説明

可紡性及び可染性のポリエステル繊維の製造方法

本発明は、テレフタラートポリエステル(A)と、少なくとも1種のポリエステル含有添加剤(B)と、場合により少なくとも1種の成分(G)から、染色されたポリエステル繊維(C)を製造する方法に関する。ポリエステル含有添加剤(B)は、脂肪族1,ω−ジオール、脂肪族1,ω−ジカルボン酸及び芳香族1,ω−ジカルボン酸のモノマーの縮合により得られる。任意に、ポリエステル含有添加剤(B)の製造の際に少なくとも1種の連鎖延長剤(V)も使用される。繊維製造のためには、成分(A)、(B)及び場合により成分(G)を混合し、押出機中で溶融させ、紡糸口金を経て押し出す。これらのポリエステル繊維(C)は好ましくは、染色されたシート状繊維織物(F)の製造において使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレフタラートポリエステルと、少なくとも1種のポリエステル含有添加剤とから、可紡性及び可染性のポリエステル繊維を製造する方法に関する。
【0002】
ポリエステル(PES)は、主鎖中にエステル結合−[−CO−O−]−を有するポリマーである。今日、ポリエステルは、合成ポリマー(プラスチック)の大きなファミリーであると理解され、これらにはとりわけ、ポリエチレンテレフタラート(PET)及びポリブチレンテレフタラート(PBT)が属する。PETは、最も重要な熱可塑性ポリエステルの1種である。例えば、繊維製品及び不織布用の繊維(マイクロファイバー)において使用される。
【0003】
PES繊維は、溶融紡糸法により製造される。熱作用により溶融物が生じ、紡糸口金を経て押し出される。PES繊維の染色は、たいてい水性の配合物中の顔料の形で分散着色剤中に含まれている分散染料の使用によりたいてい行われる。PES繊維の染色過程は一般的に、吸尽法又はサーモゾル法により130℃又はそれ以上の温度で行われる。PES材料の染色が、例えば加圧容器を放棄できるように、より低い温度で実施されるべきである場合には、付加的に、いわゆる"キャリア"、すなわち、前記繊維中への前記染料の浸透を既により低い温度でも可能にする化学物質が使用されなければならない。PES材料を染色するためのキャリアの一例は、欧州特許(EP-B1)第0 364 792号明細書に記載されている。
【0004】
特開平(JP-A)8-074124号公報には、良可染性のポリブチレンテレフタラート繊維の製造が報告されており、この繊維は、 − 前記繊維中の全酸割合を基準として − 0.5〜5mol%のスルホイソフタル酸のナトリウム塩のコモノマー、15〜85ppmのチタン及び0.02質量%〜2.0質量%の酸化防止剤のフェノール(次)亜リン酸エステルとの共重合により得られる。後続の染色は、コモノマーに結合されるカチオン染色剤を使用して行われる。
【0005】
欧州特許(EP-B1)第1 217 024号明細書には、ポリブチレンテレフタラートのような可紡性及び可染性のポリエステル樹脂が報告されている。前記ポリエステルは、ここでは、アルキルジオールと、テレフタル酸と、金属スルホン又はアルキルホスホニウムスルホン、三価の芳香族環及び官能性エステル基を含有することができる複雑なコモノマーとから構成される。重合はチタン触媒を使用して行われる。組み込まれたコモノマーは同時に、カチオン染色剤のためのレセプター部位である。染色は100℃の温度で行われる。
【0006】
約100℃の温度で染色可能な、技術水準から知られたPES繊維は、それゆえ、キャリアの使用が指定されているか、又は複雑な重合工程を経て製造されなければならないPESコポリマーが使用されなければならない。ポリエステル製造もしくはポリエステルのさらなる加工における別の問題は、複雑なコポリマー由来の繊維が可紡性に関してより高い要求を有しうるか、又は繊維の太さのバリエーションがあまりできず、繊維がフレキシブルでなく、かつ、とりわけ、標準ポリエステル繊維も極めて高い温度ではじめて光堅牢及び洗濯堅牢に染色されることができることである。
【0007】
課題は、PES材料(例えばベースポリエステルとしてポリエチレンテレフタラート又はポリブチレンテレフタラート由来)の製造方法を提供し、その際に製造されたPES材料が、その製造において複雑な重合工程を有さず、良好な紡糸特性を有し、かつ製造されたPES材料が、130℃未満、好ましくは約100℃及びそれ未満の温度でも既に、光堅牢及び洗濯堅牢に、キャリアを使用せずに、染色されることができることにある。
【0008】
この課題は、染色されたポリエステル繊維(C)、染色された糸(E)及び/又は染色されたシート状繊維織物(textilen Flaechengewebe)を、次の成分:
a)少なくとも1種のテレフタラートポリエステル(A) 前記繊維の全成分の合計を基準として、80〜99質量%、
b)次のモノマーm:
m1)脂肪族1,ω−ジオール、
m2)脂肪族1,ω−ジカルボン酸、
m3)芳香族1,ω−ジカルボン酸及び
場合により少なくとも1種の連鎖延長剤(V)
から得ることができる、少なくとも1種のポリエステル含有添加剤(B) 前記繊維の全成分の合計を基準として、1〜20質量%、及び
c)場合により少なくとも1種の成分(G)
から製造するにあたり、
次の工程:
I)成分(A)、(B)及び場合により(G)を混合する工程、
II)工程I)において得られた混合物からポリエステル繊維(C)を製造する工程、
III)場合により、ポリエステル繊維(C)を糸(E)及び/又はシート状繊維織物(F)にさらに加工する工程、及び
IV)ポリエステル繊維(C)、糸(E)及び/又はシート状繊維織物(F)を<130℃の温度で染色する工程
を含む方法によって解決される。
【0009】
特にPBT又はPETと、少なくとも1種のポリエステル含有添加剤(B)とを溶融させることにより行われるPES繊維の本発明による製造は、複雑な重合過程が必要でなく、2種又はそれ以上の成分のみ、すなわち少なくとも(A)及び(B)が互いに混合され、かつ溶融され、かつ溶融物が紡糸され、その際にポリエステル含有添加剤(B)の添加が、しばしば溶融紡糸過程さえ容易にすることにより特徴付けられる。
【0010】
