説明

可変の性能ゾーンを備える真空創傷治療の創傷ドレッシング

【課題】創傷の治癒を促進するための真空創傷治療において使用される適切なドレッシングを提供すること。
【解決手段】真空創傷治療において使用される創傷ドレッシングのためのカバー層であって、該カバー層は、水蒸気透過性膜の一部分によって画定された中央ゾーンであって、該水蒸気透過性膜は、該膜を通って水分が伝達されることを抑止するコーティングを欠く、中央ゾーンと、中央ゾーンを実質的に取り囲む周辺ゾーンであって、該周辺ゾーンは、創傷床の周囲にシールを提供するように適合される、周辺ゾーンと、該中央ゾーンと該周辺ゾーンとの間に少なくとも部分的に配置された少なくとも1つの中間ゾーンであって、該少なくとも1つの中間ゾーンは、該創傷床に治療効果を与えるための物質を含む、中間ゾーンとを備えている、カバー層。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(1.技術分野)
本開示は概して、真空創傷治療によって開放性創傷を治療するための創傷ドレッシングに関する。特に、本開示は、可変の性能特性の複数のゾーンを使用するカバー層を有し、創傷の治癒を促進するドレッシングに関する。
【背景技術】
【0002】
(2.関連技術の背景)
身体の自然な創傷の治癒過程は、傷害の瞬間から始まる複雑なイベントの連続である。最初に、身体は、血流を介して創傷にタンパク質および他の因子を送達することによって反応し、損害を最小にする。血液は凝固して、血液の損失を防止し、一方、細胞はバクテリアおよび残屑を包み込み、創傷部位から運び去る。次に、身体は、増殖段階と大抵称される治癒の段階において自らを補修し始める。この段階は、創傷床における肉芽組織の沈着によって特徴付けられる。肉芽組織は、細胞がその上を周辺から中に向かって移動し、創傷を閉ざし得る基底構造を提供する。最後に、過程は、コラーゲンが、大抵は時間を経て傷跡を形成する新しい組織に強度を与えたときに終了する。
【0003】
唯一というわけではないが、特に増殖段階の間に、自然の治癒過程を促進する1つの技術は、真空創傷治療(VWT)として公知である。創傷の上の局限されたレザバに対して減圧、例えば大気圧よりも低い圧力を適用することは、創傷を閉じることを助けることが発見されている。減圧は、この領域への血流を促進し、自然の過程での創傷の上への肉芽組織の形成および創傷の上への健康な組織の移動を刺激することに効果的であり得る。さらに、減圧は、創傷から滲出する流体を除去することを助け得、これはバクテリアの成長を抑止し得る。この技術は、慢性の創傷または不治の創傷に対して効果的であることが分かっているが、例えば術後の創傷の手当てのような他の目的に対しても使用されている。
【0004】
一般的なVWTプロトコルは、充填物の材料を創傷の中に導入して滲出物を吸収することを提供する。充填物の材料は、例えば非網状の発泡体、不織布またはガーゼのような材料を含み得る。創傷および充填物の材料は次に、水蒸気透過性のカバー層によって覆われ得、水蒸気透過性のカバー層は、創傷の治癒に対して必須であり得る環境との酸素交換を可能にする。カバー層は大抵接着剤の周辺部を含み、接着剤の周辺部は、創傷を取り囲む健康な皮膚と実質的に流体密なシールを形成する。このようにして、カバー層は、創傷の上に真空レザバを画定し、真空レザバにおいては時間を経ても、個々の排気手順または周期的な排気手順によって減圧が維持され得る。
【0005】
VWT治療における懸念の一局面は、真空が適用されたときドレッシングに生成される力の管理である。かかる力は、皮膚からのドレッシングの分離を引き起こし得、それによって、VWT治療の効果を制限し、微生物が創傷を感染させる確率を高め得る。さらに、かかる力は、新しく形成されつつある肉芽組織に損傷を与え得る。真空の適用は、可撓性のカバー層を変形させ、その結果、可撓性のカバー層は、充填物を圧縮し、充填物が創傷床に接着する傾向を強める。さらに、カバー層の変形は、創傷領域周辺において、皮膚と接着剤との界面に沿って横方向の剪断力を作成する。これらの剪断力は、ドレッシングが皮膚からずれ、かつ/または引き離れる原因となり得、このような場所で空隙およびしわが発生し得る。