説明

台車システム

【課題】走行レールの敷設や撤去を容易に行うことができる。
【解決手段】走行レール3は、大梁鉄骨2a(敷設面)に着脱可能なインナーレール材(第1レール材)13と、インナーレール材13と同方向に延在しインナーレール材13と相対的にスライド可能であると共に大梁鉄骨2a(敷設面)に着脱可能なアウターレール材(第2レール材)15と、インナーレール材13とアウターレール材51とを延在方向へ相対的にスライドさせるラック27およびピニオン47(スライド機構)と、を備える。台車5は、インナーレール材13に沿って走行可能なインナー車輪(第1車輪)と、アウターレール材15に沿って走行可能なアウター車輪(第2車輪)と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、建設中の高層構造物の大梁鉄骨などの上に設置され、ジブクレーンまたは資材を移動させる台車システムに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、鉄骨造の高層構造物の躯体構築には、タワークレーンが用いられている。このタワークレーンを効率的に使用することで、工期を短縮することができる。
タワークレーンは、柱、梁、外装材などの揚重および設置、外周養生の盛り替え、設備機器や仕上げ材などの先行揚重など多様に用いられている。
しかし、更なる工期短縮を図るには、タワークレーンの負荷が過剰となるため、このタワークレーンの負荷を低減させる必要がある。
【0003】
タワークレーンの負荷を軽減するために、タワークレーン以外のクレーンを併用したり、タワークレーンによる揚重回数を減らしたりしている。
例えば、外装材の重量が軽量である場合は、外装材の揚重や設置に、タワークレーンに代わって小型のクレーンやテルハクレーンなどを使用している。
また、例えば、小梁鉄骨は重量が0.2t〜1.5t程度であるため、小梁鉄骨を3〜5本程度をまとめて揚重することで、タワークレーンによる揚重回数を減らしている。
また、例えば、床デッキプレートと小梁鉄骨、場合によっては設備材などをユニット化して揚重することで、タワークレーンの揚重回数による減らしている。
【0004】
しかし、小梁鉄骨をまとめて揚重する場合でも、小梁鉄骨の揚重作業がタワークレーンの拘束時間の30%前後を占めてしまっている。
また、高層構造物のコア部分は、鉄骨配置が複雑でユニット化することが困難であるため、コア以外の部分をユニット化することになる。しかし、コア部分は高層構造物の10〜20%程度を占めるこのため、コア以外の部分をユニット化したとしても、大幅にタワークレーンの負荷を軽減させることができない。
また、タワークレーンの台数を増やして、タワークレーン1台あたりの負荷を軽減させる方法もあるが、大幅なコストアップとなり現実的でない。
【0005】
そこで、効率的にタワークレーンの負荷を軽減するために、先行建方した大梁鉄骨などの上にレールを敷設し、レールを走行する台車にジブクレーンを載置して、このジブクレーンで資材の揚重や設置を行っている。台車を走行させることによりジブクレーンの設置位置を変えることができるため、ジブクレーンの使用範囲を広くすることができる。
例えば、特許文献1には、ジブクレーンの走行台車が開示されている。このジブクレーンの走行台車は、走行台車が走行するレールスパンを変更できると共に、走行台車を構成する部材がレールの外方に突出しない構成である。
また、所定階に揚重した資材を同一階で運搬する場合にも、上述したようなレールを走行する台車に資材を載せて運搬している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−32391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のレールを走行する台車では、レールの敷設や撤去に手間がかかるという問題がある。
特に、大梁鉄骨上にレールを敷設する場合には、レール同士のジョイントを大梁鉄骨上に設ける必要があると共に、レールを受ける梁を大梁鉄骨のスパンに合わせて設ける必要があるため、レールやレールを受ける梁を建設現場で製作することになり、レールの敷設に手間がかかっている。
そして、レールの敷設に手間がかかるため、ジブクレーンを台車に載置して使用する場合、ジブクレーンを効率的に使用できないという問題がある。
また、ジブクレーンの機種や規格が限定されてしまうため、任意のジブクレーンを使用できないことがある。
