説明

可変表示装置の表示用回転球体

【課題】遊技用の可変表示装置に使用される表示用回転球体の軽量化を可能にする。
【解決手段】半球形をなす中空の2つの殻体2a,2bを形成するに当って、その一方の殻体2aの開口部6に周方向に沿って縮径する深さを殻体の肉厚に揃える環状の縮径凹部を形成し、向い合せにする他方の殻体2bの開口部をこの縮径凹部に嵌合して一体に結合させ球体2に組立る。その一方、シュリンクフィルムを材料に表面に図柄を表示してなる円筒形の表示体を形成し、この表示体を前記球体2被せ、その後このシュリンクフィルムを加熱して収縮させ球体2の表面に密着させることにより貼り付ける。そして同時に、このフィルムの熱収縮を利用して前記2つの殻体2a,2b相互を引き合わせ、一体に結合させて球体に固定し、表面に前記図柄を表示した回転球体1とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パチンコ遊技機やスロットマシン等の遊技機に組込まれ使用される可変表示装置の表示用回転球体に関する。
【背景技術】
【0002】
パチンコ遊技機やスロットマシン等の遊技機には遊技を演出する各種の表現手段を取り入れた可変形の表示装置、所謂可変表示装置が組込まれ使用されている。この可変表示装置の中の一種に予め設定する条件、例えば当り役の条件等を遊技者に視覚的に確認させるための手段として表面に図柄(絵柄や文字、数字等)を表示した回転球体を使用するものがある。
この回転球体は、ドラム型の回転表示体に対抗するものとして登場したものであり、ドラム型回転表示体における一面的な表示形態に対して、球面を利用することによって多面的な表示を可能にするもので、目新しさに加えて遊技者に変化に富んだ表示器を提供するものとなっている。
【0003】
しかし、この回転球体による表示装置はドラム型の回転表示体に比べて球体そのものを成形するのが容易でなく、更にはこの球体の表面に表わす図柄の表示形成が容易でないと言った問題がある。そして、更に言えば球体そのものを軽量化するのが難しいと言った問題がある。
表示装置に使用される回転球体は、球表面に表示する図柄を明瞭にするため図柄を表示する球面の背後から照明することが求められ、そのため球体そのものを中空体にして内部を通して図柄の背後から光源を当て照明することが行われている。
【0004】
この様なことから、回転球体は中空体であること、そして球体そのものが透明若しくは半透明であること、更には肉薄で軽量であることが求められるが、この様な球体を成形することは簡単ではない。
しかも、この回転球体は表示手段となるものであることから表面に図柄を表示する必要があるが、球体の表面は言うまでもなく球面であると共に、表示する図柄を球体の全面に亘って表示する必要があることから簡単に表示することができない問題がある。
従来、この様な事情を踏まえて球体型の表示装置として、例えば特許文献1乃至3に記載されるような発明が提案されている。
【特許文献1】特開平8−191934号公報。その明細書の段落0032〜0039、そして図面の図1〜図9。
【特許文献2】特開平8−191935号公報。その明細書の段落0019〜0026、そして図面の図1〜図9。
【特許文献3】特開平8−191936号公報。その明細書の段落0025〜0032、の説明及び図面の図1〜図9。
【0005】
上記特許文献1〜3は、回転体に関する記載を共通にしており、構造の説明に違いがないので、ここでは特許文献1の説明に基づき見ると、回転体56は一対の半球形の殻体62,64から構成されるものとなっており、これら殻体には半球面中央部に殻体の球面の中心から放射線方向(球心方向)に向けて筒状の軸筒部66を立設することが記載されていおり、その一方の殻体62の円形開口端部には嵌合凹部72を、軸筒部66の自由端部には嵌合軸凸部74を形成し、また他方の殻体64の円形開口端部には嵌合凸部76を、そして軸筒部66には嵌合軸凹部78を設けて、球体を作るに当ってはこの2つの殻体62,64を合体させるに際して開口部の端縁同士を衝き合せて前記嵌合凹部72と嵌合凸部76とを嵌め付け、また前記嵌合軸凸部74と嵌合軸凹部78とを嵌め付けて組付け、球体とすることが説明されている。
【0006】
つまり、この特許文献には(球体の)回転体56を作るに当って、一対の半球形の殻体62,64を抱き合せること、この抱き合せに当って両殻体62,64の円形開口端部に設ける嵌合凹部72と嵌合凸部76とを嵌め合せて球形に組立てることが記載されている。
