説明

可撓性ワクチンアセンブリおよびワクチン送達プラットフォーム

本明細書には、再アセンブリされたウイルス様粒子(VLP)で作られたワクチンを作製するための種々の方法を記載される。第一に、VLPは、キャプシドに包まれた中間体集団に分解される。各キャプシドに包まれた中間体集団は、別個の集団を形成するために、例えば、特有のペプチド部分または核酸部分の化学結合を受ける。その後、予め決定された各々の量の、異なる集団由来のいくつか(1つ以上)の異なるキャプシドに包まれた中間体が混合され、そして結合され、異なるキャプシドに包まれた中間体から構成される、核酸コアを囲むインタクトなVLPを形成する。その結果、再アセンブリされたVLPは、1つより多いペプチドまたは核酸を提示する。核酸は、真核生物細胞において、足場単独として機能し得るか、または免疫調節タンパク質の発現について操作され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米国政府の支持により、National Institute of Standards and Technologyによって与えられた共同協定番号70NANB2H3048の元でなされた。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、1つ以上のサブユニットから構成される、再アセンブリされたウイルスを含む、新規なワクチンプラットフォームに関し、各サブユニットは、遺伝融合またはインビトロ結合体化によって付加された、異なるペプチド部分または核酸部分を含み、その結果、各サブユニットは、標的治療剤を組み込む。本発明は、さらに、RNA分子を、真核生物細胞中での送達および発現のためにインビトロでアセンブルするための方法に関する。特に、本発明は、真核生物細胞における送達および発現のために、RNA分子をパッケージングするために必要な、タンパク質、分子、および核酸配列を提供する。本発明のパッケージされたRNA分子は、広範な真核生物細胞への送達が可能である。パッケージされたRNA分子はまた、特定の真核生物細胞に標的化され得る。本発明は、さらに、上記再アセンブリされたウイルスまたはウイルス様粒子(VLP)、RNAワクチンが、このウイルスまたはVLP構造へのペプチド融合物と、RNAのコードされたタンパク質との相乗作用によって、細胞免疫もしくは体液免疫のいずれか、または両方を同時に誘導するために使用される、送達プラットフォームを包含する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
現在まで、ほとんどの従来のワクチンは、生存し弱毒化されたか、または不活性化された、病原体調製物全体を含んだ。これらの種類のワクチンの作製は、長期間の集中的な基礎研究および開発に対する必要性によって、制限されている。生存し弱毒化されたかまたは不活性化されたワクチンのための、信頼性のある製造技術および大規模化技術は、急に開発することがほとんど不可能である。従って、安全であり、強力であり、かつ広範に有用な、予期されない感染症の脅威に対するワクチンの製造に適切な技術の開発に対する必要性が存在する。植物ウイルス病原体キメラから開発されるワクチンは、多数の既知または出現する疾患の脅威を予防または処置するために使用され得るワクチンを、素早く生成する方法を提供し得る。
【0004】
病原体および腫瘍細胞に対する免疫応答を制御することは、数十年間の間、免疫学、細胞生物学、および薬学的開発の焦点であった。免疫細胞の複雑さならびに病原体チャレンジに応答するサイトカイン発現のパターンおよび効果、ならびにワクチン投与について、多くのことが知られている。この研究の1つの主要な局面は、免疫応答の2つの主要な部門(主として細胞性であるTh1応答、および優勢に体液性であるTh2応答)の同定であった。これらの2つの型の免疫応答は、外来の抗原が免疫系にどのように提示されるか、発現細胞によってどのサイトカインが発現されるか、およびどの型の免疫細胞が活性化されるかに応じて、開始される。Th1応答は、細胞傷害性免疫細胞機能、およびTh2応答において観察されるものとは異なるサブタイプの中和抗体の産生を生じる。一方で、いくつかの病原体は、Th2応答に感受性であり得、Th1応答は、病原体と腫瘍細胞との両方に対する効果的な応答を開始するために重要である。しかし、病原体と腫瘍細胞との両方が、免疫監視を回避し、Th1免疫に必須である機構を迂回するためのストラテジーを発達させた。
【0005】
ワクチン開発における主要な目的は、宿主へのワクチン投与の際に、Th2体液応答に加えて、Th1型の免疫を方向付けることである。弱毒化ウシポックスウイルスを使用することによって、Jennerは、気づかずに、Th1経路の強力な活性化を利用して、天然痘感染を予防した。彼の時代以来、ほとんどの病原体ワクチンは、殺傷または弱毒化され、このことは、一般に、病原体の罹病率およびウイルスの拡散の制御の、良好な成功を示した。しかし、最近のワクチン開発の2つの局面が、生ウイルスワクチンまたは弱毒化ウイルスワクチンに対する増殖の問題をもたらした。ヒト免疫不全ウイルス(HIV)を処置するための、弱毒化ウイルスまたは殺傷されたウイルスの使用は、いくつかの理由により、実用的ではない。職業上の安全性の問題、弱毒化ウイルスの低い収量、およびウイルスの変異または漏出の脅威が、ワクチン開発と公共の受容との両方に対する、重大な欠点である。他の場合において、麻疹ウイルスおよびRSウイルス(RSV)において観察されるように、予測不可能かつ重大な有害な事象が、ウイルス免疫全体に付随する。従って、多くの研究は、防御免疫に応答して宿主免疫によって一般的に標的化される、病原体のタンパク質またはペプチドからなる、「サブユニット」ワクチンに焦点を当てた(Vaccines,第3版、1999,PlotkinおよびOrenstein,Philadelphia PA,Saunders Co)。不運なことに、タンパク質サブユニットワクチンは、単独では強力なTh1応答をしばしばは惹起せず、そしてDNAサブユニットワクチンは、しばしば、抗体を惹起しない。ほとんどの場合において、抗体とCTL応答との両方が、病因または疾患の進行の制御において、必要である。
【0006】
2つの新たな型のワクチンが、現在のサブユニットワクチンの欠点を克服するために、作製された。非病原性ウイルスが、病原体の免疫原性サブユニットタンパク質をコードするように、遺伝的に改変され、これによって、ウイルス抗原提示に対して、Th1免疫応答を利用する。強力なTh1型免疫応答が、アデノウイルス、ワクシニア、鶏痘およびアルファウイルスの送達系を使用して、多くの病原体および自己抗原に対して実証された(WaltherおよびStein.2000 Drugs 60,249)。しかし、これらの「第一世代」のウイルス送達系は、ベクター免疫原性に起因する問題に遭遇し、これは、ブースター免疫におけるこれらの引き続く使用を予測した。ウイルスプライミングに続いてタンパク質またはDNAによるブースティングのいずれかは、成功したが、このアプローチは、単一のワクチンに対して少なくとも2つの薬剤の製造を必要とする。これらのワクチンのための、DNAおよび/またはタンパク質の大規模な製造は、技術的問題と財政上の問題との両方に遭遇している。
【0007】
第二のストラテジーは、ウイルスコートタンパク質の、ウイルス様粒子(VLP)への自己アセンブリを利用し、これは、単独で、強力なTh1抗原応答を刺激する(SchillerおよびLowy.2001 Expert Opin Biol Ther.1,571)。アレイ状のウイルスコートからアセンブリされるVLPは、中和抗体および細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答の両方を刺激する際に有効であることが示された。ウイルスコートタンパク質はまた、外部の溶媒に曝露された残基への融合(通常、遺伝融合による)を介する、抗原の効果的なキャリアである(Pogueら、2002 Ann Rev Phyto Path 40,3;Da Silva.1999 Curr Opin Mol Ther 1,82)。有望であるが、VLP技術もまた、欠点を有する。製造がまた制限され、そしてしばしば、コートへの異種抗原の融合が、VLPの収量、溶解度を低下させ、または自己アセンブリを防止する。さらに、免疫クリアランス(ウイルスブースティング全体を制限する同じ機構)もまた、VLPの使用を制限する。明らかに、ワクチン送達のためのウイルス全体およびVLP技術の両方の制限を克服する、費用効果的なウイルスコート抗原送達系に対する必要性が存在する。この系の特性は、ウイルス様抗原提示を免疫系に、病原性なしに提示することを介して、Th1応答をブースティングすること、抗原が融合するVLP骨格を回転させる可撓性、免疫原性の発生および制御、高い収率および低い費用の、全ての利点を含む。
【0008】
本出願人および他の人は、植物ウイルス由来のコートタンパク質が、哺乳動物ウイルスコートの全ての免疫学的提示特性を有するが、病原性がないことを示した。多数のポジティブ(+)鎖RNA植物ウイルス(タバコモザイクウイルス(TMV)(tobamovirus科の型メンバー)を含む)が、インビトロでクローニングされ、そして操作されて、植物において異種遺伝子産物を発現し、そしてそのビリオン表面において、生物学的に重要なペプチドを提示した。TMVビリオンの独特の特性は、それらが解離してモノマーを形成し、そしてRNA足場を使用して、VLPに自己アセンブリする能力である。外来エピトープを提示するように操作された植物コートタンパク質(TMVを含む)は、自己抗原(Savelyeva N 2001 Nat Biotechnol 19 760)と種々の病原体(Pogueら、2002 Ann Rev Phyto Path 40,3)との両方に対する機能的免疫を促進することが示された。
【0009】
ウイルスゲノムRNA分子の、感染性粒子へのキャプシド化のために必須のものは、アセンブリ起点(OAS)と称される配列エレメントの存在である。TMV OASは、ウイルスゲノムの3’末端から約1Kbに位置し、そして3つのヘアピンステム−ループ構造を形成すると予測される、440のヌクレオチド配列からなる(TurnerおよびButler,1986)。ウイルスコートタンパク質ディスクは、最初、ウイルスアセンブリの間、ループ1に結合する。成熟アセンブリ起点転写体を使用するインビトロでのパッケージングアッセイは、ループ1を必須に含み、そして外来RNA配列またはウイルスRNA配列のキャプシド化のために十分な、75ヌクレオチドを規定した(Turnerら,1988)。インビトロでの再構築の研究は、感染した植物細胞由来のビリオン由来から得られた精製されたコートタンパク質がの調製、TMV RNAとpH7.0で螺旋構造にアセンブルされ得、RNAを含むTMV様ウイルス粒子のアセンブリを生じることを示した(Fraenkel−ConratおよびWilliams,1955)。さらに、OAS配列を含み、SP6またはT7 RNAポリメラーゼを使用してインビトロで転写された外来キメラRNA分子は、インビトロで偽ウイルス粒子にアセンブルされ得ることを示した(Sleatら、1986)。
【0010】
キャプシド化を受けやすいウイルスコートタンパク質のクローニングおよび配列決定は、これらの遺伝子の、例えば、E.coliにおける、細菌発現ベクターへの挿入をもたらした(Shireら、1990)。しかし、組み換えE.coliウイルスコートタンパク質とのインビトロでのアセンブリは、植物において産生されるネイティブのコートタンパク質と比較して、減少した再構築率を生じる(Shireら、1990)。米国特許第5,443,969号は、E.coliにおけるこの欠損を、TMV−OASを含むRNA配列を、インビトロではなくインビトロで、E.coliにパッケージングすることによって、克服することを試みる。しかし、このキャプシドで包まれたウイルスベクターを、植物以外の宿主に導入することは、問題である。TMVコートタンパク質の、E.coliにおけるアセチル化の欠乏は、キャップされないRNAの、効率の低いキャプシド化を生じる。これらのRNAは、キャップ構造の欠乏に起因して、真核生物細胞において、乏しく翻訳される。さらに、E.coliにおける組換えTMV産物の収量は、非常に乏しく、そして商業的に実施可能ではない。
【0011】
治療の目的で、既存の異常性を補正すること、または新たな機能を有する細胞を提供することのいずれかによる、遺伝物質の細胞内送達のプロセスは、遺伝子療法(DrewおよびMartin,1999)およびDNA免疫の基礎である。実際的にいえば、核酸免疫技術は、新たな病原体に対する魅力的な前線防御を提示する:おそらく、迅速に応答するサブユニットワクチンのストラテジーにおける前線に匹敵し得る他の系は、存在しない。しかし、従来のDNAワクチンは、多数の重大な欠点に悩まされ、このことは、この技術単独に対する信頼を分別のないものにする。最も重大なことには、効果的な免疫応答を刺激するために必要とされるDNAの用量が非常に高く、大規模な免疫のために十分な量の製造が問題となることを暗に示す。DNAワクチンおよびRNAワクチンは、一般に、良好なTh1型細胞傷害性T細胞応答を促進し得、このことは、非細胞障害性病原体の排除のために必須である。しかし、いくつか例外があるが、DNAワクチンによって誘導される抗体応答は、乏しい。従って、核酸ワクチンは、産生が非常に迅速であり得るという予測からは魅力的であるが、理想的には、最初のDNAワクチン接種またはRNAワクチン接種には、好ましくはタンパク質でのブースターワクチン接種が続き、効率的な抗体産生、および病原体チャレンジに対するより完全な保護を誘導するべきである。本発明は、新規かつ可撓性のあるワクチン送達プラットフォームを導入することによって、上記で生じた問題に取り組む。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の開示)
本発明は、現在のVLP技術の制限に取り組むが、首尾よいVLP抗原足場のポジティブな特性の全てを保持する、いくつかの独特の解決法を含む。本出願人は、VLPワクチンを、適合可能な、予測可能な、安定な、そして規模の調節が可能な様式で作製するための方法を提供する。この研究は、非常に革新的であり、そして開発が継続中である。この方法は、多価ワクチンを作製する工程を包含し、ここで、異なるワクチンタンパク質部分が、単一のVLP構造の表面に融合され、多機能効果(免疫ペプチド(保護免疫を刺激するタンパク質エレメント)および宿主免疫応答を調節するか、または免疫細胞の効率的な認識もしくはプロセシングを容易にするかのいずれかのペプチドのアベイラビリティ)を与える。提唱されるワクチンはまた、二機能性であり、ここで、VLPのタンパク質エレメントは、ペプチド融合または一連の融合ありまたはなしで、改変されたRNA部分をキャプシドで包む。改変されたRNAは、目的のmRNAを運び得、次いで、その保護されたRNAは、核酸内容物を、タンパク質と一緒に、そのワクチンを取り込む免疫細胞に運ぶために使用され得る。RNA構築物は、相乗的に働いて、インタクトな病原体または癌抗原(宿主の免疫応答を刺激するタンパク質、またはワクチンに対するTh1型もしくはTh2型の免疫応答のいずれかを調節するタンパク質)のいずれかをコードすることによって、強力な、持続性の免疫応答を生じる。この方法は、強力な産生可能性、改善された細胞取り込み、およびマルチエピトープ価を有することによって、他のVLPに付随する問題を軽減する。構造的に類似であるが免疫学的には異なるVLPキャリアを選択することによって、他のVLPシステムにおいては働かないことが示されたプライム−ブーストストラテジーのために、コート骨格の回転を可能にする。
【0013】