標準ポリエステル、例えばPET又はPBTに加えて、さらに前記のポリエステル含有添加剤(B)の少なくとも1種を含有するポリマー組成物の染色は、分散染料を使用して吸尽法の手順により130℃未満及びそれどころか単に100℃の温度で行われることができるという効果を有する。
【0011】
本発明による方法により製造されるポリエステル繊維、糸及びシート状繊維織物は、強力かつ均一な可染性により特徴付けられる。これらは、さらに、用途において幅広く選択可能な色のスペクトル、良好な摩擦堅ろう度及び極めて良好な洗濯堅ろう度を有する。
【0012】
より大きな装置的経費を伴わずには130℃の温度からはじめて染色されることができるこれまでのポリエステル繊維と比較して、染色過程のための本発明によるポリエステル繊維(C)の使用は機械工学的な簡素化を意味する。付加的に、エネルギー必要量は低下され、かつ時間は節約される。そのうえ、本発明による方法は、染色すべき材料に穏やかに作用する。ポリエステル繊維(C)は、染色前も染色後も、しなやかで、かつ柔らかい。
【0013】
本発明については、個別には次のことを説明することができる:
工程(I)において、成分(A)、(B)及び場合により(G)が混合される。これは、本発明によれば、好ましくは溶融物中で行われる。工程(II)において、工程(I)において得られた混合物から、ポリエステル繊維(C)が製造される。本発明によれば、好ましくは、ポリエステル繊維(C)の製造のために、工程(I)において得られた混合物は、押出機中で溶融され、紡糸口金を経て押し出され、かつ巻き付けられる。その際に得られる繊維はまだ未染色である。
【0014】
必要に応じて、ポリエステル繊維(C)は、工程(III)において糸(E)及び/又はシート状繊維織物(F)にさらに加工されることができ、その後でポリエステル繊維(C)又はさもなければそれらから製造された糸(E)もしくはシート状繊維織物(F)が<130℃の温度で染色される。本発明の一実施態様によれば、ポリエステル繊維(C)は、工程(III)において、糸(E)に紡糸される。糸(E)又はポリエステル繊維(C)からは、工程(III)において、シート状繊維織物(F)も製造されることができ、その後で工程(IV)において染色が実施される。もちろん、繊維はまず最初に染色され、引き続き、糸(E)及び/又はシート状繊維織物(F)にさらに加工されることもでき、又はさもなければ未染色のポリエステル繊維(C)からまず最初に糸(E)が製造され、これがまず最初に染色され、引き続き、それらからシート状繊維織物が製造されることができる。
【0015】
まず最初に、未染色の、本質的にポリエステルからなる繊維は、成分であるテレフタラートポリエステル(A)及び少なくとも1種のポリエステル含有添加剤(B)及び場合により1種又はそれ以上の成分(D)を溶融物中で強力に混合し、引き続き紡糸することにより製造される。
【0016】
未染色のポリエステル繊維(C)は、完成後にかなり大体において、主成分としてのテレフタラートポリエステル(A)並びに少なくとも1種のポリエステル含有添加剤(B)を含んでおり、その際に(B)は、繊維製造の前に、さらに好ましい一実施態様において、それぞれの成分の全成分の合計を基準として、7質量%までの少なくとも1種の連鎖延長剤(V)、特に1,6−ヘキサメチレンジイソシアナートを含有していてよい。
【0017】
特に好ましい一実施態様において、テレフタラートポリエステル(A)は、ポリエチレンテレフタラート(PET)又はポリブチレンテレフタラート(PBT)から選択されている。ポリエステル繊維(C)は、好ましくはPBT又はPETを80〜99%含有し、特に好ましくはPETが使用され、特に好ましくは、テレフタル酸及びエチレングリコール由来のポリエステルが紡織繊維として使用される。商業的に得ることができるPBTの一例は、Ludwigshafenの製造者BASF SE製のUltradur B 4520(登録商標)である。テレフタラートポリエステル(A)は一般的に、200〜280℃の融点を有するポリエステルであり、別の一例は、例えばTrevira社製のDralonのような紡織繊維である。
【0018】
ポリエステル含有添加剤(B)は、少なくとも2種の異なるジカルボン酸単位m2)及びm3)を有するモノマーmから製造可能である。ポリエステル含有添加剤(B)の全質量を基準として、モノマーmのこの総計は、例えば、フタル酸単位少なくとも5〜80%並びに炭素原子4〜10個を有する脂肪族1,ω−ジカルボン酸の単位20〜95%を含有する。本発明のさらに好ましい一実施態様において、モノマーm1):m2):m3)は、2:1:1のモル比で存在する。
【0019】
本発明によりポリエステル繊維(C)の製造に使用されるポリエステル含有添加剤(B)は、少なくとも前記のカルボン酸と、ジオール単位とを含む。
【0020】
ポリエステル含有添加剤(B)を製造するには、モノマーmは重合工程にかけられる。この場合に、ある一定量のモノマーが重合されていない、すなわち"遊離して"ポリエステル含有添加剤(B)中に存在し、これが(B)から製造されたポリエステル繊維(C)に場合により影響を及ぼすように思われる。
【0021】
遊離して又は重合されてポリエステル含有添加剤(B)中に含まれているカルボン酸単位m2)及びm3)の全量は、この場合に、少なくとも50%である。
【0022】
好ましい一実施態様において、芳香族1,ω−ジカルボン酸m3)は、テレフタル酸である。
【0023】
脂肪族1,ω−ジカルボン酸m2)は、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸又はセバシン酸であってよい。本発明の特に好ましい一実施態様の場合に、脂肪族1,ω−ジカルボン酸m2)はアジピン酸である。
【0024】
本発明の例示的な一実施形態において、テレフタル酸単位及びアジピン酸単位の量は1:1である。ジオールm1)は、脂肪族ジオール、環式脂肪族ジオール及び/又はポリエーテルジオールの群から選択され、その際に最大52%の脂肪族1,ω−ジオールが存在しており、かつ百分率の記載は、ポリエステル含有添加剤中で遊離して又はエステルとして存在している全ジオールの全量を基準としている。
