可動枕付き入浴用機器
【課題】 上肢や下肢に障害を有する入浴者に対する最適な枕部の配置を可能にすると共にワンタッチ操作で枕部の着脱を可能とした可動枕付きの入浴用機器を提供すること。
【解決手段】 背受け部5の長手方向に沿って長孔を形成し、枕部18に前記長孔に挿通される棒状部材20の一端部を固着し、前記棒状部材20に前記枕部18を前記背受け部5に対して固定状態に保持する枕保持部材22を移動可能に挿嵌し、前記枕保持部材22を前記棒状部材20に外嵌され且つ一端及び他端がそれぞれ前記棒状部材20及び前記枕保持部材22に固定される弾性体24を介して前記背受け部5に圧接することで、前記枕部18を前記背受け部5に対して固定状態に保持する構成とした。
【解決手段】 背受け部5の長手方向に沿って長孔を形成し、枕部18に前記長孔に挿通される棒状部材20の一端部を固着し、前記棒状部材20に前記枕部18を前記背受け部5に対して固定状態に保持する枕保持部材22を移動可能に挿嵌し、前記枕保持部材22を前記棒状部材20に外嵌され且つ一端及び他端がそれぞれ前記棒状部材20及び前記枕保持部材22に固定される弾性体24を介して前記背受け部5に圧接することで、前記枕部18を前記背受け部5に対して固定状態に保持する構成とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、介護用入浴装置に使用され入浴者を入退浴させる入浴用機器、例えば、入浴用車椅子又は入浴用担架等の枕に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に開示される入浴用担架の枕は、枕の下方に突出するように取り付けられた駒を担架本体に形成された長孔に挿入し、この駒をノブで締め付けることで担架本体に対して固定される構成であり、従って、枕を担架本体に対して移動させる際には、担架本体の裏側に手を回しノブを緩め固定を解除した後、枕を所望の位置に移動させ、再度ノブを締め枕の固定を行うといった煩わしい作業が必要とされていた。
【0003】
本件出願人は上記の問題点を解決しより容易な操作で枕を所望の位置に移動し固定可能とする為に、下記特許文献2に開示される技術を創出した。即ち、枕裏部から突出された取着体を乗せ体(担架)の上体載置部に形成される長孔に貫通するように挿入し、挿入した取着体に摺動体(スライダー)を外嵌し、次に摺動体を押さえる弾力要素(バネ)を外嵌し、弾力要素のストッパーとなる止着体(ナットと虫螺子)を取着体に螺着する構成と成すことで、枕の位置調節に係る作業が特許文献1に開示される技術と比して容易に行えるよう改良を施した。
【0004】
しかしながら、特許文献2に開示される枕は乗せ体の長手方向に対しては容易に移動させることができるが、乗せ体面に対して回動自在な構成には成されていない為、脳疾患等により左又は右半身が半身不随となった片麻痺の入浴者等に対して最適な枕位置を提供することができないといった問題点を有していた。
【0005】
更に、特許文献2に記載される枕の着脱時には止着体を取着体に取り付けたり或いは取り外したりする為の専用工具が必要であり、専用工具を用いずワンタッチ操作で枕を着脱することはできず、故に、乗せ体の清掃作業時等に枕を乗せ体から取り外す作業、及び枕を乗せ体に取り付ける作業に手数がかかり面倒であるといった問題点を有していた。
【特許文献1】特開2000−14736号
【特許文献2】特開2001−314475号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記諸問題点に鑑みてなされたもので、上肢や下肢に障害を有する入浴者に対する最適な枕部の配置を可能にすると共にワンタッチ操作で枕部の着脱を可能とした可動枕付きの入浴用機器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を実現する為、本発明は介護用入浴装置に使用され入浴者を入退浴させる入浴用機器において、入浴者の頭部を支承する枕部が背受け部に該背受け部の長手方向及び面方向にそれぞれ移動及び回動自在に載置されるように構成し、更に枕部を背受け部面に対して回転させる操作のみで、枕部の着脱を可能としたことを特徴とする。
【0008】
本発明は、背受け部の長手方向に沿って長孔が形成され、枕部には前記長孔に挿通される棒状部材の一端部が固着され、前記棒状部材に前記枕部を前記背受け部に対して固定状態に保持する枕保持部材が移動可能に挿嵌され、前記枕保持部材が前記棒状部材に外嵌され且つ一端及び他端がそれぞれ前記棒状部材及び前記枕保持部材に固定される弾性体を介して前記背受け部に圧接されることで、前記枕部は前記背受け部に対して固定状態に保持されることを特徴とする。
【0009】
本発明は、背受け部の長手方向に沿って長孔が形成され、枕部には前記長孔に挿通される棒状部材の一端部が固着され、前記棒状部材に枕保持部材が挿嵌固着され、前記枕部は前記枕部の有する弾力特性と前記枕保持部材とによって、又は前記枕保持部材の有する弾力特性によって背受け部に対して固定状態に保持されることを特徴とする。
【0010】
本発明は、枕保持部材がその角部が曲面状又は傾斜面状に成形された略コ字形状を成していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、入浴者の頭部を支承する枕部が背受け部に該背受け部の長手方向及び面方向にそれぞれ移動及び回動自在に載置される構成であるから、例えば、脳疾患等によって左又は右半身が半身不随となった片麻痺の入浴者が入浴を行う場合であっても、介助者は枕部を背受け部に対して手動にて適宜移動及び回動させることによって枕部を迅速且つ容易に最適な位置及び角度に調整することができ、本発明は個々の入浴者に応じた最適な枕部の配置を実現できるものである。又、入浴者は最適な位置及び角度に調整された枕部に頭部を載置することができ、リラックス状態で快適に入浴を行うことができる。
【0012】
請求項2記載の発明は、枕部を背受け部面に対して回転させる操作のみで枕の着脱を可能としたものであるから、枕部の着脱に際して専用工具を使用する必要性は無く、入浴用機器の取り扱いに不慣れな介助者等であっても極めて容易にワンタッチ操作で枕部を背受け部に取り付けたり、枕部を背受け部から取り外すことが可能であり、従って、入浴用搬送機器の清掃時等に行なわれる枕の取り付け及び取り外し作業に手間が掛らず効率的である。
【0013】
請求項3記載の発明は、背受け部の長手方向に沿って長孔が形成され、枕部には前記長孔に挿通される棒状部材の一端部が固着され、前記棒状部材に前記枕部を前記背受け部に対して固定状態に保持する枕保持部材が移動可能に挿嵌され、前記枕保持部材が前記棒状部材に外嵌され且つ一端及び他端がそれぞれ前記棒状部材及び前記枕保持部材に固定される弾性体を介して前記背受け部に圧接されることで前記枕部は前記背受け部に対して固定状態に保持される構成であり、請求項4記載の発明は背受け部の長手方向に沿って長孔が形成され、枕部には前記長孔に挿通される棒状部材の一端部が固着され、前記棒状部材に枕保持部材が挿嵌固着され、前記枕部は前記枕部の有する弾力特性と前記枕保持部材との相互作用によって、又は前記枕保持部材の有する弾力特性によって背受け部に対して固定状態に保持される構成であるから、前記いずれの発明も枕部を背受け部に対して移動及び回動自在と成す構成を簡素な構成部材で実現しており、従来技術と比してコストアップとならず経済的である。
【0014】
請求項5記載の発明によれば枕保持部材は角部が曲面状又は傾斜面状に成形された略コ字形状を成しているから、枕部を背受け部面に対して回転させ枕部を着脱する際に枕保持部材の角部が長孔内周縁に引っ掛かることが無く、枕部を円滑に着脱することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