二機能性RNAによるワクチン接種が、いくつかの異なる利点を有するDNAワクチン接種の代替法である。第1の例において、RNAベースのワクチンは、ゲノムに組み込まれもし得ないしゲノムを変形(transform)させ得ないため、腫瘍形成を引き起こし得ることがほとんど考慮されない。第2に、安全な自己増幅ワクチンベクターとしてRNAウイルス(例えば、アルファウイルス)由来のRNAワクチンが送達され得る良好な証拠が存在する。アルファウイルスレプリコンは細胞に対して細胞溶解性であり、従って、RNAワクチンの複製は、本来一時的であり、自己排除される。アルファウイルスレコート「レプリコン」ワクチンは、産生される抗原量の増加およびウイルスdsRNA複製中間体の細胞内蓄積により誘導される炎症性サイトカインの産生量の増加の両方を伴う、強力な免疫応答(抗体応答および細胞媒介応答の両方)を引き起こす。これらの特徴は、効果的な免疫応答の誘導に必要とされる複製RNAの用量が、DNA免疫により必要とされる用量よりも低いオーダーであることを示す。しかし、裸のRNAワクチンに不随する主要な欠点は、すでに知れ渡っている核酸の不安定な性質であり;これは、多量免疫のためのRNAワクチンの増幅を大きく制限している。
【0014】
アルファウイルスレプリコンワクチンは、現在、インビボで転写され、アルファウイルス様粒子(レプリコン粒子)中にパッケージングされた裸のRNAとしてか、またはサイトメガロウイルス最初期プロモーター(CMVプロモーター)により駆動される感染性cDNAを含むプラスミドとして送達される。レプリコン粒子は、レプリコンRNAを細胞中に送達するためのビヒクルとして非常に有効であるが、生成は複雑、不十分、かつ不安定である。従って、アルファウイルスベースのRNAワクチンを分解から保護するための、効果的なパッケージングおよびRNA安定化技術が必要とされる。2つの信頼できる選択肢が存在する:(1)感染性cDNAプラスミドとして組み換えアルファウイルス構築物を送達すること;(2)ヌクレアーゼから保護され、良好な安定性および保存特性を有するようにインビボで転写されたアルファウイルスRNAをパッケージングすること。後者の選択肢のアプローチを以下に示す。
【0015】
本発明者らは、VLPキャリアとして、十分に特徴付けられている植物ウイルスであるタバコモザイクウイルス(TMV)を用い、インビトロでVLP構造を種々の異種RNA配列へと最構築するその独特の能力を利用する。
【0016】
TMVコートの溶媒に曝された配列中にシステインを導入することにより、外来抗原エピトープをエキソビボで導入および融合し得る。インビトロ合成できないエピトープ配列は、遺伝的に、TMVコートタンパク質にインフレームに融合される。TMV VLPは、インビトロ結合体由来であるかまたは遺伝子融合体から発現された、単一のエピトープ(一価)または異なるエピトープの集合(多価)で装飾されてインビトロで再構築される。
【0017】
再構築の足場として、本発明は、ワクチン能を増強するタンパク質をコードするRNAを用い、それによって、タンパク質および核酸の両方からの活性を駆動する二機能性抗原送達系を生成する。このRNAはまた、翻訳を増強するためにアルファウイルスレプリコンを組み込み得る。アセンブリ源(OAS)のループ1を含む75ヌクレオチド配列の存在が、RNA含有VLPを生成するためのTMVコートタンパク質によるRNA分子のキャプシド形成に必須である。治療目的のタンパク質またはペプチドをコードする外来配列とこの75ヌクレオチド配列を組み合わせることにより、RNA分子は、TMV様VLPの生成のための有効な足場として機能し得る。このRNAは、そのワクチンに対する免疫応答の成功率を高め、病原に対する保護免疫もしくは治療免疫のいずれかの生成を補助し、または標的化された遺伝子の阻害のための阻害性RNAシグナル(RNAi)を送達する任意の数の免疫調節因子(例えば、IL4、IL1β、またはIFNγ)をコードし得る。このVLPストラテジーは、有効な標的免疫細胞に適用され、そしてTh1型応答を刺激し得る。
【0018】
Th1型免疫応答を誘導するための重要な必要性は、プロセシングおよび抗原提示のためにVLPを細胞中に移動させることである。既知の細胞を標的化するペプチドが同定されており(Samuel 0.,Shai Y.,2001 Bichem.40,1340;Magnussonら,2001 J.Virol.75 7280;Bushkin−Haravら,1998 FEBS L.424 243)、そして直接的な細胞侵入試験によってインビトロで、かつ標的抗原に対する免疫応答のタイプおよび速度を試験することにより増強された抗原提示についてインビボで試験され得る。標的化融合ペプチドは、TMVの細胞取り込みを増強する能力、ならびにインビトロおよびインビボでキャプシド形成RNAを送達する能力について試験され得る。
【0019】
向上したワクチン接種のための一般的な方法は、アジュバントまたはT細胞の補助を刺激するための特定のTヘルパーペプチドを同時投与することである。CpG DNAは、適切なワクチンと共に同時投与された場合にTh1型免疫応答を向上させる、容易に投与されるアジュバントであることが示されている(Krieg.2000 Vaccine 19,618)。ほ皮下に(s.c.)投与されるが、一本鎖チオール化DNAワクチンもまた、SPDP結合化学を通じてタンパク質キャリアに融合され得る。また、いくつかのユニバーサルTヘルパーペプチドが同定されている(Kulkarni,A.B.,1995 J.Virol.69,1261;Panina−Bordignon,1989 Eu.J.Imm.19,2237;Boraschi,1988 J Exp Med.168,675;Weiner,G.ら,1997 Proc.Natl.Acad.Sci 94 10833)。病原体または自己抗原ペプチドまたはサブユニットワクチンと組み合わせたワクチン接種の後にTh1型免疫を指向する免疫刺激ペプチド(通常はサイトカインフラグメント)もまた、同定されている(IL1β,Boraschi,1988 J Exp Med.168,675)。TヘルパーまたはアジュバントペプチドまたはCpG DNAオリゴを含有するコート融合体は、同時に発現されるペプチドまたはキャプシド形成されたRNAの免疫原性を増強するために使用される。
【0020】
最後に、免疫系のどのアームがワクチン送達後に活性化されるかを決定する上で、サイトカインが重要な役割を果たしていることが十分に確立している。インターロイキン4(IL4)は、Th2型免疫応答を指向するのに関連しており、そしてインターフェロンγ(IFNγ)は、Th1応答に対する重要な寄与因子である(SpellbergおよびEdward.2001 Clin Infect Dis 32,76)。TMV VLPへのキャプシド形成によりIL4およびIFNγのRNAを細胞中に導入することにより、生成される免疫応答の型に影響を与えることが可能であり得る。本発明者らは、抗原に対する抗体アイソタイプ応答(Th1型またはTh2型の抗原提示を反映する)を試験し、かつ主に、Th1型免疫の結果であるCTL応答を評価し得る。
【0021】
細胞融合ペプチド、Tヘルプアジュバント、病原性抗原、腫瘍抗原、およびキャプシド形成サイトカインRNAは、パピローマウイルスおよび黒色腫マウス疾患モデル由来の抗原と組み合わせて体系的に試験される。免疫原性モデルおよびチャレンジモデルは、単一ペプチドによるワクチン接種を超えるさらなる改善を確立し、かつTh1またはTh2免疫応答を生成するための最良のペプチド/RNAの組み合わせを規定する。
【0022】
このような柔軟かつ効果的なワクチンプラットホームの利用可能性は、ヒトおよび家畜に対して非生存ワクチンを提供する(それによって、副作用を抑え効果を増大させる)機会を提供する。医学的実施の新たな展望(自己抵抗性を打破し弱い抗原に対する免疫応答を駆動するための適用を含む)は、開示されるワクチンプラットホームの相乗作用的かつ高い特異性の活性により開かれ得る。
【0023】
本発明は、特定のウイルス(例えば、タバコモザイクウイルス(TMV))が複数のサブユニットに分解される方法に関する。各々のサブユニットは、遺伝的に融合されたペプチドを含むか、または予め決定されたエピトープ、ペプチドまたは、ヌクレオチドをそれに結合させるための結合反応に供される。複数のサブユニットは、この様式で処理されて複数のサブユニットグループを生成する(複数のウイルスワクチンのためのビルディングブロックを提供するために必要な多くのサブユニットグループについて、1つのサブユニットグループは予め決定されたペプチドに結合がそれに結合しており;別のサブユニットグループは第2のペプチドを有し;別のサブユニットは予め決定されたエピトープがそれに結合しており;そして別のサブユニットグループはヌクレオチドがそれに結合しているなど)。
【0024】
代替のストラテジーは、内部リボソーム侵入を引き起こすことが公知の特定の配列を導入することによってこのような効果を開始するよう改変されたTMV RNAを用いることである。これらの内部リボソーム侵入部位(IRES)は、哺乳動物細胞において多シストロン性RNAからの内部翻訳産生を引き起こすのに効果的である(Yangら,J Virol 1989 63(4):1651−60)。全長遺伝子産物または免疫刺激性サイトカインあるいは他の種類の免疫調節タンパク質のいずれかをコードするRNAとインフレームでTMVゲノム中にIRESを導入することで、そのタンパク質の翻訳が可能となる。これらのIRESは非複製RNAに導入されるので、TMVおよびワクチン接種後に細胞に取り込まれる比例する転写物の量は、自己複製RNA(例えば、アルファウイルスレプリコンによりコードされるもの)よりも低いと考えられるが、翻訳産物のレベルは、正確な応答を誘導するのに十分なはずである。
【0025】
本発明は、予期せぬ病原への恐れに呼応して効果的なワクチン試薬を生成および供給するために米国を補助する技術的解決の研究および開発を含む。本出願人は、核酸ワクチンの生物防御適用を制限する問題;乏しい環境的安定性および高用量の必要性に特に取り組んでいる。これらの問題に取り組む上で、本発明者らは、ポジティブ鎖RNAウイルスおよび核酸ワクチンを改善するための分子ツールセットを開発するためのバイオテクノロジーにおけるそれらの適用の分野において有している核心的知識を身に付けている。本出願人はまた、効果的な抗体応答を提供するタンパク質サブユニットワクチンを生成する能力を実証する。タンパク質サブユニットワクチンの生成は、本来、核酸ワクチンよりも遅く、そして実際、新規の病原体への恐れに遭遇した後の遅い期間にのみ利用可能である。しかし、本発明者らの非トランスジェニック植物ベースのワクチン発現プラットホーム(GENEWARE(登録商標))は、種々のタンパク質(ウイルス様粒子(VLP)(ワクチン接種した個人における抗体の強力な誘導因子として知られている)を迅速に発現する能力を有する。本出願人は、最近、タバコ植物において16種の異なるヒト治療ワクチンを生成するための改変されたTMV発現ベクターを使用し、そしてフェーズI臨床試験(BB−IND#9283)において優れた安全性を示した。他の競合する技術と異なり、GENEWARE(登録商標)は、特別な発酵設備を必要とせず、そしてワクチンタンパク質を生成するための植物タンパク質産生機構を持たせる植物ウイルスTMVの効果的、迅速なタンパク質生成ストラテジーを使用する。代表的な収集時期、摂取後は21日未満である。同じウイルスが大スケール製造へのパイロット試験から使用されるので、検証と製造スケールアップとの間にほとんど移行時間がないかまたは全く移行時間がない。GENEWARE(登録商標)技術を通じたワクチンの送達における遅れのほとんどは、植物の生長および抗原特異的精製プロトコルの確立の遅れである。この技術のこれらの局面は、植物由来VLPワクチンについての低い製造費を生じる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
(定義または略語)
本発明の理解を容易にするために、本明細書を全体を通じて使用される特定の用語を定義する:
「GM−CSF」は、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子を意味する。GM−CSFは、抗体産生機構を刺激することによって抗原の免疫原性を増加し得る。
【0027】
「非ネイティブ」は、同じ種由来でも、同じ種から得られるものでないことを意味する。
【0028】
「ネイティブ」は、同じ種に由来するか、または同じ種から得られることを意味する。
【0029】
「IgG」は、免疫グロブリンGを意味する。
【0030】
「遺伝子間配列」は、非コードDNA配列を意味し、ここで、ウイルスのオープンリーディングフレーム間に位置する、ウイルス複製起源が存在する。
【0031】
「OAS」は、アセンブリ配列の起源を意味する。アセンブリ配列の起源は、ウイルスコートタンパク質を有するRNA分子をウイルス粒子へとアセンブリするのに必要である。
【0032】
「再構築されたタンパク質」は、複合タンパク質混合物由来のタンパク質の単離および水和された形態を意味する。
【0033】
「IL4」は、インターロイキン4を意味し、免疫細胞、特に、B細胞を活性化するサイトカインを意味する。
【0034】
「IL1b」は、インターロイキン1、βサブタイプを意味し、免疫細胞を活性化するサイトカインを意味する。
【0035】
「IL1bペプチド」は、T細胞を刺激し得るIL1bの9アミノ酸区画を意味する。
【0036】
「INFγ」は、インターフェロン、γサブタイプを意味し、免疫細胞、特に、T細胞を活性化するサイトカインを意味する。
【0037】
「TMV」は、タバコモザイクウイルスを意味する。
【0038】
「VLP」は、ウイルス様粒子を意味する。
【0039】
「Th1」は、Tヘルパー1型免疫応答を意味し、これは、抗体免疫および細胞免疫の両方によって特徴付けられる。
【0040】
「Th2」が、Tヘルパー2型免疫応答を意味し、これは、主に抗体免疫によって特徴付けられる。
【0041】
「IVE」は、インビトロでのキャプシドに包まれることを意味する。
【0042】
「RNA」は、リボ核酸を意味する。
【0043】
「DNA」は、デオキシリボ核酸を意味する。
【0044】
「HA」は、インフルエンザヘマグルチニン由来のペプチド配列を意味する。
【0045】
「V5」は、シミアンウイルス5由来のペプチド配列を意味する。
【0046】
「mycまたはMyc」は、mycオンコジーン由来のペプチドを意味する。
【0047】
「N」位置は、コートタンパク質のN末端位置における、ペプチドまたは修飾が挿入される位置を意味する。
【0048】
「L」位置は、コートタンパク質の細胞外ループ位置において、ペプチドまたは修飾が挿入される位置を意味する。
【0049】
「GまたはGPAT」は、コートタンパク質のC末端位置から4アミノ酸における、ペプチドまたは修飾が挿入される位置を意味する。
【0050】
「C」位置は、コートタンパク質のC末端位置における、ペプチドまたは修飾が挿入される位置を意味する。
【0051】
「Cys」は、アミノ酸のシステインを意味する。
【0052】
「20S」サブユニットは、密度勾配のある34サブユニットコートタンパク質ディスクの沈降プロフィールを記載する。
【0053】
「4S」サブユニットは、密度勾配のある4サブユニットコートの沈降プロフィールを記載し、これは、20Sディスクの形成への中間体である。
【0054】
「kDa」は、キロダルトンを意味し、これは、タンパク質の分子量または質量をいう。
【0055】
「TEM」は、透過電子顕微鏡を意味する。
【0056】
「RT」は、室温を意味する。
【0057】
「4C」は、摂氏4度、または華氏0度付近を意味する。
【0058】
「PAGE」が、ポリアクリルアミドアガロースゲル電気泳動を意味する。
【0059】
「SDS」は、ドデシル硫酸ナトリウム、界面活性剤を意味する。
【0060】
「PEG」は、ポリエチレングリコール(分子量6000〜8000)を意味する。
【0061】
「NaCl」は、塩化ナトリウムまたは塩を意味する。
【0062】
「DEAE」は、ジエチルアミノエチルを意味する、アニオン交換樹脂上で使用される分子である。
【0063】
「PO4」は、ホスフェートを意味する。
【0064】
「pyro PO4」は、ピロリン酸を意味する。
【0065】
「SU」は、サブユニットを意味する。
【0066】
「CRPV」は、コットンテイルウサギパピローマウイルスを意味する。