【0025】
炭素原子4〜10個を有する脂肪族ジオールは、例えば、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール又は1,6−ヘキサンジオールであってよい。本発明の有利な一態様の場合に、脂肪族1,ω−ジオールm1)は、1,4−ブタンジオールである。
【0026】
ポリエステル含有添加剤(B)の製造には、少なくとも1種の連鎖延長剤(V)が使用されることができる。少なくとも1種の連鎖延長剤(V)は、通常、エステルを形成する能力のある基を少なくとも3個有する化合物(V1)から、及びイソシアナート基を少なくとも2個有する化合物(V2)から、選択されている。
【0027】
化合物V1は、エステル結合を形成することのできる官能基を好ましくは3〜10個有する。特に好ましい化合物V1は、分子中にこの種類の官能基を3〜6個、特にヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基を3〜6個有する。例示的に、次のものを挙げることができる:
酒石酸、クエン酸、リンゴ酸;トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン;ペンタエリトリトール;ポリエーテルトリオール;グリセリン;トリメシン酸;トリメリト酸、トリメリト酸無水物;ピロメリト酸、ピロメリト酸二無水物及びヒドロキシイソフタル酸。
【0028】
化合物V1は、通例、成分m2及びm3を基準として、0.01〜15mol%、好ましくは0.05〜10mol%、特に好ましくは0.1〜4mol%の量で使用される。
【0029】
成分V2として、イソシアナート1種又は異なるイソシアナートの混合物が使用される。芳香族又は脂肪族のジイソシアナートが使用されることができる。しかしより高官能性のイソシアナートも使用されることができる。
【0030】
芳香族ジイソシアナートV2は、本発明の範囲内で、とりわけ、トルイレン−2,4−ジイソシアナート、トルイレン−2,6−ジイソシアナート、2,2′−ジフェニルメタンジイソシアナート、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアナート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアナート、ナフチレン−1,5−ジイソシアナート又はキシリレン−ジイソシアナートであると理解される。
【0031】
それらのうち、2,2′−、2,4′−並びに4,4′−ジフェニルメタンジイソシアナートは成分V2として特に好ましい。一般的に、後者のジイソシアナートは、混合物として使用される。
【0032】
三核のイソシアナートV2として、トリ(4−イソシアノフェニル)メタンも考慮に値する。多核の芳香族ジイソシアナートは、例えば、一核又は二核のジイソシアナートの製造の際に生じる。
【0033】
副次的な量、例えば成分V2の全質量を基準として5質量%までで、成分V2は、またウレチオン基を、例えばイソシアナート基のキャッピングのために、含有していてよい。
【0034】
脂肪族ジイソシアナートV2は、本発明の範囲内で、とりわけ、炭素原子2〜20個、好ましくは炭素原子3〜12個を有する線状又は分枝鎖状のアルキレンジイソシアナート又はシクロアルキレンジイソシアナート、例えば1,6−ヘキサメチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート又はメチレン−ビス(4−イソシアナトシクロヘキサン)と理解される。特に好ましい脂肪族ジイソシアナートV2は、1,6−ヘキサメチレンジイソシアナート及びイソホロンジイソシアナートである。
【0035】
好ましいイソシアヌラートには、炭素原子2〜20個、好ましくは炭素原子3〜12個を有するアルキレンジイソシアナート又はシクロアルキレンジイソシアナート、例えばイソホロンジイソシアナート又はメチレンビス(4−イソシアナトシクロヘキサン)から誘導される脂肪族イソシアヌラートが含まれる。その際に、アルキレンジイソシアナートは、線状の並びに分枝鎖状であってよい。特に好ましくは、n−ヘキサメチレンジイソシアナートをベースとするイソシアヌラート、例えばn−ヘキサメチレンジイソシアナートの環状の三量体、五量体又は高級オリゴマーである。
【0036】
一般的に、成分V2は、m1、m2及びm3のモル量の合計を基準として、0.01〜5mol%、好ましくは0.05〜4mol%、特に好ましくは0.1〜4mol%の量で使用される。
【0037】
Tg値(単位:摂氏度)はガラス転移温度のことであり、無定形又は結晶質のポリマーが、硬弾性(hartelastischen)状態又はガラス状態から液体状態又はゴム弾性状態へ移行する温度である。標準PES材料は、約80℃のTg値を有する。
【0038】
本発明の特に好ましい一実施態様において、ポリエステル含有添加剤(B)のTg値は、−50〜0℃、好ましくは−45〜−10℃及び特に好ましくは−40〜−20℃である。
【0039】
ポリエステル含有添加剤(B)をテレフタラートポリエステル(A)に混合し、それと結びつけて、低下された軟化点を有するポリエステル繊維(C)を製造することにより、<130℃、好ましくは≦120℃、特に好ましくは≦110℃、極めて特に好ましくは≦100℃及び殊に好ましくは≦90℃での染色が可能になる。低下されたガラス転移温度は、PES鎖中への高められた移動度を必然的に伴い;同時に、場合によっては添加される染色剤は、好ましくは前記繊維のこれらの軟質セグメントへ侵入する。全体で、強力な色収率が達成される。
【0040】
テレフタラートポリエステル(A)中のポリエステル含有添加剤(B)の分布は、均一かつ小滴不含で行われる。得られる繊維は、問題なく特に迅速に巻き付けられることができる。この場合に、それらから後で製造すべきシート状繊維織物(F)における所望の用途に応じて、多様な繊維太さで巻き付けられることができる。(A)及び(B)の最適な混合のためには、任意に相溶化剤(R)が使用されることができる。
【0041】
