説明

可視光通信システム

【課題】 可視光通信において通信速度を向上する。
【解決手段】 送信部10では、照明を兼用する白色LED13を赤外線通信信号と可視光通信信号との合波信号により強度変調して送信する。受信部20では、専用受光素子24が白色LED13から放射された可視光を受光し、この受光信号からIrDA回路28により赤外線通信信号を復調して出力する。IrDA回路28から出力された受信信号に基づいて生成された画像が端末30の表示器に表示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明から放射される可視光を利用して通信を行う可視光通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
可視光を発光するLEDを送信データにより変調させ情報を伝達する可視光通信が近年注目を浴びている。可視光LEDの発光効率は近年急速に向上してきており、照明の他、電光掲示板、車のヘッドランプ等急速に普及が進んでいる。これらの可視光LEDが搭載された機器を用いて可視光通信を行う事でユビキタスに通信を行う事ができる。しかも、人間の目に見える光が通信媒体になるため、その送信される位置を人間が特定できるために通信範囲を限定することができ、セキュリティが高まるというメリットが挙げられことから、無線通信を補う応用分野として期待されている。また、無線が届かない建物内での通信、位置の特定、ペースメーカ等の精密機器がある医療環境での通信や、電力線通信との融合などへの様々な応用が提案されている。
【0003】
その一つに、可視光通信コンソーシアムを中心に標準化作業が進められ、2007年6月にJEITA(電子情報技術産業協会)で標準化が行われた「可視光IDシステム」がある。これは、搬送周波数28.8kHz,データレート4.8kbpsのPPM(Pulse Position Modulation)変調を基本とした通信規格である。詳細はJEITA標準案「可視光通信システム」(CP−1221)、「可視光IDシステム」(CP−1222)に記載されているが、位置情報サービスや店舗案内サービスに応用することができる。また、赤外線無線通信の規格であるIrDA(Infrared Data Association;データレート115kbps)、高速化された赤外線無線通信の規格であるIrSimple(データレート最大4Mbps)、赤外線を利用して情報をシャワーのように降らせる多目的情報配信ツールであるIrShower(登録商標)を可視光通信へ拡張する試みもある。
【0004】
携帯電話機やPDA(Personal Digital Assistants)等の携帯端末において可視光通信を利用する場合は、店舗案内のように複数のLED発光源からの信号を同時に受ける環境となる。この場合には、複数の発光源からの光信号を分離する必要がある。しかし、可視光IDシステムやIrSimpleで用いられているPPM変調においては、無線通信で使われている搬送波周波数やスペクトル拡散による分離を用いる事ができないため、受信部の受光素子に混入した複数の信号を分離することは困難となる。そこで、受光素子に加えてCCD(Charge Coupled Devices)等のイメージセンサを設けて、画像処理と併用して光信号を分離する手法が提案されている。例えば、携帯電話機においてCCDカメラと同じ方向を向いた可視光通信の受光部を設け、CCDカメラのディスプレイに可視光通信の光源と兼用された照明器具が表示された時に、受光部で可視光通信の光信号を受けるようにすることが提案されている。さらに、携帯電話機に被写体を撮像する撮像手段と、複数の可視光通信の受光素子とを設け、撮像手段が撮像した被写体の表示エリアを複数の受光素子に対応する複数のエリアに分割して、分割したエリアのうちの光源が表示されているエリアを指定することで、指定されたエリアに対応する受光素子だけからの光信号を受けることも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−218067号公報
【特許文献2】特開2007−295490号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】中川正雄,“可視光通信”,月刊オプトロニクス,Vol.22, No.261, pp.120-125, 2003年9月
【非特許文献2】春山真一郎,“可視光通信”,電子情報通信学会論文誌A,Vol.J86-A, No.12, pp.1284-1291, 2003年12月
【非特許文献3】中川正雄,”ユビキタス可視光通信”,電子情報通信学会論文誌,Vol.J88-B, pp.351-359, 2005年2月
【非特許文献4】中川正雄監修,可視光通信コンソーシアム編,“可視光通信の世界”,工業調査会,2006年2月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、可視光IDシステムのデータレートが4.8kbpsと低データレートとされて、通信速度が遅いという問題点があった。また、IrDAシステムを利用すると通信速度は向上するものの、可視光ではないことから赤外光の送信源がどこにあるか分からないと云う問題点が生じる。
そこで、本発明は、可視光通信において通信速度を向上することができる可視光通信システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、通信データで変調された可視光を送信する送信部と、該送信部から送信された可視光を受光して通信データを復調する受信部と、該受信部で復調された通信データを表示する表示部とを備える可視光通信システムであって、前記送信部は、通信データにより変調された赤外線通信信号を出力する赤外線通信送信回路と、通信データにより変調された可視光通信信号を出力する可視光通信送信回路と、前記赤外線通信信号と前記可視光通信信号との合波信号により強度変調された可視光を放射する照明を兼用する発光素子とを備え、前記受信部は、対象画像を撮像する受像手段と、該受像手段の周辺に配置され、前記発光素子から放射された可視光を受光可能なアレイ状に配列された複数の受光素子から構成されている専用受光手段と、該専用受光手段における前記複数の受光素子の内のいずれかの受光素子から出力された受光信号が入力され、該受光信号から前記赤外線通信信号を復調して出力する赤外線通信受信回路と、前記専用受光手段における前記複数の受光素子の内のいずれかの受光素子から出力された受光信号が入力され、該受光信号から前記可視光通信信号を復調して出力する可視光通信受信回路とを備え、前記表示部は、前記受像手段が撮像した対象画像を表示すると共に、該表示のエリアを前記専用受光手段における各受光素子の受光エリアを対応付けて複数のエリアに分割する表示手段と、分割された表示のエリアのうちの前記発光素子から放射された可視光を受光するエリアが指定可能とされ、前記エリアのいずれかが指定された際に、指定されたエリアに対応する受光素子が受光した受光信号が、前記専用受光素子から前記赤外線通信受信回路および前記可視光通信受信回路に出力されるように制御する制御手段とを備えたことを最も主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、照明を兼用する発光素子を赤外線通信信号と可視光通信信号との合波信号により強度変調された可視光を放射し、受光素子が受光した受光信号から赤外線通信信号を復調して出力するようにしたことから、可視光に通信を高速化することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1実施例の可視光通信システムの構成を示す回路ブロック図である。
