説明

可視的な圧縮部位を有する予め湿潤された不織布ウェブ

本開示は、布様質感の知覚を与える可視的圧縮部位を有する、予め湿潤されたウェブ及び拭取り用品に関する。本開示はまた、ウェブが予め湿潤されている時に可視的なままである、ウェブの表面上の少なくとも1つの圧縮部位を有する非熱可塑性繊維で作られた不織布ウェブに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予め湿潤された使い捨て不織布ウェブ、及びそれから成る拭取り用品に関する。
【背景技術】
【0002】
予め湿潤された使い捨て不織布拭取り用品、特に乳児用拭取り用品の消費者は、経済的な、柔らかい布様の拭取り用品を要望する。消費者は、拭取り用品の評価に際して、視覚的及び触覚的特性に反応する。従って、予め湿潤された不織布拭取り用品上の布様質感の存在は、拭取り用品が布の特性を有することを消費者に示すことができる。
【0003】
予め湿潤された使い捨て拭取り用品は、典型的には不織布ウェブで作られている。布様質感を有する不織布ウェブを提供するための様々な方法が、当該技術分野において既知である。しかしながら、ウェブが予め湿潤されている時に質感が可視的であるために、その方法は、ウェブを作り上げている繊維の物理的又は化学的結合を必要とすることがある。例えば、可視的質感は、熱カレンダー結合を介して熱可塑性繊維を含む不織布ウェブに適用されることがある。このプロセスでは、隣接した熱可塑性繊維は、圧縮され、互いに溶融結合される。更なる例では、接着剤が繊維に適用されることがある。例えば、プロクター・アンド・ギャンブル社(Procter & Gamble Company)(オハイオ州シンシナティ(Cincinnati))がパンパース(PAMPERS)(登録商標)キッド・フレッシュ(Kid Fresh)(商標)拭取り用品を北米で市販しており、これは、カレンダーエンボス(calender embossed)デザインの圧痕形成を包含する、エアレイド接着結合法を介して製造される不織布基材を含む。別の例では、樹脂により、同じくプロクター・アンド・ギャンブル社(Procter & Gamble Company)によって市販される100%セルロース性のバウンティー(Bounty)(登録商標)ペーパータオル(Paper Towels)などにおいて、湿潤時にエンボス加工領域をまとめてもよい。
【0004】
化学物質、結合剤、樹脂、及び同種のものなどの、添加物の使用は、予め湿潤された不織布拭取り用品の製造コストを上昇させることがある。同様に、熱可塑性繊維などの石油系生産物の価格上昇が、コストを上昇させることがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
経済的な、柔らかい布様の拭取り用品を消費者に提供するためには、従って、質感を維持するために化学物質、結合剤、樹脂、及び同種のものを使用せずに湿潤状態に耐える可視的な布様質感を有する非熱可塑性繊維から本質的に成る、予め湿潤された不織布拭取り用品を提供するのが望ましいであろう。更に、そうするための方法を提供するのが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、非熱可塑性繊維から本質的に成るとともに、布様質感の知覚を与え得る非溶融繊維を含む可視的圧縮部位を有する、予め湿潤されたウェブ及び拭取り用品に関する。
【0007】
意外にも、本発明者は、圧縮部位は、本発明のウェブ及び拭取り用品が圧縮部位において溶融結合し得る熱可塑性繊維を含有しないにもかかわらず、湿潤時に可視的なままであることを発見している。更に意外なことには、本発明者は圧縮部位は、圧縮部位における繊維を化学的に結合する結合剤の物質的な量(material amount)を必要とせずに、可視的なままであることも見出している。それ故、本発明の圧縮部位の浸潤時可視性(wet visibility)は、化学物質又は過度の結合剤の適用を介して又は熱可塑性繊維の溶融結合などにより繊維を相互結合することによる、当該技術分野において既知の方法を使用せずに達成される。
【0008】
一実施形態では、本発明は、非熱可塑性繊維から本質的に成る不織布ウェブに関し、少なくとも約20%の非熱可塑性繊維は、少なくとも約18ミリメートル(mm)の繊維長を有する。不織布ウェブは、その表面上に位置する少なくとも1つの圧縮部位を有する。圧縮部位は、非溶融繊維を含み、ウェブが予め湿潤されている時に可視的である。
