商標)オイル(シリコーン・ベースのオイル)は、試験された全てのフィルム、特にPTFEフィルムによる吸い上げが、他の流体よりも少ない傾向にあった。Dow Corning 704(登録商標)オイル(705(登録商標)オイルよりも低粘度のシリコーン・ベースのオイル)は、PTFEフィルムでは良く吸い上げられなかったが、他のフィルムのうちのいくつかのフィルムでは試験された他の流体と比べて比較的良好に吸い上げられた。表4のデータは、流体封じ込め層のためには流体と材料との間の相互作用を考慮することが望ましいことを示す。
【0106】
表4
【0107】
(表4続き)
【0108】
実施例5
実施例2に記載の試験装置内で、KRYTOX(登録商標)102を用いて、表1の2つの0.1016mm厚さのフィルム(EGC PlasticsのCD123 PTFE及びW.L.GoreのExcellerator PTFE)を試験した。缶内の相対湿度を測定するための容量型湿度センサ含むように試験装置をさらに改造し、バルブを通じての拡散による漏れを計算するために、別の容量型湿度センサを用いて、試験装置の外部の制御された湿度環境内の相対湿度を測定した(乾燥塩化リチウム塩を用いて維持され、13パーセントであった)。
【0109】
試験ごとに、フィルムのシートをバルブの固定プレートの形に切ってその上にかぶせ、固定プレート内の開口部に対応するスロットを、レーザを用いてフィルム内に切り抜いた。バルブは、固定プレート及びフィルム内の開口部が可動プレート内の開口部と位置あわせされていない、閉鎖位置で組み立てられた。室温で、フィルムの露出した表面にオイルを付与し、プレート缶のフィルム内に吸い込ませた。388時間にわたって、オイル・メニスカスを観察し、かつ試験装置の内側及び外側の相対湿度を監視した。シールの破れは観察されず、シールを通じた平均漏れ速度は、約0.6μg/時であった。
【0110】
単一のセルを有する単一のバッテリに関して本発明を上述してきたが、本発明の態様は、複数のセルを有するバッテリ及び複数のバッテリを有するバッテリ・パックに適用することができる。例えば、空気調節システムをバッテリ・パックのハウジング内に完全に又は部分的に配置して、バッテリ・パック・ハウジング内に空気を通すことを可能とするバルブを選択的に開閉させるようにすることができる。この場合、バッテリごとに別個の空気調節システムが必要とされるわけではない。さらに、空気調節システムは、バッテリ・パック内のいずれか1つバッテリ若しくはバッテリのグループ若しくは全てのバッテリから電力を供給することもでき、又はバッテリ・パックの外部の別のバッテリから電力を供給することもできる。
【0111】
空気調節システムは、1つのバッテリ、複数のバッテリ、若しくはバッテリ・パックによって電力供給されるデバイス内に完全に若しくは部分的に配置することもでき、又はそれ以外の方式で、1つのバッテリ、複数のバッテリ、若しくはバッテリ・パックから分離して設けることもできる。例えば、バルブは、様々な多重セル・パック・サイズを供する予めパッケージされたモジュールとすることができる。従って、バルブと、バルブ電源と、制御部とを、気体消費セルとは別にパッケージすることが有利であり得る。
【0112】
気体消費バッテリと空気調節システムとの組み合わせは、空気調節システムの全て又は一部を収容し、そこに1つ又はそれ以上の交換可能な気体消費バッテリが挿入された、モジュールを含むことができる。これにより、空気調節システムの少なくとも一部を再利用することが可能になるので、ユーザにとってのバッテリ1個あたりのコストが削減される。このモジュールは、1つ又はそれ以上の空気侵流入口を含むことができ、そしてまた、空気がバッテリに到達するための通路を提供する内部チャネル、プレナム又はその他の内部空間を含むことができる。モジュールとバッテリとは、モジュールとバッテリとが不注意で分離することを防止するために、バッテリの一部である対応する電気接点と協働する、モジュールの一部である電気接点の使用を含む、いずれかの適切な方式でひとまとめにすることができる。例えば、モジュール上の電気接点は、バッテリの電気接点を含むバッテリ・ケース内のスロットの中にパチンとはまる突き出したブレードの形とすることができる。ブレードは、締まりばめ、1つ又はそれ以上のばね、機械式施錠機構およびそれらの種々の組み合わせといった、いずれかの適切な手段で、スロット内に保持することができる。モジュール及びバッテリの寸法、形及び電気接点は、正しい電気的接触を保証し、バッテリの反転を防ぐために、モジュールとバッテリとが正しい向きでのみ嵌り合うようにさせる構成とすることができる。組み合わされたバッテリ及びモジュールがその中に装着されるデバイスとの正しい電気的接触を作り出すために、モジュール、バッテリ又はその両方が、外部接点端子を有することができる。いくつかの実施形態において、デバイスからモジュールを取り出すことなく、バッテリを交換することができる。
【符号の説明】
【0113】
10:バッテリ
20:セル
30:セル・ハウジング
32、64:空気侵入ポート
34:缶
35:底面
36:カバー
38:ガスケット
40:第1の電極
42:第2の電極
44:セパレータ
50:空気調節システム
60、170:バルブ
62、462:固定プレート
64、68、174:アパーチャ
66、466:可動プレート
67、75、102:穴
69:流体層
70、470:シャーシ
71、354:棚
72:シャーシ本体
74、332、464、468:開口部
78:凹部
80、175:アクチュエータ
82a、82b:SMA(形状記憶合金)ワイヤ
84、484:レバー・アーム
86:ピボット・ピン
88、304、488:アクチュエータ・ピン
90:制御回路
92、94:接点端子
100:蓋
104:スタンドオフ
105:ビア
110:導体
157:導電ピン
172:プレート
180:ラッチ
300:オーバーモールド・シャーシ本体
302:リブ
334:スロット
336:管
338、350:流入口
340、352:流出口
356:空気通路
358:バッフル
470:フレーム・プレート
486、586:腰部
490:アーム
492、494:肩部
500:球状部材
502:封止媒体
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体消費電極を備えた電気化学バッテリ及びセルに出入りする空気及び他の気体の侵入速度を制御するための空気調節システム、並びにこうした空気調節システムを用いるバッテリ及びセル、特に、空気減極セル、空気補助セル、及び燃料セル、並びにバッテリに関する。
【背景技術】
【0002】
空気減極、空気補助及び燃料セル・バッテリのセルのような、電気エネルギーを生成するための活物質としてセルの外部からの酸素及び他の気体のような流体を用いる、電気化学バッテリ・セルは、種々の携帯型電子部品に電力を供給するのに用いることができる。例えば、空気は、空気減極又は空気補助セルに入り、そこで、正極活物質として用いられるか又はそれを再充電することができる。酸素還元電極は、酸素とセル電解質との反応を促進し、最終的には、酸素による負電極活物質の酸化を促進する。酸素と電解質との反応を促進する酸素還元電極内の材料は、しばしば触媒と呼ばれる。しかしながら、酸素還元電極において用いられる幾つかの材料は、特に比較的高速度の放電中に少なくとも部分的に還元されることがあるので、真の触媒ではない。
【0003】
1つの種類の空気減極セルは、亜鉛/空気セルである。この種類のセルは、負電極活物質として亜鉛を用い、かつ、水性アルカリ(例えば、KOH)電解質を有する。亜鉛/空気セルの空気中で用いることができる酸化マンガンは、特に、空気電極中への酸素の拡散速度が不十分である場合は、負電極活物質の酸化に合わせて電気化学的に還元され得る。その後、これらの酸化マンガンは、低率放電又は停止の期間中に酸素によって再酸化され得る。
【0004】
空気補助セルは、消費可能な正及び負電極活物質、並びに酸素還元電極を収容するハイブリッド・セルである。正極は、相当な期間にわたって高放電率を維持することができるが、酸素還元電極を通じて、酸素は、低又は非放電期間中に部分的に正極を再充電することができるので、酸素を、全セル放電容量の実質的な部分のために用いることができる。これは、セルに入れられる正極活物質の量を減らすこと、及び、負電極活物質の量を増やして全セル容量を増大させることができることを意味する。空気補助セルの例は、同一出願人による特許文献1及び特許文献2に開示されている。
【0005】
空気減極、空気補助及び燃料セルの利点は、少なくとも一方の電極の活物質の少なくとも一部分が、セルの外部からの空気中に含まれる気体由来であるか、又はその気体により再生されるために、その高いエネルギー密度が高いことである。
【0006】
これらのセルの欠点は、可能な最大放電率が、酸素が酸素還元電極に侵入する速度により制限される可能性があることである。これまで、酸素還元電極に酸素が侵入する速度を高める努力、及び/又は無駄な反応を引き起こす可能性がある二酸化炭素のような望ましくない気体の侵入速度及び量が増えていく反応生成物を収容するか又はセルを乾燥させることが意図されるセルの空隙空間を満たす可能性がある水の侵入速度又は損失速度(セル外部及び内部の相対水蒸気分圧に依存する)を、それぞれ制御する努力がなされてきた。これらの手法の例は、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、及び特許文献8に見出すことができる。しかしながら、これらの気体の1つの拡散速度を変化させると、一般的に、他の気体にも影響が生じる。高い酸素拡散速度、及び低いCO2及び水拡散速度に対する必要性のバランスを取る努力がなされた場合でも、限られた成功しか得られていない。
【0007】
放電率が高いときには、十分な酸素を酸素還元電極内に取り込むことが重要であるが、低放電率の期間及びセルが使用されていない期間には、CO2及び水の拡散を最小にする重要性が高まる。高率放電の期間だけセルへの空気流を増大させるために、ファンを用いて空気をセルに強制的に取り込んできたが(例えば、特許文献9)、そのファン及びそれらに対する制御により、製造のコスト及び複雑さが加わり、ファンは、マイクロ・ファンであっても、個々のセル、複数のセル・バッテリ・パック、及び装置内で貴重な容積を占める可能性がある。
【0008】
提案されている別の手法は、セルに流入する空気の量を制御するためにバルブを用いることであるが(例えば、特許文献10及び特許文献11)、このバルブを作動させるためには、ファン及び/又は比較的複雑な電子部品のような外部手段を必要する可能性がある。
【0009】
更に別の手法は、酸素還元電極と外部環境の間に、例えば、バッテリが放電するときの酸素の消費による空気圧の差により開閉することができるフラップを有する水不透過膜を用いることである(例えば、特許文献12)。しかしながら、圧力差は、小さいことがあり、バッテリ外部の大気条件により影響を受けることがある。
【0010】
摺動磁気プレート・バルブと固定プレートとの間に、ポリエチレン・フィルムのようなポリマーフィルムの層、又は、シリコン油のような、摩擦抵抗を減少させるための他の何らかの手段を適用することによって、摺動プレート・バルブのプレート間の摩擦を減少させることが、特許文献13に開示されている。特許文献14は、閉鎖位置における摺動プレート・バルブ・シールの有効性を改善するために、隣接するバルブ・プレートの界面に、ポリマー・コーティング若しくはフィルム、又はシリコン・ベースの油などの液体といった材料を適用することを開示し、この改善は、摩擦の減少、界面の欠陥の充填、又は油が用いられた場合には、プレート間の毛管引力の結果もたらされ得るものである。特許文献15は、摺動プレート・バルブのシールの有効性及び動作をさらに改善するために、バルブ・プレート間の流体に丸い部材を添加することを開示する。
【0011】
気体消費セルへの空気の流入を制御するための空気調節システムの動作及び有効性をさらに改善し、これを行おうとするこれまでの試みにおける不利な点を克服することが望ましい。本発明の目的は、2つのプレートを有し、かつ、長期間バルブが閉鎖されたときにプレート間にシールを設けることができるバルブを備えた空気調節システムを提供することである。本発明の目的はまた、長期間にわたってしっかりと密封することができ、かつ、小さな力を加えるだけで動作することができるバルブを含む空気調節システムを提供することである。本発明の更に別の目的は、気体消費電極と、バッテリ内への空気の通過を制御するための改善された空気調節システムとを有するバッテリを提供することであり、この空気調節システムは、バッテリの性能に悪影響を与えることなく、長時間有効である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第6,383,674号明細書
【特許文献2】米国特許第5,079,106号明細書
【特許文献3】米国特許第6,558,828号明細書
【特許文献4】米国特許第6,492,046号明細書
【特許文献5】米国特許第5,795,667号明細書
【特許文献6】米国特許第5,733,676号明細書
【特許文献7】米国特許公開第2002/0150814号明細書
【特許文献8】国際公開第02/35641号パンフレット