【図2】本発明の第1実施例の可視光通信システムにおける端末の構成例を示す回路ブロック図である。
【図3】本発明の第1実施例の可視光通信システムにおける送信部の他の構成例を示す回路ブロック図である。
【図4】本発明の第1実施例の可視光通信システムにおける送信部のさらに他の構成例を示す回路ブロック図である。
【図5】本発明の第2実施例の可視光通信システムの構成を示す回路ブロック図である。
【図6】本発明の第2実施例の可視光通信システムにおける送信部の他の構成例を示す回路ブロック図である。
【図7】本発明の第2実施例の可視光通信システムにおける送信部のさらに他の構成例を示す回路ブロック図である。
【図8】本発明の第1実施例における可視光通信システムの受光部における専用受光素子の詳細構成を示す回路ブロック図である。
【図9】本発明の第3実施例における可視光通信システムの構成を示す回路ブロック図である。
【図10】本発明の第3実施例の可視光通信システムにおいて実行される受信データ処理のフローチャートである。
【図11】本発明の第3実施例の可視光通信システムにおける送信装置から送信されるデータのデータ構成を示す図である。
【図12】本発明の第3実施例の可視光通信システムの受信装置において、受信データ処理が実行される際に表示される表示画面の一例を示す図である。
【図13】本発明の第3実施例の可視光通信システムの受信装置において、受信データ処理が実行される際に表示される表示画面の他の例を示す図である。
【図14】本発明の第3実施例の可視光通信システムの受信装置において、受信データ処理が実行される際に表示される表示画面のさらに他の例を示す図である。
【図15】本発明の第3実施例の可視光通信システムの受信装置において、受信データ処理が実行される際に表示される表示画面のさらに他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の第1実施例の可視光通信システムの構成を示す回路ブロック図を図1に示す。
図1に示す本発明の第1実施例とされる可視光通信システム1は、可視光IDシステムと可視光版のIrDAシステムを連携させており、送信部10と、受光部20が設けられた端末30とを備えた単方向通信とされている。可視光通信システム1における送信部10は、IrDA送信回路11およびID送信回路12と、白色LED13と、処理部14と、ROM(Read Only Memory)15およびRAM(Random Access Memory)16とを備えている。CPU(Central Processing Unit)を備える処理部14は、管理プログラム(OS:Operating System)を実行しており、送信部10の全体の動作をOS上で制御している。処理部14が実行する送信制御プログラム等の動作ソフトウェアは不揮発性のROM15に格納されており、処理部14が処理を行う際に使用するワークエリアや各種データ等がRAM16に記憶されている。処理部14は、送信制御プログラムを実行することにより、ROM15あるいはRAM16から読み出した各種データをIrDA送信回路11およびID送信回路12に振り分けて送信させる処理を行っている。白色LED13は、照明装置を構成するLEDとされている。
【0012】
IrDA送信回路11は、IrDAの赤外線通信の規格とされ、データレートは115kbps,1Mbpsあるいは4Mbpsのいずれかとされており、送信のデータレートが高いことから画像や音声、動画等のデータが処理部14により振り分けられて送信される。ID送信回路12は、搬送周波数28.8kHz,データレート4.8kbpsとされて、データレートが低いことからテキストデータ等の低容量のデータが処理部14により振り分けられて送信される。IrDA送信回路11からのIrDA信号およびID送信回路12からのID信号が合波されて白色LED13に供給されることにより、白色LED13から放射される可視光の光強度がIrDA信号とID信号とを合波した信号により変調される。白色LED13としては、蛍光体を用いた擬似白色LED,2波長白色LED,3波長白色LEDのいずれかとされ、それらの応答速度は、おおむね2波長および3波長白色LEDで数10MHzとなり、蛍光体を用いた擬似白色LEDで数MHzとなる。なお、IrDA送信回路11およびID送信回路12からは同じデータが繰り返し送信されている。
【0013】
端末30は、パーソナルコンピュータ(PC)や携帯電話機等とされ、その概略構成が図2に示されている。図2に示すように、端末30は、CPU31を有し、CPU31は管理プログラム(OS)を実行しており、端末30の全体の動作をOS上で制御している。ROM33には、CPU31が実行する通信制御プログラム等の動作ソフトウェアが格納されており、RAM32には、CPU31が処理を行う際に使用するワークエリアや各種データ等が記憶されている。USB I/F34は、周辺機器と端末30を結ぶデータ伝送路の規格の一つであるUSB(Universal Serial Bus)のインタフェースである。表示器35は、液晶等のディスプレイとされ、操作子36は各種キーやポインティングデバイス等とされる。各部はバス37により接続されている。CPU31は、通信制御プログラムを実行することにより、受光部20から入力されたID信号あるいはIrDA信号に基づくテキストや画像等を表示器35に表示している。
【0014】
受光部20はUSBインタフェースを備えており、端末30に備えられているUSB I/F34のUSB端子に装着されて、受光部20と端末30とが一体に動作するようにされている。可視光通信システム1における送信部10の白色LED13が照明装置とされていることから、端末30に装着された受光部20を容易に送信部10に向けることができる。受光部20を送信部10に向けると、レンズ21により結像された対象画像がCCD22で受像される。CCD22により受像された対象画像には送信部10の画像と周囲の画像とが含まれるようになる。また、レンズ23はレンズ21と略同方向を向いて並べて配置されており、レンズ23により結像された対象画像が専用受光素子24により受光される。専用受光素子24は、アレイ状に配列された複数の受光素子からなり、後述するように白色LED13から送信されたIrDA信号およびID信号の信号成分が当たっている受光素子のみからの出力が取り出されて、ローパスフィルタ(LPF)25およびハイパスフィルタ(HPF)27に入力される。
【0015】
ここで、専用受光素子24の詳細構成を図8に示す。専用受光素子24は、CMOS集積回路技術を用いて作成されたダーリントンフォトトランジスタやアバランシェフオトダイオード(APD)などの高感度の受光素子24aが、例えば8×8個のアレイ状に集積化されて構成されている。選択回路24bは、例えば8行×8列に配列された受光素子24aの内の1個または複数の受光素子24aを選択するためのデコーダを有している。デコーダは、端末30から印加された制御信号をデコードして専用受光素子24における各行および各列の(8個ずつの)スイッチを制御することにより、受光素子24aの内の1個または複数の受光素子24aを選択する。このようにして、選択回路24bにより選択された受光素子24aが受けた光信号が選択回路24bから出力される。選択回路24bの出力はDC除去回路24cに入力されて、入力された受光素子24aの信号電流から直流成分が除去されて出力される。DC除去回路24cの出力は、I→V変換回路24dに入力されて入力された受光素子24aの電流信号が内蔵されるトランスインピーダンスアンプにより電圧信号に変換されて出力される。なお、DC除去回路24cを設けることにより、受光素子24aがAPDとされた際に、温度で変化する暗電流の影響を除去することができる。