【0009】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも1つの可視的な圧縮部位を有する予め湿潤された不織布ウェブを作製する方法に関する。当該方法は、次の諸工程を含む。1つの工程では、表面を含む少なくとも1つの不織布ウェブが提供される。不織布ウェブは、非熱可塑性繊維を含み、少なくとも約20%の非熱可塑性繊維は、少なくとも約18mmの繊維長を有する。更なる工程では、少なくとも約200ニュートン(N/m2)毎平方メートルの圧縮応力がウェブに加えられて、ウェブの表面上に少なくとも1つの圧縮部位を生み出す。更なる工程では、拭取り用品は予め湿潤される。
【0010】
更に別の実施形態では、本発明は、カード加工及びスパンレース加工されたウェブを含む予め湿潤された拭き取り用品に関する。次に、カード加工及びスパンレース加工されたウェブは、(a)約20%〜約80%のレーヨン繊維と約80%〜約20%のパルプ繊維であって、該レーヨン繊維が少なくとも約18mmの繊維長を有する繊維;(b)表面;及び(c)非溶融繊維を含む複数個の圧縮部位から成る。圧縮部位は、表面上に位置しており、ウェブが予め湿潤されている時に可視的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
定義
本明細書で使用する時、「繊維」は、本明細書に開示されるウェブの基本的要素を形成する単位を称する。
【0012】
「不織布ウェブ」又は「ウェブ」は、本明細書において交換可能に使用され、また当該技術分野において既知の不織布製造プロセスを介して載置及び結合される単層又は複層の繊維を称する。本明細書で使用する時、「拭取り用品」は、1以上の層のウェブから成る物品を称する。
【0013】
本明細書で使用する時、「非熱可塑性繊維」は、熱に曝されると軟化するか又は溶融し、室温に冷却されるとその最初の状態に戻る熱可塑性繊維の機能を果たさない繊維を称する。
【0014】
本明細書で使用する時、「表面」は、ウェブ又は拭取り用品の二次元の外層又は表層を称する。
【0015】
本明細書で使用する時、「圧縮応力」は、ウェブに加えられる時に「圧縮部位」を作り出す、鈍力を称する。圧縮応力は、ウェブに加えられる時にウェブを構成する繊維を切断する、剪断力を包含してはならない。圧縮応力は、1平方ミリメートル当たりのニュートン(N/mm2)の単位で測定される。
【0016】
本明細書で使用する時、「圧縮部位」は、ウェブの区域を称し、ここでウェブを構成する繊維は共に押圧され、それによって、この繊維は、非圧縮領域内に位置する繊維に比べて空間内で互いに更に密集される。圧縮部位は、非圧縮領域に比べ、より高い繊維密度を有してもよい。
【0017】
本明細書で使用する時、「非溶融繊維」は、圧縮部位における繊維を称し、これらは、鈍力によって圧縮されて、繊維の軟化又は溶融のない、従って繊維間の結合のない、即ち、分子レベルでの繊維間の混合のない機能的な固体材料を形成する。従って、圧縮部位における1本の繊維をつかんで引張ることができるならば、この繊維は、圧縮部位における他の繊維から分離するであろう。
【0018】
本明細書で使用する時、「非圧縮領域」は、圧縮部位を含有しないウェブの区域を称する。ウェブの非圧縮領域を構成する繊維は、ウェブが圧縮応力に付された後、形態が実質的に変わらないままであってもよい。
【0019】
本明細書で使用する時、「可視的」は、卓上ランプなどの固定具内に挿入された60ワット一般白熱電球の妨げられていない光の下で、30.5cm(12インチ(in))又は30.48センチメートル(cm)の距離で見る時、肉眼で見えることを称する。
【0020】
本明細書で使用する時、「液体組成物」は、水などの純粋な液体、コロイド、エマルション、懸濁液、溶液、ローション、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない、いかなる液体をも称する。本明細書で使用する時、用語「水溶液」は、少なくとも約20重量%、少なくとも約40重量%、又は更に少なくとも約50重量%が水であり、また最高約95重量%が水であり、約90重量%が水であり、又は更に最高約80重量%が水である溶液を称する。
【0021】
