説明

可逆性感熱記録材料

【課題】本発明の目的は、カールが少なく、断裁や打ち抜き加工等による粉落ちの発生がないため、作業性に優れ、かつ繰り返し耐久性が良好な可逆性感熱記録材料を提供することである。
【解決手段】支持体の片面に、温度に依存して透明度又は色調が可逆的に変化する感熱記録層と保護層を設けた可逆性感熱記録材料において、該保護層が主成分として紫外線または電子線硬化性樹脂組成物の硬化物を含有し、該紫外線または電子線硬化性樹脂組成物が少なくとも硬化前の数平均分子量が4000以上50000以下の多官能(メタ)アクリレートポリマーを含有する。保護層がさらに多官能(メタ)アクリルモノマーを含み、多官能(メタ)アクリレートポリマー/多官能(メタ)アクリルモノマーの配合比率が硬化前の有効成分比率(質量)で9/1〜3/7であると好ましい。保護層がさらにシリカを含有すると好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱エネルギーを制御することにより透明度または色調が可逆的に変化する可逆性感熱記録材料に関するものである。特に、カールが少なく、裁断加工時あるいは、別の基材と貼り合わせて打ち抜き加工してカード化した際の粉落ちがなく、繰り返し耐久性が良好な可逆性感熱記録材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、一時的な画像の形成が行なえ、不要となった時にはその画像の消去が出来るようにした可逆性感熱記録材料が注目されている。可逆性感熱記録材料としては、通常無色ないし淡色の染料前駆体と、加熱によりこの染料前駆体を発色させ、これを再加熱して消色させる可逆性を有する顕色剤を用いた感熱記録材料(例えば、特許文献1〜3参照)、ポリエステル等の樹脂中に高級アルコール、高級脂肪酸等の有機低分子物質を分散した感熱記録材料、屈折率の異なるポリマーを2種以上混合した感熱記録材料等が知られている。特に、染料前駆体と可逆性顕色剤とから構成される可逆性感熱記録材料は、高コントラストで高感度な記録画像の形成と消去が多数回に渡って可能であり、ICカードや磁気カード等の媒体において、カード内の情報を可視化する目的で広く使われるようになってきた。
【0003】
このような可逆性感熱記録材料は、実用条件下で印字・消去を繰り返し行うと、度重なってかかる力(搬送力やプラテン圧による外力)によって、次第に記録面に劣化が生じる。そこで印字耐久性を向上させるために耐熱性の保護層を設ける検討が行われ、感熱記録層上、あるいは中間層を介して熱可塑性樹脂、あるいは熱硬化性保護層を設けることが提案されている(例えば、特許文献4参照)が、これらの樹脂では耐久性が十分ではなく、現在は紫外線や電子線による硬化樹脂を主成分とする保護層が用いられてきている(例えば、特許文献5及び6参照)。また、繰り返し使用時の保護層表面の亀裂対策として、保護層にビスフェノールA骨格を有するエポキシアクリレートを使用し、紫外線の照射エネルギーを制御することが開示されている(例えば、特許文献7参照)。
【0004】
これら紫外線や電子線による硬化樹脂を主成分とする保護層により、繰り返し耐久性については実用上一定の効果がみられている。しかしながら、これらの保護層は、硬化による塗層の収縮が大きく、保護層塗布面側に大きくカールし、可逆性感熱記録材料の取扱い性が悪化していた。また、紫外線や電子線による硬化樹脂を用いた保護層は、硬度に優れるものの衝撃に弱く柔軟性に劣るせいか、ロール状の可逆性感熱記録材料を連続的にスリット処理して小さいロール状に加工したり、ギロチンあるいは打ち抜き加工機等の裁断処理装置で裁断してシートあるいはカード形態にした場合に、切断面において塗層が支持体から剥がれ落ちる粉落ち現象が発生していた。また、支持体の反対面に接着層を設け、該可逆性感熱記録材料と別の基材との間に、光メモリ、接触式IC、非接触式IC等の情報記録媒体を内在させ、加熱等によりラミネートした後、カードサイズに打ち抜いて使用する方法も数多く提案されている。こうした厚物に積層したカードにおいては、カードに打ち抜いた際の粉落ちの問題は顕著となっていた。こうした粉落ちは、裁断処理時の清掃作業が増える等の作業効率の低下を招いていた。さらに、粉落ちの影響により、感熱ヘッドの感熱記録層への密着が悪くなり印字部に白抜けが生じたり、感熱ヘッドを傷めたりする問題、あるいは可逆性感熱記録材料に固定情報を印刷する用途の場合に、粉落ち部に印刷が乗らず、白く抜けたようになり見栄えが低下する問題等が生じていた。
【特許文献1】特開平6−210954号公報
【特許文献2】特開平6−210955号公報
【特許文献3】特開平7−125428号公報
【特許文献4】特開平6−8626号公報
【特許文献5】特開平6−344672号公報
【特許文献6】特開平8−11433号公報
【特許文献7】特開平11−334220公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、カールが少なく、裁断加工時あるいは、別の基材と貼り合わせて打ち抜き加工してカード化した際の粉落ちがないため取扱い性に優れ、繰り返し耐久性が良好な可逆性感熱記録材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らはこれらの課題を解決すべく検討した結果、下記の発明により上記の課題が解決されることを見いだした。
【0007】
支持体の片面に、温度に依存して透明度又は色調が可逆的に変化する感熱記録層と保護層を設けた可逆性感熱記録材料において、該保護層が主成分として紫外線または電子線硬化性樹脂組成物の硬化物を含有し、硬化前の紫外線または電子線硬化性樹脂組成物が少なくとも数平均分子量が4000以上50000以下であり、かつ二重結合当量が180以上2000以下である多官能(メタ)アクリレートポリマーを含んでなることを特徴とする可逆性感熱記録材料の発明である。
【0008】
硬化前の該多官能(メタ)アクリレートポリマーが、主鎖として少なくともエチレン性不飽和結合を有する単量体を重合して形成される構造を有し、側鎖に(メタ)アクリロイル基が1つ以上結合した構造を有すると好ましい。
【0009】
硬化前の該多官能(メタ)アクリレートポリマーにおいて、(メタ)アクリロイル基の全個数に対し50%以上が下記一般式1で表される構造であると好ましい(Q1は水素原子またはメチル基を表し、Q2は2価の連結基を表し、Q3、Q4、Q5は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。)。
【0010】
【化1】