かかる動き、および述べられたその結果は、真空の維持と汚染の浸透の阻止との両方に対して適切であるシールを提供するドレッシングの能力を抑制する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ドレッシングの皮膚への取り付けを強化または補強するためにカバー層に適用された接着剤は、ドレッシングの水蒸気透過性を下げ得、環境との酸素交換を可能にするその能力に影響を与え得る。低下した水蒸気透過性はまた、皮膚と接着剤との界面における水分の蓄積につながり得る。かかる蓄積を許すと、創傷領域周辺におけるドレッシングの皮膚への接着力が低下し、それによって、ドレッシングの耐久時間、治療の有効性、および創傷領域周辺の健康を低減する。従って、VWT処置において使用されるために適切なドレッシングに対するニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、創傷の治癒を促進するための真空創傷治療処置において使用されるドレッシングを記述する。ドレッシングは、可変の性能特性の複数のゾーンを有するカバー層を含む。中央ゾーンは、膜を通しての水分の伝達を抑止するコーティングを欠く水蒸気透過性膜の一部分によって画定される。カバー層の周辺に隣接する周辺ゾーンは、創傷の周囲にシールを提供するように適合される。少なくとも1つの中間ゾーンは、中央ゾーンと周辺ゾーンとの間に配置され、治療的効果または利益を創傷に与える。
【0008】
周辺ゾーンは、高剥離強度の接着剤を含み得、一方、第1の中間ゾーンは、剪断抵抗接着剤を含み得る。第2の中間ゾーンは、薬剤の送達に対して適合されたコーティング、湿った創傷環境を維持するためのヒドロゲル、または抗感染薬、抗菌物質、抗生物質、鎮痛剤、治癒因子、ビタミン、成長因子、創面切除剤、または栄養素のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0009】
水分可変透過性膜はカバー層の周辺に延び得ることにより、周辺ゾーンを画定する接着剤の取り付けのためのバッキング層を構成し得る。周辺ゾーンおよび少なくとも1つの中間ゾーンは、中央ゾーンに対して同心的に配列され得る。カバー層はまた、真空チューブのために、カバー層の下に画定された真空レザバへのアクセスを可能にするポートを含み得る。
【0010】
本開示の別の局面に従って、真空創傷治療処置において使用される創傷ドレッシング装置は、創傷床に位置決めされ、かつカバー層によって覆われた接触層および充填物の材料を含む。カバー層は、創傷床の上に真空レザバを画定し、真空レザバへの真空チューブのアクセスを可能にする。カバー層は、創傷床の周囲にシールを提供する周辺ゾーンと、創傷床に治療的効果または利益を与えるための少なくとも1つの中間ゾーンと、水蒸気透過性膜から形成された中央ゾーンとを含む。
【0011】
接触層は、円錐形アパーチャを有する被膜から形成され得、創傷からの滲出物の一方向の流れを促進し得る。吸収性の充填物の材料は、マルチストランドの束に配列されたポリオレフィンフィラメントを含み得る。さらに、真空レザバと流体連通する真空システムは、真空源と、収集キャニスタと、一方向弁とを含み得る。
【0012】
本発明は、さらに以下の手段を提供する。
(項目1)
真空創傷治療において使用される創傷ドレッシングのためのカバー層であって、該カバー層は、
水蒸気透過性膜の一部分によって画定された中央ゾーンであって、該水蒸気透過性膜は、該膜を通って水分が伝達されることを抑止するコーティングを欠く、中央ゾーンと、
中央ゾーンを実質的に取り囲む周辺ゾーンであって、該周辺ゾーンは、創傷床の周囲にシールを提供するように適合される、周辺ゾーンと、
該中央ゾーンと該周辺ゾーンとの間に少なくとも部分的に配置された少なくとも1つの中間ゾーンであって、該少なくとも1つの中間ゾーンは、該創傷床に治療効果を与えるための物質を含む、中間ゾーンと
を備えている、カバー層。
【0013】
(項目2)
上記周辺ゾーンは、高剥離強度の接着剤を含む、項目1に記載のカバー層。
【0014】
(項目3)
上記少なくとも1つの中間ゾーンは、剪断抵抗接着剤を含む第1の中間ゾーンを備えている、項目1に記載のカバー層。
【0015】
(項目4)
上記少なくとも1つ中間ゾーンは、薬剤送達コーティングを含む第2の中間ゾーンをさらに備えている、項目3に記載のカバー層。
【0016】
(項目5)
上記少なくとも1つの中間ゾーンは、ヒドロゲルを含む第2の中間ゾーンをさらに備えている、項目3に記載のカバー層。
【0017】
(項目6)