上肢や下肢に障害を有する入浴者に対する最適な枕部の配置を可能にすると共にワンタッチ操作で枕部の着脱を可能とした可動枕付きの入浴用機器を提供するという目的を、背受け部の長手方向に沿って長孔を形成し、枕部には前記長孔に挿通される棒状部材の一端部を固着し、前記棒状部材に前記枕部を前記背受け部に対して固定状態に保持する枕保持部材を移動可能に挿嵌し、前記枕保持部材を前記棒状部材に外嵌され且つ一端及び他端がそれぞれ前記棒状部材及び前記枕保持部材に固定される弾性体を介して前記背受け部に圧接することで前記枕部を前記背受け部に対して固定状態に保持する構成により実現した。
【実施例1】
【0016】
以下、本発明の実施例1を図1乃至9を参照して説明する。実施例1は入浴者を入退浴させる入浴用機器を、入浴用車椅子1としたものである。図1は背受け部5を所定傾斜位置になした状態の入浴用車椅子1を示す平面図、図2は同入浴用車椅子1の右側面図、図3は同入浴用車椅子1の背面図、図4は図1におけるA−A矢視方向の部分断面図、図5は図2におけるB−B矢視方向の部分断面図、図6は図5における枕部18を背受け部5に対して回転させた状態を示す部分断面図、図7は枕保持部材22の形状を示す断面図であり、(a)は角部23bを曲面状に成形した断面図であり、(b)は角部23bを傾斜状に成形した断面図である。
【0017】
入浴用車椅子1は、前後左右に計四輪のキャスターを有し床面を走行可能な平面視略H字形状の台車枠2からなる台車部3と、下端部が台車枠2に傾動手段8を介して傾動可能に軸着される背受け部5と、背受け部5下部に固着される座席部6と、座席部6の先部に回動固定可能に軸着される下肢受け部7を主たる構成要素としている。
【0018】
台車枠2は左右に平行配置され前後端にそれぞれキャスターが取着されたパイプ2a・2bと、パイプ2a・2bの中間位置より後方の位置にて両パイプ2a・2bを横架状に連結するパイプ2cとから構成され、台車枠2全体は平面視略H字形状をなしている。
【0019】
図1に示すように背受け部5は不図示の背受け枠にFRP材質から成る表側被覆部材9及び裏側被覆部材10とが螺子等の部材を介して接合形成され、背受け部5下端の左右位置から側面視略L字形状の背受け支持部材26・26が下方に向かって延出するように配設され、背受け支持部材26・26の各先端は台車枠2を構成する前記左・右パイプ2a・2b内側位置に支軸4にて軸着されている(図2及び3参照)。背受け部5は支軸4を支点として所定起立位置(図2中、一点鎖線で部分的に示される背受け部5の位置)と所定傾斜位置(図2中実線で示される背受け部5の位置)との間を傾動可能になされている(傾動手段8)。又、図示及び説明は省略するが、入浴用車椅子1には背受け部5を前記所定起立位置或いは前記所定傾斜位置に固定維持するロック機構が設けられている。
【0020】
図2及び3に示すように裏側被覆部材10の左右上部にはそれぞれ略直角三角形状の突出部10aが形成され、該両突出部10a間に亘って介助者等が把持し入浴用車椅子1の移動操作を行う操作ハンドル27が架設されている。又、裏側被覆部材10と操作ハンドル27との間であって、背受け部5の左側上方には所定起立位置及び所定傾斜位置における背受け部5の固定維持を解除するロック解除手段28としてのロック解除レバー29が設けられている(図3参照)。
【0021】
尚、本発明の本筋とは直接関係ないので詳細な説明は省略するが、前記ロック解除レバー29は背受け部5に鉛直方向に回動可能に取着されており、操作ハンドル27とロック解除レバー29とは介助者が両構成部材を同時に把持できる程度の離間距離をあけて平行配置されている。前記両構成部材を同時に把持するとロック解除レバー29が操作ハンドル27に接近する方向へ回転することで前記ロック機構による背受け部5の所定起立位置或いは所定傾斜位置における固定維持が解除され、背受け部5の前後傾動が開始可能となる。背受け部5を所定位置にまで傾動させた後、ロック解除レバー29を手放すと、背受け部5は所定位置にて固定維持されるように前記ロック機構とロック解除手段28が連係構成されている。
【0022】
又、図3に示すように背受け部5左右上部に側方に向かって背受け部5から突出して配設されるロックピン30・30を同期して進退操作するロックピン操作レバー31が裏側被覆部材10と操作ハンドル27の間に背受け部5に対して鉛直方向に回動可能に取着されている。上述したロック解除レバー29と同様に操作ハンドル27とロックピン操作レバー31とは介助者が両構成部材を同時に把持できる程度の離間距離をあけて平行配置されており、ロックピン操作レバー31は背受け部5の内部にてワイヤー等のリンク部材を介して左右ロックピン30・30に連結されており、操作ハンドル27とロックピン操作レバー31を同時に把持すると、該操作レバー31の回転作動によって左右ロックピン30・30が同期して背受け部5の内方向に退入作動するように構成されている。
【0023】
図1及び2に示すように前記表側被覆部材9には該部材9の左右及び下部に形成される平坦面11(図1及び2参照)から隆起すると共に表側被覆部材9の短手方向に湾曲状に中央隆起部12が形成されている。前記中央隆起部12の大半面に沿って軟質材質のマット部材13が当着されており(図1参照)、マット部材13は座席部6に着座する一般的な体格の入浴者の頸部から頭部に亘る部位に相当する箇所に当着される頭頸側マット部13aと、該マット13aの下方に連続して入浴者の背中から両脇腹に亘る部位に相当する箇所に当着される背中側マット部13bと、該マット部13bの下方に連続して入浴者の腰部に相当する箇所に当着される腰側マット部13cとを有している。
【0024】
前記マット部材13は該部材13の隅部にナベ小螺子54にて取着されたゴム材質の固定用グリップ47を介して表側被覆部材9面に着脱自在に止着される(例えば、図5参照)。そして、頭頸側マット部13a裏面には板状部材14が四本の皿螺子15にて取着されており(図5参照)、頭頸側マット部13a及び板状部材14それぞれの対応する位置には略同形状のマット長孔16及び長孔17が連通状に形成されている(図4参照)。
【0025】
枕部18は頭頸側マット部13a上に背受け部5の長手方向に移動自在に且つ背受け部5の面方向に回動自在に載置されている。頭頸側マット部13aの当着面に対応する表側被覆部材9の中央領域部には後述する枕部18を頭頸側マット部13aに固定状態に保持する枕保持部材22等の構成部材を収容する窪み部37(図4参照)が長手方向に向かって形成されている。枕部18には、該部18の上側内方から枕部18裏面方向に向かって設けられると共にマット長孔16に挿通され頭頸側マット部13aの下面近傍にまで突出した取付金具19が固着されている。取付金具19下面に形成される凹部19aには二本の棒状部材20・20(枕取付螺子21・21)が枕部18の左右方向に並列して固着され、前記二本の枕取付螺子21の軸部21aに断面視略コ字形状の枕保持部材22(コ字状金具23)が軸部21a方向に移動自在に挿嵌されている。図4及び図5に示すようにコ字状金具23は上面23aが板状部材14下面と当接し且つその長手方向辺が枕部18の左右を指向する態様で軸部21aに挿嵌される。
【0026】
各軸部21aには該軸部21aに外嵌され且つ一端及び他端がそれぞれ枕取付螺子21の頭部21b及び枕保持部材22に固定された弾性体24(圧縮コイルバネ25)が設けられている。従って、枕部18はコ字状金具23が二本の圧縮コイルバネ25・25の弾性力によって板状部材14の下面方向へ圧接されることにより、頭頸側マット部13aに対して固定状態に保持される。尚、前記圧縮コイルバネ25には枕部18にかかる自重等によって枕部18が頭頸側マット部13aに対して不必要に移動等しないように適正な弾力特性を有するバネを選定している。
【0027】