しかし、ここにはこの様にして2つの殻体62,64を凹部72と凸部76とを嵌め合せによって合体し組合せるとの説明があるが、組合った殻体62,64同士が分離することなく結合すること、そして結合した状態に保持することについての説明がなく、実際の問題として最も重要なこれらについて全く不明なものになっている。
また、これらの特許文献には球体の表面に表示する図柄の表示形態、表示方法についても開示されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述従来の実情に鑑み、可変表示装置の主体となる回転球体を効率的に、且つ安定的に製造することに併せて、この回転球体の表面に必要な図柄を適確に表示することができる回転表示装置における回転球体を提供しようとするものである。
そして更に言えば、本発明は回転球体そのものの成形と同時に、この球体の表面に適確に図柄を表示する回転球体の提供を目的とする一方、成形される回転球体の軽量化を図って球体そのものの大型化を図りつつ小さな動力によって急速な回転始動、並びに急停止を可能にして遊技機における遊技進行に合せた敏速な回転始動,停止を実現できるようにした回転球体を提供しようとするものである。
【0008】
回転球体の成形に当っては主体となる球体を一対の半球状をなす殻体の組合によって形成することは前記特許文献1〜3について説明した通りである。そして、一対の殻体の組合せが各円形開口端部に形成する嵌合凹部と嵌合凸部との嵌め合せによって行われることも説明されていることを明らかにした。
しかし、この2つの殻体を衝き合せて球体とする構造は、円形開口端部の嵌合凹部と嵌合凸部とが正確に嵌り合って一致し、且つこの嵌り合った状態に維持されたとき球体を構成することができるもので、嵌め合せがずれると球体としての形状を保持することができない。
そのため当該構造の球体は、前記嵌合凹部と嵌合凸部の嵌め合せが確実に保持されるためにこの凹部と凸部を形成する円形開口端部、つまり開口部の端面にはこれを形成するに必要な幅、つまりは殻体に所要の肉厚が求められることになり、その結果、殻体は必然的に肉厚なものとなり、重量をもつものとなる。
【0009】
このため、前記既提案に係る2つの殻体の組合に係る球体の場合、嵌め合せを確保するため、即ち所要の肉厚を要するため、軽量化することに限界があり、小出力の動源力に対応し、しかも始動,停止を敏速に実行できる球体とすることができなかったのである。
しかし、軽量化のため、たゞ単に殻体の肉厚を薄くすることはできない。つまり、肉厚をただ単に薄くすると、殻体の開口部の端面の幅が狭くなり、この端面同士の衝き合せが困難になると同時に、剛性の低下に共って変形し易くなることから開口部端面の衝き合せが外れて球体としての形状の維持が困難になり、使用に耐えられないと言った問題が生ずる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、この様な点に鑑み、これを解決するため開発されたものである。
先ず、請求項1に係る発明は、球体を半球形の2つの殻体の衝き合せによって形成するものにあって、その一方の殻体には開口部の外周面に全周に亘って他方の殻体の開口部の肉厚に相当する環状の縮径凹部を形成し、両殻体の開口部の衝き合せに当ってその一方の殻体の上記縮径凹部に他方の殻体の開口部の内周面を突き入れて嵌合し、球体に組合せるものとしたのである。
そして、球体とした後この球体に熱収縮性合成樹脂製延伸フィルムからなる筒形の表示体を前記衝き合せにした開口部の縁に沿って被せ、これを加熱収縮して前記球体の表面に密着貼り付けることによって2つの殻体を一体に結束し、球形に固定すると共に、2つの殻体の結合を開口部を内外に重ねて結合する構造としたことによって殻体の肉厚を最小のものとすることを可能にし、これによって回転球体の軽量化に成功したのである。
【0011】
前記筒形の表示体は、前記延伸フィルムを広幅のテープ状にしたものを材料にし、外表面となる一面に予め表示する図柄を印刷等によって連続的に表示しておく。そして、その端部同志を図柄が外側になるようにして接合し、円筒状に組立てるのである。
この円筒形の表示体は、その直径を殻体の開口部の直径に略揃えて無理なく、且つ多くの間隙を設けることなく嵌め付けられるものとし、また球体の表面に表示する前記図柄を適宜の大きさに表示できる幅員を以て形成する。