上記少なくとも1つの中間ゾーンは、抗感染薬、抗菌物質、抗生物質、鎮痛剤、治癒因子、ビタミン、成長因子、創面切除剤、または栄養素のうちの少なくとも1つを含む第2の中間ゾーンをさらにさらに備えている、項目3に記載のカバー層。
【0018】
(項目7)
上記水蒸気透過性膜は、上記カバー層の周辺に延びてバッキング層を構成し、該周辺ゾーンは、該バッキング層に接着された接着剤の層によって画定される、項目1に記載のカバー層。
【0019】
(項目8)
上記周辺ゾーンおよび上記少なくとも1つの中間ゾーンは、上記中央ゾーンに対して同心的に配列される、項目1に記載のカバー層。
【0020】
(項目9)
真空チューブのために、上記カバー層の下に画定された真空レザバへのアクセスを可能にするポートをさらに備えている、項目1に記載のカバー層。
【0021】
(項目10)
真空創傷治療処置において使用される創傷ドレッシング装置であって、該装置は、
創傷床に隣接して位置決めするように適合される接触層と、
該創傷床から滲出する液体を収集するために、該創傷床内において該接触層に隣接して位置決めされた吸収性の充填物と、
該創傷床の上に位置決めされ、該創傷床との間で真空レザバを画定し、該真空レザバへの真空チューブのアクセスを可能にするカバー層であって、該カバー層は、該創傷の周囲にシールを提供する周辺ゾーンと、該創傷床に治療的効果を与えるための少なくとも1つの中間ゾーンと、水蒸気透過性膜から形成された中央ゾーンとを備えている、カバー層と
を備えている、装置。
【0022】
(項目11)
上記接触層は、円錐形アパーチャを有する被膜から形成される、項目10に記載の創傷ドレッシング装置。
【0023】
(項目12)
上記吸収性の充填物の材料は、マルチストランドの束に配列されたポリオレフィンフィラメントを含む、項目10に記載の創傷ドレッシング装置。
【0024】
(項目13)
上記真空レザバと流体連通する真空システムをさらに備えている、項目10に記載の創傷ドレッシング装置。
【0025】
(項目14)
上記真空システムは、真空源と、収集キャニスタと、一方向弁とを含む、項目13に記載の創傷ドレッシング装置。
【0026】
(摘要)
開放性創傷のためのドレッシングは、創傷床に対して位置決めするような大きさとされるカバー層を含む。カバー層は、創傷床の周囲の空間の排気を可能にし、それによって、大気圧よりも低い圧力が確立され得、治癒を刺激し得、かつ創傷からの流体の除去を容易にし得る。カバー層の複数の性能ゾーンは、創傷ドレッシングが、創傷床に対して過度のひずみを及ぼすことなく、反復される排気のサイクルを通じて正しい位置に残ることを可能にする。外側の周辺ゾーンは、高剥離強度の接着剤を含み得、一方、中間ゾーンは、剪断抵抗接着剤を含み得る。中央ゾーンは、カバー層を通して水分の伝達を最大にするため、コーティングを欠き得る。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本明細書に組み込まれてその一部を構成する添付の図面は、本開示の実施形態を例示し、下に与えられた実施形態の詳細な記述と共に、本開示の原理を説明することに役立つ。
【図1】図1は、本開示による、真空創傷治療システムの分解斜視図である。
【図2A】図2Aは、患者に対して使用されるために組み立てられた図1の真空創傷治療システムの斜視図である。
【図2B】図2Bおよび図2Cは、真空創傷治療システムの代替のアセンブリを示す。
【図2C】図2Bおよび図2Cは、真空創傷治療システムの代替のアセンブリを示す。
【図3A】図3Aは、図1のカバー層のリバースアングルの斜視図である。
【図3B】図3Bは、カバー層の代替実施形態を示す。
【図4A】図4Aは、真空レザバを示す第1の状態での、図1の真空創傷治療システムの断面図である。
【図4B】図4Bは、真空レザバが排気された第2の状態での、真空創傷治療システムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本開示の創傷ドレッシングは、減圧が維持され得る創傷の上にレザバを提供することによって創傷の治癒を促進する。レザバは、創傷を大気圧よりも低い圧力の下に置き、真空ポンプを継続的に使用することなく、液体滲出物を含む創傷流体を創傷から効果的に引き出す。従って、真空圧が一度適用され得るか、または創傷の性質および重大さによって様々な間隔で適用され得る。この態様での創傷ドレッシングの使用は、感染の確率の下げ、肉芽組織の沈着を刺激し、かつ他の有益な過程によって治癒を促進することが分かった。本開示の創傷ドレッシングは、真空創傷治療の効果を高めるための複数の性能ゾーンを有するカバー層を含む。