【特許文献9】米国特許第6,500,575号明細書
【特許文献10】米国特許第6,641,947号明細書
【特許文献11】米国特許公開第2003/0186099号明細書
【特許文献12】米国特許公開第2003/0049508号明細書
【特許文献13】米国特許第5,554,452号明細書
【特許文献14】米国特許公開第2005/0136321号明細書
【特許文献15】米国特許公開第2009/0081519号明細書
【発明の概要】
【0013】
本発明の一態様によると、空気中に含まれる気体を活物質として用いるバッテリ・セルへの空気の通過を制御するための空気調節システムが提供される。この空気調節システムは、貫通する少なくとも1つのアパーチャを有する第1のプレートと、貫通する少なくとも1つのアパーチャを有する第2のプレートとを含むバルブと、第1のプレートを第2のプレートに対して移動させてバルブを開閉し、セルへの空気の通過を調節するためのアクチュエータと、第1のプレートと第2のプレートとの間に配置された封止媒体とを含む。封止媒体は、流体封じ込め層と、該流体封じ込め層内に部分的に収容される流体とを含む。流体封じ込め層は、毛管流ポロメータを用いるバブルポイント法により求められる、0.03マイクロメートルから15マイクロメートルまでの平均細孔径を有する多孔性ポリマー材料を含む。多孔性ポリマー材料での流体の最大ウィッキング高さは、第1及び第2のプレートの最大界面寸法に等しいか又はこれを上回り、流体の試料の表面の上に多孔性ポリマー材料のストリップを垂直方向につり下げることによって求められる。
【0014】
本発明の別の態様によると、セル外部からの空気中に含まれる気体を活物質として用いる気体消費電極を含むバッテリ・セルと、対電極と、電解質と、電極及び電解質を収容し、かつ、空気がそこを通ってハウジングに入ることができる少なくとも1つの開口部を有するハウジングと、上述の空気調節システムとを含むバッテリが提供される。
【0015】
本発明のこれら及び他の特徴、利点、及び目的は、以下の明細書、特許請求の範囲、及び添付図面を参照して、当業者によりさらに理解され、かつ認識されるであろう。
【0016】
本明細書に特に別段の指定がない限り、全ての開示された特性、範囲及び試験は、室温(20−25℃)におけるものであり、非SI単位の値が示される場合、非SI値はオリジナルの値であり、SI値は計算された換算である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】バッテリの上部を示す、本発明の第1の実施形態に従って構成されたバッテリの斜視図である。
【図2】バッテリの底部を示す、図1に示されるバッテリの斜視図である。
【図3】バッテリに用いられる空気調節システムを形成する構成要素と共にバッテリの底部を示す分解斜視図である。
【図4A】開放位置の空気調節システムのバルブを示す部分断面図である。
【図4B】閉鎖位置の空気調節システムのバルブを示す部分断面図である。
【図5】アクチュエータ・ピンを用いる空気調節システムの上面図である。
【図6】本発明の種々の実施形態に用いることができる空気調節システムの代替的な較正である。
【図7】本発明の第1の実施形態のバッテリの変形の分解斜視図である。
【図8】図7に対して逆方向の、図7に示されるバッテリ構成の1つの可能な実施の部分断面図である。
【図9】本発明の実施形態に従って構成されたバッテリの断面図である。
【図10】本発明の実施形態に従って構成されたバッテリの断面図である。
【図11】バルブが閉鎖位置にある、図10に示される閉鎖位置のバッテリの一部分の部分断面図である。
【図12】図10に示されるバッテリに有用なバルブ部材の斜視図である。
【図13】圧力解放空気経路がシャーシ内に設けられた空気調節システムを有するバッテリの斜視図である。
【図14】図13に示される圧力解放経路を備えた空気調節システムを有するバッテリの分解斜視図である。
【図15】図13の線XLVIII−XLVIIIを通るバッテリ及び空気調節システムの一部の断面図である。
【図16】蛇行流体通路を形成するバッフルを示す、図14の線XLIX−XLIXを通るシャーシの断面図である。
【図17】別の実施形態による、圧力除去流体経路を備えた空気調節システムを有するバッテリの分解斜視図である。
【図18】別の実施形態による、開放バルブ位置で回転可動プレートを用いる空気調節システムの上面図である。
【図19】別の実施形態による、閉鎖バルブ位置で示される図18の空気調節システムの上面図である。
【図20】バルブ・プレート間に配置された球状部材を含む封止媒体を有する空気調節システムの分解図である。
【図21】封止媒体を示す、図20に示される空気調節システムの一部分の拡大分解図である。
【図22】開放位置のバルブ・プレートを示す、図20のバルブの部分断面図である。
【図23】閉鎖位置のバルブ・プレートを示す、図20のバルブの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態は、一方の電極のための活物質としてセルの外部からの空気中に含まれる気体(酸素又は別の気体など)を用いる電気化学セルを含むバッテリを含む。セルは、酸素還元電極のような気体消費電極を有する。気体消費電極を有することができるセルの例として、空気減極セル、空気補助セル、及び燃料セルが挙げられる。低率又は非放電期間中に気体消費電極に入る空気とセルに入る水獲得又はセルからの水損失とを最小にする一方で、高率でのセルの放電のためには十分な量の気体を外部から供給するように、気体消費電極(例えば、空気減極セル及び空気補助セルの空気電極)までの空気の通過速度を調節するための、以下にエアマネージャとも呼ばれる空気調節システムが、バッテリと共に用いられる。
【0019】
空気調節システムは、セル電位の変化にすばやく応答し、サイクル寿命が長く、放電時のセル電圧範囲に良好に適合する低い作動電圧を有し、高効率であることが好ましい。さらに、調節システムは、閉鎖位置で管理される空気又は他の気体に対して低透過性であり、セル内での活性気体に対する必要性に応じて開閉し、非常に少量の全セル放電容量しか必要とせず、容量が小さく、製造が容易かつ安価であり、セル内又はセル上に組み込まれることが好ましい。
【0020】
エアマネージャは、バルブを開閉するために1つのプレートが別のプレートに対して移動する、摺動プレート・バルブ又は座屈プレート・バルブのような可動プレート・バルブを含む。一方のプレートを固定プレートとし、他方のプレートは可動プレートとすることができ、又は両方のプレートとも移動することができる。プレートのうちの少なくとも1つは、空気がバルブを通過するための、貫通する少なくとも1つのアパーチャを有する。摺動プレート・バルブにおいて、プレートは、典型的には互いに平行である。プレート間の相対運動は、プレートが典型的には互いに平行なままであるように、直線運動又は回転運動(例えば、1つのプレートが回転軸の周りを回転する)とすることができ、各プレートは少なくとも1つのアパーチャを有する。1つのプレートのアパーチャは、バルブが閉鎖されたときに位置ずれし、バルブが開放位置にあるときに少なくとも部分的に位置合わせされる。座屈バルブにおいて、可動プレートは変形して他方のプレートから引き離され、プレート間に開口部を生成し、空気は、その開口部、及び開放位置における一方又は両方のプレートの1つ又は複数のアパーチャによって形成された通路を通って流れることができるが、プレートの各々の少なくとも一部分は、本質的に他方のプレートの少なくとも一部分に押し当っているので、バルブが閉鎖したときに空気通路は存在しない。
【0021】
封止媒体が、可動プレート・バルブのプレートの界面の間に配置される。封止媒体は、流体封じ込め層を形成するプレートの一方又は両方上のフィルム又はコーティングと、封止流体とを含む。流体は、プレート間のシールを向上させ、フィルム又はコーティングは、プレート間の界面の所望の領域内に流体を保持する細孔を有する。フィルム又はコーティング、及び流体の一方又は両方は、封止媒体がないプレート間の摩擦と比べて、摩擦の減少ももたらす。
【0022】
プレート上のフィルム若しくはコーティングだけから成る媒体、又はプレート間の流体だからなる媒体を使用することは、欠点を有する可能性があることが発見された。フィルム又はコーティングは、プレート間の摩擦を減少させ得るので、摺動プレートはより容易に摺動し、動作するのに必要なエネルギーはより少ないが、こうしたフィルム又はコーティングだけでは、バルブの閉鎖時のプレート間のシールの有効性をほとんど改善させることができない。流体をプレートの界面に適用することで、より有効なシールをもたらすことができ、プレート間の摺動摩擦を減少させることもできる。しかしながら、流体が、良好なシールを維持することが必要とされるバルブ・プレート間の界面から流出して、エアマネージャ及びセルの他の部分に入るのを防ぐのに、流体とプレートとの間の表面張力では不十分であることが分かった。プレート間の改善したシールを維持するためには、流体は、両プレートの界面と接触して、一方のプレートのアパーチャと他方のプレートのアパーチャとの間に空気又は他の気体が直接通ることができる開放通路が存在しないようになっていなければならない。表面張力を増大させるように、プレートの表面特性及び流体のタイプを選択することにより、プレート間の界面からの封止流体の流出を減少させることができるが、試験された最良の組み合わせは、依然として不十分なものである。プレート間の流体の保持は、温度、バルブの開閉、バルブの向き(重力の影響による)及びバルブの設計によっても影響を受け得る。
【0023】
しかしながら、フィルム又はコーティングは、流体を2つのプレート間の界面に保持するのを助けることができる流体封じ込め層として機能するので、封止流体と、一方又は両方のプレート上の特定のフィルム又はコーティング材料との適切な組み合わせを用いることにより、別個に使用されるときにそれぞれと関連した問題を克服することができることも発見された。実施形態においては、より小さい表面積を有するプレートの少なくとも一部分が、フィルム又はコーティングで覆われる。代替的に、可動プレートの全可動範囲にわたる界面面積全体といったより大きい表面積のプレートの限られた部分だけを、フィルム又はコーティングで覆うことができる。
【0024】
フィルム又はコーティングは、一方又は両方のバルブ・プレートに適用するのが容易であり、かつ、予想される貯蔵及び使用条件の間、プレートから引き離されることなく、プレート間の所定位置のままであることが望ましい。さらに、フィルム又はコーティングは、その流体で濡れることができること、すなわち流体をはじくべきではないが、流体を実質的に保持するための、例えば毛管引力及び/又は吸収による十分な引力を提供し、かつ、長期間にわたって流体の流動を最小にすることも望ましい。厚さ、多孔性、平均細孔径、及び屈曲度は、フィルム又はコーティングが流体を保持する能力に影響を与えることがある。フィルム又はコーティングは、バルブが閉鎖されたときにフィルム又はコーティングを通る気体の流れを最小にするために、酸素、二酸化炭素及び水蒸気のような空気気体に対して比較的低い透過性を有することも好ましい。後述のように、フィルム又はコーティング材料を選択する際、フィルム又はコーティングと流体との間の相互作用も考慮すべきである。好適であり得るフィルム又はコーティングとして、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリプロピレン、及びポリエチレンのようなポリマー材料が挙げられる。ポリマー材料は、非焼成のものであることが好ましい。紙もまた好適であり得る。フィルム及び紙は、織布であっても又は不織布であってもよい。
【0025】
封止媒体に用いるのに適した流体は、蒸発を最小にするために、予想される範囲の貯蔵及び使用条件にわたって低い揮発性を有することが望ましい。流体の粘度も、その有効性に影響を与えることがあり、粘度が低すぎる場合、流体が容易に流れすぎ又は流体封じ込め層内に多量に吸収されすぎる可能性があり、粘度が高すぎる場合、バルブを作動させるのに、過度のエネルギーを必要とし得る。流体が、エアマネージャのどこか違った場所に又はエアマネージャから外に流れ出てバッテリ内に入ることなく、バルブ・プレート間の界面に実質的に保持されるように、フィルム又はコーティングにより十分に誘引されることも望ましい。幾つかの実施形態において、流体はまた、プレート間の摩擦も減少させる。後述のように、流体を選択する際、流体とフィルム又はコーティング材料並びに界面面積における覆われていないプレート表面との間の相互作用も考慮すべきである。適切な流体の例には、これらに限られるものではないが、ペルフルオロアルキルエーテル(例えば、DuPont de Nemours International S.A.社からのKRYTOX(登録商標)102汎用オイルのようなKRYTOX(登録商標)100シリーズ汎用潤滑剤)のようなフルオロカーボン液体、シロキサンポリマー含有流体(例えば、Dow Corning社からのグレード702、704、及び705拡散ポンプ油)のようなシリコーン・ベースの流体が挙げられる。他の実施形態に従って、他の適切な流体を用いることもできる。用いられる流体の量は、組み合わせられたプレートの界面面積の合計、界面間の間隙のサイズ、及び流体と界面との間の表面張力の関数となる。
