説明

可溶性ポリイミドおよびその製造方法、ワニス並びにポリイミドフィルム

【課題】有機溶媒に対する可溶性を有し、優れた耐熱性および光透過性と共に高い機械的強度を有するポリイミドフィルムを得ることのできる可溶性ポリイミドおよびその製造方法、並びに、ワニスおよびポリイミドフィルムを提供する。
【解決手段】可溶性ポリイミドは、(1)2つのイミドー芳香環縮合環をエーテル結合、アルキレン基、フルオレニレン基、スルホニル基、ケトン結合よりなる群から選ばれる1種の結合で結んだ構造単位1〜80mol%と、(2)2つのイミドー芳香環縮合環を炭素ー炭素結合で結んだ構造単位20〜99mol%から構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可溶性ポリイミドおよびその製造方法、ワニス並びにポリイミドフィルムに関し、更に詳しくは、フレキシブルディスプレイ基板などに好適に用いられる耐熱性光学材料として有用な可溶性ポリイミドおよびその製造方法、ワニス並びにポリイミドフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとから得られるポリイミドは、大きな分子間力を有する化学結合(イミド結合)を有すると共に、分子が高い剛直性および共鳴安定性を有するものであることから、優れた耐熱性および機械的強度が得られるものの、その一方で、分子の剛直性および共鳴安定性を有することに起因して褐色〜黄色に着色していることから、光透過性の観点から光学材料として用いることには問題がある。
【0003】
一方、光透過性を有するポリイミドとしては、芳香族テトラカルボン酸二無水物として、互いに隣接する芳香環が共役系を形成することのないようなねじれた状態に位置する構造を有する、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を用いたものが提案されている(特許文献1)。
このようなポリイミドによれば、耐熱性および有機溶媒に対する可溶性と共に、光学材料に必要とされる十分な光透過性が得られるものの、分子が共役構造を有さずに剛直性および共鳴安定性を有するものでないことに起因して十分な機械的強度が得られない、という問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−53767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は、有機溶媒に対する可溶性を有し、優れた耐熱性および光透過性と共に高い機械的強度を有するポリイミドフィルムを得ることのできる可溶性ポリイミドおよびその製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、優れた耐熱性および光透過性と共に高い機械的強度を有するポリイミドフィルムを得ることのできるワニスを提供することにある。
本発明の更に他の目的は、優れた耐熱性および光透過性と共に高い機械的強度を有するポリイミドフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の可溶性ポリイミドは、下記化学式(1)で表わされる第1の構造単位と、下記化学式(2)で表される第2の構造単位とを有し、
当該第1の構造単位と当該第2の構造単位との合計100mol%中において、第1の構造単位の割合が1〜80mol%であり、第2の構造単位の割合が20〜99mol%であることを特徴とする。
【0007】
【化1】

【0008】
〔式中、Ar1 は、下記化学式(3)で表わされる基を示し、R1 は、飽和環または芳香環を有する基を示す。〕
【0009】
【化2】

【0010】
〔式中、Aは、エーテル結合(−O−)、アルキレン基、フルオレニレン基、スルホニル基、ケトン結合(−C(=O)−)よりなる群から選ばれる1種の結合または基を示す。〕
【0011】
【化3】

【0012】
〔式中、R2 は、飽和環または芳香環を有する基を示し、R3 およびR4 は、それぞれ独立にハロゲン原子、アルキル基およびアルキルエーテル基を示す。pおよびqは、それぞれ独立に0〜3の整数である。〕
【0013】
本発明の可溶性ポリイミドにおいては、前記化学式(1)におけるR1 および前記化学式(2)におけるR2 が芳香環を有する基であることが好ましい。
【0014】
本発明の可溶性ポリイミドにおいては、前記化学式(1)におけるAr1 が下記化学式(3−1)〜化学式(3−3)のいずれかで表わされる基であることが好ましい。
【0015】
【化4】

【0016】
本発明の可溶性ポリイミドは、前記第1の構造単位の割合が、第1の構造単位と第2の構造単位との合計100mol%中において50〜80mol%であり、
前記第2の構造単位の割合が、第1の構造単位と第2の構造単位との合計100mol%中において20〜50mol%であることが好ましい。
【0017】
本発明の可溶性ポリイミドの製造方法は、下記化学式(3)で表わされる化合物と、下記化学式(4)で表わされる化合物と、下記化学式(5)で表わされる化合物とを重縮合反応させる工程を有することを特徴とする。
【0018】
【化5】

【0019】
〔式中、R3 およびR4 は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基およびアルキルエーテル基を示す。pおよびqは、それぞれ独立に1〜3の整数である。〕
【0020】
【化6】

【0021】
〔式中、Aは、エーテル結合(−O−)、アルキレン基、フルオニル基、スルホニル基、ケトン結合(−C(=O)−)よりなる群から選ばれる1種の結合または基を示す。〕
【0022】
【化7】