【0012】
球体を形成する前記2つの殻体は、合成樹脂を材料に個別に各半球形に形成することになる。そして、それぞれは球体としたとき、球形を保持できることを限界にして、例えば120mm直径の球体においてその肉厚を0.5乃至0.6mmにすると言った薄肉に形成し、その軽量化を図ることになる。
また、一方の殻体の開口部には他方の殻体の肉厚に合せた深さの縮径凹部を外周面の全周に亘って環状に形成し、殻体相互の開口部同士を衝き合せるに当って、この縮径凹部の外側に他方の殻体の開口部の内周面を嵌め付けて内外に揃え、実質的に両開口部の衝き合せ部分が球体表面の球面に揃った平滑面となるようにする。
【0013】
上記球体を形成する2つの殻体は、それぞれ半球形をなすところの頂部、逆に言えば殻体の底部の中心部に回転支軸を一体に若しくは別体に設けて、2つの殻体から球体としたとき、この回転支軸を支点に回転自由に支持することになる。
【0014】
次に、請求項2に係る発明は、前記一方の殻体の開口部に形成する環状の縮径凹部に1若しくは複数個の係合突起部を形成し、また他方の殻体の開口部の上記係合突起部に対応する内周面に係合凹部を形成して、殻体相互の開口部の衝き合せに当って該係合突起部を係合凹部に嵌め付け位置決めすることを特徴とした回転球体を提供することにある。
【0015】
上記係合突起部と係合凹部の嵌め合せは2つの殻体の結合位置を特定し、球体を形成したとき、この球体の表面に被せる円筒形の表示体との位置ずれを防止し、回転球体を使用するとき、回転球体の停止位置と表示体に表示する図柄の位置とを一致させることができ、これによって回転球体を表示装置の表示手段としての安定した機能を発揮させることができる。
【0016】
また、請求項3に係る発明は、前記他方の殻体の開口部内周面に形成する係合凹部は内周面側から外周面側に押出し隆起させ、該外周面側に表示体に予め設ける位置合せ用基点に位置合せする突起部を形成することを特徴とした回転球体を提供することにある。
【0017】
この発明における上記殻体の表面に隆起する突起部は、円筒形をなす表示体を球体に被せるに当って、この球体と表示体との位置合せを一層容易に、且つ正確に行わしめるもので、突起部と、予め表示体に表示しておく位置合せ用基点、例えば目印となる点とを視覚的に、また触覚的に合せ易くしたものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明は上述の様に構成されることから、特に請求項1の発明にあたっては、相互に衝き合せになる2つの殻体の開口部の一方が他方の殻体の開口部の肉厚に等しい深さの分、外周面を窪ませて環状の縮径凹部として、この凹部にこの他方の殻体の開口部を嵌め付け結合する構造としたことから、2つの殻体の衝き合せにおいて、しっかり結合することになり、安定した球体を作ることができる。
そして、ここにおいては2つの殻体の一方の殻体の開口部にのみ縮径凹部を形成すれば、安定した結合状態が確保されることから、両殻体の肉厚を球体を維持することを限界に最少肉厚にすることができ、したがって回転球体全体を軽量化することができることになる。
【0019】
また、本発明は、2つの殻体の各開口部に相互に係合する係合突起部と係合凹部を形成することによって両殻体の結合位置を一定に揃えることができ、これによって形成された球体を表示装置に組入れるとき、表示装置と球体の位置合せを簡単に、且つ正確に行うことができることになる。
【0020】
また更には上記係合凹部を殻体の外側面側にまで押出して隆起した突起部とすることによって、円筒形表示体との組合せにおける位置合せ用目印とすることができることから、表示体の表面に表示した図柄を球体の予め定める位置に正確に乗せることができ、製造不良を未然に防止して正確な回転球体の成形が容易に行えることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、本発明を図示する実施の形態に基づき説明し、その特徴とするところを詳述することにする。
ここに示す実施の形態は、本発明の一例であってパチンコ遊技機の遊技盤面に組込む可変表示装置に使用する場合を示したものである。図1は回転球体の完成状態における正面図であり、図2はこの回転球体を可変表示装置に組入れた状態を説明する一部断面とした右側面図、図3は可変表示装置の中央縦断右側面図である。