【0026】
プレート、フィルム及びコーティングの表面は、これらの表面と流体との間の相互作用の妨げとなるのを回避するために、使用前に清浄であることが望ましい。流体とフィルム又はコーティング表面との間の引力が、流体とどちらかの裸のプレート表面との間の引力より有意に大きい場合、その界面が垂直位置になるような向きにプレートが方向付けられたときでさえ、著しく長期間にわたって流体をプレートの間に保持することができる。流体とフィルム又はコーティング表面との間の表面張力が重力により及ぼされる力より有意に大きく、そのため、バルブ・プレートが垂直位置にあるときに、重力下で、表面張力が流体の流量を支配することが好ましい。
【0027】
バルブ・プレートは、いずれかの適切な材料から作製することができる。選択される材料は、装置及びバッテリが使用されると予想される環境において機械的に安定しており、腐食に耐えるものであるべきである。幾つかの実施形態においては、選択される材料は、導電性とすることも又は非導電性とすることもできる。フィルム又はコーティングで覆われていないプレートの界面は滑らかであるべきであり、プレート間のシールの有効性を最大にするために、バルブが閉鎖されたとき、プレートの界面の密封面の形状は互いに適合するべきである。
【0028】
幾つかの実施形態において、一方又は両方のバルブ・プレートを磁性材料から作製することができるので、隣接するバルブ・プレートは互いに引き付けられて、プレート間のシールの有効性を最大化する。磁気プレートは、強磁性体(例えば、バリウム/ストロンチウムフェライト)とエラストマー材料とのブレンドのような、いずれかの適切な磁性材料から作製することができる。磁気プレートは、十分な磁力を維持するためにバッテリからのエネルギーを消費しない永久磁石とすることができる。プレートの少なくとも一方が磁性である場合、他方のプレートが完全に平坦ではない場合でも、他方のプレートの形状に適合させるように、一方のプレートを可撓性とすることができる。
【0029】
図1−図3を参照して以下に更に説明するように、本発明によるバッテリ10は、気体消費セル20及び空気調節システム50を含む。空気調節システム50は、気体消費セル20の気体消費電極への気体を含む空気の流れを調節する。空気減極セルでは、空気調節システムは、気体消費セル20のセル・ハウジング30の内部及び外部、並びに酸素還元電極の空気側(すなわち、セル・ハウジングの外部からの空気に到達することができる酸素還元電極の表面又はその一部)上に配置される。
【0030】
図示のように、セル20(この場合は、空気減極セル)は、それぞれ缶34及びカバー36を含むことができる、又は他の場合には缶又はカバーと見なされるものとは異なる形状又はサイズを有することができる、第1のハウジング構成要素及び第2のハウジング構成要素を含むセル・ハウジング30を含む。例証のために、第1のハウジング構成要素は、以下、缶34と呼び、第2のハウジング構成要素は、以下、カバー36と呼ぶ。缶34及びカバー36は、両方とも導電性材料で作製されるが、ガスケット38によって互いから電気的に絶縁される(図8を参照されたい)。缶34は、セル20の外部正接点端子として働き、カバー36は、外部負接点端子として働く。以下にさらに説明するように、セル20はまた、気体消費電極(例えば、正の空気電極、すなわちカソード)とすることができる第1の電極40、負電極(すなわち、アノード)とすることができる第2の電極42、及び第1の電極と第2の電極との間に配置されたセパレータ44(図8を参照されたい)をさらに含む。第1の電極40は、缶34に電気的に結合されることが好ましく、第2の電極42は、カバー36に電気的に結合されることが好ましい。
【0031】
缶34は、空気が気体消費電極40に到達するためにセル・ハウジング30の内部へと通ることができるように、複数の空気侵入ポート32が設けられる底面35を含む(図8を参照されたい)。
【0032】
図1−図3に示す実施形態においては、空気調節システム50は、缶34の底面35の外面に固定される。空気調節システム50をセル20の外面に取り付けることができる特定の方法の例は、以下でさらに説明される。さらに、空気調節システム50が気体消費セル20の内部に組み込まれる更に別の実施形態が説明される。
【0033】
この特定的な実施形態による空気調節システム50は、複数のアパーチャ64(空気侵入ポート32に対応し得る)を有する第1のプレート62(缶34の底面35に対応し得る)と、サイズ、形状、数、及び位置が第1のプレート62に形成されたアパーチャ64に対応する複数のアパーチャ68を含む可動の第2のプレート66とを含むバルブ60を含むことができる。アパーチャ64及び68のサイズ、形状、数、及び位置は、気体消費電極に与えられる空気の望ましい容積及び分布をもたらすために最適にされることが好ましい。アパーチャ64のサイズ、形状、数及び相対的位置は、アパーチャ68のサイズ、形状、数及び相対的位置と同じである必要はない。例えば、アパーチャ64のサイズがアパーチャ68と僅かに異なる場合には、プレート62及び66を通る最大の全開放面積を達成にするのにアパーチャ64及び68の正確な位置合わせは必ずしも必要ではない。
【0034】
空気調節システム50は、第2のプレート66が配置される開口部74を備えた環状本体部分72を有するシャーシ70をさらに含むことができる。開口部74は、好ましくは、プレート66が最も長い寸法と平行な軸線に沿って直線状に摺動することができるように、プレート66の短い方の辺に余分な空間を設けながら、プレート66の細長い側縁に接触するような形状及びサイズにされる。従って、図5A及び図5Bに示すように、第2のプレート66のアパーチャ68は、第1のプレート62のアパーチャ64と位置合わせするように及びそれから外れるように移動することができ、それによってバルブ60を開閉することができる。以下にさらに説明するように、シャーシは、第2のプレート66を案内し、場合によっては第1のプレート62に隣接して保持するように構成されることが好ましい。
【0035】
図5A及び図5Bに示すように、流体層69を含む封止媒体をプレート62と66との間に配置する。封止媒体はまた、流体層69を長期間プレート62と66との間に保持するために、プレート62及び66の界面の少なくとも1つの少なくとも界面部分を覆うフィルム又はコーティングの層も含む。以下に説明される他のバルブの実施形態は、図5A及び図5Bにおけるもののような封止媒体を含む。
【0036】
図3及び図7に示す実施形態においては、可動の第2のプレート66の上部及び底部を蓋100(以下にさらに説明する)及び缶34の底面35により拘束することができる。代替的な実施形態においては、バッテリ10は、蓋100と可動プレートとの間の空気の移動を容易にするように、図3及び図12のシャーシ70より背の高いシャーシを含む空気調節システムを有し、これにより、可動プレートの表面にわたって空気がより均一に分配され、プレートが開放位置で位置合わせされたときに、アパーチャを通る空気がより均一に流される。
【0037】
シャーシ70は、プレート66が摺動することができるレース又は溝を生成することができる、内向きに延びる棚を含む。棚の垂直位置は、表面35に対してプレート66を確実に保持し、プレート66及び62が閉鎖位置で位置合わせされたときに良好にシールするが、プレート66の望ましい摺動運動を妨げる程はきつくないようにするのに望ましい寸法のレースを生成するように選択することができる。棚は、シャーシ70の一体部分とすることができ、又は別々の構成要素とすることができる。例えば、棚は、シャーシ本体72’内に鋳造された平座金又はストリップ挿入体の形とすることができ、シャーシ本体72に取り付けられ別々の構成要素とすることができる。棚は、シャーシ本体72と同じ材料又は異なる材料で作製することができる。シャーシ本体72及び棚の材料は、望ましい強度及びレース内でのプレート66の滑らかな摺動の両方をもたらすように選択することができる。シャーシ本体72又は棚のどちらかが導電性材料で作製される場合には、アクチュエータの電気部品及び制御回路90からの絶縁が必要とされることがある。連続棚の代替物として、不連続の棚又は一連の突起部を用いることができる。
【0038】
棚及び/又はシャーシ本体72を改造して、プレート66の上に、開口部74にわたって延びるリブのような1つ又はそれ以上の付加的な構造を組み込み、プレート66の中心部分を平らに保持することもできる。代替的に、蓋100からの下向き突起部を用いてプレート66の中心部分を平らに保持することもできる。
【0039】
別の実施形態においては、シャーシ70は、蓋を保持する第2のレースを含むことができる。この第2のレースは、1つ又はそれ以上の付加的な棚によって形成することができる。この構成は、製造プロセスの別の段階で気体消費セルに付加される、蓋及び空気調節システムの構成要素の事前組立を容易にすることができる。固定プレート62が缶34の表面35ではない別の実施形態においては、シャーシ70は、第1の棚の下に、固定プレート62及び可動プレート66を保持するより大きなレースを形成する別の棚を含むことができる。
【0040】
棚は、開口部74の全周の周りに延びる連続棚とすることができ、又は周囲の一部にのみ沿って延びる不連続の棚とすることもできる。不連続の棚が適切に配置され、可動プレート66が十分に可撓性である場合、セル内の圧力が過度のものになった場合、可動プレート66の縁部は、不連続の棚の端部の間で外向きに撓み、バルブが部分的に開閉されるときに、これを通って気体が外部環境に逃げることができる通路を両方のプレート62とシャーシ・フレーム72との間に与えることができる。このような実施形態においては、プレート66は、ばねのような特性を有するのが好ましく、内部セルの圧力が十分に減少されると、プレート66は再び缶34の表面35の形状に適合するようになる。
【0041】
蓋が固定バルブ・プレートとして働き、可動プレートが蓋に隣接して配置された代替的な実施形態においては、シャーシは、可動プレートと缶底部の表面との間に空間を維持しながら可動プレートを蓋に対して保持して、缶のアパーチャに空気を均一に分配することを容易にするための棚を含むことができる。上に説明したように、この実施形態は、蓋を保持する第2のレースをシャーシ内に含むこともできる。
【0042】
空気調節システムは、以下に説明するように、気体減極セルの電圧に応じて作動させることができ、又は使用者が作動させることができ、或いは方法の組み合わせを用いることができる。例えば、装置によって給電される装置の使用者が装置のスイッチをオン位置にすると、バルブは、機械的作用により最初に開放され、使用者が装置のスイッチをオフ位置にすると、バルブは、機械的作用により最初に閉鎖され得る。装置のスイッチがオン位置のままである間、制御回路は、バルブの動作を制御することができる。別の例では、装置がオンにされると、セルからの電力が空気調節システムに印加され、最初にバルブを開放し、装置がオフにされると、バルブを作動して閉鎖することができる。
【0043】
アクチュエータは、バルブ60を作動させるために空気調節システム50の一部として設けられることが好ましい。アクチュエータは、気体消費セル20の電圧を感知し、検出したセル電圧に応じて制御信号を生成する制御回路90を含むことができる。回路90は、好ましくはシャーシ70の表面上に実装される特定用途向け集積回路(ASIC)とすることができる。以下にさらに説明するように、シャーシ70の本体72は、トレースをシャーシの表面上に印刷することができるように非導電性材料で作製されることが好ましい。従って、シャーシ70は、プリント回路基板とすることができる。シャーシは、鋳造又は成形することができ、電気接続の殆ど又は全てを圧力接点とし、アセンブリの精巧化を最小にすることができる。しかしながら、シャーシが、何らかの機械加工及び何らかの電気接続を必要とし、かつ、何らかのはんだ付け又は溶接を必要とすることがある。シャーシ材料の選択は、バルブを収容するフレームとして、電子部品のためのプリント回路基板として、及びセルへの取り付けの能力/適合性のために、その多機能用途との適合性に基づいて行うことができる。制御回路90を装着するために、シャーシの層状構成内及び/又はその上に戦略的な陥凹部を設けることができる。これにより、セルとの組み立てを容易にするために、あらゆる装着部品をシャーシの表面と同一平面上に維持することが可能になる。さらに、金属蓋100又は缶34に押し付けられたときに短絡しないように、プリント回路のトレースを非導電性材料で被覆することも望ましい。代替的に、制御回路及びアクチュエータの1つ又はそれ以上の構成要素の全て又は一部分を収容するために、鋳造又は機械加工等により、シャーシ内に1つ又はそれ以上の凹部を設けることもできる。以下に説明するように、これらの凹部は、構成要素をシャーシ上の異なる位置に位置決めすること、及び、シャーシ・フレームを超えて延びる構成要素を固定することを可能にするのに有用であり得る。
【0044】
電子部品のためのプラットフォームとして、シャーシ70の基材は、既存のPCB材料であることが望ましい。最も一般的な基材は、エポキシ樹脂及びガラス繊維強化材を含有する。シャーシ70は、電子回路構成要素を統合及び保護し、かつ、平坦な表面を缶34の底面35に平行に維持するために、層状構成のものとすることが望ましい場合がある。