【0023】
〔式中、R5 は、飽和環または芳香環を有する基を示す。〕
【0024】
本発明のワニスは、前記の可溶性ポリイミドと溶媒とを含有することを特徴とする。
【0025】
本発明のワニスにおいては、前記溶媒がN−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、クロロホルム、ジクロロメタン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、アセトンよりなる群から選ばれる少なくとも1種の有機溶剤であることが好ましい。
【0026】
本発明のポリアミドフィルムは、前記のワニスから得られることを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明の可溶性ポリイミドは、特定の構造を有する第1の構造単位と特定の構造を有する第2の構造単位とを特定の割合で有するものであり、第1の構造単位が2つの芳香環が特定の構造を有する基によって結合されている構造を有するものであることから、その構造に起因して分子間相互作用が小さくなり、また柔軟な構造が導入されることとなるため、有機溶媒に対する可溶性と共に、高い透明性と機械的強度が発現されることとなり、その上、第2の構造単位が互いに隣接する芳香環が共役系を形成することのないようなねじれた状態に位置する構造を有するものであることから、その構造に起因して耐熱性および有機溶媒に対する可溶性と共に、高い透明性が得られることとなる。
従って、本発明の可溶性ポリイミドによれば、有機溶媒に対する可溶性を有し、優れた耐熱性および光透過性と共に高い機械的強度を有するポリイミドフィルムを得ることができる。
【0028】
本発明の可溶性ポリイミドの製造方法によれば、可溶性ポリイミドを得るための重縮合工程において、ポリアミック酸の生成と、得られたポリアミック酸のイミド化処理とが連続的に進行するため、残存アミック酸濃度が10%未満の可溶性ポリイミドを容易に得ることができる。
【0029】
本発明のワニスによれば、本発明の可溶性ポリイミドを含有するものであることから、優れた耐熱性および光透過性と共に高い機械的強度を有するポリイミドフィルムを得ることができる。
【0030】
本発明のポリイミドフィルムによれば、本発明の可溶性ポリイミドを含有する本発明のワニスから得られるものであることから、優れた耐熱性および光透過性と共に高い機械的強度が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施例1で得られたポリイミドの核磁気共鳴スペクトルである。
【図2】実施例2で得られたポリイミドの核磁気共鳴スペクトルである。
【図3】実施例3で得られたポリイミドの核磁気共鳴スペクトルである。
【図4】実施例4で得られたポリイミドの核磁気共鳴スペクトルである。
【図5】実施例5で得られたポリイミドの核磁気共鳴スペクトルである。
【図6】実施例6で得られたポリイミドの核磁気共鳴スペクトルである。
【図7】比較例1で得られたポリイミドの核磁気共鳴スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の可溶性ポリイミドは、上記化学式(1)で表わされる第1の構造単位と、上記化学式(2)で表わされる第2の構造単位とを有し、当該第1の構造単位と当該第2の構造単位との合計100mol%中において、第1の構造単位の割合が1〜80mol%であり、第2の構造単位の割合が20〜99mol%であることを特徴とするポリイミドである。
この本発明の可溶性ポリイミドにおいては、その構造は、1H−NMR測定によって得られる1H−NMRスペクトルによって確認することができる。
ここに、本明細書中において、「可溶性ポリイミド」とは、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、γ−ブチロラクトン、クロロホルム、ジクロロメタン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、アセトンよりなるから選ばれる少なくとも1種の有機溶剤に溶解したときの固形分濃度が10質量%以上であると共に、全イミド基濃度に対する残存アミック酸濃度が10%未満であるポリイミドである。
「固形分濃度」とは、本発明の可溶性ポリイミドが有機溶媒に溶解されてなるポリイミド溶液の総質量、すなわちポリイミド溶液を構成する本発明の可溶性ポリイミドと有機溶媒との合計の質量に対する、本発明の可溶性ポリイミドの質量の百分率である。
また「残存アミック酸濃度」とは、理論イミド基数に対するアミック酸数から算出される値であり、この残存アミック酸濃度は、 1H−NMR測定によって得られる1H−NMRスペクトルにおける、アミドプロトンに帰属される9.5〜10.5ppm付近の吸収によって確認することができる。
【0033】
本発明の可溶性ポリイミドを構成する第1の構造単位に係る化学式(1)において、Ar1 は、上記化学式(3)で表わされる基を示すものである。
化学式(3)において、Aは、エーテル結合(−O−)、アルキレン基、フルオレニレン基、スルホニル基、ケトン結合(−C(=O)−)よりなる群から選ばれる1種の結合または基を示す。
化学式(3)におけるAに係るアルキレン基としては、例えば無置換または置換基を有するメチレン基、イソプロピレン基などが挙げられ、また、置換基としては、ハロゲン基などが挙げられる。
【0034】
化学式(3)におけるAの好ましい具体例としては、上記化学式(3−1)〜化学式(3−3)で表わされる基が挙げられる。
【0035】
また、化学式(1)において、R1 は、飽和環または芳香環を有する基を示す。
この化学式(1)におけるR1 は、芳香環を有する基であることが好ましい。
【0036】
ここに、化学式(1)におけるR1 に係る飽和環としては、例えばシクロアルキル環およびビシクロ環などが挙げられ、飽和環を有する基としては、例えば置換基としてシクロアルキル基を有するアルキレン基、シクロアルキレン基、ビシクロ環化合物に由来の2価の基などが挙げられる。
化学式(1)におけるR1 に係る芳香環としては、例えばベンゼン環、アントラセン環、ナフタレン環およびフルオレン環などが挙げられ、芳香環を有する基としては、例えばフェニレン基、ビフェニル化合物に由来の2価の基、アントラセン化合物に由来の2価の基、ナフタレン化合物に由来の2価の基およびフルオレン化合物に由来の2価の基などが挙げられる。
【0037】
本発明の可溶性ポリイミドを構成する第2の構造単位に係る化学式(2)において、R2は、飽和環または芳香環を有する基を示す。
この化学式(2)におけるR2 は、芳香環を有する基であることが好ましい。
また、この化学式(2)におけるR2 は、化学式(1)におけるR1 と同一のものであってもよく、異なるものであってもよい。
【0038】
ここに、化学式(2)におけるR2 に係る飽和環としては、例えばシクロアルキル環およびビシクロ環などが挙げられ、飽和環を有する基としては、例えば置換基としてシクロアルキル基を有するアルキレン基、シクロアルキレン基、ビシクロ環化合物に由来の2価の基などが挙げられる。
化学式(2)におけるR2 に係る芳香環としては、例えばベンゼン環、アントラセン環、ナフタレン環およびフルオレン環などが挙げられ、芳香環を有する基としては、例えばフェニレン基、ビフェニル化合物に由来の2価の基、アントラセン化合物に由来の2価の基、ナフタレン化合物に由来の2価の基およびフルオレン化合物に由来の2価の基などが挙げられる。
【0039】
また、化学式(2)において、R3 およびR4 は、それぞれ独立にハロゲン原子、アルキル基、アルキルエーテル基を示す。
化学式(2)におけるR3 およびR4 に係るハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子などが挙げられる。
化学式(2)におけるR3 およびR4 に係るアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基などの炭素数1〜3の低級アルキル基が挙げられる。
化学式(2)におけるR3 およびR4 に係るアルキルエーテル基としては、例えばメチルエーテル基、エチルエーテル基などが挙げられる。
【0040】
化学式(2)において、pおよびqは、それぞれ独立に0〜3の整数であるが、0であることが好ましい。
また、化学式(2)におけるpおよびqが1の整数である場合には、R3 およびR4 は、各々、ベンゼン環における位置番号6位の位置の炭素原子に結合されていることが好ましく、pおよびqが2の整数である場合には、R3 およびR4 は、各々、ベンゼン環における位置番号6位の位置の炭素原子に結合されていることが好ましい。
【0041】
本発明の可溶性ポリイミドにおいて、当該可溶性ポリイミドを構成する第1の構造単位は、同一の構成を有するものに限られず、各構造単位におけるAr1 およびR1 がその一部または全部が異なったものであってもよく、また、第2の構造単位は、同一の構成を有するものに限られず、各構造単位におけるR2 〜R3 、pおよびqがその一部または全部が異なったものであってもよい。
【0042】
本発明の可溶性ポリイミドにおいては、第1の構造単位と当該第2の構造単位との合計100mol%中において、第1の構造単位の割合が1〜80mol%であり、第2の構造単位の割合が20〜99mol%であることが必要であるが、第1の構造単位の割合が50〜80mol%であり、第2の構造単位の割合が20〜50mol%であることが好ましい。
【0043】
第1の構造単位の割合が過大である場合、すなわち第2の構造単位の割合が過小である場合には、有機溶媒に対する可溶性が小さくなり、また十分な耐熱性が得られなくなる。一方、第1構造単位の割合が過小である場合、すなわち第2の構造単位の割合が過大である場合には、可溶性ポリイミドから得られるポリイミドフィルムに十分な機械的強度が得られなくなる。
【0044】
このような本発明の可溶性ポリイミドは、例えば上記化学式(4)で表わされる化合物と、上記化学式(5)で表わされる化合物と、上記化学式(6)で表わされる化合物とを重縮合反応させる重縮合工程を有することを特徴とする本発明の可溶性ポリイミドの製造方法によって製造することができる。
【0045】
本発明の可溶性ポリイミドの製造方法は、具体的には、有機溶剤中において、化学式(4)で表わされる化合物(以下、「第1の原料芳香族テトラカルボン酸二無水物」ともいう。)と、化学式(5)で表される化合物(以下、「第2の原料芳香族テトラカルボン酸二無水物」ともいう。)と、化学式(6)で表わされる化合物(以下、「原料ジアミン化合物」ともいう。)とを重縮合反応させる重縮合工程を経ることにより、第1の原料芳香族テトラカルボン酸二無水物と原料ジアミン化合物とにより形成される第1の構造単位と共に、第2の原料芳香族テトラカルボン酸二無水物と原料ジアミン化合物とにより形成される第2の構造単位を含有する可溶性ポリイミドが得られる。
ここに、本発明の可溶性ポリイミドの製造方法に供される原料ジアミン化合物に係る化学式(6)において、R5 は、化学式(1)におけるR1 および化学式(2)におけるR2 と同様に、飽和環または芳香環を有する基を示す。
【0046】
第1の原料芳香族テトラカルボン酸化合物の具体例としては、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物およびその誘導体が挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上を組合せて用いることができる。
なお、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の誘導体とは、置換基として、ハロゲン原子、低級アルキル基(具体的には、炭素数1〜3のアルキル基)およびアルキルエーテル基から選ばれる基を有するものである。
【0047】