前記コ字状金具23の長手方向辺の寸法はマット長孔16及び長孔17の短手方向幅の寸法より大きく、且つその短手方向辺の寸法はマット長孔16及び長孔17の短手方向幅の寸法より小さくなるよう設計されている。更に後述する枕部18の取り付け及び取り外しの際に、長孔17の周縁にコ字状金具23の角部23bが引っ掛かり枕部18の円滑な取り付け及び取り外し操作が妨害されることがないようコ字状金具23の両角部23b・23bは曲面状に成形(図7(a)参照)されている。
【0028】
尚、前記両角部23bは図7(b)に示すように傾斜面状となるように成形しても勿論良い。枕保持部材22全体の形状も略コ字形(コ字状金具23)に限定されるものではなく、更に、取付金具19に固着される棒状部材20(枕取付螺子21)の本数も二本とせず拡径サイズの棒状部材を一本だけ採用しても良く、要は枕保持部材22上面が弾性体24(圧縮コイルバネ25)の弾性力によって板状部材14下面に均等に圧接され枕部18を固定状態に保持可能であれば枕保持部材22の形状及び棒状部材20の本数等は如何なる態様であっても良い。
【0029】
次に、入浴用車椅子1の枕部18の作用について説明する。枕部18を背受け部5の長手方向に移動させる場合及び背受け部5に対して枕部18を回転させる場合は、板状部材14の下面に作用するコ字状金具23の圧接力を上回る程度の力を枕部18に付与し手動にて枕部18を所望方向にそれぞれ移動及び回転させればよく、入浴用車椅子1の取り扱いに不慣れな介助者等であっても極めて容易に枕部18を入浴者の体型や病状に応じて適宜移動及び回転させることが可能である。
【0030】
図5中、一点鎖線で示す枕部18及びコ字状金具23は実線で示す枕部18を背受け部5に対して下方向(矢視C方向)に移動させた後の状態を示すものである。背受け部5の長手方向(上及び下方向)に対する枕部18の移動は枕部18の取付金具19がマット長孔16の上側内壁面16aに当接する位置(以下、上限位置と称呼する)と下側内壁面16bに当接する位置の範囲で可能とされる。
【0031】
枕部18を背受け部5から取り外す場合には、背受け部5に対して略上限位置にある枕部18を右廻り方向(図5中の矢視D方向)へ略90°回転させ、マット長孔16及び長孔17の長手方向中心線とコ字状金具23の長手方向中心線とが略一致する状態(図6中、実線で示す枕部18の状態)に成し、コ字状金具23全体が前記両長孔を通過可能な位置にまで枕部18を幾分下方向へ移動(例えば、図6おいて、コ字状金具23が一点鎖線で示す位置に至るよう枕部18を下方移動)させる。
【0032】
枕部18を下方向へ移動しコ字状金具23の上面23aと板状部材14下面とが非接触状態に至ると同時にコ字状金具23は圧縮コイルバネ25の弾性力によって取付金具19方向に押し上げ付勢され、枕部18を背受け部5から取り外すことが可能になる。尚、枕部18を下方向へ移動させた場合に、長孔17が形成される周辺の板状部材14下面とコ字状金具23の上面23aとが若干接触状態とされていた場合であってもコ字状金具23の両角部23bが上述したように曲面状に成形されているので、角部23bが長孔17の長手方向内周縁に引っ掛かることなく、圧縮コイルバネ25の弾性力によってコ字状金具23が取付金具19方向に押し上げ付勢され円滑に枕部18の取り外し作業が行えることになる。
【0033】
次に、枕部18を背受け部5に取り付けする場合の作用について説明する。例えば、コ字状金具23が図6中の一点鎖線で示される位置・方向を向くように枕部18を頭頸側マット部13aに対して押し当て、この押し当て状態を保持しつつ手動にて枕部18を左廻り方向(図6中の矢視E方向)へ回転させる操作を行うだけで枕部18を背受け部5に固定状態と成すことができる。前述したようにコ字状金具23の両角部23bは曲面状に成形されているので、枕部18を左廻り方向へ回転させる際にも両角部23bが長孔17の長手方向内周縁に引っ掛かり枕部18の回転が妨げられることはなく、円滑に枕部18の取り付け作業が行える。
【0034】
尚、上述した枕保持部材22の両角部23bを曲面状又は傾斜面状に成形する代替として、図示は省略するが板状部材14下面と長孔17の長手方向内周壁とで形成される角部を曲面状又は傾斜面状に加工するように構成してもよい。
【0035】
続いて、実施例1の入浴用車椅子1を用いて入浴者を入浴させる浴槽32について説明する。浴槽32には貯湯槽33が一体的に形成され、浴槽32の一側方に開口部34が形成される。浴槽32の開口部34を入浴者が着座した入浴用車椅子1の背受け部5で閉塞し、貯湯槽33から浴槽32へ不図示の湯水移送手段を介して湯水の移送を行うことにより入浴者を入浴状態にさせる。図8に浴槽32を開口部34方向から見た斜視図、図9に浴槽32を開口部34方向から見た正面図を示す。
【0036】
前記開口部34は、浴槽32の両側壁32a・32bの内側面に開口部34側から浴槽32の奥側方向に向かって傾斜状に形成された内側壁32aa・32bbと底壁32cとで構成される接合面35を有し、該接合面35には入浴用車椅子1の前記平坦面11a・11b・11cが当接可能となっている。
【0037】
浴槽32の接合面35より前方向に突出して形成された側壁32a・32bの内側上方位置にそれぞれ略L字形状の補強部材36が取着され、該左右の補強部材36にはそれぞれ入浴用車椅子1の背受け部5上部の左右位置から突出されたロックピン30・30が挿脱可能な透孔38が穿設される。
【0038】
前記接合面35の周縁には、接合面35に沿って接合面35と入浴用車椅子1の背受け部5の平坦面11との水密状態を維持する為のゴム性のシール材39が貼着される。又、底壁32cの内側には、浴槽32の開口部34と反対側位置に段部40が形成される。段部40を形成することにより浴槽32の容積を減少させることができ、貯湯槽33から浴槽32へ移送する湯水の省湯量化が図れる。
【0039】
浴槽32と、入浴用車椅子1の背受け部5との固定は、以下の二つの手段により行う。一つは、浴槽32の側壁32a・32b上部と入浴用車椅子1の背受け部5の左右側上部を固定する第一の固定手段41であり、もう一つは浴槽32の底壁32cと入浴用車椅子1の背受け部5の下部を固定する第二の固定手段42である。
【0040】
第一の固定手段41は、入浴用車椅子1側に設けられる前記ロックピン30と、浴槽32側に設けられる前記透孔38とから構成される。第二の固定手段42は、底壁32cの下方外面に固着された伸縮自在なロッドを有する電動アクチュエーター43と、該ロッドの先端部と底壁32cの端面とに回動可能に軸着される押圧片44と、背受け部5の骨格を構成する背受け枠の下部中央に螺着され前記押圧片44の押圧を受け止める受止部材(図示省略)とから構成される。
【0041】
従って、入浴用車椅子1を浴槽32の内方所定位置にまで進入させると、ロックピン30が透孔38に自動的に嵌入し、入浴用車椅子1の背受け部5の上部と浴槽32上部とが固定される。続いて、電動アクチュエーター43のロッドの伸長作動を開始すると、押圧片44の先端部が左回転(背受け部5側に回転)し受止部材に当接する。更に、ロッドの伸長作動を行うと、押圧片44により前記受止部材が押圧され、浴槽32の底壁32cに入浴用車椅子1の背受け部5の下部が押圧固定される。上述した第一の固定手段41と第二の固定手段42とにより浴槽32の開口部34が入浴車椅子1の背受け部5で閉塞されることになる。
【0042】
上述した入浴用車椅子1を用いて、入浴者を浴槽32に入浴させる場合、介助者は、先ず貯湯槽33へ湯水を所定量貯湯する。介助者は、入浴者が搬送される他の福祉機器を本発明の入浴用車椅子1の近傍へ停車させ、入浴者を入浴用車椅子1へ移乗させる。尚、移乗時には、背受け部5は所定起立位置(図2中、一点鎖線で示す背受け部5の位置)に設定されている。
【0043】
ロック解除レバー29と操作ハンドル27を同時に把持し、背受け部5のロックを解除し、支軸4を支点にして所定起立位置にある背受け部5を所定傾斜位置にまで後傾動させロックする。
【0044】
