説明

可溶性カーボンナノチューブ

【課題】水を含む種々の溶媒に溶解することのできる可溶性CNTを得る。
【解決手段】RFP−SWNTを微粉状にして尿素を添加し、灰色粉末になるまで完全に微粉状にする。微粉末を試験管で160℃に加熱し、黒色液体になるまで微粉体を溶解し10分経過の後、混合物を室温まで冷却する。このようにして得られた黒色固体は、水溶性を呈する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブの可溶化方法、また、このカーボンナノチューブの可溶化方法によって製造されたカーボンナノチューブ又はカーボンナノチューブの会合体、及びその利用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブ(CNTともいう)は、独特な電気的特性、機能的特性及び構造的特性を有するため、近年、相当注目されている。カーボンナノチューブは、高い抗張力及び高い弾性、ナノキャピラリとしての気体分子吸収性、更に化学的な機能化特性、化学製品、耐熱材料としての利用可能性を有すると同時に電気伝導性を有することが示されている。カーボンナノチューブは、これらの特性を有するために、ナノ分子的な装置及び/又は電子装置への応用が期待されている。
【0003】
カーボンナノチューブは、種々の手段による炭素元素の気化を含む方法であれば、合成できる。第1の合成方法として、金属触媒(例えば、Fe,Co,Ni)の存在下において黒鉛の電気アーク放出によってカーボンナノチューブが生成されることが報告されている。また、グラファイト−ニッケル−コバルト混合物のレーザ気化又は化学蒸着に基づいてカーボンナノチューブが生成される。このとき種々の炭素源が使用できる。カーボンナノチューブは、現在のところ、製造時間の許容範囲内で、上述の方法を用いて製造することができる。このように製造されたカーボンナノチューブ材料は、相当量の汚染物質を有するとともに、側壁欠陥を有する。上述した合成方法から、更なる変形が行われることなく直接生成されるカーボンナノチューブは、一般的に「処理済カーボンナノチューブ」と呼ばれている。汚染物質を除去するために、主として酸化性処理が使用されている。
【0004】
バルク(通常、化学蒸着法、電気アーク放出、レーザアブレーション(パルス状レーザを用いたレーザ気化として知られる)または気相触媒成長)で製造される処理済カーボンナノチューブ(CNT)には、通常、大量の不純物(典型的に5〜50重量%)が混入している。不純物は、アモルファスカーボン、触媒金属の一部を包含したグラファイト、グラファイト様材料及びフラーレンを含んでいる。カーボンナノチューブを精製するための最も共通した方法には、気相又は液相酸化処理があり、この処理は、溶媒抽出法、超音波処理、遠心分離、濾過、クロマトグラフィ及び/又はマイクロ波照射等とともに行ってもよい。液相酸化処理は、一般的に、強い添加剤(主に、HNO、HSO、及び/又はHCl)を利用している。また、酸化剤(H、KMnOなど)を添加することもある。同様に、気相酸化処理は、液相添加処理に関連して用いられることがある。金属汚染物質の除去及び溶解には、後者が必要である。濃度、温度及び反応時間といった種々の反応パラメータが使用されている。代表例の幾つかを表1に示す。
【0005】
表1は、単層のCNT(精製処理は、特に明記しない限り、室温下で水溶液中において行い、濾過/洗浄及び乾燥するステップは、多くの場合省略されている)の一般的な精製方法について示している。
【0006】
【表1】