第2の原料芳香族テトラカルボン酸化合物の具体例としては、例えば2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、5,5’−カルボニルビス(イソベンゾフラン−1,3‐ジオン)、4,4’−カルボニルビス(イソベンゾフラン−1,3−ジオン)、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニルフルオレン二無水物などが挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上を組合せて用いることができる。
【0048】
第2の原料芳香族テトラカルボン酸化合物としては、可溶性ポリイミドから得られるポリイミドフィルムの光透過性の観点から、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレンを用いることが好ましい。
【0049】
原料ジアミン化合物としては、脂環式ジアミン化合物および芳香族ジアミン化合物を用いることができ、脂環式ジアミン化合物と芳香族ジアミン化合物とを組み合わせて用いることもできる。
【0050】
前記脂環式ジアミンの具体例としては、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラメチルジシクロヘキシルメタン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、4,4’−ジアミノ−2,2’−トリフルオロメチルビシクロヘキシル、2,2−ビス(4,4’−ジアミノシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4’−ジアミノシクロヘキシル)-1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、1,4−ビスアミノメチルシクロヘキサン、2,3−ジアミノビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン、2,5−ジアミノビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン、2,6−ジアミノビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン、2,7−ジアミノビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン、2,5−ビス(アミノメチル)−ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン、2,6−ビス(アミノメチル)−ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン、2,3−ビス(アミノメチル)−ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタンなどが挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上を組合せて用いることができる。
これらのうちでは、可溶性ポリイミドから得られるポリイミドフィルムの機械的強度の観点から、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラメチルジシクロヘキシルメタン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、4,4’−ジアミノ−2,2’−トリフルオロメチルビシクロヘキシル、2,2−ビス(4,4’−ジアミノシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4’−ジアミノシクロヘキシル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンを用いることが好ましい。
【0051】
前記芳香族ジアミン化合物としては、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、ベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,3’−ジアミノベンズアニリド、4,4’−ジアミノ−2,2’−トリフルオロメチルビフェニル、2,2−ビス(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,4−ジアミノアントラキノン、1,5−ジアミノアントラキノン、1,5−ジアミノナフタリン、ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)−3−フェニルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)−3−フェニルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(2−アミノフェノキシ)−3−フェニルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−3−トリフルオロメチルフェノキシ)−3−フェニルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)−3−フェニルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(3−アミノ−4−トリフルオロメチルフェノキシ)−3−フェニルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(3−アミノ−5−トリフルオロメチルフェノキシ)−3−フェニルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(3−アミノ−6−トリフルオロメチルフェノキシ)−3−フェニルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(2−アミノ−3−トリフルオロメチルフェノキシ)−3−フェニルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(2−アミノ−4−トリフルオロメチルフェノキシ)−3−フェニルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(2−アミノ−5−トリフルオロメチルフェノキシ)−3−フェニルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(2−アミノ−6−トリフルオロメチルフェノキシ)−3−フェニルフェニル〕フルオレン、あるいはこれらの化合物の芳香環上に、置換基として、低級アルキル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン基、ハロゲン化アルキル基、もしくはハロゲン化アリール基を有する置換体が挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上を組合せて用いることができる。
これらのうちでは、耐熱性および可溶性ポリイミドから得られるポリイミドフィルムの光透過性の観点から、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、ベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4′−ジアミノベンズアニリド、3,3’−ジアミノベンズアニリド、4,4’−ジアミノ−2,2’−トリフルオロメチルビフェニル、2,2−ビス(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンを用いることが好ましく、更には4,4’−ジアミノ−2,2’−トリフルオロメチルビフェニルを用いることが好ましい。
【0052】
原料ジアミン化合物の使用量は、当該原料ジアミン化合物のモル数と、第1の原料芳香族テトラカルボン酸化合物および第2の原料芳香族テトラカルボン酸化合物の合計のモル数とが実質的に同等であって当量関係となる量であることが好ましく、具体的には、第1の原料芳香族テトラカルボン酸化合物と第2の原料芳香族テトラカルボン酸化合物との合計100molに対して、95〜105mol%であることが好ましく、更に好ましくは97〜103mol%である。
原料ジアミン化合物の使用量が過小および過大である場合には、分子量が小さくなり、可溶性ポリイミドから得られるポリイミドフィルムに十分な機械的強度が得られなくなるおそれがある。
【0053】
有機溶剤としては、例えばo−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−クロルフェノール、m−クロルフェノール、p−クロルフェノールなどのフェノール系溶剤が挙げられる。これらは単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることもできる。
有機溶剤の使用量は、反応系における原料(具体的には第1の原料芳香族テトラカルボン酸化合物、第2の原料芳香族テトラカルボン酸化合物および原料ジアミン化合物)の濃度が2〜50質量%、好ましくは5〜30質量%となる量である。
【0054】
重縮合工程における反応条件(重縮合反応条件)としては、反応温度は、通常、120℃〜300℃であり、好ましくは150℃〜250℃であるが、反応初期においては低く設定し、反応時間の経過とともに徐々に上昇させてもよい。反応圧力は、特に限定されず、通常、常圧である。反応時間は、通常、0.5〜24時間である。
また、重縮合工程においては、重縮合反応の効率化の観点から、重縮合反応によって生成する水を蒸留などの手段により反応系から反応系外へと取り除きながら反応を行ってもよい。
【0055】
また、本発明の可溶性ポリイミドは、上述の本発明の可溶性ポリイミドの製造方法の他、例えば、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、γ−ブチロラクトンなどの非プロトン系双極子溶媒中において、芳香族テトラカルボン酸化合物と、ジアミン化合物(具体的には、化学式(6)で表わされる化合物(原料ジアミン化合物))とを重付加反応することによってポリアミック酸を得、得られたポリアミック酸を加熱すること、あるいは、ポリアミック酸をイミド化触媒の存在下において必要に応じて加熱することによりイミド化処理して脱水閉環させるなどの手法によって製造することもできる。
ここに、原料として用いられる芳香族テトラカルボン酸化合物は、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸化合物および化学式(3)で表わされる骨格構造を有する芳香族テトラカルボン酸化合物とである。
【0056】
本発明の可溶性ポリイミドは、第1の構造単位および第2の構造単位と共に、当該第1の構造単位および第2の構造単位以外の構造単位を含有するものであってもよいが、第1の構造単位と第2の構造単位との合計の割合が全構造単位の50質量%以上であることが好ましく、更に好ましくは80質量%以上である。
第1の構造単位と第2の構造単位との合計の割合が上記の範囲内にあることにより、有機溶媒に対する十分な可溶性が得られ、また可溶性ポリイミドから得られるポリイミドフィルムが優れた耐熱性および光透過性と共に高い機械的強度を有するものとなる。
【0057】
また、本発明の可溶性ポリイミドは、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が50,000〜500,000であることが好ましく、更に好ましくは100,000〜400,000である。
可溶性ポリイミドの重量平均分子量が過小である場合には、可溶性ポリイミドから得られるポリイミドフィルムに十分な機械的強度が得られなくなるおそれがある。一方、可溶性ポリイミドの重量平均分子量が過大である場合には、有機溶媒に対する十分な可溶性が得られなくなるおそれがある。
【0058】
本発明の可溶性ポリイミドのガラス転移温度(Tg)は、300℃以上であることが好ましい。
ガラス転移温度が過小である場合には、可溶性ポリイミドから得られるポリイミドフィルムを加工する過程(具体的には、例えば半田リフロー過程、デバイス作製過程)において、変形が生じるおそれがある。
【0059】
