説明

可変ブラッグスタック

第一の材料及び第二の材料の交互層を含む可変フォトニック結晶デバイスであって、該交互層が応答性材料を含み、該応答性材料は外部刺激に応答性があり、該交互層は第一の反射波長を生じさせる屈折率の周期的な違いを有し;
ここで、該外部刺激に応じて、該応答性材料の変化が、第一の反射波長から第二の反射波長にシフトする、該デバイスの反射波長を生じさせる、前記デバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、可変フォトニック結晶に関する。特に、本開示は一次元可変フォトニック結晶に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトニック結晶(PC)分野は、ここ数年間学界及び産業界の両方の研究者から相当な注目を受けている。このような材料は、屈折率の周期的な空間変調により可視光と相互作用するので興味深い。特に、PCで見られる屈折率の周期的変調により、この変調の周期性に相当する波長を有する光が選択的に反射する。関心のある相互作用は、PCの屈折率のこの周期性が可視光波長に相当する場合に生じる(非特許文献1)。それにより、裸眼で検知可能な光の相互作用が生じる。
【0003】
フォトニック結晶は、一次元、二次元又は三次元の形態で製造することができ、この点に関して、三次元形態は、ボトムアップ法から得られるより一般的なPCを代表する。一次元PCは典型的に、異なる屈折率を有する周期的に交互する層を含む。一次元PCの形態の一つは、ブラッグスタックともいわれる分布ブラッグ反射器(DBR)である。
【0004】
DBRは、様々な誘電率を有する材料の交互層からなる薄膜ナノ構造である。DBRの一例は図1で説明される。図1に示されるように、各層の境界は光波の部分的な反射を生じさせ、多数の境界により多重反射が生じる。屈折率変化が周期的である場合(これは、等しい屈折率の各層が同じ厚さで配置される際に為される)は、多数の反射波が建設的に干渉し、高品質の反射器を効果的に作り出す。DBRによって反射される波長域はフォトニックストップバンドと呼ばれる。この波長域内では、光はその構造中を伝播することを「禁止」され、代わりに反射される。このような構造は、周波数選択フィルターや反射防止膜として、光学の全部門で共通して使用される。
【0005】
DBRに追加の機能性を付与する試みとして、慣用のDBR構造を変形したものが研究されている。Rubner達は、十分に高密度で多孔性の領域が交互する、積層高分子電解質多層へテロ構造のアッセンブリを報告した(非特許文献2)。ポリ(塩酸アリルアミン)(PAH)及びポリ(アクリル酸)(PAA)を含む領域のpH依存性の多孔によって、PAH及びポリ(4−スチレンスルホン酸ナトリウム)(SPS)から構成される高密度pH非依存性領域に対して、可逆性の屈折率のコントラストを達成するための機構が提供された。そのグループは、高屈折率及び低屈折率の領域の厚さを制御することによって、これらの一次元フォトニック結晶(即ち、ブラッグスタック)の反射バンドを、可視スペクトルに亘って合わせることが可能となることを証明した。この「構造色」の簡単な証明の他に、彼らは、その反射ピーク波長(それ故、観察された色)が、多孔領域中で様々な化学種が凝集することに感受性を示すことも示した。微量の溶媒蒸気を検出するためのセンサーやモニタリング可能なドラッグデリバリーシステムとしての用途が検討された。しかし、これらの一次元フォトニック結晶は、その材料の製造中に制御されているので、固定波長を反射できるだけである。その反射波長の変化は、多孔領域中の様々な化学種の吸着に依存し、それ以外の場合では制御できない。
【0006】
Rubner達の同じグループは、TiO/SiOブラッグ反射器から構造色が観察できることを報告した(非特許文献3)。そのナノ粒子DBRは、高分子電解質支援多層付着(polyelectrolyte-assisted layer-by-layer deposition)後、ポリマー成分を除去するためにフィルムを熱処理することによって組み立てられた。得られた共形のナノ多孔薄膜コーティングは、予想された狭い波長反射バンドを示し、それにより、アナライト感受性の構造色が生じる。さらに、そのフィルムは好ましい超親水性(防曇性)及び自己洗浄特性を示す。また、反射波長の変化は、材料の孔内にアナライトが吸着することによって決まる。
【0007】
Choi達は、TiO及びSiOのメソ多孔性材料の交互層からなるブラッグ反射器の調製を報告した(非特許文献4)。各層は、適切なゾル溶液をスピンコーティングし、続いて熱処理工程を行うことにより調製された。著者らは、このようなメソ多孔性DBRの構造色が、その多孔性構造中のアナライトの浸潤(infiltration)及び除去に対して可逆的に感受性を示すことを証明した。反射波長の変化は、材料の孔内のアナライトの吸着に依存する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Arsenault et al., Adv. Mater. 2003, vol. 6 p. 503
【非特許文献2】Zhai et al., Macromolecules 2004, vol., 37 p. 6113
【非特許文献3】Wu et al., Small 2007, vol. 3 p. 1445
【非特許文献4】Choi et al., Nano Lett. 2006, vol. 6 p. 2456
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
現在のところ、このような一次元フォトニック結晶構造で構造色を調整する(tuning)には、孔中で屈折率を変化させ、ブラッグ反射のシフトを最大化する、アナライトの吸着によってもたらされるのみである。他の用途で使用するために、DBRの機能性を拡大することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
いくつかの態様では、第一の材料及び第二の材料の交互層を含む可変フォトニック結晶デバイスであって、該交互層が応答性材料を含み、該応答性材料が外部刺激に応答性があり、該交互層が第一の反射波長を生じさせる屈折率の周期的な違いを有し;ここで、該外部刺激に応じて、該応答性材料の変化が、該第一の反射波長から第二の反射波長にシフトする、該デバイスの反射波長を生じさせる、前記デバイスが提供される。
【0011】
いくつかの態様では、可変フォトニック結晶電気化学セルであって:導電性作用電極及び導電性対極(該作用電極及び対極は間隙を有している);該作用電極と対極との間の上記のデバイス(少なくとも1つの前記第一及び第二の導電性電極と接触する);前記作用電極と対極との間に提供される導電性溶液(該溶液は該作用電極及び該対極並びに該デバイスの両方と電気的に導通する)を含んでおり;該セルが、該デバイスに電気刺激を提供するために、該作用電極と該対極との間に電位を加えるための電源と接続されるように適合している、前記セルが提供される。
【0012】
いくつかの態様では、以下の工程を含む可変フォトニック結晶デバイスの製造方法が提供される:基板を提供する工程;該基板上に第一の材料及び第二の材料の交互層を作製する工程(該交互層は、第一の反射波長を生じさせる屈折率の周期的な違いを有する);及び該交互層に応答性材料を埋め込む工程(該応答性材料は、第一の反射波長から第二の反射波長にシフトする、該デバイスの反射波長を生じさせる外部刺激に応答する変化を有する)。
【0013】
いくつかの態様では、以下を含む、可変フォトニック結晶電気化学セルの製造方法が提供される:導電性作用電極を備えること;該作用電極と電気的に導通する上記デバイスを備えること;該作用電極から間隙をおいて導電性対極を備えること;作用電極と対極との間にイオン伝導性電解液を提供すること(該電解液は該作用電極及び該対極並びに前記フォトニック結晶材料と電気的に導通する);該作用電極と該対極との間の該電解液をシールすること;及び電気刺激を該デバイスに加えるために、該セルを電源に接続するための電気接続を設けること。
【0014】
いくつかの態様では、上記のデバイス又はセルを含む、ディスプレイデバイス、インディケーター、レーザー用部品、及び光伝送用部品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、分布ブラッグ反射器(DBR)を説明する。
【図2】図2は、ポリフェロセニルシランの分子構造を示す。
【図3】図3は、可変DBRの製造方法を説明するフローチャートである。
【図4】図4は、可変DBRを有する電気化学セルの略図である。
【図5】図5は、電気的に調整可能なDBRを組み込んだ電気化学セルの製造方法を説明するフローチャートである。
【図6A】図6Aは、DBRの一例について倍率を変えた走査型電子顕微鏡写真(SEM)を示す。
【図6B】図6BはDBRのいくつかの例のSEMを示す。
【図7】図7は、異なる数の層を有するDBRの準垂直入射反射率(quasi-normal incidence reflectivity)を説明する。
【図8】図8は、可変DBRのチューニングを説明する。
【図9】図9は、3つの原色を反射する可変DBRを説明する。
【図10】図10は、3つの原色ではない色を反射する可変DBRを説明する。
【図11A】図11Aは、DBRのいくつかの例について反射スペクトルを示す。
【図11B】図11Bは、図11AのDBRのSEMを示す。
【図11C】図11Cは、図11AのDBRの解析を示す表である。