【0007】
酸化処理を続けることによってカーボンナノチューブの末端が開放し、側面の欠陥が顕著になる。その結果、CNTの末端及び表面が、例えば、カルボン酸族、エーテル族、フェノール族、及びキノン族のような酸素含有官能基でカバーされる。単層CNTを真空中で230〜330℃に加熱してカルボン酸族を熱的に破壊し、一方、800℃で加熱してエーテル族及びキノン族を破壊する。Rao及びGovindarajは、精製されたCNTを400℃下で0.5時間加熱し、CNT表面の酸性部位を除去し、開口した(Raoら (2001) Proc. Indian Acad. Sci. (Chem. Sci.) 113, 375)。また、Caiらは、600〜800℃で5時間加熱することによって単層CNTから酸素含有官能基を除去することができることを発見した((2002) Chem. Mater. 14, 4235)。真空中における1000〜1200℃下の熱アニーリングにより、開口末端がヘミフラーレンエンドキャップに接近することが予想される(Liuら (1998) Science 280, 1253.)。
【0008】
【非特許文献1】Tohji, K.; Takahashi, H.; Shinoda, Y.; Shimizu, N.; Jeyadevan, B.; Matsuoka, I.; Saito, Y.; Kasuya, A.; Ito, S.; Nishina, Y. (1997) J. Phys. Chem. B 101, 1974.
【非特許文献2】Bandow, S.; Rao, A. M.; Williams, K. A.; Thess, A. Smalley, R. E., Eklund, P. C. (1997) J. Phys. Chem. B 101, 8839.
【非特許文献3】Dujardin, E.; Ebbesen, T. W.; Krishnan, A.; Treacy, M. M. J. (1998) Adv. Mater. 10, 611.
【非特許文献4】Liu, J.; Rinzler, A. G.; Dai, H.; Hafner, J. H.; Kelley Bradley, R.; Boul, P. J.; Lu, A.; Iverson, T.; Shelimov, K.; Huffman, C. B.; Rodriguez-Macias, F.; Shon, Y.-S.; Lee, T. R.; Colbert, D. T.; Smalley, R. E. (1998) Science 280, 1253.
【非特許文献5】Zimmerman, J. L; Kelley Bradley, R.; Huffman, C. B.; Hauge, R. H.; Margrave, J. L (2000) Chem. Mater. 12, 1361.
【非特許文献6】Tang, X.-P.; Kleinhammes, A.; Shimoda, H.; Fleming, L; Bennoune, K. Y.; Sinha, S.; Bower, C.; Zhou, O.; Wu, Y. (2000) Science 288,492.
【非特許文献7】Rao, C. N.; Govindaraj, A. (2001) Proc. Indian Acad. Sci. (Chem. Sci.) 113, 375.
【非特許文献8】Chattopadhyay, D.; Galeska, I.; Papadimitrakopoulos, F. (2002) Carbon 40, 985.
【非特許文献9】Harutyunyan, A. R.; Pradhan, B. K.; Chang, J.; Chen, G., Eklund, P. C. (2002) J. Phys. Chem. B 106, 8671.
【非特許文献10】Kajiura, H.; Tsutsui, S.; Huang, H.; Murakami, Y. (2002) Chem. Phys. Lett. 364, 586.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来、カーボンナノチューブは、1つの欠点を有するが、適切な処理、及び更なる処理を行うことによって、その欠点を防止している。欠点とは、本来、カーボンナノチューブが汎用溶媒の大部分に対して不溶性を示すということである。
【0010】
この固有の不溶性は、個々のCNT間の強いファンデルワールス力とπ−πスタッキング相互作用に起因し、最密三角格子においてCNTが互いに平行に配向する原因になっている。これらの構造は、「ロープ」又は「バンドル」と呼ばれている。酸化処理されたCNTは、副結合力に関連したカルボキシルによりバンドル構造を形成する強い傾向がある。開発されたCNTの溶解度を増大する方法は、CNTを短い断片に切断し機能化することもできる。これらの方法のいくつかによって得られたCNTの真正溶液は、むしろ安定した分散度が得られる点で注目すべきである。
【0011】
CNTの切断又はCNTを短くすることは、機械的手法又は化学的手法によって達成されている。機械的手法としては、超音波処理、ボールミル及びアブレーションが用いられる。Liuらは、単層CNTを切断するために、超音波処理と化学的「エッチング」とを組み合わせた((1998) Science 280, 1253)。
【0012】
Hirschは、単層CNTの機能化について再検討した((2002) Angew. Chem. Int. Ed. 41, 1853)。水溶性CNTは、生物学的応用例に対して特別な利点を有する。
【0013】
CNTの機能化は、共有結合か非共有結合かで分類することができる。共有結合のなかには、カルボキシル基(−COOH)を最大限活用しているものがある。そしてこのカルボキシル基は、CNTにそれぞれアミド結合又はエステル結合形成を介して有機アミン又はアルコール類を付加するための酸化精製により生成されたものである。付加された有機化合物は、ポリマ及び樹枝状結晶を含んでいる。酸化炭素基に対して金属中心が結合されるように調整することによって、金属錯体を単層CNTに付加することができる。CNTを機能化する他の変形例としては、フッ化CNTの側面の可逆アルキル化(Boulら (1999) Chem. Phys. Lett. 310, 367)、アリールジアゾニウム化合物による反応(Bahrら (2001) J. Am. Chem. Soc. 123, 6536;Bahrら (2001) Chem. Mater. 13, 3823;Kooiら (2002) Angew. Chem. Int. Ed. 41, 1353)、モノクロロベンゼン及びポリ(メタクリル酸メチル)を用いて超音波処理で誘発する反応(Koshioら (2001) Nano Lett. 1, 361)、ナイトレン及び求核カルベンの付加反応(Holzingerら (2001) Angew. Chem. Int. Ed.. 40, 4002)、アゾメチンイリドの付加反応(Georgakilas et al. (2002) J. Am. Chem. Soc. 124, 760)等がある。
【0014】
CNTの機能化のための非共有結合処理には、一般に側面への分子の吸着が含まれる。この目的で用いられる界面活性剤にはドデシル硫酸ナトリウム及びトリトン界面活性剤が含まれる(Duesbergら (1998) Appl. Phys. A 67, 117;Doomら (2002) J. Am. Chem. Soc. 124, 3169)。トリトン界面活性剤のアルコール残基は、二次的な共有結合の化学修飾のために用いることができる(Shimら (2002) Nano Lett. 2, 285)。また、ポリマは、「高分子ラッピング」と呼ばれる処理によって吸着できる(Curranら (1998) Adv. Mater. 10, 1091;Tangら (1999) Macromolecules 32, 2569;Colemanら (2000) Adv. Mater. 12, 213;OConnellら (2001) Chem. Phys. Lett. 342, 265;Bandyopadhyayaら (2002) Nano Lett. 2, 25;Starら (2002) Angew. Chem. Int. Ed. 41, 2508;Chenら (2002) J. Am. Chem. Soc. 124, 9034;Starら (2002) Macromolecules 35, 7516)。有機アミンと酸化CNTのカルボン酸族との間の塩形成は、CNTを可溶化するための非共有結合処理の他の方法である(Hamonら (1999) Adv. Mater. 11, 834;Chenら (2001) J. Phys. Chem. 105, 2525;Chattopadhyayら (2002) J. Am. Chem. Soc. 124, 728;Kahnら (In press) Nano Lett)。最後に、CNTの機能化のために、π−スタッキング相互作用を経てCNT側面へピレン誘導体を吸着させる方法も用いられている。1−ピレンブタン酸のスクシンイミジルエステルは、アミド結合構造を介してタンパク質をCNTに付加するための化学的反応部位として用いられている(Chenら (2001) J. Am. Chem. Soc. 123, 3838)。
【0015】
上述した切断及び機能化処理を行っても、平行なCNTの集塊中に、例えばバンドル構造のCNTが依然として存在する。これらのバンドルを「剥離」と呼ばれる処理を経て(ノン−バンドル(バンドル無し)という意味の)単層カーボンナノチューブに分離するための試みがされてきた。
【0016】
単層カーボンナノチューブのバンドルを70%硝酸中にて25℃で2時間処理した結果、ナノチューブ相互の間隔が広がり、材料中の水素量が増加した(Bowerら (1998) Chem. Phys. Lett. 288, 481)。このような変化は、真空下において230℃で12時間加熱することによって逆向きにでき、HNO分子によるバンドルの挿入が可逆的であることを示している。酸により12時間処理すると、真空下における加熱で不可逆なCNTの構造及び形態に変化が生じる。酸化する酸がCNTを切断する間、グラファイトを挿入及び剥離することが知られていることから、Liuらは、濃HSO:HNO3=3:1の混合溶液を用いた((1998) Science 280, 1253)。
【0017】
また、剥離作用は、Chenらによって報告された機械的な切断処理の重要な特徴であり、γ−及びβ−シクロデキストリンのような軟性の有機材料中で単層CNTを研磨することによって起こる((2001) J. Am. Chem. Soc. 123, 6201)。著者によると、シクロデキストリンによるCNTの優れた分散度は、部分的な剥離作用を与えるとともに、ナノチューブにおける局部的な立体的配置の歪みを招くために十分な強さの研磨作用を与え、その結果として、おそらく欠陥がある部位で切断が起こる。
【0018】
濾過は、技術的に幅広く用いられる湿式化学処理の後、CNTを収集及び洗浄する方法である。特に、メンブラン(膜)フィルタが汎用とされている。幾つかの例としては、ポリカーボネイトトラックエッチングされた細孔サイズ0.8μmのフィルタ膜を使用する例(Shelimovら (1998) Chem. Phys. Lett. 282, 429)、細孔サイズ0.2μmのPTFEフィルタ膜を使用する例(Mickelsonら (1999) J. Phys. Chem. B 103, 4318;Starら (2002) Angew. Chem. Int. Ed. 41, 2508)、細孔サイズ3μmのポリカーボネイトフィルタ膜を使用する例(YuとBrus (2001) J. Phys. Chem. B105, 1123)がある。
【0019】
可溶化の方法として知られている従来の方法は、通常、非常に時間が係る及び/又は特別な装置や化学製品が必要であるとともに、大量の可溶化CNTを得るのは容易ではない。更にまた、従来の方法では、短くされたCNTを使用しなければならない。そこで、本発明は、水を含む種々の溶媒に溶解することのできる可溶性CNTを得る簡便な機能化方法を提供することを目的とする。更に、本発明は、CNTを短くすることなく、及び/又は更に二次的な化学修飾のための官能基を提供する、可溶化したCNTを得る方法を提供することを目的とする。また、本発明は、CNTのグラム量相当の可溶性を実現し、単層CNT及び複層CNTの両方に適用できる可溶化の方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上述した課題を解決するために、本発明に係るカーボンナノチューブの可溶化方法は、
a)カーボンナノチューブと、重合反応できる少なくとも1つのタイプのモノマ分子又は該少なくとも1つのタイプのモノマ分子の前駆体を準備するステップと、
b)上記モノマ分子又は該モノマ分子の前駆体と上記カーボンナノチューブとを混合するステップと、
c)モノマ分子とカーボンナノチューブとの重合反応を開始し、化学修飾されたカーボンナノチューブを生成するステップとを有し、化学修飾されたカーボンナノチューブは、表面及び/又は末端に官能基を有しており、該官能基において重合反応が起こることを特徴とする。
【0021】
ここで、「可溶化」とは、特に溶媒の種類に制限されない。好ましくは、水溶液又はアルコール溶液、より好ましくは、メタノール系溶液に対する可溶化を意味する。
【0022】
一例として、官能基は、C−O結合(アルコール、フェノール、エーテル、エポキシド)、C=O結合(アルデヒド、ケトン、キノン)及びO−C=O結合(カルボン酸、エステル、無水物、ラクトン、ピロン)を含む官能基から選択される酸素含有官能基である。
【0023】
また、カーボンナノチューブとしては、単層又は複層ナノチューブを用いることができる。
【0024】
また、一例として、カーボンナノチューブは、200につき1から10につき1程度の割合で炭素原子が酸化された状態にあるものを用いる。好ましくは、150につき1から20につき1程度の割合で炭素原子が酸化されたもの、更に好ましくは、100につき1程度の割合でカーボンナノチューブの炭素原子が酸化された状態にあることを用いるとよい。
【0025】
また、モノマ分子は、イソシアン酸及び/又はシアネートイオンを用いることができる。
【0026】
また一例として、少なくとも1つのモノマ分子の前駆体は、尿素及び/又は尿素誘導体を使用することができる。
【0027】
一例として、少なくとも1つのモノマ分子の前駆体は、シアヌル酸、シアヌル酸塩化物、イソシアヌル酸、及び三塩化イソシアン酸を含む官能基から選択することができる。
【0028】
また他の例として、前駆体は、シアネート塩であり、シアネート塩としては、アルカリ金属又は4級アンモニウムシアネートを使用できる。
【0029】
本発明においては、
ba)上記混合物を加熱するステップ、
または、bb)上記混合物を酸性化するステップ、
或いは、ba)上記混合物を加熱するステップとbb)酸性化するステップの両方を更に有する付加ステップを有し、加熱及び/又は酸性化により、少なくとも1つのモノマ分子の前駆体がモノマ分子を形成するために誘導される。
【0030】
少なくとも1つのモノマ分子又は上記少なくとも1つのモノマ分子の前駆体は、溶液で与えられることが好ましい。
【0031】
一例として、カーボンナノチューブは、溶液で提供される。
【0032】
また、好ましくは、モノマ溶液は、カーボンナノチューブの溶液と同一又は溶液が異なる。
【0033】
また、一例として、溶液は、モノマ又はモノマの前駆体の融点付近又は分解しない範囲で融点以上温度に加熱できる。
【0034】
一例として、少なくとも1つのアルデヒドは、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、カルボキシベンズアルデヒド、シンナムアルデヒド、クロロベンズアルデヒド、フェロセンカルボキシアルデヒド、ホルムアルデヒド、フルフラール、グルタルアルデヒド、パラホルムアルデヒド、ポリヒドロキシアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ピリジンアルデヒド、サリチルアルデヒド及びバレルアルデヒドを含む官能基から選択することができる。
【0035】
ポリヒドロキシアルデヒドは、アルドースを含む炭化水素に分類される。アルドースは、アルデヒド基(−CHO)を含む単糖類の糖である。更にアルドースは、糖のなかの炭素原子の数に依存して、アルドトリオース、アルドテトロース、アルドペントロース及びアルドヘキロースを用いることができる。これらの例としては、グリセルアルデヒド(アルドトリオース)、エリスロース(アルドテトロース)、リボース(アルドペントロース)及びグルコース(アルドヘキロース)をあげることができる。アルドペントロース及びアルドヘキロースの合成物は、これらの5員環又は6員環のヘミアセタール型として平衡状態で水溶液に存在する。また、ある二糖類、三糖類、及びアルドース成分を含む多糖類は、本発明に基づくポリヒドロキシアルデヒド合成物である。ポリヒドロキシアルデヒドである二糖類の例は、マルトース及びラクトースである。
【0036】
好ましくは、ベンズアルデヒドは、−NHR、−NRR'、−OH、−OR、−C、−CH、−CHR、−CHR及びCRから選択される少なくとも1つの電子供与性基で置換され、R及びR'は、直鎖状又は枝分かれした炭素Cを1個〜12個有するアルキル基、炭素Cを3個〜8個有するシクロアルキル基、炭素Cを6個〜12個有するアラルキル基、炭素Cを6個〜12個有するアリル基、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、及びポリ(エチレンオキシド)−ポリ(プロピレンオキシド)ブロック共重合体である。
【0037】
一例として、ベンズアルデヒドの少なくとも1つの電子供与性基は、パラ位に置換される。
【0038】
また、ベンズアルデヒドは、−OH又は−ORのうち少なくとも1つの電子供与性基で置換され、Rは、直鎖状又は枝分かれした炭素Cを1個〜12個有するアルキル基、炭素Cを3個〜8個有するシクロアルキル基、炭素Cを6個〜12個有するアラルキル基、炭素Cを6個〜12個有するアリル基、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、及びポリ(エチレンオキシド)−ポリ(プロピレンオキシド)ブロック共重合体であることが好ましい。
【0039】
より好ましくは、少なくとも1つのアルデヒドは、p−アニスアルデヒド、4−プロポキシベンズアルデヒド及び4−(ヘキシルオキシ)ベンズアルデヒドを含む官能基から選択される。
【0040】
