可搬型作業機用のハーネス
【課題】 作業機からユーザに伝わる振動や衝撃を抑制できるハーネスを提供する。
【解決手段】 ハーネスは、作業機が取り付け可能な取付具と、保護プレートを備えている。保護プレートは、ハーネスを装着したユーザと、取付具に取り付けられた作業機との間に介在し、作業機がユーザに直接的に接触することを禁止する。保護プレートの周縁の少なくとも一部には、取付具に取り付けられた作業機に向けて突出する突出部が形成されており、当該作業機が、その突出部において保護プレートに当接する。
【解決手段】 ハーネスは、作業機が取り付け可能な取付具と、保護プレートを備えている。保護プレートは、ハーネスを装着したユーザと、取付具に取り付けられた作業機との間に介在し、作業機がユーザに直接的に接触することを禁止する。保護プレートの周縁の少なくとも一部には、取付具に取り付けられた作業機に向けて突出する突出部が形成されており、当該作業機が、その突出部において保護プレートに当接する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可搬型の作業機に用いられるハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、刈払機やブロワーといった可搬型の作業機に用いられるハーネスが開示されている。このハーネスは、バックプレートと、バックプレートから伸びる複数のベルトを備え、ユーザが装着可能な構造となっている。このハーネスは、さらに、作業機が取り付け可能な取付具と、保護プレートを備えている。ユーザは、このハーネスを装着し、その取付具に作業機を取り付けることで、作業機を楽に保持することができる。このとき、保護プレートは、ハーネスを装着したユーザと、取付具に取り付けられた作業機との間に介在する。それにより、作業機がユーザに直接的に接触することが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−143453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ユーザと作業機の間に保護プレートが介在することで、作業機からユーザに伝わる振動や衝撃がある程度は緩和される。しかしながら、ユーザと作業機の間に保護プレートを単に配置するだけでは、作業機からユーザに伝わる振動や衝撃を十分に抑制することができない。そこで、特許文献1のハーネスでは、保護プレートのユーザに面する裏面にパッドを設け、作業機からユーザに伝わる振動や衝撃を低減させている。特許文献1の構成によると、一定の効果は得られるものの、保護プレートの構造を複雑なものにしてしまう。そこで、保護プレートにパッドのような緩衝部品を付加することなく、作業機からユーザに伝わる振動や衝撃を抑制できるハーネスが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、可搬型の作業機を保持するためにユーザが装着するハーネスを提供する。このハーネスは、作業機が取り付け可能な取付具と、保護プレートを備えている。ユーザは、このハーネスを装着し、その取付具に作業機用を取り付けることで、作業機を楽に保持することができる。このとき、保護プレートは、ハーネスを装着したユーザと、取付具に取り付けられた作業機との間に介在し、作業機がユーザに直接的に接触することを禁止する。
【0006】
保護プレートには、その周縁の少なくとも一部に沿って、取付具に取り付けられた作業機に向けて突出する突出部が形成されている。この構造によると、作業機は、保護プレートの周縁に形成された突出部に当接し、保護プレートの中間部分には当接しない。一方、ユーザは、作業機とは反対側から、保護プレートの中間部分に当接する。即ち、この保護プレートでは、作業機が当接する範囲と、ユーザが当接する範囲が、互いに相違する。それにより、作業機から保護プレートを介してユーザに伝わる振動や衝撃が、顕著に緩和される。さらに、保護プレートは、作業機からの振動や衝撃に応じて受動的に撓むことができ、その振動や衝撃を吸収することができる。即ち、保護プレートは、板ばねのように機能する。この保護プレートによれば、パッドのような緩衝部品を付加することなく、作業機からユーザに伝わる振動や衝撃を抑制することができる。
【0007】
前記した突出部は、少なくとも、保護プレートの両側縁に形成されていることが好ましい。この構造によると、作業機が保護プレートの両側縁に当接することになり、その中間部においてユーザに当接する保護プレートが、作業機からの振動や衝撃に応じて、比較的に大きく撓むことができる。なお、突出部は、保護プレートの両側縁のみでなく、保護プレートの上縁及び下縁にも併せて形成してもよい。
【0008】