【図12A】図12Aは、DBRの一例の反射に対するPFSゲル浸潤の影響を説明する。
【図12B】図12BはDBRの一例のスペクトル及び画像を示す。
【図13】図13は、電気的に調整可能なDBRを組み込んだ電気化学セルの可逆性を説明するグラフである。
【図14A】図14Aは、DBRの一例の反射スペクトルを示す。
【図14B】図14Bは、図14Aの例で用いた電気化学セルの一例を概略的に説明する。
【図15】図15は、電気重合プロセスの一例を示す。
【図16】図16は、磁気応答性DBR及びその反射スペクトルの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示には、可変フォトニック結晶デバイス(本明細書では分布ブラッグ反射器(DBR)という)、該DBRの製造方法、該DBRを用いた電気化学セル及び該セルの製造方法が記載されている。特に本開示には、2以上の異なる組成のナノ粒子の交互層を有するDBRの製造を含む、DBRを製造するためのボトムアップアプローチが記載されている。
【0017】
電気刺激等の外部刺激に応答して反射波長が変化するインテリジェントフォトニック結晶(PC)システムを開発することによって、DBR(一次元フォトニック結晶ともいう)に特定の機能性を付与することが望ましいであろう。この反射波長の変化は、そのDBRの格子間隔の変化に起因し得る。「インテリジェント」とは、反射波長の変化が、単にアナライトの浸潤や吸着に起因するのではなく、DBR自体の変化に起因することを意味する。従って、本開示に記載される可変DBRは別の機能性を提供するであろう。理論的な見地から、DBRの反射を規定するブラッグの式は完全にスケーラブルであり得る。このことは、DBRの格子間隔を連続的に変化させることができ、それ故、可視スペクトル中のあらゆる色を含む、あらゆる波長の光を反射することができるDBRが提案されることを示している。
【0018】
DBRの理論には、本開示を理解するのを補助するものがあり得る。DBRは典型的に、高屈折率材料と低屈折率材料とが周期的に交互する層を含む。均等な割合の全ての色からなる多色の白色光がフォトニック結晶に入射すると、一連の散乱事象が起こり、それによって、典型的には一つの単一波長λを中心とする狭い帯域の波長のみが、結果として生じる干渉を伴ってコヒーレントに反射される。一次の中心波長λは次のブラッグの式によって予測できる(Wu et al., Small 2007, vol. 3 p. 1445)。
【0019】
λ=2(n+n) 式1
ここで、λは垂直入射の一次反射波長であり、n及びdはそれぞれフィルムまたは膜中の低屈折率材料の屈折率及び厚さ、n及びdはそれぞれ高屈折率材料の屈折率及び厚さである。ブラッグの式によって予測されるこの反射波長が、特定の入射角におけるそれぞれのフォトニック結晶の色に対応することに留意のこと。
【0020】
ブラッグの式は、DBRによって反射される波長帯域がn及びnの光学的厚さ(即ち、各層の物理的な厚さを乗じた屈折率)に依存することを示している。従って、単に各層の光学的厚さを操作することによって、薄膜へテロ構造の色は、電磁スペクトルの波長のある範囲にわたって変化させることができる。しかし、このようなアプローチでは、単一のフィルムから複数の色の反射を可能とする動的に調整可能な反射器が得られない場合がある。このアプローチでは、単一のフィルムが単に一色を反射するだけである。しかし、PCの格子間隔を動的に調整できるならば、その後、その相当する色であるλを動的に調整することが可能となり得る。この特定のアプローチにより、単一のフィルムから複数の色を得ることができる可能性があり、その色の変化は外部刺激に応答して生じる。この色の変化は可逆的であることもでき、特定の用途には望まれ得る。
【0021】
空気中におけるλを中心とする反射バンドの強度は、次の式で与えられる:
R=[(1-Y)/(1+Y)]×100(%) 式2
Y=(n/nN−1(n/n
式中、n、n及びnはそれぞれ、高屈折率材料、低屈折率材料及び基板の屈折率であり、Nはスタック数(DBRの層数)である。式2は、反射率Rが、屈折率コントラスト比n/nの値が増加すると共に、また層の数Nと共に増加することを事実上示している。
【0022】
高屈折率及び低屈折率の材料の緻密で連続的な(即ち、多孔性でない)交互層を有するDBRの作製は公知である。この方法で作製したDBRは、非常に強い広帯域の反射を示し、そのため様々な用途に適したものである。しかし、このような構造によって提供される機能性以上のものが提供されることが望ましいであろう。
【0023】
本開示には、分布ブラッグ反射器(DBR、ブラッグスタックともいう)の作製方法が記載されている。また、可変DBR構造も記載されている。特に、可変DBRは、電気刺激、磁気刺激又は機械刺激等の外部刺激に応じて調整することができる。
【0024】
可変DBRは、各々異なる屈折率を有する、第一の材料及び第二の材料が周期的に交互する層を含む。本明細書ではそれぞれの各層について第一の材料及び第二の材料に言及するが、いくつかの実施形態では、各層中に1種以上の材料が存在してもよく(即ち、1つの層が、2種以上の異なる材料を含む混合層であってもよい)、それにより、追加の機能が提供され得る。これらの層は材料の平坦なシート(平板)を含んでいてもよい。これらの層はマイクロ粒子又はナノ粒子から作製されてもよい。いくつかの実施形態では、層はナノ粒子のみから作製されてもよい。ナノ粒子のみを使用することによって、層を数百ナノメートル以下の厚さとすることができ、それにより、可視波長内の反射スペクトルを得ることができる。マイクロ粒子を使用することによって、より厚い層となり、可視波長外、例えば、遠赤外又はマイクロ波の反射スペクトルを得ることができる。このような目に見えない波長の変化は、目視では検知できないが赤外検知器等の他の手段によって検知できる。
【0025】
マイクロ粒子又はナノ粒子の場合、その粒子は、自己集合プロセスにより組織化された層又はフィルム(膜)を形成できる。そのマイクロ粒子又はナノ粒子は、約60ナノメートルから約100マイクロメートルの大きさ、又はより小さい、約1ナノメートル〜約150ナノメートルの大きさの断面の寸法を有することができる。そのDBRは、平板状の異なる材料の交互層、マイクロ粒子もしくはナノ粒子の材料の交互層、又は平板状の材料及びマイクロ粒子もしくはナノ粒子の材料の交互層を有することができる。これらの層のうちどの層においても、マイクロ粒子又はナノ粒子の材料は、1以上の他種の材料と組み合わせて平板の構成要素となることができる。DBRの他の周知の構造も、この可変DBRに適するだろう。
【0026】
例えば、第一の材料又は第二の材料としては、金属ナノ粒子、高分子ナノ粒子、無機ナノ粒子及び半導体ナノ粒子から選択されるナノ粒子又はマイクロ粒子を挙げることができる。このようなナノ粒子には例えば、シリカ、酸化チタン、炭素材料(例えば、グラファイト、ダイアモンド、アモルファス形態の炭素、C60、フラーレン、グラフェン及びカーボンナノチューブ)、ポリマー(例えば、ポリスチレン及びポリメチルアクリレート)、シリコン、シリコンカーバイド、ゲルマニウム、簡単及び複雑な二成分及び三成分金属酸化物、金属カルコゲニド、金属ホウ化物、金属リン化物、金属ケイ化物、金属炭化物、金属窒化物、酸化鉄、酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ、酸化亜鉛及びそれらの組み合わせがある。
【0027】
ナノ粒子又はマイクロ粒子は実質的に、球状、楕円状、棒状、ワイヤー状、管状、球含有多面体、立方体状、シート状、多面体又は凝集体形状の形態であってもよい。粒子は規則的な形状でなくてもよい。粒子は、その粒子と(下記の)応答性材料との間及び/又はその粒子と可変DBRの基板との間の接着を増加させるために修飾(改変)することができる。その粒子はコア−シェル不均一粒子であってもよく、この際その粒子はある材料のコアと異なる材料の同心円のシェルとを有する。様々なかかるコア−シェル粒子が考えられ、特に例えば、ゴールド−シリカ、シルバー−シリカ、ゴールド−チタニア、シルバー−チタニアであり、また例えば、コア−シェル量子ドット(例えば半導体ナノ粒子)、例えばセレン化カドミウム−硫化カドミウム及びセレン化カドミウム−セレン化亜鉛がある。適したシリカをコートしたシルバーナノ粒子の一例は、Lu Y, et al. Nano Lett. 2002, Vol. 2, page 785に記載されている。フォトニック結晶を製造するのに適した他の材料を用いてもよい。
【0028】
ナノ粒子又はマイクロ粒子は、粒子の表面上に機能的なコーティングを有することができる。機能的なコーティングは例えば、粒子の表面上をコートしたリガンドであってもよい。このようなコーティングは、特に:粒子層の形成、基板上への粒子のコーティング、溶媒中の粒子の溶解性、粒子の接着性及び粒子の屈折率に影響及び/又は補助することができる。
【0029】
可変DBRは偶数の層(即ち、第一の材料と第二材料とが同数の層)を有していても、奇数の層を有していてもよい。どのような数の層も適しているが、典型的には、可変DBRは少なくとも2つの二層(1つの二層は、一層の第一の材料及び一層の第二の材料として定義される)を有する。交互層中の周期性が維持されるならば、DBR中の交互層の数が増すほど、得られるDBRの反射率は増加する。
【0030】