アルデヒドが重合の前又は重合中に添加されるとき、本発明に係るカーボンナノチューブの可溶化方法の一例では、約100℃より高い沸点が必要である。パラホルムアルデヒドは、不揮発性であり、ホルムアルデヒドに脱重合するホルムアルデヒドのポリメリック型である。ベンズアルデヒド及びグルタルアルデヒドは、高沸点(>170℃)をもつ一般的なアルデヒドである。
【0041】
この特別な例では、アルデヒドの沸点の基準は、重合の間、アルデヒドが完全に蒸発することなく存在できるかということである。
【0042】
また、一例として、ステップc)の後、好ましくは、塩沈澱生成ステップ、及び/又は遠心分離又は濾過、洗浄に続いて必要に応じて両方のうち何れか、及び/又はサイズ分離、及び/又は吸着、及び/又は酵素分解、及び/又は選択的焼成、及び/又はプラズマ処理を用いて未反応モノマ及び/又は前駆体を反応系から取り除く。塩沈澱生成は、塩、好ましくは過塩素酸塩の付加によって行い、濾過は、細孔サイズ0.01μm以上1μm以下のメンブレンフィルタを用いて行い、サイズ分離及び/又は吸着は、ゲル濾過により行い、酵素分解は、ウレアーゼを用いることが好ましい。
【0043】
選択的な焼成は、空気中においてカーボンナノチューブが安定化する条件下では、大半の有機化合物が燃焼するという原理に基づいている。したがって、他の有機化合物が単に燃え尽きる一方で、適切な温度で適切な時間燃焼した結果としてカーボンナノチューブが残される。最適な温度範囲及び燃焼時間は、300℃から550℃で、10分間から24時間である(短い時間とする場合には、より高い温度を使用する)。
【0044】
同様に、プラズマ処理を使用して選択的にカーボンナノチューブ上の有機化合物を除去することができる。同様の条件を純粋なシリコン系基材に対して適用する(プラズマ発生器のタイプに依存する)。典型的な条件は、下記の通りである。
【0045】
室温における酸素プラズマ処理
適用ラジオ周波数(RF):13.56MHz
RF出力:10〜100W
酸素圧力:0.1〜1mbar
処理時間:10秒から5分
一例として、重合の後、カルボン酸無水物をはじめとするアミン反応生成物が付加され、修飾されたカーボンナノチューブと反応される。
【0046】
好ましくは、修飾されたカーボンナノチューブは、水溶液又はアルコール溶液、好ましくはメタノール系溶液に可溶である。
【0047】
また、
a)カーボンナノチューブ及び尿素を準備するステップと、
b)上記カーボンナノチューブと上記尿素とを混合するステップと、
c)b)の混合物を加熱するステップと
を有するカーボンナノチューブの可溶化方法により、本発明の課題を解決する。
【0048】
カーボンナノチューブは、上述のように定義されることが好ましい。
【0049】
一例として、加熱温度は、尿素の融点以上であって130℃乃至180℃範囲であり、好ましくは150℃乃至170℃、より好ましくは150℃乃至160℃、更に好ましくは150℃とするとよい。
【0050】
一例として、加熱時間は、1乃至60分間、好ましくは3乃至20分間、より好ましくは5乃至15分間、更に好ましくは10分間とするとよい。
【0051】
一例として、少なくとも1つのアルデヒドは、ステップb)の混合物に添加される。好ましくは、ステップc)の前又はステップc)の最中にステップb)の混合物に添加する。また一例として、少なくとも1つのアルデヒドは、ステップc)の最中、好ましくはステップc)が開始して1乃至5分経過後、更に好ましくはステップc)が開始して1乃至3分経過後に添加するとよい。
【0052】
一例として、少なくとも1つのアルデヒドは、ステップc)の間にb)の混合物に付加される。好ましくは、尿素が完全に溶解した後がよい。
【0053】
一例として、上述したように、ステップc)の間に少なくとも1つのアルデヒドを添加するとき加熱を中断し、その後再開する。そして、加熱時間の合計には、上述のように(「加熱時間は、約1〜60分、好ましくは約3〜20分、更に好ましくは約5〜15分、最も好ましくは15分」)、アルデヒドを添加する時間が含まれる。
【0054】
他の例として、如何なるアルデヒドを添加する場合であっても、加熱時間の合計として、約1〜60分、好ましくは約3〜20分、より好ましくは5〜15分、最も好ましくは10分とするのがよい。
【0055】
一例として、少なくとも1つのアルデヒドは、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、カルボキシベンズアルデヒド、シンナムアルデヒド、クロロベンズアルデヒド、フェロセンカルボキシアルデヒド、ホルムアルデヒド、フルフラール、グルタルアルデヒド、パラホルムアルデヒド、ポリヒドロキシアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ピリジンアルデヒド、サリチルアルデヒド及びバレルアルデヒドを含む官能基から選択することができる。
【0056】
ポリヒドロキシアルデヒドは、アルドースを含む炭化水素に分類される。アルドースは、アルデヒド基(−CHO)を含む単糖類の糖である。更にアルドースは、糖のなかの炭素原子の数に依存して、アルドトリオース、アルドテトロース、アルドペントロース及びアルドヘキロースを用いることができる。これらの例としては、グリセルアルデヒド(アルドトリオース)、エリスロース(アルドテトロース)、リボース(アルドペントロース)及びグルコース(アルドヘキロース)をあげることができる。アルドペントロース及びアルドヘキロースの合成物は、これらの5員環又は6員環のヘミアセタール型として平衡状態で水溶液に存在する。また、ある二糖類、三糖類、及びアルドース成分を含む多糖類は、本発明にしたがうポリヒドロキシアルデヒド合成物である。ポリヒドロキシアルデヒドである二糖類の例は、マルトース及びラクトースである。
【0057】
好ましくは、ベンズアルデヒドは、−NHR、−NRR'、−OH、−OR、−C、−CH、−CHR、−CHR及びCRから選択される少なくとも1つの電子供与性基で置換され、R及びR'は、直鎖状又は枝分かれした炭素Cを1個〜12個有するアルキル基、炭素Cを3個〜8個有するシクロアルキル基、炭素Cを6個〜12個有するアラルキル基、炭素Cを6個〜12個有するアリル基、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、及びポリ(エチレンオキシド)−ポリ(プロピレンオキシド)ブロック共重合体である。
【0058】
一例として、ベンズアルデヒドの少なくとも1つの電子供与性基は、パラ位に置換される。
【0059】
好ましくは、ベンズアルデヒドは、−OH又は−ORのうち少なくとも1つの電子供与性基で置換され、Rは、直鎖状又は枝分かれした炭素Cを1個〜12個有するアルキル基、炭素Cを3個〜8個有するシクロアルキル基、炭素Cを6個〜12個有するアラルキル基、炭素Cを6個〜12個有するアリル基、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、及びポリ(エチレンオキシド)−ポリ(プロピレンオキシド)ブロック共重合体である。
【0060】
更に、少なくとも1つのアルデヒドは、p−アニスアルデヒド、4−プロポキシベンズアルデヒド及び4−(ヘキシルオキシ)ベンズアルデヒドを含む官能基から選択されるものであることが好ましい。
【0061】
一例として、ステップc)の生成物は、水溶液又はアルコール、好ましくはメタノール系溶液又は水溶液とアルコール溶液との混合系に可溶であり、塩沈澱生成ステップ、及び/又は遠心分離又は濾過、洗浄に続いて必要に応じて両方のうち何れか、及び/又はサイズ分離、及び/又は吸着、及び/又は酵素分解、及び/又は選択的焼成、及び/又はプラズマ処理が施される。
【0062】
また、塩を添加することによって沈澱を生成させる。好ましくは、塩、好ましくは過塩素酸塩の付加によって行い、濾過は、細孔サイズ0.01μm以上1μm以下のメンブレンフィルタを用いて行い、サイズ分離及び/又は吸着は、ゲル濾過により行い、好ましくは、デキストランに基づく材料、更に好ましくはセファデックスを用いる。また、酵素分解は、ウレアーゼを用いることが好ましい。一例として、化学修飾されたCNTを選択的に沈澱する。
【0063】
また、ステップc)の生成物は、水溶液又はアルコール溶液、好ましくはメタノール系溶液又は水溶液とアルコール溶液の混合系に可溶であることが好ましく、これは蒸発ステップの対象となる。
【0064】
また、本発明に係る方法により生成されたカーボンナノチューブによって、本発明の課題を解決する。
【0065】
カーボンナノチューブは、バングル構造をもたないことが好ましい。
【0066】
一例として、AEMで観察したとき、真珠チェーン状構造において個別の塊で修飾されている。
【0067】
一例として、これらの個別の固まりは、ポリメリック型を形成している。なお、「ポリメリック型」とは、ここでは「ポリマを含む」ことを意味する。
【0068】
また、
・水又は水溶液に対する溶解度が10g/l以上、及び/又はメタノール又はメタノール系溶液に対する溶解度が1g/l以上であること
・210nm〜250nm間に吸光度の最大値があること
・赤外線吸収スペクトルの吸収極大値が以下の波数範囲のうち1以上、又は全てに存在すること
から選択される1以上の物理的特徴を有することが好ましい。
【0069】
3470〜3490cm−1、3420〜3440cm−1、3365〜3385cm−1、3330〜3350cm−1、3245〜3265cm−1、3210〜3230cm−1、1660〜1680cm−1、1610〜1630cm−1、1450〜1470cm−1、1330〜1350cm−1、及び1095〜1115cm−1
【0070】
なお、これらの物理的性質がナノチューブの本質ではない。また、これらの特徴は、ナノチューブに付加される個別の塊による。或いは、ナノチューブの準備処理による。これは、特に、上述された放出値の最大値に適用することができる。
【0071】
本発明に係るカーボンナノチューブの会合体において、カーボンナノチューブは、AEMで観察すると、バンドル構造をもたないが枝分かれ構造内の個別の塊を介して末端基で相互に連結していることにより、上述した課題を解決する。
【0072】
本発明に係る方法によって生成されたカーボンナノチューブ又はカーボンナノチューブの会合体において、ステップc)の生成物は、水溶液又はアルコール、好ましくはメタノール系溶液又は水溶液とアルコール溶液との混合系に可溶であり、蒸発処理が施される。
【0073】
また、そのようなカーボンナノチューブ又はカーボンナノチューブ会合体は、少なくとも部分的に結晶化していることが好ましい。
【0074】
一例として、そのようなカーボンナノチューブ又はカーボンナノチューブ会合体は、
・赤外線吸収スペクトルの吸収極大値が以下の波数範囲のうち1以上、又は全てに存在すること
3370〜3390cm−1、3205〜3225cm−1、3060〜3080cm−1、1700〜1720cm−1、1680〜1700cm−1、1655〜1675cm−1、1580〜1600cm−1、1500〜1520cm−1、1440〜1460cm−1、1395〜1415cm−1、1245〜1265cm−1、1155〜1175cm−1、1020〜1040cm−1、845〜865cm−1、795〜815cm−1
・AFM、TEM及び/又はSEMで観察すると結晶質部分と非晶質部分とを有すること
・水又は水溶液に対する溶解度が10g/l−1以上、及び/又はメタノール又はメタノール系溶液に対する溶解度が1g/l−1以上であること
から選択される1以上の物理的特徴を有する。
【0075】
また、本発明に係るカーボンナノチューブ又はカーボンナノチューブ会合体をそれぞれ、電子装置、ナノ電子デバイス、メモリ素子、電界放出デバイス、センサ、アクチュエータ、電気機械デバイス、複合材料、被覆剤/塗料/ペースト、水素貯蔵デバイス、バッテリ又は燃料電池、スーパーキャパシタ、光電気化学デバイス、光電子デバイス、エネルギ変換デバイス、発光ダイオード、液晶ディスプレイ、走査型プローブ顕微鏡、非線形光学デバイス、アンテナ、または触媒に利用することによって、上述した課題を解決する。
【0076】
また、本発明に係るカーボンナノチューブの可溶化方法を用いることによって、カーボンナノチューブ、特に単層カーボンナノチューブ(SWNT)を適用化する及び/又は精製することができる。
【0077】
本発明に係る方法では、おそらく、表面上、より好ましくはポリマ上又はシリコン系基材表面上で反応が起こり、目的とするカーボンナノチューブを得ることができる。
【0078】
少なくとも1つのモノマタイプ(又はその前駆体、又は尿素など)とCNTとを混合する際には、当業者に公然周知の種々の手段を適用することができる。これら種々の手段には、研磨、ミル挽き、特にボールミル、サンドミル等が含まれる。またこれらに限定されない。更に、CNTは、当業者に公然周知の他の方法で処理できることは言うまでもない。例えば、CNTに対して、本発明に係る反応の前又は後に超音波処理を施してもよい。また、CNTを真空下又は不活性雰囲気下で加熱してもよい。また、CNTを更に機能化する処理を行ってもよい。CNTは、本発明に係る反応の後に熱的にアニール(加熱)されると、本発明の反応によって達成された機能化、及び上述した酸化処理による効果を損なう可能性がある。このような二次的な熱アニーリング処理は、元のCNTの電気的特性を復元するのに必要である。約200〜1200℃の温度範囲は、CNTの電気的特性を復元するのに効果的である。また、反応した一部分から未反応部位を分離するために、サイズを分離する種々の手段を用いることができる。例えば、適切なゲル濾過材(実験者が所望とする除外サイズにしたがって選択される)を使用することができる。セファデックスゲル濾過材は、例えば、セファデックスG−100又はG−10のように、実施の形態に合わせて種々のグレードが適宜選択可能である。一方、セファデックス及びデキストランは、本発明に係る反応を経て生成される化合物又は成分から小さな分子を効果的に分離できさえすればよく、物質に応じて他のタイプが使用可能である。更に、小さな分子及びCNT小片でないもの及び/又は修飾されたCNTでないものは、ゲル濾過材に吸着させて取り除く。このゲル濾過材は、上述と同様にサイズ除外ステップに応じて決定される。更にまた、小さな分子は、例えば、尿素の場合にはウレアーゼのような分解酵素を用いて取り除くこともできる。他の方法としては、例えば、塩、好ましくは過塩素酸塩、より好ましくは過塩素酸ナトリウムによる(修飾された)選択的な沈澱生成によりCNTを分離することもできる。更に、既に上述したような湿式化学処理により、CNTを収集及び洗浄するために濾過を使用することもできる。
【0079】
ここで用いられる「前駆体」という用語は、二次的な重合反応のためにモノマを提供可能なあらゆる化学的構成要素を含む。また、「モノマ」という用語は、ここでは、分子のように反応することができ、それによって元のモノマの1以上からなり、より大きな構成要素を形成することができるあらゆる化学的構成要素を含む。また「モノマ」という用語には、重合反応が依然として可能な「オリゴマ」の意も含むことは言うまでもない。
【0080】
反応又は重合は、成長するポリマ鎖又は反応生成物の末端がむしろ共有結合的に官能基又は官能基群に結合する、或いは非共有結合的に吸着する、或いはその両方により結合するという点、また、ある実験的なセットアップの範囲内において幾つかの成長するポリマ鎖又は反応生成物が共有結合的に官能基に結合する、又は他のポリマ鎖又は反応生成物が非共有結合的に吸着するという点で「官能基において」生じると言われている。「官能基において生じる」という用語は、ここでは、「官能基によって開始される」と換言できる。それはまた、官能基が重合開始部位として用いられることを意味している。官能基を重合開始部位とするとき、官能基が重合開始部位、又は重合が開始するときに最初に官能基で置換される部位として直接使用されてもよい。好ましくは、この転換は、モノマ分子及び/又はそれらの前駆体及び/又はモノマ或いは前駆体の分解生成物による。後者の反応例は、図3における「エポキシグループが関与している反応」に示す。図3では、アンモニア、尿素の分解生成物が、重合が起こる位置でエポキシドをアミンとOH基に変換している。
【0081】
なお、本発明における加熱ステップは、例えば、オーブン、ホットプレート、オイルバス、又はヒートガンをはじめとする従来のあらゆる加熱手段を用いて行うことができる。本実施の形態では、ヒートガンを用いる。
【0082】
「尿素の誘導体」は、例えば、ニトロ尿素、塩酸尿素、尿素過塩素酸、尿素ニトレート、及びアンモニウムカルバメートがあり、最終的にイソシアン酸のソースとして働くことができる化合物であればよい。
【0083】
CNT上で重合反応を行った結果、チューブが剥離され、その後、意外にも単一でバンドル構造のない構成要素として提供されて可溶性になる。既知の方法に対して本発明に係る方法は、バンドル構造のないCNT、すなわち互いに接触する本質的に平行なCNTチューブとは関係ないチューブを産出する。CNTに生じる好ましい重合反応は、尿素の分解生成物のように、イソシアン酸/シアネートとポリイソシアネート付加物との重合である。尿素は、イソシアン酸のソースとして用いられてきた。そのような目的に対して、尿素は、溶融状態(m133℃)において高純度で使用され、水又は有機溶媒に溶解した。イソシアン酸の代わりとなる典型的なソースは、a)シアヌル酸又はイソシアヌル酸の熱解重合、b)結果として生じるシアヌル酸の二次解重合及びシアヌル酸塩化物の加水分解、c)シアン酸塩類の酸性化、d)結果として生じるイソシアヌル酸の二次解重合及び三塩化イソシアン酸の加水分解、及びe)ニトロ尿素の熱分解(Davisら (1929) J. Am. Chem. Soc. 51, 1790)を含む。これら全てのイソシアン酸のソースは、「少なくとも1つのモノマタイプの前駆体」として理解されるべきものであり、本発明においては、イソシアン酸又はシアネートイオンがモノマになっている。
【0084】
意外にも、ナノチューブ、好ましくは予め精製したナノチューブと溶融尿素とを反応させることにより、可溶化ナノチューブを得ることができる。可溶性ナノチューブの収率は、溶融尿素にアルデヒドを添加することによって更に改善することができる。このように生成されたナノチューブは、これらを溶解した後、溶媒を蒸発させると、結晶類似構造を形成することができる。この場合、結晶類似の複屈折構造が形成される。この構造体は、一列のナノチューブを有しており、更に多くとも約100μmの寸法を有したより複雑な形態になる。
【0085】
以下、尿素及びイソシアン酸/シアネートの化学的作用について、詳細に説明する。
【0086】
単純な構造であるにも関わらず、尿素(NHCONH)の化学的作用は、かなり複雑である。それは主として、尿素の分解生成物の1つである、イソシアン酸(HNCO)の反応性が極端に高いためである。尿素とシアン酸アンモニウム(NHCNO)との間の平衡が存在することは一般的である。
【0087】
【化1】