【0011】
該保護層がさらに多官能(メタ)アクリルモノマーを含み、該多官能(メタ)アクリレートポリマー/多官能(メタ)アクリルモノマーの配合比率が硬化前の有効成分比率(質量比)で9/1〜3/7であると好ましい。
【0012】
該保護層がさらにシリカを含有すると好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の可逆性感熱記録材料によって、カールが少なく、裁断加工時あるいは、別の基材と貼り合わせて打ち抜き加工してカード化した際の粉落ちがないため、取扱い性に優れ、繰り返し耐久性が良好な可逆性感熱記録材料を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明の可逆性感熱記録材料について詳細に説明する。本発明の可逆性感熱記録材料は、支持体の片面に、温度に依存して透明度又は色調が可逆的に変化する感熱記録層と保護層を設けた可逆性感熱記録材料において、該保護層が主成分として紫外線または電子線硬化性樹脂組成物を含有し、硬化前の紫外線または電子線硬化性樹脂組成物が少なくとも数平均分子量が4000以上50000以下であり、かつ二重結合当量が180〜2000である多官能(メタ)アクリレートポリマーを含んでなることを特徴とする。本発明において二重結合当量とは、多官能(メタ)アクリレートポリマーの数平均分子量を1分子当たりの(メタ)アクリロイル基の個数で割った値を指す。こうした構成とすることにより、カールが少なく、裁断加工時、あるいは別の基材と貼り合わせて打ち抜き加工してカード化した際の粉落ちがないため取扱い性に優れ、繰り返し耐久性が良好な可逆性感熱記録材料を得ることができる。
【0015】
本発明において、保護層が主成分として紫外線または電子線硬化性樹脂組成物の硬化物を含有するとは、保護層中の全乾燥固形分に対し、紫外線または電子線硬化性樹脂組成物の硬化物の乾燥固形分比率が50質量%以上であることを指す。より好ましくは70質量%以上、特に好ましくは80質量%以上である。
【0016】
本発明において、保護層で使用される多官能(メタ)アクリレートポリマーの硬化前の数平均分子量は4000以上50000以下である。好ましくは5000以上30000以下、特に好ましくは7000以上20000以下である。数平均分子量が4000より小さいと、紫外線または電子線により硬化させた場合に、塗層の収縮が大きくカールが発生し取扱い性が悪化する。また、50000よりも大きいと、保護層塗液の粘度が高くなり取扱い性が悪化するばかりでなく、紫外線または電子線による硬化反応の効率が悪くなり、十分な塗層強度が得られない。
【0017】
本発明に係わる多官能(メタ)アクリレートポリマーは、硬化前の分子内の(メタ)アクリロイル基の数が2個以上の化合物である。(メタ)アクリロイル基の数は多い方が、紫外線または電子線照射後の皮膜の硬度をより高くすることができ、可逆性感熱記録材料のカール、裁断加工時あるいは、別の基材と貼り合わせて打ち抜き加工してカード化した際の粉落ちの抑制と、繰り返し耐久性との両特性を兼ね備えることが可能となり、好ましい。本発明に係わる多官能(メタ)アクリレートポリマーの硬化前の二重結合当量は180以上2000以下である。より好ましくは180以上1000以下、特に好ましくは180以上500以下である。二重結合当量が180より小さいと合成することが困難となり、2000より大きいと紫外線または電子線により硬化させた皮膜の硬度が得られない。
【0018】
本発明において、硬化前の多官能(メタ)アクリレートポリマーは、主鎖として少なくともエチレン性不飽和結合を有する単量体を重合して形成される構造を有し、側鎖に(メタ)アクリロイル基が1つ以上結合した構造を有すると好ましい。こうした構造とすることで、主鎖上に多数の(メタ)アクリロイル基をぶら下げることができる。もちろん、主鎖の片末端あるいは両末端に(メタ)アクリロイル基が結合していてもよく、ポリマー中の(メタ)アクリロイル基の数が2個以上であれば、いずれの構造を取っていてもよい。
【0019】
本発明において、多官能(メタ)アクリレートポリマーが、脂肪族炭化水素を主成分とする化合物であると、芳香族炭化水素あるいは脂環式炭化水素を主成分とする化合物に比べ、紫外線あるいは電子線により硬化した後の塗層の硬度に優れ、また塗層の柔軟性も兼ね備えているため、カールが少なく、断裁加工時あるいは打ち抜き加工時の粉落ちが少なくなり好ましい。脂肪族炭化水素を主成分とするとは、多官能(メタ)アクリレートポリマーの全乾燥固形分に対し、芳香族炭化水素および脂環式炭化水素を除いた部分(脂肪族炭化水素部)の乾燥固形分比率が80質量%以上であることを指し、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上である。
【0020】
エチレン性不飽和結合を有する単量体としては、脂肪族炭化水素基のみからなる単量体として、メチル、エチル、プロピル、ブチル、2−エチルヘキシル、イソオクチル、イソノニル、イソデシル、ドデシル、ラウリル、トリデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコシルのような、通例炭素数が20以下のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸;イタコン酸、フマル酸、マレイン酸等の2価以上のカルボキシル基を含有する単量体およびこれら化合物の酸無水物、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有単量体、酢酸ビニル等のビニルエステル系単量体、ビニルエーテル系単量体、エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、イソブチレン等のオレフィン系単量体等が例示される。また、芳香族炭化水素あるいは脂環式炭化水素を含有する単量体として、スチレン、N−ビニルピロリドン等のN−ビニルラクタム類、複素環含有ビニル系単量体等が挙げられる。これらは、単独であるいは適宜選択された2種以上を組み合わせて使用される。
【0021】
本発明において、側鎖に(メタ)アクリロイル基を導入する方法としては、側鎖にカルボキシル基を有するポリマーに、エポキシ基、オキセタン基等の環状エーテル基と、(メタ)アクリロイル基とを有する化合物、あるいは水酸基と(メタ)アクリロイル基とを有する化合物を反応させ、エステル結合を形成させる方法、側鎖に水酸基を有するポリマーに、(メタ)アクリロイル基とイソシアネート基とを有する化合物を反応させ、ウレタン結合を形成させる方法、側鎖にエポキシ基、オキセタン基等の環状エーテル基を有するポリマーに(メタ)アクリル酸を反応させ、エステル結合を形成させる方法、側鎖に水酸基を有するポリマーに(メタ)アクリル酸を反応させ、エステル結合を形成させる方法、側鎖にイソシアネート基を有するポリマーに、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルのごとき水酸基とアクリロイル基とを有する化合物を反応させ、ウレタン結合を形成させる方法、側鎖にシラノール基を有するポリマーに、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランのごとき、加水分解によりシラノール基を生成し、かつ(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応させ、シロキサン結合を形成させる方法等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。これらの中で、(メタ)アクリロイル基の全個数に対し50%以上が下記一般式1で表される構造であると、裁断加工時、あるいは別の基材と貼り合わせて打ち抜き加工してカード化した際の粉落ちが少なく、繰り返し耐久性にも優れ好ましい。より好ましくは70%以上、特に好ましくは85%以上である。
【0022】
【化2】