DBRから反射される波長は、2つの交互する材料の屈折率のコントラスト(refractive index contrast)(RIC)の他に、二層の周期性(即ち、交互層間の距離及び/又は厚さ)にも依存する。従って、DBRは、1つ又は両方の材料の屈折率を変えることによって、又は層の厚さ及び/又は距離を変えることによって、あるいはその両方により調整することができる。特定の反射波長及び特定の波長を調整する応答は、所定の屈折率及び物理的な厚さを有する層をもつDBRを設計することによって達成できる。可変DBRはスペクトル中のあらゆる波長、例えば可視波長、紫外波長、赤外波長又はそれらの組み合わせを反射することができ、これらの範囲の波長間でシフトできる。
【0031】
可変DBRは、動的に調整できるという別の能力を有する。即ち、その反射波長は固定されず、外部刺激に応じて調整できる。この外部刺激は、機械的、化学的、電気的、磁気的又は放射線の刺激であってもよい。外部刺激により、1つもしくは両方の材料の屈折率が変化し、及び/又は層の周期性が変化し得る。
【0032】
層の周期性の調整可能な変化は、外部刺激に応じて寸法が変化する応答性材料を1つ又は両方の層の材料に組み入れることによって達成できる。例えば、応答性材料は、外部刺激に応じて膨張、収縮、圧縮、拡張あるいは歪曲することができる。DBRの層がマイクロ粒子又はナノ粒子で形成される場合、その層に拡張/収縮する応答性材料を浸潤することによって、マイクロ粒子又はナノ粒子間の格子間隔も、応答性材料の寸法の変化と共に拡張又は収縮し得る。この格子間隔の変化により、層の全体の厚さが変化し、それ故、反射波長が変化する。
【0033】
また、調整可能な変化は、外部刺激に応じて屈折率が変化する応答性材料を1つ又は両方の層の材料に埋め込むことによって達成してもよい。屈折率が変化する応答性材料を層に浸潤させる場合、それらの層間の間隔は変化せず、反射波長の変化は屈折率が変化することにより生じ得る。
【0034】
あるいは、可変性は、屈折率の変化及び周期性の変化を組み合わせることによって、例えば、外部刺激に対して異なる応答性を有する1以上の応答性材料を埋め込むことによって達成してもよい。
【0035】
応答性材料は、マイクロ粒子又はナノ粒子に加えて、又はそれに代えて空隙を含むことができる。これは、そのマイクロ粒子又はナノ粒子が、応答性材料を組み込んだ後、層からエッチング除去(etched out)される場合である。空隙の存在は、材料の屈折率を変化させ、アナライトの吸着を可能にし、DBRへの電解質の移送を改善し、機械力により材料をより圧縮可能とし、及び/又は外部刺激に対するDBRの応答時間を改善することができる。
【0036】
応答性材料は、電気刺激に応答する電気活性ポリマー等のポリマー材料であってもよい。ポリマーの電気応答は、ポリマー上の(ポリマー骨格自体上の、その骨格からぶら下がっている官能基又は鎖としての、あるいはポリマーに結合していないがポリマーと混合されている)電場又は電流に応答する原子又は化学基の存在に起因し得る。これらは酸化又は還元できる原子又は基であり、例えば、市販されている周知の導電性ポリマーに見られるような鉄原子又はチオフェン基である。その結果、ポリマーは、電流を除去した後でも電荷を保持することができる。他の実施形態では、ポリマーは電場に応答するが、酸化又は還元しない基を含む。このような基として、電場内で移動するが、電場を除去すると元の位置に戻る傾向があるイオン性の基がある。他の実施形態では、ポリマーは、ポリマー構造自体が電場等の電気刺激の影響下で寸法の変化を示すように、圧電特性を有する(例えば、ポリマーがポリ二フッ化ビニリデンであってもよい)。応答性材料は、外部刺激に応答するための、所望の化学的、物理的、電気化学的、光学的、磁気的及び/又は電子的特性を生じさせる構成要素(例えば、ポリマー中の連結単位又は原子)を有するように選ばれ、又は設計することができる。
【0037】
電気的活性ポリマーで使用できる、考え得る金属原子は以下を含む:チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、レニウム、白金、パラジウム、ロジウム、亜鉛及びそれらの組み合わせ。これらの金属原子は、ポリマー中に化学的に組み込まれ、直接及び/又は連結単位により一緒に結合できる。直接的な結合又は連結単位それ自体は、所定の化学的、物理的、電気化学的、光学的及び/又は電子的な特性をポリマーに提供できる。考え得る連結単位は以下を含む:置換又は無置換のカルバニオン、共役カルバニオン、線状オレフィン、環状オレフィン、アセチレン、ホスフィン、アミン、カルボニル、カルベン、アルコキシド、及びそれらの組み合わせ。金属原子は、以下の側鎖リガンドを有していてもよい:置換又は無置換のカルバニオン、共役カルバニオン、線状オレフィン、環状オレフィン、アセチレン、ホスフィン、アミン、カルボニル、カルベン、アルコキシド、フラーレン及びそれらの組み合わせ。
【0038】
応答性材料はメタロポリマーであってもよい。メタロポリマーの一例は、図2で示されるポリフェロセニルシラン(PFS)ゲルである。PFSは、主鎖が、フェロセニルシクロペンタジエニル環の1位及び1’位によって結合される、置換ケイ素原子とフェロセン基が交互して成るポリマーである。PFSは、遷移金属によって触媒される開環重合(ROP)又はアニオン性ROP等の多数の方法によって、高分子量で得ることができる(Foucher et al., J. Am. Chem. Soc. 1992, vol. 114 p. 6246)。記載されているこれらの各方法は、より多量に拡張及び再現可能である。
【0039】
ポリマーは、金属含有のモノマー、オリゴマー又はプレポリマー、例えば架橋メタロセノファン(metallocenophane)から生成することができる。考え得る架橋メタロセノファンは以下を含む:置換シラ-1-フェロセノファン、例えばジアルキルシラ-1-フェロセノファン、アルキルアルコキシシラ-1-フェロセノファン、ジアルコキシシラ-1-フェロセノファン、シクロアルキルシラ-1-フェロセノファン、ジアリールシラ-1-フェロセノファン、アルキルアリールシラ-1-フェロセノファン、アルキルアルケニルシラ-1-フェロセノファン、アルキルアルキニルシラ-1-フェロセノファン及びそれらの組み合わせ。金属含有架橋剤は例えば以下を用いることができる:シクロブチルシラ-1-フェロセノファン、シラ-1,1’-ジフェロセノファン、1,2-ビス(メチルシラ-[1]-フェロセノファン)アセチレン、1,4-ビス(メチルシラ-[1]-フェロセノファン)ベンゼン、ビス(メチルシラ-[1]-フェロセノファン)-1,4-ジエチニルベンゼン、1,2-ビス(メチルシラ-[1]-フェロセノファン)エタン及びそれらの組み合わせ。
【0040】
他の好適なポリマーは以下を含んでいてもよい:ポリフェロセニルシラン、ポリチオフェン(例えば、ポリスチレンスルホネートとのポリエチレンジオキシチオフェン複合体)、ポリピロール、ポリアニリン、ポリフェニレンビニレン、ポリアセチレン、ポリフルオレン、ポリフェニレンビニリデン、ポリアセチレン、導電性ポリマー、共役ポリマー、メタロポリマー、ポリ二フッ化ビニリデン、かかるポリマー種を含むコポリマー及びそれらの組み合わせ。これらのポリマーは置換されていても、置換されていなくてもよい。
【0041】
網目状のポリマーは、線状ポリマー鎖を含んでいてもよく、あるいは、架橋された網目状のポリマーを提供するために所定の密度の架橋基を含んでいてもよい。これらの架橋は例えば、共有結合、イオン結合、極性共有結合、化学結合、物理結合、分散相互作用、ファンデルワールス相互作用、ナノ粒子相互作用、表面相互作用、水素結合、配位結合、静電相互作用、疎水性相互作用、フルオロフォービック(fluorophobic)相互作用、相分離ドメイン(phase-separated domain)又はそれらの組み合わせに基づいてもよい。ポリマー全体の架橋の密度及び分布は、所定の剛性又は可撓性を有するポリマーを提供するように選択することができる。例えば、より高密度の架橋は、より硬いポリマー材料を生じさせ、また、外部刺激に対するより小さい及び/又はより遅い応答を生じさせ得る。その架橋は、導電性であっても、電気的に絶縁されていてもよい。
【0042】
ポリマーは、限定されないが、例えば以下の様々な方法によってDBRの層に組み込むことができる:溶融浸透(melt infiltration)、モノマーもしくはモノマーの組み合わせの重合もしくは架橋、架橋剤の重合、溶液浸透、気相浸透、電気泳動、昇華又はそれらの組み合わせ。
【0043】
一例では、ポリマー材料は、ペンダントビニル基を有するポリフェロセニルシランであってもよく、これは、活性化ラジカル開始剤の存在下で多官能チオールを用いて架橋される。
【0044】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの二層材料を2以上の異なる材料の混合物により調製することができる。例えば、層材料の1つは、2種のナノ粒子の混合物又は1種のナノ粒子と1種の浸潤された材料の混合物から作製できる。これにより、応答性材料を層に組み込まずに、外部刺激に応答する能力を有する混合層を提供できる。例えば、混合層は、マグネタイト等の磁気応答性材料のナノ粒子及びエラストマー等の可逆圧縮性材料の混合物を用いて作製できる。他の層材料は、混合物でも、均質であってもよい。混合層中に磁気応答性材料が存在することにより、得られる構造は圧縮又は拡張され得、磁気刺激に応じてDBRの層をより近付けたり又はより離したりし、結果として反射波長が変化する。
【0045】