【0088】
Wohlerによるシアン酸アンモニウムから尿素の合成は、実験室において純粋な「無機」化合物から合成された「有機」化合物の最初の例であった。尿素の化学作用に対する現在の関心の多くは、肥料としての重要性と同様、生物以前の進化において可能な役割から生じている。
【0089】
アンモニウムイオン(NH4+)は弱酸であり、シアネートイオン(CNO)は弱塩基であるので、化学式(1)における平衡は、アンモニア(NH)とシアン酸(CNOH)を含む方向に移動する。
【0090】
【化2】

【0091】
シアン酸は、十分安定なため単離できるが、イソシアン酸は、通常の条件下で、熱力学的に類似した異性体である。
【0092】
【化3】

【0093】
両異性体は、化学的反応性が非常に高い。
【0094】
有機イソシアン酸塩(R−N=C=O)誘導体のようなイソシアネートは、カルボン酸及びフェノールのように、活性水素原子を含む化合物で反応することができる。SWNTを精製する標準的な方法は、末端及び側面に沿った欠陥部位でそのような酸化官能基を生成する酸化条件下で行われる。これらの条件に基づいて、本発明の発明者らは、溶融尿素が酸精製されたSWNTと反応し、その結果、尿素に由来する非常に極性の高い置換基が共有結合的に付加すると予見した。例えば、SWNT−COOHは、HNCOと反応し、COとアミド(SWNT−CONH)を生じる。後者は、更に、HNCOと反応し、アクリルウレア(SWNT−CONHCONH)を生じる。同様に、SWNT−OHは、HNCOと反応し、ウレタン(SWNT−OCONH)を生じる。ウレタン(SWNT−OCONH)は、更に反応してアロファネート(SWNT−OCONHCONH)を生じる。酸素添加官能基は、溶融尿素に存在し、NHとの最初の反応及びHNCOとの二次的な反応に関与する精製SWNTに存在するはずの活性水素原子を含まない(例えば、無水物、ラクトン、ケトン、エポキシド)。HNCOのこれら様々な付加反応は、可逆的である。本発明の発明者らは、更に、反応系にパラ位置換されたアルコキシベンズアルデヒド誘導体、特に、p−アニスアルデヒド、4−プロポキシベンズアルデヒド、4−(ヘキシルオキシ)ベンズアルデヒドを導入することで、溶融尿素により修飾されたSWNTの溶解度を調節できる可能性について調査した。
【0095】
要約すると、イソシアネート(RNCO)は、イソシアン酸の有機誘導体であり、非常に反応性が高く、特に、活性水素及び含む化合物の付加反応及び重合(自己付加)をはじめとするかなり多くの反応に関与することができる。これら反応のなかの幾つかを以下に列挙した。また、イソシアン酸(ただし、R=Hのとき)と同様の反応を表している。
1.化学式(4)は、イソシアネートにアルコール及びフェノールを作用させてウレタンを生成する反応を表す。
【0096】
【化4】

【0097】
2.化学式(5)は、イソシアネートとアミンから尿素を生成する反応を表す。
【0098】
【化5】

【0099】
3.化学式(6)は、イソシアネートとカルボン酸からアミドを生成する反応を表す。
【0100】
【化6】

【0101】
4.化学式(7)は、イソシアネートとウレタンからアロファネートを生成する反応を表す。
【0102】
【化7】

【0103】
5.化学式(8)は、イソシアネートと尿素からビウレットを生成する反応を表す。
【0104】
【化8】

【0105】
6.化学式(9)は、イソシアネートとアミドからアクリルウレアを生成する反応を表す。
【0106】
【化9】

【0107】
7.化学式(10)は、イソシアネートを二量化してウレチジオン(uretidiones)を生成する反応を表す。
【0108】
【化10】

【0109】
8.化学式(11)は、イソシアネートを三量化してイソシアヌレートを生成する反応を表す。
【0110】
【化11】

【0111】
9.化学式(12)は、イソシアネートを加水分解してアミンを生成する反応を表す。
【0112】
【化12】

【0113】
上述した反応において、尿素は、イソシアン酸のソースとして用いられてきた。そのような目的に対して、尿素は、溶融状態(m133℃)において高純度で使用され、水又は有機溶媒に溶解した。イソシアン酸の代わりとなる典型的なソースは、シアヌル酸又はイソシアヌル酸の熱解重合、その結果として生じるシアヌル酸の二次解重合及びシアヌル酸塩化物の加水分解、シアン酸塩類の酸性化、その結果として生じるイソシアヌル酸の二次解重合及び三塩化イソシアン酸の加水分解、及びニトロ尿素の熱分解(Davisら (1929) J. Am. Chem. Soc. 51, 1790)を含む。これら全てのイソシアン酸のソースは、「少なくとも1つのモノマタイプの前駆体」として理解されるべきものであり、本発明においては、イソシアン酸又はシアネートイオンがモノマになっている。
【0114】
ホルムアルデヒド(又はパラホルムアルデヒド)は、化学式(13)に示すように尿素と反応しヒドロキシメチル末端基で付加生成物を形成する、或いは化学式(14)に示すように尿素ユニットとの間でメチレンブリッジを形成する。
【0115】
【化13】