【0016】
次に、専用受光素子24において、IrDA信号およびID信号の信号成分が当たっている受光素子24aのみからの出力を取り出す制御方法について図8を参照しながら説明する。レンズ23により対象画像が結像される専用受光素子24は、図8に示すように例えば8行×8列のアレイ状に分割された各エリア内にそれぞれ受光素子24aが配列されて構成されている。そして、CCD22上にレンズ21により結像された対象画像が、端末30の表示器35上に表示される。表示された対象画像の画像処理が端末30において行われて、対象画像のエリアが専用受光素子24において分割されているエリアと同じ行数と列数とに分割される。この分割されたエリアを擬似的にCCD22上に破線で示している。端末30の表示器35上の対象画像を参照して送信部10とされる照明装置が表示されているエリアをユーザが操作子36を操作して選択すると、選択されたエリアの位置情報が制御信号として端末30から専用受光素子24に供給される。専用受光素子24は制御信号を受けて、制御信号により指示された位置のエリアに相当する受光素子24aからの出力のみを選択回路24bにより選択して出力する。これにより、受光部20におけるLPF25およびHPF27には、背景雑音の影響を極力受けることなく送信部10から送信されたIrDA信号およびID信号が入力されるようになる。
なお、CCD22における分割されたエリア毎の受光信号のレベルを比較して、最大レベルのエリアを自動的に検出することで、検出したエリアを選択する制御信号を自動的に生成して、専用受光素子24に供給するようにしても良い。
【0017】
専用受光素子24からLPF25およびHPF27に入力された送信部10から送信されたIrDA信号およびID信号は、LPF25によりID信号が分離されてID回路26に入力され、ID回路26によりID信号が復調される。復調されたデータは、例えばテキストデータとされ、このテキストデータはUSB制御回路29を介して端末30に供給される。そして、端末30の表示器35にテキストデータが表示されるようになる。また、HPF27によりIrDA信号が分離されてIrDA回路28に入力され、IrDA回路28によりIrDA信号が復調される。復調されたデータは、画像や音声あるいは動画等のデータとされる。端末30から表示制御信号がIrDA回路28に印加されると、IrDA回路28からの復調信号がUSB制御回路29を介して端末30に供給されるようになる。端末30では、画像や動画が表示器35に表示されると共に音声が含まれている場合は音声が再生される。これにより、端末30には送信部10から送信されたテキストのメッセージが表示されて、このメッセージに応じてユーザにより選択された画像や動画等を端末30のディスプレイに表示することができるようになる。
【0018】
また、送信部10が異なる設置場所に複数設置されて、各送信部10からそれぞれ異なる情報が送信されていると、複数の送信部10から送信されるそれぞれ異なる情報が複数の端末30において受信されることが考えられる。すなわち、送信部10と端末30とがn:nまたはn:1の状況の基では、所望のデータを端末30に表示するために端末30のユーザに複数の送信部10の状況を適切に知らせることが必要となる。そこで、まず、端末30はID信号を受信してID信号により送信されたインデックスに相当するテキストデータを取得する。この場合、専用受光素子24の各受光素子24aをスキャンしてどの位置の受光素子24aによりID信号が受光されたかを検出しておくが、複数のID信号が到来している場合は到来方向に対応する複数の位置の受光素子24aがそれぞれ異なるID信号を受光したことが検出される。そして、CCD22により取り込まれて端末30の表示器35上に表示されている対象画像における分割されたエリアであって、ID信号が検出された受光素子24aの位置のエリアに、当該エリアで受光されたテキストデータを重ねて表示する。
【0019】
次いで、ユーザが表示されたテキストデータを参照していずれかの画像上の文字をクリックすると、クリックされたエリアが選択されて、そのエリアの位置情報からなる制御信号が生成される。この制御信号は専用受光素子24に印加されて、制御信号で指示されたエリアの受光素子24aにおける受光信号が選択回路24bにより選択されて出力される。選択された受光素子24aは、送信部10からID信号と共に送信されたIrDA信号も受光しており、このIrDA信号がIrDA回路28に入力されて復調されるようになる。なお、端末30において画像上の文字がクリックされた際に、端末30はIrDA回路28に受信制御信号を印加し、この結果、IrDA回路28は復調されたIrDA信号を出力するように制御される。これにより、IrDA信号を復調することで得られた画像、音声や動画などのデータが、端末30に送られて表示器35上に表示されたり再生されるようになる。
【0020】
上記説明した第1実施例の可視光通信システム1の専用受光素子24において、受光素子24aをアレイ上に配列することに替えて単体の受光素子からなる専用受光素子としても良い。この場合は、受光素子がフォトダイオードとされ、受光素子の上に置かれたレンズ光学系により、対象物の状況が受光素子上に結像される。レンズ光学系によって受光範囲が絞られることから、ある特定方向しか受光しない指向性の鋭い受光システムとなり、背景光成分の除去および複数の発光信号源からの光信号を容易に分離することができるようになる。また、指向性が鋭いことを補うために受光素子の隣には、CCDまたはCMOS撮像素子などのイメージセンサとレンズ光学系が置かれて、対象物の状況が画像として取り込まれる。この画像に、受光素子の受光可能エリアを表示する事によって、ユーザはこの受光エリアに発光信号源である送信部10の位置を合わせる事でID信号を受信することができ、画面上にID信号を復調したテキストデータが表示されるようになる。このテキストの内容をみてテキスト上においてクリックもしくはボタンを操作することにより、上記したようにIrDA信号を受光素子により受光することで、画像や音声もしくは動画などを表示することができるようになる。
【0021】
次に、第1実施例の可視光通信システム1における送信部10の他の構成例を図3に示す。図3に示す送信部10においては、IrDA送信回路11およびID送信回路12と、白色LED13および赤外LED17と、処理部14と、ROM15およびRAM16とを備えている。IrDA送信回路11、ID送信回路12、処理部14、ROM15およびRAM16は前述した通りであるのでその説明は省略する。赤外LED17には、IrDA送信回路11からのIrDA信号が供給されて、このIrDA信号により赤外LED17から放射される赤外光の光強度が変調されて送信される。また、白色LED13は、照明装置を構成するLEDとされており、ID送信回路12からのID信号により放射される白色の可視光の光強度が変調されて送信される。なお、処理部14は、送信制御プログラムを実行することにより、ROM15あるいはRAM16から読み出した各種データをIrDA送信回路11およびID送信回路12に振り分けて送信させる処理を行っている。このような送信部10の構成にすると、携帯電話機に一般に備えられている既存の赤外線通信手段を利用して、送信部10の赤外LED17から放射される赤外光を受光することができ、送信されたデータを携帯電話機の表示器に表示することができるようになる。この場合、携帯電話機を向ける送信部10の位置は、白色LED13から放射される可視光を見ることで特定することができる。
