説明

可変容量ダイオード

【課題】高い容量可変比を有する可変容量ダイオードを提供する。
【解決手段】第1導電型の第1半導体層12と、第1半導体層12上に形成され、第1半導体層12の不純物濃度より低い不純物濃度を有するとともに、第1半導体層12側から第1半導体層12と反対方向に向かって断面積が小さくなる第2導電型の第2半導体層13と、第1半導体層12および第2半導体層13に電気的に接続され、第1半導体層12と第2半導体層13との接合面17に逆バイアス電圧を印加するための第1電極14および第2電極16と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変容量ダイオードに関する。
【背景技術】
【0002】
可変容量ダイオードは、印加する電位差によって生じる空乏層の広がりを制御することで、容量値を可変とするダイオードであり、主にラジオのチューニングに用いられる。
近年、1つの可変容量ダイオードで、できるだけ広いチューニングレンジを得るために、容量可変比の大きな可変容量ダイオードが求められている。
【0003】
可変容量ダイオードの容量および可変比は、半導体層の不純物分布により定まるので、高い可変比を得るためには、不純物濃度を低くし、半導体層の厚さを大きくする必要がある(例えば特許文献1参照。)。
【0004】
特許文献1に開示された可変容量ダイオードは、基板の一方の面に形成され、厚み方向に対してキャリア濃度が表面から漸次薄くなる方向に傾斜付けされた半導体層と、この半導体層の面に形成された表面電極と、上記基板の裏面に形成された裏面電極とを具備している。
半導体層に形成される不純物濃度の分布は表面がほぼ最高濃度とされ、この最高濃度から基板との接合面に向かってガウス分布特性に従って漸次濃度が薄くなる濃度分布特性を呈している。
【0005】
然しながら、特許文献1に開示された可変容量ダイオードは、印加できる逆バイアス電圧は可変容量ダイオードのブレークダウン電圧までに制限されるので、キャリア濃度プロファイルだけでは、得られる容量可変比に限界があり、より大きな容量可変比を得るのが難しいという問題がある。
また、容量可変比を大きくとるほど、空乏層の厚さに応じた内部抵抗が増加し、Q値が低下する問題がある。
【特許文献1】特開平9−275217号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、高い容量可変比を有する可変容量ダイオードを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様の可変容量ダイオードは、第1導電型の第1半導体層と、前記第1半導体層上に形成され、前記第1半導体層の不純物濃度より低い不純物濃度を有するとともに、前記第1半導体層側から前記第1半導体層と反対方向に向かって断面積が小さくなる第2導電型の第2半導体層と、前記第1半導体層および前記第2半導体層に電気的に接続され、前記第1半導体層と前記第2半導体層との接合面に逆バイアス電圧を印加するための第1電極および第2電極と、を具備することを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高い容量可変比を有する可変容量ダイオードが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0010】
本発明の実施例1に係る可変容量ダイオードについて図1および図2を用いて説明する。図1は可変容量ダイオードを示す図で、図1(a)はその平面図、図1(b)は図1(a)のA−A線に沿って切断し矢印方向に眺めた断面図、図2は本実施例の可変容量ダイオードの構造を比較例と対比して示す図で、図2(a)が本実施例の可変容量ダイオードを示す図、図2(b)が比較例の可変容量ダイオードを示す図である。
【0011】
図1に示すように、本実施例の可変容量ダイオード10は、第1導電型の第1半導体層12と、第1半導体層12上に形成され、第1半導体層12の不純物濃度より低い不純物濃度を有するとともに、第1半導体層12側から第1半導体層12と反対方向に向かって断面積が小さくなる第2導電型の第2半導体層13と、第1半導体層12および第2半導体層13に電気的に接続され、第1半導体層12と第2半導体層13との接合面に逆バイアス電圧を印加するための第1電極14および第2電極15と、を具備している。
【0012】
第1半導体層12は、例えばP型半導体層であり、第2半導体層13は、例えばN型半導体層である。第1半導体層12は、半導体基板(図示せず)、例えばP型シリコン基板上に形成されている。
【0013】