【0116】
【化14】

【0117】
そのような尿素ホルムアルデヒド樹脂(ユリアホルムアルデヒド樹脂)縮合生成物は、プラスチック及び接着剤から肥料まで広く応用される材料であり、産業上重要である。
【0118】
更に、尿素は、n−アルカンのような炭化水素の長鎖をもつ生成物(又はクラスレート構造)を含む固相を形成できる。ホスト構造は、基本的に無限の三次元水素結合された尿素分子のネットワークから形成された連続的な1次元チャネル(直径、約0.6nm)を含んでいる(Steed, J. W.;Atwood, J. L (2000) Supramolecular Chemistry;John Wiley & Sons, Ltd., Chichester, pp. 272-277)。尿素チャネル構造(尿素媒介構造)は、占有されたときにのみ安定である。尿素と尿素の分解生成物の両方を含む包含化合物(Makら (1995) J. Am. Chem. Soc. 117, 11995)と同様に、層構造に基づく尿素包含化合物(Leeら (2001) J. Am. Chem. Soc. 123, 12684)もまた周知である。
【0119】
本発明の発明者らが開発した処理は、例えば、予め精製したSWNTと尿素とを加熱する前に、研磨して均質混合する。この実験で使用される予め精製したSWNTは、Carbon Solutions社製(Riverside, CA)のREP−SWNTである。REP−SWNTは、酸精製及び機能化を減じる二次的な処理である電気アーク法によって処理されたナノチューブからなる。供給元によれば、本発明の実験において用いられるRFP−SWNTは、M. E. Itkisら(Nano Lett. 3, 309 (2003))によって評価されているように、相対純度40%である。混合処理は、ナノチューブを機械的に破壊することによってナノチューブ上の官能基密度を増加するとともに、ナノチューブバンドル構造への尿素の浸透を促進することができる。攪拌したRFP−SWNT及びUA−SWNTのAFM像は、両方の場合において大部分がバンドル化したナノチューブであることを示している。一般的に、RFP−SWNT試料中のバンドル構造は、UA−SWNT試料中のバンドル構造(0.5〜1.5μm)よりも長い(0.5〜10μm)。一方、バンドル内の個々のナノチューブの両終端は、通常、観察できないので、これを定性的に比較する。個々のUA−SWNTは、高さが1.45(±0.10)nmである(図13)。加熱の温度及び期間は、溶融尿素に起こる化学処理に顕著な影響を及ぼし、本発明の発明者らは、これらの因子も可溶性SWNTの収量に影響を及ぼすことを見出した。予め精製されたSWNTと尿素の混合物を150〜160℃で5〜10分間加熱すると、最良の結果が成し遂げられる。例えば、p−アニスアルデヒドのようなアルデヒドを含む反応では、加熱を継続する前に、1〜5分間、好ましくは1〜2分間、アルデヒドを付加するために溶融尿素処理が中断される。
【0120】
溶融尿素単独で修飾されたSWNT(以下、U−SWNTという)は、高い水溶性(10gl−1以上)を示すが、汎用の有機溶媒には不溶である。溶解したSWNTにアルデヒド、特にp−アニスアルデヒドを添加する(この処理を施したナノチューブを以下UA−SWNTという)と水及びメタノールに対する可溶性がかなり向上し、結果として可溶性ナノチューブの収量が約10倍になる。生成物からの抽出物におけるSWNTの濃度(mgl−1)は、500nmにおける吸光度(cm/経路長)を0.0286で分離することによって推定される(J. L. Bahr,E. T. Mickelson, M. J. Bronikowski, R. E. Smalley, J. M. Tour, Chem. Commun. 2001, 193 (2001))各抽出物(水又はメタノール)におけるSWNT重量の合計を反応生成物中に使用したRFP−SWNTの質量と比較すると、可溶性SWNTの収率を推定することができる。実施例9で与えられたU−SWNTの生成において、RFP−SWNTの質量に対するU−SWNTの質量の割合は、0.034である。また、実施例9で与えられた2つのUA−SWNTの生成において、割合は0.36(対RFP−SWNT2.7mg)、及び0.31(対RFP−SWNT34mg)である。他のいかなる理論に束縛されないが、p−アニスアルデヒドが添加されると収量が10倍になるのは、「キャップ形成」効果のためである。キャップ効果により、反応が逆行し、HNCOの付加反応を防止する。
【0121】
何れにしても、可溶性SWNTは、分析の前に、過剰な尿素及びp−アニスアルデヒドから抽出、過塩素酸ナトリウムによる沈澱生成、ゲル濾過、又はこれらの組合せによって単離される。
【0122】
本発明によれば、水及びメタノールに対する良好な可溶性のほかにも、特にUA−SWNTが、例えば、メタノール溶液のようなアルコール溶液にして蒸発すると自己的に有機化して結晶類似構造を形成する傾向があるという、SWNTの注目すべき特徴がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0123】
実施例1
帰属
以下に示す全例において、後述する1以上の帰属ステップが施される。UV−可視光吸収スペクトルは、Varian Cary 50 スペクトロフォトメータを用いて経路長1cmの石英キュベットで測定した。タッピングモードAFM測定は、大気中において、ナノスコープIVコントローラ及び四面体先端シリコン突出梁(オリンパス社製 オプティカルOMCL−AC160TS)でデジタルインストルーメンツディメンジョン3100 スキャニングプローブマイクロスコープを使用して行った。TEM測定は、200kVで稼働するTECNAI G2 F20装置を使用して行った。TEM測定の試料は、300メッシュ銅格子(Plano S147−3)上で穴あき炭素フィルムを用いて用意した。SEM撮影は、Leo Gemini 1530 電界放出走査型電子顕微鏡を使用して5kVのビーム電圧で行った。光学顕微鏡として、Leica社製DMRX偏光顕微鏡を反射係数モードで用いた。照明光源は、12V、100Wのハロゲン球であった。画像は、Hamamatsu社製C4742カメラにMicro−Color RGB−MS−C カラーフィルタを用いて撮影した。IR吸収スペクトルは、BrukerISF FT−IRスペクトロメータにIRスコープIIアタッチメントを用いて観測した。スペクトルは、分解能10cm−1で伝送モードにおいて記録した。
【0124】
尿素溶解物を用いたCNTの修飾
これらの実験で使用したCNTは、Carbon Solutions社(5094 Victoria Hill Drive, Riverside, CA 92506)から購入した。製品名は、RFP−SWNTである。供給元によって提供される情報によれば、RFP−SWNTは、同社製品であるAP−SWNTを酸精製して機能性を減じたものである。AP−SWNTは、電気アーク法によって処理された単層CNTからなる。Huらは、酸塩基滴定によってRFP−SWNTにおけるカーボン総量に対する酸性部位(カルボン酸、ラクトン及びフェノール類を含む)のモルパーセンテージを決定し、1%であることを見出した。更に、そのうちカーボン総量に対するカルボン酸族のモルパーセンテージは、0.7〜0.8%であると考えることができる。機能性を減じるための処理を行わないCNTのために見出されるパーセンテージは、2.7%(全酸性部位)及び2.1〜2.2%(カルボン酸族)である。したがって、酸精製されたAP−SWNT CNTの機能性を減らす処理を行うことにより、約2/3の機能性が減少されるといえる。RFP−SWNTの機能性は、依然として測定可能な程度である。一方、酸性部位を生産するために、約100につき約1の炭素が少なくとも1つの酸素原子に結合される。酸性部位の約3/4は、COOH基である。これらの官能基は、主として、ナノチューブの末端及び側面の欠陥部位に配位する。
【0125】
RFP−SWNT(2.46mg)をガラス試験管(Schott Duran(登録商標)、12×100mm)に入れ、ガラス棒(5mm径)で微粉状にした。そこに尿素(98.5mg)を添加し、RFP−SWNTを灰色粉末になるまで完全に微粉状にした。続いて、微粉末を試験管の底部に入れて、160℃の出力で最高温度を与えるためにヒートガン(Steinel Typ 3449, 2000 W)の出口ポートに試験管底部を当てて加熱した。そして、黒色液体になるまで微粉体を溶解して、更に手で試験管を回転及び揺動することによって攪拌を続けた。10分経過の後、混合物を室温まで冷却したところ黒色固体が得られた。この黒色固体に水(0.50ml)を添加し単純に混合すると、数秒以内に完全に溶解し、暗黒色溶液が得られた。暗黒色溶液の微少量(10μl)を水(1000μl)で希釈して石英キュベット内に入れ、UV−可視光吸収スペクトル測定を行い、スペクトルを記録した。スペクトルを図1に示す(点線曲線)。続いて、試験管内の溶液をキュベット内の溶液とともにポリプロピレン製遠心分離管(小)に移し、5000rpmで10分間遠心分離した。これを2回行った。溶液のpHは、8.15であった。
【0126】
実施例2
セファデックス(登録商標) G−100によるクロマトグラフィ
実施例1から遠心分離された(約50μl)を2滴、セファデックス(登録商標) G−100の小カラム(7×45mm)に適用した。溶液をカラムベッドに入れた後、水で溶出した。灰色帯域は、カラム中を通って収集されたが、他の灰色帯域は、カラムベッドの最上部(1〜2mm)に残留し洗出できなかった。収集された溶液を水で希釈(全容量約0.7ml)して石英キュベットに移し、UV−可視光吸収スペクトル測定を行い、スペクトルを記録した。スペクトルを図1に示す(実線曲線)。スペクトルは、1000nmから300nmまでほとんど特色なく増大し、242nmで最大値を示す。この溶液を以下溶液Aという。
【0127】
実施例3
AFM測定
AFM測定用の基材は、雲母基材にポリスチレンの2.5w%トルエン溶液(Aldrich #44.114−7 平均M約350000)を滴下して用意した。この基材を600rpmで回転させ、溶液A(未希釈)の1滴(20μl)を基材中央に滴下した。そして、回転率を700rpmに増加した。これにより基材上から大部分の余分な溶液が排除される。その後、4000rpmで90秒間回転させて基材を乾燥した。基材中央付近をスキャンして得られたAFM画像とともに選択領域の拡大写真を図2に示す。
【0128】
RFP−SWNTが微粉末状の混合物を尿素とともに溶解した後に水溶性を呈するという事実は、CNTの共有結合による修飾、又は水溶性ポリマ生成物の非共有結合の吸収作用によるものである可能性が高い。一方、特殊な理論に限定されないが、本発明の提案者らは、同様のプロセスが処理済の単層CNTの水溶性に対しては適用できないという事実から、共有結合による修飾の可能性を支持している。上述したように、Bowerらの規則によれば、RFP−SWNTにおけるCNTの炭素原子の約100のうち1つは、化学的に酸化された酸性状態にある((1998) Chem. Phys. Lett. 288, 481)。そのような部位の官能基として−COOH基及びフェノールの−OH基は、イソシアン酸を含むイソシアン酸塩と反応性がある。イソシアン酸とこれらの官能基との反応、及びポリイソシアネート付加物の生成反応を図3に示す。高分子量ポリイソシアネートは、1959年に最初に報告され、ナイロン(ナイロン−1)の最も単純なタイプについて説明されている(Burら (1976) Chem. Rev. 76, 727)。図3に示されたこのほかの可能な反応例としては、アンモニアによりエポキシド族を開環してアミノ族及びアルコール族を生成する例がある。その後、イソシアン酸と反応させる。Luらにより、開環ステップを使用して単層CNTの側面を機能化する方法が報告されている((2002) J. Phys. Chem. B 106, 2136)。なお、直鎖上のN原子とH原子との結合がイソシアン酸と反応することが予測されるので、ポリマ鎖の枝分かれ反応及び架橋反応も可能である。
