説明

可変断面積ベンチュリ式排気ガス流量計の構造

【課題】ベンチュリ管を縦方向すなわち鉛直に配置することにより排気ガスを測定部においては鉛直方向に流動させ、とくに下方から上方に流すことによって、排気ガスの流速が遅い場合も温度分布の均一化を実現でき、併せて可変断面積ベンチュリ式排気ガス流量計の可動コァーの駆動軸を鉛直方向に近く保って、軸にかかる横方向の支持力と摺動抵抗を小さくし、さらに測定方向として水平方向の必要距離を短くすること
【解決手段】管路の流れを滑らかに絞り流路断面積が極小になるスロート部を経て緩やかに滑らかに拡大する管路をもつベンチュリ測定管路の軸に平行なスロートの中心部に断面積が滑らかに変化する形状の可動コァー7を配置して、可動コァー7の位置によりスロート部流路断面積が変化するベンチュリ式流量計において、測定管路10を鉛直もしくは鉛直に近い方向に構成して、可動コァー7を駆動する軸に軸方向の力以外の横方向にかかる力を小さくして支持できるようにした可変断面積ベンチュリ式排気ガス流量計1の構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンなどの排気ガス流量の直接測定技術に関しており、温度、圧力およ
び流速に大きな変動のある気体流量の実用的測定装置の構造・構成に係るものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンの排気ガス流量の直接測定は環境対策においても極めて重要で、各種の測定装置が開発されているが、測定範囲や測定精度などの点で満足されているものは未だない実情である。本発明は既に発表されている可変断面積ベンチュリ式排気ガス流量測定装置(非特許文献1、2)の構造に関して新技術を付加するもので、従来の構成では実用的に配置に制約があるとか、不便さがあるなどの点の改良を図る技術で使用面での利便性と耐久性の向上を実現できるものである。
【0003】
【特許文献1】実用新案登録3085960号
【特許文献2】特開2003−269685
【非特許文献1】柳原茂、望月伊、佐藤恭輔、斉藤敬三、可変断面積ベンチュリ式排 気流量測定装置、自動車技術会 1998.5 学術講演会 128
【非特許文献2】Shigeru Yanagihara, et al. Variable area venturi−type exhaust gas flow meter. Technical Notes/ JSAE Review 20(1999)259−279
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の可変断面積ベンチュリ式排気ガス流量計は測定管路を水平に配置して被測定の排気ガスの流速が遅い場合に管路の上部に高温度の排気ガスが偏って流れ温度斑のために平均ガス温度の測定が困難で流量測定精度を悪くすることがあった。また可動コァーなどの重力影響を駆動軸の横方向に受けて軸の摺動部で偏摩耗を生じたりしたりすることがあった。さらに可動コァーを水平方向に移動させる構造であったために水平な測定管路の配置では測定装置の入り口から出口までの水平距離が長くなり装置の形状が水平方向に長くなって配置の関係が大きく制約されるなどの問題があった。
【0005】
可変断面積のスロート部有効流路断面積は可動コァーの移動距離に比例して直線的に変化することが、断面積制御の点で最も望ましい。従来のコァーでは軸方向移動距離xに対する断面の直径D(x)の関係は単純に

としていた。ここに、Dmaxはコァーの最大径で、lはコァーの最大径の断面から軸方向の最大移動距離である。この形状は単純な回転放物線曲面であるが、曲面が中心軸の線となす角度が30°以上大きくなると実際のスロート部有効断面はスロート部内周とコァー直径が形成する中心軸に直角な平面との間の環状流路断面より変化するようになる。実際にはコァー表面のごく近傍では面に沿った流れとなるので、流路断面積は放物線よりもずれることになる。コァーの移動距離に対するスロート部断面積を比例的変化にするためには回転放物線曲面から修正を必要とする課題があった。
【0006】