第1半導体層12の下面には、図示しない半導体基板を介して第1電極(アノード電極)14が形成され、第2半導体層12の上面には、コンタクト層となるN型の高濃度層15を介して第2電極(カソード電極)16が形成されている。高濃度層15は、第1電極16とオーミックコンタクトを得るために設けられている。
【0014】
第2半導体層13は、第2半導体層13側から第1半導体層12側に向かって末広がり状に傾斜した4つの側面13a、13b、13c、13dを具備している。
これにより、第1半導体層12側から第2半導体層13側に向かって、第2半導体層13の断面積が連続的に小さくなっている。
【0015】
第2半導体層13の不純物濃度Ndを第1半導体層12の不純物濃度Naより十分小さく設定して、可変容量ダイオード10に逆バイアス電圧を印加すると、空乏層はPN接合17から第2半導体層13側へ伸びるとともに、空乏層の先端部の断面積がPN接合17の面積より小さくなる。
【0016】
その結果、可変容量ダイオード10の容量は、空乏層の伸びに応じて減少するとともに、空乏層の先端部の断面積の減少に応じて更に減少するので、空乏層の先端部の断面積が一定である場合に比べて、より大きな容量可変比を得ることが可能である。
【0017】
図2は本実施例の可変容量ダイオードの構造を比較例と対比して示す図で、図2(a)が本実施例の可変容量ダイオードを示す図、図2(b)が比較例の可変容量ダイオードを示す図である。
ここで、比較例とは、第2半導体層13の側面13a〜13dが傾斜していない可変容量ダイオードのことである。始めに、比較例について説明する。
【0018】
図2(b)に示すように、比較例の可変容量ダイオードは、周知のように、PN接合の面積S0と空乏層の先端部の面積S2が等しいので、容量C2はPN接合の面積S0に比例し、空乏層の厚さt2に反比例する。
【0019】
一方、本実施例の可変容量ダイオード10は、空乏層の先端部の面積S1がPN接合の面積S0より小さいので、容量C1はPN接合の面積S0と空乏層の先端部の面積S1の相乗平均に比例し、空乏層の厚さt1に反比例する。
【0020】
逆バイアス電圧を印加していないときの容量Cmaxは、本実施例と比較例とで等しいが、最大逆バイアス電圧を印加したときの容量Cminは、本実施例は比較例より小さくなる。
従って、本実施例の可変容量ダイオード10は、比較例の可変容量ダイオードより大きな容量可変比Cmax/Cminが得られる。
【0021】
可変容量ダイオードの等価回路は、空乏層による容量Cと空乏層以外の部分の抵抗Rとの直列回路で表される。
比較例において、第2半導体層の不純物濃度が本実施例と同じ場合に、本実施例と同じ容量可変比を得るには、第2半導体層13の厚さを本実施例より厚くする必要がある。
これにより、比較例では、本実施例より抵抗Rが増加し、Q値(1/ωCR)が低下する。
【0022】
次に、可変容量ダイオード10の製造方法について説明する。図3は可変容量ダイオード10の製造工程を順に示す断面図である。
【0023】
図3(a)に示すように、図示しない半導体基板上に第1半導体層12、第2半導体層13を、例えば気相成長法により順次形成し、第2半導体層13上に高濃度層15を、例えば不純物拡散法により形成する。
次に、第2半導体層13上に複数の第2電極16を形成し、半導体基板の裏面に第1電極14を形成する。
【0024】
次に、図3(b)に示すように、隣接する第1電極14の間に、第1半導体層12に達する溝20を形成する。
溝20の形成は、例えば第2電極16をマスク材で被覆し、弗酸、硝酸、酢酸の混合液を用いて第2半導体層13をPN接合17の手前までメサエッチングすることにより行う。
【0025】
次に、図3(c)に示すように、溝20の内側に絶縁膜(図示せず)、例えば塗布法によりポリイミド膜、CVD(Chemical Vapor Deposition)法によりTEOS(Tetra Ethyl Ortho Silicate)膜などを形成し、第2半導体層13の側面13a〜13dを保護する。
次に、溝20に沿って半導体基板をダイシングし、個々のチップに分離することにより、図1に示す可変容量ダイオード10が得られる。
【0026】
以上説明したように、本実施例の可変容量ダイオード10は、第2半導体層13側から第1半導体層12側に向かって末広がり状に傾斜した側面13a〜13dを有する第2導電型の第2半導体層13を具備している。
【0027】
その結果、第1半導体層12側から第2半導体層13側に向かって第2半導体層13の断面積が小さくなるので、逆バイアス電圧を印加したときに、容量Cが空乏層の伸びに応じて減少するとともに、空乏層の先端部の断面積の減少に応じて更に減少する。従って、高い容量可変比を有する可変容量ダイオード10が得られる。