【0129】
AFM写真から、RFP−SWNT上におけるポリイソシアネートの成長が個々のチューブ内におけるナノチューブバンドルの分解と同様に生成物の水溶性に関与していることがわかった。AFM写真において、真珠のチェーンのような様相でCNTに付加しているようにみえる離散した円形体は、ポリマであると思われる。数ナノメータの円形体のサイズから10000オーダのポリマ分子量を有すると思われる。
【0130】
RFP−SWNTにおけるCNTは、バンドル内で生じるので、AFM写真の結果が示すように、ナノチューブに沿って一様に成長するポリイソシアネートが反応の初期段階においてバンドルの分解が起こったことを示唆している。この驚くべき結果は、尿素が包含化合物を形成する傾向があることを示している。尿素と炭化水素との間の通常の包含化合物におけるチャネルがCNTに対して小さ過ぎるので、より大きな籠形をもつ中間体の形成を考慮すべきである。また、尿素は、タンパク質の変性に幅広く適用されるが、それはファンデルワールス相互作用を含むタンパク質内の非共有結合を破壊することと関係している。ファンデルワールス相互作用がCNTのバンドル構造にとって重要であることからして、尿素がバンドル構造を分解できる機能は、尿素がタンパク質を変性させることができる機能と関連しているといえる。
【0131】
実施例4
セファデックス(登録商標) G−100によるクロマトグラフィ
実施例1で遠心分離した溶液Aの一部である250μlを水で膨潤させたセファデックス(登録商標) G−100の小カラム(10×80mm)に適用した。溶液をカラムベッドに入れた後、水で溶出した。溶離液は、一旦、黒茶色になった。この溶離液の1.1mlを収集した。この溶液を以下溶液B1という。また、続く溶離液の1.5ml(黄色)を収集した。この溶液を以下溶液B2という。黒茶帯域は、カラムベッドの最上部(〜5mm)に残留し洗出できなかった。これら2つの溶液B1,B2のUV−可視光吸収スペクトルを測定した結果を図4に示す。溶液B1(水で2.5倍に希釈した)のスペクトルは、235nmで最大値をとり、1000nm以上でテーリング吸収(途切れた吸収)を示す特徴を有し(図4における実線曲線)、波長帯域400〜500nmにおいて軟調ではあるが異なる屈曲が起きている。溶液B2(図4における破線曲線)のスペクトルは、波長帯域400〜500nmにおいて構造化された吸収を示し、700nm以上でほとんど吸収されないという特徴を有する。溶液B2のスペクトルでは、UV領域において明確な最大値が存在しない。このスペクトル特性の違いにも関わらず、両溶液は、515nm近傍で最大値となり、黄色を発色する(図5)。励起波長(410nm)において、溶液B1の吸収が溶液B2の吸収の4.5倍であるという事実にも関わらず、溶液B2からの放出は、溶液B1からの放出の4倍の強度がある。このように、2(又は2以上)の成分が溶液B1の放出特性及び吸収特性を与えていると結論づけることができる。1つの原因は、機能化されたCNTの特性に起因する(プラスモン吸収は250nm以下で最大になり、近赤外方向に構造のない吸収を示し、ほとんど放出がない)。また、ほかの原因は、最大値515nmで黄色を放出する溶液B2に存在する成分に起因する。この成分は、両溶液における400nm〜500nm間の吸収に関与している可能性がある。その成分は、RFP−SWNTと溶融した尿素との間の反応生成物であり、CNTを水に対して可溶化する成分であるものと予想される。
【0132】
実施例5
尿素溶融を用いるCNTの修飾
実施例1で説明したように、RFP−SWNT(12.6mg)に尿素(504mg)を添加し、試験管中で微粉末状にした。実施例1のように、微粉末状の混合物をヒートガンで7.5分加熱し、冷却した後、水(800μl)に混合し、遠心分離した(5000rpm、10分間)。この結果得られた溶液を以下溶液Cという。この溶液CのpHは、9.6であった。溶液Cの小容量(10μl)を水(1000μl)で希釈して石英キュベットに入れ、UV−可視光吸収スペクトル測定を行い、スペクトルを記録した。スペクトルを図6に示す(点線曲線)。このスペクトルは、1000nm以上でテーリング吸収を示す。尿素と副生成物の吸収により、UV領域において明確な最大値が存在しない。
【0133】
実施例6
セファデックス(登録商標) G−10によるクロマトグラフィ
実施例5で遠心分離した溶液Aの一部である500μlを水で膨潤させたセファデックス(登録商標) G−10の小カラム(10×52mm)に適用した。溶液をカラムベッドに入れた後、水で溶出した。溶離液は、一旦、黒茶色になった。この溶離液の1.0mlを収集した。この溶液を以下溶液D1という。また、続く溶離液の0.9ml(黒茶色)を収集した。この溶液を以下溶液D2という。明灰色帯域は、カラムベッドの最上部(〜11mm)に残留し洗出できなかった。溶液D1(水で25倍に希釈した)のスペクトルは、220nmで最大値をとり、1000nm以上でテーリング吸収を示す特徴を有する(図6における実線曲線)。希釈溶液D1は、515nm近傍で最大値となり、黄色を発色する(図7における実線曲線)。
【0134】
実施例7
修飾されたCNTの過塩素酸ナトリウムによる沈澱生成による単離
実施例6で得られた溶液D2に過塩素酸ナトリウム1水和物(115mg)を添加し、結晶が溶解するまで混合した。NaClOの濃度は、〜1.0M程度であった。溶液は、数分で乳白色になった。一晩静置した後、黒色沈澱物が沈下し透明な黄茶色の上澄み液が残った。そして、その上澄み液は、UV光源(366nm)で励起すると黄白色に発光した。上澄み液を取り除いた後、沈澱物を水500μlで直ちに再溶解した(溶液Eという)。溶液E(水で20倍に希釈した)のスペクトルは、242nmで最大値をとり、1000nm以上でテーリング吸収を示す特徴を有する(図6における一点鎖線曲線)。また、溶液Eの希釈溶液は、550n付近で吸光度の最大値をとり、若干黄色に発色する特徴を有する(図7における一点鎖線曲線)。溶液Eに過塩素酸ナトリウム1水和物(115mg)を添加し、結晶が溶解するまで混合した。NaClOの濃度は、〜0.25M程度であった。溶液は、数分で乳白色になった。30分後、この溶液Eを5000rpmで10分間遠心分離したところ、黒色沈澱物と無色透明の上澄み液を得た。上澄み液を取り除いた後、沈澱物を圧縮空気の緩気流下で乾燥した。この結果、重量が0.47mgの固体を得た。この固体を1分間バス中で超音波処理した後、10μlの水で再溶解した。
【0135】
実施例8
溶融した尿素のみによって修飾されたSWNT(ここでは「U−SWNT」という)の準備
RFP−SWNT(2.51mg)をガラス試験管(Schott Duran(登録商標)、12×100mm)に入れ、ガラス棒(5mm径)で微粉状にした。そこに尿素(100mg)を添加し、RFP−SWNTを灰色粉末になるまで完全に微粉状にした。続いて、微粉末を試験管の底部に入れて、150℃の出力で最高温度を与えるためにヒートガン(Steinel Typ 3449, 2000 W)の出口ポートに試験管を垂直に固定した。そして、黒色液体になるまで微粉体を溶解して、更に攪拌棒を用いて手で攪拌を続けた。8分間加熱した後、混合物を室温まで冷却した。可溶性物質は、渦動ミキシングにより水(600μl)に抽出され、浮遊物質は、500rpmで10分間遠心分離される。上澄み液は、pH9.6の弱塩基性であった。上澄み液の一部(45μl)を水(1000μl)で希釈し、UV−可視光吸収スペクトル測定を行って濃度を定量した。800nm(0.093)における吸収と希釈倍率に基づいて、上澄み液中のナノチューブ濃度が約110mgl−1であることがわかった。推定される上澄み液中のナノチューブの量は約0.07mgであり、反応によって、約3%のRFP−SWNTが使用された。U−SWNTは、過塩素酸ナトリウム1水和物(20.8mg)を添加することによってできた不溶物質を取り除いた後に残された上澄み液から沈澱生成したものである。遠心分離(3000rpm、5分間)により、黒色沈澱物と透明黄色上澄み液が得られた。上澄み液を希釈してUV−可視光吸収スペクトル測定したところ、幾つかの特徴形状を示し、800nm周辺でテーリングした。希釈溶液は、366nmのUV光源下で黄緑色に発光した。また、沈澱物は、直ちに水に溶けた。以上の準備手順を表2に示す。
【0136】
例えば、P−アニスアルデヒド(ここでは、「UA−SWNT」という)のようなアルデヒドの付加と溶融尿素とによって修飾されたSWNTの準備
表2には、UA−SWNTの準備方法が2つ示されている。一方の方法は、上述したU−SWNTの準備と同様のスケールで行うことであり、他方の方法は、約10倍にスケールアップしたものである。後者の場合、後者の場合、瑪瑙乳鉢及び乳棒を用いてRFP−SWNTと尿素とを微粉末にし、より大きい試験管(Schott Duran(登録商標)、17×170mm)を反応容器として用いる。両方の場合において、RFP−SWNTと尿素との混合物を約150℃で完全に流動化するまで1〜2分間加熱する。小さいスケールの反応系では、混合物が完全に溶解するまでの加熱時間は1分間だった。また、大きいスケールの反応系では、混合物が完全に溶解するまで2分間を要した。一旦加熱を止めてp−アニスアルデヒドを添加し、更に7分間加熱を続けた。結果として得られた固体を室温まで冷却し複数の抽出法を適用した。最初に水で溶出し、続いてメタノールで抽出した。各抽出ステップでは、一般的に渦動ミキシングを行って、少なくとも30分間待機し、浮遊物を遠心分離(5000rpm、10分間)する前にバス中で超音波処理(1分間)した。水で溶出することにより、余分な尿素と、約20〜30%の余分なp−アニスアルデヒドを含む他の可溶性成分を取り除く。p−アニスアルデヒドの水に対する溶解度は、約0.015Mである。抽出物は、上述した黄色成分を含んでいた。表2に示されているように、メタノールによる初期抽出物に含まれるナノチューブの濃度は、比較的低かった。次の抽出物の濃度は増加し減少したが、これは、残留固体の可溶物質が減少するためであると考えられる。スケールアップした方法では、メタノール抽出物に含まれるUA−SWNTは、過塩素酸ナトリウム1水和物(4〜9mg/ml)を添加してできる沈澱として単離される。沈澱物質を洗浄した後、メタノールに溶解した。これらのサンプルは、沈澱物質が最初にメタノール(1ml)中に浮遊し、溶解しないため、水に対するU−SWNTの溶解度よりも塩濃度に対してより反応性が高いことがわかる。遠心分離し上澄み液を取り除いた後の沈澱物質は、メタノール(1ml)にほとんど溶解した。メタノールで残留過塩素酸ナトリウムを取り除くと、ナノチューブが可溶性になることがわかる。最後のメタノール抽出(表2におけるステップ11)を行った後のナノチューブ濃度は、980mgl−1であり、メタノール中におけるUA−SWNTの溶解度が1gl−1であることを示している。これらのナノチューブは、良好な可溶性を示す。
【0137】
水に対するU−SWNTの溶解度の推定
U−SWNTを上述のように準備し、水性抽出物(0.5ml)をセファデックス(登録商標) G−10のカラムに適用し、水で溶出した。カラムから溶出したナノチューブを含む最初の1.0mlを収集し、100mgl−1のU−SWNTを含むようにUV−可視光吸収スペクトル測定によって濃度決定した。この溶液を圧縮乾燥空気で蒸発乾燥した。その結果得られた固体は、10μlの水を添加すると直ちに溶解し、10gl−1の溶解度を示した。溶液は、暗すぎて固体が完全に溶解したか否かを目視確認することができなかったが、溶液をよく振ったところ反応容器の壁面に固体が付着することはなかった。
【0138】
【表2】