【0045】
図3及び図4に示す実施形態においては、アクチュエータは、特に第1のSMAワイヤ82a及び第2のSMAワイヤ82bを含む複数の形状記憶合金(SMA)構成要素をさらに含む。SMAワイヤは、シャーシ70の両端部に固定され、制御回路90から延びるトレースに電気的に結合される。SMAワイヤ82a及び82bに電流を通す制御信号を与えることにより、制御回路90は、SMAワイヤを加熱させることができ、それによりSMAワイヤは特定の長さまで拡張又は収縮する。これによって、次に、SMAワイヤ82a及び82bは第2のプレート66を一方向又は反対の方向に引っ張り、従って、プレート66が開放位置又は閉鎖位置に摺動して出入りし、流体(すなわち、空気)がセル・ハウジング30の内部に選択的に通ることを可能にする。
【0046】
セル20の正端子及び負端子を接続するために、シャーシ70上に2つの接点端子92及び94が設けられる。接点端子92及び94は、シャーシ70のいずれの表面上にも設けることができ、シャーシ70の外側に向いた縁部表面上に、接点端子の1つ、特に端子94を設け、それを、セル20のカバー36に後で接続することができるようにバッテリ・アセンブリの外部に露出させることができる。一方、接点端子92は、蓋100の導電性部分と電気的に接触するように圧入された内面上、又は缶34の底面35と電気的に接触する反対側の表面上のいずれかに設けることが最良であり得る。接点端子94から、缶34の側壁の外側の周りにカバー37まで延びる導体110等により、セル20の缶34及びカバー36に対して接点端子92及び94の電気的接続をなすことができる。導体110は、セル・ハウジング30と導体箔との間の短絡を防ぐ2つの絶縁層間に配置された箔ストリップを含むタブとすることができる。
【0047】
図3に示すように、空気調節システム50は、シャーシ70を覆って随意的にその周りに延び、空気調節システム50を保護し、遮蔽する蓋又はカバー100をさらに含むことができる。蓋100は、セル20内への空気の選択的な通過のための、空気が外部からバルブ60に通るのを可能にする1つ又はそれ以上の穴102を含むことが好ましい。上述のように、蓋100は、第1のプレート62として働くことができる。
【0048】
好ましくは、バルブ60は、セル20が使用中であることを示す電流の印加時には開放状態であり、セルが使用中でないことを示す電流の非印加時には閉鎖される。SMAワイヤ82a及び82bは、第2のバルブ・プレート66を引っ張るが押さないことが好ましい。従って、図3及び図12において、第1のSMAワイヤ82aは、バルブを引っ張って開放し、第2のSMAワイヤ82bは、バルブを引っ張って閉鎖する。1つ又はそれ以上のワイヤ82aを用いてバルブ・プレート66を一方向に引っ張り、1つ又はそれ以上の他方のワイヤ82cを用いてプレートを反対方向に引っ張る。SMAワイヤ82をバルブ・プレート66の中心点の周りに対称に配置して同等の力を与えて、プレート66がシャーシ70内で結合しないようにすることができる。一般的に、SMAワイヤに印加される電流がセルから供給されるときには、セル容量を不必要に用いないように、電流は、アクチュエータの移動の開始のためだけに印加し、アクチュエータが固定状態にある間は印加しないようにすることが有利であり得る。SMAワイヤは、プレート66が移動する方向と平行に(図3におけるように)又はプレート66が移動する方向に対して垂直に(図5を参照されたい)延びるように装着することができる。
【0049】
SMAワイヤは、従来の形状金属合金で作製することができる。形状記憶合金は、ある温度で変形することができるが、加熱又は冷却されると、以前の形状に戻る合金である。この特性は、マルテンサイト相とオーステナイト相との間の固相変形から生じる。好ましい形状記憶合金は、2方向の形状記憶を有する、すなわち加熱時及び冷却時の両方において変形が可逆的である。形状記憶合金の例には、ニッケル−チタン、ニッケル−チタン−銅、銅−亜鉛−アルミニウム、及び銅−アルミニウム−ニッケル合金が含まれ、ニッケル−チタン及びニッケル−チタン−銅が好ましい。ニッケル−チタン−銅(例えば、約5−10重量パーセントの銅を有する)の使用は、耐疲労性があるために、多数回作動されることがあるアクチュエータには有利であり得る。ニッケル−チタン及び他の形状記憶合金の製造業者には、Specialty Metals、Shaped Memory Alloy Division」(米国ニューヨーク州New Hartford)、Memry Corporation(米国コネチカット州Bethel)、及びDynalloy,Inc.(米国カリフォルニア州Mesa)が含まれる。
【0050】
シャーシ70が、シャーシ本体72の上面に形成された制御回路90及び回路トレースを有するように示されている。さらに、SMAワイヤ82a及び82bは、回路トレースと電気的に接触した状態でシャーシ70の上面に取り付けられる。シャーシ70は、シャーシ70上に設けられる構成要素を封入して保護するように、制御回路90及び回路トレースを覆って形成されるオーバーモールド本体300(図5)を有することができる。従って、オーバーモールド本体300は、シャーシ70の一部として働く。オーバーモールド本体300は、非導電性エポキシ又は他のオーバーモールド材料を含むことができる。さらに、オーバーモールド本体300は、可動プレート66の上の開口部74にわたって延びる一体形成されたリブ302を含むことができる。
【0051】
図5に示す実施形態においては、空気調節システム50において用いられるアクチュエータ・ピン304が示されている。ピン304は、SMAワイヤ82aが部分306aに係合し、SMAワイヤ82bが部分306bに係合するように、ほぼ矩形のピン304の残りの上に隆起された第1の部分306a及び第2の部分306bを含むように示されている。部分306a及び306bは、図示のような直立部材を含むことができる。代替的に、部分306a及び306bは、ピン又は他の構造304内に形成されたスロットを含むことができる。従って、単一又は複数のアクチュエータ係合構造を用いて、SMAワイヤ82a及び82bが、可動プレート66をいずれかの方向に作動させ、バルブを開閉することを可能にする。
【0052】
図6は、本発明の様々な実施形態において用いることができるバルブ60の別の実施形態を示す。バルブ60は、複数のアパーチャ64を含む第1のプレート62を含む。プレート62は、シャーシ70に対して固定状態で保持される別々のプレートとしてもよく、又は、セル・ハウジング30の缶又はカバーの一部分としてもよい。プレート62は、磁性又は非磁性とすることができる金属で作製することができる。バルブ60は、数、サイズ、形状、及び位置が第1のプレート62のアパーチャ64に対応する複数のアパーチャ68を含む第2のプレート66をさらに含む。プレート66は、磁性金属又は非磁性金属とすることができる。上述の実施形態と同様に、シャーシ70は、非導電性材料で作製されることが好ましく、プレート66を受けるために中心開口部74を備えた環状本体72を含む。開口部74は、プレート66がプレート62に対して直線的に摺動するのを可能にするように、一方向がプレート66より僅かに大きくなるように構成され、アパーチャ64及び68を位置合わせするように及びそれから外れるように移動させて、バルブを開閉することができる。示される実装において、図6は、レバー・アーム84がアクチュエータ80の一部として用いられる限り、上述された実装とは異なる。レバー・アーム84は、レバー・アーム84をシャーシ70にピボット回転可能に固定することができるように、シャーシ70内に形成されたアパーチャ又はスロット又は凹部78に受けられるピボット・ピン86を含む。このことは、例えば、ピボット・ピン86を凹部78内に捕捉するが依然としてレバー・アーム84が凹部78内でピボット回転することを可能にするように、凹部78を拡大及び再成形して、ピボット・ピン86の周りに適合させ、かつ、ピボット・ピン86とレバー・アーム84の本体との間のネック領域内に部分的に延びるようにすることによって実行することができる。凹部78の底部の棚の穴に受けられるピボット・ピン86からの下向き突起部のような、ピボット・ピン86をシャーシに固定する他の手段を用いることができる。アクチュエータ・ピン88は、これを第2のプレート66内に形成された穴67に受けることができるように、レバー・アーム84の本体から下向きに延びることが好ましい。これによってレバー・アーム84は、プレート66に係合し、従って、第1のプレート62に対して第2のプレート66を摺動させることが可能になる。この特定の構成においては、1対のSMAワイヤ82a及び82bは、取付点89を通じてレバー・アーム84の上面に取り付けられる。ワイヤ82a及び82bの他端は、シャーシ70に取り付けることができる。ワイヤ82a及び82bは、例えば、凹部78と類似した、シャーシの凹部に固定することができる。これらは、接着剤を用いて、ピンを用いて、又は拡大ヘッドを制限された開口部を有する凹部に嵌め込むことによってなど、いずれかの適切な方法で固定することができる。代替的に、レバー・アーム84は、可撓性ヒンジのように機能する狭い部分を有するように、シャーシ70と同じ材料で作製することができ、シャーシ70の一部として一体形成することができる。
【0053】
SMAワイヤは、第2のセル電圧に応じてSMAワイヤ82a及び82bに選択的に電流を印加する制御回路(図6には示されていない)に電気的に結合される。このように、SMAワイヤ82a及び82bは、2つの対向する方向のいずれかにレバー・アームを引っ張り、これにより、レバー・アーム84が、第2のプレート66を第1のプレート62に対して摺動させることができる。この場合、シャーシ70は、プレート62に対してプレート66を案内するための指針を示しながら、レバー・アーム84及びSMAワイヤ82の端部のピボット点のための取付位置として働く。SMAワイヤ及びレバーの他の構成を用いて、空気調節システム内のバルブを作動させることができ、SMAワイヤは、任意の適切な方法で空気調節システムの構成要素に接続することができる。
【0054】
制御回路を用いて、バルブを開放又は閉鎖位置に移動させるのに必要な時にだけ、SMAワイヤを通る電流の流れを制限する実施形態においては、SMAワイヤは、電流が停止された後に、そのオリジナルの長さに戻る(例えば、伸長する)ことができる。これが起こると、SMAワイヤは、プレートを所望の位置に保持することができず、例えば、該プレートが部分的に開放された位置又は部分的に閉鎖された位置に摺動することがある。これは、摺動プレートを別の位置に移動させるための対向するSMAワイヤが存在するときに特に当て嵌まり、電流の中止に続いて作動されたSMAが伸長するときに、作動されていない対向するSMAからの弾性張力が摺動バルブを引っ張ることができる。このような状況では、摺動プレートは、その位置から意図的に移動されるまで、望ましい位置に保持することができる。摺動プレートを望ましい位置に保持する手段の例は、ラッチ機構である。いずれの適切な機構も用いることもできる。一実施形態では、ばね付勢戻り止めが、摺動プレートの表面からの突起部又はその凹部と協働することができる。ばね力は、プレートが意図せず摺動しないように保持するのに十分であるが、対向するSMAワイヤがプレートを別の所望の位置に摺動させる作用に容易に克服されるのに十分なほど弱くなるように選択することができる。
【0055】
別の実施形態においては、摺動プレートは、摺動プレートと固定プレートとして機能する別のセル又は空気調節システム構成要素との間の摩擦により意図せずに摺動しないように保持される。プレートと他の構成要素との間の摩擦は、意図せずに摺動するのを防止するのに十分であるが、対向するSMAの作用により別の位置に効率的に移動するのを妨げるほどは大きくない。摩擦は、可動プレート及び他の構成要素の材料の選択、可動プレート及び他の構成要素の一方又は両方に塗布されるフィルム又はコーティング、プレートと他の構成要素との間に用いられる封止流体のタイプ、或いは隣接する表面の一方又は両方のテキスチャ加工により制御することができる。
【0056】
空気調節システム50は、以下に説明される様々な技術を用いてセル20の外面に固定することができる。図7に示すように、蓋100は、スタンドオフ104を缶34の底部35に取り付けることができるように、該蓋100の内面から下向きに延び、かつ、その後シャーシ70上の対応する位置の穴75を通過する複数のスタンドオフ104を有するように構成することができる。図8において、蓋100がプラスチックで形成される構成が示される。この場合には、スタンドオフ104は、超音波により缶34の底面に溶接することができる。この場合、蓋100と缶34との間には電気的接続は存在しない。別の構成においては、スタンドオフ104は、打ち抜き加工等によって形成することができる金属蓋100内の陥凹部/突起部106として設けられる。この場合、金属蓋100は、缶34の底面35に抵抗溶接又はレーザ溶接することができる。さらに別の構成においては、蓋100を缶34に溶接する働きをするシャーシ70の穴75を通ってビア105が設けられる。この溶接では、蓋100とセル20の間に電気的接続も与えられる。