【0023】
一般式1において、Q1は水素原子またはメチル基を表し、水素原子が好ましい。Q3、Q4、Q5は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。これらの中で、水素原子、メチル基が好ましく、特に水素原子が好ましい。Q2は2価の連結基を表す。2価の連結基としては、有機系原子(炭素原子、窒素原子、酸素原子、水素原子等)により形成された各種の2価の有機基から適宜選択することができる。より具体的には、例えば、2価の炭化水素基(2価の脂肪族炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基、2価の芳香族炭化水素基や、これらの炭化水素基が2種以上組み合わせられた基等)、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等から構成されるエーテル結合を有する連結基、カルボニル基、オキシ基、イミノ基、チオカルボニル基、チオオキシ基や、これらの基が2種以上組み合わせられた基などが挙げられる。これらの中で、Q2は炭素数が1〜3の2価の脂肪族炭化水素基が好ましく、特に好ましくはメチレン基である。
【0024】
本発明に係わる多官能(メタ)アクリレートポリマーにおいて、側鎖に前記一般式1で表される構造を導入する方法としては、特に限定はなく、従来公知の方法を採用できる。一般式1において好ましい態様である、Q2が炭素数1〜3の2価の脂肪族炭化水素基である化合物を例として説明する。例えば、(メタ)アクリル酸を必須成分とし、これを単独で重合、あるいはエチレン性不飽和結合を有する単量体を適宜配合して共重合させ、カルボキシル基を含有する重合体を得た後、該重合体中のカルボキシル基と、別に用意した(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基およびα,β−不飽和結合を有する単量体との間でエステル化反応させる方法、(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基を含有する単量体を必須成分とし、これを単独で重合、あるいはエチレン性不飽和結合を有する単量体を適宜配合して共重合させ、エポキシ基を含有する重合体を得た後、該重合体中のエポキシ基と別に用意した(メタ)アクリル酸等のα,β−不飽和結合を有するカルボン酸との間でエステル化反応させる方法等が挙げられる。前者の場合、カルボキシル基を含有する重合体に共重合させるエチレン性不飽和結合を有する単量体としては、前記に例示した単量体のうちエポキシ基を含まない単量体が、共重合反応時に架橋が生じないため好ましく使用される。後者の場合、エポキシ基を含有する重合体に共重合させるエチレン性不飽和結合を有する単量体としては、カルボキシル基を含まない単量体が、共重合反応時に架橋が生じないため好ましく使用される。なお、カルボキシル基とエポキシ基との反応に際してエステル化触媒、重合防止剤等を使用できる。
【0025】
本発明に係わる多官能(メタ)アクリレートポリマーは、本発明の目的を妨げない範囲で、主鎖にポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のアルキレングリコール成分、エポキシ基を有する化合物が開環・重合して形成される成分、ポリウレタン成分、ポリエステル成分、シリコーン成分、メラミン成分等を含有することもできる。
【0026】
本発明に係わる多官能(メタ)アクリレートポリマーは、硬化前の保護層中の全紫外線または電子線硬化性樹脂組成物に対する有効成分比率で、30質量%以上含まれていることが好ましく、より好ましくは50質量%以上である。多官能(メタ)アクリレートポリマー以外の紫外線または電子線硬化性樹脂組成物としては、多官能(メタ)アクリルモノマーを配合することが好ましい。多官能(メタ)アクリルモノマーを併用することにより、カールと断裁時等の粉落ちを抑制しつつ、一層の塗層強度向上を図ることが可能となる。該多官能(メタ)アクリレートポリマー/多官能(メタ)アクリルモノマーの配合比率は、硬化前の有効成分比率(質量比)で、9/1〜3/7であると好ましい。配合比率が9/1を超えると、多官能(メタ)アクリルモノマーの添加効果が小さくなり、強度向上の効果が小さくなりやすい。3/7より小さいと、本発明に係わる多官能(メタ)アクリレートポリマーの優れたカール性、打ち抜き加工時の耐粉落ち性が損なわれやすい。
【0027】
多官能(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート又はヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジアクリレートなどの二官能性モノマー、又はペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、トリペンタエリスリトールオクタアクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタアクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサアクリレート等、又はトリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサアクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタアクリレート等、さらに、これら化合物のアクリロイル基の一部または全部をメタアクリロイル基に置換した化合物等の、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物等の三官能以上のモノマーが挙げられる。
【0028】
本発明の保護層には、保護層塗液の粘度調製等の目的で、紫外線または電子線硬化性単官能モノマーを配合してもよい。紫外線または電子線硬化性単官能モノマーとしては、n−ブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、トリメチロールプロパンアクリレート、ペンタエリスリトールアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、アクリロイルモルホリン、イソボルニルアクリレート又は2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどの単官能モノマーが挙げられる。また、本発明の目的を妨げない範囲で、本発明に係わる多官能(メタ)アクリレートポリマー以外の成分として、本発明で規定した数平均分子量、二重結合当量の範囲外の多官能オリゴマーを配合してもよい。多官能オリゴマーとしては、例えば、ポリウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0029】
本発明に係わる多官能(メタ)アクリレートポリマーの合成あるいは調合時に使用する溶媒としては、多官能(メタ)アクリレートポリマーの種類、製法等により適宜選択できるが、通常有機溶媒が使用される。有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン系、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、乳酸エチル、酢酸グリコールモノエチルエーテル等のエステル系、ジエチルエーテル、グリコールジメチルエーテル、グリコールジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系、メタノール、エタノール、n−プロプルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール系、ベンゼン、トルエン、キシレン、スチレン等の芳香族炭化水素系、メチレンクロライド、エチレンクロライド、四塩化炭素、クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クレゾール等の塩素化炭化水素、N,N−ジメチルホルムアルデヒド、ペンタン、ヘキサン等、又はそれらの混合物などが挙げられる。
【0030】
本発明の保護層を紫外線照射により架橋・硬化する場合には、硬化を効率よく進めるために、保護層中に光開始剤を配合することが好ましい。光開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸メチル、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル−2−)モルホリノプロパン−1、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、2−クロロチオキサントン又は2,4−ジエチルチオキサントンなどが挙げられる。光開始剤の添加量は、紫外線または電子線硬化性樹脂組成物の乾燥固形分に対し、0.1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、より好ましくは1質量%以上10質量%以下である。
【0031】
本発明の保護層には、表面光沢の調整、繰り返し耐久性向上、耐傷性向上等を目的に、シリカを配合することが好ましい。
【0032】
前記シリカ粒子としては、公知のシリカ粒子(二酸化珪素による粒子)から適宜選択することができる。例えば、湿式法シリカ、気相法シリカ、コロイダルシリカ等が挙げられる。
【0033】
湿式法シリカは、製造方法によって沈降法シリカ、ゲル法シリカに分類される。沈降法シリカは珪酸ソーダと硫酸をアルカリ条件で反応させて製造され、粒子成長したシリカ粒子が凝集・沈降し、その後濾過、水洗、乾燥、粉砕・分級の工程を経て製品化される。ゲル法シリカは珪酸ソーダと硫酸を酸性条件下で反応させて製造する。熟成中に微小粒子は溶解し、他の一次粒子同士を結合するように再析出するため、明確な一次粒子は消失し、内部空隙構造を有する比較的硬い凝集粒子を形成する。気相法シリカは乾式法シリカとも呼ばれ、一般的には火炎加水分解法によって作られる。具体的には四塩化ケイ素を水素及び酸素と共に燃焼して作る方法が一般的に知られているが、四塩化ケイ素の代わりにメチルトリクロロシランやトリクロロシラン等のシラン類も、単独または四塩化ケイ素と混合した状態で使用することができる。コロイダルシリカは、珪酸化合物から各種方法で不純物を除去して無水珪酸のゾルとし、安定性を保持するためにpHおよび濃度を調製して製造されるものである。
【0034】
前記湿式法シリカ、気相法シリカは、本発明に係わる多官能(メタ)アクリレートポリマーの合成あるいは調合で使用されたのと同様な有機溶媒中に分散あるいは粉砕して用いられる。分散あるいは粉砕時には、これら有機溶媒に多官能(メタ)アクリレートポリマーの溶液、多官能(メタ)アクリルモノマー等が加えられていてもよい。分散あるいは粉砕方法としては、公知の方法が採用できる。例えば、通常のプロペラ撹拌、タービン型撹拌、ホモミキサー型撹拌等でシリカと有機溶媒、および適宜分散剤を添加混合したり、さらに、これらの混合液にボールミル、ビーズミル、サンドグラインダー等のメディアミル、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー等の圧力式分散機、超音波分散機、及び薄膜旋回型分散機等を使用して分散あるいは粉砕を行うことができる。
【0035】
保護層で使用されるシリカは、上記の分散あるいは粉砕処理後に得られた分散液、さらには、これら分散液に本発明の多官能(メタ)アクリレートポリマー、多官能(メタ)アクリルモノマー等を加えて調製した保護層塗液の経時安定性の点で、疎水化処理されたシリカが好ましく使用される。特に、多官能(メタ)アクリレートポリマーの調製時に使用する有機溶媒がメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン等の非アルコール性の有機溶媒の場合、疎水化処理されたシリカを使用すると、保護層塗液の経時安定性が顕著に向上する。疎水化処理していないシリカの場合、調製直後の保護層塗液のシリカの分散状態は良好であるが、経時とともにシリカの沈降が起こり、攪拌等の簡単な処理ではシリカの分散状態は元に戻らないといった問題が生じやすい。一方、疎水化処理されたシリカでは、経時でシリカの沈降が起こったとしても、攪拌等の簡単な処理で、元の分散状態に戻すことができ、好ましい。シリカの疎水化処理としては、シランカップリング剤、アルコキシシラン化合物等による有機シリコーン化合物処理、ワックス処理等の従来公知の方法を用いることができる。
【0036】
シリカの配合量は、保護層の全乾燥固形分に対し、20質量%以下であることが好ましく、より好ましくは3質量%以上15質量%以下、特に好ましくは5質量%以上10質量%以下である。
【0037】
本発明の保護層には、シリカ以外の顔料も本発明の目的を妨げない範囲で添加可能であり、例えば、アルミニウム、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、バリウム、チタン等の炭酸塩、酸化物、水酸化物、硫酸塩等、およびゼオライト、カオリン、焼成カオリン、タルク等の粘土類を含む無機系顔料、澱粉、スチレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、尿素−ホルマリン樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、パラフィン、天然ワックス、合成ワックス等が使用可能である。また、滑剤としてステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸金属塩を使用することができる。また、一重項酸素の消去剤、スーパーオキシドアニオンの消去剤等を使用することができる。
【0038】
本発明に係る保護層の膜厚は、0.1〜10μmの範囲が好ましく、0.5〜5μmがより好ましい。膜厚が10μmを超えると効果が飽和するばかりか、感熱記録層の感度が低下しやすい。膜厚が0.1μmより小さいと予期した塗層強度が得られにくく、塗層に傷が入りやすくなる。
【0039】
本発明に関わる感熱記録層は、温度に依存して透明度又は色調が可逆的に変化する材料を用いる。例えば、画像の記録と消去が繰り返し可能な感熱記録材料として、該染料前駆体に加熱により可逆的な色調変化を与える可逆性顕色剤を用いて、熱エネルギーを制御する事により画像形成及び消去が可能な可逆性の感熱記録材料、樹脂母材中に有機低分子を分散したもので、熱により透明状態と白濁状態を与える白濁可逆性の感熱記録材料、屈折率の異なるポリマーを2種以上混合した感熱記録材料等が挙げられる。また、これらの感熱記録層は、色調の異なる感熱記録層を複数層重ねても良い。これらの中で、染料前駆体、可逆性顕色剤を含有した感熱記録層は、画像の視認性に優れ好ましい。本発明に係わる染料前駆体の具体的な例としては、例えば下記に挙げるものがあるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0040】
3−ジエチルアミノ−7−o−クロロフェニルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−m−クロロフェニルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−p−クロロフェニルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−o−フルオロフェニルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−m−フルオロフェニルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−p−フルオロフェニルアミノフルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−7−m−クロロフェニルアミノフルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−7−p−クロロフェニルアミノフルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−7−o−フルオロフェニルアミノフルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−7−m−フルオロフェニルアミノフルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−7−p−フルオロフェニルアミノフルオラン、
【0041】
3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−フェニルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−o−クロロフェニルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−m−クロロフェニルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−p−クロロフェニルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−o−フルオロフェニルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−o−トリルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−m−トリルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−p−トリルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−o−トリフルオロメチルフェニルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−m−トリフルオロメチルフェニルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−p−アセチルフェニルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メトキシ−7−フェニルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−エトキシ−7−フェニルアミノフルオラン、
【0042】
3−ジ−n−ブチルアミノ−6−メチル−7−フェニルアミノフルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−6−メチル−7−o−トリルアミノフルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−6−メチル−7−m−トリルアミノフルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−6−メチル−7−p−トリルアミノフルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−6−メチル−7−o−クロロフェニルアミノフルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−6−メチル−7−m−クロロフェニルアミノフルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−6−メチル−7−p−クロロフェニルアミノフルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−6−メチル−7−o−フルオロフェニルアミノフルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−6−メチル−7−m−フルオロフェニルアミノフルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−6−メチル−7−p−フルオロフェニルアミノフルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−6−メチル−7−o−トリフルオロメチルフェニルアミノフルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−6−メチル−7−m−トリフルオロメチルフェニルアミノフルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−6−メチル−7−p−トリフルオロメチルフェニルアミノフルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−6−メトキシ−7−フェニルアミノフルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−6−エトキシ−7−フェニルアミノフルオラン、
【0043】
3−ジ−n−ペンチルアミノ−6−メチル−7−フェニルアミノフルオラン、3−ジ−n−ペンチルアミノ−6−メチル−7−m−トリフルオロメチルフェニルアミノフルオラン、3−ピロリジル−6−メチル−7−フェニルアミノフルオラン、3−ピぺリジル−6−メチル−7−フェニルアミノフルオラン、3−N−メチル−N−イソペンチルアミノ−6−メチル−7−フェニルアミノフルオラン、3−N−メチル−N−シクロヘキシルアミノ−6−メチル−7−フェニルアミノフルオラン、3−N−メチル−N−n−ブチルアミノ−6−メチル−7−フェニルアミノフルオラン、3−N−メチル−N−n−プロピルアミノ−6−メチル−7−フェニルアミノフルオラン、3−N−エチル−N−イソペンチルアミノ−6−メチル−7−フェニルアミノフルオラン、3−N−エチル−N−イソペンチルアミノ−6−メチル−7−o−クロロフェニルアミノフルオラン、3−N−エチル−N−p−トリルアミノ−6−メチル−7−フェニルアミノフルオラン、3−N−エチル−N−(4−エトキシブチル)アミノ−6−メチル−7−フェニルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−ジベンジルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−オクチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−フェニルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−メチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(3,4−ジクロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(2−クロロアニリノ)フルオラン、
【0044】
3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド(クリスタルバイオレットラクトン)、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(1,2−ジメチルインドール−3−イル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−フェニルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1,2−ジメチルインドール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(1,2−ジメチルインドール−3−イル)−6−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(9−エチルカルバゾール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(2−フェニルインドール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3−p−ジメチルアミノフェニル−3−(1−メチルピロール−2−イル)−6−ジメチルアミノフタリド、
【0045】
3−(2−エトキシ−4−アミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(2−エトキシ−4−メチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(2−エトキシ−4−エチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(2−エトキシ−4−プロピルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(2−エトキシ−4−ヘキシルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジメチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジプロピルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジヘキシルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(2−エトキシ−4−フェニルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(2−エトキシ−4−ピリジルフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(3−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、
【0046】
3−(2−メチル−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(2−エチル−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(2−プロピル−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(2−ブチル−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(2−ペンチル−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(2−ヘキシル−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(2−シクロヘキシル−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(2−シアノ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(2−ニトロ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(2−クロロ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(2−ブロモ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(2−メチル−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−メチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−プロピル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−ペンチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、
【0047】
3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−ヘキシル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−ヘプチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−オクチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−ノニル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−イソプロピル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−イソブチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−イソペンチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、
【0048】
3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−メチル−2−エチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−プロピルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−ブチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−ペンチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−ヘキシルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−イソプロピルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−イソブチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−フェニルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、
【0049】
4,4′−ビス(ジメチルアミノフェニル)ベンズヒドリルベンジルエーテル、N−クロロフェニルロイコオーラミン、N−2,4,5−トリクロロフェニルロイコオーラミン、ベンゾイルロイコメチレンブルー、p−ニトロベンゾイルロイコメチレンブルー、3−メチルスピロジナフトピラン、3−エチルスピロジナフトピラン、3,3′−ジクロロスピロジナフトピラン、3−ベンジルスピロジナフトピラン、3−メチルナフト−(3−メトキシベンゾ)スピロピラン、3−プロピルスピロベンゾピラン等が挙げられる。
【0050】
前記の染料前駆体はそれぞれ1種又は2種以上を混合して使用してもよい。また他の色相に発色する染料前駆体を混合することにより調色も行うことができる。
【0051】
本発明に係わる染料前駆体と可逆性顕色剤を用いて構成される感熱記録層において、可逆性顕色剤は加熱による画像形成だけでなく、記録画像の消去も考慮された顕色剤であり、可逆性顕色剤を使用した感熱記録層は繰り返し表示内容を書き換えることが可能である。通常の感熱記録材料のように、画像形成を一回だけ行う用途にももちろん使用可能である。可逆性顕色剤としては下記一般式2、3および4で示される化合物が好ましいが、特に一般式2で示される化合物が好ましく使用される。なお、本発明はこれに限定されるものではない。本発明に係わる可逆性顕色剤はそれぞれ1種又は2種以上を混合して使用してもよい。
【0052】
【化3】

