説明

可変容量斜板式圧縮機及びこれを用いた空調装置システム

【課題】低圧脈動が発生しない運転領域において吸入通路が絞られて性能低下を招くことがないようにし、また、低圧脈動が発生しやすい運転領域において、吸入通路を絞って低圧脈動を十分に低減することが可能な可変容量斜板式圧縮機およびこれを用いた空調装置システムを提供する。
【解決手段】可変容量斜板式圧縮機4は、吸入口60から吸入した冷媒を吸入室54へ導く吸入通路61に、この吸入通路61を通過する冷媒の通路面積を調節する吸入絞り弁62を設け、この吸入絞り弁62の開度を任意に調整するソレノイドバルブ70を備える。ソレノイドバルブ70は、吸入絞り弁62の背圧室68の圧力を調整して吸入絞り弁62の開度を調整するものであっても、投入される電気エネルギに応じて吸入絞り弁62の開度を直接制御するものであってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸入弁の自励振動に起因する圧力脈動が圧縮機外に伝播して異音が発生することを防止する機構を備えたピストン型圧縮機、より詳しくは、圧力脈動が発生する運転領域において吸入通路を絞って圧力脈動の圧縮機外への伝搬を少なくし、圧力脈動が発生しない運転領域において吸入通路が絞られて性能低下を招くことを回避した可変容量斜板式圧縮機およびこれを用いた空調装置システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ピストン式圧縮機においては、シリンダブロックの吸入弁の先端と対峙する位置に所定の深さを持つストッパが形成されており、シリンダボア内に冷媒ガスが吸入されるときに吸入弁の先端がこのストッパに当接することにより、この吸入弁が自励振動を起こすことが防がれている。
しかし、ピストン式可変容量圧縮機においては、シリンダボアに吸入されるガス量が最大容量時と可変容量時とでは異なるために、最大容量時に合せてストッパの深さを設定すると、特に小容量時には吸入弁の変位量が小さいために吸入弁の先端がストッパに当らない状態となる。このため、吸入弁が自励振動を起こし、これにより吸入室のガスの圧力変動が発生してこの圧力脈動が圧縮機外に伝播し異音が発生する不都合がある。
【0003】
このため、従来においては、下記する特許文献1や特許文献2に示される対策が講じられている。
このうち、特許文献1に示す構成は、圧縮機の吸入通路に、開口面積を制御する開度制御弁を設け、この開度制御弁を吸入通路のガスの流れによる差圧とばね力とを利用して作動させることにより、吸入流量が小さい時に吸入通路を絞って小容量時に発生する吸入脈動が圧縮機外に伝播することを抑制し、吸入流量が大きい時に吸入通路の開口面積を大きくするようにしている。
【0004】
また、特許文献2に示す構成は、吸入通路上に吸入圧力とクランク室圧力との差圧に基づいて吸入通路の開度を調整する開度制御弁を設け、この開度調整弁を容量に応じて変化するクランク室圧力を利用して、最大容量時にはバネによる付勢力の影響を弱めて開度を最大にし易くし、小容量時にはバネによる付勢力の影響を強めて開度を小さくし易くしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−136776
【特許文献2】特開2005−337232
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の構成では、吸入通路のガスの流れによる差圧とばね力を利用して開度制御弁を作動させているため、脈動低減を重視してばね力を強く設定すると最大容量時にも吸入通路が絞られて冷房能力が低下し、逆に最大容量時の冷房能力を重視してばね力を弱く設定すると絞り効果が必要な低容量時に十分に脈動を低減することができないという不都合がある。
【0007】
また、一般的に可変容量圧縮機においては、各ピストンに作用するシリンダボア内の圧力とクランク室圧力との差に基づいて斜板の傾斜角度を変化させる構造となっている。シリンダボア内の圧力は、ピストンが下死点にあるときは吸入室の圧力にほぼ等しく、ピストンによって冷媒ガスが圧縮されるのに伴い徐々に上昇していく。そしてシリンダボア内の圧力が吐出室の圧力を超えると吐出弁前後の圧力差により弁が開かれ冷媒ガスが吐出室に吐出される。すなわちシリンダボア内の圧力は、斜板が一回転する間に吸入圧から吐出圧(厳密には吐出弁の開き遅れや抵抗のためもう少し高く)まで変化し、その圧力は常時ピストンに作用している。
【0008】
ピストンに作用するシリンダボア内の圧力は、斜板の傾斜角を増加させる方向に作用するため、吸入室とクランク室の圧力差が同じであっても、吐出圧が高い条件ほど相対的に傾斜角が大きい(吐出容量が大きい)角度に斜板が制御されることとなる。
【0009】