【0057】
金属蓋100を缶34に固定するために、シャーシ70の穴75に与えられる導電性エポキシ107、接着剤、接着剤とラベルの組み合わせ、缶34の底面に鋳造された1つ又はそれ以上の溝にシャーシを圧入すること、接着剤と組み合わせたシャーシを圧入すること、一番外側の缶が蓋100を置換できる場合に第2の缶内に缶34を圧着すること、層状シャーシをはんだ付け又は溶接すること、又は空気調節システム50をエポキシに封入することによる等の他の技術を用いることができる。
【0058】
アクチュエータ80の好ましい構成要素としてSMAワイヤの使用を上記に説明したが、人工筋肉に関連した線状電極活性ポリマー及び屈曲電気活性ポリマーのような他の構成要素又は材料を用いることもできる。このような材料では、より簡単な設計、簡単化された電子部品、及び電圧への比例応答を含む潜在的な利点が得られる。
【0059】
別の考慮事項は、バッテリの初期活性化に関するものである。バッテリは、開放位置のバルブと、従来のボタン空気セルと類似したタブで保護された穴102とを用いて構成することができる。タブの除去後に空気に触れると、セルが活性化し、バルブの電子制御が開始され、バッテリの貯蔵寿命が最大化される。代替的に、バッテリは、機能する空気調節システムを有するように構成することができる。これによって消費者がバッテリを直ちに使用できるようになるが、高湿度環境での湿気進入及び乾燥環境で湿気が出ていくのを防止するために、倉庫、店舗の棚等において適切な包装及び保存条件が必要である場合もある。
【0060】
上述した構成においては、缶34は、バルブ60の固定プレート62として働くことができる。しかしながら、缶底部が穴パターンを維持することができるがバルブ・アセンブリの一体部分ではなく空気拡散器のように働くことができるように、缶34を用いるのではなく、別個の固定プレート62を設けることが望ましいこともある。さらに、缶34が膨らむか、撓むか、場合によっては皺が寄った場合に、缶34がバルブ60の作動を中断することにならないように、固定プレート62を缶底部から離間配置することができる。缶34は、より強い材料、より厚い厚さ、又は異なる形状(例えば、底部内の隆起部)で作製できることに留意すべきである。別個の固定プレート62を用いる付加的な利点は、バルブ60を完全に事前組み立てすることができ、従って、潤滑流体層69の安定性が大きくなることである。しかしながら、このことは、バッテリが厚くなるという代償を伴うことがある。
【0061】
図面には示されないが、セル・ハウジング30の外面にラベルを設けることができる。このようなラベルは、導体タブ110及び空気調節システム50とセル20との間の界面をさらに覆い、かつ、缶34とカバー36との間の界面を覆うように、セルの周囲の周りに延びることができる。カバー36及び缶34及び/又は導電性蓋100の十分な部分を露出したままにし、バッテリの外側上に電気接点端子をもたらすことができる。
【0062】
図1−図3に示す特定のセル構成は、角柱型のセル設計である。この構成では、このセルの相対的なサイズと矩形の性質が、従来のボタン型空気セルとは異なっている。従って、セル20内に、従来の空気セルに現在用いられているものと類似した空気電極、アノード、セパレータ、及び缶/カバー材料を用いることができる。しかしながら、当業者であれば、セル20が、図面に示されるもののような特定の形状、サイズ、又は相対的寸法を有する必要がないことを理解すべきである。
【0063】
図9−図12は、本発明の別の実施形態を示す。この実施形態によると、異なるタイプのバルブ170が、内部に装着された空気調節システム内に用いられる。バルブ170は、複数のアパーチャ174を有するバルブ・プレート172を含む。しかしながら、これらのアパーチャを、缶34の底部の空気侵入ポートに対応するようなサイズ、形状及び配置にする必要はない。これは、バルブ・プレート172が、缶34の底面35との相対的に平行な関係(弁閉鎖位置)と、図9に示されるような撓み/屈曲位置(弁開放位置)との間で移動するためである。この構成においては、プレート172のアパーチャ174は、プレート172が缶34の底部35と平行なときに空気がセル内に通ることができないように、空気侵入ポート32のいずれとも整列せず又は重なりもしない。プレート172が缶34の内面に十分に押し付けられ、セルを閉鎖位置に封止することを確実にするために、ガスケット38が、プレート172の周縁部を缶34に押し付ける。バルブ170が閉鎖されるときに封止媒体がもたらすシールは、バルブ・プレート172が開放位置に移動したときに破損し、その結果、缶34の空気侵入ポート32とプレート172のアパーチャ174との間の空気の流れのために、封止媒体の流体により妨げられない通路が形成される。
【0064】
一端のみがガスケット38の下に固定され、ラッチ180が缶底部34内に形成されたバルブ・プレート172を用いる代替的な構成が、図10及び図11に示される。図10は、開放位置のバルブを示しており、図11は、閉鎖位置のバルブを示している。図12は、プレート172が持ち上がる、及び/又は屈曲して開放位置になるように、SMAアクチュエータ175がプレート172に固定されたプレート172の斜視図を示す。開放位置のプレート172の移動は、空気電極(図示せず)により制限されることがある。可撓性プレート172を有する構成の一実施形態においては、図10及び図11に示されるように、ガスケット38を通してカバー36と接点端子94との間を電気的に接続するために、導電ピン157を用いることができる。
【0065】
図13−図17を参照すると、2つの実施形態による、バッテリ・セル20と、セル20と外部環境との間を均圧にするために提供されるシャーシ本体300を通る空気通路を有する空気調節システム50とを有する気体消費バッテリ10が示される。示される実施形態においては、シャーシは、一般的に、中心開口部332及び内向きに延びる棚354を有するオーバーモールド本体300により示される。空気セルのような気体消費バッテリ・セル20は、シャーシ300の上面上に接続される。空気侵入ポート64を備えた固定プレート62が、シャーシ300の底面に接続され、ポート68を備えた可動プレート66が、内向きに延びる棚354の下部壁と固定プレート62との間に配置され、プレート66は、プレート62に対して移動することができる。
【0066】
図13−図16に示される実施形態においては、オーバーモールド・シャーシ本体300が、一般的に、流入口350とも呼ばれ、概ねセル20と可動プレート66の間に配置され、開口部332及びセル20と流体連通する第1のポートを有するように示される。さらに、シャーシ本体300は、流出口352とも呼ばれ、外部環境に至るオーバーモールド材料の外部に設けられる第2のポートも有する。オーバーモールド・シャーシ300は、無孔性外側層360及び空気通路356をもたらす多孔性内部容積を有するように製造される。無孔性外側層360は、一般的に、空気非透過性であり、一例によれば、エポキシを含むことができる。多孔性内部容積により、流入口350から流出口352まで延びる均圧空気流通路356が設けられる。多孔性内部容積は、微孔性ポリテトラフルオロエチレン材料、又は通路356を通る低拡散速度で制限された空気が流れるのを可能にする不織多孔性材料のような空気透過性材料を含むことができる。代替的に又はこれに加えて、空気通路356は、低拡散速度で空気が流れるのを可能にする十分に制限的な通路をもたらす空の空隙容積を含むことができる。有利なことに、空気通路356は、空気が流入口350から流出口352までゆっくりと通過するのを可能にするが、空気又は気体が、流入口350と流出口352との間でいずれかの方向に通過し、セル20と外部周囲環境の間を均圧にすることを可能にする。
【0067】
空気通路356の流入口350は、バッテリ・セル20とバルブ・プレート66及び62との間の開放容積と流体連通している。バッテリ・セル20内の気体と外部環境内の気体との間に存在する圧力差により、気体が、空気通路356を通って移動することが可能になる。バッテリ・セル20が気体を生成するとき、気体は、制限された空気通路356を通って外部環境に移動し、バルブ・プレート66とバルブ・プレート62との間のシールを損なわないようにすることができる。これに反して、気体は、流出口352から流入口350まで流れることができるが、一般的に、空気がバッテリ・セル20に自由に供給されず、従って、一般的にバルブが閉鎖されたときに、セル20が高速で放電しないように制限される。
【0068】
一実施形態によると、空気通路356は、水分獲得又は損失のために室温で1年毎にセル容量の10パーセント以下の損失をもたらす空気拡散速度を有する。空気通路356の多孔性容積は、膜を含むことができ、この膜は、一般的に気体に対して多孔性であり、蛇行性の又は制限された空気流路をもたらすが、空気の制限されていない流れがセル20内に自由に流れることはできないことを理解するべきである。一実施形態によると、多孔性容積356は、図16に示すようなバッフル358により与えられるもののような蛇行性空気通路356を含むことができる。バッフル358は、本質的に、オーバーモールド・シャーシ300を通る空気流路356の有効長を増大させ、従って、正味有効空気流路長を増大させる。他の実施形態によると、蛇行性空気流路は、一般的に多孔性であり、過剰な気体をセル20から外部環境に逃がすと同時に、セル20に入る空気の量を最小にすることができるハチの巣パターンを用いることができる。
【0069】
図17に示される実施形態においては、オーバーモールド・シャーシ本体300の上面は、矩形状の内側開口部332から開口部332の周りに約360°延び、シャーシ300の外面に至るほぼ蛇行形状のスロット334を有する。スロット334に収まる大きさにされ、それに嵌合するように適合された一般的な構成を有する中空管336が、スロット334内に配置される。管336は、シャーシ300の内側開口部332及びセル20と流体連通する一方の端部に、流入口338とも呼ばれる第1のポートを有し、外部環境と流体連通する他方の端部に流出口340とも呼ばれる第2のポートを有する。固定プレート62は、シャーシ300の底面上に接続されるように示されている。可動プレート66は、棚354の下に配置され、かつ、固定プレート62に隣接してそれと封止関係にあるので、プレート66は、バルブを開閉するために、プレート62に対して移動可能である。
【0070】
シャーシ300内に設けられた管336は、流入口338と流出口340の間に延びる空気通路を提供し、バッテリ・セル20から放出される気体が外部環境まで管336の空気通路を通過することを可能にする。一実施形態によると、流入口338は、バッテリ・セル20と固定及び可動プレート62及び66との間の開口部332の容積内の所定位置に配置される。従って、管336の伸長した長さ及び小さな直径により、気体が十分に低い拡散速度でセル20から漏出するのを可能すると同時に、低拡散速度のためにセル20への空気進入を十分に制限する、蛇行性空気通路が提供される。一実施形態においては、管336の内径は0.5mm未満に十分に制限され、有効長は少なくとも200mmである。別の実施形態によると、管336を用いる代わりに、スロット334を覆って空気通路として用いることができる。
【0071】
図13−図17の説明された実施形態においては、バッテリ・セル20内の気体とセル20が露出される周囲外部環境内の気体との間に存在する圧力差が、破損をもたらし、それによって後にシール障壁が損傷することがある。従って、バルブ・プレート62と66との間の意図された一次シール障壁が損なわれることがあり、そのため場合によっては、水、酸素、水素、及び二酸化炭素のような気体が制御されずに出入りすることが可能性になり、そのことはバッテリの貯蔵寿命の容認できないほどの損失をもたらすことがある。シャーシ300に設けられた均圧空気通路336又は356により、空気及び他の気体が、空気通路を通って移動し、出入りすることが可能になる。適切な長さの適切なサイズの穴を設けることにより、空気通路は、セル20への酸素及び二酸化炭素の過剰な進入を防ぎながら、金属−空気セル内で生成された水素のような気体の放出を可能にする。
【0072】
図18及び図19を参照すると、空気調節システム50が、一般的に、回転可能なプレート・バルブ・アセンブリを有するように示される。この実施形態においては、レバー484は、一般的にテーパ状のスロット開口部468を有する回転可能プレート466に接続するように示されるが、他の形状を用いることもできる。同様に、空気がバッテリ・セル(図示せず)に浸入するのを可能にする開放バルブ位置で開口部468と位置合わせすることができるスロット開口部464(テーパ状の又は他の形状を有する)を含む固定プレート462が、回転可能プレート466の下にある。プレート462が固定された状態で、回転可能プレート466は、時計回り及び反時計回りに回転してバルブを開閉する。
【0073】