ここに、ガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計(DSC)を用い、窒素雰囲気中、昇温速度20℃/分の測定条件によって測定される。
【0060】
本発明の可溶性ポリイミドの5%質量減少温度(Td5)は、500℃以上であることが好ましく、更に好ましくは550℃である。
5%質量減少温度が過小である場合には、可溶性ポリイミドの熱分解に起因して、可溶性ポリイミドから得られるポリイミドフィルムに十分な機械的強度が得られなくなり、また十分な光透過性が得られなくなるおそれがある。
【0061】
ここに、「5%質量減少温度(Td5)」とは、熱天秤を用い、窒素雰囲気中、昇温速度10℃/分で加熱し、5%の質量減少を示す温度である。
【0062】
このような本発明の可溶性ポリイミドは、特定の構造を有する第1の構造単位と特定の構造を有する第2の構造単位とを特定の割合で有するものであり、第1の構造単位が2つの芳香環が特定の構造を有する基によって結合されている構造を有するものであることから、その構造に起因して分子間相互作用が小さくなり、また柔軟な構造が導入されることとなるため、有機溶媒に対する可溶性と共に、高い透明性と機械的強度が発現されることとなり、その上、第2の構造単位が互いに隣接する芳香環が共役系を形成することのないようなねじれた状態に位置する構造を有するものであることから、その構造に起因して耐熱性および有機溶媒に対する可溶性と共に、高い透明性が得られることとなる。
従って、本発明の可溶性ポリイミドによれば、有機溶媒に対する可溶性を有し、優れた耐熱性および光透過性と共に高い機械的強度を有するポリイミドフィルムを得ることができる。
【0063】
本発明の可溶性ポリイミドは、有機溶媒に対する可溶性を有しており、具体的には、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、γ−ブチロラクトン、クロロホルム、ジクロロメタン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、アセトンよりなるから選ばれる少なくとも1種の有機溶剤に溶解し、溶解したときの固形分濃度が10質量%以上であるものであるが、加工性の観点から、有機溶剤に溶解したときの固形分濃度は15質量%以上であることが好ましく、更に好ましくは20質量%以上である。
【0064】
また、本発明の可溶性ポリイミドは、高い機械的強度を有するものであるが、具体的には、可溶性ポリイミドから得られる厚み25μmのポリイミドフィルムにおいて、引っ張り強度が75MPa以上であることが好ましく、更に好ましくは100MPa以上である。
引っ張り強度が過小である場合には、耐熱性光学材料としての適用ができなくなるおそれがある。
【0065】
また、本発明の可溶性ポリイミドは、高い光透過性を有するものであるが、具体的には、可溶性ポリイミドから得られる厚み25μmのポリイミドフィルムにおいて、波長400nmの光の透過率が80%以上であることが好ましい。
波長400nmの光の透過率が過小である場合には、ポリイミドフィルムが着色したものとなり、十分な光透過性が得られなくなるおそれがある。
【0066】
また、本発明の可溶性ポリイミドの製造方法によれば、可溶性ポリイミドを得るための重縮合工程において、ポリアミック酸の生成と、得られたポリアミック酸のイミド化処理とが連続的に進行するため、残存アミック酸濃度が10%未満の可溶性ポリイミドを容易に得ることができる。
【0067】
このような本発明の可溶性ポリイミドは、耐熱性光学材料として好適なものである。例えば本発明の可溶性ポリイミドと溶媒とからワニスを調製し、そのワニスからポリイミドフィルムを得、そのポリイミドフィルムは、フレキシブルディスプレイ基板などとして好適に用いられる。
【0068】
本発明のワニスは、本発明の可溶性ポリイミドと溶媒とを含有するものであるが、具体的には、本発明の可溶性ポリイミドを有機溶媒に溶解させることによって得られるものである。また、本発明のワニスを、本発明の可溶性ポリイミドを有機溶媒に溶解することによって得る過程においては、本発明の可溶性ポリイミドが含有されていることに起因して発揮される特性の低下を抑制する観点から、有機溶媒に本発明の可溶性ポリイミドを溶解した溶液をろ過精製などによって異物や不溶物の除去処理を行うことが好ましい。
【0069】
本発明のワニスにおける可溶性ポリイミドの含有割合は、10質量%以上であり、好ましくは15質量%以上であり、更に好ましくは20質量%以上である。
可溶性ポリイミドの含有割合が過小である場合には、厚みが100μm以上のポリイミドフィルムを形成することができなくなるおそれがある。
【0070】
本発明のワニスを構成する有機溶媒としては、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、クロロホルム、ジクロロメタン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、アセトンよりなる群から選ばれる少なくとも1種の有機溶剤が用いられる。
【0071】
本発明のワニスによれば、本発明の可溶性ポリイミドを含有するものであることから、優れた耐熱性および光透過性と共に高い機械的強度を有するポリイミドを得ることができる。
また、本発明のワニスにおいては、必須の構成成分である本発明の可溶性ポリイミドが高い溶解性を有するものであることから、当該ワニスを調製する際においてポリイミドを溶媒に溶解させるための加熱処理などの必要性が小さくなる。
【0072】
本発明のポリイミドフィルムは、本発明のワニスから得られるものである。
本発明のポリイミドフィルムの厚みは、その使用用途によっても異なるが、例えば200μmである。
【0073】
このような本発明のポリイミドフィルムによれば、本発明の可溶性ポリイミドを含有する本発明のワニスから得られるものであることから、優れた耐熱性および光透過性と共に高い機械的強度が得られる。
【実施例】
【0074】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
以下の実施例および比較例において、各種物性値の測定方法は以下の通りである。
【0075】
(1)H−NMR測定
BRUKAR社製の核磁気共鳴(NMR)装置(ADVANCE500型)を使用して測定した。溶媒には、d−DMSOを用いた。
【0076】
(2)重量平均分子量(Mw)の測定
TOSOH製のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)装置(HLC−8020型)を使用して測定した。溶媒には、臭化リチウム及び燐酸を添加したN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を用い、測定温度40℃にて、ポリスチレン換算の重量平均分子量を求めた。
【0077】
(3)ガラス転移温度(Tg)の測定
示差走査熱量計(DSC)を用い、窒素雰囲気中、昇温速度20℃/分の測定条件によって測定した。
【0078】
(4)5%質量減少温度(Td5)の測定
熱天秤を用い、窒素雰囲気中、昇温速度10℃/分で加熱し、5%の質量減少を示す温度を測定した。
【0079】
(5)機械強度(引っ張り強度)の測定
JISK6251の7号ダンベルを用い、25μmのフィルムを測定試料とし、温度23℃の環境下において、負荷速度50mm/minの測定条件によって引張り試験を実施し、引張り強度を測定した。
【0080】
(6)光透過性測定
日本分光株式会社製の分光光度・位相差測定計(V570)を用い、25μmのフィルムを測定試料とし、波長400nmの光の透過率を測定した。
【0081】
〔実施例1〕
(可溶性ポリイミドの製造)
撹拌モーター、ディーンスターク管、窒素導入管を取り付けた内容積100mLの3口フラスコ内において、4,4’−ジアミノ−2,2’−トリフルオロメチルビフェニル(以下、「TFMB」ともいう。)2.178g(6.8mmol)をm−クレゾール25mlに溶解させた後、撹拌下において、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下、「i−BPDA」ともいう。)1.274g(5.4mmol)および2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物(以下、「6FDA」ともいう。)0.604g(1.4mmol)と共に数滴のイソキノリンを添加した。その後、窒素雰囲気下において昇温することにより、温度が100℃に至るまでにモノマー類が溶解して均一系となり、さらに、1時間以内に徐々に200℃まで昇温することにより、縮合反応によって水が脱離して反応系(重合系)の粘度が上昇してきた。またさらに、16時間反応を継続して重縮合反応を終結させた。反応系(重合系)は、放冷後も均一な溶液を維持していた。
重縮合反応によって得られた重合溶液を1Lのメタノール中に滴下することによってポリマーを沈殿させ、ろ過して回収した後、重合溶媒を完全に除去するためにメタノ−ルを用いてソックスレー抽出を行うことによって真空乾燥して粉末状のポリマーを得た。ポリマーは、ほぼ定量的な収率で得られた。
得られたポリマーは、H−NMR測定によって得られたH−NMRスペクトル(核磁気共鳴スペクトル)から、第1の構造単位としての6FDAおよびTFMBによって得られる構造単位と、第2の構造単位としてのi−BPDAおよびTFMBによって得られる構造単位を含有し、第1の構造単位と第2の構造単位との合計100mol%中において、第1の構造単位の割合が20mol%であって第2の構造単位の割合が80mol%であり、第1の構造単位と第2の構造単位との合計の割合が全構造単位中の100質量%であるポリイミド(以下、「ポリイミド(1)」ともいう。)であることが確認された。得られたH−NMRスペクトル(核磁気共鳴スペクトル)を図1に示す。
【0082】
また、ポリイミド(1)について、重量平均分子量の測定、ガラス転移温度の測定および5%質量減少温度の測定を行ったところ、重量平均分子量は96,000であり、ガラス転移温度(Tg)は349℃であり、5%質量減少温度(Td5)は551℃であった。
また、ポリイミド(1)の有機溶剤に対する可溶性を確認したところ、N−メチルピロリドン(NMP)に、固形分濃度10質量%以上の濃度で溶解可能であった。
更に、ポリイミド(1)の残存アミック酸濃度をH−NMRスペクトルによって確認したところ、0.4%であった。
【0083】
(ワニスの調製)
ポリイミド(1)をN−メチルピロリドン(以下、「NMP」ともいう。)に溶解させることにより、ポリイミド(1)の濃度が22質量%のポリイミドワニス(以下、「ワニス(1)」ともいう。)を得た。
【0084】
(ポリイミドフィルムの作製)
4インチのシリコンウェハー上にワニス(1)5mlを滴下後、スピンコーター(ミカサ社製;型式1H−360)を用い、先ず回転速度300rpmで5秒間、次いで回転速度1200rpmで10秒間の条件で延伸処理し、その後、温度70℃で30分間加熱した後、温度120℃で30分間加熱し、更に温度250℃で1時間加熱する条件で加熱処理することでNMPを揮発させることにより、厚み25μmのポリイミドフィルム(以下、「フィルム(1)」ともいう。)を得た。
得られたフィルム(1)について、機械強度(引っ張り強度)測定および光透過性測定を行ったところ、引っ張り強度は80MPaであり、波長400nmの光の透過率は85.8%であった。
【0085】
〔実施例2〕
(可溶性ポリイミドの製造)
撹拌モーター、ディーンスターク管、窒素導入管を取り付けた内容積100mLの3口フラスコ内において、TFMB2.178g(6.8mmol)をm−クレゾール25mlに溶解させた後、撹拌下において、i−BPDA1.274g(5.4mmol)およびビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物(以下、「ODPA」ともいう。)0.422g(1.4mmol)と共に数滴のイソキノリンを添加した。その後、窒素雰囲気下において昇温することにより、温度が100℃に至るまでにモノマー類が溶解して均一系となり、さらに、1時間以内に徐々に200℃まで昇温することにより、縮合反応によって水が脱離して反応系(重合系)の粘度が上昇してきた。またさらに、16時間反応を継続して重縮合反応を終結させた。反応系(重合系)は、放冷後も均一な溶液を維持していた。