【0022】
さらに、第1実施例の可視光通信システム1における送信部10のさらに他の構成例を図4に示す。図4に示す送信部10においては、IrDA送信回路11およびID送信回路12と、処理部14と、ROM15およびRAM16と、赤色LEDおよび緑,青LEDからなるLED18とを備えている。IrDA送信回路11、ID送信回路12、処理部14、ROM15およびRAM16は前述した通りであるのでその説明は省略する。LED18には、IrDA送信回路11からのIrDA信号が供給されて、このIrDA信号によりLED16における赤色LEDから放射される光の光強度が変調されて送信される。また、LED18にはID送信回路12からのID信号が供給されて、このID信号によりLED18における緑,青LEDから放射される光の光強度が変調されて送信される。LED18は、照明装置を構成するLEDとされており、LED18から波長多重されたID信号およびIrDA信号が送信される。なお、処理部14は、送信制御プログラムを実行することにより、ROM15あるいはRAM16から読み出した各種データをIrDA送信回路11およびID送信回路12に振り分けて送信させる処理を行っている。
【0023】
次に、本発明の第2実施例の可視光通信システムの構成を示す回路ブロック図を図5に示す。図5に示す第2実施例の可視光通信システム2は双方向通信が可能とされている。
図5に示す本発明の第2実施例とされる可視光通信システム2は、送信部40と、受光部50と端末30とを備えている。送信部40は、IrDA送受信回路41およびID送信回路42と、白色LED43と、受信用のフォトダイオード(PD)44と、処理部45と、ROM46およびRAM47とを備えている。CPUを備える処理部45は、管理プログラム(OS)を実行しており、送信部40の全体の動作をOS上で制御している。処理部45が実行する送受信制御プログラム等の動作ソフトウェアは不揮発性のROM46に格納されており、処理部45が処理を行う際に使用するワークエリアや各種データ等がRAM47に記憶されている。処理部45は、送受信制御プログラムを実行することにより、受信された情報に基づいてROM46あるいはRAM47から読み出した各種データをIrDA送受信回路41およびID送信回路42に振り分けて送信させる処理を行っている。白色LED43は、照明装置を構成するLEDとされ、PD44は赤外PDあるいは可視光PDとされている。
【0024】
IrDA送受信回路41は、IrDAの赤外線無線通信の規格とされ、データレートは115kbps,1Mbpsあるいは4Mbpsのいずれかとされており、送信のデータレートが高いことから画像や音声、動画等のデータが処理部45により振り分けられて送信される。ID送信回路42は、搬送周波数28.8kHz,データレート4.8kbpsとされて、データレートが低いことからテキストデータ等の低容量のデータが処理部45により振り分けられて送信される。IrDA送受信回路41からのIrDA信号およびID送信回路12からのID信号が合波されて白色LED43に供給されることにより、白色LED43から放射される可視光の光強度がIrDA信号とID信号とを合波した信号により変調される。白色LED43としては、蛍光体を用いた擬似白色LED,2波長白色LED,3波長白色LEDのいずれかとされる。また、PD44により受光された光信号がIrDA送受信回路41に入力されて復調される。処理部45は、ROM46あるいはRAM47から復調された信号に基づいて選択された情報を読み出し、白色LED43から送信されるように制御する。なお、ID送信回路42からは同じデータが繰り返し送信されている。
【0025】
端末30の概略構成は図2に示した通りであるので、その説明は省略する。
受光部50はUSBインタフェースを備えており、端末30に備えられているUSB I/F34のUSB端子に装着されて受光部50が一体に端末30と動作するようにされている。可視光通信システム2における送信部40の白色LED43が照明装置とされていることから、端末30に装着された受光部50を容易に送信部40に向けることができる。受光部50を送信部40に向けると、レンズ51aにより結像された対象画像がCCD51bで受像される。CCD51bにより受像された対象画像には送信部40の画像と周囲の画像とが含まれている。同時に、レンズ52aにより結像された対象画像が専用受光素子52bにより受光される。なお、レンズ52aはレンズ51aと略同方向を向いて並べて配置されている。複数の受光素子がアレイ状に配列された専用受光素子52bからは、白色LED43から送信されたIrDA信号およびID信号の信号成分が当たっている受光素子のみからの出力が取り出されてLPF54およびHPF56に入力される。
【0026】
専用受光素子52bの詳細構成は上記した図8に示す専用受光素子24と同様の構成とされているので、その説明は省略するが、端末30から専用受光素子52bに印加された制御信号により指示された受光素子で受光された信号が、専用受光素子52bから出力されるようになる。また、専用受光素子52bにおいて、IrDA信号およびID信号の信号成分が当たっている受光素子のみからの出力を取り出す制御方法は前述した通りであり、端末30の表示器35上の対象画像を参照して送信部40とされる照明装置が表示されているエリアをユーザが選択すると、選択されたエリアの位置情報が制御信号として端末30から専用受光素子52bに供給される。専用受光素子52bは制御信号に対応するエリアの受光素子からの出力のみを選択して出力する。これにより、受光部50におけるLPF54およびHPF56には、背景雑音の影響を極力受けることなく送信部40から送信されたIrDA信号およびID信号が入力されるようになる。
なお、CCD51bにおける分割されたエリア毎の受光信号のレベルを比較して、最大レベルのエリアを自動的に検出することで、検出したエリアを選択する位置情報とされる制御信号を自動的に生成して、専用受光素子52bに供給するようにしても良い。
【0027】
専用受光素子52bからLPF54およびHPF56に入力された送信部40から送信されたIrDA信号およびID信号は、LPF54によりID信号が分離されてID回路55に入力され、ID回路55によりID信号が復調される。復調されたデータは、例えばテキストデータとされ、このテキストデータはUSB制御回路58を介して端末30に供給される。そして、端末30の表示器35にテキストデータが表示されるようになる。このテキストデータは例えばメッセージやインデックスとされており、表示されたテキストデータの内容を見てユーザは送信部40から取得したい情報を選択する。この選択を受けて端末30は、選択情報を生成して受光部50に送り、受光部50はUSB制御回路58を介して送信用のLED53から選択情報を送信する。LED53はPD44に対応しており、可視光を発光するLEDでも赤外光を発光するLEDでもよい。
【0028】