磁気応答性DBRは、混合層を用いずに得てもよい。例えば、そのDBRは、マグネタイトナノ粒子等の磁気応答性材料を有する第一の材料及び多孔性エラストマー等の可逆的に圧縮可能な第二の材料の交互層を含んでいてもよい。この場合、マグネタイト層は、マグネタイト層が磁気刺激に応答するときに変形(例えば圧縮)し得る多孔性エラストマー層によって隔てられる。
【0046】
いくつかの実施形態では、応答性材料は機械刺激に応答性を有することができる。例えば、1以上のDBR層は、多孔性のエラストマー又はポリマー等の機械的に伸長/圧縮可能な材料を含んでいてもよく、それにより、DBR構造は機械刺激によって変形され得る(例えば、機械力を加えることによって圧縮される)。
【0047】
可変DBRを製造する方法の一例は、図3で説明されている。
【0048】
工程302では、基板を準備し、可変DBRの層を基板上に形成する。基板は可撓性又は非可撓性の材料で作製してもよく、用途に応じて選ぶことができる。基板のために用いることができる材料は以下を含む:金属、絶縁体、半導体、半金属、ポリマー、液晶、イオン性液体、液体及びそれらの組み合わせ。示されていないが、基板は、可変DBRを作製した後、当技術分野で周知の方法により除去することができ、自立する可変DBRが作製される。基板を用いずにDBRの層を作製することも可能である。例えば、基板の代わりに、前もって作製した(例えば、慣用の方法で別に作製した)初期層を用いてもよい。このような前もって作製した層は、交互層の1つとして、例えば最上層又は最下層としてDBRに組み込むことができる。このような前もって作製した層は、例えば、本明細書で記載した方法で初期層の周囲に交互層を形成することによりコア層又は中心層として組み込んでもよい。
【0049】
工程304では、第一の材料の層を基板上に形成する。その層は、上記の通り、様々な材料により形成することができ、様々な形状を有し得る。層がナノ粒子層である場合、この工程は、薄くて平坦な層を作製するためにナノ粒子をスピンコーティングすることを含んでもよい。ナノ粒子層の厚さを調整する他の方法は例えば、ディップコーティング、ドローバー(drawbar)、スロットダイコーティング(slot die-coating)、カーテンコーティング(curtain-coating)、ガルニエコーティング(garnier-coating)、ロールコーティング、スクリーン印刷、エアロゾル蒸着、真空蒸着、火炎熱分解及びその他の当技術分野で周知の技術である。ナノ粒子層の場合では、より頑健な層を製造するために、例えば焼結、熱処理又はプラズマ処理によりさらに層を処理することができよう。
【0050】
この層を形成する方法は、第一の材料が混合材料(例えば、2種以上の異なるナノ粒子の混合物又はナノ粒子及び浸潤した材料の混合物)である場合同様であり得る。例えば、均一なナノ粒子で開始するよりも、各ナノ粒子を一定の適切な割合で有する、2種以上の異なるナノ粒子の混合物を用いることができ、その混合物は、スピンコーティング等の上記の技術により1つの層にすることができる。混合物は、磁気応答性ナノ粒子(例えばマグネタイトナノ粒子)等の、外部刺激に応答するナノ粒子を含んでいてもよい。形成した混合層には、浸潤材料をさらに浸潤させてもよく、非応答性のナノ粒子は選択的に除去できる。非応答性のナノ粒子は、各混合層を形成する際に選択的に除去しても、DBRの全層を形成した後に除去してもよい。例えばこの方法を使用して、初めに、適切な割合でSiO及びマグネタイトナノ粒子の混合物を用いて1つの層を形成し、その形成した層にエラストマーを浸潤させた後、選択的にSiOを除去することによって磁気応答性混合層を形成することができ、それにより、磁気刺激に応じて収縮又は拡張する混合層が得られる。
【0051】
他の例では、SiO及びマグネタイトナノ粒子は異なる層に存在してもよく、そのSiO層に網目状のエラストマー等の可逆圧縮性材料を埋め込むことにより、そのSiOをエッチングした後、そのマグネタイト層は、マグネタイト層が磁気刺激に応答する際に変形(例えば、圧縮)される多孔性エラストマー層によって分離されるようになる。
【0052】
工程306では、第二の材料の層を形成する。第二の層は、上記の通り、様々な材料で形成でき、様々な形状を有し得る。第二の材料の層は、第一の材料と同じ方法で形成できる。第一の材料が混合材料である場合、第二の材料は均一な材料であっても、同様な又は異なる応答性材料を有する混合材料であってもよい。
【0053】
第一の材料及び第二の材料の交互層は、所望の層数又は厚さが得られるまで繰り返し形成される。第一の材料と第二の材料との層数が同じであっても(即ち、層が偶数の場合)、第二の材料より第一の材料の層が1つ多くても(即ち、層が奇数の場合)よい。
【0054】
少なくとも1つの第一の材料及び第二の材料が、少なくとも1つの埋め込まれている応答性成分を有する混合材料等の応答性材料である場合、DBRはこの時点で完成し、その方法は終了する。第一の材料及び第二の材料の両方が非応答性である場合は、その方法は工程308に進み得る。
【0055】
工程308では、層に前駆体混合物を浸潤させる。前駆体混合物はモノマー、オリゴマー又はプレポリマー;架橋剤;及び開始剤を含むことができる。いくつかの例では、前駆体混合物は、約50〜100重量%のモノマー、オリゴマー又はプレポリマー、0〜30重量%の架橋剤及び0〜20重量%の開始剤を含んでいてもよい。層への浸潤は、振動、熱、真空及びその他の同様な周知技術によって補助することができる。モノマー、オリゴマー又はプレポリマーは、上記のポリマーのモノマーを含み得る。開始剤は、光開始剤、熱感受性開始剤又は化学開始剤から選択できる。モノマー、オリゴマー又はプレポリマー自体が架橋性の基又は側鎖を含んでいてもよく、この場合、架橋剤は必要でない場合もある。
【0056】
工程310では、前駆体混合物を架橋して網目状のポリマーを形成することで、複合DBRを作製する。架橋は、用いる開始剤の種類に応じて、前駆体混合物をUV線、熱又は好適な(例えば、液体又は気体の)化学物質に曝露することを含み得る。
【0057】
いくつかの実施形態では、電気応答性のDBRを製造するために、有機導電性ポリマー等の導電性ポリマーを層に浸潤させる電気重合のプロセスを用いてもよい。
【0058】
電気重合プロセスの一例を図15に示す。この例では、導電性ポリマーがAで示されるチオフェンである。Bは、電気重合に適する3つの電極を用いた電気化学セルを略図で説明する。示されている例では、セルは、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)上に形成される層を含む作用電極WE、白金対極CE、及びポリマー前駆体(この例ではチオフェンモノマー)を含んだ溶液に浸した銀/塩化銀参照電極REを有する。他の適した材料を電極及び溶液に用いてもよく、他の電気化学的設定も適したものとなり得る。適した正電位を作用電極に加えることで、前駆体を酸化的に重合し、所望のポリマーとする。あるいは、所定のポリマー前駆体は、作用電極に負電位を加えることによって電気重合してもよい。作用電極は多孔性DBRから構成されるので、そのポリマーはDBRの孔内でしか成長しない。Cは、ポリ(チオフェン)を浸潤したSiO/TiODBRの一例の写真である。Dは、その例について、ポリ(チオフェン)による浸潤前後のSiO/TiODBRの例の反射スペクトルを含む。
【0059】
出来上がった複合DBRは、基板上で用いても、例えば蒸留水中で基板からDBRを浮かせることにより、基板から分離してもよい。基板を有さないDBRを提供することは、より高い可撓性が望まれる場合に有益であり得る。基板を有さないDBRの頑健性は、DBR中の層を多くするか、厚く形成することで改善できる。DBRの頑健性を上げるには、焼結、熱処理又はプラズマ処理も役立つ。
【0060】
いくつかの例では、DBRは1以上の層を除去するためにさらにエッチングしてもよい。これは、その応答性を改善し及び/又は外部刺激に対する応答を改変するために行うことができる。このエッチングは選択的であり、必要に応じて、化学処理(例えば、シリカのフッ化水素酸、フッ化アンモニウム又は水酸化ナトリウムによるエッチング)、プラズマ処理(例えば、混合されている犠牲ポリマー球(sacrificial polymer sphere)等の有機物を除去するための酸素プラズマ)、ガス処理又は熱処理(例えば、有機物から二酸化炭素ガスへの熱変換)を行うことができる。エッチングプロセスは、DBRの1以上の層を除去するために用いることができ、それにより、残っている層は寸法(例えば、伸長/収縮)のより大きな変化を示すことが可能となり、また、反射波長の強度が増大し得る。
【0061】
可変DBRが電気的に調整できる場合、図4に示されるように、電気化学セルに組み込むことができる。電気化学セルは、作用電極404上に支持することができる可変DBR402及び作用電極から離れた対極406を含んでいる。作用電極及び対極はスペーサーによって隔てることができる(図示せず)。イオン伝導性電解質溶液等の導電性溶液408は、電極404と406との間に設けられ、電極404、406及びDBR402の間の電気導通を提供する。また、溶液408は、電気刺激に対してDBRが応答可能となる所定の電解質を含むことができる。セルは溶液408を含むようにシールすることができる。溶液408について述べたが、セル中の電気導通を提供するために固体又は液体を用いてもよい。電気化学セルは、より頑健にするために基板上に設置してもよい。
【0062】