【0053】
一般式2において、X1及びX2はそれぞれ同じであっても、異なってもよい酸素原子、硫黄原子又は両末端に炭化水素原子団を含まない−CONH−結合を最小構成単位とする二価の基を表す。R1は単結合又は炭素数1から12の二価の炭化水素基を表す。R2は炭素数1から18の二価の炭化水素基を表す。好ましくは炭素数1から4の二価の炭化水素基である。R3は炭素数1から24の一価の炭化水素基を表し、好ましくは炭素数6から24の炭化水素基であり、より好ましくは炭素数8から24の炭化水素基である。更に、R1、R2及びR3の炭素数の和が11以上35以下である場合が特に好ましい。R1、R2及びR3は主として、各々アルキレン基及びアルキル基を表す。R1の場合は、芳香環を含んでいてもよい。fは0から4の整数を表し、fが2以上のとき繰り返されるR2及びX2は同一であっても異なっていてもよい。
【0054】
一般式2中のX1、X2は両末端に炭化水素原子団を含まない−CONH−結合を最小構成単位とする二価の基を含むが、その具体例としては、ジアシルアミン(−CONHCO−)、ジアシルヒドラジン(−CONHNHCO−)、しゅう酸ジアミド(−NHCOCONH−)、アシル尿素(−CONHCONH−、−NHCONHCO−)、セミカルバジド(−NHCONHNH−、−NHNHCONH−)、アシルセミカルバジド(−CONHNHCONH−、−NHCONHNHCO−)、ジアシルアミノメタン(−CONHCH2NHCO−)、1−アシルアミノ−1−ウレイドメタン(−CONHCH2NHCONH−、−NHCONHCH2 NHCO−)、マロンアミド(−NHCOCH2 CONH−)、3−アシルカルバジン酸エステル(−CONHNHCOO−、−OCONHNHCO−)等の基が挙げられるが、好ましくはジアシルヒドラジン、しゅう酸ジアミド、アシルセミカルバジドである。
【0055】
本発明に係わる可逆性顕色剤の具体的な例としては以下の構造式(1−1)から構造式(1−16)に挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0056】
【化4】

【0057】
【化5】

【0058】
可逆性顕色剤の具体例の中で、特に好ましい化合物は(1−3)、(1−4)、(1−5)、(1−6)、(1−7)、(1−9)及び(1−16)である。
【0059】
可逆性顕色剤として、下記一般式3および4で示されるような電子吸引性のフッ素原子を含有するアルコール系化合物も好ましく使用される。
【0060】
【化6】

【0061】
【化7】

【0062】
一般式3において、aは0または1の整数を表す。また、T1およびT2は互いに独立に水素原子、メチル基、フェニル基から選ばれた一員を表し、T3は水素原子、メチル基、フェニル基、トリフルオロメチル基から選ばれた一員を表す。T4及びT5は互いに独立に単結合または炭素数1〜20の2価の炭化水素基を表し、T6は炭素数8〜30の1価の直鎖脂肪族基を表す。さらに、Y1およびY2は互いに独立に単結合または下記(2−1)〜(2−23)により表される2価の基から選ばれた一員を表すが、Y1およびY2が同時に単結合であるものを含まない。また、(2−1)〜(2−23)により表される2価の基が左右対称形でない場合、これらの基はそのままの向きで一般式3で表される化合物の両隣の基と結合していてもよいし、左右反転した形で両隣の基と結合していてもよい。
【0063】
一般式4において、bは1または2の整数を表し、cは1〜3の整数を表す。また、T7およびT8は互いに独立に水素原子、メチル基、フェニル基から選ばれた一員を表し、T9及びT10は互いに独立に単結合または炭素数1〜20の2価の炭化水素基を表し、T11は水素原子または炭素数1〜30の1価の直鎖脂肪族基を表す。さらに、Y3およびY4は互いに独立に単結合または下記(2−1)〜(2−23)により表される2価の基から選ばれた一員を表すが、Y3およびY4が同時に単結合であるものを含まない。また、(2−1)〜(2−23)により表される2価の基が左右対称形でない場合、これらの基はそのままの向きで一般式4で表される化合物の両隣の基と結合していてもよいし、左右反転した形で両隣の基と結合していてもよい。
【0064】
【化8】