LED53から送信された選択情報は、送信部40における受信用のPD44により受光され、IrDA送受信回路41で受信されて選択情報が復調される。処理部45は、この選択情報で指示された情報をROM46あるいはRAM47から読み出し、IrDA送受信回路41および白色LED43を介して受光部50に向けて送信するよう制御する。IrDA送受信回路41から送信された情報は、専用受光素子52bの上記選択されているエリアの受光素子により受光され、HPF56によりIrDA信号が分離されてIrDA回路57に入力され、入力されたIrDA信号が復調される。得られた画像や音声あるいは動画等のデータは、USB制御回路58を介して端末30に送られるようになる。端末30では、画像や動画が表示器35に表示されると共に音声が含まれている場合は音声が再生される。これにより、端末30にはユーザがリクエストした画像や動画等を端末30の表示器35に表示することができるようになる。
【0029】
また、送信部40と端末50とがn:nまたはn:1とされている場合は、端末30はID信号を受信してID信号により送信されたインデックスに相当するテキストデータを取得する。この場合、専用受光素子52bの各受光素子をスキャンしてどの位置の受光素子によりID信号が受光されたかを検出しておくが、複数のID信号が到来している場合は到来方向に対応する複数の位置の受光素子24aがそれぞれ異なるID信号を受光したことが検出される。そして、CCD51bにより取り込まれて端末30のディスプレイ上に表示されている対象画像における分割されたエリアであって、ID信号が検出された受光素子の位置のエリアに、当該エリアで受光されたテキストデータを重ねて表示する。次いで、ユーザが表示されたテキストデータのいずれかの画像上の文字をクリックすることにより、クリックされたエリアが選択されて、端末30においてクリックしたエリアの位置情報からなる制御信号が生成される。この制御信号は専用受光素子52bに印加されて、制御信号で指示されたエリアの受光素子における受光信号が選択されて専用受光素子52bから出力される。選択された受光素子は、送信部40からID信号と共に送信されたIrDA信号を受光しており、このIrDA信号がIrDA回路57に入力されて復調されるようになる。IrDA信号を復調することで得られた画像、音声や動画などのデータは端末30に送られてその表示器35上に表示されたり再生されるようになる。
【0030】
この場合においても、端末30のディスプレイに表示されたテキストの内容を見てユーザが送信部40から取得したい情報を選択すると、その選択情報がLED53を介して送信部40に送信され、選択情報を受信した送信部40の処理部45は選択情報で指定された情報をIrDA送受信回路41から白色LED43により受光部50に向けて送信する。これにより、受光部50における専用受光素子52bによりIrDA信号が受光され、このIrDA信号がHPF56で抽出されてIrDA回路57において復調される。これにより得られた画像や音声あるいは動画等のデータは、端末30に送られて表示されたり再生されるようになる。
【0031】
次に、第2実施例の可視光通信システム2における送信部40の他の構成例を図6に示す。図6に示す送信部40においては、IrDA送受信回路41およびID送信回路42と、赤外LED48と白色LED43と、受信用のPD44と、処理部45と、ROM46およびRAM47とを備えている。IrDA送受信回路41、ID送信回路42、受信用のPD44、処理部45、ROM46およびRAM47は前述した通りであるのでその説明は省略する。赤外LED48には、IrDA送受信回路41からのIrDA信号が供給されて、このIrDA信号により赤外LED48から放射される赤外光の光強度が変調されて送信される。また、白色LED43は、照明装置を構成するLEDとされており、ID送信回路42からのID信号により放射される白色の可視光の光強度が変調されて送信される。なお、処理部45は、送受信制御プログラムを実行することにより、受信された選択情報に基づいてROM46あるいはRAM47から選択的に読み出された各種データをIrDA送受信回路41およびID送信回路42に振り分けて送信させる処理を行っている。このような送信部40の構成にすると、携帯電話機に一般に備えられている既存の赤外線通信手段を利用して、送信部40の赤外LED48から放射される赤外光を受光することができ、送信されたデータを携帯電話機の表示器に表示することができるようになる。この場合、携帯電話機を向ける送信部40の位置は、白色LED43から放射される可視光を見ることで特定することができる。
【0032】
さらに、第2実施例の可視光通信システム2における送信部40のさらに他の構成例を図7に示す。図7に示す送信部40においては、IrDA送受信回路41およびID送信回路42と、受信用のPD44と、赤色LEDおよび緑,青LEDからなるLED49と、処理部45と、ROM46およびRAM47とを備えている。IrDA送受信回路41、ID送信回路42、受信用のPD44、処理部45、ROM46およびRAM47は前述した通りであるのでその説明は省略する。LED49には、IrDA送受信回路41からのIrDA信号が供給されて、このIrDA信号によりLED49における赤色LEDから放射される光の光強度が変調されて送信される。また、LED49にはID送信回路42からのID信号が供給されて、このID信号によりLED49における緑,青LEDから放射される光の光強度が変調されて送信される。LED49は、照明装置を構成するLEDとされており、LED49から波長多重されたID信号およびIrDA信号が送信される。なお、処理部45は、送受信制御プログラムを実行することにより、受信された選択情報に基づいてROM46あるいはRAM47から選択的に読み出された各種データをIrDA送受信回路41およびID送信回路42に振り分けて送信させる処理を行っている。
【0033】
以上説明した第1実施例の可視光通信システム1および第2実施例の可視光通信システム2において、USBインタフェースを介して受光部20(50)を端末30に装着することに替えて、端末30に受光部20(50)を内蔵させるようにしても良い。この場合、端末30が携帯電話機とされた場合は、既存のカメラをCCD22(51b)として兼用することができることから、携帯電話機のケースには既存のカメラのレンズに専用受光素子用のレンズが並べられて配置されるようになる。また、送信部10(40)からIrDA信号が赤外光で送信される場合は、携帯電話機に一般に設けられているIrDA通信機能を利用してIrDA信号を受信することができる。
【0034】
次に、本発明の第3実施例の可視光通信システム3の構成を図9に示す。
図9に示す第3実施例の可視光通信システム3は、送信装置60と、送信装置60から送信された可視光および赤外光を受光する受信装置70として携帯電話機71やハンディタイプのPC72を備えている。送信装置60と受信装置70とされる携帯電話機71やPC72との間は単方向通信とされている。送信装置60は、処理部61と、ROM62およびRAM63と、通信I/F64と、IrDA送信回路65およびID送信回路66と、赤外LED67および白色LED68とを備えている。通信I/F64は、ローカルエリアネットワーク(LAN)に接続するLANアダプタとされている。他の構成要素は、図1に示すIrDA送信回路11ないしRAM16と同様とされているのでその説明は省略する。照明装置内に内蔵される赤外LED67には、IrDA送信回路65からのIrDA信号が供給されて、このIrDA信号により赤外LED67から放射される赤外光の光強度が変調されて送信される。また、白色LED68は照明装置を兼用するLEDとされており、ID送信回路66からのID信号により放射される白色の可視光の光強度が変調されて送信される。なお、処理部61は、送信データ処理を実行することにより、ROM62あるいはRAM63から読み出した各種データをIrDA送信回路65およびID送信回路66に送信させる処理を行っている。