【0028】
ここでは、末広がり状に傾斜した側面13a〜13dをメサエッチングにより形成する場合について説明したが、刃先がV字状のブレードを用いて第2半導体層13をPN接合17の手前までダイシングし、ウエットエッチングによりダイシングダメージを除去することにより行っても構わない。
【実施例2】
【0029】
本発明の実施例2に係る可変容量ダイオードについて、図4および図5を用いて説明する。図4は可変容量ダイオードを示す図で、図4(a)はその平面図、図4(b)は図4(a)のB−B線に沿って切断し矢印方向に眺めた断面図である。
【0030】
本実施例において、上記実施例1と同一の構成部分には同一符号を付してその説明は省略し、異なる部分についてのみ説明する。
本実施例が実施例1と異なる点は、第2半導体層に深さの異なる複数の溝を形成したことにある。
【0031】
即ち、図4に示すように、本実施例の可変容量ダイオード30は、高濃度層15を貫通し、深さの異なる複数の溝31a、31b、31c、31dと、溝31a、31b、31c、31d内側に形成された絶縁膜32a、32b、32c、32dと、を有する第2半導体層33を具備している。
【0032】
溝31a、31b、31c、31dはストライプ状に形成されている。絶縁膜32a、32b、32c、32dは、ストライプ状の溝31a、31b、31c、31dにそれぞれ埋め込まれている。従って、直接表示できないストライプ状の溝31a、31b、31c、31dを、矢印の引き出し線で示している。
【0033】
ストライプ状の溝31a、31dは、第2半導体層33の上面からPN接合17の手前の深さD3に形成されている。
ストライプ状の溝31bは、第2半導体層33の上面から深さD3より浅く深さD2に形成されている。
ストライプ状の溝31cは、第2半導体層33の上面から深さD2より浅く深さD1に形成されている。
これにより、第1半導体層12側から第1半導体層12と反対方向に向かって、断面積が離散的に小さくなる第2半導体層33が得られる。
【0034】
可変容量ダイオード30に逆バイアス電圧を印加していき、空乏層の先端部が溝31a、31dに達すると、空乏層の面積SはPN接合17の面積S0より、溝31a、31dの断面積Sa分だけ小さくなる(S=S0−2Sa)。
空乏層の先端部が溝31bに達すると、空乏層の面積Sは溝31bの断面積Sb分だけ更に小さくなる(S=S0−2Sa−Sb)。
空乏層の先端部が溝31cに達すると、空乏層の面積Sは溝31cの断面積Sc分だけ更に小さくなる(S=S0−2Sa−Sb−Sc)。
【0035】
その結果、可変容量ダイオード30の容量Cは、空乏層の伸びに応じて減少するとともに、空乏層の先端部の断面積の減少に応じて更に減少するので、空乏層の先端部の断面積が一定である場合に比べて、より大きな容量可変比を得ることが可能である。
ストライプ状の溝の深さ、溝の断面積およびストライプ状の溝の本数に依存して、逆バイアス電圧依存性が離散的に変化する可変容量ダイオード30が得られる。
【0036】
次に、可変容量ダイオード30の製造方法について説明する。図5は可変容量ダイオード30の製造工程を順に示す断面図である。
【0037】
図5(a)に示すように、高濃度層15上にストライプ状の溝31a、31dに対応する開口を有するレジスト膜40を形成する。
次に、レジスト膜40をマスクとして、RIE(Reactive Ion Etching)法により高濃度層15を貫通し、第2半導体層33に深さD3のストライプ状の溝31a、31dを形成する。
【0038】
次に、図5(b)に示すように、レジスト膜40を除去した後、ストライプ状の溝31a、31dを埋め込んで、高濃度層15上にストライプ状の溝31bに対応する開口を有するレジスト膜41を形成する。
次に、レジスト膜41をマスクとして、RIE法により高濃度層15を貫通し、第2半導体層33に深さD2のストライプ状の溝31bを形成する。
【0039】
次に、図5(c)に示すように、レジスト膜41を除去した後、ストライプ状の溝31a、31b、31dを埋め込んで、高濃度層15上にストライプ状の溝31cに対応する開口を有するレジスト膜42を形成する。
次に、レジスト膜42をマスクとして、RIE法により高濃度層15を貫通し、第2半導体層33に深さD1のストライプ状の溝31cを形成する。
【0040】
次に、レジスト膜42を除去した後、例えばCVD法によりストライプ状の溝31a、31b、31c、31dを埋め込むように高濃度層15上にTEOS膜を形成する。