【0008】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、レールの敷設や撤去を容易に行うことができる台車システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る台車システムは、ジブクレーンまたは資材が台車に載置されて、該台車が走行レールに沿って走行する台車システムであって、前記走行レールは、敷設面に着脱可能な第1レール材と、該第1レール材と同方向に延在し、該第1レール材に対して相対的にスライド可能であると共に、前記敷設面に着脱可能な第2レール材と、前記第1レール材と前記第2レール材とを延在方向へ相対的にスライドさせるスライド機構と、を備え、前記台車は、前記第1レール材に沿って走行可能な第1車輪と、前記第2レール材に沿って走行可能な第2車輪と、を備えていることを特徴とする。
【0010】
本発明では、走行レールは、第1レール材と第2レール材とが延在方向へ相対的にスライド可能であることにより、延在方向の長さが可変となるため、走行レールを設置場所に合わせて任意の長さに調整することができる。
そして、台車は、第1レール材に沿って走行可能な第1車輪と、第2レール材に沿って走行可能な第2車輪と、を備えることにより、第1レール材と第2レール材のいずれも走行可能な構成となる。
これにより、走行レールの延在方向の長さが変化しても、この長さにわたって台車が走行することができる。
また、走行レールを設置場所に合わせて任意の長さに調整することができることにより、現場において走行レールを製作する必要がなく走行レールの敷設を容易に行うことができる。
【0011】
また、第1レール材および第2レール材は、敷設面に着脱可能であることにより、第1レール材および第2レール材のいずれか一方を敷設面に固定し、他方を敷設面に沿って移動可能とした状態で、第1レール材と第2レール材とを延在方向へ相対的にスライドさせると、一方を基準として他方をスライドさせることができる。
そして、第1レール材および第2レール材のいずれか一方を固定した状態で他方を移動させ、他方を固定した状態で一方を移動させることにより、走行レールを所定の方向に容易に移動させることができる。
これにより、高層構造物の建て方速度を向上させることができ、躯体工事の工期短縮を実現できる。
また、走行レールおよび台車を移動させながらジブクレーンの使用、または資材の運搬を行うことことができるため、多くのレール材を敷設する必要がなく、走行レールの敷設および撤去が容易であると共に、経済的である。
【0012】
また、本発明に係る台車システムでは、前記第1レール材および前記第2レール材は、前記敷設面との当接面に摺動材が設けられていることが好ましい。
このように第1レール材および第2レール材は、敷設面との当接面に摺動材が設けられていることにより、敷設面に沿って第1レール材および第2レール材を容易に移動させることができる。
【0013】
また、本発明に係る台車システムでは、前記スライド機構が、ラックアンドピニオンで構成されていることが好ましい。
このようにスライド機構が、ラックアンドピニオンで構成されていることにより、第1レール材および第2レール材を容易にスライドさせることができる。
【0014】
また、本発明に係る台車システムでは、前記スライド機構が、ローラチェーンで構成されていることが好ましい。
このようにスライド機構が、ローラチェーンで構成されていることにより、第1レール材および第2レール材を容易にスライドさせることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、走行レールの敷設および撤去が容易であることにより、ジブクレーンの使用、または資材の運搬を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a)は本発明の実施形態による台車システムの一例を示す側面図、(b)は(a)の上面図である。
【図2】(a)は図1(a)のA−A線断面図、(b)はB−B線断面図、(c)はC−C線断面図である。
【図3】(a)乃至(e)は走行レールの伸縮および移動を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態による台車システムについて、図1乃至図3に基づいて説明する。
図1(a)、(b)に示すように、本実施形態による台車システム1は、建設中の鉄骨造の高層構造物2に敷設される走行レール3と、定置式のジブクレーン4(図1(a)参照)が載置されて走行レール3上を走行する台車5とを備えている。
本実施形態では、建設中の高層構造物2は、ある階において大梁鉄骨2aが架設された状態としている。
【0018】