介助者は操作ハンドル27を掴んで、入浴用車椅子1を床面45上を走行させる。入浴用車椅子1を浴槽32の開口部34付近に配置した後、開口部34方向に延出し側壁32a・32bの内側に沿って平行状に取着されたガイドレール46・46に台車枠2を当接させながら、入浴用車椅子1を開口部34側から浴槽32内へ進入させる。
【0045】
この時、台車部3は、底壁32cの外部下方に位置し、入浴者の載置される座席部6及び下肢受け部7が浴槽32内に位置する。下肢受け部7は背受け部5の後傾動に伴って持上げされた状態であるので、浴槽32の内方に挿入された場合にも底壁32cに形成された段部40に衝突することはない。
【0046】
入浴用車椅子1を浴槽32の内方所定位置にまで進入させると、ロックピン30が透孔38に嵌入し、入浴用車椅子1の背受け部5上部と浴槽32上部とが固定される。次に、電動アクチュエーター43のロッドを伸長作動させ、押圧片44にて前記受止部材を押圧すると、背受け部5の平坦面11a・11b・11cが接合面35に当接し、浴槽32の開口部34が入浴用車椅子1の背受け部5で閉塞される。貯湯槽33から浴槽32へ不図示の湯水移送手段を用いて湯を移送し、入浴者を入浴させる。
【0047】
入浴が完了し入浴者を退浴させる場合、まず浴槽32内の湯水を浴槽32外へ排出する。湯水排出作動により浴槽32内の水位が減少し、水位が浴槽32に設けられる不図示の水位センサの高さ位置未満になると、電動アクチュエーター43のロッドの収縮動が許容可能となるので、介助者は、ロッドを収縮動させ、押圧片44による前記受止部材の押圧固定を解除し、浴槽32の底壁32cと入浴用車椅子1の背受け部5下部との固定を解除する。
【0048】
次に、入浴用車椅子1に具備されるロックピン操作レバー31と操作ハンドル27とを同時に把持し、左右のロックピン30・30を透孔38・38から同時に抜脱し、浴槽32の側壁32a・32b上部と入浴用車椅子1の背受け部5の左右側上部との固定を解除し、入浴用車椅子1を浴槽32内から退出させる。介助者は、ロック解除レバー29を操作し所定傾斜位置にある背受け部5を所定起立位置にまで復帰作動させた後、入浴用車椅子1から他の福祉機器へ入浴者を移乗させ、入浴を完了する。
【実施例2】
【0049】
次に、本発明の実施例2を図10に示す。図10は背受け部5の一部分と枕部18の構成を示す部分断面図である。尚、図10において図4と同一又は同等の構成要素については、同一符号を付記して、特に説明を要する場合を除いて構成要素の説明は省略する。実施例2は実施例1に記載した入浴用車椅子1において、枕部18下面に伸縮自在で適正な弾力特性を有する弾性部材48(例えば、ゴム状素材)を取着し、更に棒状部材20に対する所定位置に枕保持部材22を挿嵌固着し、弾性体24を棒状部材20から取り除いた構成である。実施例2は板状部材14下面に枕保持部材22を当接させた状態で枕部18下面の弾性部材48の弾性力を利用して枕部18を頭頸側マット部13a上面に圧接することで枕部18を固定状態に保持する形態である。
【実施例3】
【0050】
本発明の実施例3を図11に示す。図11は背受け部5の一部分と枕部18の構成を示す部分断面図である。尚、図11において図4と同一又は同等の構成要素については、同一符号を付記して、特に説明を要する場合を除いて構成要素の説明は省略する。実施例3は実施例1に記載した入浴用車椅子1において、弾性体24を棒状部材20から取り除き、枕保持部材22に板材料を成形した適正な弾力特性を有する板バネ49を採用し、該板バネ49を棒状部材20に対する所定位置に挿嵌固着した構成である。板バネ49は板状部材14下面に向かって弾性力を作用させる部材であり、その形状は前記作用を奏するものであれば如何なる形状であってもよい。実施例3では板バネ49自体の保有する弾性力によって該板バネ49を板状部材14下面に圧接することで枕部18を固定状態に保持する形態である。
【実施例4】
【0051】
本発明の実施例4を図12に示す。実施例4は入浴用機器を入浴用担架50としたものである。図12に入浴用担架50の右側面図を示す。入浴用担架50の構成等に関しては、本件出願人が以前に創出した技術等(一例を挙げると、特開2001−95884号公報)にて公知となっている為、詳細な説明は省略するが、入浴用担架50は仰臥姿勢の入浴者の背中部を支持する背受け部5と、臀部を支持する臀受け部51と、大腿部を支持する大腿受け部52と、脚部を支持する脚受け部53とに四分割された骨格で形成されており、枕部18は背受け部5に背受け部5の長手方向及び面方向に対して移動及び回動自在に載置される。枕部18を背受け部5に対して移動及び回動自在に載置する構成は図示を省略するが、実施例1乃至3に記載した構成と略同等の構成を適用することが可能である。
【0052】
本発明は上述した実施例1乃至4で述べた実施態様に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜設計変更できることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、介護用入浴装置に使用され入浴者を搬送する入浴用車椅子又は入浴用担架等の入浴用搬送機器に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施例1に係る背受け部を所定傾斜位置になした状態の入浴用車椅子1を示す平面図である。
【図2】本発明の実施例1に係る入浴用車椅子の右側面図である。
【図3】本発明の実施例1に係る入浴用車椅子の背面図である。
【図4】図1におけるA−A矢視方向の部分断面図である。
【図5】図2におけるB−B矢視方向の部分断面図である。
【図6】図5における枕部を背受け部に対して回転させた状態を示す部分断面図である。
【図7】本発明の枕保持部材の形状を示す断面図であり、(a)は角部を曲面状に成形した断面図であり、(b)は角部を傾斜状に成形した断面図である。
【図8】浴槽を開口部方向から見た斜視図である。
【図9】浴槽を開口部方向から見た正面図である。
【図10】本発明の実施例2に係る入浴用車椅子の背受け部と枕部の構成を示す部分断面図である。
【図11】本発明の実施例3に係る入浴用車椅子の背受け部と枕部の構成を示す部分断面図である。
【図12】本発明の実施例4に係る入浴用担架の右側面図である。
【符号の説明】
【0055】
1 入浴用車椅子
5 背受け部
16 マット長孔
17 長孔
18 枕部
20 棒状部材
21 枕取付螺子
22 枕保持部材
23 コ字状金具
23a 角部
24 弾性体
25 圧縮コイルバネ
50 入浴用担架
【技術分野】
【0001】
本発明は、介護用入浴装置に使用され入浴者を入退浴させる入浴用機器、例えば、入浴用車椅子又は入浴用担架等の枕に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に開示される入浴用担架の枕は、枕の下方に突出するように取り付けられた駒を担架本体に形成された長孔に挿入し、この駒をノブで締め付けることで担架本体に対して固定される構成であり、従って、枕を担架本体に対して移動させる際には、担架本体の裏側に手を回しノブを緩め固定を解除した後、枕を所望の位置に移動させ、再度ノブを締め枕の固定を行うといった煩わしい作業が必要とされていた。
【0003】
本件出願人は上記の問題点を解決しより容易な操作で枕を所望の位置に移動し固定可能とする為に、下記特許文献2に開示される技術を創出した。即ち、枕裏部から突出された取着体を乗せ体(担架)の上体載置部に形成される長孔に貫通するように挿入し、挿入した取着体に摺動体(スライダー)を外嵌し、次に摺動体を押さえる弾力要素(バネ)を外嵌し、弾力要素のストッパーとなる止着体(ナットと虫螺子)を取着体に螺着する構成と成すことで、枕の位置調節に係る作業が特許文献1に開示される技術と比して容易に行えるよう改良を施した。