デバイスは、デバイスを制御するために、ポテンショスタット410等の電源に接続できる。この形態において、デバイスの反射スペクトルは、作用電極404及び対極406を通して電位を加えることによって調整できる。例えば、DBR402が電気応答性ポリマーを含む場合、酸化電位がデバイスに加えられる際に、DBR層402中のポリマーから電子が吸い出され(例えばポリマーが金属原子を含有するメタロポリマーゲルの場合)、一方、溶媒シェルによって囲まれている導電性溶液408のアニオンは、正電荷の蓄積を中和するためにポリマーへ向かうことができる。ポリマー中への電解質及び溶媒の流入により、ポリマーが膨潤し、DBR402中の層が押し広げられることで、反射波長のレッドシフトが生じる。還元電位を加えることによってそれとは逆の効果が起こり、DBR402中のポリマーに電子が結合し、アニオンが導電性溶液408中に放出される。これにより、ポリマーが収縮し、DBR402中の層の間隔が減少することで、反射波長のブルーシフトが生じる。
【0063】
他の例では、DBR402は、他の方法、例えば屈折率の変化によって応答する応答性材料を含むことができる。このような変化によっても、DBR402中の層の物理的周期性(例えば幾何学的厚さ)を変えずに、反射波長のシフトを起こすことができる。
【0064】
作用電極及び対極である404、406は、同じ材料で作製し、実質的に同じ設計を有していてもよい。あるいは、作用電極及び対極である404、406は、異なる材料から作製し及び/又は異なる形態を有していてもよい。作用電極及び対極である404、406の材料及び/又は形態は、下記の通り、DBR402の電気応答に影響し得る。
【0065】
一般的に、作用電極404に適した材料及び形態は、対極406にも適する。従って、2つの電極404、406の構成については、一緒に述べる。電極404、406に適した材料は、種々の導電性材料を含むことができ、限定されないが例えば、導電性酸化物、導電性セラミックス、金属、炭素、導電性ポリマー、酸化還元活性ポリマー、ナノ粒子及びそれらの組み合わせである。他の適した導電性材料を用いてもよい。これらの導電性材料は、自立性でも、電極基板上に支持されてもよい。このような電極基板は、限定されないが例えば、布、紙、金属、ポリマー、ガラス、セラミックス、無機材料及びそれらの組み合わせの材料から作製できる。電極404、406及び電極基板は、可撓性であるものを選んでもよい。
【0066】
電極404、406は、電荷蓄積材料でコートしてもよい(図示せず)。電荷蓄積材料はイオン伝導性電解液中に存在していてもよい。電荷蓄積材料は、電荷を保持する容量、ならびにそれ自体の電気的特性及び電気化学的特性に応じて、DBR402の光学特性の変化の性質及び大きさに影響を及ぼすことができる。
【0067】
このような電荷蓄積材料は、限定されないが例えば、導電性酸化物、導電性セラミックス、金属、炭素、導電性ポリマー、酸化還元活性ポリマー、ナノ粒子、酸化還元活性小分子及びそれらの組み合わせの様々な材料から構成できる。電荷蓄積材料は十分に緻密であっても、多孔性であってもよく;比較的滑らかでもあっても、粗くてもよい。電荷蓄積材料は、非常に高い導電率から比較的低い導電率まで及ぶことができる。電荷蓄積材料は電荷を蓄積するために化学変化(酸化還元反応、インターカレーション等)を受けてもよいし、又はその表面に電荷を蓄積してもよく、その場合、より大きな表面積(例えば多孔性材料の場合)がより大きな電荷容量を提供することができる。電荷蓄積材料は、周知の方法、例えば液体付着(例えば、ディップコーティング、カーテンコーティング、スロットダイ、スクリーン印刷、グラビアコーティング、メイヤーバーコーティング(meyer bar coating)、スプレーコーティング等)を用いて、気相蒸着(例えば、熱蒸着、スパッタリング、スプレー熱分解、化学蒸着、ナノ粒子エアロゾル等)又は固相沈着(押出、ドローイング、溶融形成等)により電極404、406のうち1つ又は両方に付けることができる。これらの方法は、所定の厚さを有するパターンの印刷又はコーティング(被覆)に適合できる。電荷蓄積材料は別途作製した後電極に取り付けてもよい。
【0068】
電荷蓄積材料は、導電性溶液408中に提供されてもよい。例えば、溶液408は、銀イオン等の、溶解した化学種を含み得る。このような化学種は、電気化学セルが電源に接続された際還元されることで、効率的に電荷を蓄積する。これは、電荷が変わると逆となり得る。溶液408は、作用電極又は対極404、406で化学的又は電気化学的反応が行われる他の電気活性成分を含んでいてもよい。
【0069】
可変DBRを含む電気化学セルの製造方法は、図5で説明される。
【0070】
工程502では、作用電極を設ける。作用電極のための材料は、上記材料から選択でき、以下を含むことができる:導電性酸化物、導電性セラミックス及び炭素(例えば、グラファイト、アモルファス炭素、カーボンナノチューブ、フラーレン、グラフェン又はそれらとポリマーとの複合体)。作用電極は、頑健性を増すため基板上に設置又は設けることができる。基板は可撓性であってもよく、例えばその場合、電極も可撓性である。典型的に、基板は機械的安定性を提供する。作用電極は、上記で形成できる電荷蓄積材料も備えることができる。
【0071】
工程504では、可変DBRを作用電極上に作製する。この方法は、可変DBRを直接作用電極上に作製する場合について記載するが、可変DBRを別に作製して、作用電極上に設置して、接着して、又は配置してもよい。可変DBRは別途部分的に作り(例えば、ナノ粒子層の形成、しかし架橋はしない)、作製は作用電極上で完成してもよい(例えば、前駆体混合物の浸潤及び架橋)。作用電極上の可変DBRの結果を達成するための多種の方法があり、当技術分野で周知の通り用途に応じて選択することができる。
【0072】
工程506では、対極を設け、作用電極をその対極と接続する。対極は、例えばスペーサーを入れることによって、作用電極から離して設けることができる。対極に用いる材料は、作用電極について上記で記載した材料と同じものから選択することができる。対極及び作用電極は、同じ材料で作製してもよい。工程502での作用電極についての記載は、同様に対極にも適用できる。
【0073】
可変DBRは作用電極上に支持されると記載したが、可変DBRが対極上に支持されてもよい。可変DBRは作用電極及び対極の間で自由に動ける状態であってもよく、また、直接接触しないで、電極間の導電性溶液により電極と電気的な接触をしていてもよい。
【0074】
上記の通り、作用電極及び対極の間にスペーサーを導入してもよい。スペーサーに用いる材料は、非導電性材料、例えば熱可塑性高分子膜、接着剤を塗布したプラスチックフィルム、制御された厚さで付けた接着剤もしくはエポキシ、又は接着剤もしくはエポキシ中に配合されてセルの厚さを規定するスペーサービーズから選択することができる。
【0075】
対極は、(例えば電線を用いて)直接的に又は(例えば導電性溶液により)間接的に、作用電極と電気的に接続される。
【0076】
工程508では、電解質又はイオンを含有するイオン導電性溶液等の溶液でセルを満たす。電解質又はイオンは、可変DBR中のポリマーを膨潤させるのに適するように選択できる。続いて、セルの1以上の部分をシールすることができる。電解質は典型的に、液体又はゲル中に溶解した塩(即ち、陰イオン及び陽イオン)から成る。塩は、可変DBRを制御するために加えられる電位範囲において電気的活性ではないように選ぶことができる。例えば、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム及びヘキサフルオロリン酸リチウム等のリチウム塩が適するものとなり得る。使用する電位範囲において同様に不活性である液体中に塩を溶解することができる。
【0077】
図示していないが、セルはさらに、電気的接続を備えることができ、それによって電気刺激を提供できる。
【0078】
この方法は一定の順序の工程でもって記載されているが、この方法の変形も可能であり(例えば、異なる順序の工程、1工程で2以上の成分の製造等)、このような変形や改良は本開示の範囲内に含まれる。
【実施例】
【0079】
電気的に調整できるDBRの一例は、複合ポリフェロセニルシラン/ナノ粒子DBRである。このDBRは、ポリフェロセニルシラン(PFS)材料を浸潤させた異なるナノ粒子層の交互層を含む。このような構造は電気化学セルにおいて使用でき、初めに、複合DBRを導電性電極(フッ素ドープ酸化スズ、透明であってもよい)上に作製した後、そのDBRと電極とを電解電気化学セル中に組み込むことによって使用できる。
【0080】
SiO及びTiOはDBR構造を組み立てるために使用できる2つの材料である。これらの2つの材料は異なる誘電率を有しており、パルスレーザー蒸着、反応性スパッタリング又は種々の化学蒸着技術等の広範な技術により、非常に均一な薄膜として成長させることもできる(Jethmalani et al., Langmuir 1997, vol. 13 p. 2633)。また、浸漬(Chen et al., Appl. Phys. Lett. 1999, vol. 75 p. 3805)又はスピンコーティング(Almeida et al., Current Opinion in Solid State and materials Science 2003, vol. 7 p. 151)と組み合わせたゾルゲル法を用いてもよい。パルスレーザー蒸着、反応性スパッタリング又は化学蒸着技術は典型的に、連続的な無孔フィルムを提供し、これは多孔性フィルムよりも低い機能性となり得る。無孔性の連続フィルムは、ディップコーティング又はスピンコーティングによって付着されるゾルから(例えばゾルゲル法によって)調製してもよい。多孔性フィルムについては、ゾルゲル法によりナノ粒子を調製することができる。これらのナノ粒子はその後、スピンコーティングもしくはディップコーティング又は上記のその他の同様な技術により付着させて、多孔性フィルムを提供し得る。