本明細書で使用する時、「予め湿潤された」は、消費者によって使用される前に、液体組成物で湿潤された状態であるか又は湿潤状態の部分から成るウェブ又は拭取り用品を称してもよい。「予め湿潤された」はまた、例えば一般に水分不透過性容器又は包装材の中にパッケージ化される前に、液体組成物で湿潤された状態のウェブ又は拭取り用品を称してもよい。かかる予め湿潤された拭取り用品は、「ウェットワイプ」及び「ウェットティッシュ(towelettes)」と呼ばれることもあり、乳児、子供及び成人に関する洗浄作業の使用に適していてもよい。かかる拭取り用品はまた、メークアップ、皮膚コンディショナー、軟膏、医療品、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない、物質を身体に適用する際の使用に適していてもよい。かかる拭取り用品はまた、ペットを洗浄するか又は手入れをするために、又は家庭台所及び浴室表面、眼鏡、運動及び体操器具、自動車表面などの、表面及び物体を一般洗浄するために使用されてもよい。
【0022】
本明細書で使用する時、「印刷」は、審美的魅力を提供するために、ウェブ又は拭取り用品の表面に追加されるあらゆるインク又はポリマーを称する。印刷は、しるし、図、模様、文字、写真、単語、語句、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない、あらゆる形態をとってもよい。
【0023】
本明細書で使用する時、「結合剤」は、その構成要素繊維を互いにを結合することによって、即ち、化学結合を介してウェブの強度を改善する可能性のある、不織布ウェブに添加されるあらゆる化合物を称する。幾つかの結合剤は、ウェブが廃棄中又は廃棄後に遭遇する状態に付される時、ウェブから解離してもよい。かかる状態としては、多量の水、特定のpH、特定のイオン濃度を有する水、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。結合剤を含むウェブが特定の状態に曝される時、結合剤は、例えば、溶解することがある。結合剤が溶解する時、ウェブの強度が低下することがあり、その結果、ウェブの分散性が増大することがある。結合剤は、例えば、水溶性、水膨潤性、及びこれらの組み合わせであってもよい。ポリビニルアルコール(PVOH)、及びエアプロダクツ(Air Products)(米国ペンシルベニア州アレンタウン(Allentown))によって販売されるフラッシャブルな分散性結合剤であるEP919は、結合剤の非限定例である。結合剤の更なる例としては、スルホン酸変性PVOH、カルボン酸変性PVOH、並びに水溶性有機塩、水溶性無機塩、及びホウ素化合物から成る群から選択される少なくとも1つの化合物を含む結合剤を挙げてもよいが、これらに限定されない。結合剤の更なる非限定例としては、非水溶性又は水膨潤性カルボキシメチルセルロースを挙げてもよい。カルボキシメチルセルロースの溶解度は、他の要因の中で特に、そのエーテル化及びpHの程度に依存することがある。
【0024】
本明細書で使用する時、「水溶性」は、摂氏約25度で少なくとも約0.25重量%のレベルで水に可溶性であるか又は(例えばミセル溶液を提供するように)分散性である成分を称する。
【0025】
材料組成物に関して本明細書で使用する時、用語「%」、「百分率」、「重量百分率」又は「重量%」は、特に示さない限り、全重量の百分率としての成分の量を称する。
【0026】
ウェブに関して本明細書で使用する時、用語「機械方向」又は「MD」は、例えば商業用不織布製造機器上でウェブを製造する時、ウェブが移動する方向を称する。同様に、用語「横断方向」又は「CD」は、機械方向に対して垂直で、且つ層状の繊維性製品及び/又は層状の繊維性構造体の包括的な平面に対して平行な方向を指す。個々の拭取り用品について、これらの用語は、拭取り用品を製造するのに用いられるウェブに関する拭取り用品の対応する方向を指す。試験中に不織布ウェブがどのように方向付けられているかに応じて不織布ウェブの機械的特性に差がある場合があるので、これらの方向は本明細書では注意深く区別する。例えば、ウェブの伸張特性は、構成繊維の配向及び他のプロセスに関連する要因のために、機械方向と横断方向で異なってもよい。
【0027】
本明細書で使用する時、「含む」又は「から成る」は、本発明を実施する際に結合して使用してもよい様々な構成要素、成分、又は工程を称する。それ故に、用語「含む」又は「から成る」は、より限定的な用語「から実質的に成る」及び「から成る」を包含してもよい。
【0028】