【0065】
【化9】

【0066】
【化10】

【0067】
前記Y1およびY3において、好ましい2価の基としては(2−18)〜(2−23)が挙げられ、特に好ましくは(2−18)、(2−21)である。
【0068】
本発明に係わる可逆性顕色剤はそれぞれ1種又は2種以上を混合して使用してもよく、通常無色ないし淡色の染料前駆体に対する使用量は、5〜5000質量%、好ましくは10〜3000質量%である。
【0069】
本発明に係わる染料前駆体と可逆性顕色剤を用いて構成される感熱記録層は、支持体の少なくとも一方の面に、少なくとも染料前駆体と可逆性顕色剤を含有する感熱記録層塗液を塗工・製膜することによって形成される。染料前駆体及び可逆性顕色剤を感熱記録層塗液に含有させるための方法としては、各々の化合物を単独で溶媒に溶解もしくは分散媒に分散してから混合する方法、各々の化合物を混ぜ合わせてから溶媒に溶解もしくは分散媒に分散する方法、各々の化合物を加熱溶解し均一化した後冷却し、溶媒に溶解もしくは分散媒に分散する方法等が挙げられるが、特に限定されるものではない。分散時には必要なら分散剤を用いてもよい。水を分散媒として使う場合の分散剤としてはポリビニルアルコール等の水溶性高分子や各種の界面活性剤が利用できる。水系の分散の際は、エタノール等の水溶性有機溶媒を混合してもよい。この他に炭化水素類に代表される有機溶媒が分散媒の場合は、レシチンや燐酸エステル類等を分散剤に用いてもよい。
【0070】
本発明に係わる感熱記録層の強度を向上する等の目的でバインダーを感熱記録層中に添加する事も可能である。バインダーの具体例としては、デンプン類、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、カゼイン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ソーダ、アクリル酸アミド/アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸アミド/アクリル酸エステル/メタクリル酸3元共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩、エチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリアクリル酸エステル、スチレン/ブタジエン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン共重合体、アクリル酸メチル/ブタジエン共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/塩化ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、エチレン/塩化ビニリデン共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリビニルブチラール等が挙げられる。これらのバインダーの役割は、組成物の各素材が印字、消去の熱印加によって片寄ることなく均一に分散した状態を保つことにある。したがって、バインダー樹脂には耐熱性の高い樹脂を用いることが好ましい。耐熱性、耐水性、さらには接着性といった高耐久品が要求に対しては、硬化性樹脂は特に好ましい。
【0071】
硬化性樹脂としては、例えば熱硬化性樹脂、電子線硬化樹脂、紫外線硬化樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂を適用する場合は架橋剤を含む液を塗工、成膜した後に熱により架橋させて用いる。熱硬化性樹脂の具体例としては、エポキシ樹脂、尿素樹脂、キシレン−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、飽和ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、及びポリオール樹脂等が挙げられる。またこれらの熱硬化性樹脂に使用される硬化剤は、有機酸類、アミン類、イソシアネート類、エポキシ類、フェノール類等が挙げられるが、熱硬化性樹脂の種類により好適な反応性のものを選定すれば良い。特にこれらの中で、特開平10−230680号公報や同11−58963号公報に記載の、ポリオール樹脂をイソシアネート化合物で熱硬化して得られる架橋樹脂である事が好ましい。電子線及び紫外線硬化樹脂に用いられるオリゴマー・モノマーとしては、前記保護層で例示した化合物を使用することができる。
【0072】
本発明に係る感熱記録層におけるバインダーの使用量としては、該感熱記録層全質量に対する該バインダー成分の質量百分率が35%以上65%以下の範囲内である事が好ましい。この範囲より大きくなると著しく発色濃度が低下し、逆にこの範囲より小さくなると、感熱記録層の耐熱性や機械的強度が低下し、層の変形や発色濃度の低下が起きる。感熱記録層における該バインダー成分の質量百分率は、40%以上60%以下がより好ましく、45%以上55%以下が特に好ましい。
【0073】
本発明に係る感熱記録層の膜厚は該感熱記録層の組成と所望発色濃度により決定されるものであり、具体的には、0.5〜20μmの範囲が好ましく、3〜15μmがより好ましい。さらに、該記録層の形成に際しては、染料前駆体や可逆性顕色剤等の組成物を熱硬化性樹脂及び硬化剤と共に混合した分散液を支持体上に塗工するが、必要に応じて、熱硬化性樹脂及び硬化剤と非反応性の溶剤で希釈して使用する事もできる。使用できる溶媒としては、バインダー樹脂を溶解し、且つ染料前駆体や可逆性顕色剤等の組成物を分散・溶解させるものが好ましい。具体的には、多官能(メタ)アクリレートポリマーの合成あるいは調合時に使用する溶媒として例示した化合物を使用できるが、これに限定されるものではない。中でも、水酸基、アミノ基、カルボキシル基等の活性水素基を有しない有機溶媒を用いる事が好ましい。
【0074】
感熱記録層の発色感度及び消色温度を調節するための添加剤として、熱可融性物質を感熱記録層に含有させることができる。60〜200℃の融点を有するものが好ましく、特に80〜180℃の融点を有するものが好ましい。一般の感熱記録紙に用いられている増感剤を使用することもできる。例えば、N−ヒドロキシメチルステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド等のワックス類、2−ベンジルオキシナフタレン等のナフトール誘導体、p−ベンジルビフェニル、4−アリルオキシビフェニル等のビフェニル誘導体、1,2−ビス(3−メチルフェノキシ)エタン、2,2′−ビス(4−メトキシフェノキシ)ジエチルエーテル、ビス(4−メトキシフェニル)エーテル等のポリエーテル化合物、炭酸ジフェニル、シュウ酸ジベンジル、シュウ酸ビス(p−メチルベンジル)エステル等の炭酸又はシュウ酸ジエステル誘導体等が挙げられる。これら化合物を併用して添加することもできる。
【0075】
本発明に係わる感熱記録層には、顔料なども本発明の目的を妨げない範囲で添加可能であり、保護層で例示した顔料を使用可能である。また、滑剤としてステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸金属塩を使用することができる。
【0076】
本発明に係わる保護層および/または感熱記録層には上記成分以外に必要に応じて、レベリング剤、分散剤、界面活性剤、硬膜剤、防腐剤、染料、蛍光染料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、老化防止剤、pH調節剤、消泡剤などの各種添加剤を添加することができる。本発明において、保護層および/または感熱記録層は、各成分を一層ずつに含有させたり層別に配合比率を変化させたりして2層以上の多層にしてもよい。
【0077】
本発明の可逆性感熱記録材料に用いられる支持体としては、紙、各種不織布、織布、ポリエチレンテレフタレートやポリプロピレン等の合成樹脂フィルム、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂をラミネートした紙、合成紙、金属箔、ガラス等、あるいはこれらを組み合わせた複合シートを目的に応じて任意に用いる事が出来るが、これらに限定されるものではなく、これらは不透明、半透明あるいは透明のいずれであってもよい。地肌を白色その他の特定の色に見せるために、白色顔料や有色染顔料や気泡を支持体中または表面に含有させてもよい。特にフィルム類等に水性塗布を行う場合で支持体の親水性が小さく感熱記録層の塗布困難な場合は、コロナ放電等による表面の親水化処理やバインダーと同様の水溶性高分子類を、支持体表面に塗布するなどの易接着処理してもよい。
【0078】
本発明において、耐候性改良等を目的に感熱記録層と保護層の間に紫外線吸収剤や酸化防止剤等を含有する中間層を設けたり、感熱記録層と支持体の間に発色感度向上等を目的に中空粒子を含有するアンダーコート層を設けてもよい。また、支持体の感熱記録層が設けられている面と反対側の面にカール防止や帯電防止などを目的としてバックコート層を設けたり、磁気的に情報記録可能な層を設けても良く、さらに粘着加工などを行い、別の基材と貼り合わせたり、別の基材との間に電気的、光学的に情報記録可能な材料を内在させてもよい。また、可逆性感熱記録材料中の任意の層及び/又は支持体にUVインキなどによる印刷などを行ってもよい。
【0079】
本発明の可逆性感熱記録材料においては、レーザー光による印字・消去を行うために、可逆性感熱記録材料中の任意の層及び/又は支持体に光熱変換材料を含有させることもできる。
【0080】
本発明における各層を支持体上に積層し可逆性感熱記録材料を形成する方法は特に制限されるものではなく、従来の方法により形成する事が出来る。例えば、エアーナイフコーター、ブレードコーター、バーコーター、カーテンコーター、グラビアロールおよびトランスファロールコーター、ロールコーター、コンマコーター、スムージングコーター、マイクログラビアコーター、リバースロールコーター、4本あるいは5本ロールコーター、ディップコーター、ロッドコーター、キスコーター、ゲートロールコーター、スクイズコーター、スライドコーター、ダイコーター等の塗抹装置、平版、凸版、凹版、フレキソ、グラビア、スクリーン、ホットメルト等の方式による各種印刷機等を用いる事が出来る。更に通常の乾燥工程の他、紫外線照射または電子線照射により各層を保持させる事が出来る。これらの方法により、1層ずつあるいは多層同時に塗布、印刷することができる。
【0081】
本発明に係わる感熱記録層として好ましい形態である、染料前駆体、可逆性顕色剤を含有した感熱記録層において、感熱記録層の発色記録画像を形成するためには加熱に引き続き急速な冷却が起これば良く、記録画像の消色を行うためには加熱後の冷却速度が遅ければ良い。例えば、適当な方法で加熱した後、低温の金属ブロックなどを押し当てる等して急速に冷却することにより、発色状態を発現させることができる。また、サーマルヘッド、レーザー光等を用いて極めて短い時間だけ加熱すると、加熱終了後に直ちに冷却する為、発色状態を保持させることができる。一方、適当な熱源(サーマルヘッド、レーザー光、熱ロール、熱スタンプ、高周波加熱、電熱ヒーター、及びタングステンランプやハロゲンランプ等の光源等からの輻射熱、熱風等)で比較的長い時間加熱すると、記録層だけでなく支持体等も加熱される為に熱源を除いても冷却する速度が遅いため消色状態になる。従って、同じ加熱温度、同じ熱源を用いても、冷却速度を制御することにより発色状態および消色状態を任意に発現させることができる。