【0029】
添付された図は、本開示の例示的な実施形態を示し、図に示された実施形態を記述するために参照される。以後、本開示は、図について説明することによって詳細に記述され、いくつかの図面にわたって、同様な参照番号は、同様な部品を表す。
【0030】
最初に図1を参照して、本開示による真空創傷治療システムは概して、健康な皮膚「s」によって取り囲まれる創傷「w」の上に使用するため、10として示される。真空創傷治療システム10は、創傷ドレッシング16によって画定されるか、またはこの中にある真空レザバ14(図4A)と流体連通する真空システム12を含む。真空システム12は、一方向弁20および真空チューブ24を介して、ドレッシング16に結合される真空源18を含む。収集キャニスタ28は、創傷排液および残屑に対し提供される。真空システム12は、創傷の治癒を刺激するために適切な真空レザバ14に、減圧を提供するように適合される。適切な真空システム12の詳細な記述が、同一人に譲渡された米国特許出願公開2007/0066946号に見出され、その全容が、参考として本明細書に援用される。
【0031】
創傷ドレッシング16は概して、接触層34と、充填物38と複数の性能ゾーンを画定するカバー層40とを含む。バッキング層44は、並置された関係にある様々な材料でコーティングされ、周辺ゾーン48と、第1の中間ゾーン52と、第2の中間ゾーン56と中央ゾーン58とを画定する(図3A)。あるいは、各ゾーンは、創傷床「w」に隣接して位置決めされた独立した層から成り得る。各層は、以下により詳細に記述される。
【0032】
接触層34は、創傷床「w」の不規則な形状面と直接的に接触して位置決めされるために十分適合性があり得る。ポリエチレンの薄い被膜または他の適切な非接着材料が、接触層34を形成し得、充填物38および他の物質が創傷「w」に接着することを制限し得る。被膜のアパーチャまたは穿孔は、流体が接触層34を通過することを可能にし、大気圧よりも低い圧力が創傷「w」の中へ貫通し、滲出物が創傷「w」から自由に流れ出ることを可能にする。適切な被膜材料を選択することによって、接触層34を創傷滲出物が通過することが実質的に一方向となり、創傷滲出物が創傷の中に流れて戻ることを防止するように制御され得る。一方向の流れを促進するために、例えばTredegar Film Products of Richmond、VAによって提供されるような円錐形アパーチャを有する被膜が、接触層34を形成するために選択され得る。このタイプの被膜は、被膜材料の円錐状の形成の頂に位置決めされたアパーチャで構成されており、その結果、滲出物は、一方向において微小な漏斗のアレイとしての被膜に遭遇し、他方向においては、収集鉢のアレイとしての被膜に遭遇する。滲出物の一方向の流れは、様々な吸収特性を有する層の積層を含む他の材料の選択によっても促進され得る。接触層として使用され得る1つの例示的な材料は、Covidienの部局である、Kendall Corp.によって、商標XEROFLO(登録商標)の下に販売されている。
【0033】
充填物38は、周囲の健康な皮膚「s」のレベルにまで創傷「w」を充填するように接触層34の上に配列され得るか、または創傷「w」が充填物38によって過充填され得る。充填物38が接触層34を通って移動する任意の滲出物を捕捉するために、例えば不織布ガーゼまたは網状の発泡体のような吸収剤が、充填物38に対して使用され得る。Covidienの部局である、Kendall Corp.によって、商標KERLIXTMAMDTMの下に販売されている抗菌性のドレッシングが、充填物38として使用されるために適切であり得る。創傷「w」への接着を防止するために、充填物38はまた、材料の繊維が、接触層34のアパーチャを突き抜ける傾向のないように構成された材料を含み得る(材料の繊維が接触層34のアパーチャを突き抜けた場合は、新しく形成されつつある肉芽組織によって包み込まれ得る)。この特性を示す1つの特定のタイプの材料はしばしば、「トウ(tow)」と称される。合成繊維に対する製造プロセスはしばしば、連続するフィラメントの不確定な長さの押し出しを含み、この連続するフィラメントは、共に紡がれて繊維を形成する。紡がれていないフィラメントの連続する長さは、トウと称されるマルチストランドの束に配列され得る。例えばポリオレフィンのような疎水性の材料から形成される単一の長さのトウは、創傷床「w」に置かれ得、充填物38を形成し得る。この配列は、ドレッシング16が創傷「w」を再び傷つけることなく交換されるとき、充填物38の完全な除去を可能にする。