【0004】
しかしながら、特許文献2に開示される枕は乗せ体の長手方向に対しては容易に移動させることができるが、乗せ体面に対して回動自在な構成には成されていない為、脳疾患等により左又は右半身が半身不随となった片麻痺の入浴者等に対して最適な枕位置を提供することができないといった問題点を有していた。
【0005】
更に、特許文献2に記載される枕の着脱時には止着体を取着体に取り付けたり或いは取り外したりする為の専用工具が必要であり、専用工具を用いずワンタッチ操作で枕を着脱することはできず、故に、乗せ体の清掃作業時等に枕を乗せ体から取り外す作業、及び枕を乗せ体に取り付ける作業に手数がかかり面倒であるといった問題点を有していた。
【特許文献1】特開2000−14736号
【特許文献2】特開2001−314475号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記諸問題点に鑑みてなされたもので、上肢や下肢に障害を有する入浴者に対する最適な枕部の配置を可能にすると共にワンタッチ操作で枕部の着脱を可能とした可動枕付きの入浴用機器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を実現する為、本発明は介護用入浴装置に使用され入浴者を入退浴させる入浴用機器において、入浴者の頭部を支承する枕部が背受け部に該背受け部の長手方向及び面方向にそれぞれ移動及び回動自在に載置されるように構成し、更に枕部を背受け部面に対して回転させる操作のみで、枕部の着脱を可能としたことを特徴とする。
【0008】
本発明は、背受け部の長手方向に沿って長孔が形成され、枕部には前記長孔に挿通される棒状部材の一端部が固着され、前記棒状部材に前記枕部を前記背受け部に対して固定状態に保持する枕保持部材が移動可能に挿嵌され、前記枕保持部材が前記棒状部材に外嵌され且つ一端及び他端がそれぞれ前記棒状部材及び前記枕保持部材に固定される弾性体を介して前記背受け部に圧接されることで、前記枕部は前記背受け部に対して固定状態に保持されることを特徴とする。
【0009】
本発明は、背受け部の長手方向に沿って長孔が形成され、枕部には前記長孔に挿通される棒状部材の一端部が固着され、前記棒状部材に枕保持部材が挿嵌固着され、前記枕部は前記枕部の有する弾力特性と前記枕保持部材とによって、又は前記枕保持部材の有する弾力特性によって背受け部に対して固定状態に保持されることを特徴とする。
【0010】
本発明は、枕保持部材がその角部が曲面状又は傾斜面状に成形された略コ字形状を成していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、入浴者の頭部を支承する枕部が背受け部に該背受け部の長手方向及び面方向にそれぞれ移動及び回動自在に載置される構成であるから、例えば、脳疾患等によって左又は右半身が半身不随となった片麻痺の入浴者が入浴を行う場合であっても、介助者は枕部を背受け部に対して手動にて適宜移動及び回動させることによって枕部を迅速且つ容易に最適な位置及び角度に調整することができ、本発明は個々の入浴者に応じた最適な枕部の配置を実現できるものである。又、入浴者は最適な位置及び角度に調整された枕部に頭部を載置することができ、リラックス状態で快適に入浴を行うことができる。
【0012】
請求項2記載の発明は、枕部を背受け部面に対して回転させる操作のみで枕の着脱を可能としたものであるから、枕部の着脱に際して専用工具を使用する必要性は無く、入浴用機器の取り扱いに不慣れな介助者等であっても極めて容易にワンタッチ操作で枕部を背受け部に取り付けたり、枕部を背受け部から取り外すことが可能であり、従って、入浴用搬送機器の清掃時等に行なわれる枕の取り付け及び取り外し作業に手間が掛らず効率的である。
【0013】
請求項3記載の発明は、背受け部の長手方向に沿って長孔が形成され、枕部には前記長孔に挿通される棒状部材の一端部が固着され、前記棒状部材に前記枕部を前記背受け部に対して固定状態に保持する枕保持部材が移動可能に挿嵌され、前記枕保持部材が前記棒状部材に外嵌され且つ一端及び他端がそれぞれ前記棒状部材及び前記枕保持部材に固定される弾性体を介して前記背受け部に圧接されることで前記枕部は前記背受け部に対して固定状態に保持される構成であり、請求項4記載の発明は背受け部の長手方向に沿って長孔が形成され、枕部には前記長孔に挿通される棒状部材の一端部が固着され、前記棒状部材に枕保持部材が挿嵌固着され、前記枕部は前記枕部の有する弾力特性と前記枕保持部材との相互作用によって、又は前記枕保持部材の有する弾力特性によって背受け部に対して固定状態に保持される構成であるから、前記いずれの発明も枕部を背受け部に対して移動及び回動自在と成す構成を簡素な構成部材で実現しており、従来技術と比してコストアップとならず経済的である。
【0014】
請求項5記載の発明によれば枕保持部材は角部が曲面状又は傾斜面状に成形された略コ字形状を成しているから、枕部を背受け部面に対して回転させ枕部を着脱する際に枕保持部材の角部が長孔内周縁に引っ掛かることが無く、枕部を円滑に着脱することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
上肢や下肢に障害を有する入浴者に対する最適な枕部の配置を可能にすると共にワンタッチ操作で枕部の着脱を可能とした可動枕付きの入浴用機器を提供するという目的を、背受け部の長手方向に沿って長孔を形成し、枕部には前記長孔に挿通される棒状部材の一端部を固着し、前記棒状部材に前記枕部を前記背受け部に対して固定状態に保持する枕保持部材を移動可能に挿嵌し、前記枕保持部材を前記棒状部材に外嵌され且つ一端及び他端がそれぞれ前記棒状部材及び前記枕保持部材に固定される弾性体を介して前記背受け部に圧接することで前記枕部を前記背受け部に対して固定状態に保持する構成により実現した。
【実施例1】
【0016】
以下、本発明の実施例1を図1乃至9を参照して説明する。実施例1は入浴者を入退浴させる入浴用機器を、入浴用車椅子1としたものである。図1は背受け部5を所定傾斜位置になした状態の入浴用車椅子1を示す平面図、図2は同入浴用車椅子1の右側面図、図3は同入浴用車椅子1の背面図、図4は図1におけるA−A矢視方向の部分断面図、図5は図2におけるB−B矢視方向の部分断面図、図6は図5における枕部18を背受け部5に対して回転させた状態を示す部分断面図、図7は枕保持部材22の形状を示す断面図であり、(a)は角部23bを曲面状に成形した断面図であり、(b)は角部23bを傾斜状に成形した断面図である。
【0017】
入浴用車椅子1は、前後左右に計四輪のキャスターを有し床面を走行可能な平面視略H字形状の台車枠2からなる台車部3と、下端部が台車枠2に傾動手段8を介して傾動可能に軸着される背受け部5と、背受け部5下部に固着される座席部6と、座席部6の先部に回動固定可能に軸着される下肢受け部7を主たる構成要素としている。
【0018】
台車枠2は左右に平行配置され前後端にそれぞれキャスターが取着されたパイプ2a・2bと、パイプ2a・2bの中間位置より後方の位置にて両パイプ2a・2bを横架状に連結するパイプ2cとから構成され、台車枠2全体は平面視略H字形状をなしている。
【0019】
図1に示すように背受け部5は不図示の背受け枠にFRP材質から成る表側被覆部材9及び裏側被覆部材10とが螺子等の部材を介して接合形成され、背受け部5下端の左右位置から側面視略L字形状の背受け支持部材26・26が下方に向かって延出するように配設され、背受け支持部材26・26の各先端は台車枠2を構成する前記左・右パイプ2a・2b内側位置に支軸4にて軸着されている(図2及び3参照)。背受け部5は支軸4を支点として所定起立位置(図2中、一点鎖線で部分的に示される背受け部5の位置)と所定傾斜位置(図2中実線で示される背受け部5の位置)との間を傾動可能になされている(傾動手段8)。又、図示及び説明は省略するが、入浴用車椅子1には背受け部5を前記所定起立位置或いは前記所定傾斜位置に固定維持するロック機構が設けられている。