流量測定するエンジンの排気ガス温度は運転条件により100°C以下から400°C以上に大きく変化するので測定部のスロート部の有効断面積は熱膨張の影響を受ける恐れがある。この影響は主として可動コァーの駆動軸の線熱膨張によると考えられるが、こうした温度の影響を無視できる程度に小さくすることが一つの課題である。
【0007】
排気ガス温度は運転条件や排気管系の構成により450°C以上の高温度に達することがある。こうした高温度では体積流量が大きくなるだけでなく、装置の構成部材の耐熱性とも関連する。導入される排気ガス温度がとくに高温な時に局所あるいは管路全般を冷却できるようにすることが課題である。
【0008】
排気ガスには普通水分が含まれており、露点より高い温度においては凝縮していない状態であるが、エンジンの始動直後においてはエンジンを含めた排気管系が露点より低い温度になっており、凝縮水が排出されることが少なくない。凝縮水は測定装置で遅れなく測定系に取り入れて気化状態で排気ガスとして測定対象にするべきであるが、実際の測定においてはエンジン始動の初期ドレインとして排除することを含めて凝縮水問題に対処できるようにすることが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
通常、測定しようとする排気ガスはほぼ水平に近い角度で排出され、測定装置に導入される。本発明ではベンチュリ管を縦方向すなわち鉛直に配置することにより排気ガスを測定部においては鉛直方向に流動させ、とくに下方から上方に流すことによって、排気ガスの流速が遅い場合も温度分布の均一化を実現でき、併せて可変断面積ベンチュリ式排気ガス流量計の可動コァーの駆動軸を鉛直方向に近く保って、軸にかかる横方向の支持力と摺動抵抗を小さくし、さらに測定方向として水平方向の必要距離を短くすることが可能となり配置が有利になった。
【0010】
排気ガスには多くの場合モル比で約13%程度の水分が含まれ、露点は53°C程度となっている。始動時にはエンジンを含めた排気管路系の温度が露点よりも低いので水分に凝縮が生じる。この水分は当然排出成分であり、流量測定に含まれるべきものであるが、取り扱いは必ずしも決められていない場合がある。本発明においては装置の入り口近傍において適切な加熱蒸発装置を配置して必要に応じて流入する凝縮水を気化させて測定する排気ガスに含ませることが出来るようにした。また、場合よってはドレインとして適時測定系外に排出できるようにもした。
したがってこの発明の可変断面積ベンチュリ式排気ガス流量計の構造は、管路の流れを絞り流路断面積が極小になるスロート部を経て拡大する管路をもつベンチュリ測定管路の軸に平行なスロートの中心部に断面積が前記軸方向の位置により変化する形状の可動コァーを配置して、可動コァーの位置によりスロート部流路断面積が変化するベンチュリ管によって入り口部の静圧、絶対圧および温度と、スロート部の静圧を測定し、流体の密度とスロート部流速及びスロート部有効断面積を当該コァーの軸方向位置から求めて流量を測定する可変断面積ベンチュリ式流量計において、ベンチュリ測定管路を水平に対して傾斜させて構成した。
またこの発明の可変断面積ベンチュリ式排気ガス流量計の構造は、前記ベンチュリ測定管路におけるガスの流れを下から上になるように前記ベンチュリ測定管路を配置した。
またこの発明の可変断面積ベンチュリ式排気ガス流量計の構造は、可動コァーの移動距離に対するベンチュリ・スロート部の有効断面積を直線的に変化させて流量制御を有利にできる可動コァー断面の形状として、ベンチュリ外周部のスロート部断面の軸方向位置を基準としたコアー断面とベンチュリ外周との環状断面とコァーの曲面の法線方向が形成する環状円錐面が滑らかに交差して形成する環状曲面の断面積を、コァー移動距離に対して直線的に変化させるように回転放物線曲面から補正したコァー形状をもつ。
またこの発明の可変断面積ベンチュリ式排気ガスの構造は、前記コァーの形状はコァーの軸方向の長さがコァーの最大移動距離よりも短く、かつコァーがスロート圧検出点の平面から過ぎた位置で最大有効スロート断面積に達するように構成されている。