【0067】
「ROPV」は、ウサギ口腔パピローマウイルスを意味する。
【0068】
「HPV」は、ヒトパピローマウイルスを意味する。
【0069】
「OVA」は、卵白アルブミンを意味する。
【0070】
「GJ」は、グリーンジュースまたは全体の植物ホモジネートを意味する。
【0071】
「S1」は、分類された植物抽出上清を意味する。
【0072】
「S2」は、pH7での再懸濁によってS1不溶性物質から誘導される上清を意味する。
【0073】
「BSA」は、ウシ血清アルブミンを意味する。
【0074】
「MW MALDI」は、Matrix Assisted Laser Desorption Ionization質量分析による分子量質量決定を意味する。
【0075】
「w/v」は、体積あたりの重量を意味する。
【0076】
「OD」は、光学密度を意味する。
【0077】
「DDT」は、ジチオスレイトールを意味する。
【0078】
「RNAse」は、RNAを分解する偏在性の細胞酵素である。
【0079】
「RNAsin」は、市販のRNaseインヒビターである。
【0080】
「DEPC」は、ジエチルピロカーボネートであり、RNAse活性の化学的インヒビターである。
【0081】
「Nab」は、中和抗体を意味する。
【0082】
「L1」は、パピローマウイルスキャプシドタンパク質L1を意味する。
【0083】
「L2」は、パピローマウイルスキャプシドタンパク質L2を意味する。
【0084】
「E1、E2、E4、E6、E7、およびE8」は、パピローマ早期遺伝子産物である。
【0085】
「CTL」は、細胞傷害性Tリンパ球を意味する。
【0086】
「SFV」は、セムリキ森林ウイルスを意味する。
【0087】
「IRES」は、内部リボソーム進入部位を意味し、これにより、RNAの中間部(または第1のATGにはないどこか)における翻訳の開始が可能となる。
【0088】
「ORF」は、翻訳される場合に、タンパク質をコードするオープンリーディングフレーム(RNAの機能的ユニット)を意味する。
【0089】
「B16」は、B16と名付けられたマウス黒色腫腫瘍細胞を意味する。
【0090】
「SPDP」 N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート
「BCA」アッセイ ビシンコニン酸に基づくタンパク質アッセイ
本発明は、タンパク質の合計を比色検出および定量するための新規な方法に関する。
【0091】
本発明は、ウイルス(例えば、タバコモザイクウイルス(TMV))を使用して複数のワクチンおよび医薬を構築する新規の方法に関する。広範な点で、本発明は、下記のように、図1〜6で一般的に示される様式で実行される。
【0092】
本発明の説明は、一般的な点で初めに提供され、その後に、多くの生化学的手順を含むより詳細な説明が続く。
【0093】
標準的な方法は、図1に示される化学結合プロセスによって、偽多価ワクチン生成物を生成し得る。VLP粒子が、生成され(1)、そして単離される(S2)。個々の粒子は、多数の独立したVLPの表面に別々に化学的に結合体化され(S3)、VLPの異なる集団を生成し、この各々は固有のペプチド付加体を示す。複数のペプチドが、同じVLP集団の表面上に同時に結合されて、固有のペプチドのランダムな分布を有するVLPを生成し得ることを想定することが可能である。次いで、免疫粒子の異なる集団は、混合され(S4)、異なるペプチドが表面に共有結合したVLP粒子の集団を生成する(P1)。この生じた生成物は、その混合物中の異なるペプチドを示すが、各々は免疫細胞によって独立して占められ、そして免疫系を刺激するために独立して使用される。融合ペプチドの間には相乗作用がない。なぜなら、異なるペプチド(各々が独立して機能する)間には特殊な関連性がないからである。
【0094】
記載される本発明は、図1で示された手順に従うタバコモザイクウイルス(TMV)の固有の特性を利用するが、有意な利点を有する新規の方法(図2)でもある。図1のボックスS5により現わされるように、TMVビリオンが、改善された化学結合体化を可能にする表面会合アミノ酸で構築される。これは、固有の表面会合システイン残基またはリジン残基の存在であり得るが、他の方法が用いられ得る。同時係属特許出願番号09/962,527(2001年9月24日出願、表題PROSESS FOR ISOLATING AND PURIFYING VITAMINES AND SUGARS FROM PLANT SOURCES)、ならびに関連の米国特許第6,303,779号、同第6,033,895号および同第6,037,456号(これら全てはLarge Scale Biology Corporation,Vacaville,Californiaへと同一人に譲渡されている。これら全てはその全体が本明細書中で参考として援用される)において記載されるようにして、例えば、TMVの所望の株で感染され、次いで処理されたたタバコ植物を使用して、多量のTMVが生成される(S6)。一旦、多量のTMVが得られ得ると、以下により詳細に記載されるプロセスは、TMVを分裂させて、ボックスS7およびS8により表わされるように、多数のサブユニット(SU)または20Sディスクを生成する。次いで、これらのサブユニットは、工程S9で分離されて、以下により詳細に記載されるように、複数のサブユニット(各々が別々に処理される)が形成される。工程S9によって表わされるように、各個のサブユニット群は、予め決定した成分(例えば、機能性ペプチド、エピトープ、タンパク質または核酸配列)をこのサブユニット群中のサブユニットに付加するために、以下により詳細に記載される様式で、結合体化反応に供される。工程S10で表わされるように、複数のサブユニットの群が、ここで、1つのVLP構造に構築され、ここで各々のサブユニットは、これに結合した特定のエピトープ、ペプチド、タンパク質またはヌクレオチドを有する。TMV 20Sディスクは、天然では、再会合して、固有の配列(TMV ori、すなわち、アセンブリ起点(origin of assembly、OAS)と呼ばれる)を含むRNA分子を取り巻くロッド形ビリオンを形成する。これは、多価ワクチンを生成し(P2)、このことは、単一の混合反応と等価ではない。多機能性ペプチドまたは核酸付加体が互いに物理的に結合することにより、これら各々は、VLPワクチンの細胞取り込み、免疫プロセシング、免疫系に提示される免疫ペプチドの数、および刺激された免疫応答の性質を相乗的に増大され得る。異なる未結合のVLP集団上ではなく同じVLP集団上での各ペプチド成分または核酸成分の同時提示は、VLPワクチンの効力を増大させ、かつ用量をさらに低下させると予測される。
【0095】
本発明の方法におけるさらなる基本工程は、図2に示される。詳細には、工程S10において、特定の組換えRNA配列が、TMV VLPのアセンブリのための足場となるように選択される。工程10で選択されたこの特定のVLPサブユニットは、以下でより詳細に記載されるプロセスによって、再アセンブリTMVを形成するように選択されたRNAと組合わせられる。このRNAは、構造的足場としてのみ働き得、TMV RNA自体のみを提示し得、新たなVLPワクチンの構築ブロック以外のいかなる増大した機能も提供しない。しかし、TMV oriを含む組換えRNA(これもまたタンパク質をコードする)が、構築され得る(S10)。一旦、VLPが免疫細胞に利用されると、TMVビリオンは固有の機能を有する。これは、リボソームによって優勢に結合され、そして同時翻訳機構によって分解する(Mundryら,J Gen Virol.1991 Apr;72(Pt4):769−77)。これは、このRNAの効率的な翻訳を可能にし、その結果、コードされたタンパク質が、宿主免疫細胞内で産生される。このコードされたタンパク質は、標的化病原体または癌に対する体液性または細胞性のいずれかの免疫応答を刺激するインタクトな抗原であり得る。逆に、このRNAは、免疫刺激タンパク質(免疫応答の振幅を増強する)または調節タンパク質(免疫応答の方向であるTh1またはTh2を保証する)をコードし得る。免疫応答の増強のために機能的であるコードされた核酸成分と組合わせて、免疫応答を刺激し、かつこの応答の効率および効果を促進するこのタンパク質エレメントの組み合わせにより、このワクチンは確実に二機能性になる。
【0096】
RNAが「裸の」エレメントとして、または保護タンパク質コーティングでコードされていないエレメントとして、固有に不安定であることに注意すべきである。しかし、このRNAは、核酸ワクチンにおけるDNAを超える利点を有する。なぜなら、このRNAは、免疫細胞内の所望の産物の翻訳を促進するが、分解され、そして免疫された宿主にDNA組換え事象および関連の腫瘍学的事象の危険性を与えないからである。ミリグラム(mg)量のDNAがヒトにおける何らかの免疫応答に必要な場合、RNA型またはDNA型の「裸の」、すなわちコートされていない核酸ワクチンは、非常に非効率的である。投与されたmgのワクチンのうち、数ピコグラム以下が免疫細胞によって利用される。このことは、高価な製造コストおよび処方コスト、および非常に非能率的な予測不可能な免疫応答を生じる。本発明により、重要な抗原または免疫促進タンパク質をコードする「裸の」RNAは、TMVのVLP構造内でコートされそして保護され得る。このようなコーティングは、RNAの安定性を増大し、そして送達効率を改善する。
【0097】
VLPワクチンは、その表面に免疫ペプチドを付加するための化学的結合化にのみ依存するわけではない。従来技術は、免疫学的に関連したペプチドをVLPの表面に遺伝子融合することによってVLPワクチンを生成する方法を記載する。このプロセスは、図3に記載される。この場合、個々の(S11)または複数の(S14)ペプチドは、免疫ペプチドのタンパク質コード配列がvlp構造のタンパク質コード配列に融合される組換えDNA手順によって、VLPタンパク質の表面に融合される。各個のペプチドまたは複数のペプチドを提示するVLP構造は、精製され(S11)、次いで、その特性について定性される(S12)。多価ワクチンは、遺伝子融合によって、1つ以上のペプチドを提示する個々のVLP集団を混合すること(S13)によって、または遺伝的手段によって、1つより多くのペプチドを提示するVLPの単一の集団を単に使用することによってのいずれかで、構築される。これらの手順は、各々が固有の免疫ペプチドを提示する複数の別個のVLP集団から構成される多価VLP免疫原を生成する(P3)。このアプローチは、非連結ペプチドの単一混合物によって予測され得る相乗活性がほとんど〜全くない、図1において生成されるワクチンの同じ制限に苦しむ。さらに、VLPワクチンは、核酸成分を欠き、単なる単機能的ワクチンである(免疫応答に対するタンパク質ベースのシグナルを提供するにすぎない)。
【0098】
本発明は、確実に多価かつ多機能的なワクチンを誘導することによって、これらの困難性を克服する。TMVは、各々が固有の遺伝子融合物を有するVLPの混合物を生成するために、図3で記載される同じ手順を受ける。しかし、この固有の特性は、図4に記載の手順を許容する。個々のTMVビリオンは、遺伝的手段によって単一または複数のペプチドを用いて調製され得る(S15)。各個のビリオンが単離され(S15)、そして定性される。各TMVビリオンは、別々に分解され(S16)、そして免疫ペプチドの固有のアレイを提示する20Sディスクから構成されるSUが調製される(S17)。次いで、この複数のSUは、TMV oriを含むRNAの周りで配置されて、TMV VLPを生成する(S18)。実際に、最終生成物は、VLPの各々の表面上で複数の免疫ペプチドを同時に提示し(P4)、かつVLPアセンブリのための足場および別個の免疫刺激因子の両方として機能するRNAを含む、VLPワクチンである。このアプローチの利点は、この粒子が、VLPの表面に同時に提示される。複数の免疫ペプチド、免疫調節ペプチド、免疫刺激ペプチドまたは細胞取り込み促進ペプチドの点で多機能性であるという点で、上記と同じである。このことは、より効率的な細胞取り込み、用量の低下をもたらすプロセシングおよび免疫刺激、ならびに免疫保護の改善を可能にする。RNAは、再び、足場デバイスを越える必須の機能に寄与する。このRNAは、インタクトな抗原、免疫調節、免疫刺激タンパク質をコードして、免疫応答をさらに増大し得る。このRNAは、VLP内で保護され、そしてTMV VLPの本来の機能によって、細胞翻訳装置に効率的に送達される。
【0099】
上の記載は、本発明が機能する工程の基本的な枠組み、ならびに本発明に従うワクチンおよび薬学的製品を構築するためのプラットフォームの基本的な理解にすぎないことが理解されるべきである。図2および図4のフロー図に概説される工程は、図5および6に示される。図1〜4に概説される基本的枠組みに関して、2つのさらなる点に注意すべきである。第1に、これらの図は、種々のワクチン組成物が、別個のVLPに提示されるか、または全てが1つのVLPまたはビリオン上に再アセンブルされる3種の固有のエピトープを含むことを示す。三番目は、純粋に例示目的のために選択され、任意の数のエピトープが多価ワクチンを形成するために組換えられえることが理解されるべきである。第2に、VLPまたはビリオンの表面に提示される実体は、図3および4に示されるようなペプチドエピトープに限定される必要はない。この提示された実体はまた、化学融合により導入されたヌクレオチド、または化学融合もしくは遺伝子融合のいずれかによって導入された完全タンパク質であり得る。さらに、数および比の両方の点において、ヌクレオチド、ペプチドエピトープおよび完全タンパク質の全ての可能な組み合わせは、多価ワクチンの再アセンブリについて想定され得る。例えば、ペプチド1、ヌクレオチドAおよび完全タンパク質X(これらの各々は、別個のビリオンまたはVLPに提示される)が、図3のP3に類似した多価VLPワクチンを生成するために、組合わせられ得る。あるいは、各々がペプチド1、ヌクレオチドAおよび完全タンパク質Xを提示する20Sディスクの別個のプールが、インビトロで再アセンブルされて、図4のP4と類似した多価ワクチンを生成し、ここで全ての実体は、単一のVLPまたはビリオン上に存在する。
【0100】
以下は、一連の詳細な実施例であり、これらの実施例は、上記の一般的なフロー図を例示する。
【実施例】
【0101】
(実施例1:pHの関数としてのペプチドの融合物および可溶性)
ペプチド融合物を用いて成功する現在の業界基準は、40〜50%である。これを改善するために、一連の融合物を、TMV U1コートタンパク質上の複数の挿入位置において試験し、そして各融合物を複数の条件下で抽出して、ウイルス可溶性に対する融合位置の影響を決定した。この実施例は、組換えTMVウイルスの単離(図4の工程S15)に対する遺伝子融合位置の影響を記載する。
【0102】
図7は、U1コートタンパク質上の4つの異なる位置(N末端、C末端、表面ループ(L)、およびC末端から4アミノ酸(GPAT))で挿入された融合HAについての結果を示す。切断およびウイルス可溶性の程度における明らかな差異が明らかであった。pH5で抽出した場合、約100%のHA GPATが、切断されて、野生型U1タンパク質の分子量に戻った。pH7での再抽出は、全長の収率を50%まで改善した。SDS PAGE緩衝液中の組織抽出は、全長コート融合産物を生じ、このことは、切断がプロセシングの間に生じていることを示唆する。これはまた、C末端融合位置で生じるが、より小さい程度である。コート融合物のプロセシングは、部位特異的であるようである。なぜなら、N末端にこのエピトープを配置することが、全長産物を生じたからである。ループ位置でHAエピトープを用いると、pH5においてもpH7においてもウイルスは回収されなかった;SDSPAGE緩衝液粉砕(grind)は、ループ挿入物が発現されたが、不溶性産物を生じたことを示した。ペプチド切断の間に切断を示す融合物(例えば、HA GPAT)について、プロテアーゼインヒビターカクテルが、切断を減少または排除するために組み込まれ得る。あるいは、他のN.tabaccum株が、減少したプロテアーゼ活性を有する宿主を同定するためにスクリーニングされ得る。
【0103】