【0082】
また、感熱記録層が樹脂母材中に有機低分子を分散したタイプの場合では、加熱温度の違いにより、加熱・冷却後の感熱記録層の透明状態、白濁状態を任意に形成するものである。例えば、ある一定の温度範囲に加熱すると感熱記録層は透明となり、この状態で常温に戻しても透明のままとなる。前記温度範囲より高温の温度範囲に加熱すると感熱記録層は半透明状態になり、この状態から常温に戻すと白濁状態に変化する。加熱・冷却手段は、前記の染料前駆体、可逆性顕色剤を含有した感熱記録層で例示した加熱・冷却手段を使用することができる。
【0083】
以下実施例によって本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の部数は質量基準である。
【実施例1】
【0084】
(A)感熱記録層塗液の調製
染料前駆体として3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−p−トリルアミノフルオラン20部、可逆性顕色剤として例示化合物(1−3)を100部、ポリエステルポリオール(商品名「タケラックU−21」、武田薬品工業(株)製)87部、メチルエチルケトン950部の混合物をガラスビーズと共にペイントシェーカーで5時間分散し分散液を得た。こうして得た分散液にイソシアネート化合物144部(商品名「コロネートL」、日本ポリウレタン工業(株)製)とメチルエチルケトン62部を加え、よく混合し感熱記録層用塗液を調製した。
【0085】
(B)感熱記録層塗液の塗工
(A)で得た塗液を、厚さ25μmの透明ポリエチレンテレフタレート(PET)シートに、乾燥膜厚が8μmとなるように塗布し、120℃で3分乾燥後、さらに50℃にて48時間加温し、感熱記録層を形成した。
【0086】
(C)保護層塗液の調製1
(メタ)アクリロイル基の構造がすべて、一般式1におけるQ1、Q3、Q4、Q5がいずれも水素原子、Q2がメチレン基で表され、脂肪族炭化水素のみで構成される多官能アクリレートポリマー(数平均分子量:12000、二重結合当量:200、固形分濃度50質量%)の酢酸エチル/酢酸ブチル=1/1の溶液を得た。こうして得た多官能アクリレートポリマー溶液200部、光開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名「イルガキュア184」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)5部をよく混合し、固形分濃度が45質量%となるように酢酸エチル/酢酸ブチル=1/1の混合溶媒を添加して保護層塗液を調製した。
【0087】
(D)保護層塗液の塗工
(B)で作製した塗工シートの感熱記録層塗布面上に、(C)で得た塗液を塗布し、120℃で1分間乾燥した後、照射エネルギー80W/cmの紫外線ランプ下を9m/分の搬送速度で通して硬化させ、乾燥硬化後の膜厚が3μmの保護層を設け、本発明の可逆性感熱記録材料を得た。
【0088】
(E)接着層塗液の調製
飽和ポリエステル樹脂(商品名「PES−355S30」、東亞合成(株)製)30部、トルエン56部、メチルエチルケトン14部、及び多価アルコール脂肪酸エステル(商品名「SL−02」、理研ビタミン(株)製)0.6部をよく混合し、接着剤層塗液を調製した。
【0089】
(F)接着層塗液の塗工
前記感熱記録材料の支持体上の非塗工面に、(E)で得た接着層塗液を乾燥膜厚が10μmとなるように塗布し、80℃で3分間乾燥し、接着剤層を設けた。
【実施例2】
【0090】
実施例1の(C)保護層塗液の調製において、光開始剤を添加せず保護層塗液を調製した。(D)保護層塗液の塗工において、こうして得た保護層塗液を用い、紫外線ランプによる照射の代わりに、照射線量が10Mradの電子線照射を行った以外は、実施例1と同様にして本発明の可逆性感熱記録材料を得た。
【実施例3】
【0091】
(G)保護層塗液の調製2
(メタ)アクリロイル基の構造がすべて、一般式1におけるQ1、Q3、Q4、Q5がいずれも水素原子、Q2がメチレン基で表され、脂肪族炭化水素のみで構成される多官能アクリレートポリマー(数平均分子量:12000、二重結合当量:200、固形分濃度50質量%)の酢酸エチル/酢酸ブチル=1/1の溶液を得た。こうして得た多官能エポキシアクリレート溶液120部、多官能(メタ)アクリルモノマーとしてペンタエリスリトールトリアクリレートを40部、光開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名「イルガキュア184」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)5部をよく混合し、固形分濃度が45質量%となるように酢酸エチル/酢酸ブチル=1/1の混合溶媒を添加して保護層塗液を調製した。
【0092】
実施例1の(D)保護層塗液の塗工において、(G)保護層塗液の調製2で得た塗液を用いた以外は、実施例1と同様にして本発明の可逆性感熱記録材料を得た。
【実施例4】
【0093】
実施例3の(G)保護層塗液の調製2において、多官能(メタ)アクリレートポリマーとして、(メタ)アクリロイル基の構造がすべて、一般式1におけるQ1、Q3、Q4、Q5がいずれも水素原子、Q2がメチレン基で表され、脂肪族炭化水素のみで構成される多官能アクリレートポリマー(数平均分子量:5000、二重結合当量:200、固形分濃度50質量%)の溶液を使用して保護層塗液を調製した。こうして得た保護層塗液を使用した以外は、実施例1と同様にして本発明の可逆性感熱記録材料を得た。
【実施例5】
【0094】
実施例3の(G)保護層塗液の調製2において、多官能(メタ)アクリレートポリマーとして、(メタ)アクリロイル基の構造がすべて、一般式1におけるQ1、Q3、Q4、Q5がいずれも水素原子、Q2がメチレン基で表され、脂肪族炭化水素のみで構成される多官能アクリレートポリマー(数平均分子量:45000、二重結合当量:200、固形分濃度50質量%)の溶液を使用して保護層塗液を調製した。こうして得た保護層塗液を使用した以外は、実施例1と同様にして本発明の可逆性感熱記録材料を得た。
【実施例6】
【0095】
実施例3の(G)保護層塗液の調製2において、多官能アクリレートポリマー溶液の配合部数を160部、ペンタエリスリトールトリアクリレートを20部に変更して保護層塗液を調製した。こうして得た保護層塗液を使用した以外は、実施例1と同様にして本発明の可逆性感熱記録材料を得た。
【実施例7】
【0096】
実施例3の(G)保護層塗液の調製2において、多官能アクリレートポリマー溶液の配合部数を80部、ペンタエリスリトールトリアクリレートを60部に変更して保護層塗液を調製した。こうして得た保護層塗液を使用した以外は、実施例1と同様にして本発明の可逆性感熱記録材料を得た。
【実施例8】
【0097】
実施例3の(G)保護層塗液の調製2において、多官能アクリレートポリマーとして、
(メタ)アクリロイル基の構造がすべて、一般式1におけるQ1がメチル基、Q2がメチレン基、Q3、Q4、Q5がいずれも水素原子で表され、脂肪族炭化水素のみで構成される多官能アクリレートポリマー(数平均分子量:12000、二重結合当量:200、固形分濃度50質量%)の溶液を使用して保護層塗液を調製した。こうして得た保護層塗液を使用した以外は、実施例1と同様にして本発明の可逆性感熱記録材料を得た。
【実施例9】
【0098】
実施例3の(G)保護層塗液の調製2において、多官能アクリレートポリマーとして、
(メタ)アクリロイル基の構造がすべて、一般式1におけるQ1、Q3、Q4、Q5がいずれも水素原子、Q2がメチレン基で表され、脂肪族炭化水素のみで構成される多官能アクリレートポリマー(数平均分子量:12000、二重結合当量:500、固形分濃度50質量%)の溶液を使用して保護層塗液を調製した。こうして得た保護層塗液を使用した以外は、実施例1と同様にして本発明の可逆性感熱記録材料を得た。
【実施例10】
【0099】
実施例3の(G)保護層塗液の調製2において、多官能アクリレートポリマーとして、
(メタ)アクリロイル基の構造がすべて、一般式1におけるQ1、Q3、Q4、Q5がいずれも水素原子、Q2がメチレン基で表され、脂肪族炭化水素のみで構成される多官能アクリレートポリマー(数平均分子量:12000、二重結合当量:1500、固形分濃度50質量%)の溶液を使用して保護層塗液を調製した。こうして得た保護層塗液を使用した以外は、実施例1と同様にして本発明の可逆性感熱記録材料を得た。
【実施例11】
【0100】
実施例3の(G)保護層塗液の調製2において、多官能アクリレートポリマーとして、
(メタ)アクリロイル基の構造がすべて、一般式1におけるQ1、Q3、Q4、Q5がいずれも水素原子、Q2がプロピレン基で表され、脂肪族炭化水素のみで構成される多官能アクリレートポリマー(数平均分子量:12000、二重結合当量:250、固形分濃度50質量%)の溶液を使用して保護層塗液を調製した。こうして得た保護層塗液を使用した以外は、実施例1と同様にして本発明の可逆性感熱記録材料を得た。
【実施例12】
【0101】
実施例3の(G)保護層塗液の調製2において、多官能アクリレートポリマーとして、
(メタ)アクリロイル基の構造がすべて、一般式1におけるQ1、Q3、Q4、Q5がいずれも水素原子、Q2が(CH2−CH2−O)n−CH2基(nの平均値は約9)で表され、脂肪族炭化水素のみで構成される多官能アクリレートポリマー(数平均分子量:12000、二重結合当量:500、固形分濃度50質量%)の溶液を使用して保護層塗液を調製した。こうして得た保護層塗液を使用した以外は、実施例1と同様にして本発明の可逆性感熱記録材料を得た。
【実施例13】
【0102】
実施例3の(G)保護層塗液の調製2において、多官能(メタ)アクリレートポリマーとして、(メタ)アクリロイル基の構造がすべて、一般式1におけるQ1、Q3、Q4、Q5がいずれも水素原子、Q2がメチレン基で表され、脂肪族炭化水素のみで構成される多官能アクリレートポリマー(数平均分子量:12000、二重結合当量:200、固形分濃度50質量%)の酢酸エチル/酢酸ブチル=1/1の溶液を得た。なお、この多官能アクリレートポリマーは、(メタ)アクリル酸グリシジルのみからなる単量体を重合して主鎖を形成し、この重合物のエポキシ基にアクリル酸を反応させエステル化を行った構造を有している。こうして得た多官能エポキシアクリレート溶液120部、多官能(メタ)アクリルモノマーとしてペンタエリスリトールトリアクリレートを40部、光開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名「イルガキュア184」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)5部をよく混合し、固形分濃度が45質量%となるように酢酸エチル/酢酸ブチル=1/1の混合溶媒を添加して保護層塗液を調製した。
【実施例14】
【0103】
実施例3の(G)保護層塗液の調製2において、エポキシアクリレート溶液を商品名「ビームセット3700」(荒川化学工業(株)製、酢酸エチル/酢酸ブチルの混合溶剤、固形分濃度50質量%、数平均分子量:10000、二重結合当量:200、脂肪族炭化水素のみで構成)に変更して保護層塗液を調製した。こうして得た保護層塗液を使用した以外は、実施例1と同様にして本発明の可逆性感熱記録材料を得た。