【0139】
本発明の提案者らは、他のいかなる理論に束縛されないが、分解生成物とCNT上の酸化炭素基との間の尿素、尿素分解作用、付加反応等によるCNTのバングル構造のインターカレーション(挿入)と、これらの部位からのポリマ成長とを予見している。これらプロセスは、例えば、CNTと尿素とを混合して微粉体にすることで開始される可能性があり、CNTの機械的切断によって起こりうる。
【0140】
本明細書で説明した方法は、以下にあげる理想的ないくつかの特徴を有している。
1.反応が比較的単純で迅速である。
2.単離されたCNTが水に可溶である。
3.CNT鎖を切断し短くすることなく機能化できる。
4.官能基を用いて二次的な化学修飾を行って可溶性CNTを提供する。
【0141】
更に、この方法は、複層CNTに対しても適用可能である。また、適切な化学修飾を反応中又は反応後に導入することにより、CNTを様々な有機溶媒に対して可溶化できることは言うまでもない。このような反応をCNTの電気的及び/又は機械的特性を変化させずに行うことは困難であるが、真空下又は不活性雰囲気下で加熱して最終的に電気的及び/又は機械的特性を復元することができる。最先端の技術の何れにおいて、本発明の特徴又はその組合せを提案するものはない。
【0142】
上述した詳細な説明及び請求項で開示される特徴は、それぞれを個別に又は組合せることが可能であり、これらに基づいて様々の形態により発明を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】溶融尿素とともに処理して水に溶解したRFP−SWNT(セファデックス(登録商標) G−100)について、架橋されたデキストランにより高親和性となった成分を除去する前(点線曲線)と後(実線曲線)のUV−可視光吸収スペクトルを示すスペクトル図である。
【図2】図1に示したUV−可視光吸収スペクトル(実線曲線)をもつ尿素処理したRFP−SWNT溶液の1つを使用し、雲母基材上のポリスチレン膜に滴下しスピンコート処理した。このタッピングモードAFM写真を示す写真図である。
【図3】溶融した尿素で処理したCNTの修飾に関連する化学反応を示す反応経路図である。
【図4】実施例4の溶液B1とB2とをカラムクロマトグラフィで分別した後、実施例1に基づいて溶融尿素で処理され可溶化されたRFP−SWNTのUV−可視光吸収スペクトルを示すスペクトル図である。
【図5】実施例4の溶液B1(2.5倍に希釈)と溶液B2に波長帯域410nmの光線を当てて励起させたときの発色スペクトルを示す図である。
【図6】実施例5に基づいて溶融尿素で処理され可溶化されたRFP−SWNTのUV−可視光吸収スペクトルと、セファデックス(登録商標) G−10のカラムクロマトグラフィにより分別する前と後のUV−可視光吸収スペクトルを示すスペクトル図である。
【図7】実施例6と実施例7で得られた溶液D1(25倍に希釈)と溶液Eのそれぞれに波長帯域410nmの光線を当てて励起させたときの発光スペクトルを示す図である。
【図8】UA−SWNTのメタノール溶液(約800mgl−1)を穴あき炭素フィルム上で乾燥させたときのUA−SWNT結晶構造のTEM像を示す写真図である。図8におけるスケールバーは、Aが1μm、Bが1μm、Cが5nmを示している。
【図9】UA−SWNTのメタノール溶液(約800mgl−1)をシリコン系基材(A及びBは400nm酸化物、Cは自然酸化物)上で乾燥させたときのUA−SWNT結晶構造のSEM像を示す写真図である。Aでは、板状物質の幾つかが基材の縁(右)に亘って存在している。Bでは、ナノチューブに含まれている明色の構造体は、金属触媒ナノ粒子を含む粒子状物質に部分的に浸されている。スケールバーは、Aが1μm、Bが3μm、Cが10μmである。
【図10】0°又は45°の結晶配向をもつ偏光子(0°)と検光子(90°)を直交し白色入射光を用いて反射モードで撮影したUA−SWNT結晶構造の偏光光学顕微鏡像を示す写真図である。結晶構造は、無極性光を顕著に偏光しない。スケールバーは20μmである。
【図11】IR顕微鏡の伝送モードで得られた、シリコン系基材上のU−SWNTとUA−SWNTのIR吸収スペクトルを示すスペクトル図である。比較のために、尿素のスペクトルとp−アニスアルデヒドのスペクトルとが示されている。また、サンプルは、メタノール溶液をシリコンの自然酸化物上で蒸発することによって、或いは水素ターミネートシリコンに高純度p−アニスアルデヒドを作用させることによって処理する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブを可溶化する方法において、
a)カーボンナノチューブと、
重合反応できる少なくとも1つのタイプのモノマ分子又は該少なくとも1つのタイプのモノマ分子の前駆体を準備するステップと、
b)上記モノマ分子又は該モノマ分子の前駆体と上記カーボンナノチューブとを混合するステップと、
c)上記モノマ分子と上記カーボンナノチューブとの重合反応を開始し、化学修飾されたカーボンナノチューブを生成するステップとを有し、
上記化学修飾されたカーボンナノチューブは、表面及び/又は末端に官能基を有しており、該官能基において上記重合反応が起こることを特徴とするカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項2】
上記官能基は、C−O結合(アルコール、フェノール、エーテル、エポキシド)、C=O結合(アルデヒド、ケトン、キノン)及びO−C=O結合(カルボン酸、エステル、無水物、ラクトン、ピロン)を含む官能基から選択される酸素含有官能基であることを特徴とする請求項1記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項3】
上記カーボンナノチューブは、単層又は複層ナノチューブであることを特徴とする請求項1又は2の何れか1項に記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項4】
200につき1から10につき1程度の割合でカーボンナノチューブの炭素原子が酸化された状態にあることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項5】
150につき1から20につき1程度の割合でカーボンナノチューブの炭素原子が酸化された状態にあることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項6】
100につき1程度の割合でカーボンナノチューブの炭素原子が酸化された状態にあることを特徴とする請求項5記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項7】
上記モノマ分子は、イソシアン酸及び/又はシアネートイオンであることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項8】
上記少なくとも1つのモノマ分子の前駆体は、尿素及び/又は尿素誘導体であることを特徴とする請求項7記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項9】
上記少なくとも1つのモノマ分子の前駆体は、シアヌル酸、シアヌル酸塩化物、イソシアヌル酸、及び三塩化イソシアン酸を含む官能基から選択されることを特徴とする請求項7記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項10】
上記前駆体は、シアネート塩であることを特徴とする請求項7記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項11】
ba)上記混合物を加熱するステップ、
又は、bb)上記混合物を酸性化するステップ、
或いは、ba)上記混合物を加熱するステップとbb)酸性化するステップの両方を更に有する請求項1乃至10の何れか1項に記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項12】
上記加熱及び/又は酸性化により、上記少なくとも1つのモノマ分子の前駆体が上記モノマ分子を形成するために誘導されることを特徴とする請求項11記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項13】
上記少なくとも1つのモノマ分子又は上記少なくとも1つのモノマ分子の前駆体は、溶液で与えられることを特徴とする請求項1乃至12の何れか1項に記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項14】
上記カーボンナノチューブは、溶液で提供されることを特徴とする請求項1乃至13の何れか1項に記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項15】
請求項15の溶液は、請求項14の溶液と同一又は溶液が異なることを特徴とする請求項13又は14の何れか1項に記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項16】
上記溶液は、上記モノマ又は上記モノマの前駆体の融点付近又は分解しない範囲で融点以上温度に加熱できることを特徴とする請求項13乃至15の何れか1項に記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項17】
重合反応の反応前、反応中又は反応後に、少なくとも1つのアルデヒドが上記混合物に添加されることを特徴とする請求項1乃至16の何れか1項に記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項18】
請求項11に依存するとき、上記少なくとも1つのアルデヒドがステップba)において添加されることを特徴とする請求項17記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項19】
上記少なくとも1つのアルデヒドは、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、カルボキシベンズアルデヒド、シンナムアルデヒド、クロロベンズアルデヒド、フェロセンカルボキシアルデヒド、ホルムアルデヒド、フルフラール、グルタルアルデヒド、パラホルムアルデヒド、ポリヒドロキシアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ピリジンアルデヒド、サリチルアルデヒド及びバレルアルデヒドを含む官能基から選択されることを特徴とする請求項17又は18の何れか1項に記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項20】
上記ベンズアルデヒドは、−NHR、−NRR'、−OH、−OR、−C、−CH、−CHR、−CHR及びCRから選択される少なくとも1つの電子供与性基で置換され、R及びR'は、直鎖状又は枝分かれした炭素Cを1個〜12個有するアルキル基、炭素Cを3個〜8個有するシクロアルキル基、炭素Cを6個〜12個有するアラルキル基、炭素Cを6個〜12個有するアリル基、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、及びポリ(エチレンオキシド)−ポリ(プロピレンオキシド)ブロック共重合体であることを特徴とする請求項19記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項21】
上記ベンズアルデヒドの少なくとも1つの電子供与性基は、パラ位に置換されることを特徴とする請求項20記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項22】
上記ベンズアルデヒドは、−OH又は−ORのうち少なくとも1つの電子供与性基で置換され、Rは、直鎖状又は枝分かれした炭素Cを1個〜12個有するアルキル基、炭素Cを3個〜8個有するシクロアルキル基、炭素Cを6個〜12個有するアラルキル基、炭素Cを6個〜12個有するアリル基、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、及びポリ(エチレンオキシド)−ポリ(プロピレンオキシド)ブロック共重合体であることを特徴とする請求項20又は21の何れか1項に記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項23】
上記少なくとも1つのアルデヒドは、p−アニスアルデヒド、4−プロポキシベンズアルデヒド及び4−(ヘキシルオキシ)ベンズアルデヒドを含む官能基から選択されることを特徴とする請求項17乃至22の何れか1項に記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項24】
上記ステップc)の後、未反応モノマ及び/又は前駆体が反応系から取り除かれることを特徴とする請求項1乃至23の何れか1項に記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項25】
塩沈澱生成ステップ、及び/又は遠心分離又は濾過、洗浄に続いて必要に応じて両方のうち何れか、及び/又はサイズ分離、及び/又は吸着、及び/又は酵素分解、及び/又は選択的焼成、及び/又はプラズマ処理によって上記未反応モノマ及び/又は前駆体を反応系から取り除くことを特徴とする請求項24記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項26】
上記塩沈澱生成は、塩、好ましくは過塩素酸塩の付加によって行い、上記濾過は、細孔サイズ0.01μm以上1μm以下のメンブレンフィルタを用いて行い、上記サイズ分離及び/又は吸着は、ゲル濾過により行い、上記酵素分解は、ウレアーゼを用いることを特徴とする請求項25記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項27】
上記重合の後、カルボン酸無水物をはじめとするアミン反応生成物が付加され、上記修飾されたカーボンナノチューブと反応されることを特徴とする請求項1乃至26の何れか1項に記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項28】
上記修飾されたカーボンナノチューブは、水溶液又はアルコール溶液、好ましくはメタノール系溶液に可溶であることを特徴とする請求項1乃至27の何れか1項に記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項29】
a)カーボンナノチューブ及び尿素を準備するステップと、
b)上記カーボンナノチューブと上記尿素とを混合するステップと、
c)b)の混合物を加熱するステップと
を有するカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項30】
上記カーボンナノチューブは、上記請求項1乃至6の何れかにおいて定義されることを特徴とする請求項29記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項31】
上記加熱温度は、尿素の融点以上であることを特徴とする請求項29又は30の何れか1項に記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項32】
加熱温度は、130℃乃至180℃範囲、好ましくは150℃乃至170℃、より好ましくは150℃乃至160℃、更に好ましくは150℃であることを特徴とする請求項31記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項33】
加熱時間は、1乃至60分間、好ましくは3乃至20分間、より好ましくは5乃至15分間、更に好ましくは10分間であることを特徴とする請求項29乃至32の何れか1項に記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項34】
上記少なくとも1つのアルデヒドは、ステップb)の混合物に添加されることを特徴とする請求項29乃至33の何れか1項に記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項35】
上記少なくとも1つのアルデヒドは、ステップc)の前又はステップc)の最中にステップb)の混合物に添加されることを特徴とする請求項34記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項36】
上記少なくとも1つのアルデヒドは、ステップc)の最中、好ましくはステップc)が開始して1乃至5分経過後、更に好ましくはステップc)が開始して1乃至3分経過後に添加されることを特徴とする請求項35記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項37】
上記少なくとも1つのアルデヒドは、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、カルボキシベンズアルデヒド、シンナムアルデヒド、クロロベンズアルデヒド、フェロセンカルボキシアルデヒド、ホルムアルデヒド、フルフラール、グルタルアルデヒド、パラホルムアルデヒド、ポリヒドロキシアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ピリジンアルデヒド、サリチルアルデヒド及びバレルアルデヒドを含む官能基から選択されることを特徴とする請求項34乃至36の何れか1項に記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項38】
上記ベンズアルデヒドは、−NHR、−NRR'、−OH、−OR、−C、−CH、−CHR、−CHR及びCRから選択される少なくとも1つの電子供与性基で置換され、R及びR'は、直鎖状又は枝分かれした炭素Cを1個〜12個有するアルキル基、炭素Cを3個〜8個有するシクロアルキル基、炭素Cを6個〜12個有するアラルキル基、炭素Cを6個〜12個有するアリル基、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、及びポリ(エチレンオキシド)−ポリ(プロピレンオキシド)ブロック共重合体であることを特徴とする請求項37記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項39】
上記ベンズアルデヒドの少なくとも1つの電子供与性基は、パラ位に置換されることを特徴とする請求項38記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項40】
上記ベンズアルデヒドは、−OH又は−ORのうち少なくとも1つの電子供与性基で置換され、Rは、直鎖状又は枝分かれした炭素Cを1個〜12個有するアルキル基、炭素Cを3個〜8個有するシクロアルキル基、炭素Cを6個〜12個有するアラルキル基、炭素Cを6個〜12個有するアリル基、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、及びポリ(エチレンオキシド)−ポリ(プロピレンオキシド)ブロック共重合体であることを特徴とする請求項38又は39の何れか1項に記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項41】
上記少なくとも1つのアルデヒドは、p−アニスアルデヒド、4−プロポキシベンズアルデヒド及び4−(ヘキシルオキシ)ベンズアルデヒドを含む官能基から選択されることを特徴とする請求項34乃至40の何れか1項に記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項42】
上記ステップc)の生成物は、水溶液又はアルコール、好ましくはメタノール系溶液、又は水溶液とアルコール溶液との混合系に可溶であり、塩沈澱生成ステップ、及び/又は遠心分離又は濾過、洗浄に続いて必要に応じて両方のうち何れか、及び/又はサイズ分離、及び/又は吸着、及び/又は酵素分解、及び/又は選択的焼成、及び/又はプラズマ処理が施されることを特徴とする請求項29乃至41の何れか1項に記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項43】
上記ステップc)の生成物は、水溶液又はアルコール、好ましくはメタノール系溶液又は水溶液とアルコール溶液との混合系に可溶であり、蒸発処理が施されることを特徴とする請求項42記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項44】
請求項1乃至43の何れか1項に記載のカーボンナノチューブの可溶化方法によって製造されたカーボンナノチューブ。
【請求項45】
バングル構造をもたないことを特徴とする請求項44記載のカーボンナノチューブ。
【請求項46】
AEMで観察したとき、真珠チェーン状構造において個別の塊で修飾されていることを特徴とする請求項44又は45の何れか1項に記載のカーボンナノチューブ。
【請求項47】
・水又は水溶液に対する溶解度が10g/l以上、及び/又はメタノール又はメタノール系溶液に対する溶解度が1g/l以上であること
・210nmから250nm間に吸光度の最大値があること
・赤外線吸収スペクトルの吸収極大値が以下の波数範囲のうち1以上、又は全てに存在すること
から選択される1以上の物理的特徴を有することを特徴とする請求項44又は45の何れか1項に記載のカーボンナノチューブ。
3470〜3490cm−1、3420〜3440cm−1、3365〜3385cm−1、3330〜3350cm−1、3245〜3265cm−1、3210〜3230cm−1、1660〜1680cm−1、1610〜1630cm−1、1450〜1470cm−1、1330〜1350cm−1、及び1095〜1115cm−1
【請求項48】