【0081】
DBR層は、SiO及びTiOのナノ粒子の懸濁液から開始して作製できる。この実施例で用いたSiOコロイドは、Dupont社の製品(LUDOX(商標)、Aldrich)であり、TiO結晶(nc−TiO)は、0.1M HNO中でチタンエトキシド(Aldrich)の加水分解に基づく手順により合成した。TiOコロイドのペプチゼーションは、8時間還流することによって為された。
【0082】
TiOナノ結晶は、調製されたままの状態で使用するか(即ち、ストックから)、あるいは所望の濃度に希釈して使用した(この場合、元の濃度の半分の濃度)。TiO分散物の膜形成特性を改善するために、1〜2.5wt.%のポリエチレンオキシド(Mw=20,000、Aldrich)をTiO分散物に加えた。使用したSiOナノ粒子をストック濃度の半分の濃度に希釈した。フィルムは、一定速度で大気圧にてスピンコーティングにより調製した。スピンコーティング技術により、大面積のナノ粒子層が作製可能となる。フィルムの厚さは、ナノ粒子濃度又はスピンコーティング速度を変えることによって制御できる。スピンコーティング速度が小さくなれば、典型的に、フィルムはより厚くなり、その逆も同様である。あるいは、スピン速度を維持しながらナノ粒子濃度を上げても、フィルムはより厚くなる。コーティング工程毎にフィルムを熱処理することで、より高品質のフィルムが得られる。熱処理によって、ナノ粒子分散物に良好な膜形成特性を付与するために加えられており、形成したフィルム中に存在する有機化合物を除去することができる。この熱処理により、形成したフィルムの機械的特性も改善することができる。同様に、プラズマ処理を用いることもできる。
【0083】
続いて、調製したナノ粒子フィルムにゲル前駆体を浸潤させた。この実施例において、ゲル前駆体は、ポリ(メチルビニルポリフェロセニルシラン)等のポリマー、架橋剤及び光開始剤を含んでいた。ゲル前駆体のための考え得る材料は、米国特許出願第10/681,374号及び第11/831,679号明細書(この開示は、参照によってそれら全体が本明細書に組み込まれる)で検討されているものを含む。浸潤した後、その複合体を窒素雰囲気下でシールして、2〜4時間UV線に当てることで、架橋プロセスを終えた。架橋を行った結果、ナノ粒子層内にポリフェロセニルシランベースのポリマーが生成した。このポリマーは電気刺激に対する酸化還元応答性を有し、ポリマーが膨潤又は収縮する。このポリマーの電気応答及び特性の記載は、上記の米国特許出願第10/681,374号及び第11/831,679号明細書に見ることができる。ポリマーが膨潤又は収縮することによって、複合DBRの格子間隔が増加又は減少した。こうして、この複合DBRは、DBRのフォトニック結晶格子の拡大に起因して、電気的に調整できる色反射性を示した。
【0084】
調製したナノ粒子DBRの走査型電子顕微鏡写真(SEM)を図6Aに示す。SiOは暗い領域に対応し、TiOは明るい領域に対応する、DBRの交互層間のコントラストを確認することができる。層の厚さや交互するパターンが全体で維持されており、基板に垂直な方向で材料の一次元の周期性も確認できる。
【0085】
図6Bは、DBRのいくつかの例の走査型電子顕微鏡写真を示す。SiO、TiO、Sb:SnO及びSnOのナノ粒子の組み合わせから調製したDBRを示す。SiO/TiOについては、スケールバーは0.5μmを表し、残りのスケールバーは1μmを表す。各DBRは、これらのナノ材料及びその他の種々のナノ材料の組み合わせを用いて調製することができる。
【0086】
図7は、二層スタックの数に対するナノ粒子DBRの準垂直入射反射率の依存度を説明する。この実施例では、二層(即ち、一層のSiO及び一層のTiO)の数は2〜5の範囲であった。上記の式2と一致して、DBRの反射率は一般的に、二層の数が多くなるにつれて増加することが確認された。このような現象は、スタックの各材料の層厚さが構造全体に亘って周期的に維持されているならば、DBRで広く観察される。
【0087】
DBRの反射率はアッセンブリを構成している各層の光路長を変調することによって調整できる。これは、層の実効屈折率又は幾何学的層厚さのいずれかを操作することによって行うことができる。本明細書に記載されるDBRの比較的大きい多孔率は、幾何学的層厚さの変化を可能とする。図8は、DBRシステムのブラッグピーク最大値が、層厚さの変動によってどのように変化するかを説明する。異なる厚さは、各分散物中のナノ粒子の濃度を変化させることと、コーティングプロセスにおけるスピン速度を一定に保持することを同時に行うか、コーティングプロセスにおけるスピン速度を変化させ、濃度を一定に保つことによって得ることができる。
【0088】
また、図8に示されるように、使用する層の光学的厚さ(即ち、材料の屈折率に幾何学的厚さを乗じたもの)が可視光の波長に匹敵するならば、このようなDBRシステムは、可視の構造色を提示することができる。図8は、DBRの層厚さを操作することによって得られる、DBRシステムの(電磁スペクトルの可視域全体にわたる)フルカラー調整を説明する。典型的に、厚さが増すにつれて、反射波長はレッドシフトする(即ち、より長波長へのシフト)。
【0089】
図9は、原色である、赤、緑及び青の反射を説明する。また、図10は、3つの原色ではない色の反射を説明しており、これらはその他の周知のフォトニック結晶システムからは得られないであろう(Arsenault et al., Nat. Photon. 2007, vol. 1 p. 468)。
【0090】
図11Aは、ナノ粒子二層の種々の組み合わせ(SiO/TiO、TiO/ATO、SnO/TiO、SiO/SnO及びSiO/ATO(ATOはアンチモンドープ酸化スズである))から作製されたDBRの反射スペクトルを示す。特に、4個の二層のスペクトルと比較した14個の二層SiO/TiODBRのスペクトルに留意のこと。いくつかの例では、二層の異なる層厚さ又は数についてのスペクトルを提供する。各例では、例えば1Dフォトニック結晶のブラッグ式に従って、1次元フォトニック格子を構成している層の幾何学的厚さ又は光学的厚さを操作することによって、基本ブラッグピークのスペクトル位置がシフトし得る。
【0091】
図11Bは、ガラス基板上における、上記の異なる組成を用いて作製した4個の二層ナノ粒子DBRの画像を示す。
【0092】
図11Cは、図11Aの実施例の解析結果を示した表である。この表は、DBRの実施例の分散物組成と分光偏光解析結果を示す。分光偏光ポロジメトリー(spectrocopic ellipsometric porosimetry)(SEP)は、SEPにより所定のDBRの交互層の幾何学的厚さと共に、実効屈折率を決定できることから、DBRの特性を評価するための有力な手段となり得る。これらのパラメーターの積から光学的厚さ(例えば、TiO層の光学的厚さ=neff(TiO)×厚さ(TiO))が得られ、上記の式1及び2で示したように、DBRの光学特性を決定できる。SEPはまた、DBRの層中に存在する自由体積の量(即ち、多孔率)も提供することができ、様々な機能性材料(例えば、応答性材料)をDBRの自由体積中に組み込むことを可能とするのがこの多孔であるので、有益となり得る。この表は一定の値や寸法を示しているが、様々な値や寸法が適しており、これらの例は、例示を目的として示しているに過ぎない。
【0093】
ナノ粒子DBRシステムの空隙容量は、これらの空隙が機能性及び/又は応答性の材料の浸潤を可能とするので、DBRに一定の機能性を付与するための機会を提供することができる。用語「応答性(responsive)」とは、外部刺激に応答して所定の変換が生じ得る材料を表す。この性質の材料は、「インテリジェント」であるともいえる。このような材料は、色が可逆的に調整され得るフォトニック結晶デバイス、例えば可変DBRを提供するために使用できる。その可変波長範囲は広く、紫外、可視もしくは赤外の波長又はそれらの組み合わせにまで及ぶことができる。
【0094】
一例では、ポリフェロセニルシラン(PFS)等の応答性ポリマーゲルをDBRに浸潤させた。このゲルについては、米国特許出願第10/681,374号及び第11/831,679号明細書でも検討された。図12Aは、PFSゲルを浸潤したことによるDBRデバイスのブラッグ反射への影響を説明する。示されている通り、浸潤後に、反射波長において70nmのレッドシフトを伴いブラッグピークの強度の減少が観察された。
【0095】
図12Bは、多孔性のSiO/TiODBRの一例のスペクトル及びDBRの画像を示している。赤いプロットは多孔性SiO/TiOに対応する。黒いプロットは、応答性材料(この場合ポリフェロセニルシランである)を浸潤させた同じSiO/TiODBRに対応する。浸潤したSiO/TiODBRのSiO層はエッチングで除去されて、多孔性ポリマー及びTiOの交互層を生じさせる。このエッチングされたサンプルの反射スペクトルは緑で示されている。
【0096】
電気的に調整できるDBRを組み込んだ電気化学セルの一例も作製した。この例では、電気化学セルは、慣用の2電極セルであった。作用電極は、一例として、ITO(スズドープ酸化インジウム)等の導電性材料上に付けた、PFSを浸潤したDBRを含み、対極は、未変性のFTO(フッ素ドープ酸化スズ)等の他の導電性材料を含んでいた。この電気化学セルは、網目状のメタロポリマーの酸化還元特性のために、連続的に変化できる酸化度を示した。DBRフィルム中のポリマーは、電気化学セルの作用電極を、対極に対して正に分極することによって、異なった程度に酸化でき(例えば、PFSの場合Fe(II)からFe(III)への変換)、そのためPFSゲルの可変膨潤を得ることができる。この膨潤により、DBR層の周期性が変化することから、反射波長は影響を受けた。
