説明

可動開閉装置

【課題】 トランス等での絶縁劣化などによる漏電に対して十分な感電防止措置を講じることで、安全性が高く且つ十分な不透明性を有した液晶パネルの使用を可能とする。
【解決手段】 枠部材20に一次変圧器41を取り付けるとともに、液晶パネル11を有する開閉部本体(ドア部)10に昇圧器(二次変圧器)43を取り付け、これら一次変圧器41と昇圧器43との間を可撓電線42で接続してヒンジ30の付近に通す。一次変圧器41は、電源電圧を感電の危険の無い低電圧(24V)に変圧し、昇圧器43は、その低電圧を昇圧して液晶パネル11に供給する。一次変圧器41の低電圧の片側端子を、枠部材20(ヒンジ枠部材21)や開閉部本体10(内框部材13−1)とともに接地する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、瞬間調光ガラスなどの液晶パネルを有した可動開閉装置に関し、特に、ドア部(開閉部本体)と枠部材とがヒンジで接続されており、このヒンジ付近に配された可撓電線や変圧器などでの絶縁劣化による感電を防止するのに好適な可動開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電圧を印加/遮断することで瞬時に透明/不透明を切り換えることが可能な液晶パネルが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
この液晶パネルは、図4に示すように、液晶板110の全体が絶縁皮膜(絶縁層)120で覆われ、両面から透明電極130で挟まれ、さらに十分に外力に耐える厚みを有した2枚の透明な板ガラス140で挟まれた構造をなっている。そして、通常状態では液晶板110は不透明であるが、透明電極間に電圧を印加することで透明になる。
この液晶パネル100は、例えば、窓ガラスや仕切衝立など、既に幾つかの実用例がある。
【0003】
こうした液晶パネルの中には、印加する電圧が感電の危険のない低電圧(24V以下)で作動するものがある。ただし、電圧を印加していない不透明時の曇度が低いため、高い不透明性が要求される浴室等での用途には不向きであった。また、斜めから見ると、透明性が落ちたり、あるいは画像が見づらくなったりするという問題があった。
さらに、低電圧型の液晶は数ボルトの低電圧で作動するが、液晶の配向が電圧の印加で回転することの応用であるため、偏光フィルターの併用が必要となり、電圧印加時の透明性が半減するという不都合があった。
【0004】
これに対し、高電圧作動の液晶は、無電圧ではランダムな向きで不透明であるが、電圧印加で電場方向と同じパネル面と垂直に配向して透明化する。したがって、偏光フィルターなどは必要なく、良好な透明性となる。
【特許文献1】特許3512373号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、高電圧作動する従来の液晶パネルにおいては、十分な感電防止措置が講じられていないという問題があった。
例えば、液晶パネルがドア部に使用されている場合、その液晶パネルに電力を供給する配線はドア部のヒンジ付近を通すことになる。その配線は、ドア部の開閉に伴って幾度も曲げ伸ばしを繰り返すことになるが、その配線に柔軟な可撓電線を用いたとしても、断線や絶縁皮膜剥離など故障の危険が伴ってしまう。特に、水場である浴室等のドア部に液晶パネルを用いた場合は、感電の危険性が高くなる。
【0006】
また、液晶パネルへの電力供給用の配線に安全絶縁トランスを接続したものがある。安全絶縁トランスとは、EN,UL,JISなどの安全規格に対応した絶縁トランスをいう。この安全絶縁トランスは、一次巻線と二次巻線の間に金属のシールド板を備えており、これを接地することで、万が一の絶縁劣化でも安全性を保つことができる。
ここで、安全絶縁トランスと同等の安全性を保ちながら、かつ、ヒンジ部(可動部)で電線の損傷があっても安全性を保つために、低電圧(例えば、24V)で中継し、この低電圧で作動する液晶を用いることも考えられるが、この場合、その低電圧型液晶では電圧遮断時の不透明性が低いため、十分なプライバシーが守れないという問題があった。
【0007】