次に、例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing)法により高濃度層15が露出するまで、余分なTEOS膜を除去する。
【0041】
これにより、高濃度層15を貫通し、深さの異なる複数のストライプ状の溝31a、31b、31c、31dを有し、ストライプ状の溝31a、31b、31c、31dの内側に絶縁膜32a、32b、32c、32dが形成された第2半導体層33が得られる。
【0042】
次に、半導体基板の裏面に第1電極14を形成し、絶縁膜32a、32b、32c、32dを含む高濃度層15上に第2電極16を形成することにより、図4に示す可変容量ダイオード30が得られる。
【0043】
以上説明したように、本実施例の可変容量ダイオード30は、高濃度層15を貫通し、深さの異なる複数のストライプ状の溝31a、31b、31c、31dを有する第2半導体層33を具備している。
【0044】
これにより、ストライプ状の溝の深さ、溝の断面積およびストライプ状の溝の本数に依存して、容量Cの逆バイアス電圧依存性が離散的に変化せられる利点がある。可変容量ダイオードの容量の逆バイアス電圧依存性を離散的に変えたい用途に適している。
【0045】
ここでは、深さの異なる溝31a、31b、31c、31dがストライプ状である場合について説明したが、柱状の溝であっても構わない。また、ストライプ状の溝と柱状の溝の組合せであっても構わない。
【0046】
ストライプ状の溝31a、31b、31c、31dの内側に形成された絶縁膜32a、32b、32c、32dは、動作原理上は無くても構わないが、ストライプ状の溝31a、31b、31c、31dの内面を保護するとともに、表面を平坦化するために設けることが適当である。
【0047】
絶縁膜32a、32b、32c、32dがTEOS膜である場合について説明したが、その他の絶縁膜、例えばBPSG(Boron Phosphor Silicate Glass)膜、ポリイミド膜などでも構わない。
【0048】
ストライプ状の溝31a、31b、31c、31dは、以下のようにして形成することもできる。
始めに、高濃度層15上にストライプ状の溝31a、31b、31c、31dに対応する開口を有するレジスト膜を形成し、このレジスト膜をマスクとして、RIE法により高濃度層15を貫通し、第2半導体層33に深さD1のストライプ状の溝31a、31b、31c、31dを形成する。
【0049】
次に、レジスト膜を除去した後、ストライプ状の溝31cを埋め込んで、高濃度層15上にストライプ状の溝31a、31b、31dに対応する開口を有するレジスト膜を形成し、このレジスト膜をマスクとして、RIE法により高濃度層15を貫通し、第2半導体層33に深さD2のストライプ状の溝31a、31b、31dを形成する。
【0050】
次に、レジスト膜を除去した後、ストライプ状の溝31b、31cを埋め込んで、高濃度層15上にストライプ状の溝31a、31dに対応する開口を有するレジスト膜を形成し、このレジスト膜をマスクとして、RIE法により高濃度層15を貫通し、第2半導体層33に深さD3のストライプ状の溝31a、31dを形成する。
【実施例3】
【0051】
本発明の実施例3に係る可変容量ダイオードについて、図6および図7を用いて説明する。図6は可変容量ダイオードを示す斜視図、図7は可変容量ダイオードの製造工程を順に示す断面図である。
【0052】
本実施例において、上記実施例1と同一の構成部分には同一符号を付してその説明は省略し、異なる部分についてのみ説明する。
本実施例が実施例1と異なる点は、第2半導体層にV字状の溝を一方向に形成したことにある。
【0053】
即ち、図6に示すように、本実施例の可変容量ダイオード50は、高濃度層15を貫通して、一方向(紙面のY方向)に形成されたV字状の溝51と、V字状の溝51の内側に形成された絶縁膜52とを有する第2半導体層53を具備している。
【0054】
V字状の溝51は、第2半導体層53の上面からPN接合17の手前の深さD4に複数形成されている。
絶縁膜52は、V字状の溝51に埋め込まれている。従って、直接表示できないV字状の溝51を、矢印の引き出し線で示している。
これにより、第1半導体層12側から第1半導体層12と反対方向に向かって、断面積が連続的に小さくなる第2半導体層53が得られる。
【0055】
第2半導体層53は、PN接合17から不純物濃度が階段状に小さくなるように、第1半導体層12側からN層53aと、N層53bと、N層53cとを有している。