前記した保護プレートを正面視したときに、保護プレートの突出部が形成された周縁の少なくとも一部が、湾曲していることが好ましい。即ち、保護プレートの周縁の少なくとも一部が湾曲しており、その湾曲する範囲に前記した突出部の少なくとも一部が形成されていることが好ましい。この構成によると、保護プレートの強度を高めることができ、比較的に強い振動や衝撃も十分に吸収することができる。また、保護プレートに必要とされる強度を維持しつつ、保護プレートの板厚や重量を低減することができる。
【0009】
前記した突出部が保護プレートの両側縁に形成されている場合、その保護プレートを正面視したときに、その突出部が形成された各側縁の少なくとも下側部分が、保護プレートの中央に向けて湾曲していることが好ましい。この構造によると、保護プレートの強度を高めることができるとともに、保護プレートがユーザやその衣服に引っ掛かることが防止される。
【0010】
前記した突出部における断面形状が、保護プレートの周縁に沿って変化していることが好ましい。この構造によると、突出部が一様の断面形状を有する場合よりも、保護プレートの強度を高めることができる。
【0011】
前記した突出部は、保護プレートが屈曲する屈曲部であってもよい。その場合、その屈曲角度は、保護プレートの周縁に沿って変化していることが好ましい。この構造によると、突出部における断面形状が保護プレートの周縁に沿って変化し、保護プレートの強度を高めることができる。
【0012】
前記した突出部は、保護プレートが湾曲する湾曲部であってもよい。その場合、その曲率半径は、保護プレートの周縁に沿って変化していることが好ましい。この構造によると、突出部における断面形状が保護プレートの周縁に沿って変化し、保護プレートの強度を高めることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のハーネスによれば、作業機からユーザに伝わる振動や衝撃を、十分に抑制することができる。保護プレートにパッドような緩衝部品を必ずしも付加する必要がないので、保護プレートの構造が複雑になることがなく、その製造を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例のハーネスの斜視図。
【図2】可搬型作業機の一種である刈払機の一例を示す図。
【図3】保護プレートの正面図。
【図4】保護プレートの右側面図。
【図5】保護プレートの斜視図。
【図6】図3のVI−VI線断面図。
【図7】図3のVII−VII線断面図。
【図8】ユーザと刈払機の間に介在する保護プレートを示す断面図。
【図9】他の実施例の保護プレートを示す断面図。
【図10】他の実施例の保護プレートを示す断面図。
【図11】他の実施例の保護プレートを示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面を参照して、本発明の実施例であるハーネス10について説明する。図1は、ハーネス10の全体を示す斜視図である。ハーネス10は、図2に示す刈払機100を保持するために、ユーザが装着する装着具である。なお、図2は刈払機100の一例を示すものであり、ハーネス10の使用が図2に示す刈払機100に限定されるものではない。さらに、ハーネス10は、刈払機100に限られず、例えばブロアーといった、他の種類の可搬型の作業機にも用いることができる。
【0016】
図1に示すように、ハーネス10は、バックプレート20と、複数のベルト22L、22R、26L、26Rを備えている。バックプレート20は、ユーザ(図示省略)がハーネス10を装着した時に、ユーザの背部に配される。バックプレートは、一例ではあるが、合成樹脂材料で形成されている。
【0017】
複数のベルト22L、22R、26L、26Rは、左肩ベルト22Lと、右肩ベルト22Rと、左腰ベルト26Lと、右腰ベルト26Rを有している。左肩ベルト22Lと右肩ベルト22Rは、ユーザの左肩と右肩にそれぞれ配される。左肩ベルト22Lと右肩ベルト22Rの各々には、肩パッド24が被せられている。左腰ベルト26Lと右腰ベルト26Rは、ユーザの左腰と右腰にそれぞれ配される。各々のベルト22L、22R、26L、26Rは、合成繊維によって形成されている。各々のベルト22L、22R、26L、26Rの一端は、バックプレート20に固定されており、各々のベルト22L、22R、26L、26Rの他端には、バックル28が設けられている。バックル28は、互いに着脱可能なソケット28Lとプラグ28Rを有しており、ソケット28Lには左肩ベルト22Lと左腰ベルト26Lが固定され、プラグ28Rには右肩ベルト22Rと右腰ベルト26Rが固定されている。バックル28により、各々のベルト22L、22R、26L、26Rの他端は、ユーザの前面において互いに結合される。
【0018】
ハーネス10は、さらに、取付具30と、保護プレート40を備えている。取付具30と保護プレート40は、右腰ベルト26Rに設けられている。ユーザがハーネス10を装着すると、取付具30と保護プレート40はユーザの右大腿の外側面に配置される。なお、右腰ベルト26Rは、左腰ベルト26Lよりも長く、取付具30と保護プレート40がユーザに対して移動できるようになっている。