【0020】
図2及び3に示すように裏側被覆部材10の左右上部にはそれぞれ略直角三角形状の突出部10aが形成され、該両突出部10a間に亘って介助者等が把持し入浴用車椅子1の移動操作を行う操作ハンドル27が架設されている。又、裏側被覆部材10と操作ハンドル27との間であって、背受け部5の左側上方には所定起立位置及び所定傾斜位置における背受け部5の固定維持を解除するロック解除手段28としてのロック解除レバー29が設けられている(図3参照)。
【0021】
尚、本発明の本筋とは直接関係ないので詳細な説明は省略するが、前記ロック解除レバー29は背受け部5に鉛直方向に回動可能に取着されており、操作ハンドル27とロック解除レバー29とは介助者が両構成部材を同時に把持できる程度の離間距離をあけて平行配置されている。前記両構成部材を同時に把持するとロック解除レバー29が操作ハンドル27に接近する方向へ回転することで前記ロック機構による背受け部5の所定起立位置或いは所定傾斜位置における固定維持が解除され、背受け部5の前後傾動が開始可能となる。背受け部5を所定位置にまで傾動させた後、ロック解除レバー29を手放すと、背受け部5は所定位置にて固定維持されるように前記ロック機構とロック解除手段28が連係構成されている。
【0022】
又、図3に示すように背受け部5左右上部に側方に向かって背受け部5から突出して配設されるロックピン30・30を同期して進退操作するロックピン操作レバー31が裏側被覆部材10と操作ハンドル27の間に背受け部5に対して鉛直方向に回動可能に取着されている。上述したロック解除レバー29と同様に操作ハンドル27とロックピン操作レバー31とは介助者が両構成部材を同時に把持できる程度の離間距離をあけて平行配置されており、ロックピン操作レバー31は背受け部5の内部にてワイヤー等のリンク部材を介して左右ロックピン30・30に連結されており、操作ハンドル27とロックピン操作レバー31を同時に把持すると、該操作レバー31の回転作動によって左右ロックピン30・30が同期して背受け部5の内方向に退入作動するように構成されている。
【0023】
図1及び2に示すように前記表側被覆部材9には該部材9の左右及び下部に形成される平坦面11(図1及び2参照)から隆起すると共に表側被覆部材9の短手方向に湾曲状に中央隆起部12が形成されている。前記中央隆起部12の大半面に沿って軟質材質のマット部材13が当着されており(図1参照)、マット部材13は座席部6に着座する一般的な体格の入浴者の頸部から頭部に亘る部位に相当する箇所に当着される頭頸側マット部13aと、該マット13aの下方に連続して入浴者の背中から両脇腹に亘る部位に相当する箇所に当着される背中側マット部13bと、該マット部13bの下方に連続して入浴者の腰部に相当する箇所に当着される腰側マット部13cとを有している。
【0024】
前記マット部材13は該部材13の隅部にナベ小螺子54にて取着されたゴム材質の固定用グリップ47を介して表側被覆部材9面に着脱自在に止着される(例えば、図5参照)。そして、頭頸側マット部13a裏面には板状部材14が四本の皿螺子15にて取着されており(図5参照)、頭頸側マット部13a及び板状部材14それぞれの対応する位置には略同形状のマット長孔16及び長孔17が連通状に形成されている(図4参照)。
【0025】
枕部18は頭頸側マット部13a上に背受け部5の長手方向に移動自在に且つ背受け部5の面方向に回動自在に載置されている。頭頸側マット部13aの当着面に対応する表側被覆部材9の中央領域部には後述する枕部18を頭頸側マット部13aに固定状態に保持する枕保持部材22等の構成部材を収容する窪み部37(図4参照)が長手方向に向かって形成されている。枕部18には、該部18の上側内方から枕部18裏面方向に向かって設けられると共にマット長孔16に挿通され頭頸側マット部13aの下面近傍にまで突出した取付金具19が固着されている。取付金具19下面に形成される凹部19aには二本の棒状部材20・20(枕取付螺子21・21)が枕部18の左右方向に並列して固着され、前記二本の枕取付螺子21の軸部21aに断面視略コ字形状の枕保持部材22(コ字状金具23)が軸部21a方向に移動自在に挿嵌されている。図4及び図5に示すようにコ字状金具23は上面23aが板状部材14下面と当接し且つその長手方向辺が枕部18の左右を指向する態様で軸部21aに挿嵌される。
【0026】
各軸部21aには該軸部21aに外嵌され且つ一端及び他端がそれぞれ枕取付螺子21の頭部21b及び枕保持部材22に固定された弾性体24(圧縮コイルバネ25)が設けられている。従って、枕部18はコ字状金具23が二本の圧縮コイルバネ25・25の弾性力によって板状部材14の下面方向へ圧接されることにより、頭頸側マット部13aに対して固定状態に保持される。尚、前記圧縮コイルバネ25には枕部18にかかる自重等によって枕部18が頭頸側マット部13aに対して不必要に移動等しないように適正な弾力特性を有するバネを選定している。
【0027】
前記コ字状金具23の長手方向辺の寸法はマット長孔16及び長孔17の短手方向幅の寸法より大きく、且つその短手方向辺の寸法はマット長孔16及び長孔17の短手方向幅の寸法より小さくなるよう設計されている。更に後述する枕部18の取り付け及び取り外しの際に、長孔17の周縁にコ字状金具23の角部23bが引っ掛かり枕部18の円滑な取り付け及び取り外し操作が妨害されることがないようコ字状金具23の両角部23b・23bは曲面状に成形(図7(a)参照)されている。
【0028】
尚、前記両角部23bは図7(b)に示すように傾斜面状となるように成形しても勿論良い。枕保持部材22全体の形状も略コ字形(コ字状金具23)に限定されるものではなく、更に、取付金具19に固着される棒状部材20(枕取付螺子21)の本数も二本とせず拡径サイズの棒状部材を一本だけ採用しても良く、要は枕保持部材22上面が弾性体24(圧縮コイルバネ25)の弾性力によって板状部材14下面に均等に圧接され枕部18を固定状態に保持可能であれば枕保持部材22の形状及び棒状部材20の本数等は如何なる態様であっても良い。
【0029】
次に、入浴用車椅子1の枕部18の作用について説明する。枕部18を背受け部5の長手方向に移動させる場合及び背受け部5に対して枕部18を回転させる場合は、板状部材14の下面に作用するコ字状金具23の圧接力を上回る程度の力を枕部18に付与し手動にて枕部18を所望方向にそれぞれ移動及び回転させればよく、入浴用車椅子1の取り扱いに不慣れな介助者等であっても極めて容易に枕部18を入浴者の体型や病状に応じて適宜移動及び回転させることが可能である。
【0030】
図5中、一点鎖線で示す枕部18及びコ字状金具23は実線で示す枕部18を背受け部5に対して下方向(矢視C方向)に移動させた後の状態を示すものである。背受け部5の長手方向(上及び下方向)に対する枕部18の移動は枕部18の取付金具19がマット長孔16の上側内壁面16aに当接する位置(以下、上限位置と称呼する)と下側内壁面16bに当接する位置の範囲で可能とされる。
【0031】
枕部18を背受け部5から取り外す場合には、背受け部5に対して略上限位置にある枕部18を右廻り方向(図5中の矢視D方向)へ略90°回転させ、マット長孔16及び長孔17の長手方向中心線とコ字状金具23の長手方向中心線とが略一致する状態(図6中、実線で示す枕部18の状態)に成し、コ字状金具23全体が前記両長孔を通過可能な位置にまで枕部18を幾分下方向へ移動(例えば、図6おいて、コ字状金具23が一点鎖線で示す位置に至るよう枕部18を下方移動)させる。
【0032】