【0035】
携帯電話機71には、赤外LED67からの赤外光を受けるIrDA窓71aがケースに設けられており、内蔵するIrDA送受信回路によりIrDA信号を復調することができる。また、携帯電話機71にはディスプレイ71bとテンキーやボタンからなる操作子71cとが設けられている。携帯電話機71は、携帯電話網7に無線接続されて他の携帯電話機等の間で通話やメールのやりとりを行うことができると共に、インターネット4にアクセスしてインターネット上の各種データを取得することができる。また、PC72はUSB端子およびLANアダプタを備えており、USB端子には図1に示す受光部20と同様の構成とされた受光部73が装着されており、受光部73において赤外LED67からの赤外光および白色LED68からの可視光を受光してID信号およびIrDA信号が復調される。LANアダプタはLAN8に接続されており、PC72は、LAN8を介してインターネット4にアクセスしてインターネット上の各種データを取得することができる。受信装置70では、送信装置60における照明装置とされる白色LED68から放射される可視光を視認することで、携帯電話機71やPC72を送信装置60に向けることができる。また、ID信号あるいはIrDA信号は課金システムに対応できないため無償の情報配信が予想され、これらを有効に使うことで携帯電話網やLANへの接続時間を短縮して課金を抑える事ができるようになる。
【0036】
送信装置60は異なる場所や部屋毎にそれぞれ設置され、各送信装置60はLAN6上のデータベース(DB)5から当該送信装置60に適した配信情報を読み出して、この配信情報を繰り返し送信している。この場合、送信装置60はROM62に格納された送信データ処理を起動して、配信情報を生成して送信している。携帯可能な受信装置70においては、現在いる場所に照明装置として設けられている送信装置60から受信した配信情報の中から、受信装置70が保持するプロファイル情報(送信機情報,受信時間,利用サービス履歴)に基づいて半自動的にユーザの求める情報を抽出してディスプレイ71b、72aに表示するようにしている。この場合、受信装置70とされる携帯電話機71やPC72では受信データ処理を起動することにより、ユーザの求める情報を半自動的に選択して表示している。
【0037】
可視光通信システム3では、単方向通信とされていることから送信装置60の出力を増やすだけで通信可能距離が増加できるようになる。また、送信装置60では可視光通信および赤外光通信の帯域幅の制限から逐次莫大な情報を配信することはできないことから、ID送信およびIrDA送信では可変とされる必要情報のみを送信するようにして、ほぼ変化しない最終表示用の画像部品等の固定的なデータとされるデータセット情報をサービス初回利用時にインターネット4を通じて取得し、受信装置70とされる携帯電話機71やPC72に保存しておく。加えてアクセス毎のリクエスト情報を、リクエストした携帯電話機71やPC72にプロファイル情報として保持しておくと、次回利用時にプロファイル情報を参照することにより半自動的にユーザの求めるデータを表示することができる。これによって、ユーザは2回目以降の同一あるいは近傍の送信装置60による同一サービス利用時に受信データ処理を起動して保持されている情報を読み出すことにより、即時に志向しているサービスをディスプレイに表示することが可能となる。
【0038】
なお、送信装置60で実行される送信データ処理では、各カテゴリについてインターネット4やデータベース5のいずれかまたはその両方を通じて必要な情報を取得することにより、各カテゴリの中間データが生成される。そして、各送信装置60を特定するための送信装置識別情報(ID)、位置情報および生成時刻を中間データに付与することにより生成された送信データをRAM63に一時的に保存する。次いで、RAM63に一時的に保存された送信データを読み込んで送信する動作を繰り返し行う。また、受信装置70で実行される受信データ処理では、復調された受信情報のファイルを読み込み予め指定された内部の記憶手段に保存する。そして、保存された受信情報ファイルを読み出して表示用データを作成しディスプレイに受信情報を表示する。
【0039】
送信装置60から送出される送信データは所定のフォーマット(例えば、XML等)の単一ファイルとされている。この送信データのデータ構造を図11に示す。
図11に示すように送信データは、送信装置60の送信装置ID、位置情報および生成時刻の時刻情報からなる「送信装置情報」と、受信したデータを解釈して表示するための各カテゴリの外部サブセット,画像データ,表示フォーマットデザインからなるデータセット情報のインターネット上の場所を示すURI(Uniform Resource Identifier)からなる「カテゴリ1のデータセット・URI」、「カテゴリ2のデータセット・URI」・・・・と、各カテゴリのデータとされる「カテゴリ1の情報」、「カテゴリ2の情報」・・・・・から構成されている。このように、可変されることなく固定とされるデータセット情報はインターネット4を介して、各受信装置70が取得するようにされる。また、受信装置70において取得されたデータセット情報は受信装置70に保存されることから、データセット情報は初回利用時にだけ取得すればよいことになる。
【0040】
次に、受信装置70とされる携帯電話機71やPC72で実行される受信データ処理のフローチャートを図10に示す。このフローチャートをサービス例を挙げて以下に説明する。このサービスは大学構内に於ける学事情報の提供サービスの例とされる。なお、IrDA送信回路65およびID送信回路66からは図11に示すデータ構造の同じ内容の送信データが繰り返し送信されている。
大学構内の教室内および廊下に設置されている照明装置は上記した送信装置60とされており、この送信装置60のいずれかに受信装置70とされる携帯電話機71あるいはPC72を向けて受信データ処理を起動すると、ステップS10にて可視光ID通信のID信号あるいは赤外光通信のIrDA信号が受信されたか否かが判断される。ここで、ID信号あるいはIrDA信号が受信されないと判断された場合は受信データ処理は終了するが、ID信号あるいはIrDA信号が受信されたと判断された場合はステップS11に進み受信されたID信号あるいはIrDA信号が復調されて受信装置70のディスプレイ71b,72aに当該情報が表示される。この表示を見てユーザは受信するか否かを判断するが、ステップS12にてユーザが情報を受信する操作をしたと判断されるとステップS13に進む。また、ステップS12にてユーザが情報を受信しない操作をしたと判断された場合は受信データ処理は終了する。
【0041】
ステップS13では、受信されたID信号あるいはIrDA信号から送信装置60の位置情報および現在の時刻情報を読み出すと共に、受信データのデータセットリストが取得される。さらに、受信装置70に保存されているローカルで取得されたデータセットのリストおよびローカルのプロファイル情報が読み込まれる。次いで、ステップS14にてプロファイル情報内に、今回受信されたID信号あるいはIrDA信号を送信した送信装置60と同一の送信装置、もしくは近傍の送信装置の履歴があるか判断される。ここで、履歴がないと判断された場合は、ステップS20に分岐してサービスのカテゴリリストのデータが受信データから抽出されて、抽出されたデータに基づいてカテゴリリストが表示され、ユーザの入力待ちとされる。表示されるサービスのカテゴリリストが表示される表示画面の一例を図12に示すが、この表示画面では「この場所で利用できるのは以下のサービスです。」と表示され、続いて「『休講補講情報』『教室誘導』『現在講義中授業』」からなるカテゴリリストが表示される。ユーザが表示されたカテゴリリストを見て受けたいサービスのカテゴリを選択する指示を行うとステップS21に進む。