またこの発明の可変断面積ベンチュリ式排気ガス流量計の構造は、ベンチュリ測定管路の外部に配置されて測定時には常温近傍に保たれるようになっている駆動装置からコァー位置を発信する構成の場合に、測定時には300°C以上の高温に達することもある測定管路の内部に配置される可動コァーの駆動軸を熱膨張係数のきわめて小さいアンバーなど特殊合金で構成して、流量校正時の測定管路の内部温度と実際の測定時の内部温度とが異なることによるコァー位置の発信における温度影響を少なくするようにした。
またこの発明の可変断面積ベンチュリ式排気ガス流量計の構造は、測定管路の入り口に流れの脈動を比較的小さな容積で大きな等価減衰容積を持つバッファー装置としてサージ・チューブ1)、2)またはバルーン・バッファー・チューブ(BBT)3)を装着して、脈動を効果的に減衰させて、脈動のある流路においても誤差を小さくしてベンチュリ管による高精度な流量測定を可能にできるようにした。
ここでサージ・チューブ1)は圧力や流速に大きな振幅の脈動のある気体の管路系の中で、適当な長さの一部の管路側壁面に気体が自由に出入りできる適切な断面積を持つ孔を1個以上設けて、当該部分の外周に適切な容積を持ちかつ適切な弾性と強度および耐熱性を有するゴム膜など伸縮性のある材質で構成したチューブまたはベローズを配置し、チューブまたはベローズの側面などが内外差圧により伸縮して容積変化する構造の管路を構成して、等価容量の大きなサージ・タンクに対応するようにし、ゴム膜などの伸縮による容積変化によって管路系の脈動を抑制・緩和するサージ・チューブ(特許文献1参照)である。
また、サージ・チューブ2)は適切な弾性と強度および耐熱性を有するゴム膜など伸縮性のある材質で構成したチューブを配置し、チューブの側面などが内外差圧により伸縮して容積変化する構造の管路を構成してゴム膜などの伸縮による容積変化によって管路系の脈動を抑制・緩和するサージ・チューブにおいて、厚さ0.5mm以下のゴム薄膜円筒状チューブの両端部についてそれぞれO・リング状で線径1mm以上の太さをもち強度と気密性の確保できる縁を構成させて、管路の両端の適切な位置に気密性を保って取り付けられたフランジの外周部の近傍に軸方向に適切な角度を有する環状のO・リング溝を設け、ゴム薄膜チューブの両端の縁にあるO・リングを嵌合させ、適切な角度の面をもつ締め付けリングで軸方向にO・リングを締め付けて、容易に気密性を確実に保ちかつ強度的にも充分にゴム膜を保持するようにした、サージ・チューブの構造(特許文献2参照)である。
また、バルーン・バッファー・チューブ(BBT)3)は管路系の中間に管路の断面積より大きい流路面積の側方管路を管路から分岐させて設けて、その先端部にシリコーンゴムなどきわめて弾性に富み耐熱性にも優れた材質で構成された平面または凹面の薄膜弾性体を周辺で気密に取り付けて側方管路内部の圧力と外部の圧力との差圧に応じて薄膜弾性体が球面状に伸縮することにより管路系内部の容積を大きく変化させて、管路の圧力あるいは流速の脈動を効果的に減衰させるバルーン・バッファーチューブ(特願2006−216435参照)である。
またこの発明の可変ベンチュリ式排気ガス流量計の構造は、排気ガス温度がほぼ300°C以上の高温度に達したときに、バッファー装置と可動コァーの駆動軸シール部を含むアクチュエーター装置および測定管路外壁を軸流ファンなどの通風装置を用いて強制冷却するようにして各部温度を概ね400°C以下の適切な温度範囲に維持できるようにした。
またこの発明の可変断面積ベンチュリ式排気ガス流量計の構造は測定管路の入り口管路から排気ガスとともに流入する凝縮水などを排気導入管に接続して設けた凝縮水処理装置において、必要に応じて予熱を含めた加熱装置により早急に蒸発させて気体状態にして測定系に加えるようにするか、もしくはドレイン槽に分離して貯留して測定系外に排除するなどのドレイン対応装置を備えたことを特徴とする。
またこの発明の可変ベンチュリ式排気ガス流量計の構造は、スロート部の静圧と入り口静圧のために管路の同一軸方向位置の内周に均一にそれぞれ4ヵ所以上の壁面圧力孔を設けて圧力を平均化して圧力センサに導入し、圧力導入管路をできるだけ短く構成するとともにラインフィルター及びラインパージ用3方電磁弁を配置して、絶対圧センサ、差圧センサに連結して、必要に応じて加圧空気を利用してパージを行うなどして圧力導入管路の清浄性を保つようにした。