枕部18を下方向へ移動しコ字状金具23の上面23aと板状部材14下面とが非接触状態に至ると同時にコ字状金具23は圧縮コイルバネ25の弾性力によって取付金具19方向に押し上げ付勢され、枕部18を背受け部5から取り外すことが可能になる。尚、枕部18を下方向へ移動させた場合に、長孔17が形成される周辺の板状部材14下面とコ字状金具23の上面23aとが若干接触状態とされていた場合であってもコ字状金具23の両角部23bが上述したように曲面状に成形されているので、角部23bが長孔17の長手方向内周縁に引っ掛かることなく、圧縮コイルバネ25の弾性力によってコ字状金具23が取付金具19方向に押し上げ付勢され円滑に枕部18の取り外し作業が行えることになる。
【0033】
次に、枕部18を背受け部5に取り付けする場合の作用について説明する。例えば、コ字状金具23が図6中の一点鎖線で示される位置・方向を向くように枕部18を頭頸側マット部13aに対して押し当て、この押し当て状態を保持しつつ手動にて枕部18を左廻り方向(図6中の矢視E方向)へ回転させる操作を行うだけで枕部18を背受け部5に固定状態と成すことができる。前述したようにコ字状金具23の両角部23bは曲面状に成形されているので、枕部18を左廻り方向へ回転させる際にも両角部23bが長孔17の長手方向内周縁に引っ掛かり枕部18の回転が妨げられることはなく、円滑に枕部18の取り付け作業が行える。
【0034】
尚、上述した枕保持部材22の両角部23bを曲面状又は傾斜面状に成形する代替として、図示は省略するが板状部材14下面と長孔17の長手方向内周壁とで形成される角部を曲面状又は傾斜面状に加工するように構成してもよい。
【0035】
続いて、実施例1の入浴用車椅子1を用いて入浴者を入浴させる浴槽32について説明する。浴槽32には貯湯槽33が一体的に形成され、浴槽32の一側方に開口部34が形成される。浴槽32の開口部34を入浴者が着座した入浴用車椅子1の背受け部5で閉塞し、貯湯槽33から浴槽32へ不図示の湯水移送手段を介して湯水の移送を行うことにより入浴者を入浴状態にさせる。図8に浴槽32を開口部34方向から見た斜視図、図9に浴槽32を開口部34方向から見た正面図を示す。
【0036】
前記開口部34は、浴槽32の両側壁32a・32bの内側面に開口部34側から浴槽32の奥側方向に向かって傾斜状に形成された内側壁32aa・32bbと底壁32cとで構成される接合面35を有し、該接合面35には入浴用車椅子1の前記平坦面11a・11b・11cが当接可能となっている。
【0037】
浴槽32の接合面35より前方向に突出して形成された側壁32a・32bの内側上方位置にそれぞれ略L字形状の補強部材36が取着され、該左右の補強部材36にはそれぞれ入浴用車椅子1の背受け部5上部の左右位置から突出されたロックピン30・30が挿脱可能な透孔38が穿設される。
【0038】
前記接合面35の周縁には、接合面35に沿って接合面35と入浴用車椅子1の背受け部5の平坦面11との水密状態を維持する為のゴム性のシール材39が貼着される。又、底壁32cの内側には、浴槽32の開口部34と反対側位置に段部40が形成される。段部40を形成することにより浴槽32の容積を減少させることができ、貯湯槽33から浴槽32へ移送する湯水の省湯量化が図れる。
【0039】
浴槽32と、入浴用車椅子1の背受け部5との固定は、以下の二つの手段により行う。一つは、浴槽32の側壁32a・32b上部と入浴用車椅子1の背受け部5の左右側上部を固定する第一の固定手段41であり、もう一つは浴槽32の底壁32cと入浴用車椅子1の背受け部5の下部を固定する第二の固定手段42である。
【0040】
第一の固定手段41は、入浴用車椅子1側に設けられる前記ロックピン30と、浴槽32側に設けられる前記透孔38とから構成される。第二の固定手段42は、底壁32cの下方外面に固着された伸縮自在なロッドを有する電動アクチュエーター43と、該ロッドの先端部と底壁32cの端面とに回動可能に軸着される押圧片44と、背受け部5の骨格を構成する背受け枠の下部中央に螺着され前記押圧片44の押圧を受け止める受止部材(図示省略)とから構成される。
【0041】
従って、入浴用車椅子1を浴槽32の内方所定位置にまで進入させると、ロックピン30が透孔38に自動的に嵌入し、入浴用車椅子1の背受け部5の上部と浴槽32上部とが固定される。続いて、電動アクチュエーター43のロッドの伸長作動を開始すると、押圧片44の先端部が左回転(背受け部5側に回転)し受止部材に当接する。更に、ロッドの伸長作動を行うと、押圧片44により前記受止部材が押圧され、浴槽32の底壁32cに入浴用車椅子1の背受け部5の下部が押圧固定される。上述した第一の固定手段41と第二の固定手段42とにより浴槽32の開口部34が入浴車椅子1の背受け部5で閉塞されることになる。
【0042】
上述した入浴用車椅子1を用いて、入浴者を浴槽32に入浴させる場合、介助者は、先ず貯湯槽33へ湯水を所定量貯湯する。介助者は、入浴者が搬送される他の福祉機器を本発明の入浴用車椅子1の近傍へ停車させ、入浴者を入浴用車椅子1へ移乗させる。尚、移乗時には、背受け部5は所定起立位置(図2中、一点鎖線で示す背受け部5の位置)に設定されている。
【0043】
ロック解除レバー29と操作ハンドル27を同時に把持し、背受け部5のロックを解除し、支軸4を支点にして所定起立位置にある背受け部5を所定傾斜位置にまで後傾動させロックする。
【0044】
介助者は操作ハンドル27を掴んで、入浴用車椅子1を床面45上を走行させる。入浴用車椅子1を浴槽32の開口部34付近に配置した後、開口部34方向に延出し側壁32a・32bの内側に沿って平行状に取着されたガイドレール46・46に台車枠2を当接させながら、入浴用車椅子1を開口部34側から浴槽32内へ進入させる。
【0045】
この時、台車部3は、底壁32cの外部下方に位置し、入浴者の載置される座席部6及び下肢受け部7が浴槽32内に位置する。下肢受け部7は背受け部5の後傾動に伴って持上げされた状態であるので、浴槽32の内方に挿入された場合にも底壁32cに形成された段部40に衝突することはない。
【0046】
入浴用車椅子1を浴槽32の内方所定位置にまで進入させると、ロックピン30が透孔38に嵌入し、入浴用車椅子1の背受け部5上部と浴槽32上部とが固定される。次に、電動アクチュエーター43のロッドを伸長作動させ、押圧片44にて前記受止部材を押圧すると、背受け部5の平坦面11a・11b・11cが接合面35に当接し、浴槽32の開口部34が入浴用車椅子1の背受け部5で閉塞される。貯湯槽33から浴槽32へ不図示の湯水移送手段を用いて湯を移送し、入浴者を入浴させる。
【0047】
入浴が完了し入浴者を退浴させる場合、まず浴槽32内の湯水を浴槽32外へ排出する。湯水排出作動により浴槽32内の水位が減少し、水位が浴槽32に設けられる不図示の水位センサの高さ位置未満になると、電動アクチュエーター43のロッドの収縮動が許容可能となるので、介助者は、ロッドを収縮動させ、押圧片44による前記受止部材の押圧固定を解除し、浴槽32の底壁32cと入浴用車椅子1の背受け部5下部との固定を解除する。
【0048】
次に、入浴用車椅子1に具備されるロックピン操作レバー31と操作ハンドル27とを同時に把持し、左右のロックピン30・30を透孔38・38から同時に抜脱し、浴槽32の側壁32a・32b上部と入浴用車椅子1の背受け部5の左右側上部との固定を解除し、入浴用車椅子1を浴槽32内から退出させる。介助者は、ロック解除レバー29を操作し所定傾斜位置にある背受け部5を所定起立位置にまで復帰作動させた後、入浴用車椅子1から他の福祉機器へ入浴者を移乗させ、入浴を完了する。
【実施例2】
【0049】