本明細書で使用する時、「界面活性剤」は、界面の方へ好ましく方向付けることのある物質を称する。界面活性剤の種類としては、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤(amphoteric surfactant)、双極性界面活性剤、及びこれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。
【0029】
「乳化剤」及び「可溶化剤」は、本明細書で交換可能に使用されてもよく、またローション組成物中の1以上の他の成分がローションから相分離する傾向を軽減することのある成分を称する。
【0030】
本明細書で使用する時、「補助界面活性剤」は、界面活性剤又は乳化剤/可溶化剤のいずれかとして作用することのある成分を称する。
【0031】
本明細書で使用する時、「水溶性有機ポリマー」は、モノマーと称されるより小さな分子の結合により形成される有機化合物を称する。その用語は、例えば、ポリペプチド、核酸、多糖類、及びプラスチックのような、共有結合により結合した多数のモノマーで構成されている巨大分子か、又は例えばヘモグロビン若しくはIBM免疫グロブリンのような、共有又は非共有結合により結合した幾つかのサブユニットで構成されているタンパク質かのいずれかを称するために用いられてもよい。
【0032】
不織布ウェブ
本発明の不織布ウェブは、当該技術分野において既知の繊維載置及び繊維結合法を介して作製されてもよい。有用な繊維載置法としては、スパンレイ加工、メルトブロー加工、カード加工、エアレイ加工、ウェットレイ加工、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。有用な繊維結合工程としては、スパンレース加工(即ち、水流交絡)、低温カレンダー加工、高温カレンダー加工、エアースルー結合、化学結合、ニードルパンチ加工、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。柔軟で、可撓性の、布様の本発明のウェブを生産するための1つの好ましい方法は、繊維をカード加工及びスパンレース加工することによるものである。
【0033】
本発明の不織布ウェブは、非熱可塑性繊維から本質的に成る。本明細書で使用する時、語句「非熱可塑性繊維から本質的に成る」は、繊維の約10重量%以下が熱可塑性であってもよいことを意味する。更なる実施形態では、繊維の約8重量%以下が熱可塑性であってもよい。更に別の実施形態では、繊維の約5重量%以下が熱可塑性であってもよい。
【0034】
不織布ウェブにおける約10重量%を超える熱可塑性繊維の存在は、圧縮部位の形成に影響を及ぼすものと考えられる。理論に束縛されるものではないが、一旦、不織布ウェブにおける熱可塑性繊維の量が約10%を超えて増加すると、十分な数の熱可塑性繊維がウェブ全体にわたってランダムに分配され、それによって、圧縮部位が作製される時、(特に熱が圧縮応力との合同作用によって加えられる場合は)熱可塑性繊維の関連した軟化及び/又は溶融により、隣接した熱可塑性繊維間の溶融結合を引き起こす可能性があるものと考えられる。熱可塑性繊維の溶融結合は、湿潤に耐える可視的質感を有する不織布ウェブを提供するための方法として、当該技術分野において一般に既知である。従って、熱可塑性繊維の含量が約10重量%を超えると、不織布ウェブは本発明の範囲外となる。
【0035】
本発明の不織布ウェブは、約10%未満の熱可塑性繊維を含んでもよい。この少量の熱可塑性繊維は、圧縮部位の形成及びそれらが湿潤されている時の持続的な可視性とは無関係の利益をもたらすことがある。そのような利益としては、防塵、柔軟性、及びこれらの組み合わせを挙げてもよいが、これらに限定されない。
【0036】
繊維を載置して結合する工程の前に、繊維長を測定する。本発明において、少なくとも約20%の非熱可塑性繊維は、少なくとも約18mmの繊維長を有しており、この要件は、予め湿潤されたウェブにおける使用中の良好な強度を確実にすることがある。本発明で有用な繊維は、少なくとも約18mm;少なくとも約20mm;少なくとも約25mm;少なくとも約30mm;少なくとも約35mm;又は更に少なくとも約38mmの繊維長を有してもよい。本発明で有用な繊維は、本質的に連続的であってもよく、また理論上は無限の長さを有してもよい。また、これらの比較的長い繊維は柔らかい布様の手触りを有する不織布ウェブを提供するので、これらを使用するのが有利である。