一般的に、シャーシ470のようなフレーム・プレート内に配置されるピボット回転腰部486を有するレバー484が示される。レバー腰部486は、ほぼ丸い形状にすることができは、弾性アーム490によりフレーム・プレート470内に係合される。アーム490は、丸い腰部486を所定位置に保持して、アクチュエータ・ピン488の位置の変動の程度を小さくし、これにより開口部464及び468の位置合わせの変動を小さくするのを助けることができる。腰部486は、SMAワイヤ82a及び82bがもたらす作動に応じて、レバー484が、図18に示されるような1つの肩部492がプレート470と接触する反時計回り位置から、図19に示されるような他の肩部494がプレート470に接触する位置に回転することを可能にする。肩部492及び494は、移動停止端部の役割をし、別の実施形態では省略することができる。SMAワイヤ82a及び82bは、1対の圧着部496及び498によりフレーム・プレート470に接続されるように示され、さらに、別の圧着部499を介してレバー484内に共に接続される。圧着部499は、電気接地経路を含み得ること、又は、代替的な導電経路を通して接地経路をもたらし得ることを理解すべきである。
【0074】
作動において、図18及び図19に示される実施形態の空気調節システム50は、SMAワイヤ82a又は82bの1つに通電してレバー484を回転させ、開放バルブ位置と閉鎖バルブ位置との間でプレート466を移動させることによって作動される。スロット464及び468は、腰部486からの半径が増すにつれてストロークが増大した後に、SMAワイヤ82a及び82bからの作動のギアを提供することを理解すべきである。
【0075】
図18及び図19に示される回転バルブは、固定プレートに対して可動プレートを回転させる。他の実施形態によると、代替的に、プレートの線形の作動を達成することができること、又は固定プレートに対する可動プレートの線形運動及び回転運動の組み合わせを達成することができることを理解すべきである。さらに、バルブが、可動プレート及び固定プレートに関して説明されたが、バルブは1つ又は2つの可動プレートを含むことができ、1つのプレートが他のプレートに対して移動してバルブを開閉することができることを理解すべきである。
【0076】
一実施形態によれば、図20−図23を参照すると、空気調節システム50が、固定バルブ・プレート62と可動バルブ・プレート66との間に配置された丸い部材500を含む封止媒体502を有するように示される。この実施形態においては、空気調節システム50は、環状本体部分72を有するシャーシ70と、内向きに延びる棚71と、可動バルブ・プレート66が配置される開口部74とを含むように示される。内向きに延びる棚71は、プレート66がその最も長い寸法と平行な軸線に沿って直線状に摺動できるように、該プレート66の短い方の辺に余分な空間を設けながら、可動バルブ・プレート66の周囲の細長い上側縁に接触するような形状及びサイズにされる。固定バルブ・プレート62は、シャーシ70の底部側表面に接続される。固定バルブ・プレート62をシャーシ70の底面に接着、締結、又は他の方法で接続することができる。
【0077】
可動バルブ・プレート66は、バルブが開放位置にあるとき、固定プレート62の複数のアパーチャ64と位置合わせされる複数のアパーチャ68を有する。プレート66は、開放バルブ位置と閉鎖バルブ位置との間で移動するように、シャーシ70の開口部74内で摺動可能である。閉鎖バルブ位置にあるときには、空気がアパーチャ64及び68を通って、気体消費バッテリ・セルに到達するのを防止するように、アパーチャ68及び64は位置合わせされない。空気(例えば、酸素)を受けるために、図14及び図15に示されるシャーシ300上のバッテリ・セル20の、バルブと流体連通しているバッテリ・セル20の1つ又はそれ以上の空気侵入ポートとの組み立てと同様に、気体消費バッテリ・セルをシャーシ70の上面に取り付け得ることを理解すべきである。
【0078】
空気調節システム50は、可動バルブ・プレート66と固定バルブ・プレート62との間に配置された封止媒体502を含む。封止媒体502は、例示的な実施形態においては球状部材500として示され、説明される複数の丸い部材を含む。丸い部材は、ほぼ直線の又はテーパ状のシリンダのような他の形状を有することができる。球状部材500は、流体層69内に配置され、可動バルブ・プレート66が固定バルブ・プレート62に対してより容易に摺動するのを可能にする役目をする。従って、封止媒体502は、バルブ・プレートが、一実施形態によりSMA構成要素82a及び82bとして示されるアクチュエータによる力をあまり必要としない方法で互いに対して移動し、バルブを開閉するのを可能にする。さらに、球状部材500は、制御されたスタンドオフ高さを与え、可動プレート66と固定プレート62との間の最小分離距離を維持するように働く。
【0079】
流体層69内の流体は、バルブを通る空気の漏れを防ぐためのシールとしても、摩擦を減らすための潤滑剤としても働く。流体の使用は、他の方法で良好なシールをもたらすために、バルブ・プレート62及び66の複雑で高価な機械を必要とすることなく、バルブの密封特性が向上させることを理解すべきである。球状部材500により維持される制御された高さの間隙は、摺動プレート66と固定プレート62との間に一定の距離を与え、流体の漏出速度及び厚さの制御をさらに助ける。前の実施形態で説明されたように、封止媒体502はまた、長期間にわたって流体を保持し、かつ、流体層69をプレート62とプレート66との間に維持するために、プレート62及び66の一方又は両方の界面上に多孔性材料のフィルム又はコーティングも含む。
【0080】
封止媒体502が、固定バルブ・プレート62の上部に適用された状態で図20及び図21に示される。しかしながら、空気調節バルブの組み立て中、封止媒体502を、固定プレート62の上面、可動プレート66の底面、又は両方の面に適用してもよいことを理解すべきである。見られるように、球状部材500は、該球状部材500が一般的にバルブ・プレート62とバルブ・プレート66との間の界面領域の異なる領域内に存在するように、流体層69の全体にわたって分散される。球状部材500は、示されるように流体層69内にランダムに分散させてもよく、又は所望のパターンで配置してもよい。
【0081】
球状部材500は、流体中で及びバッテリが露出されることが予想されるタイプの環境において相対的に不活性であるいずれかの材料で作製することができる。適切な材料の例として、ポリエチレン及びポリプロピレンのようなプラスチック、ガラス、セラミック、ステンレス鋼のような金属が挙げられる。好ましい材料は、ポリプロピレンビーズ、セラミックビーズ、ガラスビーズ、及びステンレス鋼ビーズを含む。更に別の実施形態によると、他の材料を用いて摩擦減少媒体502の丸い部材500を形成できることを理解すべきである。最小量の材料でプレート62とプレート66との間の所望の距離をもたらすように、球状部材500のサイズは均一であることが好ましい。
【0082】
特に図22及び図23を参照すると、空気調節システム50のバルブ・プレート66及び62が、気体消費バッテリ・セルへの空気の侵入を可能にする図22の開放バルブ位置及びセルへの空気の侵入を防止する図23の閉鎖バルブ位置で示される。図22に見られるように、プレート66のアパーチャ68がプレート62のアパーチャ64と位置合わせされるように可動プレート66が開放位置に摺動により移動された場合、流体は、空気調節装置を通過できるようになる。封止媒体502は、流体層69内に配置された球状部材500で構成され、プレート62及び66の一方又は両方の界面上の材料(図示せず)のフィルム又はコーティングによって可動プレート66と固定プレート62との間に保持されている。流体の表面張力特性のために、流体はシールをもたらし、プレート上のフィルム又はコーティングは、流体を収容するのを助けるので、流体は2つのバルブ・プレート66と62との間に配置されたままであり、その結果、流体はアパーチャ68又は64を通って流れない。可動プレート66を図23に示されるような閉鎖位置に動かすことによって、アパーチャ68及び64はもはや互いに位置合わせされず、空気流がそこを通るのが防止される。可動プレート66が固定プレート62に対して移動するにもかかわらず、表面張力及びフィルム又はコーティングによる封じ込めのために、流体は、有効にアパーチャ68及び64から離れたままであり、代わりに、アパーチャ68及び64の周りに流れ、流体及び摩擦減少媒体の球状部材500がバルブ・プレート66及び62の非開放部分間に配置されたままである。従って、流体は、空気の漏れを防ぐためにプレート66とプレート62との間にシールを形成する。
【0083】
示される例示的な実施形態においては、特定的には球状部材500を含む封止媒体は、可動プレート66と固定プレート62との間の最小スタンドオフ距離をもたらす高さHを有する。球状部材500は、可動プレート66の移動中に転がる又は回転することがあり、かくして、摩擦を減少させるための、従って可動プレート66を作動させ移動させるのに必要とされる力を減少させるための転がり軸受として働く。その結果、可動バルブ・プレート66を作動させるのに必要とされるバッテリ・エネルギーがより少なくなる。球状部材500はまた、2つのバルブ・プレート間の最小スタンドオフ距離も提供する。球状部材500は、特にバルブを循環させたときに、プレート66とプレート62との間の間隙が連続的に減少するのを防止する。流体は、特に、封止媒体502に組み込まれた制御された高さを提供する球状部材500を用いる場合に潤滑特性をさらに高める。
【0084】
一実施形態によると、球状部材500は、1ミクロンから200ミクロンまでの範囲の直径を有する、微小球とも呼ばれる小さい球として形成される。より特定の実施形態においては、微小球は、約6−20ミクロンの直径を有する。一実施形態においては、潤滑流体内に配置された球状部材500の量は、流体の約1重量パーセントから10重量パーセントまでの範囲である。
【0085】
一例によると、固定バルブ・プレート62は、約20ミル(508ミクロン)の厚さを有する固定バルブ・プレート62と比べて、約10ミル(254ミクロン)の厚さを有する。この例においては、封止媒体502の球状部材500は、約1/3ミル(8.5ミクロン)の直径を有する。他のサイズの丸い部材502を、様々な厚さを有するバルブ・プレート間の封止媒体502に用い得ることを理解すべきである。
【0086】
封止媒体502に従って球状部材500をここに示すが、他の丸い部材500を用いて、摩擦の低減及びバルブ・プレート66と62との間のスタンドオフ距離を提供できることを理解すべきである。例えば、丸い部材500は、可動プレート66の固定プレート62に対する移動の方向に転がる又は回転するように配置されたシリンダを含むことができる。さらに、丸い部材500を成形された表面輪郭で配置することによって、丸い部材500をバルブ・プレート66及び62に対して所定位置に保持できることを理解すべきである。一実施形態によると、半円の形態の戻り止めを、固定プレート62の上面及び可動プレート66の底面のいずれか又は両方に組み込むことができる、戻り止めは、丸い部材500を受け、該丸い部材500をバルブ・プレートの1つに対する特定の位置に保持する。別な例によると、丸い部材500の1つ又はそれ以上の位置を維持するために、固定プレート62の上面及び可動プレート66の底面のいずれか又は両方に形成されるスロットとして、戻り止めを実装することができる。
【0087】
従って、有利なことに、丸い部材500を利用する封止媒体502は、可動プレート66と固定プレート62との間の摩擦を減少させ、可動プレート66を動かすためにアクチュエータに給電するのに、バッテリから要求するエネルギーがより少ない。さらに、丸い部材500は、向上したバルブ動作を達成するために適切な距離を維持することによって、バルブ・プレート62とバルブ・プレート66との間にスタンドオフ距離を与えて、向上した流体の潤滑及び密封特性をもたらす。これにより、丸い部材500を利用することによって、向上したエアマネージャ・バルブが実現される。
【0088】
空気が漏れることがある経路を生成することなく、流体を封止媒体内に適切に保持するために、毛管流ポロメータを用いて、以下に説明されるようなバブルポイント法により求められる0.03マイクロメートルから15マイクロメートルまでの平均細孔径を有する多孔性材料から、適切な流体封じ込め層を作製することができる。平均細孔径は、0.04マイクロメートルから15マイクロメートルまでであることが好ましい。平均細孔径は、少なくとも10マイクロメートルであることがより好ましい。平均細孔径が12マイクロメートル未満であることがより好ましい。
【0089】
多孔性ポリマー材料の透気度は、ガーレー透気度値が、後述される方法によるガーレー透気度試験機を用いて求められる3秒から500秒までであることが好ましい。
【0090】