【0022】
本発明に係る回転球体1は、2つの半球形をなす殻体2a,2bの組合せからなる球体2と、この球体2の表面に図柄を表示すると共に、2つの殻体2a,2bを一体に結合し球体とする筒形に形成される表示体3から構成される。
【0023】
図4乃至図11は、上記2つの殻体2a,2bを詳細に示したものである。ここでは円球となる球体2を形成するため、2つの殻体2a,2bはそれぞれ半円球形の殻体にして内部を中空にしてある。
この2つの殻体2a,2bは熱可塑性の合成樹脂を素材に形成してあり、ここでは軽量化を図るため肉薄のシート状にした素材を半円球形の凸型を利用して真空成形法によって形成するものとしている。
【0024】
この成形の実際を更に具体的に説明すると、図4は2つの殻体2a,2bを中央部で断面とした正面図である。殻体2aは全体を半円球形に形成してその頂部に当る部分、つまり、中心部を真円形の平滑面部4にしてこの中心位置に後述する回転支軸を通す透孔5を開設する。
また、この殻体2aは真円形をなす開口部6の縁を全周に亘って縮径させ、この開口部の外周面に環状の縮径凹部7を形成する。
【0025】
上記縮径凹部7は、後述する他方の殻体2bと結合して球体とするとき、この殻体2aの開口部6を嵌め付けるための連結部を構成するものであり、ここでは他方の殻体2bの開口部8を確実に嵌め付けられる深さ、つまり開口部8の縁から頂部に向けての深さを定めると共に、縮径の幅、つまり外周面からの内方への後退の幅を他方の殻体2bの肉厚に揃え、この開口部8が縮径凹部7に嵌り付いたとき、2つの殻体2a,2b相互の外表面(外周面)同士が一つに揃って段差を生じないようにしてある。
そして、上記環状の縮径凹部7には凹部の底を外方に隆起させるようにして係合突起部9を形成してある。
【0026】
係合突起部9は、他方の殻体2bと組合ったとき、2つの殻体2a,2bの係合位置を一定にするためのものである。この係合突起部9は1個でよいが、この実施形態では環状方向に不等間隔に3ケ所設けてある(図6を参照)。尚、この係合突起部9は後述するように他方の殻体2bと組合うときに相互の組合位置が常に一定となるようにするものであり、複数個とする場合においても係合突起部9が特定のものと結合して殻体相互の位置関係が狂うことがないようにしてある。
ところで、この係合突起部9は表面が弧面をなすよう肉厚の全体を外方に隆起させ、図5及び図7に示すようにその頂部が外側面を超えて突き出すようにしてある。
【0027】
他方の殻体2bは、図8及び図10に示したように開口部8の形状を除いて前記一方の
殻体2aと同一形状に形成してある。2つの殻体2a,2bが開口部6,8を衝き合せて組合ったとき、一つの円球体を完成することができるようにしてある。そして、この殻体2bはその頂部となる位置に真円形の平滑面部10を形成し、この平滑面部10の中心部に透孔11を開設して2つの殻体2a,2bを組合せ球体としたとき、この平滑面部10と平滑面部4が、また透孔11が透孔5と向い合せになるようにしてある。
【0028】
殻体2bの開口部8は、前記一方の殻体2aの開口部6に形成する縮径凹部7に密着した状態で嵌り付けるようにしてあり、またこの開口部8の縁には前記係合突起部9を受け入れ係合する3個の係合凹部12がそれぞれ対応する位置に設けてある。
この係合凹部12は開口部8の内周面を外に押し出すようにして形成し、この押し出された底部が外周面から隆起して突起部13を形成する。
【0029】
上記係合凹部12は、前述したように2つの殻体2a,2bを組合せるとき、係合突起部9を受け入れることで殻体相互の結合位置を確定し、しっかりした組合せを確保するものとなるが、これに付随して形成される前記突起部13は後述する表示体3との位置合せに利用される。
【0030】
図12は、2つの殻体2a,2bを組合せる以前の分解状態における中央縦断面図であり、図中の符号14は球体に組合せたのち、この球体を回転させるため外部からの回転力を導入するためのベベルギヤであり、15はこのベベルギヤ14に対向して回転支軸を受ける軸受体である。
ベベルギヤ14は中心部に円筒形の軸受部16を有し、内部を貫通する孔の一方の端部に回転支軸を軸承する軸受ベアリング17を備え、また内面側となる一面に前記円形の平滑面部10の形状に合せた円形の台座18を形成し、この台座18に位置決めの突起19を設けている。
【0031】