また、本実施形態では、高層構造物2の3フロア(不図示)を1節とし、1節ごとに構築している。部材の揚重作業および高層構造物2の構築作業には、高層構造物2近傍に設置された図示しないタワークレーンと、高層構造物2に設置された台車システム1のジブクレーン4とを併用している。
そして、1節が構築されたら、タワークレーンで台車システム1を構築された1節上部の大梁鉄骨2a上に移設し、更に上側の1節の揚重作業および構築作業を行っている。
【0019】
(走行レール)
走行レール3は、同一水平面上に平行に配列された複数の大梁鉄骨2a上に設置されており、これらの大梁鉄骨2aの延在方向と直交する方向に延在している。
走行レール3は、大梁鉄骨2aに着脱可能なインナーレール桁11およびアウターレール桁12を備えている。
【0020】
インナーレール桁11は、一対のインナーレール材(第1レール材)13,13と、一対のインナーレール材13,13の間隔を所定の間隔に保持する保持部材14(図1(b)参照)と、を備えている。
アウターレール桁12は、(アウターレール桁12の延在方向に延在し、この延在方向に直交する水平方向に互いに間隔をあけた)一対のアウターレール材(第2レール材)15,15と、一対のアウターレール材15,15の間隔を所定の間隔に保持する保持部材16(図1(b)参照)と、を備えている。
【0021】
一対のインナーレール材13,13および一対のアウターレール材15,15は、複数の大梁鉄骨2a上に配設されていて、一対のインナーレール材13,13は、一対のアウターレール材15,15間に設置されている。
一対のインナーレール材13,13と一対のアウターレール材15,15とは、略同じ長さに形成され、延在方向へ相対的にスライド可能に構成されている。
【0022】
一対のインナーレール材13,13と一対のアウターレール材15,15とは、延在方向に離間しないように構成されている。つまり、一対のインナーレール材13,13の延在方向一方向側の端部(以下、端部13aとする)側は、常に一対のアウターレール材15,15と延在方向に直交する方向において重なっている。また、一対のアウターレール材15,15の延在方向他方向側の端部(以下、端部15bとする)側は、常に一対のインナーレール材13,13と延在方向に直交する方向において重なっている。
また、一対のインナーレール材13,13の端部13aが一対のアウターレール材15,15の延在方向一方向側の端部(以下、端部15aとする)を越えないように構成されている。
【0023】
ここで、図3(a)に示すような、一対のインナーレール材13の端部13aと一対のアウターレール材15の端部15aとが近接した状態を縮小状態とし、図3(b)に示すような、一対のインナーレール材13の端部13aと一対のアウターレール材15の端部15bとが近接した状態を伸延状態として以下説明する。
【0024】
(インナーレール材)
図1(a)、(b)および図2(a)に示すように、インナーレール材13は、延在方向に直交する面における断面形状が略I字型状に形成されたレール材で、インナーレール材13の上フランジ21の上面には、上方に突出しインナーレール材13の延在方向に延在するリブ24が設けられている。
【0025】
図2(a)に示すように、このリブ24には、台車5に備えられたインナー車輪61の周面に形成された溝部61aが係合している。インナー車輪61は、リブ24に沿って走行するように構成されている。
また、図1(a)、(b)に示すように、インナーレール材13の延在方向他方向側の端部(以下、端部13bとする)には、上フランジ21のリブ24に沿って移動したインナー車輪61を当接して停止させるエンドストッパ25が設けられている。
【0026】
図2(a)に示すように、インナーレール材13のウェブ23には、アウターレール材15側の面に、突出するガイドフレーム26が設置されている。ガイドフレーム26は、インナーレール材13の略全長さにわたってインナーレール材13の延在方向へ延在する部材である。また、ガイドフレーム26は、突出側の端面26aが、インナーレール材13の上下フランジ21,22の側部よりもアウターレール材15側に位置している。
ガイドフレーム26は、延在方向に直交する面における断面が、ウェブ23側を下側とする略T字型状で、突出側の上下には、つば26b,26bが形成されている。
ガイドフレーム26の端面26aには、ガイドフレーム26の延在方向に延在するラック27がラック受け部材28を介して取り付けられている。
【0027】
また、インナーレール材13の下フランジ22には、下面に摺動材29が設けられている。摺動材29は、下面が大梁鉄骨2aと当接していて、下面には、摩擦係数の低い、例えば、MCナイロン(登録商標)やテフロン(登録商標)などが配されている。