本発明は、上記の事情にかんがみなされたものであり、絶縁劣化等による漏電に対して十分な感電防止措置を講じることで安全性を高めることができ、しかも十分な不透明性を有した液晶パネルの使用を可能とする可動開閉装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するため、本発明の可動開閉装置は、液晶パネルを有する開閉部本体(ドア部)と、この開閉部本体を支持する枠部材と、この枠部材に開閉部本体を開閉可能に取り付けるためのヒンジとを備えた可動開閉装置であって、枠部材の内部又は外部に取り付けられた一次変圧器と、開閉部本体の内部又は外部に取り付けられた昇圧器(二次変圧器)と、一次変圧器と昇圧器とを接続する可撓電線とを備え、一次変圧器は、入力した電源電圧を低電圧に変圧し、昇圧器は、一次変圧器からの低電圧を昇圧して液晶パネルに供給する構成としてある。
【0009】
可動開閉装置をこのような構成とすると、ヒンジ付近を通す電圧を感電の危険が無い低電圧とすることができるため、安全性を保つことができる。
さらに、二次変圧器の高電圧を浮遊的に液晶パネルに供給することができるため、安全性をさらに高めることができる。
【0010】
しかも、二次変圧器で昇圧された高電圧により作動する液晶パネルを使用できる。この高電圧作動の液晶パネルは電圧遮断時の不透明性が高いため、十分なプライバシーを守ることができる。
加えて、高電圧作動の液晶パネルを使用可能とすることで、低電圧作動の液晶パネルが有する問題、例えば、斜めから見たときの透明性の低下や画像の不明瞭といった問題も解消できる。
【0011】
また、本発明の可動開閉装置は、一次変圧器の低電圧側が、枠部材及び/又は開閉部本体とともに接地された構成とすることができる。
可動開閉装置をこのような構成とすれば、一次変圧器の低電圧の片側を接地することで、一次変圧器の巻線間の絶縁劣化による漏洩電流を大地に逃がすことができる。これにより、感電を防止できる。
【0012】
また、本発明の可動開閉装置は、液晶パネルの透明/不透明を切り換える操作スイッチを備え、この操作スイッチが、昇圧器の低電圧側に接続された構成とすることができる。
可動開閉装置をこのような構成とすると、スイッチの操作により、液晶パネルを透明又は不透明に切り換えることができる。
しかも、ヒンジ付近を通す電圧は低電圧とされ、一次変圧器の低電圧側が枠部材等とともに接地され、二次変圧器の高電圧を浮遊的に液晶パネルに供給できるため、安全性が高く、かつ、不透明性の高い液晶パネルの可動開閉装置を提供できる。
【0013】
また、本発明の可動開閉装置は、低電圧が、25V以下である構成とすることができる。
可動開閉装置をこのような構成とすれば、ヒンジ部を通す電圧を感電の危険性がない低電圧とすることができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、ヒンジ部を通す電圧を感電の危険が無い低電圧とすることで安全性を保つことができる。
また、一次変圧器の低電圧の片側を接地することで、一次変圧器の巻線間の絶縁劣化による漏洩電流を大地に逃がすことができる。
さらに、二次変圧器の高電圧を浮遊的に液晶パネルに供給することで、これら三重の安全性を有することができる。
【0015】
そして、ヒンジ付近を通る低電圧が二次変圧器により昇圧されることから、交流100V以上の高電圧で作動する液晶パネルを使用できる。この高電圧型液晶パネルは不透明性が高いことから、十分なプライバシーを確保することができる。
しかも、高電圧型液晶パネルを使用可能とすることで、低電圧型液晶パネルが有する種々の問題を解消できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る可動開閉装置の好ましい実施形態について、図面を参照して説明する。
【0017】
まず、本発明の可動開閉装置の実施形態について、図1及び図2を参照して説明する。
図1は、本実施形態の可動開閉装置の外観構成を示す正面図、図2は、ヒンジ部周辺を拡大して図示した断面図(図1のA−A断面図)である。
【0018】
図1に示すように、可動開閉装置1は、ドア部(開閉部本体)10と、枠部材20と、ヒンジ30とを備えている。
ここで、ドア部10は、液晶パネル11と、ドア枠12とを有している。
液晶パネル(瞬間調光ガラス)11は、図4に示したように、液晶板、絶縁層、透明電極、板ガラスを積層して形成されている。なお、液晶パネルは従来公知の任意好適なものを用いることができる。このため、液晶パネルについての詳細な説明は省略する。
【0019】
ドア枠12は、ドア部10の枠組みや仕切りとなる部材であって、右縦枠と左縦枠からなる立て框(たてかまち)部13と、左右の立て框部13を橋渡しする桟(さん)部14とを有している。
