説明

可撓性を備えた試験ケーブル

【課題】関心RF帯においてほぼRF不可視性を有し、かつ可撓性を有して、様々な試験形態にて使用することが可能であるケーブルを提供する。
【解決手段】可撓性試験ケーブルは、中心部導体(210)と、関心周波数の1/4波長の奇数倍に等しい有効電気長を有する導電性スリーブ(240)と、スリーブ(240)内に配置されて、導体の一部分とスリーブとの電気的接続を防止する誘電体スペーサと、導体の一部分をスリーブ(240)の端部の中心部内に保持する誘電体ジョイント(220)とを備える。スペーサ(230)は、剛性を備えた、又は軟性を備えた圧縮可能な誘電体材料から様々な形状にて形成され得る。誘電体ジョイントにより複数の導電性スリーブ(240)が連結され、関心周波数において電気的透過性を有する可撓性試験ケーブル(200)が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、無響電磁場試験チャンバに関し、より詳細には、そのような試験チャンバ内で電子装置を試験するために使用されるケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
無響室は、無線電話機、ページャー及びコードレス電話機等の電子装置の無線周波(RF:radio-frequency)放射を試験するために使用される。このような室は、遮蔽されたエンクロージャ、吸収材、試験下の電子装置(DUT:device under test)の固定装置及びマウント、並びにケーブルを備えている。これらの各要素は、無響室の質を高めるため、精密に設置される必要がある。また、これら各要素は、様々な環境内における多数の装置の試験を可能にするため、再使用可能、かつ再構成可能であることが望ましい。時折、この環境に人体モデル(「人体模型(phantom) 」とも称される)を追加して、人体がDUTのRF放射に与える影響を見積もる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0046557号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
無響室のエンクロージャの遮蔽、及び無響室に使用される高品質の吸収材、並びにDUTの固定装置及びマウントについて多数の研究開発が行われている。しかしながら、ケーブルに関する研究の数は非常に少なく、従って関心RF帯にてほぼRF不可視(「RF透明」とも称される)なケーブルを開発する余地が残されている。さらに、可撓性を有して、様々な試験形態にて使用することが可能であるケーブルを開発する余地も残されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、中心部導体と、第一端部および第二端部を有し、かつ関心周波数の1/4波長の奇数倍に等しい有効電気長を有する導電性スリーブであって、その第一端部が中心部導体に対して物理的かつ電気的に接続された状態で該中心部導体の一部分を包囲している、導電性スリーブと、前記導電性スリーブ内に配置されて、中心部導体の他の部分が導電性スリーブに対して物理的かつ電気的に接続されることを防止する誘電体スペーサと、前記導電性スリーブの第二端部に連結されて、中心部導体を第二端部の中心部内に配置する誘電体ジョイントとを備え、前記中心部導体は複数本のワイヤを有することを要旨とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のケーブルにおいて、前記中心部導体は同軸ケーブルを含むことを要旨とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のケーブルにおいて、前記誘電体スペーサは剛性を有する誘電体材料から形成されていることを要旨とする。
【0007】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載のケーブルにおいて、前記誘電体スペーサは圧縮可能な誘電体材料から形成されていることを要旨とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載のケーブルにおいて、前記誘電体スペーサは球状の誘電体要素を備えることを要旨とする。