【0034】
カバー層40は、創傷「w」の上に配置され得、その中に接触層および充填物を包み込む。カバー層40の周辺は、創傷床「w」の周囲を越えて横方向に延び、それによって健康な皮膚「s」と接触し、創傷「w」の上にシールを形成する。図2Aに示されるように、開口部60が、カバー層40を貫通して提供、または形成され、真空チューブ24に対するアクセスを提供して真空レザバ14と連通するか、または真空チューブ24は、図2Bに示されるように、カバー層40の周辺の下で密封され得る。または、図2Cに示されるように、他とは違ったポータル部材すなわちポート62が、真空システム12と真空レザバ14との間での流体連通を容易にするために提供され得る。ポート62は、真空チューブ24を解放可能な、かつ流体密な態様で受け入れるように適合された硬い、または半硬の目立たないコンポーネントとして構成され得る。真空ポート62は、その周囲に幅広い、可撓性のフランジ64を含むように構成され得る。フランジ64は、カバー層40の外側に固定されるようにフランジ64の下側か、またはカバー層40の下側に取り付けられるようにフランジ64の上側か、いずれかに接着剤が取り付けられることを可能にする。
【0035】
図3Aをここで参照して、カバー層40は、様々な材料を含む複数の性能ゾーン48、52、56、および58を含む。バッキング層44は、カバー層40の周辺に延び得、様々なコーティングまたは様々な性能ゾーン48、52、56および58を画定する材料に対する基板を提供し得る。図示のように、性能ゾーン48、52、56および58の各々は、他に対して同心的に配列された連続するバンドである。しかしながら、ゾーンの大きさ、形状および位置は、特定の創傷または治療のニーズに従って変化し得る。例えば、図3Bに示されるようなカバー層40Aが提供され得、カバー層40Aは、第2の中間ゾーン56Aによって取り囲まれた他とは違った形状のパターンから形成された第1の中間ゾーン52を含み得る。様々なコーティングが、バッキング層44に積層され得るか、または他の適切な手段によって取り付けられ得る。層40を形成する様生な材料が、以下により詳細に記述される。
【0036】
バッキング層44は、可撓性のポリマー膜から形成されて流体バリアとして作用し得、大気圧よりも低い圧力が、真空レザバ14に確立されることを可能にし得る。材料の可撓性は、VWT処置における排気サイクルと関連付けられる圧力変化に順応する。バッキング層44はまた、汚染物が、創傷領域に入ることを防止する微生物バリアとして役立つ。好ましくは、バッキング層44は、水蒸気透過性膜から形成され、創傷部位と大気との間での酸素と水分の交換を促進する。十分な水蒸気伝達速度(MVTR)を提供し、同時に液体に対して浸透性がない膜がバッキング層44として使用されるために選択され得る。別の好ましい膜の特性は、伸びて、圧縮された創傷充填物または創傷床に適合する能力である。真空にさらされたとき伸びる膜の傾向は、創傷の周りの領域に移行された剪断力を低減する。バッキング層44において使用される1つの例示的な材料は、Bayer Material Science Companyである、Deerfield Urethanによって、商標名DURAFLEX(登録商標)の下で販売されている透明な膜である。バッキング層において使用されるために適切であり得る他の材料は、Covidienの部局である、Kendall Corp.によってPOLYSKIN(登録商標)の名の下に、セントポールの3MによってTEGADERMTMの名の下に、英国、ロンドンのSmith and Nephew PLCによってMN and OPSITETMの名の下に市場で売られている薄い被膜を含む。カバー層の中央ゾーン58は、MVTRを下げる傾向がある材料によって覆われていない、バッキング層44の領域によって画定される。
【0037】