本発明による方法の工程(I)において、成分(A)及び(B)と、さらに1種又はそれ以上の成分(G)が混合されることができる。成分(G)は、加工助剤、例えば潤滑剤、プロセス助剤及びワックス、添加剤、例えば相溶化剤、UV安定剤及び光安定剤、熱安定剤、染料及び顔料、防炎加工剤、酸化防止剤、可塑剤、金属酸化物、例えば酸化チタン、蛍光増白剤及び充填物である。それらの割合は、工程(I)において得られた混合物もしくはこれから製造された未染色の繊維の全質量を基準として、一般的に0〜20質量%、好ましくは0〜10質量%であり、その際にこれらは、成分(G)を少なくとも0.1質量%、これが存在している場合には、含有する。
【0042】
本発明による方法は、ポリエステル含有添加剤(B)が、好ましくは50 000〜300 000g/molの数平均分子量Mwを有することにより特徴付けられる。
【0043】
本発明により使用されるポリエステル含有添加剤(B)の製造、典型的な反応条件及び触媒は、当業者に原則的に知られている。(B)の製造に使用されるジカルボン酸m2)及びm3)は、原則的に知られた方法で、遊離酸として又は常用の誘導体、例えばエステルの形で、使用されることができる。典型的なエステル化触媒が使用されることができる。任意に、連鎖延長剤(V)、例えばHMDI(1,6−ヘキサメチレンジイソシアナート)も、(B)の製造の際に使用されることができる。前記反応の有利な変法において、まず最初にポリエステルジオール単位が予備合成されることもでき、これらはついで連鎖延長剤(V)を用いて互いに結合されることができる。構成単位及び/又は反応条件の選択により、ポリエステルの性質は、当業者により特定の要求プロフィールに容易に適合されることができる。
【0044】
もちろん、複数の異なるポリエステル含有添加剤(B)の混合物も使用されることができる。
【0045】
本発明によれば、未染色のポリエステル繊維(C)は、未染色の繊維の全成分の合計を基準として、少なくとも1種のそのようなポリエステル含有添加剤(B)を1〜20質量%、好ましくは5〜10質量%及び例えば6質量%、含む。
【0046】
処理工程
未染色の、本質的にポリエステルからなる繊維は、少なくとも成分であるテレフタラートポリエステル(A)及びポリエステル含有添加剤(B)を強力混合することにより、混合、溶融及び紡糸により製造される。
【0047】
このためには、テレフタラートポリエステル(A)及びポリエステル含有添加剤(B)は、好ましくは相応する計量供給装置を使用して、例えばグラニュールとして、混合装置中へ計量供給される。もちろん、予備混合されたグラニュールを使用することも可能である。
【0048】
成分(A)及び(B)並びに任意に別のポリマー及び/又は添加剤及び助剤(成分(D))は、まず最初に適した装置を用いて溶融物まで加熱することにより、強力に互いに混合される。例えば、ニーダー、一軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機又は他の混合装置もしくは分散装置が使用されることができる。好ましくは、一軸スクリュー押出機が使用される、それというのも、スクリューの長さ及び種類、押出機中の温度及び滞留時間により、一軸スクリュー押出機中でも均質な混合が達成されることができるからである。
【0049】
混合のための温度は、当業者により選択され、かつ成分(A)及び(B)の種類に依存する。テレフタラートポリエステル(A)及び別のポリエステル含有添加剤(B)は、一方では十分な程度に軟化すべきであるので、混合が可能である。これらは他方では、さらっとし過ぎるべきではない、それというのも、さもないと十分なせん断エネルギー供給がもはや行われることができず、かつ事情によっては熱分解の恐れもあるからである。通例、混合は、250℃〜290℃の生成物温度で、好ましくは280℃で実施されるが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0050】
混合後に、溶融物から、押し出すことにより、未染色のポリエステル繊維(C)が得られ、これは引き続き直接、巻き付けられる。この場合に、溶融された塊は、原則的に知られている方法で、1つ又は好ましくは複数のノズル、例えば多孔ノズル、例えば標準メッシュを有する24孔ノズルを経て、及び例えば28〜32バールのノズル圧に加圧され、その際に相応するポリエステル繊維(C)(フィラメント)が形成される。本発明により使用される混合物を直接紡糸するには、280℃の調整器温度が有用であると判明している。繊維もしくはフィラメントは、通例、0.7μm未満の直径を有するべきである。好ましくは、直径は0.5〜0.2μmであるが、本発明はそれらに限定されるものではない。通例、ポリエステル繊維(C)は、125〜127dtex(dtex=g/10km繊維)の全糸線密度(Gesamtgarntitern)を有する複数のフィラメントからなる。もちろん、1〜300d/texの全糸線密度で製造することも可能である。
【0051】
実証された実施例の場合に、押出機回転数は、例えば、50rpmであり、ゴデット回転数は300rpmであり、かつ巻取速度は600rpmである。ホットプレートは、例えば、1:2(50:100m/min)の延伸の際に100℃を有する。
【0052】
本発明によれば、前記の方法により製造されたポリエステル繊維(C)は、シート状繊維織物(F)に加工され、かつ染色されることもできる。ポリエステル繊維(C)は、最初に染色され、引き続き糸(E)及び/又はシート状繊維織物(F)にさらに加工されることもできる。ポリエステル繊維からまず最初に糸(E)を製造し、かつこれを染色することも可能である。染色された糸(E)からは、ついで場合によりシート状繊維織物(F)が製造されることができる。
【0053】
本発明の好ましい一実施態様によれば、ポリエステル繊維(C)、糸(E)及び/又はシート状繊維織物(F)は、染色前に、安定化作用のある乳化剤で処理される。
【0054】
本発明による方法は、とりわけ、染色されたシート状繊維織物(F)の製造方法が、ポリエステル繊維(C)から出発して、好ましくは次の工程:
d)ポリエステル繊維(C)を糸(E)に紡糸する工程、
e)糸(E)をシート状繊維織物(F)にさらに加工する工程、