このため、特許文献2に開示される開度調整弁は、吐出圧力に関わらず吸入室圧力とクランク室圧力との差圧に基づいて開度を調整するものであるため、例えばクランク室の圧力と吸入室の圧力の差が0.1MPaを超えたときにこの開度調整弁が吸入通路を絞るように設定したとすると、吐出室の圧力が低い(例えば0.8MPa)条件時には、斜板の傾斜角が30%以下になるまで開度制御弁が作動せず、吐出室の圧力が高い(例えば2.5MPa)条件時には、斜板の傾斜角が70%以下の条件で開度調整弁が吸入通路を絞り始めるということが起こりうる。このことは、低圧脈動が発生せず吸入通路を絞る必要がない高負荷時に吸入通路を絞って性能を損なってしまうことを意味しており、特許文献2に示す開度調整弁においても、各負荷条件に対応して冷房能力の確保と脈動低減を両立することが出来ないものであった。
【0010】
本発明は、係る事情に鑑みてなされたものであり、低圧脈動が発生しない運転領域において吸入通路が絞られて性能低下を招くことがないようにし、また、低圧脈動が発生しやすい運転領域において、吸入通路を絞って低圧脈動を十分に低減することが可能な可変容量斜板式圧縮機およびこれを用いた空調装置システムを提供することを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を達成するために、本発明者らは、圧縮機に吸入された冷媒を吸入室に導く吸入通路の冷媒通路面積を外部から任意に調節できるようにすれば、上述した不都合を解消することができるとの知見に基づき、本発明を完成させるに至った。
【0012】
即ち、本発明に係る可変容量斜板式圧縮機は、ハウジングと、前記ハウジングに形成されたシリンダボア内を往復動するピストンと、前記ハウジング内に形成されたクランク室、吸入室、及び吐出室と、前記クランク室を貫通し、前記ハウジングに回転自在に支承されたシャフトと、前記クランク室に収容され、前記シャフトの回転により回転して前記ピストンを往復動させる斜板と、前記ハウジングに形成されて作動流体を吸入する吸入口及び吐出する吐出口とを有し、前記吸入口から吸入した作動流体を、前記ハウジングに形成された吸入通路を介して前記吸入室へ導き、前記ピストンにより圧縮した後に前記吐出室を介して前記吐出口から吐出させる構成において、前記吸入通路に、この吸入通路を通過する冷媒の通路面積を調節する吸入絞り弁を設け、この吸入絞り弁の開度を外部からの要求(指令)に基づき任意に調整する外部調整手段を設けたことを特徴としている。
【0013】
このような構成によれば、圧縮機の吸入通路に吸入絞り弁が設けられ、さらにその吸入絞り弁の開度を外部からの要求に基づき任意に調整する外部調整手段が設けられているので、高吐出圧力条件での中〜高容量運転時において、クランク室圧が所定量上昇したとしても吸入絞り弁の開度を外部調整手段により全開状態に維持することができ、また、低圧脈動が発生する条件においては、外部調整手段により吸入絞り弁を作動させ着実に吸入脈動の伝播を抑制することが可能となる。
【0014】
ここで、前記外部調整手段は、前記吸入絞り弁の背圧室の圧力を調整して前記吸入絞り弁の開度を調整するソレノイドバルブを用いてもよい。
吸入絞り弁の背圧室の圧力を調整することにより吸入絞り弁の開度が調整されるので、ソレノイドバルブの弁体変位量が少なくても、背圧室の圧力により、十分な押圧力で吸入絞り弁を作動させることが可能となる。
【0015】
また、前記外部調整手段は、外部からの要求(指令)に基づき前記吸入絞り弁の開度を直接制御するものであってもよい。
このような構成によれば、吸入絞り弁の開度を外部からの要求に基づき直接制御することができるので、高精度に吸入絞り弁の開度を制御することが可能となる。
【0016】
本発明に係る空調装置システムは、上述した可変容量斜板式圧縮機を、少なくとも凝縮器、膨張装置、蒸発器と共に配管結合をして冷凍サイクルを構成し、 前記可変容量斜板式圧縮機に前記吸入室の圧力に基づいて前記クランク室の圧力を制御する圧力制御弁を更に設け、車両側の要求に応じて前記外部調整手段を駆動する吸入絞り制御手段を更に具備することを特徴としている。
【0017】
ここで、前記外部調整手段は、前記吸入絞り弁の背圧室の圧力を調整して前記吸入絞り弁の開度を調整するソレノイドバルブとしても、投入される電気エネルギに応じて前記吸入絞り弁の開度を直接制御するものであってもよい。
【0018】
このような構成によれば、圧力制御弁は、吸入室の圧力すなわち吸入絞り弁の下流の圧力に基づいてクランク室圧力を制御するため、圧縮機は吸入絞り弁の下流の圧力に基づいて容量が制御される。ここで、吸入絞り制御手段からの要求により外部調整手段が駆動され、吸入絞り弁が吸入通路を絞ると、その絞り効果のため、吸入室の圧力が低下し、圧力制御弁は低下した吸入圧力を受けてクランク室圧力を上昇させ、結果として吐出容量が減少し吸入室の圧力は吸入通路が絞られる以前の圧力でバランスすることとなる。