流体封じ込め層内の材料と流体は相互作用するので、空気調節システムのプレートが水平でないようにバッテリが配向されたときに、流体は、空気調節システムのプレート間の界面内に保持される。この流体保持能力は、最大ウィッキング高さに関して定めることができる。最大ウィッキング高さは、プレートの最大界面寸法に等しいか又はこれより大きい。最大ウィキング高さを計算する方法のような、ウィッキング高さを求める方法は、以下に説明される。最大ウィッキング高さは、一定期間後のウィッキング高さの関数であるので、単に18時間などの比較的長い時間でウィッキング高さを測定することは便利である。好適な流体封じ込め層の材料は、18時間後に10mmから100mmまでのウィッキング高さを有することができる。18時間後のウィッキング高さは、11mmより高いことが好ましく、15mmより高いことがより好ましい。18時間後のウィッキング高さは61mm以下であることが好ましく、50mm以下であることがより好ましい。
【実施例】
【0091】
実施例1
試験装置を用いて、バルブの固定プレートと摺動プレートとの間のオイル層からなる封止媒体を有する摺動プレート・バルブの機能を評価した。この装置は、その開放端にわたってバルブが取り付けられた空の矩形状の缶を含んでいた。両方のプレートは、貫通するアパーチャ(穴)を有しており、プレートは、穴が位置合わせされていない閉鎖位置で組み立てられた。摺動プレートは、固定プレートより小さく、透明な材料で作製され、バルブの外側に取り付けられた。バルブに圧力バイアスをかけることを可能にするためにシリンジを装置に接続し、高温での試験を可能にするために電気発熱体を固定プレートに取り付けた。缶内の内圧は圧力計で測定することができ、固定プレートの温度は熱電対で求めることができ、オイル・メニスカスは顕微鏡で観察することができた。摺動プレートの全周囲の周り及び両方のプレートの穴の縁部にメニスカスが形成されるまでオイルを加えて、プレート間の界面を充填した。幾つかのタイプのオイルを試験した。
【0092】
様々な温度及び印加圧力でバルブを観察した。圧力バイアスが増大するにつれて、プレート間のオイル・シールの断続的な破れ(breach)が生じる。これは、透明な摺動プレートの周りで及びこれを通して観察される、オイルとプレートと間のメニスカスから明らかであり、メニスカスが移動して、固定プレートの1つ又はそれ以上の穴と摺動プレートの少なくとも1つの穴及び/又は縁部との間に開放経路が形成された。オイル粘度は、時間の経過だけでオイル・シールが破れることなく耐えることができる内圧に影響を与えるように見えた。時間が経つにつれて、メニスカスは、特に温度が高いほど(オイル粘度が低いほど)、固定プレート上で外向きに、摺動プレートの周囲から遠ざかる方向に移動し、より低い内圧でオイル・シールの破れをもたらすことが観察された。さらに、オイルとプレートとの間の表面張力(プレート面に対するオイル・シール・メニスカスの測定された接触角から求められる)が大きいほど、破れる前にオイル・シールが耐えることができた圧力は高かった。
【0093】
実施例2
改造された試験装置を用いて、さらなる試験を行った。改造された試験装置は、その開放端にわたって摺動プレート・バルブが取り付けられた空の矩形状の缶を含んでいた。バルブは、図18及び図19に示されるバルブと同様の、両方のプレート内に台形のスロットを有する回転バルブとした。回転バルブ・プレートは、バルブの外側に置いた。両方のプレートは、洋銀(NS106、硬質)で作製された。図18及び図19に示され、上述されたように、バルブはさらに、アクリル製フレーム・プレートに取り付けられたアクリル製レバー・アームと、2つのSMAアクチュエータとを含んでいた。
【0094】
バルブを閉鎖し、バルブ・プレート間の間隙を58乃至64μmにして、直径7μmのポリメチルメタクリレートビーズを1重量パーセント含むKRYTOX(登録商標)102グレード・オイル(透明で無色のフッ素化合成油)を、両方のプレートのスロットの周り及び回転プレートの周縁部にオイル・メニスカスが観察されるまで、プレート間の界面内に吸い込ませた。
【0095】
プレート間の界面の平面が水平位置になるように装置を置き、バルブを室温で168時間にわたって観察した。24時間後、オイル内にあるビーズの存在により確認されるように、オイルは、固定プレートの表面にわたって広がった。168時間で、オイル・メニスカスは、固定プレートのスロットの幾つかの縁部から引っ込んだ。これらの効果は、バルブの使用(回転プレートの回転)、バルブの内側にかかる内圧の存在、及び、バルブを水平以外の他の位置に方向付けることにより加速されることが予想された。この観察結果は、時間が経つにつれてプレート間のオイル層がプレート間の界面から流出して、もはやプレートの隣接面間に有効なシールをもたらさなくなる可能性があり、密封媒体の流体をプレート間の界面内に封じ込める手段が必要とされることを示した。
【0096】
実施例3
種々のフィルムを、密封媒体の流体をバルブ・プレート間に保持するその能力を評価するために選択した。選択された材料及び典型的な特性を表1にまとめる。厚さは、ASTM D−374に従って求めることができる。見掛け密度は、2.286cm(0.900インチ)×20.27cm(7.98インチ)の試料から、試料重量を5回の厚さ測定の平均に基づいた試料容積で割ることによって求めることができる。ガーレー透気度は、0.254cm(0.1インチ2)のオリフィスを備えたガーレー透気度試験機を用いて、30.99cm(12.2インチ)の水の圧力損失で2.5cm2の空気が試料を通過する時間として求めることができる。平均細孔径は、毛管流ポロメータ(米国ニューヨーク州Ithicaの、Porous Materials,Inc.,社によって製造された、型番CFP−1500−AEXMCなど)を用いて、アルコール・バブルポイント試験において試料を通過する最初の窒素気泡を生じるのに必要とされる圧力を測定し、この圧力に反比例する細孔半径を計算することによって、求めることができる。試料をバブルポイント試験機の固定具内にクランプし、イソプロピルアルコールを容器内に注ぎ入れて、アルコールの液面が試料と固定具の上部との間のほぼ中間になるようにし、試験機を窒素で加圧し、最初の気泡が試料から出てきたときの圧力計内の水銀の液面を記録する。細孔半径(r)は、次式
r=(43.4×COSシータ)/(3.39×P)
からマイクロメートル単位で計算され、ここでシータは、試料上でのアルコールの接触角であり、Pは、水銀のインチで表した圧力である。
【0097】
バルブが、プレート間の界面の平面が垂直位置になる方向に向けられている場合、密封媒体の流体をバルブ・プレート間の界面内に保持するためには、毛管圧は、プレート間の界面内に収容されている流体の容積に作用する静水圧を上回らなければならない。プレート間の多孔性材料の層により支持することができる流体柱の高さは、多孔性材料の多孔度、孔径、及びねじれの関数であり、これを等価な毛管圧に変換することができる。従って、多孔性材料が摺動プレート・バルブ内の垂直プレート間に封止流体を保持するのを補助するためには、流体は、多孔性材料の垂直ストリップでの吸い上げが可能でなければならない。
【0098】
吸上(ウィッキング)試験を用いて、封止流体が多孔性材料の垂直ストリップで吸い上げられる高さを時間の関数として求めることができ、吸い上げが大きい程、その多孔性材料はプレート間に流体を保持するのにより有効である。ウィッキング試験は、各試料のストリップを一端から垂直に吊るして、他端を流体内に浸漬し、流体が各試料上で吸い上げられた高さ(ウィッキング高さ)を定期的に計測し、その時間とウィッキング高さとを記録することによって行われた。流体内に浸漬された試料の端部を流体の表面下に固定して、試験中、ストリップをピンと張った状態に保持することができる、次式を用いて、試験された各試料について、最大ウィッキング高さと、細孔の幾何学的形状に関連した時定数とを計算することができ、
h/hmax+Ln[1−(h/hmax)]=−at
ここで、hは、時間tにおけるウィッキング高さであり、hmaxは、最大ウィッキング高さであり、aは、時定数である。
【0099】
表1
【0100】
(表1続き)
*試験において、1日を超える間、本質的に空気は試料を通過しなかった。
【0101】
KRYTOX(登録商標)102オイル及び表1の多数のフィルムを用いて、ウィッキング試験を行った。試験されたフィルムタイプの各々についての計算を含む結果を、表2にまとめる。
表2
【0102】
プレートの界面の平面が垂直位置にある場合に流体をバルブ・プレート間に保持するためには、hmax値は、少なくともバルブの最大界面寸法と同じくらいの大きさであることが好ましい。この試験は、試験された全ての微孔性フィルムが、KRYTOX(登録商標)102オイルをバルブ・プレート間に保持するのを補助することを示し、大きめのバルブのためにはGoodfellow FP301220 PTFEフィルムが最も有効であり得ることを示唆する。試験されたフィルムについての大きい時定数(表2における1/aの値)は、オイルがフィルムを通って移動するためにはかなりの時間が必要であることを示唆するので、フィルムは、バルブ内に流体封じ込め層としてのフィルムがない場合よりも実質的に長い時間にわたってオイルを保持するはずである。
【0103】
実施例4
上述したウィッキング試験を、封止流体及びフィルムの種々の組合せに対して行った。KRYTOX(登録商標)102汎用潤滑剤(ぺルフルオロポリエーテル)に加えて、Dow Corning 200(登録商標)20cSt流体(シリコーン・ベースの流体)、Dow Corning 705拡散ポンプ油(シリコーン・ベースの流体)、及びDow Corning 704拡散ポンプ油(シリコーン・ベースの流体)を含めた。これらの材料の特性を表3にまとめる。
表3
【0104】
ウィッキング高さhを種々の時間において測定し、結果を表4にまとめる。
【0105】
DeWaI IndustriesのD/W202材料(焼成PTFE)は、試験された流体を実質的に吸い上げなかった。バッテリのセパレータ材料として典型的に用いられる材料(例えば、Tonen SETELA(登録商標)ポリエチレンセパレータ、Kimberly Clark S3703クラフト紙セパレータ、及びCelgard#3501セパレータ材料)は、他のフィルムよりも流体を良く吸い上げる傾向にあった。一般に、Dow Corning 705(登録商標)オイル(シリコーン・ベースのオイル)は、試験された全てのフィルム、特にPTFEフィルムによる吸い上げが、他の流体よりも少ない傾向にあった。Dow Corning 704(登録商標)オイル(705(登録商標)オイルよりも低粘度のシリコーン・ベースのオイル)は、PTFEフィルムでは良く吸い上げられなかったが、他のフィルムのうちのいくつかのフィルムでは試験された他の流体と比べて比較的良好に吸い上げられた。表4のデータは、流体封じ込め層のためには流体と材料との間の相互作用を考慮することが望ましいことを示す。
【0106】
表4
【0107】
(表4続き)
【0108】
実施例5
実施例2に記載の試験装置内で、KRYTOX(登録商標)102を用いて、表1の2つの0.1016mm厚さのフィルム(EGC PlasticsのCD123 PTFE及びW.L.GoreのExcellerator PTFE)を試験した。缶内の相対湿度を測定するための容量型湿度センサ含むように試験装置をさらに改造し、バルブを通じての拡散による漏れを計算するために、別の容量型湿度センサを用いて、試験装置の外部の制御された湿度環境内の相対湿度を測定した(乾燥塩化リチウム塩を用いて維持され、13パーセントであった)。
【0109】
試験ごとに、フィルムのシートをバルブの固定プレートの形に切ってその上にかぶせ、固定プレート内の開口部に対応するスロットを、レーザを用いてフィルム内に切り抜いた。バルブは、固定プレート及びフィルム内の開口部が可動プレート内の開口部と位置あわせされていない、閉鎖位置で組み立てられた。室温で、フィルムの露出した表面にオイルを付与し、プレート缶のフィルム内に吸い込ませた。388時間にわたって、オイル・メニスカスを観察し、かつ試験装置の内側及び外側の相対湿度を監視した。シールの破れは観察されず、シールを通じた平均漏れ速度は、約0.6μg/時であった。
【0110】
単一のセルを有する単一のバッテリに関して本発明を上述してきたが、本発明の態様は、複数のセルを有するバッテリ及び複数のバッテリを有するバッテリ・パックに適用することができる。例えば、空気調節システムをバッテリ・パックのハウジング内に完全に又は部分的に配置して、バッテリ・パック・ハウジング内に空気を通すことを可能とするバルブを選択的に開閉させるようにすることができる。この場合、バッテリごとに別個の空気調節システムが必要とされるわけではない。さらに、空気調節システムは、バッテリ・パック内のいずれか1つバッテリ若しくはバッテリのグループ若しくは全てのバッテリから電力を供給することもでき、又はバッテリ・パックの外部の別のバッテリから電力を供給することもできる。
【0111】
空気調節システムは、1つのバッテリ、複数のバッテリ、若しくはバッテリ・パックによって電力供給されるデバイス内に完全に若しくは部分的に配置することもでき、又はそれ以外の方式で、1つのバッテリ、複数のバッテリ、若しくはバッテリ・パックから分離して設けることもできる。例えば、バルブは、様々な多重セル・パック・サイズを供する予めパッケージされたモジュールとすることができる。従って、バルブと、バルブ電源と、制御部とを、気体消費セルとは別にパッケージすることが有利であり得る。
【0112】