表1は、可溶性および相対回収に対するエピトープ位置の影響を、2つのさらなるモデルエピトープ融合物であるV5およびMycについてまとめる。V5エピトープTMV融合タンパク質、HAエピトープTMV融合タンパク質およびmycエピトープTMV融合タンパク質を、ウェスタン分析によって、ペプチド特異的抗体に対する反応性について試験して、各融合ペプチドの招待および完全性を確認した(データは示さず)。
【0104】
【表1】

【0105】
(表1.3つの抗体結合エピトープの挿入部位による発現レベル)。
【0106】
3つのモデル誘導物を用いて発現の確認をした後で、その融合物リストを、再アセンブルした融合生成物に生物学的機能性を組み込むことを目的とした、パピローマウイルスの臨床的に関連するエピトープおよび黒色腫の臨床的に関連するエピトープならびに免疫刺激エピトープおよび細胞融合エピトープを含むように増殖させた。表2は、それらのエピトープ融合物についての可溶性の結果を要約する。試みた18個の標的エピトープのうち、15個を、可溶性生成物として首尾良く発現させた(83%の成功率)。これは、40%発現/可溶性という以前に産業スタンダードの2倍を示した。この改善は、2つの異なるpH緩衝液用いる抽出と並行して実施した、挿入位置の回転に起因する。
【0107】
【表2−1】

【0108】
【表2−2】

【0109】
(表2) 18個のペプチドのうちの15個が、N末端(N)、GPAT位置(G)、またはC末端位置(C)のいずれかで、TMV U1コートとインフレームで発現された。葉穿孔粉砕物(約200μgの葉組織)からのpH5抽出緩衝液またはpH7抽出緩衝液のいずれかに可溶性であった融合物が、可溶性の欄に示される。首尾良くスケールアップ(>500g葉組織)もした融合物もまた、示される。
【0110】
(実施例2.リンカーアミノ酸を改変することによる可溶性および蓄積の改善)
TMVへのエピトープの分子融合物は、時に、芳香族アミノ酸(例えば、W)または疎水性アミノ酸がそのペプチド中に存在する場合に、蓄積しない。例えば、マウス黒色腫抗原であるp15eは、芳香族アミノ酸であるトリプトファン(W)を含む。このペプチドは、U1コート上のN末端位置またはC末端位置上に導入された場合、ウイルスの不安定性を引き起こし、TMV全身感染は、観察されなかった。本出願人は、ペプチド可溶性についてより支持する環境を生成するために、隣接アミノ酸は、親水性相互作用を増加するように付加され得、Wのようなアミノ酸がコートタンパク質の溶媒に露出した表面上に導入された場合に、ウイルスのアセンブリまたは安定性に対する負の影響を相殺すると理由付けた。アスパラギン酸(D)およびグルタミン酸(E)は、荷電しているアミノ酸であり、これらを使用して、そのような方法が、TMVコートへのp15eの不溶性融合をレスキューすることを示した(図8)。p15eペプチドに近接するDEの付加の前に、生成物の蓄積は観察されなかった(*)。p15eへのDEの付加の後、生成物の蓄積が、明らかに見える(矢印)。他のアミノ酸(例えば、アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、ヒスチジン(H)、リジン(K)、セリン(S)またはスレオニン(T))を使用してもまた、TMV蓄積に対するペプチド組成の負の影響を軽減し得る。TMVの発現レベルまたはアセンブリに対する負の影響を克服するに十分な隣接アミノ酸の数および型は、融合ペプチド特異的であり得、そして各ペプチドについて経験的に試験する必要があり得る。本実施例は、遺伝子融合物の単離を可能にするための緩和(mitigating)配列の使用を示す(S15、図4)。
【0111】
(実施例3.TMV U1に対する化学結合エピトープ融合物)
遺伝子融合物のある特定のパーセント(70〜80%;実施例1参照)しか、多くの植物ウイルスについての機能的VLP形成が可能ではない。多くの融合物は、蓄積せず、一方、他の融合物は、単に不溶性である。本発明は、N末端融合物または表面ループ融合物のいずれかとしてシステイン(Cys)残基を含むコートタンパク質融合物の構築を包含する。TMV U1への初期融合物およびU1ベクターにおける良好な発現を示す他のトバモウイルスコートタンパク質への初期融合物は、N融合物および表面ループ融合物として、グリシン−システイン−グリシン(GCG)またはGGCGGから構成される(図9A(1))。以前のLSBC実験は、システイン残基が、ビリオン表面上で許容されること、および植物細胞質ゾルの還元条件下で、コートタンパク質サブユニット間または宿主タンパク質間で、ジスルフィド架橋が形成されないことを示した。表面に露出したCys残基を含むコートタンパク質の生成は、ヘテロ二官能性化学架橋試薬(例えば、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP))を使用する結合体化を介する、TMVビリオンへのペプチド結合体化を可能にする。SPDPは、遊離のスルフヒドリル基と、遊離アミン基(例えば、リジン(K)上で見出される遊離アミン基)との、中性pHにおける穏やかな反応条件下でのカップリングを可能にする。SPDP融合免疫結合体は、インビボ投与において広範に使用されている。種々のトバモウイルスコートタンパク質(CP)の初期研究および比較生化学応答のために使用されるペプチドは、c−myc tag(EQKLISEEDLK)、HAタグ(YPYDVPDYAK)およびV5タグ(GKPIPNPLLGLDSTK)である。各々は、上記スルフヒドリル基への結合体化のためのC末端リジンを含むように、合成(Sigma chemical)される。ペプチドに加えて、SPDPを使用して、チオール化3’末端を使用して、免疫刺激一本鎖DNA CpGポリヌクレオチドを、TMVビリオンに融合もし得る。代替的アプローチは、異なる反応性アミノ酸(例えば、リジン)をTMVコートタンパク質の溶媒に露出した残基領域(図9A(2))中に導入し、結合体化のためにC末端システインまたはN末端システインを含むペプチドを合成することである。
【0112】
最初に、SPDP結合体化を、分解していないシステイン含有TMVに対する反応性について試験する。架橋反応を、記載されるSPDPの短鎖形態、長鎖形態およびスルホ−NHS形態(Hermanson,G.,Bioconjugate Techniques 1996 Rockford II,Academic Pressおよびその中の参考文献)を使用して、実行する。ペプチド−SPDP付加物を、システインTMV U1ウイルスと混合し、その後、そのウイルスとそのペプチドとの物理的会合を示すサイズシフトについて、16時間後に分析する。その後、この手順を20Sディスクに拡張する。代替アプローチは、グルタルアルデヒドを使用するより特異的でない化学結合体化ストラテジーを使用することであった。このHAペプチドを、グルタルアルデヒドの存在下で、TMVまたはN末端システインTMVのいずれかと混合した。グルタルアルデヒドと4時間インキュベーションした後、HAペプチド−TMVシステイン結合体が形成され、これは、クーマシーによって質量の増加として、そしてウェスタン分析によって見かけの分子量の増加として、眼に見えた(図9B)。そのような結合体は、野生型TMV(溶媒に露出したシステインを含まない)をこの結合体化反応において使用した場合には、存在しなかった(データは示さない)。非特異的架橋剤(例えば、グルタルアルデヒド)による結合体化は、ウェスタンブロットにおいて明らかに眼に見えるのと同様に、より高分子量の凝集物をもたらす。より特異的な化学を有する他の結合体化試薬(例えば、SPDP、EDC、または他のヘテロ二官能性リンカー)は、融合ペプチド化学に対する1対1コートまたは指向性コートを生成し、より制御された結合体化反応を生じる。
【0113】
代替的ストラテジーは、Nシステインコートを20Sディスクにアセンブルさせ、これらのディスクを、機能性エピトープを保有する他のディスクと(すなわち、分子融合による)RNA上に再アセンブリさせ、そして完全に再アセンブリした混合物を、SPDP会合ペプチドまたはSPDP会合部分とともにインキュベートして、新規な機能性を付加することである。これは、そのSPDP結合体化によって20Sディスクが化学的に不活性になって他のディスクと再アセンブルできなくなる場合、または保有されるペプチドが再アセンブリを立体的に妨害する場合に、特に有用である。同様に、モノマーまたはマルチマーの再アセンブル後に種々の薬剤を付加する能力は、優れた有用性を有する。例えば、ssDNA(例えば、CpGオリゴヌクレオチド)のSPDP結合体化は、免疫調節の増強を可能にし、この増強は、単にそのCpGをワクチンと混合するよりも大きい。このことは、より良好な効力および/またはその用量を減少する可能性をもたらし得る。本実施例は、工程S3(図1)およびS9(図2)、ならびに化学的および遺伝子的に結合したエピトープ合わせるための代替経路を提供することを、示す。
【0114】
(実施例4.TMVコートタンパク質融合物の電子顕微鏡法)
ウイルス構造に対する上記融合物の影響を決定するために、透過電子顕微鏡法(TEM)を実施した(図10)。野生型TMVロッド(rod)は、直径18〜20nm×300nmを有する。上記モデルペプチドV5およびMycのN末端エピトープ融合物は、野生型U1ウイルスと視覚的に類似し、その稈の直径も同様であった。このことは、上記融合が、正常なコートタンパク質再アセンブリをインビボで妨害しないこと、および上記融合物が、インビトロでの再アセンブリのための良好な候補を構成することを、示す。
【0115】
(実施例5.野生型TMV U1の抽出および分配)
TMV U1の抽出および処理は、上記の同一に譲渡された米国特許番号6,303,779、同第6,033,895および同第6,037,456(これらは、その全体が参考として本明細書中に援用される)において広範に考察されている。その処理は、図11Aに要約される。簡単に述べると、秤量した感染組織を、2容量の冷却水(0.04%w/vメタ亜硫酸水素ナトリウムを含む)と合わせ、Waringブレンダーにおいて粉砕を実施する。そのホモジネートを、4層のチーズクロスに通して繊維を除去し、緑色ジュース(GJ)を残す。そのGJのpHを、5.0に調整し、47℃にて5分間加熱する。冷却した後、そのGJを遠心分離して、不溶物を沈殿させ、第1上清を得る。そのウイルスが残りのペレットP1中に分配する場合、そのペレットを水中に再懸濁し、pH7.0に調整する。遠心分離後、そのウイルスを第2上清中で回収し、最後のペレットP2を捨てる。そのウイルスを精製して濃縮するために、2回の連続選択沈殿を、第1上清処理ストリームおよび第2上清処理ストリームに対して実施する。このウイルスの沈殿を、4%w/vポリエチレングリコール(PEG)および4%w/v NaClに対してこれらの上清を調整して30〜60分間冷却することによって、達成する。遠心分離後、このウイルスを、ペレットとして回収する。混入タンパク質は、この上清中に残る。この上清を捨てる。
【0116】
図11Bおよび表3は、N.tabacum MD609から単離した野生型TMV U1についての代表的結果を示す。そのSDSゲルは、上記プロセスが、高純度の最終ウイルス調製物を生じることを明確に示す。BSAを標準物として使用して、そのコートタンパク質バンドを、濃度測定により定量し、このプロセスについての物質収支を、回収を決定するために実施する(表3)。このデータから、このウイルスの大部分が、S1プロセスストリームに分配し、PEG沈殿の間に最小限しか喪失せず、総プロセス回収76%が達成されたことが、明らかである。
【0117】
【表3】

【0118】
(表3) 感染N tabacum MD609植物からのTMV U1の単離についての物質収支。データは、図11におけるゲルの濃度測定分析から、BSA標準曲線を使用して生成した。
【0119】
(実施例6.ウイルスの抽出および分配に対するエピトープ融合物の影響)
実施例5に概説されるプロセスを、表2に列挙されるコートタンパク質融合物の選択のために使用した。物質収支を、総プロセス回収を決定することに加えて、S1プロセスストリームとS2プロセスストリームとの間のウイルスの分配を決定するために、実施した。各融合物の正体を、MW MALDIによって確認した。これらの精製についての結果を、表4に要約する。この表から、処置の特徴は、エピトープ融合および位置に依存することが明らかである。抽出に関する物質収支は、90〜100%(例えば、HPV ep2 N)〜10%未満(例えば、V5N)の初期回収(S1プロセスストリーム+S2プロセスストリーム)を生じた。S1ストリームとS2ストリームとの間の分配はまた、実質的に変化した。全体的回収はまた、0.5%〜79%の範囲であった。このデータに基づいて、システインNコートタンパク質融合物、Myc Nコートタンパク質融合物、およびV5Nコートタンパク質融合物を、最適化研究に進めて、全体的プロセス回収を改善する条件を決定した。この最適化は、実施例7および8に詳説される。この最適化は、遺伝子融合物を示すTMVウイルスを単離するために使用し得るプロセス改変を示す(ステップS15、図4)。
【0120】
【表4】

【0121】
(表4) 種々のコートタンパク質融合エピトープについてのウイルス分配および全体的プロセス回収。融合位置命名;N(N末端);C(C末端);GPAT(GPAT配列に対してN末端側)。#は、1回より多く単離された融合物についての精製実行回数を示す。
【0122】
(実施例7.ウイルスの抽出および分配に対する塩化ナトリウムの影響)
抽出緩衝液中に塩化ナトリウムを組み込むことを、ウイルス回収を改善してウイルス分配を変化させるための手段として試験した。GENEWARE感染したN.benthamiana植物を採集し、そのバイオマスを分割して、塩の存在下および非存在下における抽出の接戦(head to head)比較を実施した。その植物物質のうちの1/2を、0.04%のメタ亜硫酸水素ナトリウムを含む冷却水中に抽出し、残りのバイオマスを、50mM酢酸緩衝液(pH5.0)(4%w/v NaClおよび0.04%メタ亜硫酸水素ナトリウムを含む)中に抽出した。実施例5に概説される手順に従って、処理を実施した。システインN TMV融合物(図12)についてのSDS−PAGEによるS1画分とS2画分との比較は、塩の存在が、ウイルスをS1画分へと分配させることを明確に示す。このことは、都合が良い。なぜなら、このストリームから得られるウイルスは、代表的には、植物色素および不純物が混入することが少ないからである。また、図11Aから、S1分配が、S2分配よりも優先することが明らかである。なぜなら、S1分配は、処理工程の数を減少するからである。
【0123】
塩の存在下および非存在下での抽出物の物質的バランスは、表5に示される。システインNについてのデータから、全体的なプロセス回収率が、塩の添加で実質的に改善されたことが明らかである;両方のプロセスで抽出された総ウイルスは、同一であるが、塩の非存在下でのウイルス喪失は、4% w/v 塩化ナトリウムでわずか7%であることと比較すると、44%であった(P2ペレットと関連したまま)。表5はまた、抽出の間のMyc Nコートタンパク質融合物およびV5Nコートタンパク質融合物の回収およびウイルス分離についてのデータを有する。塩化ナトリウムの利点もまた、明らかであり、このことは、このプロセス改変が一般的適用性を有することを示す。
【0124】
【表5】

【0125】
(表5 感染したN benthamiana植物からのマルチエピトープを示すウイルスの単離についての物質的バランス。データを、BSA標準曲線を用いて、SDSゲルのデンシトメトリー分析から生成した。
【0126】
(実施例8 ウイルス沈殿物の塩およびPEG濃度の影響)