このように、可変容量圧縮機が吸入室の圧力が一定になるよう容量を自立制御する働きを利用し、吸入絞り弁部で圧力差を与えることにより容量を任意に減少させると同時に、低容量時の低圧脈動の伝播を抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
以上述べたように、本発明によれば、吸入口から吸入した作動流体を吸入室に導く吸入通路に、この吸入通路を通過する冷媒の通路面積を調整する吸入絞り弁を設け、この吸入絞り弁の開度を外部調整手段を設けて外部からの要求に基づき任意に調整するようにしたので、低圧脈動が発生しない運転領域においては、吸入通路が絞られて性能低下を招くことがなくなり、また、低圧脈動が発生しやすい運転領域においては、外部調整手段により吸入絞り弁を作動させて吸入通路を絞ることで低圧脈動を十分に低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明に係る空調装置システムの構成例を示す図である。
【図2】図2は、本発明に係る可変容量斜板式圧縮機の構成例を示す断面図である。
【図3】図3は、可変容量斜板式圧縮機のバルブプレートのピストンと対峙する付近を示した断面図である。
【図4】図4は、本発明に係る可変容量斜板式圧縮機の吸入絞り弁と外部調整手段の構成例を示す断面図である。
【図5】図5は、可変絞り機構の制御動作例を示すフローチャートである。
【図6】図6は、本発明に係る可変容量斜板式圧縮機の吸入絞り弁と外部調整手段の他の構成例を示す断面図である。
【図7】図7は、吸入絞り弁と外部調整手段のさらに他の構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1において、車両に搭載される冷凍サイクル1の構成例が示されている。この冷凍サイクル1は、吐出容量を可変するための圧力制御弁2及び冷媒を吸入室に導く吸入経路の通路面積を可変させる可変絞り機構3を備えた可変容量斜板式圧縮機(以下、圧縮機という)4、冷媒を冷却する凝縮器5、冷媒を減圧する膨張装置6、空調通路7に配置されて作動流体を蒸発気化する蒸発器8を有して構成されている。この冷凍サイクル1では、圧縮機4の吐出側を凝縮器5を介して膨張装置6に接続し、圧縮機4の吐出側から膨張装置6の流入側に至る経路によって高圧ラインが構成されている。また、膨張装置6の流出側は蒸発器8に接続され、この蒸発器8の流出側は圧縮機4の吸入側に接続されており、膨張装置6の流出側から圧縮機4の吸入側に至る経路によって低圧ラインが構成されている。
【0023】
したがって、この冷凍サイクル1においては、圧縮機4で圧縮された冷媒が、高温高圧の冷媒として凝縮器5に入り、ここで冷却されて膨張装置6へ送られる。そして、この膨張装置6において減圧されて低温低圧の湿り蒸気となり、蒸発器8においてここを通過する空気と熱交換してガス状となり、しかる後に圧縮機4へ戻される。
【0024】
10は、空調通路内に配されて蒸発器8の出口側の空気温度を検出する温度センサであり、この温度センサからの信号や、車室内温度などを検出する他のセンサ11からの信号、空調装置を稼働・停止や車室内の目標温度などを設定する操作パネル12からの信号は、制御装置13に入力される。
【0025】
この制御装置13は、前述した各種信号をデータとして入力する入力回路、読出専用メモリ(ROM)及びランダムアクセスメモリ(RAM)からなるメモリ部、前記メモリ部に格納されたプログラムを呼び出して前記データを加工したり制御信号を演算する中央演算処理装置(CPU)、可変絞り機構2へ制御信号を出力する制御信号出力回路などから構成され、各種センサ10.11や操作パネル12からの信号に基づき、可変絞り機構3を制御するようにしている。
【0026】
図2において、上述した圧縮機4の具体的構成例が示されている。この圧縮機は、シリンダブロック21と、このシリンダブロック21のリア側にバルブプレート22を介して組み付けられたリアハウジング23と、シリンダブロック21のフロント側に組付けられ、シリンダブロック21と共にクランク室24を画成するフロントハウジング25とを有して構成されている。これらフロントハウジング25、シリンダブロック21、バルブプレート22、及び、リアハウジング23は、締結ボルト26により軸方向に締結されて圧縮機4のハウジングを構成している。
【0027】
フロントハウジング25とシリンダブロック21とによって画成されるクランク室24には、一端がフロントハウジング25から突出するシャフト27が収容されている。このシャフト27のフロントハウジング25から突出した部分には、軸方向に取り付けられた中継部材28を介してクラッチ板29が固定されている。フロントハウジング25のボス部25aには回転自在に外嵌された駆動プーリ30がクラッチ板29に対峙して設けられ、クラッチ板29は、駆動プーリ30に埋設された励磁電磁コイル31への通電により駆動プーリ30に吸着され、駆動プーリ30に与えられる回転動力がシャフト27に伝達されるようになっている。