f)シート状繊維織物(F)を安定化作用のある乳化剤で処理する工程、
g)シート状繊維織物(F)を染色する工程
を含むことにより特徴付けられる。
【0055】
このためには、未染色のポリエステル繊維(C)は、例えば、それらから糸(E)を得るために、2回目が紡糸される。糸(E)は、引き続き例えば丸編機で処理工程e)と同様にシート状繊維織物(F)に加工されることができる。繊維(C)もしくは糸(E)からのシート状繊維織物(F)の製造方法は、当業者に原則的に知られている。
【0056】
未染色のポリエステル繊維(C)、糸(E)及びシート状繊維織物(F)は、例えば、アニオン界面活性剤及び非イオン界面活性剤からなる界面活性剤で、例えば1:20の繊維材料対染料配合物の質量比(浴比)で高められた温度で処理されることによって、前処理される。本質的には、この前処理のために、安定化作用のある乳化剤が使用される。
【0057】
未染色の、前処理されたポリエステル繊維(C)、糸(E)及びシート状繊維織物(F)は、少なくとも水及び染料を含む配合物で処理されることによって、染色される。繊維材料を染色するための水性配合物は、当業者により"染液"とも呼ばれる。
【0058】
一実施態様の場合に、染色過程g)もしくはIV)は、130℃未満の温度で、好ましくは≦120℃、特に好ましくは≦110℃、極めて特に好ましくは≦100℃及び殊に好ましくは≦90℃で、行われる。
【0059】
好ましくは、分散着色剤は、配合物及び分散染料以外に、専ら水を含む。しかしまた、さらに少量の水と混和性の有機溶剤が存在していてもよい。この種の有機溶剤の例は、一価又は多価のアルコール、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール又はグリセリンを含む。さらに、エーテルアルコールであってもよい。例は、(ポリ)エチレングリコール又は(ポリ)プロピレングリコールのモノアルキルエーテル、例えばエチレングリコールモノブチルエーテルを含む。水とは異なるこの種の溶剤の量は、しかし通例、配合物もしくは染液の全溶剤の合計に関して、20質量%、好ましくは10質量%及び特に好ましくは5質量%を超えるべきではない。
【0060】
配合物中の染料として、PES繊維(ポリエステル繊維(C))、糸(E)及びシート状繊維織物(F)を染色するためには、ポリエステル繊維の染色に適している原則的に全ての知られた染料が使用されることができる。本発明による方法は、特に、染色過程g)もしくは(IV)において、好ましくは分散染料及び任意に分散助剤が使用されることにより特徴付けられる。
【0061】
概念"分散染料"は当業者に知られている。分散染料は、低い水溶性を有する染料であり、これらは分散したコロイド形で染色に、特に繊維及び繊維材料の染色に使用される。原則的に任意の分散染料が、本発明を実施するために使用されることができる。これらは、異なる発色団又は発色団の混合物を有することができる。特に、アゾ染料又はアントラキノン染料であってよい。さらに、キノフタロン、ナフタルイミド、ナフトキノン又はニトロ染料であってよい。染料の命名法は、当業者に知られている。完全な化学式は、関連している専門書及び/又はデータバンクから得ることができる。分散染料についてのより詳しい細部及びさらなる例は、例えば、"Industrial Dyes", Editor Klaus Hummer, Wiley-VCH, Weinheim 2003, p.134-158に詳細にも示されている。
【0062】
もちろん、異なる分散着色剤の混合物も使用されることができる。このようにして、混合着色剤が得られることができる。好ましいのは、良好な堅ろう度を有し、かつ三原色が可能である分散着色剤である。
【0063】
配合物中の(分散)染料の量は、当業者により、所望の使用目的に応じて、決められる。
【0064】
配合物は、溶剤及び染料の他にさらに別の助剤を含んでいてよい。例は、典型的な繊維助剤、例えば分散剤及び均染剤、酸、塩基、緩衝液系、界面活性剤、錯化剤、消泡剤又はUV分解に対する安定剤を含む。好ましくは、UV吸収体が助剤として使用されることができる。
【0065】
好ましくは、染色するために、弱酸性配合物、例えば4.5〜6、好ましくは5〜5.5のpH値を有する配合物が使用される。
【0066】
本発明による方法により製造されるポリエステル繊維(C)、糸(E)及びシート状繊維織物(F)からは、全ての種類の繊維材料(D)が製造されることができる。概念"繊維材料"(D)は、繊維製品の全製造チェーンにおける全ての材料を含むべきである。これは、全ての種類の繊維既製品、例えば全ての種類の衣料、住居繊維製品、例えばじゅうたん、カーテン、カバー(Decken)もしくは家具用布地又は工業もしくは産業上の目的又は家庭における使用のための工業用繊維製品、例えば清浄用のクロス又はワイプ又は傘布を含む。前記概念は、さらに、出発物質、すなわち繊維使用のための繊維、例えばフィラメント又はステープルファイバー並びに半製品又は中間生成物、例えば糸、織物、編物、メリヤス、ノンウーブン又は不織布を含む。また繊維製品、例えばクッション又はまたぬいぐるみ用の又は包装材料としての充填物及びフロックも、本発明によれば、共に含まれている。糸及び/又は繊維からの繊維材料の製造方法は、当業者に原則的に知られている。
【0067】
繊維材料(D)は、本発明により使用されるポリエステル組成物から専ら製造されていてよい。これらは、しかしもちろん他の材料、例えば天然繊維との組合せでも、使用されることができる。組合せは、多様な製造段階で行われることができる。例えば、既に溶融紡糸の段階で、定義された幾何学的な配置を有する複数のポリマーからなるフィラメントが製造されることができる。糸製造の際に、他のポリマーの繊維が共に配合されることができ、又はステープルファイバーから繊維混合物が製造されることができる。さらに、異なる種類の糸が互いに加工されることができ、かつ最後に、本発明によるポリエステル組成物を含む織物、編物又はそのようなものは、化学的に他の種類の織物と結合されることもできる。本発明によれば好ましい繊維材料(D)は、特にスポーツ衣料及び余暇衣料、じゅうたん又はノンウーブン用の繊維材料を含む。