カバー層40の周辺には周辺ゾーン48があり、周辺ゾーン48は、高剥離強度の感圧接着剤の連続する層によって画定される。接着剤は、カバー層の周囲で、皮膚「s」とのシールを形成し、減圧がレザバ14において確立されたとき、カバー層40のエッジの下から大気の作用による流体が侵入することを防止する。周辺ゾーン48を画定する接着剤は、例えば創傷「w」からの滲出物または患者による身体の動きのような環境上の要因にさらされたときでも、皮膚への接着の損失を防止するように適合される。一般に、高剥離強度の接着剤は、カバー層のエッジにおいて、不慮のリフトオフ(lift−off)、ロール(roll)または「フラッギング(flagging)」、すなわちドレッシングがそれ自体に接着してしまう失敗、に対して抵抗するように適合される。周辺ゾーン48を画定する接着剤は、例えば、CYTEC Surface Special Inc.によって商標GELVA(登録商標)Multipolymer Solutionの下に販売されているドレッシングに含まれる接着剤を含み得る。
【0038】
周辺ゾーン48を画定する高剥離強度の接着剤は、バッキング層44に接着され得るか、または創傷床「w」を取り巻く皮膚「s」に直接的に適用され得る。接着剤は好ましくは、接触される皮膚に対して刺激性がなく、感作性もなく、かつ接触される皮膚が水分を伝達することが可能となるために、水蒸気透過性があり得る。好ましくは、周辺ゾーン48および第1の中間ゾーン52は、図4Aおよび図4Bに見られるように接触層34と重複しないように位置決めされる。この配列は、ドレッシング16全体を取り外すことなく、例えば充填物38のような、ドレッシングの特定の個々のコンポーネントを交換することを容易にする。
【0039】
第1の中間ゾーン52および第2の中間ゾーン56がそれぞれ、周辺ゾーン48と中央ゾーン58との間に配置されている。第1の中間ゾーン52および第2の中間ゾーン56は、創傷「w」に治療的効果または利益を与えるための物質の層によって画定される。上に示されるように、第1の中間ゾーン52および第2の中間ゾーン56は、図3Aに見られるように中央ゾーン58と同心的な連続するバンドとして配列され得るか、図3Bに見られるように他とは違った形状のパターンとして配列されるか、または任意の他の便利な配列であり得る。
【0040】
例えば、第1の中間ゾーン52は、レザバを排気するために減圧が適用されたときに、ドレッシングを横方向に安定させる接着剤の層によって画定され得る。図4Bに見られるように、レザバが排気されたとき、カバー層は、創傷「w」に対して平らになる傾向があり得る。これにより、カバー層40を皮膚「s」から分離する傾向があり得る、ドレッシング16において外向きの力が結果として生じ得る。さらに、カバー層40における剪断力は、皮膚「s」に伝達され得、新しく形成されつつある肉芽組織を引き離し、かつ創傷「w」を再び傷つけ得る。これらの傾向に対処するために、剪断抵抗接着剤が、第1の中間ゾーン52における使用のために選択され得る。多くの高剥離強度の接着剤は主に、上向きの力、すなわち皮膚からカバー層を持ち上げる傾向のある力に抵抗するように適合されているので、周辺ゾーン48を画定する高剥離強度の接着剤には、第1の中間ゾーン52を画定する、横方向の力に抵抗するように特に適合された接着剤が補充され得る。例えば、水蒸気透過性があり、皮膚に対する使用に適切である、CYTEC Surface Specialties Inc.によって製造されたGMS 1753のような剪断抵抗接着剤が、第1の中間ゾーン52を画定するために使用され得る。
【0041】
第2の中間ゾーン56が、創傷に治療効果または利益を提供するための他とは違った材料の層によって画定され得る。例えば、第2の中間ゾーン56は、経皮的な薬剤の送達に対して適合され得る。例えば抗感染薬、抗菌物質、抗生物質、鎮痛剤、治癒因子、ビタミン、成長因子、創面切除剤、または栄養素のような物質が、バッキング層108の部分にコーティングされ得、第2の中間ゾーン56を画定し得る。あるいは、ヒドロゲルが、第2の中間ゾーン56における使用のために選択され得、湿った創傷環境を維持し得る。図4Bに見られるように、第2の中間ゾーン56は、レザバ14が排気されたとき充填物38と接触し得、有益な薬剤が充填物38に移送されることを可能にし得る。充填物38および接触層34は、第2の中間ゾーン56が、創傷床に直接的に接触することが可能とするのが適切な場合、除去され得る。さらなる取り付け接着剤が、第2の中間ゾーン56において使用されることが有益であり得ることも考えられる。
【0042】