【0019】
取付具30は、刈払機100等の作業機を取り付けるための金具である。ここでいう金具は、金属製のものに限定されず、樹脂といった他の材料で形成されたものも含む。本実施例では、一例ではあるが、取付具30にスナップが採用されており、作業機が着脱可能となっている。図1に示すように、刈払機100にハーネス10を使用する場合は、取付具30に刈払機100の操作棹130を取り付ける。なお、図2に示すように、刈払機100では、操作棹130の前端に刈刃ユニット120が設けられており、操作棹130の後端に本体ユニット140が設けられており、操作棹130の中間にハンドル134が設けられている。ユーザは、ハーネス10を装着し、取付具30に操作棹130を取り付け、ハンドル134を把持することで、刈払機100を楽に、かつ、安定して保持することができる。
【0020】
保護プレート40は、樹脂材料で形成された板状の部材である。本実施例の保護プレート40は、一例ではあるが、高密度ポリエチレン(HDPE)で形成されており、適度な強度と可撓性(弾性)を有している。なお、保護プレート40は、他の樹脂材料や金属材料など、他の可撓性(弾性)を有する材料で形成することもできる。保護プレート40を形成する材料は、特定のものに限定されない。保護プレート40は、取付具30に取り付けられた刈払機100(又は他の可搬型作業機)と、ハーネス10を装着したユーザの間に介在し、刈払機100がユーザに直接的に接触することを防止する。それにより、刈払機100からユーザに伝わる振動や衝撃が緩和される。
【0021】
以上、ハーネス10の全体的な構成を説明した。以下では、保護プレート40の特徴的な構造について詳細に説明する。
図1に示すように、保護プレート40は、全体に亘って平坦な板材ではなく、その両側縁40a、40bに沿って、突出部44が形成されている。突出部44は、取付具30に取り付けられた刈払機100に向けて突出している。それにより、刈払機100の操作棹130は、その突出部44において保護プレート40に当接している。ここで、保護プレート40の両側縁40a、40bとは、ユーザがハーネス10を装着した時の保護プレート10の姿勢を基準として、保護プレート40の周縁のなかで水平方向の両側に位置する部分を意味する。
【0022】
図3は保護プレート40の正面図を示し、図4は保護プレート40の右側面図を示し、図5は、保護プレート40の斜視図を示している。先に説明したように、保護プレート40には、その両側縁40a、40bに沿って、突出部44が形成されている。一方、両側の突出部44の間に位置する中間部分42は、平坦部分となっている。その平坦な中間部分42には、取付具30を保持するフック形状部43が形成されている。
【0023】
図3に示すように、保護プレート40を正面視すると、保護プレート40の各側縁40a、40bは湾曲しており、その湾曲する各側縁40a、40bに、前記した突出部44が形成されている。この構造によると、直線状の周縁に突出部44を形成した場合よりも、保護プレート40の強度を高めることができる。また、保護プレート40の各側縁40a、40bの下側部分Bは、保護プレート40の中央に向けて湾曲している。この構造によると、保護プレート40がユーザやその衣服に引っ掛かることが防止される。
【0024】
図6、図7に示すように、本実施例の突出部44は、保護プレート40の側縁40a、40bを含む側縁部分が、中間部分42に対して屈曲した屈曲部となっている。ここで、図6に示す断面と、図7に示す断面の間では、突出部44の屈曲する角度C1、C2が異なっており、角度C1は角度C2よりも大きくなっている。即ち、突出部44の屈曲角度は、側縁40a、40bに沿って変化しており、その値は下方に行くほど大きくなっている。その結果、突出部44の断面形状は、側縁40a、40bに沿って連続的に変化している。この構造によると、突出部44が一様の断面形状を有する場合よりも、保護プレート40の強度を高めることができる。保護プレート40の強度を高めることで、必要な強度や可撓性(弾性)を維持しつつ、保護プレート40の板厚や重量を低減させることができる。
【0025】
また、図3に示すように、湾曲する保護プレート40の側縁40a、40bに沿うように、突出部44と中間部分42との境界に位置する屈曲線46も湾曲している。このように屈曲線46が湾曲していると、屈曲線46が直線的に伸びる場合よりも、保護プレート40の強度を高めることができる。
【0026】