【0068】
水性染料配合物での繊維材料(D)の処理は、常用の染色方法を用いて、例えば配合物中への浸漬(例えば吸尽法による)、配合物の噴霧、適した装置を用いる配合物の加圧染色又は塗布により、行われることができる。連続的な又は不連続な方法であってよい。染色装置は当業者に知られている。染色は、例えば不連続にウインチ、糸染色装置、ビーム染色装置又はジェットを用いて、又は連続的にスロップパジング施与法、ニップパジング施与法、スプレー施与法又は発泡施与法により、適した乾燥装置及び/又は固着装置を用いて、行われることができる。
【0069】
繊維材料(D)対染料配合物(浴比とも呼ばれる)並びに特に染料自体の質量比は、当業者により、所望の使用目的に応じて決められる。通例、1:5〜1:50、好ましくは1:10〜1:50及び同様に好ましくは1:5〜1:20、特に好ましくは1:10の繊維材料(D)/染料配合物の質量比が、前記繊維材料を基準として有用であることが判明しているが、本発明はこの範囲に決められているものではない。配合物中の染料量は、好ましくは、前記繊維材料を基準として約0.5〜5質量%、好ましくは1〜4質量%である。
【0070】
本発明によれば、繊維材料は、染料配合物での処理中及び/又は処理後に、ポリエステル繊維のガラス転移温度Tgを上回るが、しかしそれらの溶融温度を下回る温度に加熱される。これは、好ましくは、全ての配合が該当する温度に加熱され、かつ繊維材料が配合物中へ浸漬されるようにして行われることができる。ポリエステル繊維のガラス転移温度Tgは、使用されるポリマー組成物の種類に依存し、かつ当業者に知られた方法により測定されることができる。
【0071】
しかしまた繊維材料は、前記配合物でTgを下回る温度で処理されることもでき、場合により乾燥され、引き続き、処理された繊維材料はTgを上回る温度に加熱されることができる。もちろん、双方の手順の組合せも可能である。
【0072】
処理の際の温度は、もちろん、使用されるポリエステル組成物及び使用される染料の種類に依存する。90〜145℃の温度、好ましくは95〜130℃が有用であると判明している。
【0073】
染色過程の期間は、当業者により、ポリマー組成、配合物の種類並びに染色条件に応じて決定される。温度を処理期間に応じて変えることも可能である。例えば、水性染液中でそれぞれ2〜3℃/minの間隔でまず最初に100℃に加熱されることができ、ついで約25〜35分、温度が保持され、ついでそれぞれ2〜3℃/minの間隔で70℃に、ついで30℃に冷却されることができる。
【0074】
染色に続いて、例えば洗剤又は酸化的にもしくは還元的に作用する後清浄化剤又は堅ろう度改良剤での、常用の後処理が行われることができる。この種の後処理は、当業者に原則的に知られている。可能な後洗浄は、亜硫酸水素塩及びNaOHで、例えば70℃で行われることができ、続いて温水及び冷すすぎ及び酸洗いが行われる。
【0075】
本発明の選択的な一実施態様において、未染色の繊維材料(D)は印刷されることもできる。印刷するには、もちろん、十分な平面を有する繊維材料(D)のみが適している。例えば、ノンウーブン、不織布、織物、編物、メリヤス又はフィルムが印刷されることができる。好ましくは、印刷には織物が使用される。
【0076】
繊維材料(D)を例えば分散染料で印刷する方法は、当業者に原則的に知られている。
【0077】
染色及び印刷は、例えばまず最初に繊維材料(D)が特定の色で染色され、引き続きパターン、ロゴ又はそのようなものがプリントされることによって、互いに組み合わされることができる。
【0078】
本発明のさらなる対象は、繊維材料(D)及びシート状繊維構造物を製造するため、特に繊維、糸、充填物、フロック、織物、編物、メリヤス、ノンウーブン、不織布、装飾用及び工業用の繊維製品並びにじゅうたんを製造するための、前記で詳細に記載された本発明による方法により製造される繊維(C)、糸(E)及びシート状繊維織物(F)の使用である。
【0079】
本発明の有利な一態様の場合に、ポリエステル繊維(C)は、衣料繊維製品、住居繊維製品又は実用繊維製品用の染色された又は未染色の純繊維又は混合繊維を製造するために使用される。
【0080】
次の例は、本発明をより詳細に説明するものである。
【0081】
例1:ポリエステル繊維(C)の製造及びポリエステル含有添加剤(B)を含有する糸(E)への加工
実験のために、ポリエステル(PBTグラニュール)(A)[X%]を、モノマー1,4−ブタンジオール(50mol%)、アジピン酸(25mol%)及びテレフタル酸(25mol%)からなるポリエステル含有添加剤(B)Y%(国際公開(WO)第98/12242号により製造)と混合し、押出機中で溶融させた。均質な溶融物を、引き続き多孔ノズルを経て押し出し、かつポリエステル繊維(C)が、巻き付けられたフィラメントの形で得られた。
【0082】
使用される紡糸機は、標準メッシュ(50μ)を有する24孔ノズル(24/0.2)を有していた。温度は、全ての調整器上で280℃であり、かつノズル圧は28〜32バールであった。押出機回転数を50rpmに調節し、ゴデット回転数は300rpmであり、かつ巻取速度は600rpmであった。
【0083】
延伸は1:2(50/100m/min)であり、かつホットプレートの温度は100℃であった。紡糸されたポリエステル繊維(C)を、引き続き、第二の紡糸過程において糸(E)に紡糸した。
【0084】
第1表には、ポリエステル(PBT)(A)対ポリエステル含有添加剤(B)の使用された比及びこれから得られた糸(E)の延伸線密度が示されている。
【0085】
【表1】

【0086】
引き続き、糸(E)から、丸編機でシート状繊維構造物(F)が製造されることができた。
【0087】
例2:染色過程前の前処理
染色過程前のシート状繊維構造物(F)の前処理のために、これを、まず最初にKieralon Jet B(登録商標)濃縮(1g/L)でかつ1:20の浴比で、60℃で20分間、標準装置中で処理した。
【0088】
例3:染色過程