重縮合反応によって得られた重合溶液を1Lのメタノール中に滴下することによってポリマーを沈殿させ、ろ過して回収した後、重合溶媒を完全に除去するためにメタノ−ルを用いてソックスレー抽出を行うことによって真空乾燥して粉末状のポリマーを得た。ポリマーは、ほぼ定量的な収率で得られた。
得られたポリマーは、H−NMR測定によって得られたH−NMRスペクトル(核磁気共鳴スペクトル)から、第1の構造単位としてのODPAおよびTFMBによって得られる構造単位と、第2の構造単位としてのi−BPDAおよびTFMBによって得られる構造単位を含有し、第1の構造単位と第2の構造単位との合計100mol%中において、第1の構造単位の割合が20mol%であって第2の構造単位の割合が80mol%であり、第1の構造単位と第2の構造単位との合計の割合が全構造単位中の100質量%であるポリイミド(以下、「ポリイミド(2)」ともいう。)であることが確認された。得られたH−NMRスペクトル(核磁気共鳴スペクトル)を図2に示す。
なお、この実施例2の可溶性ポリイミドの製造においては、実施例1の可溶性ポリイミドの製造において、6FDA0.604g(1.4mmol)に代えてODPA0.422g(1.4mmol)を用いたこと以外は、当該実施例1の可溶性ポリイミドの製造と同様の手法によってポリイミド(2)を得た。
【0086】
また、ポリイミド(2)について、重量平均分子量の測定、ガラス転移温度の測定および5%質量減少温度の測定を行ったところ、重量平均分子量は312,000であり、ガラス転移温度(Tg)は350℃であり、5%質量減少温度(Td5)は579℃であった。
また、ポリイミド(2)の有機溶剤に対する可溶性を確認したところ、N−メチルピロリドン(NMP)に、固形分濃度10質量%以上の濃度で溶解可能であった。
更に、ポリイミド(2)の残存アミック酸濃度を、実施例1と同様の手法によって確認したところ、0.3%であった。
【0087】
(ワニスの調製)
ポリイミド(2)をNMPに溶解させることにより、ポリイミド(2)の濃度が14質量%のポリイミドワニス(以下、「ワニス(2)」ともいう。)を得た。
【0088】
(ポリイミドフィルムの作製)
実施例1のポリイミドフィルムの作製例において、ポリイミド(1)に代えてポリイミド(2)を用いたこと以外は当該実施例1のポリイミドフィルムの作製例と同様にして、より、厚み25μmのポリイミドフィルム(以下、「フィルム(2)」ともいう。)を得た。
得られたフィルム(2)について、機械強度(引っ張り強度)測定および光透過性測定を行ったところ、引っ張り強度は83MPaであり、波長400nmの光の透過率は84.3%であった。
【0089】
〔実施例3〕
(可溶性ポリイミドの製造)
撹拌モーター、ディーンスターク管、窒素導入管を取り付けた内容積100mLの3口フラスコ内において、TFMB2.178g(6.8mmol)をm−クレゾール25mlに溶解させた後、撹拌下において、i−BPDA1.274g(5.4mmol)および9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物(以下、「BPAF」ともいう。)0.623g(1.4mmol)と共に数滴のイソキノリンを添加した。その後、窒素雰囲気下において昇温することにより、温度が100℃に至るまでにモノマー類が溶解して均一系となり、さらに、1時間以内に徐々に200℃まで昇温することにより、縮合反応によって水が脱離して反応系(重合系)の粘度が上昇してきた。またさらに、16時間反応を継続して重縮合反応を終結させた。反応系(重合系)は、放冷後も均一な溶液を維持していた。
重縮合反応によって得られた重合溶液を1Lのメタノール中に滴下することによってポリマーを沈殿させ、ろ過して回収した後、重合溶媒を完全に除去するためにメタノ−ルを用いてソックスレー抽出を行うことによって真空乾燥して粉末状のポリマーを得た。ポリマーは、ほぼ定量的な収率で得られた。
得られたポリマーは、H−NMR測定によって得られたH−NMRスペクトル(核磁気共鳴スペクトル)から、第1の構造単位としてのBPAFおよびTFMBによって得られる構造単位と、第2の構造単位としてのi−BPDAおよびTFMBによって得られる構造単位を含有し、第1の構造単位と第2の構造単位との合計100mol%中において、第1の構造単位の割合が20mol%であって第2の構造単位の割合が80mol%であり、第1の構造単位と第2の構造単位との合計の割合が全構造単位中の100質量%であるポリイミド(以下、「ポリイミド(3)」ともいう。)であることが確認された。得られたH−NMRスペクトル(核磁気共鳴スペクトル)を図3に示す。
なお、この実施例3の可溶性ポリイミドの製造においては、実施例1の可溶性ポリイミドの製造において、6FDA0.604g(1.4mmol)に代えてBPAF0.623g(1.4mmol)を用いたこと以外は、当該実施例1の可溶性ポリイミドの製造と同様の手法によってポリイミド(3)を得た。
【0090】
また、ポリイミド(3)について、重量平均分子量の測定、ガラス転移温度の測定および5%質量減少温度の測定を行ったところ、重量平均分子量は123,000であり、ガラス転移温度(Tg)は360℃であり、5%質量減少温度(Td5)は587℃であった。
また、ポリイミド(3)の有機溶剤に対する可溶性を確認したところ、N−メチルピロリドン(NMP)に、固形分濃度10質量%以上の濃度で溶解可能であった。
更に、ポリイミド(3)の残存アミック酸濃度を、実施例1と同様の手法によって確認したところ、0.2%であった。
【0091】
(ワニスの調製)
ポリイミド(3)をNMPに溶解させることにより、ポリイミド(3)の濃度が25質量%のポリイミドワニス(以下、「ワニス(3)」ともいう。)を得た。
【0092】
(ポリイミドフィルムの作製)
実施例1のポリイミドフィルムの作製例において、ポリイミド(1)に代えてポリイミド(3)を用いたこと以外は当該実施例1のポリイミドフィルムの作製例と同様にして、厚み25μmのポリイミドフィルム(以下、「フィルム(3)」ともいう。)を得た。
得られたフィルム(3)について、機械強度(引っ張り強度)測定および光透過性測定を行ったところ、引っ張り強度は80MPaであり、波長400nmの光の透過率は80.7%であった。
【0093】
〔実施例4〕
(可溶性ポリイミドの製造)
撹拌モーター、ディーンスターク管、窒素導入管を取り付けた内容積100mLの3口フラスコ内において、TFMB2.178g(6.8mmol)をm−クレゾール25mlに溶解させた後、撹拌下において、i−BPDA0.796g(3.4mmol)および6FDA1.509g(3.4mmol)と共に数滴のイソキノリンを添加した。その後、窒素雰囲気下において昇温することにより、温度が100℃に至るまでにモノマー類が溶解して均一系となり、さらに、1時間以内に徐々に200℃まで昇温することにより、縮合反応によって水が脱離して反応系(重合系)の粘度が上昇してきた。またさらに、16時間反応を継続して重縮合反応を終結させた。反応系(重合系)は、放冷後も均一な溶液を維持していた。
重縮合反応によって得られた重合溶液を1Lのメタノール中に滴下することによってポリマーを沈殿させ、ろ過して回収した後、重合溶媒を完全に除去するためにメタノ−ルを用いてソックスレー抽出を行うことによって真空乾燥して粉末状のポリマーを得た。ポリマーは、ほぼ定量的な収率で得られた。
得られたポリマーは、H−NMR測定によって得られたH−NMRスペクトル(核磁気共鳴スペクトル)から、第1の構造単位としての6FDAおよびTFMBによって得られる構造単位と、第2の構造単位としてのi−BPDAおよびTFMBによって得られる構造単位を含有し、第1の構造単位と第2の構造単位との合計100mol%中において、第1の構造単位の割合が50mol%であって第2の構造単位の割合が50mol%であり、第1の構造単位と第2の構造単位との合計の割合が全構造単位中の100質量%であるポリイミド(以下、「ポリイミド(4)」ともいう。)であることが確認された。得られたH−NMRスペクトル(核磁気共鳴スペクトル)を図4に示す。
なお、この実施例4の可溶性ポリイミドの製造においては、実施例3の可溶性ポリイミドの製造において、i−BPDAの使用量を1.274g(5.4mmol)から0.796g(3.4mmol)とし、6FDAの使用量を0.604g(1.4mmol)から1.509g(3.4mmol)としたこと以外は、当該実施例3の可溶性ポリイミドの製造と同様の手法によってポリイミド(4)を得た。
【0094】
また、ポリイミド(4)について、重量平均分子量の測定、ガラス転移温度の測定および5%質量減少温度の測定を行ったところ、重量平均分子量は226,000であり、ガラス転移温度(Tg)は347℃であり、5%質量減少温度(Td5)は532℃であった。
また、ポリイミド(4)の有機溶剤に対する可溶性を確認したところ、N−メチルピロリドン(NMP)に、固形分濃度10質量%以上の濃度で溶解可能であった。
更に、ポリイミド(4)の残存アミック酸濃度を、実施例1と同様の手法によって確認したところ、1.4%であった。
【0095】
(ワニスの調製)
ポリイミド(4)をNMPに溶解させることにより、ポリイミド(4)の濃度が18質量%のポリイミドワニス(以下、「ワニス(4)」ともいう。)を得た。
【0096】
(ポリイミドフィルムの作製)
実施例1のポリイミドフィルムの作製例において、ポリイミド(1)に代えてポリイミド(4)を用いたこと以外は当該実施例1のポリイミドフィルムの作製例と同様にして、厚み25μmのポリイミドフィルム(以下、「フィルム(4)」ともいう。)を得た。
得られたフィルム(4)について、機械強度(引っ張り強度)測定および光透過性測定を行ったところ、引っ張り強度は103MPaであり、波長400nmの光の透過率は84.2%であった。
【0097】
〔実施例5〕
(可溶性ポリイミドの製造)
撹拌モーター、ディーンスターク管、窒素導入管を取り付けた内容積100mLの3口フラスコ内において、TFMB2.178g(6.8mmol)をm−クレゾール25mlに溶解させた後、撹拌下において、i−BPDA0.796g(3.4mmol)およびODPA1.054g(3.4mmol)と共に数滴のイソキノリンを添加した。その後、窒素雰囲気下において昇温することにより、温度が100℃に至るまでにモノマー類が溶解して均一系となり、さらに、1時間以内に徐々に200℃まで昇温することにより、縮合反応によって水が脱離して反応系(重合系)の粘度が上昇してきた。またさらに、16時間反応を継続して重縮合反応を終結させた。反応系(重合系)は、放冷後も均一な溶液を維持していた。
重縮合反応によって得られた重合溶液を1Lのメタノール中に滴下することによってポリマーを沈殿させ、ろ過して回収した後、重合溶媒を完全に除去するためにメタノ−ルを用いてソックスレー抽出を行うことによって真空乾燥して粉末状のポリマーを得た。ポリマーは、ほぼ定量的な収率で得られた。
得られたポリマーは、H−NMR測定によって得られたH−NMRスペクトル(核磁気共鳴スペクトル)から、第1の構造単位としてのODPAおよびTFMBによって得られる構造単位と、第2の構造単位としてのi−BPDAおよびTFMBによって得られる構造単位を含有し、第1の構造単位と第2の構造単位との合計100mol%中において、第1の構造単位の割合が50mol%であって第2の構造単位の割合が50mol%であり、第1の構造単位と第2の構造単位との合計の割合が全構造単位中の100質量%であるポリイミド(以下、「ポリイミド(5)」ともいう。)であることが確認された。得られたH−NMRスペクトル(核磁気共鳴スペクトル)を図5に示す。
なお、この実施例5の可溶性ポリイミドの製造においては、実施例2の可溶性ポリイミドの製造において、i−BPDAの使用量を1.274g(5.4mmol)から0.796g(3.4mmol)とし、ODPAの使用量を0.422g(1.4mmol)から1.054g(3.4mmol)としたこと以外は、当該実施例2の可溶性ポリイミドの製造と同様の手法によってポリイミド(5)を得た。