【発明の効果】
【0011】
本発明においては可変断面積ベンチュリ式排気ガス流量計の可動コァーとこれを支持し駆動する軸を水平から傾け、または鉛直に配置することにより、重力による軸の横方向力を無くすることができ、可動コァーの軸の摺動抵抗が減少され滑らかな駆動が可能になった。また測定部管路が水平から傾け、または鉛直もしくはほぼ鉛直に配置されることにより、また、排気ガスの流れを下から上にすることにより、排気ガスの流れにおける温度の偏りを少なくでき、少ない温度測定点で正確な温度測定が可能となり、かつ縦型配置では測定管路の長さが制約とならないので、測定装置全体の水平方向長さを短く構成することができた。
【0012】
本発明ではベンチュリ管としてのスロート部を形成する可動コァーの断面形状を単純な回転放物線曲面から一部の曲面に沿う流れを加味して環状流路の有効幅を傾斜角度に応じて逐次修正した補正回転曲面を設計し製作したことにより、スロート部の有効断面積と可動コァー位置の関係を従来よりも直線的関係に近づけることができ、可動コァーの制御を容易にした。
【0013】
可変断面積ベンチュリ式排気ガス流量計においては測定温度範囲が広いので測定部の熱変形が問題であるが、本発明においては可動コァーの駆動軸の材質を熱膨張係数の極めて小さいアンバーなど特殊合金にすることにより、常温近傍における流量構成に基づいた流量係数を用いて高温条件を含めて流量測定を行っても少ない補正で小さな誤差範囲に収まることが可能となった。
【0014】
排気ガス温度は通常排気管出口以降では450°C以下であるが、場合によっては500°Cを越えることもあり得る。体積流量の面からは350°C以下が望ましいが、実際には400°Cを越えることも多い。とくに装置の構成部材にはシリコーンゴムを用いている箇所もあり直接高温度ガスに接触しない構造ではあるが幾つかの部材は300°C以下に保持することが望ましい。このために遮熱板を用いる他に、室温程度の冷却風で管路外壁から複数の軸流ファンで局所を含めて強制冷却する手段を講じた。排気ガス温度300°C以上の場合に強制冷却するようにして効果的な温度効果が実現した。
【0015】
本発明の排気ガス流量計は多くの場合レシプロ・エンジンの排気ガスに適用されるので、排気ガスの流れには脈動があることを前提に対応する必要がある。この脈動を効果的に減衰させるバッファー装置として、サージ・チューブ(特許文献1及び2参照)またはBBT(特願2006−216435参照)を可変断面積ベンチュリ式流量計の測定管路入り口に装着することにより、流量測定に対する脈動影響は全く無視できる程度になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明を自動車エンジン排気ガスの流量測定に適用した装置の例を図1の構成図と図2以下の各部の構造詳細を参照して説明する。
自動車エンジン2の排気管21からの排気ガス流20は排気導入管31から装置1内部に入り、凝縮水などは凝縮水処理装置32に分離導入される。液体を含まない排気ガスがBBT3を経由して鉛直に配置された縦置きの測定管路10に入りベンチュリ縮流部4において最小流路断面積のスロート部5まで流れを絞られ流速を増す。通常スロートの中心に可動コァー7があって流路は環状となる。ベンチュリ管路の入り口温度は熱電対などの温度センサ41で検出され、圧力は圧力導管42から絶対圧センサ51および差圧センサ52にパージ・エァー切り換え用の電磁弁46、48とフィルタ47、49を介して常時は連結されている。
【0017】
ベンチュリ管のスロート5を形成する内周側は可動コァー7の外周であるが、その径は軸方向位置により滑らかに変化するように作られており、有効流路断面積が軸方向移動距離に対して直線的に変化するよう設計してある。図2にコァー断面形状を例示してあるが、スロート部の有効断面面積はコァー断面の軸方向傾斜が30°C以上に大きくなると傾斜面に沿った流れの影響からスロート位置に応じてやや大きくなる。実験の結果をもとにコァー曲面を修正する方法を試み、結論的には図2の点線で示した単純な回転放物曲面から実線で示したように補正した曲面を得た。こうした補正した可動コァーの曲面にすることによりコァー移動距離xに対する有効スロート断面積との関係はほぼ直線関係にすることができた。補正によって顕著に見られるコァー形状の特徴はコァーの最大移動距離よりも製作されたコァーの長さが短くなり、コァーがスロート圧検出点の平面からある程度過ぎた位置で最大有効スロート断面積に達することである。