【0028】
また、このシャフト27の一端側は、フロントハウジング25との間に設けられたシール部材32を介してフロントハウジング25との間が気密よく封じられると共にラジアル軸受33にて回転自在に支持されており、シャフト27の他端側は、シリンダブロック21の略中央に形成された収容孔34に収容されるスラスト軸受35及びこれに隣接してリア側に設けられたラジアル軸受36にて回転自在に支持されている。
【0029】
シリンダブロック21には、前記収容孔34と、この収容孔34を中心とする円周上に等間隔に配された複数のシリンダボア37とが形成されており、それぞれのシリンダボア37には、片頭ピストン40が往復摺動可能に挿入されている。
【0030】
前記シャフト27には、クランク室24内において、該シャフト27と一体に回転するスラストフランジ41が固定されている。このスラストフランジ41は、シャフト27に対して略垂直に形成されたフロントハウジング25の内壁面にスラスト軸受42を介して回転自在に支持されている。そして、このスラストフランジ41には、リンク部材43を介して斜板44が連結されている。
【0031】
斜板44は、シャフト27上に設けられたヒンジボール45を介して傾動可能に保持されているもので、スラストフランジ41の回転に同期して一体に回転するようになっている。これらスラストフランジ41と斜板44とによってシャフト27の回転に同期して回転する動力伝達機構が構成されている。そして、斜板44の周縁部分には、前後に設けられた一対のシュー46を介して片頭ピストン40の係合部40aが係留されている。
【0032】
したがって、シャフト27が回転すると、これに伴って斜板44が回転し、この斜板44の回転運動がシュー46を介して片頭ピストン40の往復直線運動に変換され、シリンダボア37内においてピストン40とバルブプレート22とにより画成された圧縮室47(図3に示す)の容積が変更されるようになっている。
【0033】
バルブプレート22には、図3にも示されるように、シリンダブロック側端面に設けられた吸入弁50によって開閉される吸入孔51と、リアハウジング側端面に設けられた吐出弁52によって開閉される吐出孔53とがそれぞれのシリンダボア37に対応して形成されている。また、リアハウジング23には、圧縮室47に供給する冷媒を収容するための吸入室54と、圧縮室47から吐出した冷媒を収容するための吐出室55とがそれぞれ形成されている。この例において、吸入室54はリアハウジング23の略中央に形成され、吐出室55は吸入室54の周囲に形成されている。
【0034】
吸入弁50は、吸入弁側ガスケット56と共にシリンダブロック21とバルブプレート22との間に挟持され、また、吐出弁52は、吐出弁側ガスケット57と共にバルブプレート22とリアハウジング23との間に挟持されている。
【0035】
前記吸入弁側ガスケット56は、シリンダブロック21と吸入弁50との間に配されているもので、各シリンダボア37を囲繞するように設けられている。また、シリンダボア37のバルブプレート側の端部には、吸入弁50の開弁動作を規制する吸入弁用ストッパ58が形成されている。この吸入弁用ストッパ58は、吸入弁50の先端と対峙する位置に所定の深さに切削されて形成され、この例では、中間容量時の吸入ガス量に合せてストッパの深さが設定されている。
また、吐出弁側ガスケット57は、吐出弁52とリアハウジング23との間に配されるもので、吸入孔51を囲繞するように設けられていると共に、吐出弁52の開弁動作を規制する吐出弁用ストッパ59が一体に形成されている。
【0036】
リアハウジング23には、外部サイクルから冷媒を吸入するための吸入口60と、吸入口60から吸入された冷媒を吸入室54に導く吸入通路61と、冷媒を外部サイクルへ吐出するための吐出口(図示せず)と、吐出室に吐出された冷媒を吐出口に導く吐出通路(図示せず)とが形成されている。
【0037】
吸入口60と吸入室54をつなぐ吸入通路61上には、図4にも示されるように、吸入絞り弁62が配されている。この吸入絞り弁62は、吸入通路61の途中に形成された弁収容室63に冷媒の流れ方向に変位可能に収容され、弁収容室63に弾装されたスプリング64により開弁方向に付勢されている。
【0038】
具体的には、弁収容室63を吸入口60から延設された吸入通路61と軸心を一致させて吸入通路61の径よりも大きい径に形成し、この弁収容室63の側面に吸入室54に通じる連通部66を開口し、また、吸入絞り弁62を、一端が解放され、他端が閉塞された筒状に形成し、閉塞部62aを吸入口側に向けて弁収容室63に摺動可能に収容すると共に弁収容室63の吸入口側に弾装されたスプリング64により吸入口60から遠ざかる方向に付勢するようにしている。連通部66は、吸入絞り弁62がスプリング64に付勢されて最も吸入口60から遠ざかる位置にある場合に吸入絞り弁62の側面で塞がれることなく全開となり、吸入絞り弁62がスプリング64に抗して吸入口側へ変位すると吸入絞り弁62の側面で絞られて開度が小さくなるようになっている。