【0028】
(アウターレール材)
図2(a)に示すように、アウターレール材15は、インナーレール材13と同様に、断面形状が略I字型に形成された部材で、アウターレール材15の上フランジ31の上面には、上方に突出しアウターレール材15の延在方向に延在するリブ34が設けられている。
図2(a)に示すように、このリブ34には、台車5に備えられたアウター車輪62の周面に形成された溝部62aが係合している。アウター車輪62は、リブ34に沿って走行するように構成されている。
また、図1に示すように、アウターレール材15の端部15aには、上フランジ31のリブ34に沿って移動したアウター車輪62を当接して停止させるエンドストッパ35が設けられている。
【0029】
また、図2(a)に示すように、アウターレール材15の下フランジ32には、インナーレール材13の下フランジ22と同様に、下面に摺動材36が設けられている。摺動材36は、下面が大梁鉄骨2aと当接していて、下面には、摩擦係数の低い、例えば、MCナイロン(登録商標)やテフロン(登録商標)などが配されている。
【0030】
図1(a)に示すように、アウターレール材15のウェブ33(符号図示)には、インナーレール材13と対向する側の面に、複数の上下方向ガイド37と、複数の水平方向ガイド38(図1と、が設けられている。
複数の上下方向ガイド37と複数の水平方向ガイド38とは、アウターレール材15の延在方向に所定の間隔をあけ、アウターレール材15の略全長にわたって交互に配列されている。
【0031】
図2(a)に示すように、上下方向ガイド37は、インナーレール材13の上フランジ21の下面と当接すると共に回転して上フランジ21と相対移動する上ローラ41と、下フランジ22の上面と当接すると共に回転して下フランジ22と相対移動する下ローラ42と、アウターレール材15のウェブ33に固定されると共に上ローラ41および下ローラ42を保持する保持部材43とを備えている。上ローラ41および下ローラ42は、アウターレール材15に直交する
【0032】
図2(b)に示すように、水平方向ガイド38は、インナーレール材13に設けられたガイドフレーム26の上側のつば26bの両側面と当接すると共に回転してガイドフレーム26と相対移動する一対の上ローラ44と、ガイドフレーム26の下側のつば26bの両側面と当接すると共に回転してガイドフレーム26と相対移動する一対の下ローラ45と、アウターレール材15のウェブ33に固定されると共に一対の上ローラ44および一対の下ローラ45を保持する保持部材46とを備えている。
【0033】
また、図2(c)に示すように、アウターレール材15のウェブ33には、インナーレール材13と対向する面に、ピニオン47が設けられている。ピニオン47は、アウターレール材15の端部15b(図1参照)側に設けられている。このピニオン47は、軸を中心に両方向に回転可能で、インナーレール材13のラック27と係合している。ピニオン47が軸中心に回転することで、ピニオン47が設けられたインナーレール材13と、ラック27が設けられたアウターレール材15とが相対移動する。
アウターレール材15には、ピニオン47を回転させるピニオン用電動機48が設けられている。このピニオン用電動機48は、図示しない減速機およびブレーキを備えている。
【0034】
(台車)
図1(a)、(b)に示すように、台車5は、上面にジブクレーン4が載置される載置部51と、走行レール3上を走行する走行部52と、走行部52を走行させる走行部用電動機53とを備えている。
載置部51は、走行レール3の幅と略同じかそれ以上の幅の平面視略矩形板状に形成されていて、載置されたジブクレーン4を固定可能に構成されている。
【0035】
走行部52は、載置部51の下面の四隅にそれぞれ取り付けられている。なお、走行部52は、載置部51の下面の各側部側に3箇所ずつ計6箇所に取り付けてもよく、これ以外の複数個所に設けられてもよい。
図2(a)に示すように、走行部52は、インナーレール材13に沿って走行するインナー車輪61と、アウターレール材15に沿って走行するアウター車輪62とを備えており、インナー車輪61およびアウター車輪62は、各レール材13、14の延在方向に直交する方向に配列されている。
【0036】
また、走行部52には、インナー車輪61とアウター車輪62との間に、スプロケット63が設けられていて、スプロケット63のインナー車輪61側およびアウター車輪62側に、それぞれ電磁クラッチ64が設けられている。
図1(a)に示すように、スプロケット63は、ローラチェーン65を介して走行部用電動機53と接続されている。