染色を、前記のように製造された編物片を、使用される未染色布の量を基準として2質量%の量の市販の分散染料(例えばDianixDeepRed SF)並びに脱塩水中のCO色添加剤としての1g/LのBasojet XP(登録商標)を添加して、5〜5.5のpH値で標準染色装置中で、初めに30℃から30〜40分かけて100℃(もしくは115℃)まで放置することによって実施した。
【0089】
シート状繊維織物(F)、すなわちポリエステル含有編物(乾燥)[単位:キログラム]対処理浴の体積[単位:リットル]の比、いわゆる浴比は、水性媒体中で1:10であった。
【0090】
染色後に、2.5℃/minの速度で70℃に、ついで30℃に冷却した。
【0091】
後洗浄のために、亜硫酸水素塩4g/L及びNaOH(100%) 2g/Lで70℃で10分間洗浄し、ついで、水で温及び冷すすぎし、酢酸で酸洗いした。
【0092】
第2表は、異なる混合織物、色温度及び色の濃さ(洗浄及び未洗浄)についてのリストを提供する。
【0093】
実験1、2、3及び4は、比較すると、色の濃さが、(B)(ポリエステル含有添加剤)の含量が上昇するにつれて上昇することを示す。(B) 8%の場合に、実験6(=これまでの技術水準;114%対112%、これは誤差範囲内である)の場合と同じ色の濃さがほぼ達成される。100℃の染色温度で、添加剤含有の変法の場合に、ほぼ130℃での添加剤不含のPBTと同じ色の濃さが達成される。それゆえ、100℃で開放系中での染色が可能であり、かつ染色は、従来の130℃の場合と匹敵しうる結果が達成されることが示された。
【0094】
第2表:染色された編物片1、5及び6(PES材料100%)を、100%の色の濃さで比較パターンとした。
【0095】
【表2】

【0096】
例4:洗濯堅ろう度試験
洗濯堅ろう度試験を、"ISO 105-C06-A1 S、40℃"(鋼球なし)に従い行った。実験1〜6を、洗浄し、水堅ろう度について調べた。実験のナンバリングは、第2表に示された実験から生じる。
【0097】
【表3】

【0098】
繊維材料の洗濯堅ろう度及び光堅ろう度を、1〜5の等級で評価し、その際に染色された物質のブリードを、ひいては繊維製品である羊毛、ポリアクリラート、ポリエステル、ポリアミド、木綿及びビスコースの汚染性を試験した。前記値が高ければ高いほど、多様な繊維製品の汚染性はより低くなり、このことは、染色されたポリエステル繊維編物のより低いブリードが推論されることができる。
【0099】
PAC及びVIS、しかしまたPES及びCOに対して、染色された物質は、絶対的に洗濯堅牢であり、かつ単にWo及びPAのみがごく僅かに変色した。
【0100】
例5:
0.65dl/gの固有粘度(I.V.)を有するポリエチレンテレフタラートを、モノマー1,4−ブタンジオール(50mol%)、アジピン酸(25mol%)及びテレフタル酸(25mol%)からのポリエステル含有添加剤(B)5.5質量%(国際公開(WO)第98/12242号により製造)を添加して及び添加しないで、例1と同様にして、ポリエステル繊維(C)に加工した。その際に、それぞれ、マルチフィラメントポリエステル繊維を、添加剤(B)を用いて(本発明による)並びに添加剤なしで(比較)、製造した。本発明による及び本発明によらない繊維を、それらの製造後に部分的に延伸し(POY=partially oriented yarn)、並びに完全に延伸し、かつより合わせた(verwirbelt)(FDY=fully draw yarn)。POY法及びFDY法は当業者に知られており、かつ例えばHans-J. Koslowski. "Dictionary of Man-made fibers", Second edition, Deutscher Fachverlag, 2009を読んで調べることができる。第4表には、4種の糸の延伸線密度が記載されている。引き続き、糸(E)から、丸編機でそれぞれシート状繊維織物(F)を製造した。
【0101】
【表4】

【0102】
こうして得られたポリエステル繊維を、目下異なる染料で染色した。染色のために、DyStar Textilfarben GmbH & Co Deutschland社製の商業的に入手可能な染料を使用し、その際に、赤色染料はDianix Rubin CCであり、黄色染料はDianix Yellow CCであり、青色染料はDianix blue CCであった。前記染料を、染色すべき布の量を基準としてそれぞれ2質量%の量で、並びに脱塩水中のCo色添加剤として1g/LのBasojet XP(登録商標)を使用した。染色のために、温度を2.5℃/minの加熱速度で100℃、105℃もしくは130℃に高め、この温度で40minのみ保持した。引き続き、2.5℃/minの冷却速度で70℃に冷却した。これを還元的に弱め − アルカリ性に後処理し、引き続き中和した。これらの後処理方法は当業者に知られている。
【0103】
染色された繊維製品の色の濃さを、視覚的に決定した。結果は第5表に記載されている。その際に、それぞれの染色温度で達成された色の深みは、130℃での純ポリエステル繊維の染色結果を基準としている。
【0104】
【表5】

【0105】
第5表からの結果は、本発明による方法を用いて製造された繊維製品が、より低い染色温度で、ポリエステル含有添加剤を含有しない比較繊維よりも明らかにより高い色の濃さを有し、かつ比較繊維が満足すべき染色結果を達成するためには、より高い温度で染色されなければならないことを明らかに示している。
【0106】
例6:
繊維5−1〜5−4からの繊維製品の色堅ろう度を、多様な試験方法で試験した。その際に、それぞれトリアセテート繊維、木綿、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ポリアクリル繊維及びビスコース繊維製の隣り合わせたストリップを有する規格化された試験布を、それぞれ染色された布の試料に縫い合わせ、かつ前記試験にかけた。引き続き、視覚的に、縫い合わされた標準布試料中に含有する多様な繊維の種類の汚染性を決定した。異なる試験方法を使用した。
【0107】