【0008】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のケーブルにおいて、前記球状の誘電体要素の直径は導電性スリーブの直径よりも小さいことを要旨とする。
請求項7に記載の発明は、請求項5に記載のケーブルにおいて、前記中心部導体は誘電体スペーサ内において該スペーサの直径に沿って配置されていることを要旨とする。
【0009】
請求項8に記載の発明は、請求項5に記載のケーブルにおいて、前記誘電体スペーサは複数の球状の誘電体要素を備えることを要旨とする。
請求項9に記載の発明は、請求項1に記載のケーブルにおいて、前記誘電体スペーサは外径と内径とを有する連続した管状誘電体要素を備えることを要旨とする。
【0010】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載のケーブルにおいて、前記中心部導体は、誘電体スペーサ内において、連続した管状誘電体要素の長手方向に延びる軸線に沿って配置されていることを要旨とする。
【0011】
請求項11に記載の発明は、請求項9に記載のケーブルにおいて、前記連続した管状誘電体要素は、導電性スリーブの直径と等しい外径と、中心部導体の直径よりも大きい内径とを有することを要旨とする。
【0012】
請求項12に記載の発明は、請求項9に記載のケーブルにおいて、前記誘電体スペーサは、連続した管状誘電体要素内において、管状の空気誘電体要素を有することを要旨とする。
【0013】
請求項13に記載の発明は、請求項1に記載のケーブルにおいて、前記誘電体ジョイントは球状の誘電体要素を備えることを要旨とする。
請求項14に記載の発明は、請求項13に記載のケーブルにおいて、前記球状の誘電体要素の直径は、導電性スリーブの直径に等しいことを要旨とする。
【0014】
請求項15に記載の発明は、請求項13に記載のケーブルにおいて、前記中心部導体は、誘電体ジョイント内において、該誘電体ジョイントの直径に沿って配置されていることを要旨とする。
【0015】
請求項16に記載の発明は、請求項1に記載のケーブルにおいて、前記第一端部は、導電性を備えた套管を有することを要旨とする。
請求項17に記載の発明は、請求項16に記載のケーブルにおいて、前記第一端部は、半球状の誘電体カバーをさらに備えることを要旨とする。
【0016】
請求項18に記載の発明は、請求項1に記載のケーブルにおいて、前記導電性スリーブは円筒形状を有することを要旨とする。
請求項19に記載の発明は、請求項1に記載のケーブルにおいて、前記誘電体ジョイントは剛性を備えた誘電体材料から形成されていることを要旨とする。
【0017】
請求項20に記載の発明は、請求項1に記載のケーブルにおいて、前記誘電体ジョイントは圧縮可能な誘電体材料から形成されていることを要旨とする。
請求項21に記載の発明は、関心周波数の1/4波長の奇数倍に等しい有効電気長を有し、かつ剛性を有する第一要素と、前記第一要素の一端部に連結され、かつ可撓性を有するジョイントと、前記可撓性を有するジョイントに連結され、かつ関心周波数の1/4波長の奇数倍に等しい有効電気長を備えた、剛性を有する第二要素と、複数本のワイヤを有するとともに、前記第一要素、可撓性を有するジョイント、及び第二要素の内部に配置された線状の導体とを備え、前記第一要素は前記線状の導体に電気的に接続された一端を有することを要旨とする。
【0018】
請求項22に記載の発明は、請求項21に記載のケーブルにおいて、前記第一要素内に配置された第一誘電体スペーサと、前記第二要素内に配置された第二誘電体スペーサとをさらに備えることを要旨とする。
【0019】
請求項23に記載の発明は、請求項21に記載のケーブルにおいて、前記第一要素は導電性スリーブを備え、該導電性スリーブは、その一端部が線状の導体に対して電気的に接続されていることを要旨とする。
【0020】
請求項24に記載の発明は、請求項23に記載のケーブルにおいて、前記可撓性を有するジョイントは誘電体要素を備え、該誘電体要素は、線状の導体の一部分を導電性スリーブの中心部内に保持することを要旨とする。
【0021】
請求項25に記載の発明は、請求項21に記載のケーブルにおいて、前記中心部導体が同軸ケーブルを含むことを要旨とする。
本開示の様々な局面、特徴及び利点は、以下の図面及び「発明を実施するための形態」を詳細に考察することによって、より明らかになるであろう。