電磁クラッチ64は、スプロケット軸63a(図2(a)参照)とそれぞれ対向する車輪との接続と開放とを切り替える役割をしている。
【0037】
(走行レールの敷設方法)
次に、上述した走行レールの敷設方法について説明する。
まず、図3(a)に示すように、タワークレーンで、走行レール3を大梁鉄骨2a上に吊りこみ、所定の位置に設置する。このとき、走行レール3は縮小状態とする。
【0038】
次に、図3(a)に示す縮小状態の走行レール3を、図3(b)に示す伸延状態とする。
まず、アウターレール桁12の大梁鉄骨2aへの固定を解除すると共に、図2(a)に示す電磁クラッチ64によって台車5のアウター車輪62とスプロケット軸63aとの接続を解除する。これにより、アウターレール桁12は、大梁鉄骨2aに沿って移動可能な状態となる。なお、インナーレール桁11は大梁鉄骨2aに固定された状態とする
【0039】
次に、ピニオン用電動機48(図2(c)参照)を駆動させて、ピニオン47を駆動させる。
ピニオン47を回転駆動させることにより、ピニオン47と、ピニオン47と係合するラック27とが相対変位する。そして、ピニオン47は大梁鉄骨2aに固定されたインナーレール材13に設置されているため、ラック27が設けられた移動可能なアウターレール桁12が移動する。
このとき、アウターレール材15の端部15aがインナーレール材13から離間するようにピニオン47を回転させる。
このとき、図2(a)に示すように、アウターレール材15は、下面に摺動材36が設けられているため、大梁鉄骨2aとの摩擦が少なく容易に移動することができる。
【0040】
また、アウターレール材15には、複数の上下方向ガイド37および水平方向ガイド38が設けられていることにより、アウターレール材15は、上下方向および水平方向にずれることなく、インナーレール材13に沿ってスライドするようにガイドされる。
【0041】
アウターレール桁12を移動させて、図3(b)に示す伸延状態となったら、ピニオン47の回転を停止し、アウターレール桁12の移動を停止させる。そして、アウターレール桁12を大梁鉄骨2aに図示しない固定具で固定する。
このようにして、走行レール3が敷設される。
【0042】
(走行レールの移動方法)
次に、図3(b)に示す走行レール3を図3(e)に示す走行レール3の位置に移動させる方法について説明する。
まず、図3(b)に示す伸延状態の走行レール3を、図3(d)に示す縮小状態に縮小する。
台車5がインナーレール桁11上にある場合には、図3(c)に示すように、台車5をアウターレール桁12上に移動する。このとき、インナーレール桁11とアウターレール桁12とが重なる部分に台車5がある場合は、この位置のままでもよい。
【0043】
次に、インナーレール桁11の大梁鉄骨2aへの固定を解除すると共に、図2(a)に示す電磁クラッチ64によって、台車5のインナー車輪61とスプロケット軸63aとの接続を解除する。これにより、インナーレール桁11は、移動可能な状態となり、アウターレール桁12は大梁鉄骨2aに固定された状態となる。
【0044】
次に、ピニオン用電動機48(図2(c)参照)を駆動させて、ピニオン47を駆動させる。
ピニオン47は、移動可能なインナーレール桁11に設置され、ラック27は、大梁鉄骨2aに固定されたアウターレール桁12に設置されているため、ピニオン47が回転してラック27上を移動し、インナーレール桁11が移動することになる。
このとき、インナーレール材13の端部13bがアウターレール材15に近接する方向にピニオン47を回転させる。
このとき、インナーレール材13は、下面に摺動材29が設けられているため、大梁鉄骨2aとの摩擦が少なく容易に移動することができる。
また、アウターレール材15には、複数の上下方向ガイド37および水平方向ガイド38が設けられていることにより、インナーレール材13は、上下方向および水平方向にずれることなく、アウターレール材15に沿ってスライドするようにガイドされる。
【0045】
インナーレール桁11を移動させて、図3(d)に示すように、走行レール3が縮小状態となったら、ピニオン47の回転を停止させてインナーレール桁11を停止させる。そして、インナーレール桁11を大梁鉄骨2aに図示しない固定具で固定する。
【0046】
続いて、図3(d)に示す縮小状態の走行レール3を、図3(e)に示す伸延状態にする。
縮小状態の走行レール3を伸延状態にするには、上述した図3(a)に示す縮小状態の走行レール3を、図3(b)に示す伸延状態とする方法と同様の手順で行う。