【0042】
ここで、ユーザが受けるサービスとして『休講補講情報』のカテゴリを選択した場合は、ステップS21にてインターネットに接続することができるか否かが判断され、インターネット接続できると判断された場合はステップS22に進む。そして、ステップS22にてインターネットにアクセスして選択したカテゴリ用のデータセットが取得される。また、ステップS14にてプロファイル情報内に同一あるいは近傍の送信装置の履歴があると判断された場合は、ステップS15に進み、利用したカテゴリに一致するものがあるか、および、そのカテゴリのデータセットがローカルにあるかが判断される。ここで、初回アクセス時には受信装置70とされるローカルの記憶手段に履歴の記録がないことからデータセットがないと判断されてステップS21に進み、ステップS21およびステップS22の処理が行われることにより、前記したようにインターネット4にアクセスしてデータセットが取得される。なお、ステップS21にてインターネットに接続することができないと判断された場合は、受信データ処理は終了する。また、ステップS22の処理が終了した場合、あるいは、ステップS15にて利用したカテゴリに一致するものがあって、データセットがローカルにあると判断された場合はステップS16の処理が行われる。
【0043】
ステップS16では、データセットとプロファイル情報を使用して受信データから選択したカテゴリあるいは一致したカテゴリにおいて表示する表示内容の受信データからの抽出が行われる。この場合、『休講補講情報』のカテゴリの表示内容を抽出するためにはユーザが受講している科目種別や学科の情報が必要とされる。しかし、初回利用時にはユーザの受講情報がないため、受講情報を入力する表示画面に関するデータがインターネット4を介して取得され、受信装置70のディスプレイ71b,72aに図13に示すユーザの受講情報を入力する表示画面が表示される。この表示画面では、「講義の種類を選んでください」と表示されて、続いて科目種別のリストとして『一般教養』、『数学』、『物理』、『化学』、『機械』、『電気』、『情報』、『その他』からなるリストが表示され、学科別のリストとして『機械工学科』、『電気工学科』、『応用化学科』、『計測工学科』、『管理工学科』からなるリストが表示される。そして、ステップS17にてユーザ入力が必要か否か判断されて、ユーザ入力が必要と判断された場合はステップS23に進み、ユーザ入力が必要でないと判断された場合はステップS18に進む。ここで、ステップS23にてユーザにより受信装置70の操作子71c,72bが操作されて、例えば、科目種別の「物理」が選択される操作が行われたとする。
【0044】
これにより、表示データとしてチェックボックスリストが生成されて受信装置70のディスプレイ71b,72aに表示される。このチェックボックスリストにユーザが操作子71c,72bを操作して受講科目を入力したチェックボックスリストの表示画面を図14に示す。図14に示す表示画面では、チェックボックスリストにおける『磁気科学』、『材料力学』、『固体物理学』、『物理化学』が受講科目とされ、『ハミルトン力学』、『量子力学』、『統計物理学』、『連続体力学』、『低温物理学』の科目は受講されていないことが示されている。ここで入力された受講科目等の情報はプロファイル情報に保存され、次回以降も参照される。ステップS17にてユーザ入力が必要でないと判断された場合、および、チェックボックスリストへのユーザ入力が終了した場合はステップS18に進む。
【0045】
ステップS18では、更新されたプロファイル情報と取得した送信装置60の位置とされる提供教室および現在時刻にマッチする最終的に表示する『休講補講情報』に関するデータが受信データから抽出されて、抽出されたデータに基づいて表示データが生成されて、ステップS19にて受信装置70のディスプレイ71b,72aに表示される。表示される『休講補講情報』のカテゴリの表示画面の一例を図15に示す。図15を参照すると、「現在あなたのいる14−202教室では『分散処理』の授業が行われています。あなたはこの講義を受講していません。最下段のリンクから登録して下さい。」と表示される。続いて、ユーザの受講科目の情報に基づいて「今水曜3時限目に受講している講義はありません」と表示されると共に、さらに、「休講情報 10/02 物理化学 10/09 物理化学」と表示されると共に、「補講情報 01/30 物理化学 教室12−108」と表示される。さらに続けて、現在ユーザがいる教室で行われている『分散処理』の授業を受講科目として登録するための「>>登録講義を変更する」との表示がされる。
【0046】
次回以降においては、受信装置70には大学構内に於ける学事情報の提供サービスを受ける際のデータセットおよび登録科目情報がプロファイル情報内にあることから、教室において送信装置60のいずれかに受信装置70とされる携帯電話機71あるいはPC72を向けて受信データ処理を起動させただけで、最終出力とされる『休講補講情報』の表示画面が受信装置70のディスプレイ71b,72aに表示されるようになる。また、ステップS16の処理において、カテゴリを選択可能な表示画面を表示するようにして、ステップS17およびステップS23の処理において例えば、新しく『現在講義中授業』のカテゴリが選択された場合は、前記した処理と同様の処理が行われてデータセットとプロファイル情報を使用することで、受信データ中からこのカテゴリにおいて表示する表示内容が抽出されることで、講義中の科目と講義中の教室とが表示される『現在講義中授業』の表示データが生成されて、その表示画面が表示されるようになる。また、『教室誘導』のカテゴリが選択された場合は、現在の位置が送信装置60の位置情報の位置とされることから、送信装置60の教室から行き先の教室へのナビゲーション情報を表示する。この場あり、誘導ルートを表示した地図を表示するようにしても良い。この後においては、『休講補講情報』をデフォルトにするか『現在講義中授業』『教室誘導』をデフォルトにするかは、ユーザに任意に選択させたり、あるいは、データセット内に条件式を定義(例:利用頻度が高い方を優先)したり、または、可視光ID内に条件情報を入れることで決定するようにすればよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
以上説明した本発明において、送信部(送信装置)、端末や受信装置にハードディスク等の大容量記憶装置を設けて、大容量記憶装置に各種ソフトウェアや各種データを格納するようにしても良い。
また、以上説明した第3実施例の可視光通信システム3においては単方向通信とされていることからユーザからのリクエストを受け付けることはできず、掲示板のようにその場にいる不特定多数のユーザに配信が行われる。配信を受けたユーザは、必要に応じてインターネットから追加の情報を得るようにする。ただし、管理者においては送信装置60および受信装置70がインターネットに接続可能とされているので、インターネット4を通じて受信装置70からリクエストを送信装置60に送ることが可能となる。この場合、リクエストを受けた送信装置60は、リクエストされたデータをIrDA送信回路65および赤外LED67を介して送信し、送信されたデータを受信装置70が受信して、受信したデータをディスプレイに表示することができるようになる。