【0022】
可撓性を有する試験ケーブルは、中心部導体と、関心周波数の1/4波長の奇数倍に等しい有効電気長を有する導電性スリーブと、該導電性スリーブ内に配置されて、中心部導体の一部分が導電性スリーブに対して電気的に接続されることを防止する誘電体スペーサと、中心部導体の一部分を導電性スリーブの端部の中心部内に保持する誘電体ジョイントとを備える。導電性スリーブは、様々な断面形状を有し得る。誘電体スペーサは、剛性を備えた誘電体材料、又は圧縮可能な誘電体材料から様々な形状にて形成され得る。同様に、誘電体ジョイントもまた、剛性を備えた誘電体材料、又は圧縮可能な誘電体材料から様々な形状にて形成され得る。誘電体ジョイントを用いて複数の導電性スリーブを互いに連結することによって、関心周波数において電気的透明性を有する可撓性を備えた試験ケーブルが形成される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】好ましい実施形態による、無線周波(RF)試験環境内における可撓性試験ケーブルを示す図。
【図2】第一実施形態による、図1に示した可撓性試験ケーブルにおける剛性ケーブル部分の断面図。
【図3】第二実施形態による、図1に示した可撓性試験ケーブルにおける剛性ケーブル部分の断面図。
【図4】好ましい実施形態による、別の無線周波(RF)試験環境内における可撓性試験ケーブルを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1に、好ましい実施形態による、無線周波(RF:radio-frequency)試験環境100内における可撓性を有する試験ケーブル(以下、可撓性試験ケーブルと称する)150を示す。RF試験環境100は、模型頭部110と、模型頭部110の耳部近傍に装着された装置(DUT:device under test)190とを備える。図示されていないが、この環境のエンクロージャは遮蔽されており、また一般的なRF試験手順に従って、エンクロージャの全内側面上にピラミッド型の吸収材が配置されている。可撓性試験ケーブル150は、DUT190に対して試験中、電力、制御、又は他の試験信号を提供する。RF試験環境100に使用される試験ケーブルは、通常、無響室の外部に存在する試験技師のベンチからDUT190へと引かれる。即ち、試験ケーブルは、概して無響室の中心部に向かって引かれるため、全方向アンテナのRF放射パターンを測定する際、試験ケーブルを電気的に隠蔽する箇所が存在しない。このような全方向アンテナは、無線電話機において一般的に使用されているため、DUT190は無線電話機として図示されている。勿論、可撓性試験ケーブル150は、他の種類のDUT、及び他の種類のアンテナに使用されてもよい。
【0025】
可撓性試験ケーブル150は、少なくとも1個の剛性を備えたケーブル部分(以下、剛性ケーブル部分と称す)158を備えている。剛性ケーブル部分158は、関心周波数の1/4波長の奇数倍(1/4λ、3/4λ、等)の有効電気長を有する。可撓性を最大にするために、図示されている剛性ケーブル部分158は、1/4λの長さを有する。しかしながら、他の1/4奇数倍の波長も同様にRF不可視性を有するため、要求されるケーブル可撓性、ケーブル強度、試験環境、及び関心周波数等の要素に応じて、適宜使用され得る。
【0026】
可撓性試験ケーブル150末端の剛性ケーブル部分159は、低電磁場地点にてDUT190の筐体に接続している。可撓性試験ケーブル150の他方の末端では、剛性ケーブル部分157は、直角をなすコネクタと一体化されたスリーブ156に接続されている。コネクタ対155は、剛性の試験ケーブル上の別の一スリーブ154にスリーブ156を接続している。別の一コネクタ152は、例えば、別の剛性試験ケーブル等、別の一ケーブルに可撓性試験ケーブル150を電気的に接続している。他の試験環境に適合させる目的で、本願に示したコネクタの形状を、異なる形状にて代替してもよい。
【0027】