前述の開示は、例示および例として、明快さまたは理解の目的のために幾らか詳細に記述されたが、添付された請求項の範囲内で、特定の変更および修正が実行され得ることは明らかである。
【符号の説明】
【0043】
10 真空創傷治療システム
12 真空システム
14 真空レザバ
16 創傷ドレッシング
18 真空源
20 一方向弁
24 真空チューブ
28 収集キャニスタ
34 接触層
38 充填物
40 カバー層
62 真空ポート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空創傷治療において使用される創傷ドレッシングのためのカバー層であって、該カバー層は、
水蒸気透過性膜の一部分によって画定された中央ゾーンであって、該水蒸気透過性膜は、該膜を通って水分が伝達されることを抑止するコーティングを欠く、中央ゾーンと、
中央ゾーンを実質的に取り囲む周辺ゾーンであって、該周辺ゾーンは、創傷床の周囲にシールを提供するように適合される、周辺ゾーンと、
該中央ゾーンと該周辺ゾーンとの間に少なくとも部分的に配置された少なくとも1つの中間ゾーンであって、該少なくとも1つの中間ゾーンは、該創傷床に治療効果を与えるための物質を含む、中間ゾーンと
を備えている、カバー層。
【請求項2】
前記周辺ゾーンは、高剥離強度の接着剤を含む、請求項1に記載のカバー層。
【請求項3】
前記少なくとも1つの中間ゾーンは、剪断抵抗接着剤を含む第1の中間ゾーンを備えている、請求項1に記載のカバー層。
【請求項4】
前記少なくとも1つ中間ゾーンは、薬剤送達コーティングを含む第2の中間ゾーンをさらに備えている、請求項3に記載のカバー層。
【請求項5】
前記少なくとも1つの中間ゾーンは、ヒドロゲルを含む第2の中間ゾーンをさらに備えている、請求項3に記載のカバー層。
【請求項6】
前記少なくとも1つの中間ゾーンは、抗感染薬、抗菌物質、抗生物質、鎮痛剤、治癒因子、ビタミン、成長因子、創面切除剤、または栄養素のうちの少なくとも1つを含む第2の中間ゾーンをさらにさらに備えている、請求項3に記載のカバー層。
【請求項7】
前記水蒸気透過性膜は、前記カバー層の周辺に延びてバッキング層を構成し、該周辺ゾーンは、該バッキング層に接着された接着剤の層によって画定される、請求項1に記載のカバー層。
【請求項8】
前記周辺ゾーンおよび前記少なくとも1つの中間ゾーンは、前記中央ゾーンに対して同心的に配列される、請求項1に記載のカバー層。
【請求項9】
真空チューブのために、前記カバー層の下に画定された真空レザバへのアクセスを可能にするポートをさらに備えている、請求項1に記載のカバー層。
【請求項10】
真空創傷治療処置において使用される創傷ドレッシング装置であって、該装置は、
創傷床に隣接して位置決めするように適合される接触層と、
該創傷床から滲出する液体を収集するために、該創傷床内において該接触層に隣接して位置決めされた吸収性の充填物と、
該創傷床の上に位置決めされ、該創傷床との間で真空レザバを画定し、該真空レザバへの真空チューブのアクセスを可能にするカバー層であって、該カバー層は、該創傷の周囲にシールを提供する周辺ゾーンと、該創傷床に治療的効果を与えるための少なくとも1つの中間ゾーンと、水蒸気透過性膜から形成された中央ゾーンとを備えている、カバー層と
を備えている、装置。
【請求項11】
前記接触層は、円錐形アパーチャを有する被膜から形成される、請求項10に記載の創傷ドレッシング装置。
【請求項12】
前記吸収性の充填物の材料は、マルチストランドの束に配列されたポリオレフィンフィラメントを含む、請求項10に記載の創傷ドレッシング装置。
【請求項13】
前記真空レザバと流体連通する真空システムをさらに備えている、請求項10に記載の創傷ドレッシング装置。
【請求項14】
前記真空システムは、真空源と、収集キャニスタと、一方向弁とを含む、請求項13に記載の創傷ドレッシング装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【公開番号】特開2009−219869(P2009−219869A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−54225(P2009−54225)
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【出願人】(501289751)タイコ ヘルスケア グループ リミテッド パートナーシップ (320)
【Fターム(参考)】