図11に示されるように、S1またはS2プロセシングストリームのいずれかにおけるウイルスを、さらに精製し、一連の2つのPEG沈殿によって濃縮する。第1のPEG沈殿に関与するこのステップは、以下のフローダイアグラムに概説される(図13)。このS1(またはS2)上清を4% w/v ポリエチレングリコールおよび4% w/c NaClに調節する。その上清が既にNaClを含んでいる場合、固体のPEGのみを添加し、攪拌しながら溶解し、サンプルを氷上で冷却する。沈澱したウイルスを遠心分離によってペレットにし、上清を廃棄する。次いで、ウイルス含有ペレットを、低イオン強度緩衝液中に再懸濁し、低速清澄遠心(low speed clarification spin)を行う。これにより、いかなる残渣色素もペレットになり、夾雑植物タンパク質が凝集し、溶液中にウイルスが残る。次いで、この溶液を、4% w/v PEGおよび4% w/v NaClに調節し、このプロセスを反復することによって、第2のPEG沈殿物にする。
【0127】
表6は、野生型TMV U1および2つのコートタンパク質融合物(Myc NおよびV5N)についての2工程PEG沈澱から得られる回収率を比較する。図13に概説される標準的手順では、野生型U1と比較すると、両方のコートタンパク質融合物について乏しい回収率しか生じなかった。フローダイアグラムから、この喪失は、PEGによるウイルスの不完全な沈澱または清澄工程の間のウイルスのペレット化から生じうる。PEG沈澱における各工程周辺の物質的バランスは、Myc N 4% w/v PEGについては、ウイルスをペレットにするには不十分であり、大部分が上清中に残ったままであることが示された。この場合、PEG濃度を8% w/vまで増大させことが必要でありこの改変は、6%〜60%へと回収率を増大させた。V5Nについては、ウイルスの完全沈殿が4% w/v PEGで達成されたが、そのウイルスは、清澄遠心の間に、溶液中には残らなかった。そのウイルス含有ペレットを10mM NaKPO4(4% w/v NaClを含む)中に再懸濁することによって、ウイルスは可溶性のままであり、回収率は、1%未満から95%まで増大した。これらの2つの実験は、ウイルス融合物がどの程度ウイルス特性に影響を与えうるかを示し、プロセシングの間にウイルス可溶性を維持する方法を提供する。
【0128】
【表6】

【0129】
(表6 TMVコートタンパク質融合物についてのPEG沈澱工程の最適化)
(実施例9:遊離コートタンパク質および20Sディスクの生成)
この実施例は、より詳細に、工程S7およびS8(図2)ならびに工程S16およびS17(図4)を例示する。コートタンパク質を、Fraenkel Conrat(Virology 1957,4,1−4)によって開発されたプロトコルの改変版を用いて、精製ウイルスから生成した。このプロトコルを図14にまとめる。簡潔には、そのウイルスを2容量の氷酢酸と合わせ、4℃で1時間インキュベートし、ウイルスの解離およびRNAの分解/沈澱が得られる。遠心分離をして分解したRNAを除去した後に、酢酸を透析によって除去した。あるいは、限外濾過/ダイアフィルトレーションを使用して、透析の前に氷酢酸の大部分を除去しうる。透析すると、コートタンパク質は、その等電点で沈澱する。その沈澱したコートタンパク質を、遠心分離によって単離し、水に再懸濁した。pHを8に調節することによって、コートタンパク質を再溶解し、最後の遠心に供して、全ての残りの凝集種を除去した。
【0130】
このプロセスは、多くの遊離コートタンパク質融合物を精製ウイルスから作製するために使用した。表7は、エピトープ融合物の選択(そのためにコートタンパク質が生成される)に対するプロセス回収率をまとめる。
【0131】
【表7】

【0132】
(表7 エピトープ融合物の選択のための遊離コートタンパク質生成。融合物位置の指定;N、N末端;C、C末端)
コートタンパク質の量を、紫外線吸光度スペクトルによって評価した(Durham,J Mol Biol,1972,67:289)。このスペクトルは、282nmでの最大吸光度および251nmでの最小吸光度、ならびに2.0と2.5との間の最大:最小の比を有するべきである。より低い比は、コートタンパク質調製物の残りのRNA夾雑物を示す。図15Aは、野生型TMV U1コートタンパク質の代表的な吸光度スペクトルを示す。表8は、種々のエピトープ融合物を示す遊離コートタンパク質調製物の吸光度比をまとめる。最大:最小の比が予測より低かった場合(例えば、Myc N)、このコートタンパク質調製物を、陰イオン交換樹脂(例えば、DEAEセファロース)で処理した。この夾雑するRNAは、正に荷電した樹脂と強く会合する一方で、コートタンパク質の会合はより低く、よって、低塩化物イオン濃度でのコートタンパク質の選択的溶出が可能になる。このアプローチは、50mM NaCl溶出液によってMyc Nコートタンパク質を夾雑する残渣RNAから分離して、最大:最小吸光度比が2より大きいコートタンパク質調製物を生成することに成功してきた(図15B〜D)。
【0133】
【表8】

【0134】
(表8 種々のエピトープ融合物を示す遊離コートタンパク質の最大吸光度(282nm):最小吸光度(251nm)の比。融合物位置指定;N、N末端;C、C末端)
再アセンブリ反応において使用する前に、そのコートタンパク質調製物を、3〜4コートタンパク質からなる4つのSサブユニットから、20個のSディスクに変換する(図5を参照のこと)。このことは、使用前にコートタンパク質調製物を室温で、正確なpHおよびイオン強度条件下で24〜48時間インキュベートすることによって達成した。例えば、TMV U1コートタンパク質(0.1M リン酸緩衝液,pH7.0中)を、16時間かけて室温にて4℃から平衡化させ(20〜22℃)、最初のおよび平衡化したコート調製物をサイズ排除クロマトグラフィーにより分析した。図16に認められるように、室温でのインキュベーションは、二峰性分布を生じ、20個のSディスクの形成を生じた。
【0135】
(実施例10:20個のSディスクからの野生型TMVビリオンの再アセンブリ)
この実施例は、実施例11〜13とともに、P4(図4)を生成するための、多価の二機能性ワクチンの生成のための方法(すなわち、工程S18(図4))を例示する。TMV再アセンブリのための標準的な条件は、野生型U1コートタンパク質および野生型TMV RNA足場について概説されている(Fraenkel−Conrat,HおよびSinger,B(1959)Biochim Biophys Acta,33,359−370)。代表的には、0.1Mリン酸またはピロリン酸緩衝液(7.0〜7.5のpHが、22:1のコートタンパク質:RNAの質量比で使用される)
TMV U1コートタンパク質を、実施例9に記載されるように、N.tabacum変異系統MD609植物から単離した野生型ウイルスから生成した。野生型RNAを、RNeasy Plant Mini Kit(Qiagen,Valencia,CA)を用いて同じウイルスから単離した。再アセンブリ反応を、96ウェルプレート様式で、1100μg/mlのコートタンパク質濃度および50μg/mlのRNA濃度において200μl容量で行った。この反応系を、0.1Mリン酸またはピロリン酸(pH7.2)で緩衝化し、このコートタンパク質を、使用前に2日間にわたって室温にて予備インキュベートした。この予備インキュベーションにより、4個のSサブユニットから20個のSディスク形成が生じる(図16)。標準的条件に加えて、リボヌクレアーゼインヒビターRNasinを、0.1M リン酸緩衝化反応系に加えることによっても試験した。この再アセンブリ反応を、310nmでの吸光度の変化(これは、再アセンブリ生成物の平均長の増大に対応する)を経時的に測定することによって行った。
【0136】
図17Aは、再アセンブリ反応についてのA310nmプロフィールを示す。野生型ウイルスコントロールは、モル濃度RNA濃度は、再アセンブリ反応物の濃度に等しいようにした。リン酸の代わりにピロリン酸を使用することにより、再アセンブリの開始速度が改善され、OD最大は、TMVウイルスコントロールのものに相当した。リン酸緩衝化再アセンブリ反応については、最大ODは、微量のウイルスより低かった(0.12OD対0.14OD)。アガロースゲル電気泳動(図17B)による最終的な再アセンブリ反応におけるRNA完全性を評価することによって、RNA分解がピロリン酸サンプルおよびリン酸サンプルの両方において、後者がより大きな程度で起こっていることが示された。従って、異なるリボヌクレアーゼインヒビターをコートタンパク質に添加することによって、試験した。リボヌクレアーゼインヒビター(さらなるDTTありまたはなしのRNasin(Promega,Madison,WI)、あるいはSUPERase(Ambion,Austin,TX)のいずれか)を、RNA添加(0.2〜4U/μl)の30分前に、コートタンパク質調製物に添加した。試験した全ての濃度のSUPERaseは、効果的でなかったのに対し、RNasinは、RNA分解を実質的に減少させた(図17B)。その存在はまた、再アセンブリ反応について得られる最大OD310nmを改善した(図17A)。
【0137】
異なる緩衝液の組み合わせの機能的重要性を決定するために、再アセンブリ反応物のアリコートを、局所的病変宿主アッセイによって分析した(表9)。この再アセンブリ反応物、裸のRNAおよびウイルスコントロールを連続希釈し、研磨剤として使用されるカーボランダムをN.tobacum「Xanthi」NN植物の葉に塗布した。接種後5日間、病変の数を計数し、再アセンブリ反応における機能性ウイルスの力価の半定量的測定を提供した。
【0138】
【表9】

【0139】
(表9 野生型U1コートタンパク質およびTMV RNAを用いた再アセンブリ反応についての局所的病変宿主アッセイデータ。P04、0.1M リン酸緩衝化;pyro PO4、0.1M ピロリン酸緩衝化;PO4 RNasin、0.4U/μl RNasinリボヌクレアーゼインヒビターを含有する0.1M リン酸緩衝化)
等価なモル濃度のRNA濃度を含む再アセンブリ反応物に対して、遊離RNAの感染性を比較すると、RNAキャプシド化により感染性が改善されることが明らかに示される。再アセンブリ反応物内で、感染性における顕著な改善が、RNA完全性およびA310nmのOD最大における改善に相関して、RNasinが存在した場合にリン酸緩衝液について明らかであった。RNasinでの観察された感染性は、ウイルスコントロールの感染性と匹敵した。ピロリン酸緩衝液はまた、加速された再アセンブリに起因して感染性を改善し、RNAの保護を補助した。
【0140】
(実施例11 TMV RNA上へのコートタンパク質融合物の再構築)
この研究の中心的な目的は、多機能TMVに基づく再構築生成物の生成であり、これは、異なる機能を有するエピトープ(例えば、抗体またはCTL標的とともに細胞標的化または免疫調節配列)を示す。第1の工程として、TMV RNA上に再構築する種々のコートタンパク質融合物の能力が試験された。選択される融合は、ELDKWASならびにN末端のHPV ep2およびC末端のMycであった。再構築反応を、96ウェルプレート様式で、1100μg/mlのコートタンパク質濃度および50μg/mlのRNA濃度で、200μl容積で実行した。反応を0.1Mホスフェート(pH7.0)で緩衝化し、そしてコートタンパク質を、使用の前に室温で2日間プレインキュベートした。反応のサブセットにおいて、リボヌクレアーゼインヒビターRNasinを組み込んだ。再構築反応に続いて、経時的に310nmで吸光度の変化を測定し、これは、再構築生成物の平均の長さの増加に対応する。
【0141】
図18Aは、ELDKWASコートタンパク質融合を含む再構築反応についてのA310nmプロフィールを示す。反応混合物中のRNasinの存在は、より高い最終ODで改善された吸光度プロフィールを明らかに生じた。再構築反応のRNA完全性は、アガロースゲル電気泳動によって評価された(図18B)。分解の程度がU1コートタンパク質を含む再構築反応よりも実質的に高いが、RNasinの存在は、ELDKWASコートタンパク質再構築物におけるRNA分解の程度を減少しなかった。
【0142】
RNAプロフィールを伴うA310nm動力学は、RNasinが、再構築の間に形成された全長ロッドの割合を増加することを示唆する。これを確認するために、サンプルを電子顕微鏡によって分析した(図19)。RNAの存在および非存在におけるコートタンパク質の画像を比較することは、ELDKWASコートタンパク質融合物のTMV RNA足場上への再構築が生じたことを示す。RNasinの影響を評価するために、正規化粒子サイズ分布(電子顕微鏡画像から得られる)を決定した。RNasinの存在とともに、全長(>275nm)ロッドの5%から20%の同時の増加とともに、0〜100nmの長さのロッドの減少が存在し、これは、A310nm吸光度データと相関する。
【0143】
全長ロッドの減少は、おそらく全長RNAの減少したプールから生じた。これは、機能的、すなわち、感染性の再構築生成物の数を減少することが予期される。局所損傷宿主アッセイによる再構築生成物の分析は、この減少を確認し;RNasinを省くことは、9の因子によって観察される損傷の平均数を減少した(表10)。
【0144】
【表10】

【0145】
表10 複数のコートタンパク質融合物およびTMV RNAとの再構築反応についての局所損傷宿主アッセイデータ。PO4、緩衝された0.1Mリン酸塩;PO4 RNasin、0.4U/μl RNasinリボヌクレアーゼインヒビターを有する緩衝化された0.1Mリン酸塩。全ての希釈は、10−3であった。この希釈において、損傷は、遊離野生型RNAについて検出されなかった。N,N−末端融合;C,C末端融合。
【0146】
再構築反応はまた、RNasinの存在下または非存在下で、HPV ep2およびMycコートタンパク質融合物を用いて実施した。ELDKWASコートタンパク質融合物と同様に、再構築の間、RNasinの存在は、より高い最終ODおよび改善されたRNA完全性とともにA310nmプロフィールを生じた。機能的な見地から、RNasinの存在下で生じた再構築生成物は、局所損傷宿主アッセイによるより高い活性を示した(表10)。MycおよびHPV ep2について、損傷の平均数は、15であり、RNasinが存在した場合、それぞれ6倍高かった。これらの感染性の研究は、溶媒に暴露されたエピトープを有するTMVコートタンパク質が、機能性RNAを再構築し、そしてキャプシドに包まれる能力を明らかに示す。
【0147】
コートタンパク質調製物は、それらと関連する植物由来のリボヌクレアーゼ活性を有し、これは、再構築反応におけるRNasinの包含によって部分的に軽減され得る。代替のアプローチはまた、開始ビリオン調製物と関連するリボヌクレアーゼ活性を減少するために使用され得、これからコートタンパク質調製物が作製される。ウイルス調製物は、ベントナイトで処理され得、このベントナイトは、リボヌクレアーゼ活性を阻害する(Jacoli,G.,Ronald,W.,and Lavkulich,L.:Inhibition of Ribonuclease Activity by Bentonite,Can J Biochem 51,1558,1973)。あるいは、ウイルス調製物は、0.05%〜0.1%v/vでジエチルピロカルボネート(DEPC)で処理され得、これは、酵素部位でヒスチジン残基と特異的に反応することによって、RNaseを不活化する。残りのDEPCは、DEPCが反応する第1級アミン基(例えば、トリス(2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール)を含む任意の緩衝液に対して広範囲に処置されたウイルスを透析することによって除去される。
【0148】
多価TMVベースのワクチンを作製するための再構築反応は、TMV RNA足場を使用して実施した。ELDKWAS、MycおよびHPV ep2コートタンパク質融合物を、1対1の比で対で組み合わせた。図20は、2価キャプシド化についてのA310nm再構築動力学を、個々に使用したコートタンパク質融合物についての動力学と比較する。2価反応は、経時的に、吸光度の類似の上昇を示し、これは、再構築が2つの独立したコートタンパク質融合物の存在において効率的に存在したことを示す。機能的2価再構築ビリオンの作製について試験するために、局所損傷宿主アッセイを実行した(表10)。一価構築物に匹敵する損傷数を得、機能的再構築生成物の存在を確認した。
【0149】