これにより、不純物濃度が低い層ほど空乏層の伸びが大きくなり、それに応じて空乏層の先端部の断面積の減少が加速されるので、より大きな容量可変比を得ることが可能である。
【0056】
V字状の溝51の幅および配列ピッチは、所望の容量可変比が得られるように適宜設定することができる。
例えば、V字状の溝51の幅とピッチの比を1:2とすると、最大逆バイアス電圧を印加したときの空乏層の先端部の面積S1を、PN接合17の面積S0の1/2とすることができる。
【0057】
次に、可変容量ダイオード50の製造方法について説明する。図7は可変容量ダイオード50の製造工程を順に示す断面図である。
図7(a)に示すように、高濃度層15上にストライプ状の開口60aを有するレジスト膜60を形成する。開口の幅は、V字状の溝51の底面の幅程度とする。
【0058】
次に、図7(b)に示すように、レジスト膜60をマスクとして、高濃度層15、第2半導体層53を異方性エッチングする。
異方性エッチングは、レジスト膜60をエッチングするための酸素ガスと高濃度層15、第2半導体層53であるシリコン膜をエッチングするための塩素系/フッ素系ガス(CCl、CFなど)との混合ガスを用いたRIE法により、シリコン膜とレジスト膜60の選択比が小さくなる条件で行う。
【0059】
即ち、シリコン膜のエッチング速度と、レジスト膜60のエッチング速度の差が小さくなるようにして、シリコン膜をエッチングしつつ、レジスト膜60もエッチングされるようにする。
【0060】
その結果、レジスト膜60が細るにつれて、隣接するレジスト膜60の間隔が徐々に大きくなるので、シリコン膜は深さ向にエッチングされるとともに、横方向にもエッチングされて細くなり、V字状の溝51が形成される。
【0061】
次に、レジスト膜60を除去した後、例えばCVD法によりV字状の溝51を埋め込むように高濃度層15上にTEOS膜を形成し、CMP法により高濃度層15が露出するまで、余分なTEOS膜を除去する。
これにより、高濃度層15を貫通したV字状の溝51を有し、V字状の溝51の内側に絶縁膜52が形成された第2半導体層53が得られる。
【0062】
次に、半導体基板の裏面に第1電極14を形成し、絶縁膜52を含む高濃度層15上に第2電極16を形成することにより、図6に示す可変容量ダイオード50が得られる。
【0063】
以上説明したように、本実施例の可変容量ダイオード50は、一方向に形成されたV字状の溝51を有する第2半導体層53を具備している。
これにより、表面が平坦で、容量Cが連続して変化する可変容量ダイオード50が得られるので、VCO(Voltage Controlled Oscillator)などの半導体集積装置にモノリシックに組み込むことができる利点がある。
【0064】
ここでは、第2半導体層53の不純物濃度が階段状分布である場合について説明したが、不純物濃度が超階段型分布、または傾斜型分布であっても構わない。所望の容量の電圧依存性が得られるように適宜設定することができる。
【0065】
V字状の溝51の深さD4が、PN接合17より手前である場合について説明したが、PN接合17を超える深さとすることも可能である。
ただし、信頼性の確保、チップ面積の有効利用の観点から、PN接合17を横切らない深さであることが望ましい。本実施例以外の実施例についても同様である。
【0066】
レジスト膜60の断面形状が矩形状である場合について説明したが、V字状の溝51の底面の幅と深さの比であるアスペクトに応じて、断面形状を予め山型形状にしておくことが望ましい。
【実施例4】
【0067】
本発明の実施例4に係る可変容量ダイオードについて、図8を用いて説明する。図8は可変容量ダイオードを示す斜視図である。本実施例において、上記実施例1と同一の構成部分には同一符号を付してその説明は省略し、異なる部分についてのみ説明する。
本実施例が実施例1と異なる点は、第2半導体層にV字状の溝を十字方向に形成したことにある。
【0068】
即ち、図8に示すように、本実施例の可変容量ダイオード70は、高濃度層15を貫通して、十字方向(紙面のY方向およびX方向)に形成されたV字状の溝51、71と、V字状の溝51、71の内側に形成された絶縁膜72とを有する第2半導体層73を具備している。
【0069】
V字状の溝51、71は、第2半導体層53の上面からPN接合17の手前の深さD4にそれぞれ複数形成されている。
絶縁膜72は、V字状の溝51、71に埋め込まれている。従って、直接表示できないV字状の溝51、71を、矢印の引き出し線で示している。
【0070】
これにより、第1半導体層12側から第1半導体層12と反対方向に向かって、断面積が連続的に小さくなる第2半導体層73が得られる。