【0039】
吸入絞り弁62の閉塞部62aにはオリフィス67が形成され、また吸入絞り弁62の内側には背圧室68が形成され、背圧室68と吸入通路61とはオリフィス67を介して連通している。したがって、吸入絞り弁62は、吸入室上流の圧力(吸入通路61の圧力)、背圧室68の圧力、及びスプリング64のばね力とがバランスした位置に変位し、背圧室68の圧力を高めない限り、背圧室68の圧力と吸入通路61の圧力とはオリフィス67を介して均衡し、連通部66はスプリング64のばね力により全開の状態(吸入絞り弁62の開度は最大)となる。
【0040】
吸入絞り弁62の開度の調整、即ち、背圧室68の圧力調整は、外部調製手段を構成する以下に述べるソレノイドバルブ70により行われる。尚、この吸入絞り弁62とソレノイドバルブ70とにより、前記可変絞り機構3が構成されている。
【0041】
ソレノイドバルブ70は、リアハウジング23に内装されているもので、円柱状のボディ71の中心に形成された軸孔72に弁体73のロッド部75が摺動自在に配されている。弁体73は、軸孔72の径よりも大きな径に形成されて軸孔72の開口周縁に着座する頭部74と、この頭部74から延設されたロッド部75とを有し、ロッド部75には、頭部74から所定の範囲にかけて径を相対的に小さくしたくびれ部75aが形成されている。
【0042】
ボディ71の先端部には、吸入絞り弁62の背圧室68に連通すると共に軸孔72に連通する連通室76が設けられ、この連通室76には、弁体73の頭部74とこの弁体73を閉方向(図中、下方)に付勢する弁バネ77が収容されている。
【0043】
また、ボディ71には、軸孔72に連通すると共に、この軸孔72と軸心を合わせて収納固定された円筒状のシリンダ80と、このシリンダ80の周囲に巻回された電磁コイル81と、前記シリンダ80の内部に摺動自在に挿入され、軸孔72を挿通する弁体73のロッド部75に当接するプランジャ82と、シリンダ80の基端側開口端に取り付けられたアジャストキャップと83と、プランジャ82の背面とアジャストキャップ83との間に弾装されてプランジャ82を弁体側(図中、上側)へ付勢するスプリング84とを有している。
【0044】
ソレノイドバルブ70の側面中央部には吐出室55の圧力を導入する吐出圧導入ポート85が設けられており、さらにその下(背圧室と反対側)には吸入室54の圧力を導入する吸入圧導入ポート86が設けられている。
吐出圧導入ポート85は、ボディ71の径方向に延設され、弁体73のくびれ部75aと対峙する軸孔72の側面に開口されている。また、吸入圧導入ポート86は、ボディ71の径方向に延設され、軸孔72の内周面に形成された溝87と連通しており、吸入圧導入ポート86から導入された吸入圧を弁体73の下面に導くようにしている。
【0045】
したがって、電磁コイル81への通電量を調整することによりプランジャ82を下方へ吸引する力を調整することができ、電磁コイル81に通電されていないときはプランジャ82はプランジャ下に設けられたスプリング84により上方へ付勢され、弁体73が弁ばね77に抗して開く。これにより、吐出圧導入ポート85を介して導入された高圧ガスは弁体73に形成されたクビレ部75aの周囲を通過して連通室76に至り、この連通室76を介して背圧室68へ導かれる。
【0046】
これに対して、ばね力に打ち勝つだけの吸引力が発生するよう電磁コイル81に通電されている時は、プランジャ82は下方に移動し、弁体73は、弁ばね77のばね力により下方へ変位し、軸孔72を閉じる。軸孔72はストレートに形成されているため、弁体73のクビレ部75aに導入された高圧が作用する面積がクビレ部75aの上面と下面とで同じ面積となり、吐出圧が高いときであっても、吐出圧の影響を受けて弁体73が開かないようになっている。
【0047】
また、吸入圧導入ポート86から導入された吸入圧は弁体73の下面に回り込むようなっているため、背圧室68の圧力が吸入室54の圧力とほぼ均しいときは、吸入圧の影響もキャンセルされる。すなわち、このソレノイドバルブの開度は圧力の影響を受けずに電磁コイル81への通電量だけでコントロールされる。
【0048】
また、ソレノイドバルブ70を介して背圧室68に導入されたガスは前述の吸入絞り弁62の中央に設けたオリフィス67を通じて吸入圧領域に連通しているため、ソレノイドバルブ70を通じて背圧室68に導入されるガス量とオリフィス67を通じて開放されるガス量のバランスにより背圧室68の圧力を調整することができる。
【0049】