さらに、第3実施例の可視光通信システム3においては、IrDA送信回路65およびID送信回路66から同じ内容の送信データが送信されていたが、画像データ等を含むデータセット情報をインターネットから取得することに替えてデータレートの高いIrDA送信回路65から送信し、テキストベースのデータをID送信回路66から送信するようにしても良い。この場合には、携帯電話機71に可視光ID通信機能を備えさせる必要がある。
さらにまた、携帯電話機71に可視光ID用のレンズおよび専用受光素子を追加して設けるようにしても良い。この場合、追加されたレンズはIrDA窓71aと同方向を向くように並べて配置されるのが好適とされる。さらにまた、本発明の可視光通信システムにおいて、受光部をUSBにより端末に接続するようにしたが、USBに限ることはなくIEEE(Institute of Electrical and Electronic Engineers )1394やCardBus等の端末(PC)と周辺機器とを結ぶ公知のデータ伝送路を利用して受光部を端末に接続しても良い。
【符号の説明】
【0048】
1 可視光通信システム、2 可視光通信システム、3 可視光通信システム、4 インターネット、5 データベース、6 LAN、7 携帯電話網、8 LAN、10 送信部、11 IrDA送信回路、12 ID送信回路、13 白色LED、14 処理部、15 ROM、16 RAM、17 赤外LED、20 受光部、21 レンズ、22 CCD、23 レンズ、24 専用受光素子、24a 受光素子、24b 選択回路、24c 除去回路、24d I→V変換回路、25 LPF、26 ID回路、27 HPF、28 IrDA回路、29 USB制御回路、30 端末、31 CPU、32 RAM、33 ROM、34 USB I/F、35 表示器、36 操作子、37 バス、40 送信部、41 IrDA送受信回路、42 ID送信回路、43 白色LED、44 PD、45 処理部、46 ROM、47 RAM、48 赤外LED、49 LED、50 受光部、50 端末、51a レンズ、51b CCD、52a レンズ、52b 専用受光素子、53 LED、54 LPF、55 ID回路、56 HPF、57 IrDA回路、58 USB制御回路、60 送信装置、61 処理部、62 ROM、63 RAM、64 通信IF、65 IrDA送信回路、66 ID送信回路、67 赤外LED、68 白色LED、70 受信装置、71 携帯電話機、71a IrDA窓、71b ディスプレイ、71c 操作子、72 PC、72a ディスプレイ、72b 操作子、73 受光部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信データで変調された可視光を送信する送信部と、該送信部から送信された可視光を受光して通信データを復調する受信部と、該受信部で復調された通信データを表示する表示部とを備える可視光通信システムであって、
前記送信部は、
通信データにより変調された赤外線通信信号を出力する赤外線通信送信回路と、
通信データにより変調された可視光通信信号を出力する可視光通信送信回路と、
前記赤外線通信信号と前記可視光通信信号との合波信号により強度変調された可視光を放射する照明を兼用する発光素子とを備え、
前記受信部は、
対象画像を撮像する受像手段と、
該受像手段の周辺に配置され、前記発光素子から放射された可視光を受光可能なアレイ状に配列された複数の受光素子から構成されている専用受光手段と、
該専用受光手段における前記複数の受光素子の内のいずれかの受光素子から出力された受光信号が入力され、該受光信号から前記赤外線通信信号を復調して出力する赤外線通信受信回路と、
前記専用受光手段における前記複数の受光素子の内のいずれかの受光素子から出力された受光信号が入力され、該受光信号から前記可視光通信信号を復調して出力する可視光通信受信回路とを備え、
前記表示部は、
前記受像手段が撮像した対象画像を表示すると共に、該表示のエリアを前記専用受光手段における各受光素子の受光エリアを対応付けて複数のエリアに分割する表示手段と、
分割された表示のエリアのうちの前記発光素子から放射された可視光を受光するエリアが指定可能とされ、前記エリアのいずれかが指定された際に、指定されたエリアに対応する受光素子が受光した受光信号が、前記専用受光素子から前記赤外線通信受信回路および前記可視光通信受信回路に出力されるように制御する制御手段とを備え、
ていることを特徴とする可視光通信システム。
【請求項2】
前記送信部において、赤外光を放射する赤外光発光素子が設けられており、前記赤外光通信信号により前記発光素子から放射される可視光を強度変調することに替えて、前記赤外光発光素子から放射される赤外光を強度変調するようにしたことを特徴とする請求項1記載の可視光通信システム。
【請求項3】
前記送信部における発光素子が、赤色発光素子と緑・青発光素子からなり、前記赤外光通信信号により前記赤色発光素子から放射される可視光が強度変調されると共に、前記可視光通信信号により前記緑・青発光素子から放射される可視光が強度変調されることを特徴とする請求項1記載の可視光通信システム。
【請求項4】
前記受信部に、指示信号により変調された光信号を前記送信部に送る第2発光素子が設けられ、
前記送信部に、前記受信部から送られた前記指示信号により変調された光信号を受光する第2受光手段が設けられて、該第2受光手段から出力された前記指示信号に応じた通信データが選択されて、選択された通信データが前記赤外線通信送信回路を介して前記送信部から前記受信部に送られるようにしたことを特徴とする請求項1記載の可視光通信システム。
【請求項5】
配信する情報で変調された可視光および赤外光を送信する送信装置と、該送信装置から送信された可視光または赤外光を受光して配信された情報を受信し、受信した情報から表示に必要な情報を抽出して表示する受信装置とを備える可視光通信システムであって、
前記送信装置は、
サービスを提供するための情報であって、可変とされる情報を可視光および赤外光を利用して繰り返し送信する送信手段を備え、
前記受信装置は、
前記送信装置から送信された可変とされる情報を受信すると共に、受信した情報を解釈して表示するためのデータセット情報を初回利用時にインターネットを通じて取得する受信手段と、
サービスにアクセスした毎の送信装置情報および受信時間と、利用サービス履歴とを含むプロファイル情報を保存する保存手段と、
前記受信手段で取得された情報の内から、前記保存手段から読み出した前記プロファイル情報に基づいて表示するデータを抽出し、抽出したデータを表示手段に表示する制御手段とを備え、
ていることを特徴とする可視光通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−55397(P2011−55397A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−204419(P2009−204419)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度 独立行政法人情報通信研究機構との委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(899000079)学校法人慶應義塾 (742)
【Fターム(参考)】