上記ベベルギヤ14は、合成樹脂によって一体成形したものであり、2つの殻体2a,2bを組合せる前に殻体2bに取付けておくことになる。
図12は、この取付けの直前の姿を示している。ベベルギヤ14は、平滑面部10に台座18を対面させ、軸受部16を透孔11に通して殻体2bに突き入れると共に、この台座18に設ける突起19を平滑面部10に穿つ小孔20に係入して位置決めし、次に殻体2bの内側から平滑面部10に穿つ小孔21を通してビス22をねじ付けることで殻体2bに固定される。
【0032】
一方、軸受体15は円盤形に形成してあり、殻体2aの平滑面部4に対して前記ベベルギヤ14と同様に一面が接面するように臨ませ、中央部に形成する筒形の軸受部23を平滑面部4の透孔5に突き通し、更にこの接面側の一面から突出する小突起24を小孔25に通して先端をかしめることで殻体2aの平滑面部4に取付けられる。
【0033】
図13は、ベベルギヤ14を固着した殻体2bと、軸受体15を固着した殻体2aを向い合せにして組合せる直前の姿を示している。この両殻体2a,2bを組合せる際に両者の間に回転支軸26を持ち込み、組込むことになる。
回転支軸26は一端に前記ベベルギヤ14の軸受部16に挿通し、軸受ベアリング17に滑合する軸端部26aを、他端に前記軸受体15の軸受部23に挿通し滑合する軸端部26bを有している。
【0034】
この回転支軸26は、殻体2a,2bに組付ける際、最初に一方の軸端部26aを軸受部16に差し入れ、軸受ベアリング17に通すと同時に、この軸端部26aに予め装着しておく軸受ベアリング27を軸受部16内に持ち込み入口部分に嵌合し、これによってこの軸受部16に貫通する上記軸端部26aを間隔を置いて配置されることになる2つの軸受ベアリング17,27によって支持することになる。
【0035】
この様にして一方の殻体2bに組込まれる回転支軸26は殻体2bの底から起立した状態となる。次に、この状態において他方の殻体2aを上記殻体2bに向い合せにすると、他方の軸端部26bが軸受体15の軸受部23に臨むことになるので、これに嵌め込むように殻体2a,2b同士を接近させると、両殻体の開口部6,8同士が衝き合うことになり、その結果軸受部23に対する軸端部26bの挿入と同時に殻体2bの開口部8が他方の殻体2aの開口部6に形成する縮径凹部7に嵌って結合し、球体2を形成することになる。
【0036】
図14は、この2つの殻体2a,2bの結合によって球体2を形成した状態を示しており、このとき一方の殻体2aの開口部6に形成する環状の縮径凹部7に他方の殻体2bの開口部8の内周面が嵌り付き、両殻体の外周面(外表面)同士が一つの面に揃って平滑な面を形成することになる。
図15は、この開口部6,8同士が結合した状態を示す拡大断面図であり、このとき縮径凹部7に形成する係合突起部9と他方の殻体2bの開口部8に形成する係合凹部12とが係合して一方の殻体が他方の殻体に対して回転しないように位置規制されることになる。
【0037】
ところで、ここで殻体2a,2bの結合によって形成される球体2は、肉厚を0.5mmにして直径120mmとする中空の球体であり、全体の重量が45gである。尚、この0.5mmの肉厚は、前記従来の殻体の組合せによって球体を形成する場合、つまり殻体の開口部の端面に嵌合のための凹凸部を形成する場合、この凹凸部をけいせいすること自体が困難であると同時に、仮に形成することが可能であってもこれを互いに嵌め合せにすることが困難であり、この結果強度的に使用に耐えられる球体を得ることがかなり困難になる。
【0038】
図16及び図17は、上記2つの殻体2a,2bの組合せによって球形に組立てられる球体2と、この球体2を球形に固定し、且つ球体の表面に所定の図柄28を表示する表示体3との組合せ関係を説明したものである。
表示体3は、加熱収縮性の合成樹脂製延伸フィルム、即ちシュリンクフィルムを素材にしたもので、前記球体2の円周に合せた長さの帯状のフィルムの一面に予め印刷等によって前記図柄28を表示しておき、この帯状のフィルム(シュリンクフィルム)を図柄28を外側にして円筒状に形成してある。
【0039】
そして、ここでは上記フィルムの幅を図示するように略球体2の直径に揃えて形成してあり、筒形にした表示体3の内部に図17に示すように前記球体2を嵌め入れるようにしている。その後、シュリンクフィルムを収縮する温度で加熱し、球体2の表面に密着させることによって両者の結合を果すようにしている。