図8は、ユーザ200と刈払機100の間に介在する保護プレート40を示している(断面図)。図8に示すように、刈払機100は、保護プレート40の両側縁40a、40bに形成された突出部44に当接し、保護プレート40の中間部分42には当接しない。一方、ユーザ200は、刈払機100とは反対側から、保護プレート40の中間部分42に当接する。即ち、本実施例の保護プレート40では、刈払機100が当接する範囲と、ユーザ200が当接する範囲が、互いに相違する。それにより、刈払機100から保護プレート40を介してユーザ200に伝わる振動や衝撃が、顕著に緩和される。さらに、保護プレート40は、刈払機100からの振動や衝撃に応じて受動的に撓むことで、その振動や衝撃を吸収することができることができる。即ち、保護プレート40は、刈払機100とユーザ200の間で、板ばねのように機能することができる。この保護プレート40によると、パッドのような緩衝部品を付加することなく、刈払機100からの振動や衝撃を吸収し、その振動や衝撃がユーザ200に伝わることを抑制することができる。ただし、保護プレート40には、必要に応じて、付加的にパッドのような緩衝部品を設けてもよい。この場合、上記した保護プレート40の形状と緩衝部品の両者によって、刈払機100からの振動や衝撃が吸収される。
【0027】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0028】
例えば、図9に示すように、保護プレート40の突出部44は、保護プレート40が湾曲する湾曲部であってもよい。この場合、その曲率半径Rを、各側縁40a、40bに沿って変化させることが好ましい。この構造によると、突出部44における断面形状が各側縁40a、40bに沿って変化し、保護プレート40の強度を高めることができる。また、図10に示すように、保護プレート40の全体を湾曲させてもよい。この場合、中間部分42の曲率半径R1と、突出部(側縁部分)44の曲率半径R2を、異なる値に設計することで、保護プレート40の撓みに対する強度を調整することができる。
【0029】
加えて、保護プレート40の突出部44は、保護プレート40を屈曲あるいは湾曲させたものに限られず、図11に示すように、保護プレート40の板厚を部分的に厚くすることで、突出部44を形成することもできる。さらに、突出部44は、保護プレート40に一体に成形してもよいし、別の部品を保護プレート40に取り付けて形成してもよい。さらに、突出部44は、保護プレート40の両側縁40a、40bに限られず、保護プレート40の一部又は全体に形成することができる。この場合、刈払機100が保護プレート40の中間部分42に接触することが禁止されるように、突出部44を設ける範囲を設計するとよい。
【0030】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。本明細書または図面に例示した技術は複数の目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0031】
10:ハーネス
20:バックプレート
30:取付具
40:保護プレート
40a、40b:保護プレートの側縁
44:保護プレートの突出部
100:刈払機
200:ユーザ
【技術分野】
【0001】
本発明は、可搬型の作業機に用いられるハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、刈払機やブロワーといった可搬型の作業機に用いられるハーネスが開示されている。このハーネスは、バックプレートと、バックプレートから伸びる複数のベルトを備え、ユーザが装着可能な構造となっている。このハーネスは、さらに、作業機が取り付け可能な取付具と、保護プレートを備えている。ユーザは、このハーネスを装着し、その取付具に作業機を取り付けることで、作業機を楽に保持することができる。このとき、保護プレートは、ハーネスを装着したユーザと、取付具に取り付けられた作業機との間に介在する。それにより、作業機がユーザに直接的に接触することが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−143453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ユーザと作業機の間に保護プレートが介在することで、作業機からユーザに伝わる振動や衝撃がある程度は緩和される。しかしながら、ユーザと作業機の間に保護プレートを単に配置するだけでは、作業機からユーザに伝わる振動や衝撃を十分に抑制することができない。そこで、特許文献1のハーネスでは、保護プレートのユーザに面する裏面にパッドを設け、作業機からユーザに伝わる振動や衝撃を低減させている。特許文献1の構成によると、一定の効果は得られるものの、保護プレートの構造を複雑なものにしてしまう。そこで、保護プレートにパッドのような緩衝部品を付加することなく、作業機からユーザに伝わる振動や衝撃を抑制できるハーネスが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、可搬型の作業機を保持するためにユーザが装着するハーネスを提供する。このハーネスは、作業機が取り付け可能な取付具と、保護プレートを備えている。ユーザは、このハーネスを装着し、その取付具に作業機用を取り付けることで、作業機を楽に保持することができる。このとき、保護プレートは、ハーネスを装着したユーザと、取付具に取り付けられた作業機との間に介在し、作業機がユーザに直接的に接触することを禁止する。