【0097】
ポリマーがDBRの枠組みの中で活性である他に、電気的にアクセス可能であるかを確認するために、サイクリックボルタンメトリー(サンプルに加えた電圧を一定の最大電位になるまで一定速度で変化させた後、元の電位に逆転させ、それに伴い、電位サイクルを通して電流を計測する方法)を行った。図13に示される通り、PFSの2つの特徴的な可逆性酸化還元対がCV実験で観察されたことから、そのポリマーは可逆的に酸化還元活性であった。
【0098】
図14Aは、電気刺激に応じたDBRの一例の反射スペクトルを示す。この実施例におけるDBRは、PFSを浸潤しSiOをエッチングしたSiO/TiODBRである。緑のプロットは、電気刺激を加えていないDBRの反射スペクトルを示す。赤いプロットは、10秒間2000ミリボルトを加えた後のDBRの反射スペクトルを示す。図14Bは、図14Aの例で用いた電気化学セルを略図で説明する。
【0099】
磁気応答性DBRの一例を図16に示す。A)は、SiO及び磁気応答性マグネタイトの第一の混合材料、並びにTiOの第二の材料の交互層から形成されたDBRの一例のSEMを示す。マグネタイトの導入は、磁気応答性を有するDBRを提供することができる。A)中に示されるDBRにエラストマーを浸潤した後、SiOをエッチング除去することができる。得られた複合体は、磁気刺激に応答して圧縮又は膨張することができ、それにより、構造が変化し、反射スペクトルの変化を生じさせることができる。B)は、エッチング前のDBRの反射スペクトルを示す。この例では、SiOが犠牲となり、その除去により、構造が拡大及び収縮することができる。SiOの除去は、ナノ粒子層を互いから効果的に離して、拡大及び縮小を可能とする。
【0100】
上記のような、可変DBR及び可変DBRを含む電気化学セルの考え得る用途は、ディスプレイデバイスにおける使用を含む。このようなディスプレイデバイスは、電気標識、ディスプレイスクリーン、電子ペーパー、ビル用パネル、タイル、ケーシング(例えば携帯デバイス又はコンピューターデバイス)、コーティング及びカモフラージュを含むことができる。ディスプレイデバイスは可撓性又は剛体であり、用途に応じて頑健になるように設計することができる。
【0101】
多数の可変DBRを、個々に制御されるDBRのアレイ中に提供することができ、それにより、例えばピクセルディスプレイが得られる。可変DBRは、互いの上に積み重なって、提供してもよい。可変DBRを異なって配置することにより、一緒に、多色応答、フィルタリングやミキシング効果、及びピクセル化が起こり、これらは当業者に周知である。DBRは、所望の用途に適合するように、可撓性の基板上、変形可能な基板上、湾曲した基板上及びその他のかかる変形上に設けることができる。
【0102】
可変DBRは、例えばレーザー光又は発光ダイオードからの光の出力を調整するために、可変レーザー又は可変発光ダイオードにおいて使用することもできる。他の用途では、光伝送において使用することができる。可変DBRは、電圧又は電流の測定器等の所望の刺激の測定器として使用することもできる。
【0103】
上記では特定の実施例及び実施形態について言及しているが、これらは例示のみを目的としており、限定することを意図していない。提供された全ての文献は、参照によって全体が本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の材料及び第二の材料の交互層を含む可変フォトニック結晶デバイスであって、該交互層が応答性材料を含み、該応答性材料が外部刺激に応答性があり、該交互層が第一の反射波長を生じさせる屈折率の周期的な違いを有し;
ここで、該外部刺激に応じて、該応答性材料の変化が、第一の反射波長から第二の反射波長にシフトする、該デバイスの反射波長を生じさせる、前記デバイス。
【請求項2】
応答性材料の変化が伸長又は収縮である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
第一の材料及び第二の材料の少なくとも1つがナノ粒子層を含む、請求項1又は2に記載のデバイス。
【請求項4】
第一の材料及び第二の材料の少なくとも1つがマイクロ粒子層を含む、請求項1又は2に記載のデバイス。
【請求項5】
ナノ粒子又はマイクロ粒子が、ナノ粒子又はマイクロ粒子と応答性材料との間の接着を増加させるように修飾される、請求項3又は4に記載のデバイス。
【請求項6】
ナノ粒子又はマイクロ粒子が、約0.1ナノメートルから約1マイクロメートルの断面の寸法を有する、請求項3〜5のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項7】
断面の寸法が、約5ナノメートルから約30ナノメートルである、請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
第一の材料及び第二の材料の少なくとも1つが、絶縁体、ポリマー、金属、半導体又はそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1〜7のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項9】
第一の材料及び第二の材料の少なくとも1つが、金属ナノ粒子、高分子ナノ粒子、無機ナノ粒子、半導体ナノ粒子、シリカ、酸化チタン、ポリマー、グラファイト、ダイアモンド、アモルファス形態の炭素、C60、フラーレン、グラフェン、カーボンナノチューブ、シリコン、シリコンカーバイド、ゲルマニウム、簡単及び複雑な二成分及び三成分金属酸化物、金属カルコゲニド、金属ホウ化物、金属リン化物、金属ケイ化物、金属炭化物、金属窒素化物、酸化鉄、酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ、酸化亜鉛及びそれらの組み合わせからなる群より選択されるナノ粒子又はマイクロ粒子である、請求項1〜8のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項10】
第一の材料及び第二の材料の少なくとも1つが、球状、楕円状、棒状、ワイヤー状、管状、球含有多面体、立方体状、シート状、凝集体形状及び多面体からなる群より選択される形態を実質的に有するナノ粒子又はマイクロ粒子を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項11】
第一の材料及び第二の材料の少なくとも1つが、異なる材料のコア及びシェルを有するナノ粒子又はマイクロ粒子を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項12】
コア及びシェルの材料のペアーが、ゴールド−シリカ、シルバー−シリカ、ゴールド−チタニア、シルバー−チタニア、セレン化カドミウム−硫化カドミウム及びセレン化カドミウム−セレン化亜鉛からなる群より選択される、請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
外部刺激が、機械刺激、化学刺激、電気刺激、熱刺激、光刺激、磁気刺激及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1〜12のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項14】
外部刺激が電気刺激であり、応答性材料が電気刺激に対して酸化還元応答を有するメタロポリマーである、請求項13に記載のデバイス。
【請求項15】
外部刺激が磁気刺激であり、応答性材料が磁気応答性材料である、請求項13に記載のデバイス。
【請求項16】
外部刺激が機械刺激であり、応答性材料が機械的に伸長/圧縮可能な材料である、請求項13に記載のデバイス。
【請求項17】
外部刺激が電気刺激であり、応答性材料が該電気刺激に応答して寸法の変化を示す圧電材料である、請求項13に記載のデバイス。
【請求項18】
応答性材料がポリマーである、請求項1〜17のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項19】
ポリマーが、ポリフェロセニルシラン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリフェニレンビニレン、ポリアセチレン、ポリフルオレン、ポリフェニレンビニリデン、ポリアセチレン、導電性ポリマー、共役ポリマー、メタロポリマー、かかるポリマー種を含むコポリマー、ポリ二フッ化ビニリデン及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項18に記載のデバイス。
【請求項20】
ポリチオフェンが、ポリスチレンスルホネートとのポリエチレンジオキシチオフェン複合体である、請求項19に記載のデバイス。
【請求項21】
ポリマーが、共有結合、イオン結合、極性共有結合、化学結合、物理結合、分散相互作用、ファンデルワールス相互作用、ナノ粒子相互作用、表面相互作用、水素結合、配位結合、静電相互作用、疎水性相互作用、フルオロフォービック相互作用、相分離ドメイン又はそれらの組み合わせからなる群より選択される架橋を含む、請求項18〜20のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項22】