次に、本発明の実施例2を図10に示す。図10は背受け部5の一部分と枕部18の構成を示す部分断面図である。尚、図10において図4と同一又は同等の構成要素については、同一符号を付記して、特に説明を要する場合を除いて構成要素の説明は省略する。実施例2は実施例1に記載した入浴用車椅子1において、枕部18下面に伸縮自在で適正な弾力特性を有する弾性部材48(例えば、ゴム状素材)を取着し、更に棒状部材20に対する所定位置に枕保持部材22を挿嵌固着し、弾性体24を棒状部材20から取り除いた構成である。実施例2は板状部材14下面に枕保持部材22を当接させた状態で枕部18下面の弾性部材48の弾性力を利用して枕部18を頭頸側マット部13a上面に圧接することで枕部18を固定状態に保持する形態である。
【実施例3】
【0050】
本発明の実施例3を図11に示す。図11は背受け部5の一部分と枕部18の構成を示す部分断面図である。尚、図11において図4と同一又は同等の構成要素については、同一符号を付記して、特に説明を要する場合を除いて構成要素の説明は省略する。実施例3は実施例1に記載した入浴用車椅子1において、弾性体24を棒状部材20から取り除き、枕保持部材22に板材料を成形した適正な弾力特性を有する板バネ49を採用し、該板バネ49を棒状部材20に対する所定位置に挿嵌固着した構成である。板バネ49は板状部材14下面に向かって弾性力を作用させる部材であり、その形状は前記作用を奏するものであれば如何なる形状であってもよい。実施例3では板バネ49自体の保有する弾性力によって該板バネ49を板状部材14下面に圧接することで枕部18を固定状態に保持する形態である。
【実施例4】
【0051】
本発明の実施例4を図12に示す。実施例4は入浴用機器を入浴用担架50としたものである。図12に入浴用担架50の右側面図を示す。入浴用担架50の構成等に関しては、本件出願人が以前に創出した技術等(一例を挙げると、特開2001−95884号公報)にて公知となっている為、詳細な説明は省略するが、入浴用担架50は仰臥姿勢の入浴者の背中部を支持する背受け部5と、臀部を支持する臀受け部51と、大腿部を支持する大腿受け部52と、脚部を支持する脚受け部53とに四分割された骨格で形成されており、枕部18は背受け部5に背受け部5の長手方向及び面方向に対して移動及び回動自在に載置される。枕部18を背受け部5に対して移動及び回動自在に載置する構成は図示を省略するが、実施例1乃至3に記載した構成と略同等の構成を適用することが可能である。
【0052】
本発明は上述した実施例1乃至4で述べた実施態様に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜設計変更できることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、介護用入浴装置に使用され入浴者を搬送する入浴用車椅子又は入浴用担架等の入浴用搬送機器に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施例1に係る背受け部を所定傾斜位置になした状態の入浴用車椅子1を示す平面図である。
【図2】本発明の実施例1に係る入浴用車椅子の右側面図である。
【図3】本発明の実施例1に係る入浴用車椅子の背面図である。
【図4】図1におけるA−A矢視方向の部分断面図である。
【図5】図2におけるB−B矢視方向の部分断面図である。
【図6】図5における枕部を背受け部に対して回転させた状態を示す部分断面図である。
【図7】本発明の枕保持部材の形状を示す断面図であり、(a)は角部を曲面状に成形した断面図であり、(b)は角部を傾斜状に成形した断面図である。
【図8】浴槽を開口部方向から見た斜視図である。
【図9】浴槽を開口部方向から見た正面図である。
【図10】本発明の実施例2に係る入浴用車椅子の背受け部と枕部の構成を示す部分断面図である。
【図11】本発明の実施例3に係る入浴用車椅子の背受け部と枕部の構成を示す部分断面図である。
【図12】本発明の実施例4に係る入浴用担架の右側面図である。
【符号の説明】
【0055】
1 入浴用車椅子
5 背受け部
16 マット長孔
17 長孔
18 枕部
20 棒状部材
21 枕取付螺子
22 枕保持部材
23 コ字状金具
23a 角部
24 弾性体
25 圧縮コイルバネ
50 入浴用担架
【特許請求の範囲】
【請求項1】
介護用入浴装置に使用され入浴者を入退浴させる入浴用機器において、入浴者の頭部を支承する枕部が背受け部に該背受け部の長手方向及び面方向にそれぞれ移動及び回動自在に載置されることを特徴とする可動枕付き入浴用機器。
【請求項2】
枕部を背受け部面に対して回転させる操作のみで、枕部の着脱を可能としたことを特徴とする請求項1記載の可動枕付き入浴用機器。
【請求項3】
背受け部の長手方向に沿って長孔が形成され、枕部には前記長孔に挿通される棒状部材の一端部が固着され、前記棒状部材に前記枕部を前記背受け部に対して固定状態に保持する枕保持部材が移動可能に挿嵌され、前記枕保持部材が前記棒状部材に外嵌され且つ一端及び他端がそれぞれ前記棒状部材及び前記枕保持部材に固定される弾性体を介して前記背受け部に圧接されることで、前記枕部は前記背受け部に対して固定状態に保持されることを特徴とする請求項1又は2記載の可動枕付き入浴用機器。
【請求項4】
背受け部の長手方向に沿って長孔が形成され、枕部には前記長孔に挿通される棒状部材の一端部が固着され、前記棒状部材に枕保持部材が挿嵌固着され、前記枕部は前記枕部の有する弾力特性と前記枕保持部材とによって、又は前記枕保持部材の有する弾力特性によって背受け部に対して固定状態に保持されることを特徴とする請求項1又は2記載の可動枕付き入浴用機器。
【請求項5】
枕保持部材は角部が曲面状又は傾斜面状に成形された略コ字形状を成していることを特徴とする請求項3又は4記載の可動枕付き入浴用機器。
【請求項1】
介護用入浴装置に使用され入浴者を入退浴させる入浴用機器において、入浴者の頭部を支承する枕部が背受け部に該背受け部の長手方向及び面方向にそれぞれ移動及び回動自在に載置されることを特徴とする可動枕付き入浴用機器。
【請求項2】
枕部を背受け部面に対して回転させる操作のみで、枕部の着脱を可能としたことを特徴とする請求項1記載の可動枕付き入浴用機器。
【請求項3】
背受け部の長手方向に沿って長孔が形成され、枕部には前記長孔に挿通される棒状部材の一端部が固着され、前記棒状部材に前記枕部を前記背受け部に対して固定状態に保持する枕保持部材が移動可能に挿嵌され、前記枕保持部材が前記棒状部材に外嵌され且つ一端及び他端がそれぞれ前記棒状部材及び前記枕保持部材に固定される弾性体を介して前記背受け部に圧接されることで、前記枕部は前記背受け部に対して固定状態に保持されることを特徴とする請求項1又は2記載の可動枕付き入浴用機器。
【請求項4】
背受け部の長手方向に沿って長孔が形成され、枕部には前記長孔に挿通される棒状部材の一端部が固着され、前記棒状部材に枕保持部材が挿嵌固着され、前記枕部は前記枕部の有する弾力特性と前記枕保持部材とによって、又は前記枕保持部材の有する弾力特性によって背受け部に対して固定状態に保持されることを特徴とする請求項1又は2記載の可動枕付き入浴用機器。
【請求項5】
枕保持部材は角部が曲面状又は傾斜面状に成形された略コ字形状を成していることを特徴とする請求項3又は4記載の可動枕付き入浴用機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−280529(P2006−280529A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−102998(P2005−102998)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000103471)オージー技研株式会社 (109)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000103471)オージー技研株式会社 (109)
【Fターム(参考)】
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