【0006】
保護プレートには、その周縁の少なくとも一部に沿って、取付具に取り付けられた作業機に向けて突出する突出部が形成されている。この構造によると、作業機は、保護プレートの周縁に形成された突出部に当接し、保護プレートの中間部分には当接しない。一方、ユーザは、作業機とは反対側から、保護プレートの中間部分に当接する。即ち、この保護プレートでは、作業機が当接する範囲と、ユーザが当接する範囲が、互いに相違する。それにより、作業機から保護プレートを介してユーザに伝わる振動や衝撃が、顕著に緩和される。さらに、保護プレートは、作業機からの振動や衝撃に応じて受動的に撓むことができ、その振動や衝撃を吸収することができる。即ち、保護プレートは、板ばねのように機能する。この保護プレートによれば、パッドのような緩衝部品を付加することなく、作業機からユーザに伝わる振動や衝撃を抑制することができる。
【0007】
前記した突出部は、少なくとも、保護プレートの両側縁に形成されていることが好ましい。この構造によると、作業機が保護プレートの両側縁に当接することになり、その中間部においてユーザに当接する保護プレートが、作業機からの振動や衝撃に応じて、比較的に大きく撓むことができる。なお、突出部は、保護プレートの両側縁のみでなく、保護プレートの上縁及び下縁にも併せて形成してもよい。
【0008】
前記した保護プレートを正面視したときに、保護プレートの突出部が形成された周縁の少なくとも一部が、湾曲していることが好ましい。即ち、保護プレートの周縁の少なくとも一部が湾曲しており、その湾曲する範囲に前記した突出部の少なくとも一部が形成されていることが好ましい。この構成によると、保護プレートの強度を高めることができ、比較的に強い振動や衝撃も十分に吸収することができる。また、保護プレートに必要とされる強度を維持しつつ、保護プレートの板厚や重量を低減することができる。
【0009】
前記した突出部が保護プレートの両側縁に形成されている場合、その保護プレートを正面視したときに、その突出部が形成された各側縁の少なくとも下側部分が、保護プレートの中央に向けて湾曲していることが好ましい。この構造によると、保護プレートの強度を高めることができるとともに、保護プレートがユーザやその衣服に引っ掛かることが防止される。
【0010】
前記した突出部における断面形状が、保護プレートの周縁に沿って変化していることが好ましい。この構造によると、突出部が一様の断面形状を有する場合よりも、保護プレートの強度を高めることができる。
【0011】
前記した突出部は、保護プレートが屈曲する屈曲部であってもよい。その場合、その屈曲角度は、保護プレートの周縁に沿って変化していることが好ましい。この構造によると、突出部における断面形状が保護プレートの周縁に沿って変化し、保護プレートの強度を高めることができる。
【0012】
前記した突出部は、保護プレートが湾曲する湾曲部であってもよい。その場合、その曲率半径は、保護プレートの周縁に沿って変化していることが好ましい。この構造によると、突出部における断面形状が保護プレートの周縁に沿って変化し、保護プレートの強度を高めることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のハーネスによれば、作業機からユーザに伝わる振動や衝撃を、十分に抑制することができる。保護プレートにパッドような緩衝部品を必ずしも付加する必要がないので、保護プレートの構造が複雑になることがなく、その製造を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例のハーネスの斜視図。
【図2】可搬型作業機の一種である刈払機の一例を示す図。
【図3】保護プレートの正面図。
【図4】保護プレートの右側面図。
【図5】保護プレートの斜視図。
【図6】図3のVI−VI線断面図。
【図7】図3のVII−VII線断面図。
【図8】ユーザと刈払機の間に介在する保護プレートを示す断面図。
【図9】他の実施例の保護プレートを示す断面図。
【図10】他の実施例の保護プレートを示す断面図。
【図11】他の実施例の保護プレートを示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面を参照して、本発明の実施例であるハーネス10について説明する。図1は、ハーネス10の全体を示す斜視図である。ハーネス10は、図2に示す刈払機100を保持するために、ユーザが装着する装着具である。なお、図2は刈払機100の一例を示すものであり、ハーネス10の使用が図2に示す刈払機100に限定されるものではない。さらに、ハーネス10は、刈払機100に限られず、例えばブロアーといった、他の種類の可搬型の作業機にも用いることができる。