上述した圧縮機において、リアハウジング23内には、さらに、吸入室54の圧力に基づいてクランク室24の圧力を調整する周知の圧力制御弁2が設けられている。この種の圧力制御弁2は、ベローズやダイヤフラム等の感圧部材を吸入圧に対応させ、吸入圧が所定の値を下回ったときに感圧部材によって弁体を動かし、クランク室圧を調圧するようになっている。クランク室圧の調圧方法としては、吸入圧が所定値を下回ったときに弁座を開いて吐出圧をクランク室24に導入するもの、クランク室24から吸入室54へ逃がすガス量を制限するもの、その両方の組み合わせ、と種々のものがあるが、この実施例においては、吐出室55とクランク室24とを連通する給気通路89の連通状態を圧力制御弁2で調整することで、吐出室55の高圧ガスをクランク室24に導入する構成が採用されている。この圧力制御弁2によって、クランク室24の圧力が制御され、ピストンストローク、即ち、吐出容量が調節されるようになっている。
【0050】
図5 において、制御装置13による可変絞り機構3の制御動作例がフローチャートとして示されている。この制御動作により、車両側の要求に応じてソレノイドバルブを駆動する吸入絞り制御手段が構成されている。
以下、このフローチャートに基づいて可変絞り機構3の制御動作例を説明すると、制御装置13は、まず空調装置の停止指令が出されて圧縮機4が停止状態にあるか否かを判定する(ステップS01)。この判定において、空調装置が停止状態にあると判定された場合には、可変絞り機構3のソレノイドバルブ70への制御信号(Dt)をゼロ(ソレノドへ供給する電流をゼロ)に設定する(ステップS02)。これによりプランジャ82がスプリング84のばね力により図中上方へ押し上げられて弁体73がそれに伴って上方へ移動し、背圧室68に高圧圧力が導入されて吸入絞り弁がスプリング64に抗して押し上げられ、連通部66を塞いで吸入通路61が遮断される。
【0051】
また、ステップS01において、空調装置が稼働状態にあると判定された場合には、ステップS03において、蒸発器出口の空気温度(Te)が蒸発器出口の空気設定温度(Te(set))より高いか否かを、また、ステップS04において、蒸発器出口の空気温度(Te)が蒸発器出口の空気設定温度(Te(set))より低いか否かを判定し、蒸発器出口の空気温度(Te)が蒸発器出口の空気設定温度(Te(set))より高いと判定された場合には、設定温度よりも蒸発器8から吹出す空気温度が高い場合であるので、吸入絞り弁62を全開方向へ動かすために制御信号(デューティ比:Dt)を大きく(ソレノドイへ供給する電流量を大きく)設定する(ステップS05)。これにより、プランジャ82が下方へ吸引され、弁体73が弁ばね77のばね力により閉鎖方向(図中、下方)に変位し、背圧室68への圧力供給が絞られるため背圧室68と吸入通路61の圧力差が小さくなり、スプリング64によるばね力により吸入絞り弁62が下方に変位して吸入通路61の絞りを小さくする(連通部66を開いて絞り抵抗を軽減させる)。
【0052】
これに対して、蒸発器出口の空気温度(Te)が蒸発器出口の空気設定温度(Te(set))より低いと判定された場合には、設定温度よりも蒸発器から吹出す空気温度が低い場合であるので、吸入絞り弁62を全閉方向へ動かすために制御信号(Dt)を小さく(ソレノドイへ供給する電流量を小さく)設定する(ステップS06)。これにより、プランジャ82がスプリング84のばね力により上方へ変位して、弁体73が弁ばね77のばね力に抗して開方向に変位し、背圧室68への高圧冷媒の供給が多くなるため背圧室68と吸入通路61との圧力差が大きくなり、スプリング64のばね力に抗して吸入絞り弁62が上方に変位し、吸入通路61の絞りを大きくする。
尚、蒸発器出口の空気温度(Te)が蒸発器出口の空気設定温度(Te(set))と同じであると判定された場合には、現状の制御量を維持する(ステップS07)。
【0053】
したがって、以上の吸入絞り弁の制御に基づき、車室内の熱負荷に応じた圧縮機の運転状態について説明すると、以下のようになる。
<(1)全容量運転>
車室内が十分に冷えていないときは、冷凍サイクル1の低圧側の圧力(吸入圧力)は高い状態にある。このような場合には、十分な冷房能力を確保する必要があり、脈動が発生する条件でもないため、吸入絞り制御手段は、ソレノイドバルブ70が全閉状態を維持するよう所定値以上の電流を電磁コイル81に与える。これにより背圧室68の圧力は吸入通路61の圧力と均圧し、スプリング64のばね力により吸入絞り弁62は全開状態を維持し、吸入室54の圧力も十分高いため圧力制御弁2も作動せず、斜板44は最大傾斜角で運転され、圧縮機4は最大容量での運転を維持する。
【0054】
<(2)中間容量運転>
車室内が冷えてくると、蒸発器8の熱負荷も低くなり、吸入圧力が低下してくる。このとき、蒸発器8の出口空気温度が、目標空気温度を下回っていなければ、まだ冷凍能力が過剰ではないため、吸入絞り制御手段は、ソレノイドバルブ70が全閉状態を維持するよう所定値以上の電流を電磁コイル81に与える。これにより吸入絞り弁62は全開状態を維持する。圧縮機4の吸入室54の圧力が所定値を下回ると、圧力制御弁2のベローズが伸張して弁座を開き、吐出室の高圧ガスがクランク室24に導入され、斜板44の傾斜角が小さくなり、圧縮機4の容量が少なくなると共に、吸入圧力の低下(冷えすぎ)が阻止される。