【実施例15】
【0104】
実施例3の(G)保護層塗液の調製2において、多官能アクリレートポリマーとして、
(メタ)アクリロイル基の構造がすべて、一般式1におけるQ1、Q3、Q4、Q5がいずれも水素原子、Q2がメチレン基で表され、脂肪族炭化水素と芳香族炭化水素とから構成される多官能アクリレートポリマー(数平均分子量:12000、二重結合当量:500、脂肪族炭化水素の理論上の乾燥固形分比率:85質量%、固形分濃度50質量%)の溶液を使用して保護層塗液を調製した。こうして得た保護層塗液を使用した以外は、実施例1と同様にして本発明の可逆性感熱記録材料を得た。
【実施例16】
【0105】
実施例3の(G)保護層塗液の調製2において、多官能アクリレートポリマーとして、
(メタ)アクリロイル基の構造がすべて、側鎖に水酸基を有するポリマーにアクリル酸を反応させてエステル結合を形成させた構造であり、脂肪族炭化水素のみで構成される多官能アクリレートポリマー(数平均分子量:12000、二重結合当量:1500、固形分濃度50質量%)の溶液を使用して保護層塗液を調製した。こうして得た保護層塗液を使用した以外は、実施例1と同様にして本発明の可逆性感熱記録材料を得た。
【実施例17】
【0106】
実施例3の(G)保護層塗液の調製2において、多官能アクリレートポリマーとして、
(メタ)アクリロイル基の構造がすべて、側鎖にイソシアネート基を有するポリマーにアクリル酸ヒドロキシエチルを反応させてウレタン結合を形成させた構造であり、脂肪族炭化水素のみで構成される多官能アクリレートポリマー(数平均分子量:12000、二重結合当量:1500、固形分濃度50質量%)の溶液を使用して保護層塗液を調製した。こうして得た保護層塗液を使用した以外は、実施例1と同様にして本発明の可逆性感熱記録材料を得た。
【実施例18】
【0107】
実施例10で使用した保護層塗液/実施例17で使用した保護層塗液を7/3の比率で混合し、保護層塗液を調整した。こうして得た保護層塗液を使用した以外は、実施例1と同様にして本発明の可逆性感熱記録材料を得た。
【実施例19】
【0108】
有機シリコーン化合物処理された湿式法シリカ(商品名「サイロホービック200」、富士シリシア化学(株)製)15部、イソプロピルアルコール85部の混合物をガラスビーズと共にペイントシェーカーで1時間分散し分散液を得た。(G)保護層塗液の調製2において、さらに、こうして得たシリカ分散液を60部添加し保護層塗液を調製した。こうして得た保護層塗液を使用した以外は、実施例1と同様にして本発明の可逆性感熱記録材料を得た。
【実施例20】
【0109】
実施例18において、有機シリコーン化合物処理された湿式法シリカをワックス処理された湿式法シリカ(商品名「AZ260」、東ソー・シリカ(株)製)に変更した以外は、実施例18と同様にして本発明の可逆性感熱記録材料を得た。
【実施例21】
【0110】
実施例18において、有機シリコーン化合物処理された湿式法シリカを未処理の湿式法シリカ(商品名「AY200」、東ソー・シリカ(株)製)に変更した以外は、実施例18と同様にして本発明の可逆性感熱記録材料を得た。
【実施例22】
【0111】
実施例1の(A)感熱記録層塗液の調製1において、可逆性顕色剤として例示化合物(1−3)の代わりに、例示化合物(1−4)を使用して感熱記録層塗液を調製した。こうして得た感熱記録層塗液を使用した以外は、実施例3と同様にして本発明の可逆性感熱記録材料を得た。
【実施例23】
【0112】
実施例1の(A)感熱記録層塗液の調製1において、可逆性顕色剤として例示化合物(1−3)の代わりに、例示化合物(1−5)を使用して感熱記録層塗液を調製した。こうして得た感熱記録層塗液を使用した以外は、実施例3と同様にして本発明の可逆性感熱記録材料を得た。
【実施例24】
【0113】
実施例1の(A)感熱記録層塗液の調製1において、可逆性顕色剤として例示化合物(1−3)の代わりに、例示化合物(1−6)を使用して感熱記録層塗液を調製した。こうして得た感熱記録層塗液を使用した以外は、実施例3と同様にして本発明の可逆性感熱記録材料を得た。
【実施例25】
【0114】
実施例1の(A)感熱記録層塗液の調製1において、可逆性顕色剤として例示化合物(1−3)の代わりに、例示化合物(1−7)を使用して感熱記録層塗液を調製した。こうして得た感熱記録層塗液を使用した以外は、実施例3と同様にして本発明の可逆性感熱記録材料を得た。
【実施例26】
【0115】
ステアリン酸6部、エイコサン2酸4部、フタル酸ジイソデシル2部、塩化ビニル/酢酸ビニル/リンエステル共重合体(商品名「デンカビニール#1000P」、電気化学工業(株)製)20部、テトラヒドロフラン150部、トルエン15部をそれぞれ添加した塗布液を、厚さ25μmの透明ポリエチレンテレフタレート(PET)シートに、乾燥膜厚が5μmとなるように塗布し、120℃で3分乾燥して感熱記録層を形成した。次に、ポリアミド樹脂(商品名「CM8000」、東レ(株)製)5部、メチルアルコール90部からなる溶液を用いて、乾燥膜厚が0.3μmになるように感熱記録層上に塗布し、120℃で3分乾燥した。さらに、その上に、(G)保護層塗液の調製2で得た保護層塗液を用い、実施例1と同様に、保護層、接着層を設けて、本発明の可逆性感熱記録材料を得た。
【0116】
比較例1
実施例3の(G)保護層塗液の調製2において、多官能アクリレートポリマーとして、
(メタ)アクリロイル基の構造がすべて、一般式1におけるQ1、Q3、Q4、Q5がいずれも水素原子、Q2がメチレン基で表され、脂肪族炭化水素のみで構成される多官能アクリレートポリマー(数平均分子量:3000、二重結合当量:200、固形分濃度50質量%)の溶液を使用して保護層塗液を調製した。こうして得た保護層塗液を使用した以外は、実施例1と同様にして可逆性感熱記録材料を得た。
【0117】
比較例2
実施例3の(G)保護層塗液の調製2において、多官能アクリレートポリマーとして、
(メタ)アクリロイル基の構造がすべて、一般式1におけるQ1、Q3、Q4、Q5がいずれも水素原子、Q2がメチレン基で表され、脂肪族炭化水素のみで構成される多官能アクリレートポリマー(数平均分子量:80000、二重結合当量:200、固形分濃度30質量%)の溶液を得た。こうして得た多官能アクリレートポリマー溶液200部を使用し、固形分濃度を40質量%とした以外は(G)保護層塗液の調製2と同様にして保護層塗液を調製した。こうして得た保護層塗液を使用した以外は、実施例1と同様にして可逆性感熱記録材料を得た。
【0118】
比較例3
実施例3の(G)保護層塗液の調製2において、多官能アクリレートポリマーとして、
(メタ)アクリロイル基の構造がすべて、一般式1におけるQ1、Q3、Q4、Q5がいずれも水素原子、Q2がメチレン基で表され、脂肪族炭化水素のみで構成される多官能アクリレートポリマー(数平均分子量:12000、二重結合当量:2500、固形分濃度50質量%)の溶液を使用して保護層塗液を調製した。こうして得た保護層塗液を使用した以外は、実施例1と同様にして可逆性感熱記録材料を得た。
【0119】
比較例4
実施例3の(G)保護層塗液の調製2において、多官能アクリレートポリマーを使用せず、ペンタエリスリトールトリアクリレートの配合量を100部に変更して保護層塗液を調製した。こうして得た保護層塗液を使用した以外は、実施例1と同様にして可逆性感熱記録材料を得た。
【0120】
比較例5
実施例3の(G)保護層塗液の調製2において、数平均分子量が12000の多官能アクリレートポリマーの代わりに、単官能アクリレートポリマー(数平均分子量:12000、固形分濃度50質量%)の溶液を使用して保護層塗液を調製した。こうして得た保護層塗液を使用した以外は、実施例1と同様にして可逆性感熱記録材料を得た。
【0121】
比較例6
比較例2において調製した保護層塗液に、さらに実施例18で使用したシリカ分散液60部を添加した。こうして得た保護層塗液を使用した以外は、実施例1と同様にして可逆性感熱記録材料を得た。
【0122】
比較例7
実施例3の(G)保護層塗液の調製2において、数平均分子量が12000の多官能アクリレートポリマーの代わりに、ビスフェノールA骨格を有するエポキシアクリレート(商品名「エポキシエステル3000A」、共栄社化学(株)製)を60部使用して保護層塗液を調製した。こうして得た保護層塗液を使用した以外は、実施例1と同様にして可逆性感熱記録材料を得た。
【0123】
試験1(カール)
実施例1〜26及び比較例1〜7で得られた可逆性感熱記録材料を10cm×10cmに裁断し、23℃50%RHの環境下に1日間保管した。保管後のシートを平面に置き、4角の平面から高さを測定し、最大高さをカール値とした。結果を表1に示す。値は小さいほどカールが少なく良好であることを示す。カール値が10mmを超えると実用的な取扱いに支障を生じる。なお、表1において評価結果×とは、シートが筒状にカールし測定不能であることを指す。
【0124】
試験2(打ち抜き加工後の粉落ち)
実施例1〜26、比較例1〜7で得られた可逆性感熱記録材料について、支持体上の感熱記録層を設けた側とは反対面に、厚み200μmのポリ塩化ビニルフィルムを重ね合わせ、2枚のステンレス製鏡面板の間に挟み、130℃、1.5MPaの圧力で20分間熱圧着し、可逆性感熱記録材料積層体に仕上げた。こうして得た積層体を打ち抜き加工機を用いてカードサイズに仕上げた。出来上がったカードの端面について、粉落ちの状態を目視および顕微鏡観察により、以下の基準で判定した。結果を表1に示す。
◎:端面を指で擦っても粉が全く付着しない。顕微鏡観察でも、ほとんど塗層の欠けが見られず良好。
○:端面を指で擦っても粉が全く付着しない。顕微鏡観察では、所々小さめの塗層の欠けが観察されるが実用状問題ないレベル。
△:端面を指で擦るとうっすらと粉が付着する。顕微鏡観察では、比較的大きな塗層の欠けが連続的に観察できる。
×:端面を指で擦ると白く粉が付着する。目視でもカード端面の塗層の欠けが確認できる。
【0125】
試験3(繰り返し耐久性1)
試験2で作製したカードについて、三和ニューテック製プリンター(ABS−3001KMT)の印字テストモード(印字スピード69mm/s、サーマルヘッド抵抗値450Ω)で印字を行い、次いで消去する作業を2分間隔で100回繰り返した。100回目の印字部の状態を目視で観察し、以下の基準で判定した。結果を表1に示す。
◎:印字部は全く傷んでおらず、きれいな画像が形成されている。
○:きれいな画像が形成されているものの、若干サーマルヘッドのあたりが見える。
△:印字ができているものの、傷が入っている。
×:印字部に傷が入り、傷の部分が印字されていない。
【0126】
試験4(繰り返し耐久性2)
実施例3、19〜21で得られた可逆性感熱記録材料について、試験3の繰り返し耐久性試験において、繰り返し回数を合計300回まで増やした。300回目の印字部の状態を目視で観察し、上記の評価基準を用いて判定した。
【0127】
試験5(保護層塗液の経時安定性)
実施例19〜21の保護層塗液について、経時1週間後の塗液の状態を観察し、以下の基準で判定した。結果を表1に示す。
◎:シリカの沈降は見られるものの、簡単な攪拌により元の分散状態に戻る。
○:シリカの沈降は見られるものの、攪拌をやや強く、時間を長めに行うことにより、元の分散状態に戻る。
×:シリカの固い沈降物が生成している。攪拌を念入りに行っても、シリカの凝集物はなくならず、元の状態に戻らない。
【0128】
【表1】