(実施例12 多価パピローマウイルス予防ワクチン)
(導入)
動物は、パピローマウイルス構造タンパク質(L1およびL2)のいずれかまたは両方でのワクチン接種によるパピローマウイルスでの感染に対して保護され得る(Da Silva DMら,2001,Journal of Cellular Physiology 186:169−l82;Koutsky LAら,2002,New England Journal of Medicine 347:1645−51)。パピローマウイルス感染に対する保護は、主に、特異的な体液性応答を必要とし、これは、構造タンパク質におけるエピトープに対するウイルス中和抗体(Nab)の産生を生じる。構造タンパク質に対する細胞性免疫応答はまた、ワクチン誘導免疫に寄与し得る。L1、または非構造遺伝子E1、E2、E4、E6、E7およびE8の1つ以上を含む生の(live)組換えウイルスおよびDNAワクチンベクターは、ワクチン接種された動物において保護免疫を誘導し得る;これらの場合において、細胞性免疫応答および体液性免疫応答の両方が、検出される(Sundaram Pら,1997,Vaccine 15:664−71;Moore RAら J Gen Virol 20:2299−301)。パピローマウイルス構造タンパク質に対する体液性応答は、パピローマ感染に対する保護免疫について必要かつ十分である(Embersら,2002 Journal of Virology 76:9798−9805)。ウイルスコードタンパク質に対する細胞性免疫応答は、保護性免疫応答のレベルおよび頑強さを増強するが、初期感染を妨げない(Tobery TWら,2003,Vaccine 21:1539−47)。
【0150】
(2価または多価再構築ワクチン)
最も重要なパピローマウイルスNabは、L1においてコンフォメーショナルなエピトープを結合し、そしてインタクトなウイルスのみまたは正確に構築されたウイルス様粒子(VLP)を認識する。これらのNabは、キャプシド表面上にある超可変性ループ中のエピトープを認識し、そして一般的に、密接に関連したパピローマウイルス型のみを中和する。L2のN末端領域における直線エピトープに結合する抗体はまた、ウイルス感染性を中和し得る。最も重要なことには、L2エピトープに対するNabは、異なるウイルス株を交差中和する能力を示す(Embers MEら,2002;Journal of Virology 76:9798−9805;Kawana Yら,2001,Journal of Virology 75:2331−2336;Kawana Kら,1999,Journal of Virology 73:6188−6190;Kawana Kら,2001,1496−1502;Roden RBSら,Virology 270:254−257)。Embersら(2002;Journal of Virology 76:9798−9805)は、ウサギパピローマウイルスウサギ口腔パピローマウイルス(ROPV)およびワタオウサギ口腔パピローマウイルス(CRPV)のL2タンパク質において線形エピトープを表すペプチドが、相同なウイルスでのチャレンジに対しては良好な保護免疫を誘導し得るが、異種ウイルスに対しては誘導し得ない。
【0151】
直線中和ウサギパピローマウイルスエピトープCRPV L2.1;CRPV L2.2;ROPV L2.1およびROPV L2.2(Embers MEら,2002 Journal of Virology)を示す組換えTMV U1を構築した(表2)。各組換えウイルスは、高い力価の相同ウイルスを用いるチャレンジに対して動物を保護する中和抗体を誘導する。しかし、各ワクチンは、異種ウイルスを中和するのに十分な力価のNabを誘導しないかもしれない。
【0152】
TMV OASを含む構造RNA上に、少なくとも2つの異なるコートタンパク質(それぞれ異なるペプチドを示す)を構築することによって、CRPVおよびROPVの両方に対する保護性免疫を誘導する多価組換えワクチンを作製し得る。例えば、実施例9に記載される方法は、TMV U1のC末端に対して近位の「GPAT」位置にCRPV L2.1ペプチドを示す組換えTMVビリオンから遊離コートタンパク質を単離するために使用し得る。同様に、遊離コートタンパク質は、TMV U1のC末端に対して近位の「GPAT」でROPV L2.1ペプチドを示す組換えTMVビリオンから単離され得る。野生型TMV RNA、または構築配列のTMV U1起源(OAS)を含む組換えRNAは、再構築された2価ワクチンが、実施例10および11に記載される方法に従って構築される足場として使用され得る。同様に、ワクチン接種した動物においてNabを誘導する能力を有するペプチドを示すさらなる組換えU1コートタンパク質は、多価ワクチンウイルスまたはウイルス様粒子を作製するために、再構築反応内に組み込まれ得る。2価または多価ワクチンでワクチン接種される動物は、組換えワクチン分子に融合した種々のペプチド抗原を認識する抗体を産生する;これらの抗体は、CRPVおよびROPVの両方を中和し得る。従って、New Zealand白ウサギは、単一ワクチン部分でのワクチン接種後、2つの異なるウイルス種に対して感染を保護される。
【0153】
(多機能ワクチン:体液性免疫および細胞性免疫の誘導)
CRPV L2.1、ROPV L2.1;CRPV L2.2およびCRPV L2.2ペプチドと相同なヒトパピローマウイルス型16L2の配列は、特異的なレセプターに結合し得、そして細胞表面への結合において、レセプター媒介機構によりこれらの配列に融合したタンパク質の細胞侵入を媒介し得る(Kawana Yら、2001 Journal of Virology 75:2331−2336;Yangら、2003,Journal of Virology 77:3531−3541)。従って、これらの配列を示すビリオンおよび再構築されたウイルス様構造が、ウサギ細胞の表面に結合し得、細胞内への再構築されたウイルス構造の侵入を媒介することが予期される。構築されたウイルスまたはウイルス様粒子によって示されるCRPV L2.1、ROPV L2.1;CRPV L2.2およびCRPV L2.2ペプチドの1つ以上で再構築された粒子のさらなる細胞融合機能は、形質導入された細胞の細胞質への機能性RNAペイロードの送達を可能にする。
【0154】
再集合されたウイルス構造の表面上に示されるL2ペプチドにより誘導される保護抗体媒介免疫を増加させるために、RNA足場が、さらなる生物学的活性を有する。例えば、足場RNAは、自律性複製のために必要なセムリキ森林アルファウイルス(SFV)RNA配列をコードする組換えRNA分子であり、CRPV L1遺伝子は、SFV由来の26SRNAプロモーターの制御下で発現され得、TMV U1 OASは、CRPV L1遺伝子の下流に挿入される。この構築物が、図22に示される。動物は、足場としてキャップされたSFV::CRPVL1::OAS RNA分子を含む再集合されたウイルス構造で免疫化され、これらの構造は、足場RNA上に集められる1つ以上のCRPV L2.1、ROPV L2.1;CRPV L2.2およびCRPV L2.2エピトープを示す組換えTMVコートタンパク質により保護される。組換えTMVコートタンパク質は、いくつかの以下の重要な機能を実施する:(1)これらのタンパク質は、ヌクレアーゼ消化から組換えSFV RNA分子を保護する;(2)これらのタンパク質は、マクロファージ、樹状細胞、および他の抗原呈示細胞により優先的に認識されかつ包み込まれるような粒子状の準結晶性構造を形成する;(3)特異的な細胞結合活性にも関わらず、これらのタンパク質は、細胞質に組換え粒子を送達する。
【0155】
一旦粒子が細胞質中にある場合、組換えRNA分子が翻訳され、そしてRNAが、SFV非構造タンパク質(NSP)レプリカーゼ活性により媒介される複製の1つ以上の周期を経る。CRPV L1 RNAおよびTMV OASをコードするサブゲノムRNAが転写され、そしてCRPV L1 RNAが、翻訳される。次いで、細胞内で発現されるL1タンパク質は、処理およびMHC Class Iを介してT細胞への呈示のために利用可能であり、それによりL1タンパク質に対する細胞免疫応答に刺激を与える。形質導入された細胞の細胞質に送達される組換えSFV RNAの複製は、dsRNA誘導プロテインキナーゼ(PKR)のような病原体サーベイランスシグナル伝達分子を介する先天的な免疫応答を誘導し、その結果インターフェロンガンマのような炎症性サイトカインの分泌を生じる。これは、L1 ORFに対して誘導される特異的な細胞免疫応答を増大する。従って、構造タンパク質(L1およびL2)の両方に対する幅広い強固な免疫応答が、誘導される。これらの多機能性ワクチンでワクチン接種されたウサギは、CRPVウイルスおよびROPVウイルスの両方の病原体接種に対して保護される。
【0156】
機能的RNAを生成する代替的な方法は、IRESおよびL1についての配列をTMV RNA中に挿入することであり、これはまた、コートタンパク質上のL2ペプチドエピトープの分子融合を発現する。この方法は、インビボでRNAをキャプシドで包む利点を有し、そして細胞摂取メカニズムが遺伝子の転写を可能にする後まで分解からRNAを保護するために再度キャプシドで包むことに依存しない。第3の戦略において、コートタンパク質はまた、Tヘルパーエピトープ、細胞融合エピトープ、アジュバンド、またはE7のような非構造タンパク質の全長遺伝子産物の結合のためのN末端システインを有する。
【0157】
E1、E2、E4、E6、E7およびE8を含む乳頭腫ウイルス非構造タンパク質は、ワクチン接種された動物における、保護的免疫または病変の後退および除去を媒介することが公知である(Han Rら、2002,Cancer Detect Prev 26:458−67;Han Rら、2000,Journal of Virology 74:9712−6)。上記と同じ様式で、保護免疫を媒介することが公知であり、ウイルス感染の後退または治癒を誘導し得る他の乳頭腫タンパク質をコードするmRNAまたは自律性複製RNAが、ウイルス構造中でキャプシドに包まれ得る(図22)。
【0158】
(実施例13 多価黒色腫ワクチン)
腫瘍成長に対する良好な保護を刺激する黒色腫抗原は、代表的にCTLエピトープとして特徴付けられる。CTL応答は、免疫系に対するワクチン呈示の間の免疫刺激を包含する抗原呈示のための状況に高度に依存する。これは、GM−CSFまたはINFγのような免疫刺激サイトカイン、CpGオリゴのようなT細胞を特異的に活性化するアジュバント、またはIl1BまたはMIP1aまたはIP10のような免疫調節ペプチドもしくはタンパク質のいずれかについての必要性により特徴付けられ、ワクチンと共に送達され、またはワクチン産物に直接融合される。分子結合体または化学結合体のいずれかである、黒色腫CTLエピトープ融合体が、野生型TMV RNA上で再集合され、そしてペプチド特異的CTL応答の適切な刺激について試験される。次いで、同じ黒色腫CTLエピトープ融合物が、TMVアセンブリ起点およびIFNg、GM−CSF、MIP1aまたはIP 10についての哺乳動物翻訳可能コドンの両方を含むRNAに再集合される。エピトープTMVまたはエピトープTMV/IFNγ(例えば)でのワクチン接種後、CTL応答のレベルが、測定され、かつ比較される。機能的RNAの翻訳は、免疫活性を生じるタンパク質を生成し、これによりCTL応答を増大する。
【0159】
あるいは、RNAは、より幅広い免疫範囲についての細胞免疫応答または体液免疫応答を刺激する第2の全長抗原をコードする。例えば、黒色腫腫瘍は、病原体接種された個体においてCTL応答および抗体応答の両方を生成するいくつかの特異的な抗原を発現する。マウス腫瘍において、このような抗原としては、p15e、チロシナーゼ(tryrosinase)およびGP100が挙げられる。いくつかのCTLエピトープおよび抗体刺激ドメインが、各々の腫瘍特異的抗原について存在する。規定されたCTLエピトープ(例えば、p15e CTLエピトープ)が、TMVの表面上に融合され、そしてキャプシドで包まれたRNAが、gp100またはチロシナーゼコード配列の全体をコードする。p15eエピトープに対するCTL反応性が測定され、RNAによりコードされるgp100またはチロシナーゼエピトープに対するさらなる細胞反応性または体液反応性が、生じる遺伝子産物のRNA発現および活性を示す。
【0160】
細胞アッセイまたは体液アッセイは、ワクチンが免疫応答を刺激するレベルを指示する。免疫反応性を示す別の方法は、抗原をコードする腫瘍で動物に病原体接種するか、腫瘍成長の速度または腫瘍が引き起こす病的状態をモニタリングすることによる。このようなモデルは、黒色腫について存在し、そして黒色腫ワクチンの有効性の原型を作るのに広範に使用される。B16黒色腫モデルは、p15e、チロシナーゼ(tryosinase)およびgp100を発現し、そして腫瘍成長の速度を減少または除去するために、ワクチン接種後の効果的なCTL応答を必要とする。CTLエピトープ融合ワクチンでワクチン接種された動物は、腫瘍で病原体接種され、そして効果的な免疫応答は、コントロールと比較しての腫瘍成長の速度または罹病率を減少させる。TMVコートまたはTMVコート融合物によりキャプシドに包まれる免疫刺激RNAまたは全長遺伝子産物のいずれかが有効な場合、腫瘍成長の速度は、タンパク質ワクチンのみと比較して減少し、または全体の罹病率が、減少する。これらの発見は、細胞応答データおよび体液応答データを裏付け、これらの応答は、腫瘍を減少または除くのに必要不可欠であると考えられる。
【0161】
乳頭腫ウイルス適用について上に記載されるように、機能的なキャプシドで包まれたRNAは、TMVのアセンブリ起点を含む操作されたアルファウイルスのように自己複製し、またはIRESを含み、TMV RNAの内部部位から翻訳を刺激し得る(例として、図22を参照のこと)。上にまた記載されるように、エピトープ融合物の組み合わせは、分子結合体方法または化学結合体方法のいずれかにより作製され得、そしてペプチドに限定される必要がない。DNA配列および全てのタンパク質はまた、再集合されるTMVまたはN末端システインをまたコードするTMVコート融合物に追加され得る。
【0162】
(実施例14 TMVコートタンパク質融合物の免疫原性)
(V5コート融合物およびMyc U1コート融合物への免疫原性:抗体エピトープへの応答)
コート融合ペプチドが適切な免疫を刺激し得ることを確かめるために、本発明者らは、マウスにおけるワクチンとして、公知の抗体結合特性を有する、mycペプチド融合物およびV5 U1ペプチド融合物を試験し、次いで、抗myc抗体応答および抗V5抗体応答を探した。V5コート融合物およびmyc TMV U1コート融合物が、目的の融合物の回収の為に最適化された抽出法により調製された。材料を、BCAタンパク質アッセイにより定量化し、MALDI−TOFによりペプチドの完全性についてそしてSDS−PAGEにより純度について評価した。次いで、10μgのTMVタンパク質が、Balb−Cマウスに、2週間毎に3回注入される。第2のワクチン接種の後および第3のワクチン接種の後に、動物が、採血され、そして血清が、集められ、ELISAによりペプチド特異的反応性について分析された。第3のワクチン接種の後の血清滴定の結果を、図23に示し、これは2回のワクチン接種の後に観察されるレベルから高められる。
【0163】
この研究からの結果は、3つ全ての位置、V5およびmycペプチド融合物、TMV U1コートが、アジュバントが与えられない場合でさえ、適切な抗ペプチド抗体応答を誘導し得ることを指示する。個々のマウスにおける変化した応答レベルは、サブユニットワクチンの代表的なものであり、そして他の抗原ワクチンについて観察された。全体にわたって、試験される各々のワクチン接種群における平均的応答は、最大応答レベルが各々の群において有意に異なった場合でさえ、ペプチド融合物の位置により有意には異ならなかった。興味深いことに、TMVキャリアへの応答は、一般に大きさにおいて抗ペプチド応答よりもより低かった(データは示さず)。注目すべきことに、これらのワクチンは、アジュバントなしで投与され、各々の群における高いレベルの応答が、ウイルスキャリアが抗原特異的である体液免疫刺激を提供し得ることを示す。