【0018】
可変断面積ベンチュリ式排気ガス流量計では入り口、スロート部の静圧測定が極めて重要で、とくに50Pa以下の差圧測定が必要で圧力センサの選択とともに圧力導管系にも細心の留意を要する。圧力測定の応答性にも関係するが、水分などを含めた管路の清浄性を確保することは極めて重要である。図3には本装置に用いる圧力測定系を例示してある。排気ガスには粒状物質が含まれることもあり、また運転停止後に水分凝縮などを生じ圧力導管で障害となることがある。測定開始時や終了時に加圧清浄空気で圧力導管をパージして常に清浄性を保ち得るように電磁弁46、48及びフィルタ47、49を絶対圧センサ51差圧センサ52の導管系に配置する圧力測定系とした。配管50は調圧され清浄化された加圧空気のラインである。
【0019】
排気ガスに含まれる水分は露点以上の温度では気化状態と考えられるが、流路の管壁温度が低い場合には凝縮水を生じていることも少なくない。始動時にはエンジン側の排気管でも凝縮水が流れるので、本測定装置の入り口には液体水分が導入されるとして対応する必要がある。図4に凝縮水の蒸発装置32の具体的な構成例を示す。排気ガス導入管31の下部壁面に沿って流入する液状の水分は加熱蒸発装置32のヒーター・ブロックの蒸発面53に留まる。蒸発面は150〜200°C程度に温度センサ55の信号を基にヒータ54で加熱制御されており、普通には流入する液状水分は充分に気化できる。必要に応じては排水管56と電磁弁57を経由してドレインタンク59に排出される。ヒータ・ブロックの外側面は遮熱のために保温材58で覆われている。
【実施例】
【0020】
本発明の実施例を図1、図3、図4に沿って説明する。エンジン2から排出された排気ガス20はエンジン排気管21に接続されたほぼ水平に配置された排気導入管31に導入され、液状成分があるときは管壁に沿って下方の凝縮水処理装置32に分離導入され、気体成分は上方の管路からバッファー装置3(BBT)に導かれる。バッファー装置3においては排気流の脈動がシリコーンゴム薄膜の伸縮によって減衰されて排気流は平滑化されて、さらに上方に配置された排気ガス流量計1に入る。凝縮水処理装置32は図4に例示されているように下部上面が凹型になった蒸発面53を持ち、液状成分を受け止めて加熱ヒーター54で測定開始直前から運転初期には150〜200°C程度に加熱されている。この温度制御はヒータ・ブロックの中心部に配置された温度センサ信号を基に測定開始前の適当な時期から行われる。始動時などで凝縮水が多く蒸発面に溜まるのを避けるために排水導管56を通して電磁弁57を経由しオートドレイン装置の付いたタンク59から測定系外に排除できるようにしてある。
【0021】
排気ガス温度が例えば200°Cを超えると、バッファー装置(BBT)の冷却のための軸流ファン37、38が作動して、シリコーンゴム膜の温度上昇を防ぐことができる。ベンチュリ管路の側面には軸流ファン39が配置され、可動コァーの駆動軸8が管路を貫通する。貫通部13には軸シール部14があり、外部は冷却フイン15を設けてあり、気密を確保してしかも軸部を効果的に冷却する。とくに軸流ファン36はアクチュエータ16と貫通部13を強く冷却するように構成する。また遮熱板22を配置して高温排気ガスの管路からの熱伝達を少なくするようにしてある。
【0022】
測定管路10は鉛直に配置されたベンチュリ管でスロート部の断面積が中心に配置された可動コァー12の軸方向移動により可変できる構造である。ベンチュリの入り口圧力は図3のように円周40に配置された4ケの測定孔42の平均値が引き出せるように導管を構成して、電磁弁48の共通端管に連結され、常時(非通電時)には解放端からフィルタ49を経由して差圧センサ51の高圧端に連結される。同時に入り口絶対圧はフィルタを経由して差圧センサ51の入り口から分岐された配管で絶対圧センサ52に連結され測定される。ベンチュリのスロート圧力は入り口と同様にスロート断面の円周に4ケの測定孔43を配置して平均値が引き出せるようにして電磁弁46、フィルタ47を経由して差圧センサ51の低圧端に連結される。