【0055】
<(3)低容量運転+吸入絞り>
熱負荷のさらなる低下や、車内設定温度の変更等により、蒸発器8の出口空気温度が、目標出口空気温度を下回った場合は、冷凍能力が過剰であるので、吸入絞り制御手段は、ソレノイドバルブ70への通電量を減らして、背圧室68へ高圧圧力を導入させる。上昇した背圧室68と吸入通路61の圧力差に応じて吸入絞り弁62が吸入通路61を絞ることにより、吸入室54の圧力が低下する。圧力制御弁2は、この吸入室54の圧力の低下に基づいて、クランク室24の圧力を上昇させて圧縮機4の容量を小さくさせるため、冷凍能力が小さくなり結果として吸入室54の圧力は一定に保たれる。このとき吸入絞り弁62の上流、すなわち冷凍サイクルの蒸発器8側の圧力は、吸入絞り弁62前後の圧力差により、吸入室54の圧力に比して高くなっており、見かけ上、圧力制御弁2の設定吸入圧を上昇させて冷凍能力を小さくした構成と同様の能力制御が得られる。
低負荷時の低容量運転であるために、吸入脈動が発生する領域であるが、吸入通路61が吸入絞り弁62により絞られているので、車両側への脈動の伝播は抑えられる。
【0056】
尚、上述の実施例においては、吸入絞り弁62が吸入ガスの流れに沿って開閉するようになっているが、図6に示されるように、吸入絞り弁62をスプールタイプとし、吸入絞り弁62の動きを吸入ガスの流れに対し直交させてもよい。
【0057】
この例においては、リアハウジング23に吸入通路61と直交する弁体摺動通路90を設け、この弁体摺動通路90に、スプール状の吸入絞り弁62を摺動可能に配置すると共に前述と同様のソレノイドバルブ70を吸入絞り弁62の軸方向で対峙させて取り付けることで吸入絞り弁62の動きを制御するようにしている。
【0058】
吸入絞り弁62は、中間部に小径部62aが形成され、一端にスプリング91によりソレノイドバルブ70に向けて付勢された第1の摺動部62bが、また、他端に吸入通路61の冷媒が流れる通路断面を可変させる第2の摺動部62cが形成されている。スプリング91が収容されている部分は吸入室54に連通しており、また、第2の摺動部62cとソレノイドバルブ70の先端部との間に背圧室68が構成され、この背圧室68は、第2の摺動部62cに形成されたオリフィス67を介して吸入通路61と連通している。したがって、背圧室68の圧力と吸入通路61の圧力とが均衡している状態においては、吸入絞り弁62がスプリング91により付勢されて第2の摺動部62cが吸入通路61から外れ、小径部62aが吸入通路61に臨むようになっている。また、背圧室68の圧力が吸入通路61の圧力より相対的に高くなれば、吸入絞り弁62がスプリング91のばね力に抗して図中左方へ変位し、第2の摺動部62cで吸入通路61が徐々に絞られることとなり、最も左方に変位した場合には、吸入通路61を遮断するようになっている。
尚、他の構成は、前記構成例と同様であるので、同一箇所に同一符号を付して説明を省略する。このような構成においても、前記構成例と同様の作用効果を有する。
【0059】
また、上述の構成は、吸入絞り弁62の背面に背圧室68を設け、圧力の力を利用して吸入絞り弁62を動かすようにしたが、図7に示されるように、ソレノイドで直接吸入絞り弁62を駆動させるようにしてもよい。
【0060】
この例においては、吸入通路61の途中に配設される吸入絞り弁62をソレノイドバルブ70と一体化してプランジャとして機能させているもので、一端が閉塞された筒状の吸入絞り弁62を、ボディ71に形成された軸孔72に移動可能に収容すると共に、ボディ71の軸孔72に軸心を合わせて固定された円筒状のシリンダ80に摺動自在に挿入している。ボディ71には、その先端に軸孔72に連通する流入口92が形成され、また、側面に軸孔72に連通する流出口93が形成され、吸入絞り弁62がボディ71の先端に当接すると、流入口92が閉塞されるようになっている。
【0061】
また、可変絞り機構3は、吸入絞り弁62を駆動制御するために、シリンダ80の周囲に巻回された電磁コイル81と、シリンダ80の基端側開口部に取り付けられたアジャストキャップ83と、このアジャストキャップ83と吸入絞り弁62との間に弾装されて吸入絞り弁62を流入口92に向けて付勢するスプリング84とを有している。尚、吸入絞り弁62の内側は、ボディ71、シリンダ80、及び吸入絞り弁62に形成された通孔94,95,96を介して吸入室54の圧力が導かれるようになっている。
【0062】
したがって、電磁コイル81への通電量を制御することにより吸入絞り弁62を下方へ吸引する力を調整することができ、電磁コイル81に通電されていないときは吸入絞り弁62はスプリング84により上方に付勢され、ボディ71に形成された流入口92を閉塞し、吸入通路61を遮断する。