【0071】
第2半導体層73の上面の面積は、V字状の溝51のみの場合より小さくなるので、最大逆バイアス電圧を印加したときの空乏層の先端部の面積S1を更に小さくすることができ、より容量可変比を大きくすることが可能である。
V字状の溝51、71の幅およびピッチは、所望の容量可変比が得られるように適宜設定することができる。
例えば、V字状の溝51、71とも、幅とピッチの比を1:2とすると、最大逆バイアス電圧を印加したときの空乏層の先端部の面積S1を、PN接合17の面積S0の1/4とすることができる。
【0072】
可変容量ダイオード70の製造方法については、図7と同様であり、その説明は省略する。
【0073】
以上説明したように、本実施例の可変容量ダイオード70は、高濃度層15を貫通して、十字方向に形成されたV字状の溝51、71有する第2半導体層73を具備している。
その結果、一方向にV字状の溝を形成した場合に比べて、より大きな容量可変比が得られる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の実施例1に係る可変容量ダイオードを示す図で、図1(a)はその平面図、図1(b)は図1(a)のA−A線に沿って切断し矢印方向に眺めた断面図。
【図2】本発明の実施例1に係る可変容量ダイオードの製造工程を順に示す断面図。
【図3】本発明の実施例1に係る可変容量ダイオードの構造を比較例と対比して示す図で、図3(a)が本実施例の可変容量ダイオードを示す図、図3(b)が比較例の可変容量ダイオードを示す図。
【図4】本発明の実施例2に係る可変容量ダイオードを示す図で、図4(a)はその平面図、図4(b)は図4(a)のB−B線に沿って切断し矢印方向に眺めた断面図。
【図5】本発明の比較例2に係る可変容量ダイオードの製造工程を順に示す断面図。
【図6】本発明の実施例3に係る可変容量ダイオードを示す斜視図。
【図7】本発明の比較例3に係る可変容量ダイオードの製造工程を順に示す断面図。
【図8】本発明の実施例4に係る可変容量ダイオードを示す斜視図。
【符号の説明】
【0075】
10、30、50、70 可変容量ダイオード
11 半導体基板
12、52 第1半導体層
13、33、53、73 第2半導体層
13a、13b、13c、13d 側面
14、54 第1電極
15、55 高濃度層
16、56 第2電極
17 PN接合
20、31a、31b、31c、31d、51、71 溝
32a、32b、32c、32d、52、72 絶縁膜
40、41、42、60 レジスト膜
60a 開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の第1半導体層と、
前記第1半導体層上に形成され、前記第1半導体層の不純物濃度より低い不純物濃度を有するとともに、前記第1半導体層側から前記第1半導体層と反対方向に向かって断面積が小さくなる第2導電型の第2半導体層と、
前記第1半導体層および前記第2半導体層に電気的に接続され、前記第1半導体層と前記第2半導体層との接合面に逆バイアス電圧を印加するための第1電極および第2電極と、
を具備することを特徴とする可変容量ダイオード。
【請求項2】
前記第2半導体層が、前記第2半導体層側から前記第1半導体層側に向かって末広がり状に傾斜した側面を具備することを特徴とする請求項1に記載の可変容量ダイオード。
【請求項3】
前記第2半導体層に、深さの異なる複数の溝が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の可変容量ダイオード。
【請求項4】
前記第2半導体層に、V字状の溝が一方向、または十字方向に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の可変容量ダイオード。
【請求項5】
前記溝の内側に、絶縁膜が形成されていることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の可変容量ダイオード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−3987(P2010−3987A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−163696(P2008−163696)
【出願日】平成20年6月23日(2008.6.23)
【出願人】(504136878)東芝ディスクリートテクノロジー株式会社 (95)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)