可撓性試験ケーブル150は、多数の問題に対処する。第一に、可撓性試験ケーブル150先端における様々なコネクタ152,155とスリーブ154,156とは、可撓性試験ケーブル150に対して強度と安定性とを付与するため、ケーブル150はDUTマウント(図示せず)に過度な負担を掛けずに、DUT190に接続し得る。第二に、試験ケーブル150は十分な可撓性を有し、それ故、様々な試験環境にて様々なDUTの種類に適用され得る。従来、DUTのサイズは異なるため、たとえ異なる全DUTが同一の関心周波数を有する場合であっても、異なるDUTは異なる試験ケーブルを必要としていた。また、従来、同一のDUTであっても、試験形態が異なる場合、異なるケーブルを必要とする場合があった。第三に、剛性ケーブル部分158は1/4波長の奇数倍の有効電気長を有するため、可撓性試験ケーブル150は、関心周波数にてほぼRF不可視である。従って、各剛性ケーブル部分158は、可撓性試験ケーブル150をDUT190から分断(decoupling)する高いインピーダンスエンドを有している。
【0028】
図2に、第一実施形態による、図1の可撓性試験ケーブル180の剛性ケーブル部分200を示す。第一実施形態では、中心部導体210は球状の誘電体スペーサ230によって包囲されている。この誘電体スペーサ230は、1/4波長の奇数倍の長さを有する閉塞スリーブ240と、中心部導体210との間において適切な間隔を提供する。
【0029】
中心部導体210は、図1に示した可撓性試験ケーブル150の装備に応じて、1本または複数本のワイヤを有し得る。一般に可撓性試験ケーブル150は、同軸ケーブルを装備するものと想定される。代替的に、中心部導体210は1本のワイヤ、又はワイヤのグループを包囲保護するワイヤ編成体を有してもよい。中心部導体210は、1/4波長の奇数倍の長さを有する閉塞スリーブ240内を貫通している。
【0030】
スリーブ240は導電性材料から形成されており、該スリーブの一つの端部において、中心部導体210を該スリーブ240に対して電気的に接続する套管225を備える。スリーブ240の他方の端部227は、開放されている。スリーブ240は1/4波長の奇数倍の長さを有するため、開放端部227は高インピーダンスを有する。従って、可撓性試験ケーブル150内のRF信号は、図1に示したDUT190から分断され得る。第一実施形態では、スリーブは、円筒形状を有し、円形の断面を有する。しかしながら、矩形、楕円形、又は六角形等の断面を有する代替的な形状のスリーブを使用してもよい。
【0031】
スリーブ240内において、中心部導体210の全長を1個以上の誘電体スペーサ230が包囲している。第一実施形態では、誘電体スペーサ230は球体として構成されており、該球体の直径は、スリーブ240の直径よりも小さい。そのため、誘電体スペーサ230の少なくとも一部分とスリーブ240の内側面との間に、空隙250が形成されている。中心部導体210は、各球体の直径部分を貫通し、誘電体スペーサ230によって電気的かつ物理的に保護される。誘電体を球状に形成することによって、スリーブ240内において中心部導体210部分はスリーブ240に対して電気的に接続されることなく、導体210にかなりの緊張が付与されることなく、湾曲かつ撓曲し得る。図示する誘電体スペーサ230は中心部導体210を連続的に包囲しているが、このような連続的包囲は全ての用途において必要でない。即ち、連続する誘電体スペーサ230間には、隙間が存在してもよい。誘電体スペーサ230の代替的な形状には、卵形、及び円盤形がある。誘電体スペーサは、剛性を備えた誘電体材料、又はオープンセルフォーム等の軟性を備えた圧縮可能な誘電体材料から形成され得る。
【0032】
スリーブ240の開放端部227の近傍に誘電体ジョイント220が配置されている。ジョイント220は、中心部導体210の位置を閉塞スリーブ240の開放端部227の中心部内に保持する。図示する誘電体ジョイント220は球状である。この形状は、中心部導体210に過度の緊張を付与せずに、剛性ケーブル部分158の互いに関する移動範囲(図1)を増大し得る。誘電体ジョイント220の代替的な形状には、剛性を備えた誘電体材料、又は圧縮可能な誘電体材料から形成される半球形、卵形、円盤形がある。剛性ケーブル部分159(図1)上の誘電体ジョイントは、DUT190(図1)への電気的接続に適合させるため特注され得る。
【0033】
更なる強度を付与する目的で、套管225上に半球状の誘電体カバー226が設けられる。誘電体カバー226は、剛性を備えた誘電体材料、又は圧縮可能な誘電体材料から形成され、卵形、矩形等の他の形状を有し得る。カバー226は、剛性ケーブル部分間の可撓性、又は強度を低下させ得ることを原因として削除されてもよい。