【0023】
ベンチュリの流量計算の温度は入り口温度が基準となるので入り口圧力測定の面から近い管内で、管径のほぼ

の径の位置にセンサ先端を配置して平均排気ガス温度を測定する。なおベンチュリ管として圧力回復を確認するためにはベンチュリ管10の出口近くに静圧センサのための圧力測定孔44を設けて測定することがある。さらに排気ガス試料を抽出するためにはプローブ17をベンチュリ管の下流近傍に挿入するのが普通である。
【0024】
測定管路10の下流側はベント管18で排気ガス流は方向を逆にして適当な位置から排出管路19から測定装置の外部に排出される。下流側は圧力損失を少なくするために抵抗の少ない管路に接続することが望ましい。
【産業上の可能性】
【0025】
本発明の排気ガス流量計はベンチュリ方式としては測定レンジが極めて広く構造的に400°C以上の排気ガス温度にも適用でき、とくに脈動影響の大きいレシプロ・エンジンのアイドリングから高速高負荷運転まで、およびガソリンエンジンからディーゼルエンジンを含めて各サイズのエンジンにまで適応できるので自動車産業における利用の可能性は絶大である。その他の産業においても流量測定を必要とする場合は多く、とくに変動を伴う流路においても広範囲の気体流量測定に広く活用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態における流路と関係機器の配置を示す構成図。
【図2】本発明の可動コァーの断面形状を示す説明図。
【図3】本発明における測定圧力導管系の系統図。
【図4】本発明の測定装置の入り口に装着される凝縮水発生装置の構成例。
【符号の説明】
【0027】
1 可変断面積ベンチュリ式流量計
2 エンジン
3 バッファー装置(BBT)
4 ベンチュリ縮流部
5 ベンチュリ・スロート部
6 ベンチュリ・拡大部
7 可動コァー
8 コァー駆動軸
9 コァー位置検出センサ
10 測定管路
11 コァー駆動軸支持軸受
12 軸受支持支柱
13 コァー駆動軸貫通部
14 軸シール部
15 軸シール冷却ファン
16 可動コァー・アクチュエータ
17 排気ガス試料抽出プローブ
18 測定管路下流ベント管
19 排出管路
20 エンジン排気ガス流
21 エンジン排気管
22 遮熱板
31 排気ガス導入管
32 凝縮水処理装置
33 BBTゴム膜保護メッシュ
34 BBTシリコーンゴム薄膜
40 ベンチュリ入り口圧力検出部
41 ベンチュリ入り口温度センサ
42 ベンチュリ入り口圧力測定孔(4ケ所)
43 ベンチュリ・スロート部圧力測定孔(4ケ所)
44 ベンチュリ・拡大部圧力回復静圧測定孔
45 平均化圧力導管系
46 3方電磁弁
47 フィルタ
48 3方電磁弁
49 フィルタ
50 パージ・エァーライン
51 差圧センサ
52 絶対圧センサ
53 凝縮水蒸発面
54 加熱ヒータ
55 温度センサ
56 凝縮水排出導管
57 電磁弁
59 凝縮水貯留ドレインタンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管路の流れを滑らかに絞り流路断面積が極小になるスロート部を経て緩やかに滑らかに拡大する管路をもつベンチュリ測定管路の軸に平行なスロートの中心部に断面積が滑らかに変化する形状の可動コァーを配置して、可動コァーの位置によりスロート部流路断面積が変化するベンチュリ管によって入り口部の静圧、絶対圧および温度と、スロート部の静圧を測定し、流体の密度とスロート部流速及びスロート部有効断面積を当該コァーの軸方向位置から求めて流量を測定する可変断面積ベンチュリ式流量計において、ベンチュリ測定管路を鉛直もしくは鉛直に近い方向に構成して、可動コァーを駆動する軸に軸方向の力以外の横方向にかかる力を小さくして支持できるようにした可変断面積ベンチュリ式排気ガス流量計の構造。