【0098】
また、ポリイミド(5)について、重量平均分子量の測定、ガラス転移温度の測定および5%質量減少温度の測定を行ったところ、重量平均分子量は317,000であり、ガラス転移温度(Tg)は335℃であり、5%質量減少温度(Td5)は581℃であった。
また、ポリイミド(5)の有機溶剤に対する可溶性を確認したところ、N−メチルピロリドン(NMP)に、固形分濃度10質量%以上の濃度で溶解可能であった。
更に、ポリイミド(5)の残存アミック酸濃度を、実施例1と同様の手法によって確認したところ、3.9%であった。
【0099】
(ワニスの調製)
ポリイミド(5)をNMPに溶解させることにより、ポリイミド(4)の濃度が12質量%のポリイミドワニス(以下、「ワニス(5)」ともいう。)を得た。
【0100】
(ポリイミドフィルムの作製)
実施例1のポリイミドフィルムの作製例において、ポリイミド(1)に代えてポリイミド(5)を用いたこと以外は当該実施例1のポリイミドフィルムの作製例と同様にして、厚み25μmのポリイミドフィルム(以下、「フィルム(5)」ともいう。)を得た。
得られたフィルム(5)について、機械強度(引っ張り強度)測定および光透過性測定を行ったところ、引っ張り強度は113MPaであり、波長400nmの光の透過率は85.8%であった。
【0101】
〔実施例6〕
(可溶性ポリイミドの製造)
撹拌モーター、ディーンスターク管、窒素導入管を取り付けた内容積100mLの3口フラスコ内において、TFMB2.178g(6.8mmol)をm−クレゾール25mlに溶解させた後、撹拌下において、i−BPDA0.796g(3.4mmol)およびBPAF1.559g(3.4mmol)と共に数滴のイソキノリンを添加した。その後、窒素雰囲気下において昇温することにより、温度が100℃に至るまでにモノマー類が溶解して均一系となり、さらに、1時間以内に徐々に200℃まで昇温することにより、縮合反応によって水が脱離して反応系(重合系)の粘度が上昇してきた。またさらに、16時間反応を継続して重縮合反応を終結させた。反応系(重合系)は、放冷後も均一な溶液を維持していた。
重縮合反応によって得られた重合溶液を1Lのメタノール中に滴下することによってポリマーを沈殿させ、ろ過して回収した後、重合溶媒を完全に除去するためにメタノ−ルを用いてソックスレー抽出を行うことによって真空乾燥して粉末状のポリマーを得た。ポリマーは、ほぼ定量的な収率で得られた。
得られたポリマーは、H−NMR測定によって得られたH−NMRスペクトル(核磁気共鳴スペクトル)から、第1の構造単位としてのBPAFおよびTFMBによって得られる構造単位と、第2の構造単位としてのi−BPDAおよびTFMBによって得られる構造単位を含有し、第1の構造単位と第2の構造単位との合計100mol%中において、第1の構造単位の割合が50mol%であって第2の構造単位の割合が50mol%であり、第1の構造単位と第2の構造単位との合計の割合が全構造単位中の100質量%であるポリイミド(以下、「ポリイミド(6)」ともいう。)であることが確認された。得られたH−NMRスペクトル(核磁気共鳴スペクトル)を図6に示す。
なお、この実施例6の可溶性ポリイミドの製造においては、実施例3の可溶性ポリイミドの製造例において、i−BPDAの使用量を1.274g(5.4mmol)から0.796g(3.4mmol)とし、BPAFの使用量を0.623g(1.4mmol)から1.559g(3.4mmol)としたこと以外は、当該実施例3の可溶性ポリイミドの製造と同様の手法によってポリイミド(6)を得た。
【0102】
また、ポリイミド(6)について、重量平均分子量の測定、ガラス転移温度の測定および5%質量減少温度の測定を行ったところ、重量平均分子量は116,000であり、ガラス転移温度(Tg)は370℃であり、5%質量減少温度(Td5)は582℃であった。
また、ポリイミド(6)の有機溶剤に対する可溶性を確認したところ、N−メチルピロリドン(NMP)に、固形分濃度10質量%以上の濃度で溶解可能であった。
更に、ポリイミド(6)の残存アミック酸濃度を、実施例1と同様の手法によって確認したところ、2.5%であった。
【0103】
(ワニスの調製)
ポリイミド(6)をNMPに溶解させることにより、ポリイミド(4)の濃度が20質量%のポリイミドワニス(以下、「ワニス(6)」ともいう。)を得た。
【0104】
(ポリイミドフィルムの作製)
実施例1のポリイミドフィルムの作製例において、ポリイミド(1)に代えてポリイミド(6)を用いたこと以外は当該実施例1のポリイミドフィルムの作製例と同様にして、厚み25μmのポリイミドフィルム(以下、「フィルム(6)」ともいう。)を得た。
得られたフィルム(6)について、機械強度(引っ張り強度)測定および光透過性測定を行ったところ、引っ張り強度は114MPaであり、波長400nmの光の透過率は80.6%であった。
【0105】
〔比較例1〕
(可溶性ポリイミドの製造)
撹拌モーター、ディーンスターク管、窒素導入管を取り付けた内容積100mLの3口フラスコ内において、TFMB2.178g(6.8mmol)をm−クレゾール25mlに溶解させた後、撹拌下において、i−BPDA1.593g(6.8mmol)と共に数滴のイソキノリンを添加した。その後、窒素雰囲気下において昇温することにより、温度が100℃に至るまでにモノマー類が溶解して均一系となり、さらに、1時間以内に徐々に200℃まで昇温することにより、縮合反応によって水が脱離して反応系(重合系)の粘度が上昇してきた。またさらに、16時間反応を継続して重縮合反応を終結させた。反応系(重合系)は、放冷後も均一な溶液を維持していた。
重縮合反応によって得られた重合溶液を1Lのメタノール中に滴下することによってポリマーを沈殿させ、ろ過して回収した後、重合溶媒を完全に除去するためにメタノ−ルを用いてソックスレー抽出を行うことによって真空乾燥して粉末状のポリマーを得た。ポリマーは、ほぼ定量的な収率で得られた。
得られたポリマーは、H−NMR測定によって得られたH−NMRスペクトル(核磁気共鳴スペクトル)から、i−BPDAおよびTFMBによって得られる構造単位のみよりなるポリイミド(以下、「比較用ポリイミド(1)」ともいう。)であることが確認された。得られたH−NMRスペクトル(核磁気共鳴スペクトル)を図7に示す。
なお、この比較例1の可溶性ポリイミドの製造においては、実施例1の可溶性ポリイミドの製造において、i−BPDAの使用量を1.274g(5.4mmol)から1.593g(6.8mmol)とし、6FDAを用いなかったこと以外は、当該実施例1の可溶性ポリイミドの製造と同様の手法によって比較用ポリイミド(1)を得た。
【0106】
また、比較用ポリイミド(1)について、重量平均分子量の測定、ガラス転移温度の測定および5%質量減少温度の測定を行ったところ、重量平均分子量139,000であり、ガラス転移温度(Tg)は340℃であり、5%質量減少温度(Td5)は591℃であった。
また、比較用ポリイミド(1)の有機溶剤に対する可溶性を確認したところ、N−メチルピロリドン(NMP)に、固形分濃度10質量%以上の濃度で溶解可能であった。
更に、比較用ポリイミド(1)の残存アミック酸濃度を、実施例1と同様の手法によって確認したところ、0%であった。
【0107】
(ワニスの調製)
比較用ポリイミド(1)をNMPに溶解させることにより、比較用ポリイミド(1)の濃度が25質量%のポリイミドワニス(以下、「比較用ワニス(1)」ともいう。)を得た。
【0108】
(ポリイミドフィルムの作製)
実施例1のポリイミドフィルムの作製例において、ポリイミド(1)に代えて比較用ポリイミド(1)を用いたこと以外は当該実施例1のポリイミドフィルムの作製例と同様にして、厚み25μmのポリイミドフィルム(以下、「比較用フィルム(1)」ともいう。)を得た。
得られた比較用フィルム(1)について、機械強度(引っ張り強度)測定および光透過性測定を行ったところ、引っ張り強度は58MPaであり、波長400nmの光の透過率は80.5%であった。
【0109】
〔比較例2〕
(可溶性ポリイミドの製造)
撹拌モーター、ディーンスターク管、窒素導入管を取り付けた内容積100mLの3口フラスコ内において、TFMB2.178g(6.8mmol)をm−クレゾール25mlに溶解させた後、撹拌下において、i−BPDA0.796g(3.4mmol)および3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下、「s−BPDA」ともいう。)0.796g(3.4mmol)と共に数滴のイソキノリンを添加した。その後、窒素雰囲気下において昇温することにより、温度が100℃に至るまでにモノマー類が溶解して均一系となり、さらに、1時間以内に徐々に200℃まで昇温することにより、縮合反応によって水が脱離して反応系(重合系)の粘度が上昇してきた。またさらに、16時間反応を継続して重縮合反応を終結させた。反応系(重合系)は、放冷後も均一な溶液を維持していた。
重縮合反応によって得られた重合溶液を1Lのメタノール中に滴下することによってポリマーを沈殿させ、ろ過して回収した後、重合溶媒を完全に除去するためにメタノ−ルを用いてソックスレー抽出を行うことによって真空乾燥して粉末状のポリマーを得た。ポリマーは、ほぼ定量的な収率で得られた。
得られたポリマーは、H−NMR測定によって得られたH−NMRスペクトル(核磁気共鳴スペクトル)から、s−BPDAおよびTFMBによって得られる構造単位と、i−BPDAおよびTFMBによって得られる構造単位を含有し、s−BPDAおよびTFMBによって得られる構造単位とi−BPDAおよびTFMBによって得られる構造単位との合計100mol%中において、s−BPDAおよびTFMBによって得られる構造単位の割合が50mol%であってi−BPDAおよびTFMBによって得られる構造単位の割合が50mol%であるポリイミド(以下、「比較用ポリイミド(2)」ともいう。)であることが確認された。
なお、この比較例2の可溶性ポリイミドの製造においては、実施例4の可溶性ポリイミドの製造において、6FDA1.509g(3.4mmol)に代えてs−BPDA0.796g(3.4mmol)を用いたこと以外は、当該実施例4の可溶性ポリイミドの製造と同様の手法によって比較用ポリイミド(2)を得た。
【0110】
また、比較用ポリイミド(2)について、重量平均分子量の測定、ガラス転移温度の測定および5%質量減少温度の測定を行ったところ、重量平均分子量139,000であり、ガラス転移温度(Tg)は347℃であり、5%質量減少温度(Td5)は580℃であった。
また、比較用ポリイミド(2)の有機溶剤に対する可溶性を確認したところ、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、クロロホルム、ジクロロメタン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフランおよびアセトンいずれの有機溶剤に対しても、固形分濃度10質量%以上の濃度で溶解しなかった。
更に、比較用ポリイミド(2)の残存アミック酸濃度を、実施例1と同様の手法によって確認したところ、0%であった。
【0111】
(ワニスの調製)
比較用ポリイミド(2)をNMPに溶解させることにより、比較用ポリイミド(2)の濃度が7.5質量%のポリイミドワニス(以下、「比較用ワニス(2)」ともいう。)を得た。
【0112】
(ポリイミドフィルムの作製)
実施例1のポリイミドフィルムの作製例において、ポリイミド(1)に代えて比較用ポリイミド(2)を用いたこと以外は当該実施例1のポリイミドフィルムの作製例と同様にして、厚み25μmのポリイミドフィルム(以下、「比較用フィルム(2)」ともいう。)を得た。
得られた比較用フィルム(2)について、機械強度(引っ張り強度)測定および光透過性測定を行ったところ、引っ張り強度は130MPaであり、波長400nmの光の透過率は61.3%であった。
【0113】
【表1】