【0034】
球状の誘電体スペーサ230と球状の誘電体ジョイント220とを組み合わせることによって、試験ケーブル150(図1)全長に対して可撓性が付与される。試験環境に応じて、可撓性試験ケーブル150(図1)はDUTマウント、固定装置、模型頭部、及び試験環境内の他の要素の、上部、周囲、又は下部に配置され得る。さらに、試験ケーブル150の可撓性と強度は、該試験ケーブルが多数のDUT用に、および多数の試験環境にて再使用されることを可能にする。
【0035】
図3に、第二実施形態による、図1の可撓性試験ケーブル180の剛性ケーブル部分300を示す。第二実施形態では、中心部導体310は連続する誘電体チューブの形態を備えた誘電体スペーサ330によって包囲されている。この誘電体スペーサ330は、1/4波長の奇数倍の長さを有する閉塞スリーブ340内に配置されている。第二実施形態では、スリーブは、円筒形状を有し、円形の断面を有する。しかしながら、矩形、楕円形、六角形等の断面を有する代替的な形状のスリーブを使用してもよい。
【0036】
中心部導体310は、図1に示した可撓性試験ケーブル150の装備に応じて、1本または複数本のワイヤを有し得る。一般に、可撓性試験ケーブル150は、同軸ケーブルを装備するものと想定される。代替的に、中心部導体310は1本のワイヤ、又はワイヤのグループを包囲保護するワイヤ編成体を有してもよい。中心部導体310は、1/4波長の奇数倍の長さ有する閉塞スリーブ340内を貫通している。
【0037】
スリーブ340は、導電性材料から形成されており、該スリーブの一つの端部において、中心部導体310をスリーブ340に対して電気的に接続する套管325を備える。スリーブ340の他方の端部327は、開放されている。スリーブ340は1/4波長の奇数倍の長さを有するため、開放端部327は高インピーダンスを有する。従って、可撓性試験ケーブル150内のRF信号は、図1に示したDUT190から分断され得る。
【0038】
スリーブ340内において、中心部導体310の全長を1個以上の誘電体スペーサ330が包囲している。中心部導体310は、誘電体スペーサ330の長手方向に延びる軸線に沿って、緩慢に配置されている。第二実施形態では、一つの誘電体スペーサ330は、スリーブ340の内側面と接触する外周面を有する連続した誘電体チューブとして構成されており、その内径は中心部導体310の直径よりも大きい。そのため、誘電体スペーサ330の少なくとも一部分と中心部導体310との間に、空隙350が形成されている。誘電体チューブ構造と管状の空気による空隙とによって、中心部導体310部分は、スリーブ340内において該スリーブ340に対して電気的に接続せず、導体310にかなりの緊張が付与されることなく、湾曲かつ撓曲し得る。図示する誘電体スペーサ330は中心部導体310を連続的に包囲しているが、このような連続的包囲は全ての用途において必要でない。即ち、誘電体スペーサ330は、スリーブ340の長さを有する1個のチューブから構成されてもよく、又は連続する(が、必ずしも接触していない)数個のチューブから構成されてもよい。誘電体スペーサ330は、剛性を備えた誘電体材料、又はオープンセルフォーム等の軟性を備えた圧縮可能な誘電体材料から形成され得る。
【0039】
スリーブ340の開放端部327の近傍に誘電体ジョイント320が配置されている。ジョイント320は、中心部導体310の位置を閉塞スリーブ340の開放端部327の中心部内に保持する。図示する誘電体ジョイント320は球状である。この形状は、中心部導体310に過度の緊張を付与せずに、剛性ケーブル部分158の互いに関する移動範囲(図1)を増大し得る。誘電体ジョイント320の代替的な形状には、剛性を備えた誘電体材料、又は圧縮可能な誘電体材料から形成される半球形、卵形、円盤形がある。剛性ケーブル部分159(図1)上の誘電体ジョイントは、DUT190(図1)への電気的接続に適合させるため特注され得る。
【0040】
第二実施形態では、套管325上に誘電体カバーが図示されていないことに留意されたい。誘電体カバーが存在しない場合、中心部導体310の緊張が増大する危険がある。可撓性試験ケーブルの用途により、このような危険性は許容され得る。