【請求項2】
請求項1の可変断面積ベンチュリ式排気ガス流量計において可動コァーの移動距離に対するベンチュリ・スロート部の有効断面積をほぼ直線的に変化させて流量制御を有利にできる可動コァー断面の形状として、ベンチュリ外周部のスロート部断面の軸方向位置を基準としたコアー断面とベンチュリ外周との環状断面とコァーの曲面の法線方向が形成する環状円錐面が滑らかに交差して形成する環状曲面の断面積を、コァー移動距離に対して直線的に変化させるように回転放物線曲面から補正したコァー形状をもつ可変断面積ベンチュリ式排気ガス流量計の構造。
【請求項3】
請求項2の可変断面積ベンチュリ式排気ガス流量計において、前記コァーの形状はコァーの軸方向の長さがコァーの最大移動距離よりも短く、かつコァーがスロート圧検出点の平面から過ぎた位置で最大有効スロート断面積に達するように構成されていることを特徴とする可変断面積ベンチュリ式排気ガス流量計の構造。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかの可変断面積ベンチュリ式排気ガス流量計において、ベンチュリ測定管路の外部に配置されて測定時には常温近傍に保たれるようになっている駆動装置からコァー位置を発信する構成の場合に、測定時には300°C以上の高温に達することもある測定管路の内部に配置される可動コァーの駆動軸を熱膨張係数のきわめて小さいアンバーなど特殊合金で構成して、流量校正時の測定管路の内部温度と実際の測定時の内部温度とが異なることによるコァー位置の発信における温度影響を少なくするようにした可変断面積ベンチュリ式排気ガス流量計の構造。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかの可変断面積ベンチュリ式排気ガス流量計において、測定管路の入り口に流れの脈動を比較的小さな容積で大きな等価減衰容積を持つバッファー装置としてサージ・チューブまたはバルーン・バッファー・チューブを装着して、脈動を効果的に減衰させて、脈動のある流路においても誤差を小さくしてベンチュリ管による高精度な流量測定を可能にできるようにした可変断面積ベンチュリ式排気ガス流量計の構造。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかの可変ベンチュリ式排気ガス流量計において、排気ガス温度がほぼ300°C以上の高温度に達したときに、バッファー装置と可動コァーの駆動軸シール部を含むアクチュエーター装置および測定管路外壁を軸流ファンなどの通風装置を用いて強制冷却するようにして各部温度を概ね400°C以下の適切な温度範囲に維持できるようにした可変断面積ベンチュリ式排気ガス流量計の構造。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかの可変ベンチュリ式排気ガス流量計において測定管路の入り口管路から排気ガスとともに流入する凝縮水などを排気導入管に接続して設けた凝縮水処理装置において、必要に応じて予熱を含めた加熱装置により早急に蒸発させて気体状態にして測定系に加えるようにするか、もしくはドレイン槽に分離して貯留して測定系外に排除するなどのドレイン対応装置を備えたことを特徴とする可変断面積ベンチュリ式排気ガス流量計の構造。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかの可変ベンチュリ式排気ガス流量計において、スロート部の静圧と入り口静圧のために管路の同一軸方向位置の内周に均一にそれぞれ4ヵ所以上の壁面圧力孔を設けて圧力を平均化して圧力センサに導入し、圧力導入管路をできるだけ短く構成するとともにラインフィルター及びラインパージ用3方電磁弁を配置して、絶対圧センサ、差圧センサに連結して、必要に応じて加圧空気を利用してパージを行うなどして圧力導入管路の清浄性を保つようにした可変断面積ベンチュリ式排気ガス流量計の構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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