【0016】
図1に示すように、ハーネス10は、バックプレート20と、複数のベルト22L、22R、26L、26Rを備えている。バックプレート20は、ユーザ(図示省略)がハーネス10を装着した時に、ユーザの背部に配される。バックプレートは、一例ではあるが、合成樹脂材料で形成されている。
【0017】
複数のベルト22L、22R、26L、26Rは、左肩ベルト22Lと、右肩ベルト22Rと、左腰ベルト26Lと、右腰ベルト26Rを有している。左肩ベルト22Lと右肩ベルト22Rは、ユーザの左肩と右肩にそれぞれ配される。左肩ベルト22Lと右肩ベルト22Rの各々には、肩パッド24が被せられている。左腰ベルト26Lと右腰ベルト26Rは、ユーザの左腰と右腰にそれぞれ配される。各々のベルト22L、22R、26L、26Rは、合成繊維によって形成されている。各々のベルト22L、22R、26L、26Rの一端は、バックプレート20に固定されており、各々のベルト22L、22R、26L、26Rの他端には、バックル28が設けられている。バックル28は、互いに着脱可能なソケット28Lとプラグ28Rを有しており、ソケット28Lには左肩ベルト22Lと左腰ベルト26Lが固定され、プラグ28Rには右肩ベルト22Rと右腰ベルト26Rが固定されている。バックル28により、各々のベルト22L、22R、26L、26Rの他端は、ユーザの前面において互いに結合される。
【0018】
ハーネス10は、さらに、取付具30と、保護プレート40を備えている。取付具30と保護プレート40は、右腰ベルト26Rに設けられている。ユーザがハーネス10を装着すると、取付具30と保護プレート40はユーザの右大腿の外側面に配置される。なお、右腰ベルト26Rは、左腰ベルト26Lよりも長く、取付具30と保護プレート40がユーザに対して移動できるようになっている。
【0019】
取付具30は、刈払機100等の作業機を取り付けるための金具である。ここでいう金具は、金属製のものに限定されず、樹脂といった他の材料で形成されたものも含む。本実施例では、一例ではあるが、取付具30にスナップが採用されており、作業機が着脱可能となっている。図1に示すように、刈払機100にハーネス10を使用する場合は、取付具30に刈払機100の操作棹130を取り付ける。なお、図2に示すように、刈払機100では、操作棹130の前端に刈刃ユニット120が設けられており、操作棹130の後端に本体ユニット140が設けられており、操作棹130の中間にハンドル134が設けられている。ユーザは、ハーネス10を装着し、取付具30に操作棹130を取り付け、ハンドル134を把持することで、刈払機100を楽に、かつ、安定して保持することができる。
【0020】
保護プレート40は、樹脂材料で形成された板状の部材である。本実施例の保護プレート40は、一例ではあるが、高密度ポリエチレン(HDPE)で形成されており、適度な強度と可撓性(弾性)を有している。なお、保護プレート40は、他の樹脂材料や金属材料など、他の可撓性(弾性)を有する材料で形成することもできる。保護プレート40を形成する材料は、特定のものに限定されない。保護プレート40は、取付具30に取り付けられた刈払機100(又は他の可搬型作業機)と、ハーネス10を装着したユーザの間に介在し、刈払機100がユーザに直接的に接触することを防止する。それにより、刈払機100からユーザに伝わる振動や衝撃が緩和される。
【0021】
以上、ハーネス10の全体的な構成を説明した。以下では、保護プレート40の特徴的な構造について詳細に説明する。
図1に示すように、保護プレート40は、全体に亘って平坦な板材ではなく、その両側縁40a、40bに沿って、突出部44が形成されている。突出部44は、取付具30に取り付けられた刈払機100に向けて突出している。それにより、刈払機100の操作棹130は、その突出部44において保護プレート40に当接している。ここで、保護プレート40の両側縁40a、40bとは、ユーザがハーネス10を装着した時の保護プレート10の姿勢を基準として、保護プレート40の周縁のなかで水平方向の両側に位置する部分を意味する。
【0022】
図3は保護プレート40の正面図を示し、図4は保護プレート40の右側面図を示し、図5は、保護プレート40の斜視図を示している。先に説明したように、保護プレート40には、その両側縁40a、40bに沿って、突出部44が形成されている。一方、両側の突出部44の間に位置する中間部分42は、平坦部分となっている。その平坦な中間部分42には、取付具30を保持するフック形状部43が形成されている。
【0023】