なお、このドア枠12は、立て框部13と桟部14だけで構成することに限るものではなく、例えば二以上の桟部14を橋渡しする組子(くみこ)部を含めることができる。そして、これら立て框部13,桟部14,組子部によって囲まれたところに液晶パネル11が嵌め込まれる。
【0020】
立て框部13は、上述したように右縦枠と左縦枠とを有しているが、これらのうちヒンジ部30が取り付けられる方が内框部材13−1、他方が外框部材13−2となる。
内框部材13−1は、図2に示すように、内部が空洞になった部分があり、この空洞部には二次変圧器(昇圧器)43や操作スイッチ44などが取り付けられている。これら二次変圧器43や操作スイッチ44の詳細については後述する。
また、内框部材13−1は、液晶パネル11が嵌め込まれる側面に嵌合用切欠13−11(又は、嵌合用凹部)が形成されている。この嵌合用切欠13−11に液晶パネル11を嵌合させる場合、切欠13−11の端部と液晶パネル11との間には緩衝・封止ゴム13−12がはめ込まれる。これにより、液晶パネル11が固定するとともに、空洞部にゴミや水滴等が入り込むのを阻止できる。
【0021】
枠部材20は、ドア部10を支持する枠である。この枠部材20は、縦枠部材21,22と鴨居部材23とを有しており、一の縦枠部材21にはヒンジ30が取り付けられている。このヒンジ30が取り付けられた縦枠部材(ヒンジ枠部材)21は、内部が空洞になった部分があり、この空洞部に一次変圧器41が取り付けられている。
【0022】
なお、一次変圧器41は、ヒンジ枠部材21の外部に取り付けることもできる。外部に取り付けるとは、ヒンジ枠部材21の側面に直接取り付けることと、ヒンジ枠部材21からは離間しているがヒンジ枠部材21の近くに取り付けることとを含む。このように一次変圧器41をヒンジ枠部材21の外部に取り付ける場合であって、ドア部10が浴室などの水場に設置されるときは、一次変圧器41は防水型とすることが望ましい。
【0023】
この一次変圧器41は、外部からの電源電圧を安全な低電圧に降圧する絶縁性の高い変圧器である。具体的には、電源電圧(AC100V)を低電圧(24V)に変圧する。その低電圧の片側端子は、図3に示すように、ヒンジ枠部材21や内框部材13−1とともに接地されている。これにより、一次変圧器41の巻線間の絶縁劣化による漏電電流を大地に逃がすことができる。
また、一次変圧器14として絶縁トランスを用いることで、液晶パネル11を雷サージから守ることができる。
【0024】
可撓電線42は、一部が、一次変圧器41の低電圧側と二次変圧器43の低電圧側とを接続する電線であって、ヒンジ部(ヒンジ30の付近)で曲げ伸ばし自在に配置されている。
また、可撓電線42は、他の一部が、一次変圧器41の低電圧の片側端子から引き出された電線であって、弛みをもたせてドア部10の内框部材13−1の内部に引き込まれている。この引き込み線によって、内框部材13−1が接地される。
【0025】
二次変圧器43は、可撓電線42を介して送られてきた低電圧を、液晶パネル11が作動するに必要な電圧に昇圧する。具体的には、二次変圧器43は、低電圧(24V)を例えば100Vに変圧する。
このように、二次変圧器43の高電圧出力を浮遊的に液晶パネル11に供給することで、さらに安全性を高めることができる。しかも、高電圧型液晶パネルを使用できるため、不透明性が高くなり、十分にプライバシーを守ることができる。
【0026】
なお、二次変圧器43は、図2においては、内框部材13−1の内部に取り付けられているが、内部に限るものではなく、外部に取り付けることもできる。ここで外部に取り付けるとは、内框部材13−1の側面に直接取り付けることと、内框部材13−1からは離間しているが内框部材13−1の近くに取り付けることとを含む。このように二次変圧器43を内框部材13−1の外部に取り付ける場合であって、ドア部10が浴室などの水場に設置されるときは、二次変圧器43は防水型とすることが望ましい。
【0027】
操作スイッチ44は、液晶パネル11の透明/不透明を切り換えるスイッチであって、図3に示すように、二次変圧器43の低電圧側に接続されている。この操作スイッチ44の操作ボタン44−1は、内框部材13−1の外側に突出していることから、利用者が室内から操作することができる。
【0028】
次に、本実施形態の可動開閉装置の動作について、図2を参照して説明する。
操作スイッチ44がOFFのときは、液晶パネル11は不透明となっている。
操作スイッチ44がONに切り換えられると、一次変圧器41が、電源電圧(AC100V)を低電圧(24V)に変圧して出力する。この低電圧(24V)は、可撓電線42を介して二次変圧器43に与えられる。