ポリマーが電気伝導性又は電気絶縁性である架橋を含む、請求項18〜21のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項23】
ポリマーが、全体にわたって所定の数密度及び分布の架橋を有する、請求項18〜22のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項24】
ポリマーが所定の多孔率をを有する、請求項18〜23のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項25】
ポリマーが電気重合可能な材料である、請求項18〜24のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項26】
ポリマーが酸化還元活性基を含む、請求項18〜25のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項27】
第一の材料及び第二の材料の少なくとも1つが空隙を含む、請求項1〜26のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項28】
交互層が基板上にある、請求項1〜27のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項29】
基板が、金属、絶縁体、半導体、半金属、ポリマー及びそれらの組み合わせからなる群より選択される材料から作製される、請求項28に記載のデバイス。
【請求項30】
基板が、基板と応答性材料との間の接着を増加させるだけでなく、基板と基板に最も近い交互層の1つとの接着を増加させるように改変される、請求項28又29に記載のデバイス。
【請求項31】
交互層が自立構造体である、請求項1〜30のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項32】
第一の材料及び第二の材料の少なくとも1つが、2以上の異なる材料の混合物である、請求項1〜31のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項33】
混合物が、磁気応答性材料及び可逆圧縮性材料を含む、請求項32に記載のデバイス。
【請求項34】
反射波長が、可視スペクトル、紫外スペクトル、赤外スペクトル又はそれらの組み合わせの範囲内である、請求項1〜33のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項35】
交互層及び応答性材料が可撓性である、請求項1〜34のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項36】
以下を含む、可変フォトニック結晶電気化学セル:
導電性作用電極及び導電性対極(該作用電極及び該対極は間隙を有している);
第一及び第二の導電性電極の少なくとも1つと接触する、作用電極と対極との間の、請求項1〜35のいずれか1項に記載のデバイス;
該作用電極と該対極との間に提供される導電性溶液(該溶液は該作用電極及び該対極の両方並びに該デバイスと電気的に導通する);
該デバイスに電気刺激を提供するべく該作用電極と該対極との間に電位を印加するための電源と接続するように適合されている、前記セル。
【請求項37】
作用電極及び対極の少なくとも1つが、導電性酸化物、導電性セラミックス、金属、炭素、導電性ポリマー、酸化還元活性ポリマー、ナノ粒子及びそれらの組み合わせからなる群より選択される材料から作製される、請求項36に記載のセル。
【請求項38】
作用電極及び対極が可撓性である、請求項36又は37に記載のセル。
【請求項39】
作用電極及び対極の少なくとも1つを基板上に設置する、請求項36〜38のいずれか1項に記載のセル。
【請求項40】
基板が、布、紙、金属、ポリマー、ガラス、セラミックス、無機材料及びそれらの組み合わせからなる群より選択される材料から作製される、請求項39に記載のセル。
【請求項41】
基板が可撓性である、請求項39又は40に記載のセル。
【請求項42】
作用電極及び対極の少なくとも1つが電荷蓄積材料を有する、請求項36〜41のいずれか1項に記載のセル。
【請求項43】
溶液が電荷蓄積材料である、請求項36〜41のいずれか1項に記載のセル。
【請求項44】
電荷蓄積材料が、導電性酸化物、導電性セラミックス、金属、炭素、導電性ポリマー、酸化還元活性ポリマー、ナノ粒子、酸化還元活性小分子及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項42又は43に記載のセル。
【請求項45】
デバイスが作用電極及び対極の少なくとも1つと接触している、請求項36〜44のいずれか1項に記載のセル。
【請求項46】
作用電極と対極との間にスペーサーをさらに含む、請求項36〜45のいずれか1項に記載のセル。
【請求項47】
スペーサーが、熱可塑性高分子膜、接着剤をコートしたプラスチックフィルム、接着剤、エポキシ、及び接着剤又はエポキシ中に混合されたスペーサービーズからなる群より選択される非導電性材料である、請求項46に記載のセル。
【請求項48】
電源をさらに含む、請求項36〜47のいずれか1項に記載のセル。
【請求項49】
以下の工程を含む、可変フォトニック結晶デバイスの製造方法:
基板を準備する工程;
該基板上に第一の材料及び第二の材料の交互層を作製する工程(該交互層は、第一の反射波長を生じさせる屈折率の周期的な違いを有する);及び
該交互層に応答性材料を埋め込む工程(該応答性材料は外部刺激に応答して変化し、その結果該デバイスの反射波長が第一の反射波長から第二の反射波長にシフトする)。
【請求項50】
埋め込む工程が、作製する工程の一部であり、第一の材料及び第二の材料の少なくとも1つが混合材料であり、応答性材料を混合材料に埋め込む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
応答性材料がポリマー材料であり、埋め込む工程が、ポリマーの前駆体混合物を交互層に浸潤させること及び前駆体混合物を架橋することを含む、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
応答性材料が電気重合可能な材料であり、埋め込む工程が、電気重合可能な材料の前駆体混合物を前記層に浸潤させること及び電気重合して応答性材料を形成することを含む、請求項49に記載の方法。
【請求項53】
第一の材料及び第二の材料の少なくとも1つがナノ粒子又はマイクロ粒子を含み、作製する工程が、ナノ粒子層又はマイクロ粒子層を形成するための、ナノ粒子又はマイクロ粒子のスピンコーティング、ディップコーティング、ドローバー、スロットダイコーティング、カーテンコーティング、ガルニエコーティング、ロールコーティング、スクリーン印刷、エアロゾル蒸着、真空蒸着又は火炎熱分解を含む、請求項49〜52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
ナノ粒子層又はマイクロ粒子層の熱処理の工程をさらに含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
少なくとも1つの層を選択的に除去するために層をエッチングすることをさらに含む、請求項49〜54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
エッチングが、化学処理、プラズマ処理、ガス処理、熱処理及びそれらの組み合わせのうちの1つを用いて行われる、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
請求項1〜35のいずれか1項に記載の可変フォトニック結晶デバイスを含むディスプレイデバイス。
【請求項58】
請求項36〜48のいずれか1項に記載の電気化学セルを含むディスプレイデバイス。
【請求項59】
ディスプレイデバイスが、電気標識、ディスプレイスクリーン、電子ペーパー、ビル用パネル、タイル、ケーシング、コーティング及びカモフラージュからなる群より選択される、請求項57又は58に記載のディプレイデバイス。
【請求項60】
請求項1〜35のいずれか1項に記載の可変フォトニック結晶デバイスを含むインディケーターデバイス。
【請求項61】
請求項1〜35のいずれか1項に記載の可変フォトニック結晶デバイスを含む光伝送部品。
【請求項62】
請求項1〜35のいずれか1項に記載の可変フォトニック結晶デバイスを含むレーザー部品。
【請求項63】
請求項1〜35のいずれか1項に記載の可変フォトニック結晶デバイスを含む発光ダイオード部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2011−524021(P2011−524021A)
【公表日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−510793(P2011−510793)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【国際出願番号】PCT/CA2009/000745
【国際公開番号】WO2009/143625
【国際公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(510314817)オパラックス インコーポレーテッド (3)
【Fターム(参考)】