図3に示すように、保護プレート40を正面視すると、保護プレート40の各側縁40a、40bは湾曲しており、その湾曲する各側縁40a、40bに、前記した突出部44が形成されている。この構造によると、直線状の周縁に突出部44を形成した場合よりも、保護プレート40の強度を高めることができる。また、保護プレート40の各側縁40a、40bの下側部分Bは、保護プレート40の中央に向けて湾曲している。この構造によると、保護プレート40がユーザやその衣服に引っ掛かることが防止される。
【0024】
図6、図7に示すように、本実施例の突出部44は、保護プレート40の側縁40a、40bを含む側縁部分が、中間部分42に対して屈曲した屈曲部となっている。ここで、図6に示す断面と、図7に示す断面の間では、突出部44の屈曲する角度C1、C2が異なっており、角度C1は角度C2よりも大きくなっている。即ち、突出部44の屈曲角度は、側縁40a、40bに沿って変化しており、その値は下方に行くほど大きくなっている。その結果、突出部44の断面形状は、側縁40a、40bに沿って連続的に変化している。この構造によると、突出部44が一様の断面形状を有する場合よりも、保護プレート40の強度を高めることができる。保護プレート40の強度を高めることで、必要な強度や可撓性(弾性)を維持しつつ、保護プレート40の板厚や重量を低減させることができる。
【0025】
また、図3に示すように、湾曲する保護プレート40の側縁40a、40bに沿うように、突出部44と中間部分42との境界に位置する屈曲線46も湾曲している。このように屈曲線46が湾曲していると、屈曲線46が直線的に伸びる場合よりも、保護プレート40の強度を高めることができる。
【0026】
図8は、ユーザ200と刈払機100の間に介在する保護プレート40を示している(断面図)。図8に示すように、刈払機100は、保護プレート40の両側縁40a、40bに形成された突出部44に当接し、保護プレート40の中間部分42には当接しない。一方、ユーザ200は、刈払機100とは反対側から、保護プレート40の中間部分42に当接する。即ち、本実施例の保護プレート40では、刈払機100が当接する範囲と、ユーザ200が当接する範囲が、互いに相違する。それにより、刈払機100から保護プレート40を介してユーザ200に伝わる振動や衝撃が、顕著に緩和される。さらに、保護プレート40は、刈払機100からの振動や衝撃に応じて受動的に撓むことで、その振動や衝撃を吸収することができることができる。即ち、保護プレート40は、刈払機100とユーザ200の間で、板ばねのように機能することができる。この保護プレート40によると、パッドのような緩衝部品を付加することなく、刈払機100からの振動や衝撃を吸収し、その振動や衝撃がユーザ200に伝わることを抑制することができる。ただし、保護プレート40には、必要に応じて、付加的にパッドのような緩衝部品を設けてもよい。この場合、上記した保護プレート40の形状と緩衝部品の両者によって、刈払機100からの振動や衝撃が吸収される。
【0027】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0028】
例えば、図9に示すように、保護プレート40の突出部44は、保護プレート40が湾曲する湾曲部であってもよい。この場合、その曲率半径Rを、各側縁40a、40bに沿って変化させることが好ましい。この構造によると、突出部44における断面形状が各側縁40a、40bに沿って変化し、保護プレート40の強度を高めることができる。また、図10に示すように、保護プレート40の全体を湾曲させてもよい。この場合、中間部分42の曲率半径R1と、突出部(側縁部分)44の曲率半径R2を、異なる値に設計することで、保護プレート40の撓みに対する強度を調整することができる。
【0029】
加えて、保護プレート40の突出部44は、保護プレート40を屈曲あるいは湾曲させたものに限られず、図11に示すように、保護プレート40の板厚を部分的に厚くすることで、突出部44を形成することもできる。さらに、突出部44は、保護プレート40に一体に成形してもよいし、別の部品を保護プレート40に取り付けて形成してもよい。さらに、突出部44は、保護プレート40の両側縁40a、40bに限られず、保護プレート40の一部又は全体に形成することができる。この場合、刈払機100が保護プレート40の中間部分42に接触することが禁止されるように、突出部44を設ける範囲を設計するとよい。
【0030】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。本明細書または図面に例示した技術は複数の目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0031】
10:ハーネス
20:バックプレート
30:取付具
40:保護プレート
40a、40b:保護プレートの側縁