ISO 105 P01による昇華試験は、染色されたシート状構造物の乾熱固着堅ろう度(アイロンがけを除く)を測定する。ISO 105 E04による汗堅ろう度(酸性)及びISO 105 E04による汗堅ろう度(アルカリ性)は、汗により引き起こされる染料の変退色を測定する。さらに、60℃での洗濯堅ろう度並びISO 105 X12による摩擦をISO 105 P01に従い試験した。結果は第6表にまとめられている。評価は1〜5のスケールに従い、前記値が高ければ高いほど、標準布試料中に含まれている織物の汚染性はより低くなる。それらから、それぞれ試験された布の色堅ろう度が推論されることができる。
【0108】
【表6】

【0109】
第6表から明らかにわかるように、本発明によれば、より低い温度で染色された成分(B)を有する布が、130℃で染色された純PETの布と同じく良好な色堅ろう度特性を示す。
【0110】
それゆえ、本発明の目的が達成された:
・易可紡性のポリエステル繊維(C)の製造
・ノンスクラッチの柔らかいポリエステル繊維(C)の製造
・製造されたポリエステル繊維(C)を開放系中で染色することが可能(加圧容器は不要)、
・異種のキャリアの使用の省略
・染色過程におけるより低い水温によるエネルギー節約、
・プロセスにおける時間節約、それというのも、加熱及び冷却は多くの時間がかかるからである
・低コスト
・極めて良好な染色結果
・高い洗濯堅ろう度及び光堅ろう度。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
染色されたポリエステル繊維(C)、染色された糸(E)及び/又は染色されたシート状繊維織物(F)を、次の成分:
a)少なくとも1種のテレフタラートポリエステル(A) 前記繊維の全成分の合計を基準として、80〜99質量%、
b)次のモノマーm:
m1)脂肪族1,ω−ジオール、
m2)脂肪族1,ω−ジカルボン酸、
m3)芳香族1,ω−ジカルボン酸及び
場合により少なくとも1種の連鎖延長剤(V)
から得られる、少なくとも1種のポリエステル含有添加剤(B) 前記繊維の全成分の合計を基準として、1〜20質量%、及び
c)場合により少なくとも1種の成分(G)
から製造するにあたり、
次の工程:
I)成分(A)、(B)及び場合により1種又はそれ以上の成分(G)を混合する工程、
II)工程I)において得られた混合物からポリエステル繊維(C)を製造する工程、
III)任意に、ポリエステル繊維(C)を糸(E)及び/又はシート状繊維織物(F)にさらに加工する工程、及び
IV)ポリエステル繊維(C)、糸(E)及び/又はシート状繊維織物(F)を<130℃の温度で染色する工程
を含む、染色されたポリエステル繊維(C)、染色された糸(E)及び/又は染色されたシート状繊維織物(F)の製造方法。
【請求項2】
工程II)において、工程I)において得られた混合物を押出機中で溶融させ、紡糸口金を経て押し出し、かつ巻き付ける、請求項1記載の方法。
【請求項3】
工程III)において、ポリエステル繊維(C)を糸(E)に紡糸する、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
工程III)において、ポリエステル繊維(C)及び/又は糸(E)を、シート状繊維織物にさらに加工する、請求項3記載の方法。
【請求項5】
ポリエステル繊維(C)、糸(E)及び/又はシート状繊維織物(F)を、染色前に、安定化作用のある乳化剤で処理する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
テレフタラートポリエステル(A)が、ポリエチレンテレフタラート及び/又はポリブチレンテレフタラートから選択されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
モノマーm1):m2):m3)が2:1:1のモル比で存在する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1種の連鎖延長剤(V)を7質量%まで使用する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
連鎖延長剤(V)が1,6−ヘキサメチレンジイソシアナートである、請求項8記載の方法。
【請求項10】
脂肪族1,ω−ジオールm1)が1,4−ブタンジオールである、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
脂肪族1,ω−ジカルボン酸m2)がアジピン酸である、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
芳香族1,ω−ジカルボン酸m3)がテレフタル酸である、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
ポリエステル含有添加剤(B)が50 000〜180 000g/molの数平均分子量Mnを有する、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
ポリエステル含有添加剤(B)のガラス転移温度が、−50℃〜0℃、好ましくは−45℃〜−10℃及び特に好ましくは−40℃〜−20℃である、請求項1から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
染色過程(IV)において、分散染料及び任意に分散助剤を使用する、請求項1から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
繊維材料(D)を製造するための、請求項1から15までのいずれか1項記載の製造方法により製造された、染色されたポリエステル繊維(C)、染色された糸(E)及び/又は染色されたシート状繊維織物(F)の使用。

【公表番号】特表2013−501152(P2013−501152A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522141(P2012−522141)
【出願日】平成22年7月27日(2010.7.27)
【国際出願番号】PCT/EP2010/060843
【国際公開番号】WO2011/012598
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】