二次変圧器43では、その低電圧(24V)を、液晶パネル11が動作する電圧(100V)に変圧して出力する。この出力された電圧(100V)が与えられて、液晶パネル11が透明になる。
【0029】
以上説明したように、本実施形態の可動開閉装置によれば、ヒンジ部を通す電圧を感電の危険がない低電圧とすることで、安全性を保つことができる。
また、一次変圧器の低電圧の片側を接地することにより、一次変圧器の巻線間の絶縁劣化による漏洩電流を大地に逃がすことができる。
さらに、二次変圧器の高電圧を浮遊的に液晶パネルに供給することで、三重の安全性を有することができる。
【0030】
以上、本発明の可動開閉装置の好ましい実施形態について説明したが、本発明に係る可動開閉装置は上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、上述した実施形態では、開閉部本体の例としてドア部を挙げたが、開閉部本体はドア部に限るものではなく、ヒンジにより開閉可能な建具、例えば窓などを含むことができる。
【0031】
また、液晶パネルの電源は、一般家庭用電源を用いることができるが、これに限るものではなく、例えば、電池電源を用いることもできる。
さらに、上述した実施形態では、昇圧器の例として二次変圧器を挙げたが、昇圧器は二次変圧器に限るものではなく、例えば、半導体素子を用いたインバータ昇圧回路で構成することもできる。
また、液晶パネルは、電圧を印加した状態でスイッチをOFFにすると、この液晶パネル内に電荷がしばらく残留してしまって瞬時に不透明にならないという問題がある。そこで、残留電圧を放電するための回路を接続することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、液晶パネルの電源供給回路に関する発明であるため、液晶パネルが使用される建築物や装置などに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の可動開閉装置の外観構成を示す正面図である。
【図2】ヒンジ付近の構成を示す断面図である。
【図3】液晶パネルに電源電圧を供給する回路の構成を示す回路図である。
【図4】従来の液晶パネルの構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 可動開閉装置
10 ドア部(開閉部本体)
11 液晶パネル
12 ドア枠
13 立て框部
14 桟部
20 枠部材
21 縦枠部材(ヒンジ枠部材)
22 縦枠部材
23 鴨居部材
30 ヒンジ
41 一次変圧器
42 可撓電線
43 二次変圧器(昇圧器)
44 操作スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶パネルを有する開閉部本体と、この開閉部本体を支持する枠部材と、この枠部材に前記開閉部本体を開閉可能に取り付けるためのヒンジとを備えた可動開閉装置であって、
前記枠部材の内部又は外部に取り付けられた一次変圧器と、
前記開閉部本体の内部又は外部に取り付けられた昇圧器と、
前記一次変圧器と前記昇圧器とを接続する可撓電線とを備え、
前記一次変圧器は、入力した電源電圧を低電圧に変圧し、
前記昇圧器は、前記一次変圧器からの前記低電圧を昇圧して前記液晶パネルに供給する
ことを特徴とする可動開閉装置。
【請求項2】
前記一次変圧器の低電圧側が、前記枠部材及び/又は前記開閉部本体とともに接地された
ことを特徴とする請求項1記載の可動開閉装置。
【請求項3】
前記液晶パネルの透明/不透明を切り換える操作スイッチを備え、この操作スイッチが、前記昇圧器の低電圧側に接続された
ことを特徴とする請求項1又は2記載の可動開閉装置。
【請求項4】
前記低電圧が、25V以下である
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の可動開閉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−266994(P2008−266994A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−111323(P2007−111323)
【出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【出願人】(504042993)株式会社石田大成社 (2)
【出願人】(594032137)岡谷鋼機株式会社 (1)
【Fターム(参考)】