このようにして、図3(b)の位置に敷設された走行レール3を図3(e)の位置に移動させることができる。
そして、走行レール3を任意の位置に移動させ、この走行レール3に沿って台車5を走行させて、任意の位置でジブクレーン4を使用することができる
【0047】
次に、上述した本実施形態の台車システム1の効果について説明する。
本実施形態の台車システム1によれば、走行レール3を容易に敷設できると共に容易に移動できることにより、走行レール3の敷設や移動に手間がかからず、ジブクレーン4を効率的に使用できる効果を奏する。
そして、ジブクレーン4を効率的にできることで、併用するタワークレーンの負荷を軽減することができる。
また、走行レール3は、伸縮すると共に、同一階で移動させて使用することができることにより、従来のように現場において個々に走行レール3を製作する必要がなく、走行レール3の敷設にかかる時間を短縮できると共に、コストを削減することができる。
【0048】
以上、本発明による台車システム1の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上述した実施形態では、走行レール3は、大梁鉄骨2aの上に設置されているが、床スラブなどの上に設置されてもよい。
また、上述した実施形態では、インナーレール材13にラック27が設けられて、アウターレール材15にピニオン47が設けられているが、インナーレール材13にピニオン47が設けられて、アウターレール材15にラック27が設けられた構成としてもよい。
また、上述した実施形態では、ラック27およびピニオン47によってインナーレール桁11とアウターレール桁12とを伸縮させているが、例えば、油圧式の伸縮装置などを設けてインナーレール桁11とアウターレール桁12とを伸縮させる構成としてもよい。
また、上述した実施形態では、ラック27およびピニオン47によってインナーレール材13とアウターレール材15とをスライドさせているが、ラック27およびピニオン47に代わって、例えばローラチェーンを用いてインナーレール材13とアウターレール材15とをスライドさせてもよい。
また、上述した実施形態では、走行レール3の伸延と短縮とを繰り返して、走行レール3を一方向に移動させているが、他方向に走行レール3を移動させてもよい。
また、上述した実施形態では、台車5にジブクレーン4を載置して移動させているが、ジブクレーン4に代わって資材を台車5に載せて、台車5を走行させることで資材を運搬してもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 台車システム
3 走行レール
4 ジブクレーン
5 台車
13 インナーレール材(第1レール材)
15 アウターレール材(第2レール材)
27 ラック(スライド機構)
29、36 摺動材
47 ピニオン(スライド機構)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジブクレーンまたは資材が台車に載置されて、該台車が走行レールに沿って走行する台車システムであって、
前記走行レールは、
敷設面に着脱可能な第1レール材と、
該第1レール材と同方向に延在し、該第1レール材に対して相対的にスライド可能であると共に、前記敷設面に着脱可能な第2レール材と、
前記第1レール材と前記第2レール材とを延在方向へ相対的にスライドさせるスライド機構と、を備え、
前記台車は、前記第1レール材に沿って走行可能な第1車輪と、前記第2レール材に沿って走行可能な第2車輪と、を備えていることを特徴とする台車システム。
【請求項2】
前記第1レール材および前記第2レール材は、前記敷設面との当接面に摺動材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の台車システム。
【請求項3】
前記スライド機構は、ラックアンドピニオンで構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の台車システム。
【請求項4】
前記スライド機構は、ローラチェーンで構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の台車システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−251781(P2011−251781A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−124875(P2010−124875)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】