【0040】
球体2に対しての表示体3の装着は、表示体の円周方向が球体2を形成する2つの殻体の開口部6,8の円周方向と一致するように嵌め付けることになる。そして、同時にこの表示体2の外表面に予め表わしておく位置合せ用基点29と前記係合凹部12によって形成される突起部13とを合せて両者の位置を確定し、その後加熱し、収縮させて回転球体1を形成することになる。
【0041】
図1は、この様にして形成された回転球体1の正面図である。表示体3は、加熱収縮する(実際には100℃〜150℃の温度による加熱)ことによって球体2の表面に密着する。この加熱により、表示帯3は開口部6,8同士を衝合せて球体にする2つの殻体2a,2bを近接方向に締め付け、これらを一体化して球体に拘束するのである。
尚、この表示体3は、前記球体2の軽量化に併せてここでは0.06mm厚のシュリンクフィルムを用いている。この厚みに関しては2つの殻体2a,2bを締め付ける強さを考慮して可能な限り肉薄のフィルムを選択するとよい。
またシュリンクフィルムとしては、ここではポリ塩化ビニルを選択しているが、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂等の熱収縮性フィルム、その他のフィルムであってもよい。
【0042】
次に、図2及び図3はこの様にして得られた本発明に係る回転球体1を可変表示装置Aに組込み使用する実際を示したものである。尚、これらの図面には回転球体1を回転駆動する機構部を示し、表示装置全体を示すことを省略しているが、ここにおける主たる省略部分は回転球体1を収める装置のケース部分である。各図面において装置の正面は左側になる。
【0043】
この可変表示装置Aは、回転球体1を自転運動と公転運動させる2つの系統の駆動機構を備えている。図中の符号30は公転運動のためのモータであり、31は自転運動のためのモータである。
モータ30は、出力軸のプーリ32に掛けるベルト33によって割出し板34を回転し、表示装置Aの背面部フレーム枠35を貫いて回転自由に支持される円筒状の回転軸36を回転する。
【0044】
上記回転軸36は、フレーム枠35に備える円筒形の軸受体37を貫き、フレーム枠35の前面に先端部を突き出し、この先端部に半球形をなす椀形の軸支持体38を一体に連結する。この椀形の軸支持体38は開口部の対称な位置に軸受39,39を備え、この軸受39,39に前記回転球体1の中心に通した回転支軸26の両軸端部26a,26bを軸装して回転球体1を組付けるようにしてある。
【0045】
従って、モータ30が外部から指令を受けて回転駆動すると、ベルト33,割出し板34,回転軸36を介して軸支持体38がこの回転軸36を支点に回転することになる。そして、この軸支持体38の回転に伴って回転球体1は同一方向に回転することになり、回転支軸26を垂直面に沿った方向、つまり軸部26a,26bを上下させる方向に回転させることになる。
【0046】
一方、自転用のモータ31は出力軸のプーリ40にベルト41が掛けられ、割出し板42と連結し、この割出し板42は前記回転軸36の中空部を貫く第2の回転軸43に連結し、更にこの第2の回転軸43は前方に貫いた先端部にドライブベベルギヤ44を連結する。
上記ドライブベベルギヤ44は前記軸支持体38の内側に位置し、第2の回転軸43の回転に伴って回転するようになっており、更にこの軸支持体38の内部に備えられるアイドルベベルギヤ45に噛合する。そして、このアイドルベベルギヤ45は前記回転球体1に備えたベベルギヤ14に噛合するのである。
【0047】
この結果、自転用のモータ31が駆動し、プーリ40が回転すると、ベルト41を介して割出し板42が回転して回転軸43を回転させ、更にドライブベベルギヤ44,アイドルベベルギヤ45を回転してベベルギヤ14を回転させることになり、これが一体的に止着する回転球体1を回転させることになるのである。
回転球体1は、軸受39,39によって支持された回転支軸26を支点に回転し、2つの殻体2a,2bの衝き合った開口部6,8を中心にして回転することになる。そして、その周面を軸支持体38に対し出し入れし、この周面に沿って連結して配置した図柄28を巡回させることになる。
【0048】