【0114】
表1において、「芳香族テトラカルボン酸化合物」の欄における「i−BPDA」、「6FDA」、「ODPA」、「BPAF」および「sBPDA」は、原料として用いた芳香族テトラカルボン酸化合物の合計100mol%に対する割合である。また、「ジエン化合物」の欄における「TFMB」は、原料として用いた芳香族テトラカルボン酸化合物の合計100mol%に対する、原料として用いたジエン化合物(TFMB)割合を示す。
【0115】
表1に示した結果から、実施例1〜実施例6に係るポリイミドは、有機溶媒に対する可溶性を有し、優れた耐熱性および光透過性と共に高い機械的強度を有するポリイミドフィルムを得ることのできるものであることが確認された。
一方、比較例1に係るポリイミドは、第2の構造単位のみを有するもの、すなわち 第1構造単位を有さないものであることから、光透過性(波長400nmの光の透過率)は高いものの、機械的強度(引っ張り強度)が低いものであった。
また、比較例2に係るポリイミドは、第2の構造単位と共に他の構造単位を含有するものではあるが、当該他の構造単位が第1の構造単位以外のものであることから、機械的強度(引っ張り強度)は高いものの、光透過性(波長400nmの光の透過率)が低いものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式(1)で表わされる第1の構造単位と、下記化学式(2)で表される第2の構造単位とを有し、
当該第1の構造単位と当該第2の構造単位との合計100mol%中において、第1の構造単位の割合が1〜80mol%であり、第2の構造単位の割合が20〜99mol%であることを特徴とする可溶性ポリイミド。
【化1】