【0041】
図4に、好ましい実施形態による、別の無線周波(RF)試験環境400内における可撓性試験ケーブル450を示す。RF試験環境400は、支持体480上に塔載された模型頭部410と、模型頭部410の耳部近傍に装着された装置(DUT)490とを備える。DUT490は支持体480上に配置されているため、試験中、DUT490に電力、制御、又は任意の他の試験信号を提供するため、剛性の試験ケーブル460が可撓性試験ケーブル450と組み合わせて使用される。図示されていないが、この環境のエンクロージャは遮蔽されており、また一般的なRF試験手順に従って、エンクロージャの全内側面上にピラミッド型の吸収材が配置されている。RF試験環境400内で使用される試験ケーブルは、通常、無響室の外部に存在する試験技師のベンチからDUT490へと引かれる。即ち、試験ケーブルは、概して無響室の中心部に向かって引かれるため、全方向アンテナのRF放射パターンを測定する際、試験ケーブルを電気的に隠蔽する箇所が存在しない。このような全方向アンテナは、無線電話機において一般的に使用されているため、DUT490は無線電話機として図示されている。勿論、可撓性試験ケーブル450は、他の種類のDUT、及び他の種類のアンテナに使用されてもよい。
【0042】
剛性試験ケーブル460は、関心周波数の1/4波長の奇数倍(1/4λ、3/4λ、等)の長さを有し、可撓性試験ケーブル450から剛性試験ケーブル460を分断する。従って、(製造が比較的容易で、コストが低い)剛性試験ケーブル460と、可撓性試験ケーブル450とを組み合わせることによって、様々な試験環境内において関心周波数にてほぼ不可視性を有するケーブルが提供される。
【0043】
可撓性試験ケーブルは、異なった模型が開発されても、異なる支持体が使用されても、またDUTが変更されても、多数の異なる試験環境内にて再使用され得る。可撓性試験ケーブルと剛性試験ケーブルとを組み合わせることにより、理想的なコストで更に多数の試験環境を使用することが可能となる。
【0044】
様々な誘電体スペーサと、空気空隙と、誘電体ジョイントとは、中心部導体が許容可能な緊張を付与された状態下で、可撓性試験ケーブルを操作することを可能にする。また、導電性スリーブと、誘電体スペーサと、誘電体ジョイントとは、可撓性試験ケーブルの操作中、及び操作後、可撓性試験ケーブルにおける剛性ケーブル部分の電気的閉塞構造を維持する。
【0045】
本開示は、本発明者が所持する形態にて、また当業者が本発明を利用し得る形態にて、本発明の好ましい実施形態及び最良のモードとして目下の所考慮される物を含んでいるが、本願に開示された好ましい実施形態の多数の等価物が存在し、本発明の範囲及び趣旨を逸脱せずに変更と改良とをなし得ることを理解されよう。これら変更と改良とは、好ましい実施形態によって限定されるべきではなく、本出願の係属中になされた全ての補正、及び開示された特許請求の範囲の全等価物とを含む、添付の特許請求の範囲により限定されるべきである。
【0046】
第一と第二、及び頂部と底部等、関連する用語が存在する場合、これらの用語は、必ずしも総体、部品、又は作用間の任意の実際的な関連性を要求、または示唆するものではなく、総体、部品、又は作用を単に他から区別するために使用される。
【符号の説明】
【0047】
210…中心部導体、240…導電性スリーブ、230…誘電体スペーサ、220…誘電体ジョイント、225…套管、226…誘電体カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心部導体と、
第一端部および第二端部を有し、かつ関心周波数の1/4波長の奇数倍に等しい有効電気長を有する導電性スリーブであって、前記第一端部が前記中心部導体に対して物理的かつ電気的に接続された状態で該中心部導体の一部分を包囲している、導電性スリーブと、
前記導電性スリーブ内に配置されて、前記中心部導体の他の部分が前記導電性スリーブに対して物理的かつ電気的に接続されることを防止する誘電体スペーサと、
前記導電性スリーブの第二端部に連結されて、前記中心部導体を前記第二端部の中心部内に配置する誘電体ジョイントとを備え、
前記中心部導体は複数本のワイヤを有する、ケーブル。
【請求項2】
前記中心部導体は同軸ケーブルを含む、請求項1に記載のケーブル。