つまり、公転用モータ30が駆動すると、回転球体1は回転軸36の回転により軸支持体38と共にこの回転軸36を支点にして垂直面に沿った上下方向に回転することになり、また自転用のモータ31が駆動すると、第2の回転軸43が回転し、軸支持体38の内部に備えたドライブベベルギヤ44,アイドルベベルギヤ45を介してベベルギヤ14が回転して回転球体1を回転支軸26を支点にして前後方向に回転させ、その表面に表示する図柄28を軸支持体38から出し入れすることになるのである。
【0049】
尚、この自転時における回転球体1は、回転支軸26を中心にして回転することになるが、この回転球体2はベベルギヤ14からのみ回転力を受けて回転し、回転支軸26の周りを回転することになる。
つまり、ここでは回転球体1は軸受39,39に支持固定された回転支軸26に支持されているが、実際にはベベルギヤ14の円筒形の軸受部16を回転支軸26に対して回転させることによって回転するようにしてあるのである。
【0050】
前記ベアリング17,27は、この回転を円滑にするためのものであり、円筒形の軸受部16は離れた両端にこのベアリング17,27を配置することによって回転支軸26に対してブレのない安定した回転が得られるようにしてあり、そのためベアリング17,27間に所要の間隔を設けている。そして、回転球体1はこのベベルギヤ14の台座18にビス22を介して直接固定し、このベベルギヤ14だけで回転支軸26に軸承されるようにしてある。
【0051】
ところで、回転球体1をこの様に回転支軸26に対して片持ちの状態で支持する構造としたのは、回転球体1を構成する2つの殻体2a,2bを肉薄にして軽量化したことに伴って球体の強度が低下するのを補助するためである。つまり、肉薄にすることによって強度が下がることを考慮して軸受体15は回転支軸26がただ単に貫通するようにして接触を最小限にし、これによって外部からの回転力がベベルギヤ14側からだけ導入されるようにして回転球体1の球体部分に加わる捻れをなくし、強度不足から生ずる球体の歪みを解消するようにしたのである。
【0052】
本発明に係る回転球体1の使用の実際を上記可変表示装置Aに使用する場合を例に説明したが、この回転球体1はその本体となる球体2を2つの殻体2a,2bから構成すると同時に、この2つの殻体2a,2bの組合せにおいて不可欠な開口部同士の衝き合せを一方の殻体2aの開口部6の外周面に環状の縮径凹部7を形成することによってこの縮径凹部7を利用して他方の殻体2bの開口部8を嵌め付け、両者の結合を果す構造としたことから一体的な結合が得られ、しかもこの開口部6,8同士の結合は、一方の開口部6の縮径凹部7、つまり実質的にはこの一方の開口部6の外周面に他方の開口部8の内周面が被るように嵌り付くことによって達成されるものとなるため、両殻体2a,2bの肉厚を最少の肉厚に設定した場合でも安定した嵌り合せによる結合を得ることができるものとなっているのである。
【0053】
更に言えば、本発明に係る回転球体1は、2つの殻体2a,2b同士の衝き合せによる球体2の形成であっても開口部6,8の縁部端面同士を衝き合せることによって結合させることなく、両開口部6,8が内外に嵌り合い外側になる開口部8の縁が内側になる開口部6の縮径凹部7の縁に衝合して組合い結合するものとなるため、殻体の開口部には互いに衝き合せるための肉厚を必要とせず、これによって、任意の肉厚を設定することができることとしたものであり、両殻体の全体の肉厚を薄くすることを可能にし、これににって球体2の軽量化を図ることができるものとなっているのである。
【0054】
回転球体1軽量化は、前述した通りこれを回転駆動するためのモータ30,31の出力を軽減することができ、小型化を図ることが可能であり、また回転始動、及び停止を敏速に行うことを可能とすることから迅速且つ円滑な作動をなす可変表示装置を提供することができるのである。
【0055】
しかも、本発明に係る回転球体1、球体2を形成する2つの殻体2a,2bの嵌め合せに結合する開口部6,8に相互に係合し合う係合突起部9と係合凹部12を設けて一体化する構造としていることから、球体に組合った状態において位置ずれを起すことがなく強固な結合が得られると共に、更に上記係合凹部を開口部8の外周面に隆起する如くして位置合せ用の隆起部13としたとき、球体2の表面に貼り付ける表示体3との位置合せ点とすることができ、表示体3の外側面、つまり表面に表示する図柄28を球体2の正しい位置に置くことができることになる。
【0056】