気体消費バッテリと空気調節システムとの組み合わせは、空気調節システムの全て又は一部を収容し、そこに1つ又はそれ以上の交換可能な気体消費バッテリが挿入された、モジュールを含むことができる。これにより、空気調節システムの少なくとも一部を再利用することが可能になるので、ユーザにとってのバッテリ1個あたりのコストが削減される。このモジュールは、1つ又はそれ以上の空気侵流入口を含むことができ、そしてまた、空気がバッテリに到達するための通路を提供する内部チャネル、プレナム又はその他の内部空間を含むことができる。モジュールとバッテリとは、モジュールとバッテリとが不注意で分離することを防止するために、バッテリの一部である対応する電気接点と協働する、モジュールの一部である電気接点の使用を含む、いずれかの適切な方式でひとまとめにすることができる。例えば、モジュール上の電気接点は、バッテリの電気接点を含むバッテリ・ケース内のスロットの中にパチンとはまる突き出したブレードの形とすることができる。ブレードは、締まりばめ、1つ又はそれ以上のばね、機械式施錠機構およびそれらの種々の組み合わせといった、いずれかの適切な手段で、スロット内に保持することができる。モジュール及びバッテリの寸法、形及び電気接点は、正しい電気的接触を保証し、バッテリの反転を防ぐために、モジュールとバッテリとが正しい向きでのみ嵌り合うようにさせる構成とすることができる。組み合わされたバッテリ及びモジュールがその中に装着されるデバイスとの正しい電気的接触を作り出すために、モジュール、バッテリ又はその両方が、外部接点端子を有することができる。いくつかの実施形態において、デバイスからモジュールを取り出すことなく、バッテリを交換することができる。
【符号の説明】
【0113】
10:バッテリ
20:セル
30:セル・ハウジング
32、64:空気侵入ポート
34:缶
35:底面
36:カバー
38:ガスケット
40:第1の電極
42:第2の電極
44:セパレータ
50:空気調節システム
60、170:バルブ
62、462:固定プレート
64、68、174:アパーチャ
66、466:可動プレート
67、75、102:穴
69:流体層
70、470:シャーシ
71、354:棚
72:シャーシ本体
74、332、464、468:開口部
78:凹部
80、175:アクチュエータ
82a、82b:SMA(形状記憶合金)ワイヤ
84、484:レバー・アーム
86:ピボット・ピン
88、304、488:アクチュエータ・ピン
90:制御回路
92、94:接点端子
100:蓋
104:スタンドオフ
105:ビア
110:導体
157:導電ピン
172:プレート
180:ラッチ
300:オーバーモールド・シャーシ本体
302:リブ
334:スロット
336:管
338、350:流入口
340、352:流出口
356:空気通路
358:バッフル
470:フレーム・プレート
486、586:腰部
490:アーム
492、494:肩部
500:球状部材
502:封止媒体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気中の気体を活物質として用いるバッテリ・セルへの空気の通過を制御するための空気調節システムであって、前記空気調節システムは、
貫通する少なくとも1つのアパーチャを有する第1のプレートと、貫通する少なくとも1つのアパーチャを有する第2のプレートとを含むバルブと、
前記第1のプレートを前記第2のプレートに対して移動させて前記バルブを開閉し、前記空気の通過を調節するためのアクチュエータと、
前記第1のプレートと前記第2のプレートとの間に配置され、流体封じ込め層と、前記流体封じ込め層内に部分的に収容される流体とを含む封止媒体と、
を備え、
前記流体封じ込め層は、毛管流ポロメータを用いるバブルポイント法により求められる、0.03マイクロメートルから15マイクロメートルまでの平均細孔径を有する多孔性ポリマー材料を含み、
前記多孔性ポリマー材料での前記流体の最大ウィッキング高さは、前記第1及び第2のプレートの最大界面寸法に等しいか又はこれを上回り、前記流体の試料の表面の上に前記多孔性ポリマー材料のストリップを垂直方向につり下げることによって求められることを特徴とする空気調節システム。
【請求項2】
前記ストリップの縁部を前記流体中に浸漬させた後18時間で前記多孔性ポリマー材料のストリップが前記流体を吸い上げることができる高さは、10mmから100mmまでであることを特徴とする、請求項1に記載の空気調節システム。
【請求項3】
前記ストリップの縁部を前記流体中に浸漬させた後の18時間で前記多孔性ポリマー材料のストリップが前記流体を吸い上げることができる高さは、11mmを上回り、好ましくは15mmを上回ることを特徴とする、請求項2に記載の空気調節システム。
【請求項4】
前記ストリップの縁部を前記流体中に浸漬させた後の18時間で前記多孔性ポリマー材料のストリップが前記流体を吸い上げることができる高さは、61mm以下であり、好ましくは50m以下であることを特徴とする、請求項2〜請求項3のいずれかに記載の空気調節システム。
【請求項5】
前記多孔性ポリマー材料は、微孔性ポリマーフィルムを含むことを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の空気調節システム。
【請求項6】
前記微孔性フィルムは、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンを含むことを特徴とする、請求項5に記載の空気調節システム。
【請求項7】
前記微孔性フィルムは、ポリテトラフルオロエチレンを含むことを特徴とする、請求項6に記載の空気調節システム。
【請求項8】
前記多孔性ポリマー材料は、非焼成材料であることを特徴とする、請求項1〜請求項7に記載の空気調節システム。
【請求項9】
前記多孔性ポリマー材料は、3秒から500秒までのガーレー透気度の値を有することを特徴とする、請求項1〜請求項8のいずれかに記載の空気調節システム。
【請求項10】
前記多孔性ポリマー材料は、0.04マイクロメートルから15マイクロメートルまでの平均細孔径を有することを特徴とする、請求項1〜請求項9のいずれかに記載の空気調節システム。
【請求項11】
前記多孔性ポリマー材料は、少なくとも10マイクロメートルの平均細孔径を有することを特徴とする、請求項10に記載の空気調節システム。
【請求項12】
前記多孔性ポリマー材料は、12マイクロメートル未満の平均細孔径を有することを特徴とする、請求項10に記載の空気調節システム。
【請求項13】
前記流体は、フッ化合成流体及びシリコーン・ベースの流体から成る群から選択される少なくとも1つの流体を含むことを特徴とする、請求項1〜請求項12までのいずれかに記載の空気調節システム。
【請求項14】
前記流体は、ペルフルオロポリエーテルを含むことを特徴とする、請求項13に記載の空気調節システム。
【請求項15】
前記流体は、シロキサンポリマーを含むことを特徴とする、請求項13に記載の空気調節システム。
【請求項16】
セル外部からの空気中に含まれる気体を活物質として用いる気体消費電極を含むバッテリ・セルと、
対電極と、
電解質と、
前記電極及び前記電解質を収容し、かつ、空気がそこを通ってハウジングに入ることができる少なくとも1つの開口部を有するハウジングと、
請求項1〜請求項15のいずれかに記載の空気調節システムと、
を含むことを特徴とするバッテリ。
【請求項1】
空気中の気体を活物質として用いるバッテリ・セルへの空気の通過を制御するための空気調節システムであって、前記空気調節システムは、
貫通する少なくとも1つのアパーチャを有する第1のプレートと、貫通する少なくとも1つのアパーチャを有する第2のプレートとを含むバルブと、
前記第1のプレートを前記第2のプレートに対して移動させて前記バルブを開閉し、前記空気の通過を調節するためのアクチュエータと、
前記第1のプレートと前記第2のプレートとの間に配置され、流体封じ込め層と、前記流体封じ込め層内に部分的に収容される流体とを含む封止媒体と、
を備え、
前記流体封じ込め層は、毛管流ポロメータを用いるバブルポイント法により求められる、0.03マイクロメートルから15マイクロメートルまでの平均細孔径を有する多孔性ポリマー材料を含み、
前記多孔性ポリマー材料での前記流体の最大ウィッキング高さは、前記第1及び第2のプレートの最大界面寸法に等しいか又はこれを上回り、前記流体の試料の表面の上に前記多孔性ポリマー材料のストリップを垂直方向につり下げることによって求められることを特徴とする空気調節システム。
【請求項2】
前記ストリップの縁部を前記流体中に浸漬させた後18時間で前記多孔性ポリマー材料のストリップが前記流体を吸い上げることができる高さは、10mmから100mmまでであることを特徴とする、請求項1に記載の空気調節システム。
【請求項3】
前記ストリップの縁部を前記流体中に浸漬させた後の18時間で前記多孔性ポリマー材料のストリップが前記流体を吸い上げることができる高さは、11mmを上回り、好ましくは15mmを上回ることを特徴とする、請求項2に記載の空気調節システム。
【請求項4】
前記ストリップの縁部を前記流体中に浸漬させた後の18時間で前記多孔性ポリマー材料のストリップが前記流体を吸い上げることができる高さは、61mm以下であり、好ましくは50m以下であることを特徴とする、請求項2〜請求項3のいずれかに記載の空気調節システム。
【請求項5】
前記多孔性ポリマー材料は、微孔性ポリマーフィルムを含むことを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の空気調節システム。
【請求項6】
前記微孔性フィルムは、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンを含むことを特徴とする、請求項5に記載の空気調節システム。
【請求項7】
前記微孔性フィルムは、ポリテトラフルオロエチレンを含むことを特徴とする、請求項6に記載の空気調節システム。
【請求項8】
前記多孔性ポリマー材料は、非焼成材料であることを特徴とする、請求項1〜請求項7に記載の空気調節システム。
【請求項9】
前記多孔性ポリマー材料は、3秒から500秒までのガーレー透気度の値を有することを特徴とする、請求項1〜請求項8のいずれかに記載の空気調節システム。
【請求項10】
前記多孔性ポリマー材料は、0.04マイクロメートルから15マイクロメートルまでの平均細孔径を有することを特徴とする、請求項1〜請求項9のいずれかに記載の空気調節システム。
【請求項11】
前記多孔性ポリマー材料は、少なくとも10マイクロメートルの平均細孔径を有することを特徴とする、請求項10に記載の空気調節システム。
【請求項12】
前記多孔性ポリマー材料は、12マイクロメートル未満の平均細孔径を有することを特徴とする、請求項10に記載の空気調節システム。
【請求項13】
前記流体は、フッ化合成流体及びシリコーン・ベースの流体から成る群から選択される少なくとも1つの流体を含むことを特徴とする、請求項1〜請求項12までのいずれかに記載の空気調節システム。
【請求項14】
前記流体は、ペルフルオロポリエーテルを含むことを特徴とする、請求項13に記載の空気調節システム。
【請求項15】
前記流体は、シロキサンポリマーを含むことを特徴とする、請求項13に記載の空気調節システム。
【請求項16】
セル外部からの空気中に含まれる気体を活物質として用いる気体消費電極を含むバッテリ・セルと、
対電極と、
電解質と、
前記電極及び前記電解質を収容し、かつ、空気がそこを通ってハウジングに入ることができる少なくとも1つの開口部を有するハウジングと、
請求項1〜請求項15のいずれかに記載の空気調節システムと、
を含むことを特徴とするバッテリ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公表番号】特表2012−532421(P2012−532421A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−517910(P2012−517910)
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際出願番号】PCT/US2010/040766
【国際公開番号】WO2011/002987
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(397043422)エバレデイ バツテリ カンパニー インコーポレーテツド (123)
【出願人】(303061317)ザ テクノロジー パートナーシップ パブリック リミテッド カンパニー (9)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際出願番号】PCT/US2010/040766
【国際公開番号】WO2011/002987
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(397043422)エバレデイ バツテリ カンパニー インコーポレーテツド (123)
【出願人】(303061317)ザ テクノロジー パートナーシップ パブリック リミテッド カンパニー (9)
【Fターム(参考)】
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