【0037】
繊維は、少なくとも約0.8dtex、少なくとも約1dtex、少なくとも約1.2dtex、又は更に少なくとも約1.5dtexの平均繊維デシテックス(dtex)を有してもよい。繊維は、約8dtex未満、約5dtex未満、又は更に約2dtex未満の平均デシテックスを有してもよい。
【0038】
本発明の不織布ウェブは、熱可塑性繊維、非熱可塑性繊維、及びこれらの組み合わせを含んでもよい。有用であり得る非熱可塑性繊維の非限定例としては、ビスコース、リオセル、及びこれらの組み合わせを包含するがこれらに限定されないレーヨン;パルプ;綿;ウール;絹;黄麻;リンネル;ラミー;大麻;亜麻;ラクダの毛;ケナフ;及びこれらの組み合わせが挙げられる。有用であり得る熱可塑性繊維の非限定例としては、ポリプロピレン及びポリプロピレンのコポリマー類;ポリエチレン及びポリエチレンのコポリマー類;ポリアミド類及びポリアミド類のコポリマー類;ポリエステル類及びポリエステル類のコポリマー類;脂肪族ポリエステルアミド類;乳酸ポリマー類;及びラクチドポリマー類;ポリヒドロキシアルカノエート類;並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0039】
本発明の一実施形態では、不織布ウェブは、約20%〜約80%のレーヨン繊維と約80%〜約20%のパルプ繊維を含んでもよい。別の実施形態では、不織布ウェブは、約30%〜約70%のレーヨン繊維と約70%〜約30%のパルプ繊維を含んでもよい。別の実施形態では、不織布ウェブは、約40%〜約60%のレーヨン繊維と約60%〜約40%のパルプ繊維を含んでもよい。更に別の実施形態では、不織布ウェブは、約60%のレーヨン繊維と約40%のパルプ繊維を含んでもよい。
【0040】
本発明の不織布ウェブは、約10%未満の結合剤を更に含んでもよい。そのような少量の結合剤は、圧縮部位の形成及び湿潤された時の同部位の可視性とは無関係の利益をもたらすことがある。当該技術分野において「ダスティング層」として既知のものとして、結合剤が添加されてもよい。ダスティング層とは、繊維がわずかに付着し、形成表面から飛び散らないように、繊維載置プロセスの間に繊維に添加される少量の結合剤である。本発明の幾つかの実施形態では、不織布ウェブは、約10%未満、約5%未満、又は更に約2%未満の結合剤を含んでもよい。更なる実施形態では、不織布ウェブは、約1%未満、又は更に約0.5%未満の結合剤を含んでもよい。本発明の幾つかの実施形態では、不織布ウェブは、0%の結合剤を含んでもよい。
【0041】
本発明の不織布ウェブは、約5〜約200グラム毎平方メートル(gsm)、約10〜約175gsm、約30〜約150gsm、約20〜約100gsm、約30〜約70gsm、又は更に約40〜約60gsmの範囲の坪量を有してもよい。
【0042】
得られる不織布ウェブは、柔軟、布様、可撓性、生分解性、及びこれらの組み合わせであってもよい。本発明の圧縮部位を有する不織布ウェブを提供することにより、使用中の良好な強度を維持するが、ウェブが予め湿潤されている時に可視的な布様質感を有する、不織布ウェブが得られてもよい。本発明の圧縮部位を適用することにより質感が提供される。
【0043】
圧縮部位
本発明の不織布ウェブは、少なくとも1つの圧縮部位を含む。不織布ウェブに圧縮部位を付与するため、ウェブに圧縮応力を加えるあらゆる方法が使用されてもよい。ウェブに圧縮応力を加える方法としては、スタンピング、プレス、低温カレンダーローリング、加熱カレンダーローリング、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。繊維を鋭い刃で剪断するか又は切断する応力を加える他の方法とは対照的に、圧縮応力は、鈍力で繊維を強打するか又は圧縮してもよい。理論に束縛されるものではないが、鈍力は、繊維を切断する代わりに、主に圧縮部位の縁部における繊維を脆弱化させるので、鈍力は、ウェブの使用中の強度に与える影響がより少ないものと考えられる。
【0044】
別個の圧縮部位(単数又は複数)は、あらゆる形状をとってもよく、またウェブ上にランダムに位置していてもよく、又は模様を形成してもよい。圧縮部位(1)及びその模様の例としては、図1及び2に示されたもの、並びにその変形が挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