44:保護プレートの突出部
100:刈払機
200:ユーザ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可搬型の作業機を保持するためにユーザが装着するハーネスであって、
前記作業機が取り付け可能な取付具と、
前記ハーネスを装着したユーザと、前記取付具に取り付けられた作業機との間に介在する保護プレートを備え、
前記保護プレートの周縁の少なくとも一部には、前記取付具に取り付けられた作業機に向けて突出する突出部が形成されており、当該作業機が、その突出部において保護プレートに当接することを特徴とするハーネス。
【請求項2】
前記突出部は、少なくとも、前記保護プレートの両側縁に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のハーネス。
【請求項3】
前記保護プレートを正面視したときに、前記保護プレートの突出部が形成された周縁の少なくとも一部が、湾曲していることを特徴とする請求項1又は2に記載のハーネス。
【請求項4】
前記突出部は、少なくとも、前記保護プレートの両側縁に形成されており、
前記保護プレートを正面視したときに、その突出部が形成された各側縁の少なくとも下側部分が、前記保護プレートの中央に向けて湾曲している、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のハーネス。
【請求項5】
前記突出部における断面形状が、前記保護プレートの周縁に沿って変化していることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のハーネス。
【請求項6】
前記突出部は、前記保護プレートの周縁部分が中間部分に対して屈曲する屈曲部であり、その屈曲角度が保護プレートの周縁に沿って変化していることを特徴とする請求項5に記載のハーネス。
【請求項7】
前記突出部は、前記保護プレートの少なくとも周縁部分が湾曲する湾曲部であり、その曲率半径が保護プレートの周縁に沿って変化していることを特徴とする請求項5に記載のハーネス。
【請求項1】
可搬型の作業機を保持するためにユーザが装着するハーネスであって、
前記作業機が取り付け可能な取付具と、
前記ハーネスを装着したユーザと、前記取付具に取り付けられた作業機との間に介在する保護プレートを備え、
前記保護プレートの周縁の少なくとも一部には、前記取付具に取り付けられた作業機に向けて突出する突出部が形成されており、当該作業機が、その突出部において保護プレートに当接することを特徴とするハーネス。
【請求項2】
前記突出部は、少なくとも、前記保護プレートの両側縁に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のハーネス。
【請求項3】
前記保護プレートを正面視したときに、前記保護プレートの突出部が形成された周縁の少なくとも一部が、湾曲していることを特徴とする請求項1又は2に記載のハーネス。
【請求項4】
前記突出部は、少なくとも、前記保護プレートの両側縁に形成されており、
前記保護プレートを正面視したときに、その突出部が形成された各側縁の少なくとも下側部分が、前記保護プレートの中央に向けて湾曲している、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のハーネス。
【請求項5】
前記突出部における断面形状が、前記保護プレートの周縁に沿って変化していることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のハーネス。
【請求項6】
前記突出部は、前記保護プレートの周縁部分が中間部分に対して屈曲する屈曲部であり、その屈曲角度が保護プレートの周縁に沿って変化していることを特徴とする請求項5に記載のハーネス。
【請求項7】
前記突出部は、前記保護プレートの少なくとも周縁部分が湾曲する湾曲部であり、その曲率半径が保護プレートの周縁に沿って変化していることを特徴とする請求項5に記載のハーネス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−120515(P2011−120515A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280096(P2009−280096)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(000137292)株式会社マキタ (1,210)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(000137292)株式会社マキタ (1,210)
【Fターム(参考)】
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