【0063】
これに対して、スプリング84のばね力に打ち勝つだけの吸引力が発生するよう電磁コイル81に通電されている時は、吸入絞り弁62は下方に移動し、磁力、吸入通路61の圧力、吸入室54の圧力、スプリング84のばね力が釣り合った位置で停止する。そして、吸入絞り弁62が最も下方へ変位した場合には、吸入絞り弁62が流出口93から外れ、流入口92と流出口93との連通状態が最大となる。尚、流入口92と流出口93の大きさは、連通状態が最大となる高冷媒流量運転でも圧力損失が生じないように十分な通路面積が確保されている。
【0064】
したがって、このような吸入絞り弁62とソレノイドバルブ70とを一体化した構成においても、高吐出圧力条件での中〜高容量運転時において吸入絞り弁の開度を全開状態に維持することができ、また、低圧脈動が発生する条件においては、吸入脈動の伝播を抑制することが可能となる。
【0065】
尚、上述した第1、第2の実施例においては、背圧室68とソレノイドバルブ70を隣接させて構成したが、背圧室68とソレノイド70を離して配置し、背圧室68と連通室76とをガス通路で連結して連通室76の圧力をガス通路を介して背圧室68に導くようにしてもよい。
また、上述の図5で示す制御動作例においては、冷凍サイクルの熱負荷を制御対象として可変絞り機構3を制御したが、脈動の発生有無を検出もしくは推定して、可変絞り機構3を制御するようにしてもよい。
さらに、上述した圧力制御弁においては内部制御式とした例を示したが、圧力制御弁をソレノイド等の外力により圧力設定点を変えることが出来る外部制御弁とし、冷凍サイクルの熱負荷に応じた冷凍能力制御は、吸入絞り弁でなく、この外部制御弁に受け持たせても良い。この場合、吸入絞り弁の作動指令は脈動発生を因子とすることにより、より正確な能力制御と脈動低減を得ることが可能となる。
さらにまた、上述の第1、第2の実施例においては、吸入絞り弁を吸入ガスの流れに沿う弁、もしくは流れに直交するスプール弁としたが、バタフライ弁を外部調整手段により所定角度回転させて吸入通路を絞るようにしても良い。
【符号の説明】
【0066】
1 冷凍サイクル
2 圧力制御弁
3 可変絞り機構
4 圧縮機
5 凝縮器
6 膨張装置
8 蒸発器
21 シリンダブロック
22 バルブプレート
23 リアハウジング
25 フロントハウジング
37 シリンダボア
40 ピストン
44 斜板
54 吸入室
55 吐出室
60 吸入口
61 吸入通路
62 吸入絞り弁
68 背圧室
70 ソレノイドバルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、前記ハウジングに形成されたシリンダボア内を往復動するピストンと、前記ハウジング内に形成されたクランク室、吸入室、及び吐出室と、前記クランク室を貫通し、前記ハウジングに回転自在に支承されたシャフトと、前記クランク室に収容され、前記シャフトの回転により回転して前記ピストンを往復動させる斜板と、前記ハウジングに形成されて作動流体を吸入する吸入口及び吐出する吐出口とを有し、前記吸入口から吸入した作動流体を、前記ハウジングに形成された吸入通路を介して前記吸入室へ導き、前記ピストンにより圧縮した後に前記吐出室を介して前記吐出口から吐出させる可変容量斜板式圧縮機において、
前記吸入通路に、この吸入通路を通過する冷媒の通路面積を調節する吸入絞り弁を設け、この吸入絞り弁の開度を外部からの要求に基づき任意に調整する外部調整手段を設けたことを特徴とする可変容量斜板式圧縮機。
【請求項2】
前記外部調整手段は、前記吸入絞り弁の背圧室の圧力を調整して前記吸入絞り弁の開度を調整するソレノイドバルブであることを特徴とする請求項1記載の可変容量斜板式圧縮機。
【請求項3】
前記外部調整手段は、外部からの要求に基づき前記吸入絞り弁の開度を直接制御するものである請求項1記載の可変容量斜板式圧縮機。
【請求項4】
前記請求項1乃至3のいずれかに記載の可変容量斜板式圧縮機を、少なくとも凝縮器、膨張装置、蒸発器と共に配管結合をして冷凍サイクルを構成し、
前記可変容量斜板式圧縮機に前記吸入室の圧力に基づいて前記クランク室の圧力を制御する圧力制御弁を更に設け、
車両側の要求に応じて前記外部調整手段を駆動する吸入絞り制御手段を更に具備することを特徴とする空調装置システム。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−12548(P2011−12548A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−154485(P2009−154485)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(500309126)株式会社ヴァレオサーマルシステムズ (282)
【Fターム(参考)】