上記カーボンナノチューブは、AEMで観察すると、バンドル構造をもたないが枝分かれ構造内の上記個別の塊を介して末端基で相互に連結していることを特徴とする請求項46又は47の何れか1項に記載のカーボンナノチューブの会合体。
【請求項49】
請求項43のカーボンナノチューブの可溶化方法によって製造されたカーボンナノチューブ又はカーボンナノチューブの会合体。
【請求項50】
少なくとも部分的に結晶質であることを特徴とする請求項49記載のカーボンナノチューブ又はカーボンナノチューブの会合体。
【請求項51】
・赤外線吸収スペクトルの吸収極大値が以下の波数範囲のうち1以上、又は全てに存在すること
3370〜3390cm−1、3205〜3225cm−1、3060〜3080cm−1、1700〜1720cm−1、1680〜1700cm−1、1655〜1675cm−1、1580〜1600cm−1、1500〜1520cm−1、1440〜1460cm−1、1395〜1415cm−1、1245〜1265cm−1、1155〜1175cm−1、1020〜1040cm−1、845〜865cm−1、795〜815cm−1
・原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope、以下AFMという)、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope、以下TEMという)及び/又は走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、以下SEMという)で観察すると結晶質部分と非晶質部分とを有すること
・水又は水溶液に対する溶解度が10g/l−1以上、及び/又はメタノール又はメタノール系溶液に対する溶解度が1g/l−1以上であること
から選択される1以上の物理的特徴を有することを特徴とする請求項49又は50の何れか1項に記載のカーボンナノチューブ。
【請求項52】
請求項44乃至47の何れか1項に記載のカーボンナノチューブ、請求項48記載のカーボンナノチューブ、請求項49乃至51の何れか1項に記載のカーボンナノチューブをそれぞれ、電子装置、ナノ電子デバイス、メモリ素子、電界放出デバイス、センサ、アクチュエータ、電気機械デバイス、複合材料、被覆剤/塗料/ペースト、水素貯蔵デバイス、バッテリ又は燃料電池、スーパーキャパシタ、光電気化学デバイス、光電子デバイス、エネルギ変換デバイス、発光ダイオード、液晶ディスプレイ、走査型プローブ顕微鏡、非線形光学デバイス、アンテナ、または触媒に利用することを特徴とするカーボンナノチューブの利用方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブを可溶化する方法において、
a)カーボンナノチューブと、
重合反応できるイソシアン酸及び/又はシアネートイオンの前駆体としての尿素とを準備するステップと、
b)上記カーボンナノチューブと上記尿素とを混合するステップと、
c)上記イソシアン酸及び/又はシアネートイオンと上記カーボンナノチューブとの重合反応を開始し、化学修飾されたカーボンナノチューブを生成するステップとを有し、
上記化学修飾されたカーボンナノチューブは、表面及び/又は末端に官能基を有しており、該官能基において上記重合反応が起こることを特徴とするカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項2】
上記官能基は、C−O結合(アルコール、フェノール、エーテル、エポキシド)、C=O結合(アルデヒド、ケトン、キノン)及びO−C=O結合(カルボン酸、エステル、無水物、ラクトン、ピロン)を含む官能基から選択される酸素含有官能基であることを特徴とする請求項1記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項3】
上記カーボンナノチューブは、単層又は複層ナノチューブであることを特徴とする請求項1又は2の何れか1項に記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項4】
200につき1から10につき1程度の割合でカーボンナノチューブの炭素原子が酸化された状態にあることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項5】
150につき1から20につき1程度の割合でカーボンナノチューブの炭素原子が酸化された状態にあることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項6】
100につき1程度の割合でカーボンナノチューブの炭素原子が酸化された状態にあることを特徴とする請求項5記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項7】
ba)上記混合物を加熱するステップ、
または、bb)上記混合物を酸性化するステップ、
或いは、ba)上記混合物を加熱するステップとbb)酸性化するステップの両方を更に有することを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項8】
上記加熱及び/又は酸性化により、上記少なくとも1つのモノマ分子の前駆体が上記モノマ分子を形成するために誘導されることを特徴とする請求項7記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項9】
上記少なくとも1つのモノマ分子又は上記少なくとも1つのモノマ分子の前駆体は、溶液で与えられることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項10】
上記カーボンナノチューブは、溶液で提供されることを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項に記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項11】
請求項9の溶液は、請求項10の溶液と同一又は溶液が異なることを特徴とする請求項9又は10の何れか1項に記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項12】
上記溶液は、上記モノマ又は上記モノマの前駆体の融点付近又は分解しない範囲で融点以上温度に加熱できることを特徴とする請求項9乃至11の何れか1項に記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項13】
重合反応の反応前、反応中又は反応後に、少なくとも1つのアルデヒドが上記混合物に添加されることを特徴とする請求項1乃至12の何れか1項に記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項14】
請求項7に依存するとき、上記少なくとも1つのアルデヒドがステップba)において添加されることを特徴とする請求項13記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項15】
上記少なくとも1つのアルデヒドは、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、カルボキシベンズアルデヒド、シンナムアルデヒド、クロロベンズアルデヒド、フェロセンカルボキシアルデヒド、ホルムアルデヒド、フルフラール、グルタルアルデヒド、パラホルムアルデヒド、ポリヒドロキシアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ピリジンアルデヒド、サリチルアルデヒド及びバレルアルデヒドを含む官能基から選択されることを特徴とする請求項13又は14の何れか1項に記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項16】
上記ベンズアルデヒドは、−NHR、−NRR’、−OH、−OR、−C、−CH、−CHR、−CHR及びCRから選択される少なくとも1つの電子供与性基で置換され、R及びR’は、直鎖状又は枝分かれした炭素Cを1個〜12個有するアルキル基、炭素Cを3個〜8個有するシクロアルキル基、炭素Cを6個〜12個有するアラルキル基、炭素Cを6個〜12個有するアリル基、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、及びポリ(エチレンオキシド)−ポリ(プロピレンオキシド)ブロック共重合体であることを特徴とする請求項15記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項17】
上記ベンズアルデヒドの少なくとも1つの電子供与性基は、パラ位に置換されることを特徴とする請求項16記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項18】
上記ベンズアルデヒドは、−OH又は−ORのうち少なくとも1つの電子供与性基で置換され、Rは、直鎖状又は枝分かれした炭素Cを1個〜12個有するアルキル基、炭素Cを3個〜8個有するシクロアルキル基、炭素Cを6個〜12個有するアラルキル基、炭素Cを6個〜12個有するアリル基、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、及びポリ(エチレンオキシド)−ポリ(プロピレンオキシド)ブロック共重合体であることを特徴とする請求項16又は17の何れか1項に記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項19】
上記少なくとも1つのアルデヒドは、p−アニスアルデヒド、4−プロポキシベンズアルデヒド及び4−(ヘキシルオキシ)ベンズアルデヒドを含む官能基から選択されることを特徴とする請求項13乃至18の何れか1項に記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項20】
上記ステップc)の後、未反応モノマ及び/又は前駆体が反応系から取り除かれることを特徴とする請求項1乃至19の何れか1項に記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項21】
塩沈澱生成ステップ、及び/又は遠心分離又は濾過、洗浄に続いて必要に応じて両方のうち何れか、及び/又はサイズ分離、及び/又は吸着、及び/又は酵素分解、及び/又は選択的焼成、及び/又はプラズマ処理によって上記未反応モノマ及び/又は前駆体を反応系から取り除くことを特徴とする請求項20記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項22】
上記塩沈澱生成は、塩、好ましくは過塩素酸塩の付加によって行い、上記濾過は、細孔サイズ0.01μm以上1μm以下のメンブレンフィルタを用いて行い、上記サイズ分離及び/又は吸着は、ゲル濾過により行い、上記酵素分解は、ウレアーゼを用いることを特徴とする請求項21記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項23】
上記重合の後、カルボン酸無水物をはじめとするアミン反応生成物が付加され、上記修飾されたカーボンナノチューブと反応されることを特徴とする請求項1乃至22の何れか1項に記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項24】
上記修飾されたカーボンナノチューブは、水溶液又はアルコール溶液、好ましくはメタノール系溶液に可溶であることを特徴とする請求項1乃至23の何れか1項に記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項25】
a)カーボンナノチューブ及び尿素を準備するステップと、
b)上記カーボンナノチューブと上記尿素とを混合するステップと、
c)b)の混合物を加熱するステップと
を有するカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項26】
上記カーボンナノチューブは、上記請求項1乃至6の何れかにおいて定義されることを特徴とする請求項25記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項27】
上記加熱温度は、尿素の融点以上であることを特徴とする請求項25又は26の何れか1項に記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項28】
加熱温度は、130℃乃至180℃範囲、好ましくは150℃乃至170℃、より好ましくは150℃乃至160℃、更に好ましくは150℃であることを特徴とする請求項27記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項29】
加熱時間は、1乃至60分間、好ましくは3乃至20分間、より好ましくは5乃至15分間、更に好ましくは10分間であることを特徴とする請求項25乃至28の何れか1項に記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項30】
上記少なくとも1つのアルデヒドは、ステップb)の混合物に添加されることを特徴とする請求項25乃至29の何れか1項に記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項31】
上記少なくとも1つのアルデヒドは、ステップc)の前又はステップc)の最中にステップb)の混合物に添加されることを特徴とする請求項30記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項32】
上記少なくとも1つのアルデヒドは、ステップc)の最中、好ましくはステップc)が開始して1乃至5分経過後、更に好ましくはステップc)が開始して1乃至3分経過後に添加されることを特徴とする請求項31記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項33】
上記少なくとも1つのアルデヒドは、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、カルボキシベンズアルデヒド、シンナムアルデヒド、クロロベンズアルデヒド、フェロセンカルボキシアルデヒド、ホルムアルデヒド、フルフラール、グルタルアルデヒド、パラホルムアルデヒド、ポリヒドロキシアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ピリジンアルデヒド、サリチルアルデヒド及びバレルアルデヒドを含む官能基から選択されることを特徴とする請求項30乃至32の何れか1項に記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項34】
上記ベンズアルデヒドは、−NHR、−NRR’、−OH、−OR、−C、−CH、−CHR、−CHR及びCRから選択される少なくとも1つの電子供与性基で置換され、R及びR’は、直鎖状又は枝分かれした炭素Cを1個〜12個有するアルキル基、炭素Cを3個〜8個有するシクロアルキル基、炭素Cを6個〜12個有するアラルキル基、炭素Cを6個〜12個有するアリル基、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、及びポリ(エチレンオキシド)−ポリ(プロピレンオキシド)ブロック共重合体であることを特徴とする請求項33記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項35】
上記ベンズアルデヒドの少なくとも1つの電子供与性基は、パラ位に置換されることを特徴とする請求項34記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項36】
上記ベンズアルデヒドは、−OH又は−ORのうち少なくとも1つの電子供与性基で置換され、Rは、直鎖状又は枝分かれした炭素Cを1個〜12個有するアルキル基、炭素Cを3個〜8個有するシクロアルキル基、炭素Cを6個〜12個有するアラルキル基、炭素Cを6個〜12個有するアリル基、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、及びポリ(エチレンオキシド)−ポリ(プロピレンオキシド)ブロック共重合体であることを特徴とする請求項34又は35の何れか1項に記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項37】
上記少なくとも1つのアルデヒドは、p−アニスアルデヒド、4−プロポキシベンズアルデヒド及び4−(ヘキシルオキシ)ベンズアルデヒドを含む官能基から選択されることを特徴とする請求項30乃至36の何れか1項に記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項38】
上記ステップc)の生成物は、水溶液又はアルコール、好ましくはメタノール系溶液又は水溶液及びアルコール溶液の混合系に可溶であり、塩沈澱生成ステップ、及び/又は遠心分離又は濾過、洗浄に続いて必要に応じて両方のうち何れか、及び/又はサイズ分離、及び/又は吸着、及び/又は酵素分解、及び/又は選択的焼成、及び/又はプラズマ処理が施されることを特徴とする請求項25乃至37の何れか1項に記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項39】
上記ステップc)の生成物は、水溶液又はアルコール、好ましくはメタノール系溶液又は水溶液及びアルコール溶液の混合系に可溶であり、蒸発処理が施されることを特徴とする請求項38記載のカーボンナノチューブの可溶化方法。
【請求項40】
請求項1乃至39の何れか1項に記載のカーボンナノチューブの可溶化方法によって製造されたカーボンナノチューブ。
【請求項41】
バングル構造をもたないことを特徴とする請求項40記載のカーボンナノチューブ。
【請求項42】
AEMで観察したとき、真珠チェーン状構造において個別の塊で修飾されていることを特徴とする請求項40又は41の何れか1項に記載のカーボンナノチューブ。
【請求項43】
・水又は水溶液に対する溶解度が10g/l以上、及び/又はメタノール又はメタノール系溶液に対する溶解度が1g/l以上であること
・210nmと250nmとの間に吸光度の最大値があること
・赤外吸収スペクトルの吸収極大値が以下の波数範囲のうち1又は複数、又は全てに存在すること
から選択される1又は1以上の物理的特徴を有することを特徴とする請求項40又は41の何れか1項に記載のカーボンナノチューブ。
3470〜3490cm−1、3420〜3440cm−1、3365〜3385cm−1、3330〜3350cm−1、3245〜3265cm−1、3210〜3230cm−1、1660〜1680cm−1、1610〜1630cm−1、1450〜1470cm−1、1330〜1350cm−1、及び1095〜1115cm−1
【請求項44】
上記カーボンナノチューブは、AEMで観察すると、バンドル構造をもたないが枝分かれ構造内の上記個別の塊を介して末端基で相互に連結していることを特徴とする請求項42又は43の何れか1項に記載のカーボンナノチューブの会合体。
【請求項45】
請求項39のカーボンナノチューブの可溶化方法によって製造されたカーボンナノチューブ又はカーボンナノチューブの会合体。
【請求項46】
少なくとも部分的に結晶質であることを特徴とする請求項45記載のカーボンナノチューブ又はカーボンナノチューブの会合体。
【請求項47】
・赤外吸収スペクトルの吸収極大値が以下の波数範囲のうち1又は複数、又は全てに存在すること
3370〜3390cm−1、3205〜3225cm−1、3060〜3080cm−1、1700〜1720cm−1、1680〜1700cm−1、1655〜1675cm−1、1580〜1600cm−1、1500〜1520cm−1、1440〜1460cm−1、1395〜1415cm−1、1245〜1265cm−1、1155〜1175cm−1、1020〜1040cm−1、845〜865cm−1、795〜815cm−1
・AFM、TEM及び/又はSEMで観察すると結晶質部分と非晶質部分とを有すること
・水又は水溶液に対する溶解度が10g/l−1以上、及び/又はメタノール又はメタノール系溶液に対する溶解度が1g/l−1以上であること
から選択される1又は1以上の物理的特徴を有することを特徴とする請求項45又は46の何れか1項に記載のカーボンナノチューブ。
【請求項48】
請求項40乃至43の何れか1項に記載のカーボンナノチューブ、請求項44記載のカーボンナノチューブ、請求項45乃至47の何れか1項に記載のカーボンナノチューブをそれぞれ、電子装置、ナノ電子デバイス、メモリ素子、電界放出デバイス、センサ、アクチュエータ、電気機械デバイス、複合材料、被覆剤/塗料/ペースト、水素貯蔵デバイス、バッテリ又は燃料電池、スーパーキャパシタ、光電気化学デバイス、光電子デバイス、エネルギ変換デバイス、発光ダイオード、液晶ディスプレイ、走査型プローブ顕微鏡、非線形光学デバイス、アンテナ、または触媒に利用することを特徴とするカーボンナノチューブの利用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2006−509703(P2006−509703A)
【公表日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−557858(P2004−557858)
【出願日】平成15年9月23日(2003.9.23)
【国際出願番号】PCT/EP2003/010600
【国際公開番号】WO2004/052783
【国際公開日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(598094506)ソニー インターナショナル (ヨーロッパ) ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (29)
【Fターム(参考)】