【0164】
(OvaペプチドU1コート融合物についてのCTL応答アッセイ開発)
ワクチン接種したマウスにおける適切な体液応答を刺激する抗体−標的ペプチドの能力を試験することに加えて、本発明者らはまた、トリオボアルブミンタンパク質から得られるCTLエピトープの能力を試験し、適切にMHC制限したマウスにおける細胞免疫を刺激した。20μgのOva−N融合物またはOva−G TMV融合物を、マウスへアジュバントなしで2週間毎に4回投与し、次いで脾臓を、最後のワクチン接種の5日後にワクチン接種した動物から採取した。細胞を単離し、ゴルジ輸送インヒビターBrefeldin Aの存在下で5時間の間、培地または培地プラスovaペプチドで培養し、次いで細胞を、細胞内サイトカインIFNガンマまたはTNFアルファのPE染色と共に、CD4 T細胞レセプターまたはCD8 T細胞レセプターの表面発現に対してFITC結合した抗体で蛍光染色した。ovaペプチドでの刺激が、ペプチドに特異的であるT細胞におけるこれらのサイトカインをアップレギュレートし、これは蛍光標示式細胞分取(FACS)により細胞数における増加により測定される。5×10の事象が集められ、その約20%は、T細胞である。
【0165】
CD4細胞とCD8細胞の両方を、IFNγ(ガンマ)およびTNFα(アルファ)の増加した細胞内発現についてモニタリングした。図24に示されるとおり、5時間のペプチド刺激後、CD4陽細胞(ゲートで制御される事象の0.08%〜0.17%または10〜22細胞)、およびCD8陽細胞(ゲートで制御される事象の0.08%〜0.13%または11〜17細胞;データは示さず)において、細胞内IFNガンマレベルが上昇し、これは、統計学的に有意な増加を表す。TNFアルファレベルは、CD4+細胞において有意に上昇したが(0.08%〜0.13%)、CD8+細胞において変化しなかった(0.12%〜0.10%;データは示さず)。
【0166】
アジュバントがワクチンと共に投与されなかったことを考慮すると、サイトカインレベルにおけるこれらの中程度の増加は、ワクチンが適切な細胞応答を刺激していることを示唆する。ワクチンと一緒でのアジュバントの投与、またはTMVワクチンに対する免疫刺激ペプチドの融合は、活性化T細胞のパーセンテージを増加すると予期される。例えば、T細胞活性化アジュバント、一本鎖CpG DNAオリゴ1758は、ova系または他のCTL系における細胞応答を特異的に増大する。本発明者らの系について、ヌクレオチドが、ワクチンと混合され、またはTMV U1と直接融合される。他の系において、IL1bペプチドが、抗体応答およびCTL応答の両方を高めることが示されたが、これはIL1bペプチドが、多価ワクチンにおいてのように、ovaペプチドワクチンに物理的に結合する場合のみである。
【図面の簡単な説明】
【0167】
【図1】図1は、化学的融合を通じた多価ワクチンの生成のための標準的な方法を概略する流れ図である。
【図2】図2は、翻訳可能なRNA種を足場として使用することを通じて二機能性であり得る、化学的融合を通じた多価TMVベースのワクチンを生成するための方法を概略する流れ図である。
【図3】図3は、遺伝子融合を通じた多価ワクチンの生成のための標準的な方法を概略する流れ図である。
【図4】図4は、翻訳可能なRNA種を足場として使用することを通じて二機能性であり得る、遺伝子融合を通じた多価TMVベースのワクチンを生成するための方法を概略する流れ図である。
【図5】図5は、TMVビリオンジアセンブリおよびインビトロビリオン再アセンブリの提供であり、左から右に向かって:単一TMVビリオンの電子顕微鏡図;個々のTMVコートタンパク質の空白詰めモデル(表面に曝されたN末端ドメイン(N)およびC末端ドメイン(C)ならびに表面に曝されたループ(SL)を略図配置した);20Sディスクサブユニットの空間詰めモデル;およびRNAを取り囲む再構築されたVLP。
【図6】図6は、改変されたTMV 20Sサブユニットに対する種々の生物学的機能の異種ペプチドのインビトロ結合体または分子融合体および生体活性RNAを取り囲む異種ポリマー(複数ペプチドディスプレイ)VLPの再構築の概略である。
【図7】図7は、TMV U1コートタンパク質における異なる挿入部位でのTMV−HAペプチド融合体の発現レベルを示す。N.Benthamiana植物(種蒔き後21日)に、中程度に研磨されたキャプシド形成RNAを摂取し、そして約200μgの組織を、感染の9〜10日後に収集した。サンプルを、300μlの酢酸緩衝液(pH 5)中に挽き、そして不溶性物質を遠心分離によりペレット化した。100μlのSDS−PAGE緩衝液中で100μgの組織を粉砕することによって総植物タンパク質を収集した。可溶性の上清を除去し、次いで、ペレットを、最終pH抽出(pH 7)のために、200μlのTris緩衝液(pH 7.5)中に再懸濁した。次いで、10μlの各サンプルを10〜20% SDS−PAGEにより分離し、クマシーブリリアントブルー中で染色し、そして写真撮影の前に脱色した。HANは、約19kDに、pH5不溶性pH7可溶性コート融合体として蓄積する(矢印)。HAループは発現されるが、不溶性である(総SDS粉砕物中に存在するが、可溶性フラクション5〜7には存在しない)。HA GPATは、発現されpH5で可溶性であるが切断され、そしてpH7で部分的にのみ切断される。Ha Cは発現されpH5で不溶性でありpH7で可溶性であり、微量の切断産物が見える。5:酢酸緩衝液(pH5);7:Tris緩衝液(pH7);S:SDS PAGE緩衝液総組織粉砕物。
【図8】図8は、pl5eTMVまたはpl5e DE TMVに感染した植物から、感染の兆候が明らかになった後、収集したTMVタンパク質を示す。20mgの葉ディスク(leaf disc)を、酢酸緩衝液A(50mM 酢酸ナトリウム(pH5.0)/5mM EDTA)で処理し、次に、不溶物質を、tris緩衝液T(50 mM TRIS (pH 7. 5)/ 10 mM EDTA)中に懸濁し、そして物質を、総タンパク質分析のためにSDS page緩衝液S(78mM TRIS(7.0)/10%(w/v)ドデシル硫酸ナトリウム/0.05% ブロモフェニルブルー/6.25% グリセロール/10% β−メルカプトエタノール)中で処理した物質(全タンパク質についての分析)と比較した。次いで、物質を、SDS−PAGEによって分離し、そしてクーマシー染色によって可視化した。コントロールは、U1(タバコモザイクウイルス株U1の野生型被膜タンパク質)である。M:タンパク質分子量標準物質。
【図9A】図9A(1)は、N末端システインTMV U1(配列番号19)についての核酸組成およびアミノ酸組成を示す。あるいは、システインは、他のトバモウイルス被膜内および被膜タンパク質内の他の位置(60sループ、C末端、読み過し位置)に組み込まれ得る。図9A(2)は、N末端リジンTMV U1(配列番号20)についての組成である。あるいは、リジンは、他のトバモウイルス被膜内および被膜タンパク質内の他の位置(60sループ、C末端、読み過し位置)に組み込まれ得る。
【図9B】図9Bは、TMV被膜タンパク質を含むシステインへの、グルタルアルデヒドによる化学的結合を示す。1.0mgのペプチドを、1.0mgのCyst−N TMV(C−N)と混合し(体積1ml中)、そして20μlサンプルを、T=0で取り出した。このサンプルを、20μlの水および40μlの2×PAGE緩衝液に加え、そして直ちに煮沸した。(T=0における水は、その濃度をグルタルアルデヒドを加えたT=4の濃度と等しくする。)グルタルアルデヒドを、反応物に終濃度が1%になるように加えた(終量2ml)。反応物を、連続的に回転させながら、4時間室温で処理した。4時間後、サンプルを、T=4時点について取り出し、同量の2×PAGE緩衝液を加えて、直ちに煮沸した。各時点についての8μl(2μgペプチドおよび2μgキャリア)を、ニトロセルロースへのウェスタントランスファーのためにゲル状にロードし、そして各時点についての16μl(4μgペプチドおよび4μgキャリア)を、クーマシー染色のためにゲル状にロードした。
【図10】図10は、TMV野生型およびmycまたはV5 N末端の融合ウイルスの遷移電子ミクログラフ(TEM)画像である。TMV、TMV−myc−NまたはTMV−V5−Nを、400−メッシュの、炭素コートした銅グリッド状に、20〜80μg/mlでコートした。サンプルを、次いで、1% リンタングステン酸でネガティブ染色し、そしてPhilips CM120 TEMを37,000×倍率で使用して可視化するまで、室温で保存した。バーは、130nmを表す。
【図11】図11(A)は、TMV U1ウイルスの感染植物材料からの精製についての流れ図を示す。図11(B)は、感染N tabacum MD609植物からのTMV U1の単離についてのSDS−PAGE分析(10−20% tris−グリシンゲル)である。ウイルスの大部分はS1上清に分配されたため、S2上清は処理しなかった。GJは、グリーンジュース;S1は、上清S1; S1 PEG1は、第1PEG沈殿からのウイルスの懸濁物;S1 PEG2は、第2PEG沈殿からのウイルスの懸濁物である。
【図12】図12は、システインN被膜タンパク質融合体についてのS1処理流れとS2処理流れとの間に分配されるウイルスに対する、塩の効果を表すSDSゲル(10−20% tris−グリシンゲル)を示す。GJは、最初のグリーンジュース;S1は、S1処理流れ;S2は、S2処理流れである。
【図13】図13は、TMVウイルスのポリエチレングリコール(PEG)および塩化ナトリウム(NaCl)存在下における沈殿についての流れ図を示す。
【図14】図14は、TMVウイルスからの遊離の被膜タンパク質の産生についての流れ図を示す。
【図15】図15(A)は、TMV U1被膜タンパク質(pH8.0)についての紫外線吸収スペクトルを示す。図15(B)および図15(C)は、Myc N被膜タンパク質をDEAEセファロースで処理して夾雑する残留RNAを除去し、DEAE樹脂処理前(B)と処理後(C)で紫外線吸収スペクトルを比較したもの。図15(D)は、Myc N被膜タンパク質をDEAEセファロースで処理して夾雑する残留RNAを除去し、夾雑RNAを追跡するために行ったアガロースゲル電気泳動である。初期被膜(L)のDEAE樹脂への結合後、被膜タンパク質を50mMのNaClで溶出し(E50)、RNA非含有調製物を得た。樹脂からRNAを溶出するために、500mMのNaClが必要だった(E500)。FTは、樹脂フロースルー液を表す。
【図16】図16(A)は、TMV U1被膜タンパク質のクロマトグラム(室温でのインキュベーションの前および後に、サイズ排除クロマトグラフィーにより分析した)における変化を示す。図16(A)は、4℃で保存した被膜タンパク質のクロマトグラムプロフィールである。YMC−Pack Diol−300カラム(5μmビーズ;穴のサイズ 30nm)を使用し、流速は0.5ml/minであった。使用した緩衝液は、0.1Mリン酸緩衝液(4℃または室温(注入されたサンプルの温度に基づく)でpH 7.0)であった。図16(B)は、室温で16時間の保存後の被膜タンパク質のクロマトグラムプロフィールである。YMC−Pack Diol−300カラム(5μmビーズ;穴のサイズ 30nm)を使用し、流速は0.5ml/minであった。使用した緩衝液は、0.1Mホスフェート(4℃または室温(注入されたサンプルの温度に基づく)でpH 7.0)であった。
【図17】図17(A)は、ウイルスRNAおよびU1被膜タンパク質からのビリオン再構築(その後、310nmでの溶液の濁りが増す)の動態学を示す。これは、平均ロッド長にほぼ比例する。その開始RNAと同モル濃度のTMVウイルスを使用し、インビトロキャプシド形成(encapsidation)における完全な再構築の吸光度を示した。(1)標準IVE条件;0.1Mリン酸ナトリウム(pH 7.2)。(2) RNasin(0.4U/μl)含有0.1Mホスフェート(pH 7.2)。(3)0.1 Mピロリン酸ナトリウム(pH 7.2)。図17(B)は、RNA完全性を評価するための、最終アセンブリ反応物のアガロースゲル電気泳動である。RNAコントロールは、被膜タンパク質欠損RNAである;PO4は、リン酸緩衝化再アセンブリ反応物である;Pyro PO4は、ピロリン酸緩衝化再アセンブリ反応物である;P04 RNasinは、RNasin含有リン酸緩衝化再アセンブリ反応物である。
【図18】図18(A)は、RNasin存在下および非存在下でのELDKWAS被膜タンパク質融合による再アセンブリ反応(IVE)についてのA310nm動態学プロフィールを、示す。ELDKWASウイルスコントロールは、再アセンブリ反応物中のRNAと同モル濃度で存在する。図18(B)は、開始5時間後の再アセンブリ反応物のアガロースゲル電気泳動である。再アセンブリ反応を、RNasinの存在下(+)または非存在下(−)で行い、使用した被膜タンパク質を示した。再アセンブリ反応物中の濃度と同濃度で、RNA単独をコントロールとして泳動した。
【図19】図19は、遷移電子検鏡(TEM)で可視化した再アセンブリ反応の画像およびデータ分析を示す。サンプルを、1%リンタングステン酸でネガティブ染色し、乾燥させ、そしてPhilips CM120 TEMを37,000×倍率で使用して可視化するまで、室温で保存した。(A)被膜タンパク質コントロールサンプル(RNA非存在)。(B)(A)と同じ被膜タンパク質濃度で、TMV RNA(50μg/ml)存在下での再アセンブリ反応。画像は、RNasin存在下で行った再アセンブリ反応についてのものである。スケールバーは200nmを表す。(C) ELDKWAS被膜タンパク質融合体を用い、RNasin存在下および非存在下で行った再アセンブリ反応についての基準化粒子サイズ分布の比較。nは、電子検鏡画像で係数したロッドの数を示す。
【図20】図20(A)は、ELDKWAS、MycおよびHPV ep2タンパク質融合体を用い、全てRNasin存在下で行った分離再アセンブリ反応(IVE)についてのA310nm動態学プロフィールを示す。野生型TMVを、足場として使用した。ELDKWASウイルスコントロールは、RNAと同じモル濃度で再アセンブリ反応物中に存在した。RNA単独のコントロールもまた示すが、被膜タンパク質単独ならびにHPV ep2ウイルスおよびMycウイルスのコントロールは、明瞭さのために省略する。図20(B)は、ELDKWAS、MycおよびHPV ep2被膜タンパク質融合体(対の組み合わせで用いる)を用いた二価再アセンブリ反応(IVE)についてのA310nm動態学プロフィールを示す。全ての再アセンブリ反応は、RNasin存在下で行い、野生型TMVRNAを足場として使用した。ELDKWASウイルスコントロールは、RNAと同じモル濃度で再アセンブリ反応物中に存在した。RNA単独のコントロールもまた示すが、被膜タンパク質単独ならびにHPV ep2ウイルスおよびMycウイルスのコントロールは、明瞭さのために省略する。
【図21】図21は、CRPV 2.1被膜タンパク質融合体についてのMALDIおよびSDS−PAGEデータを示す。(A)精製CRPV 2.1被膜タンパク質融合体についてのスペクトルを示すMALDI TOF追跡。Metで切断されたタンパク質についての推定の配列重量は、19320 Daであり、観察された分子量と完全に一致する。(B)CRPV 2.1被膜タンパク質融合体についてのSDS−PAGEゲルであり、タンパク質の純度が最終ウイルス調製物97%以上であることを示す。
【図22】図22は、多価TMVベースのワクチンの再アセンブリの足場として使用され得、そのコードする遺伝子に起因して再構築ビリオンに二官能性を与える種々のRNA構築物を示す。(A) 構造遺伝子または非構造遺伝子を含むTMV RNA。(B)IRES構造遺伝子またはIRES非構造遺伝子を含むTMV RNA。(C)TMV OASおよび構造遺伝子または非構造遺伝子を含むαウイルスレプリコン。(D)構造遺伝子、非構造遺伝子または免疫調節遺伝子を有するTMV OASおよびOmegaを含むキメラmRNA。(E) 構造遺伝子、非構造遺伝子または免疫調節遺伝子を有するTMV OASを含むキメラmRNA。例示の目的で、この図はRNA構築物中にCRPV L1遺伝子またはCRPV E7遺伝子を示す。しかし、黒色腫関連遺伝子(例えば、pl5e、GP100または任意の他の構造遺伝子もしくは非構造遺伝子が、これらのCRPV関連遺伝子と置き換わり得る。