つまり、球体2は予めベベルギヤ14を介してアイドルベベルギヤ45,ドライブベベルギヤ44に噛合し、割出し板42に繋っており、この割出し板42に付設される検出点(図示せず)を検出センサーで検出して回転球体1の図柄表示位置を検出し、回転停止位置を決定する構造にすることから、回転球体1とその表面に表示される図柄28の表示位置とは一定でなくてはならず、従って図柄28を表示する表示体3と球体2との位置合せは重要である。
本発明はこの位置合せを前記隆起点13と表示体2に表示する基点29との位置合せによって正確に位置決めする構造としたことから、表示体2に連続して表示した図柄29を球体2の表面に正確に配置することができ、安定した表示装置の回転球体とすることができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明に係る回転球体の正面図。
【図2】回転球体を可変表示装置に組付けた使用状態を説明する一部断面とした右側面図。
【図3】回転球体を可変表示装置に組付けた使用状態を説明する中央縦断右側面図。
【図4】球体を形成する一方の殻体の中央縦断正面図。
【図5】図4のイ部の拡大断面図。
【図6】一方の殻体の開口部側から見た底面図。
【図7】図6のロ部の拡大図。
【図8】球体を形成する他方の殻体の中央縦断正面図。
【図9】図8のハ部の拡大図。
【図10】他方の殻体の開口部側から見た底面図。
【図11】図10のニ部の拡大図。
【図12】2つの殻体を分割した状態の中央縦断正面図。
【図13】2つの殻体間に回転支軸を組込む状態を説明する分解状態における中央縦断正面図。
【図14】2つの殻体を球体に結合した状態の中央縦断正面図。
【図15】図14のホ部の拡大図。
【図16】図14のヘ部の拡大図。
【図17】球体に筒形の表示体を被せる直前の中央縦断正面図。
【図18】球体に筒形の表示体を被せた状態の中央縦断正面図。
【符号の説明】
【0058】
1 回転球体
2 球体
2a,2b 殻体
3 表示体
4,10 円形の平滑面部
5,11 透孔
6,8 殻体の開口部
7 縮径凹部
9 係合凸部
12 係合凹部
13 突起部
14 ベベルギヤ
15 軸受体
16 軸受部
17,27 ベアリング
18 台座
19,24 突起
22 ビス
23 軸受
26 回転支軸
26a,26b 軸端部
28 図柄
29 位置決め用基点
30,31 モータ
38 軸支持体
39 軸受
A 可変表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半球形の一対の殻体の開口部を衝き合せて中空の球体に組合せる一方、該球体の表面に熱収縮性合成樹脂の延伸フィルムからなる筒形の表示体を前記衝き合せた開口部に沿って被せ、これを加熱収縮して前記球体の表面に密着させることによって、前記殻体相互を結束し、固定すると同時に、該球体の表面に前記表示体の表面に施す図柄を表示するようにしてなる可変表示装置の表示用回転球体にあって、前記殻体の一方には開口部の外周面の全周に亘って他方の殻体の肉厚に相当する環状の縮径凹部を形成し、該凹部に前記他方の殻体の開口部内周面を嵌合して両殻体を組合せ、殻体相互の衝き合せ開口部外周面を平滑面に形成してなることを特徴とした回転球体。
【請求項2】
請求項1に記載の回転球体において、一方の殻体の開口部に形成する環状の縮径凹部には、1若しくは複数個の係合突起部を形成し、また他方の殻体の開口部の上記係合突起部に対応する内周面には係合凹部を形成し、殻体相互の開口部の衝き合せに当って該係合突起部を係合凹部に嵌め付け位置決めすることを特徴とした回転球体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の回転球体において、他方の殻体の開口部内周面に形成する係合凹部は内周面側から外周面側に押出し隆起させ、該外周面側に表示体に予め設ける位置合せ用基点に位置合せする突起部を形成することを特徴とした回転球体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2008−161382(P2008−161382A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−353384(P2006−353384)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000154679)株式会社平和 (1,976)
【Fターム(参考)】