本発明の一実施形態では、レーヨン100%を含む予め湿潤された、カード加工及びスパンレース加工されたウェブは、低温カレンダーローリングを介した圧縮部位の模様を備えており、図3に示されている。カード加工及びスパンレース加工されたウェブは、室温で、平滑なカレンダーローラーと模様付きカレンダーローラーの間で圧縮される。模様付きカレンダーローラーは、図1に示されたものと同様のニップ模様を有する。ニップの総隆起表面積は、模様付きローラの総表面積の約12.6%に等しい。カレンダー加工されるウェブは圧縮部位を捕捉し、ここでウェブは模様付きローラのニップに接触する。図4は、レーヨン100%を含む予め湿潤された、カード加工及びスパンレース加工されたウェブの別の実施形態を示しており、これは、図2に示されたものと同様のニップ模様を有する模様付きカレンダーローラーを有するが、類似の方法を用いた圧縮部位を備えている。
【0046】
更に別の実施形態では、リオセル60%及びパルプ40%を含む予め湿潤された、カード加工及びスパンレース加工されたウェブは、加熱カレンダーローリングを介した圧縮部位の模様を備えており、図5に示されている。カード加工及びスパンレース加工されたウェブは、どちらも約177℃(350°F)の内部温度を有する、平滑なカレンダーローラーと模様付きカレンダーローラーの間で圧縮される。模様付きカレンダーローラーは、図1に示されたものと同様のニップ模様を有する。ニップの総隆起表面積は、模様付きローラの総表面積の約12.6%に等しい。カレンダー加工されるウェブは圧縮部位を捕捉し、ここでウェブは模様付きローラのニップに接触する。
【0047】
基材に加えられる圧縮応力は、表1中の試料計算に示されるように、総抵抗力を模様付きローラの圧縮面積で割ることによって計算され、また全ての負荷が模様付きローラの隆起した区域を通じて伝達されるという仮定に基づいている。圧縮後、約1グラムの乾燥した基材に対して約3グラムの液体組成物の比で、シリコーン系液体組成物を適用してウェブを予め湿潤させる。図3に示された通り、圧縮部位は、湿潤時に可視的である布様質感を有するウェブを提供する。
【0048】
【表1】

【0049】
圧縮応力の結果として、圧縮部位における繊維密度は、ウェブの非圧縮領域の密度に比べ、より高いことがある。理論に束縛されるものではないが、ウェブに加えられる圧縮応力が少なくとも約200MPa(200N/mm2)である時、圧縮部位は、ウェブが予め湿潤されている時でさえ非圧縮領域よりも密度が高いままであるものと考えられる。その結果、圧縮部位により提供される布様質感は、ウェブが湿潤時に可視的である。本発明の更なる実施形態では、圧縮応力は、約250MPa(250N/mm2)〜約500MPa(500N/mm2)、又は約275MPa(275N/mm2)〜約450MPa(450N/mm2)の範囲であってもよい。
【0050】
圧縮応力が少なくとも約200MPa(200N/mm2)である限りにおいて、圧縮応力は、あらゆる数の異なるニップ模様を用いてウェブに加えられてもよい(例えば、図4参照。この図は、図2に示されたものと同様のニップ模様の圧縮部位を有する、予め湿潤された100%非熱可塑性のカード加工及びスパンレース加工されたウェブを示す)。ただし、本発明において、単数又は複数のニップの最大の総隆起表面積は、模様付きローラの表面積の約25%未満、約20%未満、約19%未満、約17%未満、又は更に約13%未満であってもよい。単数又は複数のニップの最小の総隆起表面積は、約3%を超えてもよい。
【0051】
単数又は複数のニップの最大の総隆起表面積は、本発明において以下の基準に基づいて制限されてもよい。理論に束縛されるものではないが、約20%を超える総隆起表面積にわたって少なくとも約200MPa(200N/mm2)の圧縮応力を加えるために必要とされるシリンダ力は、従来のカレンダー性能の範囲外であるものと考えられる。表1に示されるように、模様付きローラは、12.6%の隆起したニップ表面積にわたって413MPa(413N/mm2)の圧縮応力を加えるために、3,770ポンド又は16769.5ニュートンもの高い力に既に耐えている。
【0052】
拭取り用品
拭取り用品は、本発明のウェブの1以上の層から成ってもよい。拭取り用品は、様々な用途に適合していてもよく、また液体組成物で予め湿潤させるか又は湿潤させてもよい。液体組成物は、水溶液を含んでもよく、また界面活性剤、補助界面活性剤、起泡剤、乳化剤、非セルロース性の水溶性有機ポリマー、及びこれらの組み合わせを更に含んでもよい。