【請求項3】
前記誘電体スペーサは剛性を有する誘電体材料から形成されている、請求項1に記載のケーブル。
【請求項4】
前記誘電体スペーサは圧縮可能な誘電体材料から形成されている、請求項1に記載のケーブル。
【請求項5】
前記誘電体スペーサは球状の誘電体要素を備える、請求項1に記載のケーブル。
【請求項6】
前記球状の誘電体要素の直径は、前記導電性スリーブの直径よりも小さい請求項5に記載のケーブル。
【請求項7】
前記中心部導体は、前記誘電体スペーサ内において、該誘電体スペーサの直径に沿って配置されている請求項5に記載のケーブル。
【請求項8】
前記誘電体スペーサは複数の前記球状の誘電体要素を備える、請求項5に記載のケーブル。
【請求項9】
前記誘電体スペーサは、外径と内径とを有する連続した管状誘電体要素を備える請求項1に記載のケーブル。
【請求項10】
前記中心部導体は、誘電体スペーサ内において、前記連続した管状誘電体要素の長手方向に延びる軸線に沿って配置されている請求項9に記載のケーブル。
【請求項11】
前記連続した管状誘電体要素は、前記導電性スリーブの直径と等しい外径と、中心部導体の直径よりも大きい内径とを有する請求項9に記載のケーブル。
【請求項12】
前記誘電体スペーサは、前記連続した管状誘電体要素内において、管状の空気誘電体要素を有する請求項9に記載のケーブル。
【請求項13】
前記誘電体ジョイントは球状の誘電体要素を備える、請求項1に記載のケーブル。
【請求項14】
前記球状の誘電体要素の直径は、前記導電性スリーブの直径に等しい請求項13に記載のケーブル。
【請求項15】
前記中心部導体は、前記誘電体ジョイント内において、該誘電体ジョイントの直径に沿って配置されている請求項13に記載のケーブル。
【請求項16】
前記第一端部は、導電性を備えた套管を有する請求項1に記載のケーブル。
【請求項17】
前記第一端部は、半球状の誘電体カバーをさらに備える請求項16に記載のケーブル。
【請求項18】
前記導電性スリーブは円筒形状を有する請求項1に記載のケーブル。
【請求項19】
前記誘電体ジョイントは剛性を備えた誘電体材料から形成されている、請求項1に記載のケーブル。
【請求項20】
前記誘電体ジョイントは圧縮可能な誘電体材料から形成されている、請求項1に記載のケーブル。
【請求項21】
関心周波数の1/4波長の奇数倍に等しい有効電気長を有し、かつ剛性を有する第一要素と、
前記第一要素の一端部に連結され、かつ可撓性を有するジョイントと、
前記可撓性を有するジョイントに連結され、かつ関心周波数の1/4波長の奇数倍に等しい有効電気長を備えた、剛性を有する第二要素と、
複数本のワイヤを有するとともに、前記第一要素、可撓性を有するジョイント、及び第二要素の内部に配置された線状の導体とを備え、
前記第一要素は前記線状の導体に電気的に接続された一端を有するケーブル。
【請求項22】
前記第一要素内に配置された第一誘電体スペーサと、
前記第二要素内に配置された第二誘電体スペーサとをさらに備える請求項21に記載のケーブル。
【請求項23】
前記第一要素は導電性スリーブを備え、前記導電性スリーブは、前記線状の導体に対して電気的に接続されている請求項21に記載のケーブル。
【請求項24】
前記可撓性を有するジョイントは誘電体要素を備え、前記誘電体要素は、前記線状の導体の一部分を前記導電性スリーブの中心部内に保持する請求項23に記載のケーブル。
【請求項25】
前記線状の導体は同軸ケーブルを含む、請求項21に記載のケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−199245(P2012−199245A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−122935(P2012−122935)
【出願日】平成24年5月30日(2012.5.30)
【分割の表示】特願2005−78935(P2005−78935)の分割
【原出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【出願人】(510284071)モトローラ モビリティ エルエルシー (50)
【氏名又は名称原語表記】MOTOROLA MOBILITY LLC
【Fターム(参考)】