【図23】図23は、TMV被膜融合ワクチンに対する体液応答を、ペプチドに対するELISAで測定して示す。血清を、ワクチン3後(pV3)10日目に収集し、c−myc−BSA結合体または外来抗原(FNR)V5融合体でコートしたELISAプレート上で連続希釈した。プレートを、次いで抗マウスHRPで反応させ、陽性を比色定量基質を使用して可視化し、そして統計学的ソフトウェアを使用して定量した。市販の陽性コントロールを、基準物質として用いた。
【図24】図24は、TMV ova Gワクチン接種に対する細胞性応答を、蛍光支持セルソーティング(FACS)によって測定して示す。TMV ova Gワクチン接種された動物から脾臓を収集し、そして次いで、1μg/mlのovaペプチドと共にブレフェルディンA(Brefeldin A)存在下で5時間培養した。次いで細胞を固定し、抗CD4−FITC抗体または抗CD8−FITC抗体と共にインキュベートし、次いで再固定し、そして透過処理した。細胞を、次いで抗IFN−PEまたは抗TNF−PEと共にインキュベートし、次いでPE染色およびFITC染色について、フローサイトメトリを使用して可視化した。
【配列表】







【特許請求の範囲】
【請求項1】
真核生物細胞で発現し得る遺伝子をコードするRNAを含むウイルス様粒子(VLP)を作製する方法であって、該方法は、以下の工程:
a)TMVウイルスを分解する工程;
b)キャプシドに包まれた中間体(encapsidation intermediate)(20Sディスク)集団の1つ以上の群を形成する工程;
c)キャプシドに包まれた中間体(20Sディスク)の1つ以上の群の一部分を混合する工程;
d)1つ以上のキャプシドに包まれた中間体(20Sディスク)のインタクトなVLPを形成し、該中間体は、遺伝子をコードするRNAを囲み、配列の再配置が哺乳動物細胞における翻訳および遺伝子発現、ならびにVLP構造によって哺乳動物細胞または組織に送達するためのRNAの安定化を可能にする、工程、
を包含する、方法。
【請求項2】
多重の異なる組成の、ペプチドまたはタンパク質を含むウイルス様粒子(VLP)を作製する方法であって、該方法は、以下の工程:
a)遺伝子融合を介して異なるペプチドまたはタンパク質を各々提示する、別個のウイルスまたはVLP集団を分解する工程;
b)異なるペプチドまたはタンパク質を各々提示するキャプシドに包まれた中間体集団を形成する工程;
c)異なる集団由来のキャプシドで包まれた中間体を混合する工程;
d)異なるキャプシドで包まれた中間体から構成される核酸コアを囲むインタクトなVLPを形成する工程であって、その結果、該VLPが1つ以上のペプチドまたはタンパク質を提示する、工程、
を包含する、方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、以下:
前記VLPは、タバコモザイクウイルス(TMV)ウイルス様粒子(VLP)であり、該粒子は、多重の異なる組成のペプチドまたはタンパク質を含み;
前記分解工程において、前記別個のウイルスまたはVLP集団がTMV集団であり;そして
前記第一の形成工程、混合工程、および第二の形成工程において、前記キャプシドに包まれた中間体集団が、20Sディスクである、方法。
【請求項4】
多重の異なる組成のペプチド、タンパク質または核酸部分を含むウイルス様粒子(VLP)を作製する方法であって、該方法は、以下の工程:
a)遺伝子融合によって提供される化学結合のための表面残基を有するウイルスまたはVLP集団を分解する工程;
b)キャプシドに包まれた中間体集団を形成する工程;
c)いくつかの別個のキャプシドに包まれた中間体集団の各々に対して、特有のペプチド、タンパク質または核酸部分の化学結合をもたらす工程;
d)核酸足場の存在下において、異なる集団由来のキャプシドに包まれた中間体を混合する工程;
e)異なるキャプシドに包まれた中間体から構成される核酸コアを囲むインタクトなVLPを形成する工程であって、その結果、該VLPは、ペプチド、タンパク質または核酸、あるいはそれらの組み合わせのような、1つより多い部分を提示する、工程、
を包含する、方法。
【請求項5】
1つ以上の、提示された異なる組成のペプチドまたはタンパク質を含むTMVウイルスを作製する方法であって、該方法は、以下の工程:
a)以下を有するTMV発現ベクターを構築する工程であって:
i)哺乳動物細胞における発現のための遺伝子であって、該遺伝子は、TMV30kDa移動タンパク質内に存在する内部リボソーム開始配列(IRES)の3’下流に配置されるか、または30kDa移動タンパク質遺伝子の3’下流に別個に配置されている、遺伝子;
ii)哺乳動物における発現のための遺伝子の下流にある非ネイティブサブゲノムプロモーターから発現されるコートタンパク質;
iii)遺伝子融合によって提供される、ペプチド配列、タンパク質および/または化学結合のための表面残基の発現のための遺伝子融合のいずれかを有するコートタンパク質;
b)ペプチド、タンパク質および/または表面残基を発現する該TMVウイルスを精製する工程;
c)特有のペプチド、タンパク質または核酸部分の化学結合を、精製されたTMVウイルスにもたらす工程;
d) 該RNA発現構築物の安定化および哺乳動物の細胞または組織への送達のために、遺伝子融合ペプチドおよび/または化学融合ペプチドを有するTMVウイルスを使用する工程、
を包含する、方法。
【請求項6】
多重の異なる組成のペプチド、タンパク質または核酸を含むTMVウイルス様粒子(VLP)を作製する方法であって、該方法は、以下の工程:
a)別個のTMV集団を分解する工程であって、該集団の各々は、遺伝子融合によって提供された化学結合のための特有の残基を有する、工程;
b)該別個のTMV集団からキャプシドに包まれた中間体20Sディスク集団を形成する工程;
c)該キャプシドに包まれた中間体20Sディスクの別個の集団に、特有のペプチド、タンパク質または核酸部分の化学結合をもたらす工程;
d)核酸足場の存在下において、異なる集団に由来する少なくとも2つの異なるキャプシドに包まれた中間体20Sディスクを混合する工程;
e)少なくとも2つ異なるキャプシドに包まれた中間体20Sディスクから構成される核酸コアを囲むインタクトなTMV VLPを形成し、その結果、該VLPは、1つより多い部分を提示する工程であって、該1つより多い部分は、ペプチド、タンパク質または核酸、あるいはそれらのいくつかの組み合わせである、工程、
を包含する、方法。
【請求項7】
請求項7に記載の方法であって、各々異なる集団に由来する、多重の異なるキャプシドに包まれた中間体を混合する工程が、前記形成工程において、前記VLPが、多数の部分を提示するように混合され、該多数の部分は、ペプチド、タンパク質または核酸、あるいはこれらの部分のいくつかの組み合わせである、方法。
【請求項8】
前記形成工程において、前記VLPが、少なくとも3つのペプチド、タンパク質または核酸を提示する、請求項8に記載の方法。
【請求項9】
プロセスによって提示される、多重の異なる組成のペプチドまたはタンパク質を含むウイルス様粒子(VLP)を作製する方法であって、該方法は、以下の工程:
a)別個のVLP集団を分解する工程であって、該集団の各々は、異なるペプチドまたはタンパク質を遺伝子融合によって各々提示する工程;
b)遺伝子融合によって提供される化学結合のための表面残基を有する別個のVLP集団を分解する工程;
c)以下のようなキャプシドに包まれた中間体集団を形成する工程:
i)別個のペプチドまたはタンパク質を各々提示するキャプシドに包まれた中間体集団および
ii)化学結合のための表面残基を各々提示するキャプシドに包まれた中間体集団
d)化学結合のための表面残基を提示する該キャプシドに包まれた中間体の別個の集団に、特有のペプチド、タンパク質または核酸部分の化学結合をもたらす工程;
e)遺伝子融合によってペプチドまたはタンパク質を提示するか、あるいは化学結合によってペプチド、タンパク質または核酸を提示する別個の集団由来のキャプシドに包まれた中間体を混合する工程;
f)異なるキャプシドに包まれた中間体から構成される核酸コアを囲むインタクトなVLPを形成し、その結果、該VLPが、1つより多い部分を提示し、該1つより多い部分は、ペプチド、タンパク質または核酸、あるいはこれらの部分のいくつかの組み合わせである、工程、
を包含する、方法。
【請求項10】
前記VLPがTMVウイルスであり、該キャプシドに包まれた中間体が20Sディスクである、請求項10に記載の方法。
【請求項11】
化学結合のための前記残基を提示する前記キャプシドに包まれた中間体への、特有のペプチドおよび/または核酸部分の前記化学結合が、核酸コアを囲むインタクトなVLPの形成後に実施される、請求項11に記載の方法。
【請求項12】
前記多重の異なるペプチド、タンパク質または核酸部分が、前記VLP上に提示され、その結果、該VLPが、2つ以上の生物に免疫応答を誘導する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法によって生成されるVLP。
【請求項13】
前記多重の異なるペプチド、タンパク質または核酸部分が、前記VLP上に提示され、その結果、該VLPが、1つ以上のエピトープに対する免疫応答を宿主に誘導する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法によって生成されるVLP。
【請求項14】
前記多重の異なるペプチド、タンパク質または核酸部分が、前記VLP上に提示され、その結果、該VLPが、宿主における促進された細胞取り込みを示す、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法によって生成されるVLP。
【請求項15】
前記多重の異なるペプチド、タンパク質または核酸部分が、前記VLP上に提示され、その結果、該VLPが、宿主細胞におけるそれらの免疫刺激機能または調節機能を示す、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法によって生成されるVLP。
【請求項16】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法によって生成される多価のVLPを構築するための足場として機能する核酸部分を含む、VLP。
【請求項17】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法によって作製されるVLPであって、該VLPが、以下の機能:
体液性免疫応答の誘導、
細胞性免疫応答の誘導、または
宿主免疫応答の刺激または調節
の1つ以上についての遺伝子を含む核酸部分を含む、VLP。
【請求項18】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法によって作製されるVLPであって、該VLPが、以下:
インタクトなウイルス抗原または一部分のウイルス抗原、
インタクトな細菌抗原または一部分の細菌抗原、
インタクトなマイコプラズム抗原または一部分のマイコプラズム抗原、
インタクトな真核生物病原抗原または一部分の真核生物病原抗原、および
サイトカイン、
ケモカイン、ならびに
ケモカイン、サイトカインまたは宿主免疫応答を調節し得る細胞レセプター部分
の1つ以上についての遺伝子を含む核酸部分を含む、VLP。
【請求項19】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法によって作製されるVLPであって、該VLPは、前記表面上に提示される前記部分および/または前記核酸コアに関連する機能性によって、ワクチン、抗アレルギー医薬、診断剤またはコンビナトリアル化学薬剤としての機能を必要とされる特徴を有する、VLP。
【請求項20】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法によって作製されるVLPであって、該VLPは、以下:
RNA部分であって、以下の群:
哺乳動物細胞における発現を介して宿主免疫応答を誘導または調節するための遺伝子を含むTMV発現ベクター;
哺乳動物細胞における発現を介して宿主免疫応答を誘導または調節するための遺伝子の上流に内部リボソーム開始配列(IRES)を含むTMV発現ベクター;
アセンブリのTMV起源(OAS)および哺乳動物細胞における発現を介して宿主免疫応答を誘導または調節するための遺伝子;
TMVωRNAリーダー、アセンブリのTMV起源(OAS)および哺乳動物細胞における発現を介して宿主免疫応答を誘導または調節するための遺伝子;
αウイルスレプリコンのアセンブリのTMV起源(OAS)および哺乳動物細胞における発現を介して宿主免疫応答を誘導または調節するための遺伝子;
ルビウイルスレプリコンのアセンブリのTMV起源(OAS)および哺乳動物細胞における発現を介して宿主免疫応答を誘導または調節するための遺伝子;
該アセンブリのTMV起源(OAS)を含むノダウイルスレプリコンおよび哺乳動物細胞における発現を介して宿主免疫応答を誘導または調節するための遺伝子;ならびに
該アセンブリのTMV起源(OAS)を含むフラビウイルスレプリコンおよび哺乳動物細胞における発現を介して宿主免疫応答を誘導または調節するための遺伝子、
由来のいずれか1つを含む、VLP。
【請求項21】
特異的な化学結合反応を強めるための、タバコモザイクウイルスビリオンの表面上に対になってないシステイン残基を提示される表面を含むVLPであって、TMVコートタンパク質のN、Cまたは表面に露出されたループにおいて、対になっていないシステイン残基の遺伝子発現によって構築される、VLP。
【請求項22】
特異的な化学結合反応を強めるための、タバコモザイクウイルスビリオンの表面上にリジン残基を提示される表面を含むVLPであって、TMVコートタンパク質のN、Cまたは表面に露出されたループに、リジン残基の遺伝子発現によって構築される、VLP。
【請求項23】
ペプチド融合物またはタンパク質全体を提示するTMVまたはウイルス様粒子(VLP)を精製する方法であって、該方法は、以下の工程:
a)提示されるエピトープに依存して、1%〜10%の経験的に決定された濃度で、S1またはS2の上清を含むウイルスにPEGを添加する工程;
b)すでにS1またはS2の上清に存在していない場合、4% w/vまで塩を添加する工程;
c)30分間〜1時間にわたって4℃にて上清を冷やす工程
d)遠心分離によって沈殿されたウイルスを回収する工程;および
c)純度を高めるために、該ウイルスを再懸濁し、該プロセスを繰り返す工程、
を包含する、方法。
【請求項24】
以下:
TMVコートタンパク質に遺伝的に融合され、かつコート融合蓄積および/もしくは感染された植物宿主からの抽出を改善するために導入されたさらなる荷電アミノ酸に隣接される、目的のペプチドまたはタンパク質
を含む、コートタンパク質融合物。
【請求項25】
前記コートタンパク質融合物が、配列番号22を含む、請求項24に記載のコートタンパク質融合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公表番号】特表2006−507800(P2006−507800A)
【公表日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−510726(P2004−510726)
【出願日】平成15年6月6日(2003.6.6)
【国際出願番号】PCT/US2003/018247
【国際公開番号】WO2003/103605
【国際公開日】平成15年12月18日(2003.12.18)
【出願人】(501280600)ラージ・スケール・バイオロジー・コーポレイション (2)
【氏名又は名称原語表記】LARGE SCALE BIOLOGY CORPORATION
【Fターム(参考)】