【0053】
本発明の拭取り用品は、乳児を洗浄する際の使用に適していてもよく、またあらゆる年齢の人々に関する洗浄作業での用途に見出されてもよい。かかる拭取り用品はまた、メークアップ、皮膚コンディショナー、軟膏、医療品、及びこれらの組み合わせの適用が挙げられるが、これらに限定されない、物質を身体に適用するために使用される物品も挙げてもよい。かかる拭取り用品としては、ペットを清浄するか又は手入れをするために使用する物品、並びに家庭台所及び浴室表面、眼鏡、運動及び体操器具、自動車表面などの、表面及び物体の一般清浄に使用する物品も挙げてもよい。かかる拭取り用品はまた、体液及び同種のものを洗浄除去するために、病院又は臨床環境で使用されてもよい。
【0054】
本発明の幾つかの実施形態では、拭取り用品は、それらが典型的な使用中の力に付される時にそれらの一体性が維持されるように、十分に丈夫であってもよく、これは約2ニュートン(N)〜約10Nの範囲であってもよい。拭取り用品の強度は、それらの引張り強度を測定することにより決定されてもよく、これは、拭取り用品の試料を幅50mmのストリップに切断すること、及び横断方向及び機械方向の両方向においてEDANA法20.2−89を使用してそれらの引張り強度を試験することにより成し遂げられてもよい。この方法を用いて、拭取り用品又は拭取り用品の一部分の一体性を損ねるために必要な伸張力を測定し、これを拭取り用品の「最大力」と称する。最大力は、ニュートンで測定される。
【0055】
本発明の拭取り用品の実施形態は、約8〜約100N、約16〜約80N、又は更に約32〜約64NのMDの最大力を有してもよい。本発明の拭取り用品の実施形態は、約2〜約25N、約4〜約20N、又は更に約8〜約16NのCDの最大力を有してもよい。更なる例では、拭取り用品は、具体的に開示された上限及び下限値の間のいずれかの数値で、MD又はCDの力を有してもよい。
【0056】
本発明の一実施形態では、拭取り用品は、「ポップアップ式」拭取り用品であってもよく、それによって、1枚の拭取り用品がタブなどの容器から引き出される時、容易な分配のために、積み重ね体の中の次の拭取り用品の縁部が現れてもよい。拭取り用品は、折り畳まれ、タブなどの容器内に積み重ねられてもよい。本発明の拭取り用品は、C−折り畳み及びZ−折り畳みなどの、種々の既知の折り畳みパターンのいずれかで折り畳まれてもよい。Z−折り畳みパターンの使用により、折り畳んだ拭取り用品の積み重ね体は、重なる部分で交互配置が可能になる。折り畳みパターンは、共に譲渡された同時係属中の米国特許出願シリアル番号09/344695において更に完全に開示されている。
【0057】
本発明の拭取り用品は、審美的魅力を提供することのある印刷を更に含んでもよい。
【0058】
「発明を実施するための最良の形態」で引用したすべての文献は、関連部分において本明細書に参考として組み込まれるが、いずれの文献の引用も、それが本発明に関して先行技術であることを容認するものとして解釈されるべきではない。この文書における用語のあらゆる意味又は定義が、参考として組み込まれる文献における用語のあらゆる意味又は定義と対立する範囲内においては、本文書において用語に与えられた意味又は定義が適用される。
【0059】
本発明の特定の実施形態が説明及び記載されてきたが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく他の様々な変更及び修正を行えることが当業者には明白であろう。従って、本発明の範囲内にあるそのようなすべての変更及び修正を、添付の特許請求の範囲で扱うものとする。
【0060】
本発明の特徴、態様、及び利点は、以下の説明、添付の請求の範囲、及び添付図を参照することにより、更に良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の圧縮部位の1つの模様の図。
【図2】本発明の圧縮部位の別の模様の図。
【図3】図1の圧縮部位の模様を有する予め湿潤されたウェブの図。
【図4】図2の圧縮部位の模様を有する予め湿潤されたウェブの図。
【図5】図1の圧縮部位の模様を有する予め湿潤されたウェブの図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布ウェブであって、前記ウェブが、好ましくはカード加工及びスパンレース加工されており、前記ウェブが、非熱可塑性繊維から本質的に成り、少なくとも20重量%の前記非熱可塑性繊維が、少なくとも18mmの繊維長を有し、前記ウェブが:
(a)表面と;
(b)非溶融繊維を含む少なくとも1つの圧縮部位(1)と;
(c)好ましくは10重量%未満の結合剤と
を含み、
ここで、前記少なくとも1つの圧縮部位(1)が、前記表面上に位置するとともに、前記ウェブが予め湿潤されている時に可視的である、不織布ウェブ。
【請求項2】
前記非熱可塑性繊維が、パルプ;綿;ウール;絹;黄麻;リンネル;ラミー;大麻;亜麻;ラクダの毛;ケナフ;好ましくは、ビスコース、リオセル、及びこれらの混合物から成る群から選択されるレーヨン;並びにこれらの混合物から成る群から選択される、請求項1に記載の不織布ウェブ。
【請求項3】
前記ウェブが、20重量%〜80重量%の前記レーヨン繊維、及び20重量%〜80重量%の前記パルプ繊維から成る、請求項1又は2に記載の不織布ウェブ。
【請求項4】
30グラム毎平方メートル〜150グラム毎平方メートルの坪量を有する拭取り用品であって、前記拭取り用品が、請求項1〜3のいずれか一項に記載の該不織布ウェブを含み、好ましくは、前記拭取り用品が予め湿潤されているとともに、更に印刷から成る、拭取り用品。
【請求項5】
予め湿潤された不織布ウェブを作製する方法であって、前記ウェブが、好ましくはカード加工及びスパンレース加工されており、少なくとも1つの可視的な圧縮部位(1)を含み、前記方法が、次の工程:
(a)表面及び非熱可塑性繊維を含む少なくとも1つの不織布ウェブを提供する工程であって、少なくとも20重量%の前記非熱可塑性繊維が、少なくとも18mmの繊維長を有する工程と;
(b)少なくとも1つの圧縮部位(1)を前記表面上に生み出すため、少なくとも200ニュートン毎平方メートルの圧縮応力を前記ウェブに加える工程と;
(c)前記ウェブを予め湿潤させる工程と
を含む、予め湿潤された不織布ウェブを作製する方法。
【請求項6】
前記非熱可塑性繊維が、パルプ;綿;ウール;絹;黄麻;リンネル;ラミー;大麻;亜麻;ラクダの毛;ケナフ;好ましくは、ビスコース、リオセル、及びこれらの混合物から成る群から選択されるレーヨン;並びにこれらの混合物から成る群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ウェブが、20重量%〜80重量%の前記レーヨン繊維、及び20重量%〜80重量%の前記パルプ繊維から成る、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記圧縮応力が、スタンピング、プレス、低温カレンダーローリング、加熱カレンダーローリング、及びこれらの組み合わせから成る群から選択されるプロセスを介して前記ウェブに加えられる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記圧縮応力が、250ニュートン毎平方メートル〜500ニュートン毎平方メートルである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
拭取り用品であって、前記拭取り用品が、カード加工及びスパンレース加工されたウェブを含み、且つ前記ウェブが:
(a)80重量%〜20重量%のレーヨン繊維及び20%〜80重量%のパルプ繊維であって、前記レーヨン繊維が、38mmの繊維長を有する繊維と;
(b)表面と;
(c)非溶融繊維を含む少なくとも1つの圧縮部位(1)と;
(c)好ましくは10重量%未満の結合剤と;
を含み、
ここで、前記圧縮部位(1)が、前記表面上に位置するとともに、前記ウェブが予め湿潤されている時に可視的である、拭取り用品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−523270(P2008−523270A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−547038(P2007−547038)
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【国際出願番号】PCT/US2005/046285
【国際公開番号】WO2006/069121
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】