【0129】
表1から明らかなように、実施例1〜26の可逆性感熱記録材料は、カールが少なく、打ち抜き加工時の粉落ちの発生がないため、作業性に優れ、かつ繰り返し印字・消去した際の耐久性にも優れている。実施例3〜5、比較例1、2の比較から、数平均分子量が4000〜50000であると、上記特性のバランスが良好となる。また、実施例3、9、10、比較例3の比較から、二重結合当量が180〜2000である多官能(メタ)アクリレートポリマーを使用すると、粉落ち、繰り返し耐久性ともに優れ好ましい。実施例1、3、6、7の比較より、保護層にさらに多官能(メタ)アクリルモノマーを配合し、多官能(メタ)アクリレートポリマー/多官能(メタ)アクリルモノマーの配合比率を硬化前の有効成分比率で9/1〜3/7とすると、粉落ち、繰り返し耐久性のバランスが良好となる。実施例10、16〜18の比較より、(メタ)アクリロイル基の構造の50%以上が前記一般式1で表される構造であると、繰り返し耐久性が良好となる。また、実施例3、19〜21の比較より、保護層にシリカを配合すると、繰り返し耐久性がいっそう良好となる。さらに実施例19〜21の比較より、疎水化処理したシリカを用いると、保護層塗液の経時安定性が向上し好ましい。
【0130】
一方、数平均分子量が3000、二重結合当量が200の多官能(メタ)アクリレートポリマーを用いた比較例1、多官能(メタ)アクリルモノマーのみを用いた比較例4は、カールが酷く、打ち抜き加工時に粉落ちが発生した。数平均分子量が80000、二重結合当量が200の多官能(メタ)アクリレートポリマーを用いた比較例2、6は、塗液の粘度が高く扱いにくく、また繰り返し耐久性が悪化した。数平均分子量が12000、二重結合当量が2000以上の多官能(メタ)アクリレートポリマーを用いた比較例3は、繰り返し耐久性が悪化した。単官能の(メタ)アクリレートポリマーを用いた比較例5では、繰り返し耐久性が悪化した。ビスフェノールA骨格を有するエポキシアクリレートを用いた比較例7では、カールが酷く、打ち抜き加工時に粉落ちが発生した。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明の可逆性感熱記録材料は、カールが少なく、断裁や打ち抜き加工等による粉落ちの発生がないため、作業性に優れ、かつ繰り返し耐久性が良好な可逆性感熱記録材料として利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体の片面に、温度に依存して透明度又は色調が可逆的に変化する感熱記録層と保護層を設けた可逆性感熱記録材料において、該保護層が主成分として紫外線または電子線硬化性樹脂組成物の硬化物を含有し、硬化前の紫外線または電子線硬化性樹脂組成物が少なくとも数平均分子量が4000以上50000以下であり、かつ二重結合当量が180以上2000以下である多官能(メタ)アクリレートポリマーを含んでなることを特徴とする可逆性感熱記録材料。
【請求項2】
硬化前の該多官能(メタ)アクリレートポリマーが、主鎖として少なくともエチレン性不飽和結合を有する単量体を重合して形成される構造を有し、側鎖に(メタ)アクリロイル基が1つ以上結合した構造を有する請求項1記載の可逆性感熱記録材料。
【請求項3】
硬化前の該多官能(メタ)アクリレートポリマーにおいて、(メタ)アクリロイル基の全個数に対し50%以上が下記一般式1で表される構造である請求項1または2記載の可逆性感熱記録材料。
【化1】

(Q1は水素原子またはメチル基を表し、Q2は2価の連結基を表し、Q3、Q4、Q5は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。
【請求項4】
該保護層がさらに多官能(メタ)アクリルモノマーを含み、該多官能(メタ)アクリレートポリマー/多官能(メタ)アクリルモノマーの配合比率が硬化前の有効成分比率(質量比)で9/1〜3/7である請求項1〜3いずれか1項記載の可逆性感熱記録材料。
【請求項5】
該保護層がさらにシリカを含有する請求項1〜4のいずれか1項記載の可逆性感熱記録材料。

【公開番号】特開2008−119932(P2008−119932A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−305556(P2006−305556)
【出願日】平成18年11月10日(2006.11.10)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】