〔式中、Ar1 は、下記化学式(3)で表わされる基を示し、R1 は、飽和環または芳香環を有する基を示す。〕
【化2】

〔式中、Aは、エーテル結合(−O−)、アルキレン基、フルオレニレン基、スルホニル基、ケトン結合(−C(=O)−)よりなる群から選ばれる1種の結合または基を示す。〕
【化3】

〔式中、R2 は、飽和環または芳香環を有する基を示し、R3 およびR4 は、それぞれ独立にハロゲン原子、アルキル基、アルキルエーテル基を示す。pおよびqは、それぞれ独立に0〜3の整数である。〕
【請求項2】
前記化学式(1)におけるR1 および前記化学式(2)におけるR2 が芳香環を有する基であることを特徴とする請求項1に記載の可溶性ポリイミド。
【請求項3】
前記化学式(1)におけるAr1 が下記化学式(3−1)〜化学式(3−3)のいずれかで表わされる基であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の可溶性ポリイミド。
【化4】

【請求項4】
前記第1の構造単位の割合が、第1の構造単位と第2の構造単位との合計100mol%中において50〜80mol%であり、
前記第2の構造単位の割合が、第1の構造単位と第2の構造単位との合計100mol%中において20〜50mol%であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の可溶性ポリイミド。
【請求項5】
下記化学式(4)で表わされる化合物と、下記化学式(5)で表わされる化合物と、下記化学式(6)で表わされる化合物とを重縮合反応させる工程を有することを特徴とする可溶性ポリイミドの製造方法。
【化5】

〔式中、R3 およびR4 は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルキルエーテル基を示す。pおよびqは、それぞれ独立に1〜3の整数である。〕
【化6】

〔式中、Aは、エーテル結合(−O−)、アルキレン基、フルオニル基、スルホニル基、ケトン結合(−C(=O)−)よりなる群から選ばれる1種の結合または基を示す。〕
【化7】

〔式中、R5 は、飽和環または芳香環を有する基を示す。〕
【請求項6】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の可溶性ポリイミドと溶媒とを含有することを特徴とするワニス。
【請求項7】
前記溶媒がN−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、クロロホルム、ジクロロメタン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、アセトンよりなる群から選ばれる少なくとも1種の有機溶剤であることを特徴とする請求項6に記載のワニス。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載のワニスから得られることを特徴とするポリイミドフィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−1899(P2013−1899A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138070(P2011−138070)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】