説明

台車送り装置

【課題】コスト低減及び省スペース化を図ることが可能であると共に簡単に移動することが可能な台車送り装置
【解決手段】複数台の台車2を一方より押して他方へ搬送する押し出し搬送方式の台車送り装置1であって、押し出し装置による押し出し力を受けて移動する第1の台車と第1の台車の他方向側に配置された第2の台車との間に配置され、第1の台車の押し出し力を受けて移動する入力部材7と、自身の移動により第2の台車に移動力を与える出力部材10と、入力部材7の移動量を増大させて出力部材10に伝達する伝達部材13とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数台の台車を一方向より押して他方向へ搬送する押し出し搬送方式の台車送り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製品を直線的な搬送経路で搬送しつつ加工する際に、加工される製品を台車に載置してこの台車を一方向より押して他方向へ搬送する押し出し搬送方式が知られている。この押し出し搬送方式では、複数台の台車を互いに接触する態様で直列に配置し、一方向側の端部に配置された台車を押し出し装置により他方向側へと押し出し、直列に配置された各台車をそれぞれの位置に配置するものである。ここで、各台車はそれぞれ接触した態様で搬送されるため、各台車の位置は各台車の一方向側から他方向側までの長さによって決定される。この押し出し搬送方式によれば簡単な構成で各台車を一工程で配置できるので、コスト低減及び工程短縮といった作用効果を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−263224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の押し出し搬送方式では、図1(A)に示すように同じ形状の台車を用いた場合に各台車間の間隔は台車の長さに応じた等間隔(ストロークA)となるが、工程によっては図1(B)に示すように各台車間の間隔を不等間隔(ストロークB)としたい場合がある。この場合には、不等間隔としたい位置に搬送補助装置である台車送り装置を配置し、電力や空気圧あるいは油圧等のアクチュエータによって搬送されてきた台車をさらに必要な移動量(ストロークB−ストロークA=ストロークC)だけ搬送する必要がある。しかしこの構成では、アクチュエータを作動させるための動力源や導線及び管等の配置が必要となるため、多大なコスト及びスペースが必要となってしまうと共に、一度設置すると他の位置に移動させることが困難となるという問題点を有している。
本発明は上述の問題点を解決し、コスト低減及び省スペース化を図ることが可能であると共に簡単に移動することが可能な台車送り装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、複数台の台車を一方より押して他方へ搬送する押し出し搬送方式の台車送り装置であって、押し出し装置による押し出し力を受けて移動する第1の台車と第1の台車の前記他方向側に配置された第2の台車との間に配置され、第1の台車の押し出し力を受けて移動する入力部材と、自身の移動により第2の台車に移動力を与える出力部材と、前記入力部材の移動量を増大させて前記出力部材に伝達する伝達部材とを有することを特徴とする。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の台車送り装置において、さらに第2の台車の移動後に前記入力部材及び前記出力部材を付勢力により初期位置まで復帰させる復帰手段を有することを特徴とする。
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の台車送り装置において、さらに前記出力部材は第2の台車に接触して移動力を与える移動力付与部材を有し、該移動力付与部材は、前記出力部材の移動時に第2の台車に接触可能な第1の位置を占め、前記出力部材が前記初期位置を占めた際に第1の台車の下方に潜り込む第2の位置を占めることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、非動力であるので動力として電力や空気圧、油圧を使用するものに比してコスト低減及び省スペース化を図ることができ、さらに簡単に移動することができるので工程短縮を図ることができる。また、台車を押し出す移動力付与部材が初期位置において台車の下方に潜り込む位置を占めるので、突出した移動力付与部材に作業者が躓く等の不具合の発生を未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】従来の問題点を説明するための概略図である。
【図2】本発明の一実施形態に用いられる台車送り装置の概略側面図である。
【図3】本発明の一実施形態に用いられる台車送り装置の(A)概略正面図(B)概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の台車送り装置を説明する。台車送り装置1は、図1(B)に示すようにストロークを変化させたい箇所に配置され、その図1において奥行き方向の幅は、図2に示すように台車2の各車輪3間に収まる大きさに形成されている。
【0011】
図3(A)に台車送り装置1の正面図を、図3(B)に同平面図をそれぞれ示す。台車送り装置1は、その本体4の内部に図3において左右方向に移動自在に支持された第1ラック5を有しており、ラック部を内側に向けて配置された第1ラック5の上面には出没片6aを有する係合部材6が一体的に配置されている。出没片6aは、係合部材6に取り付けられた図示しないソレノイド等のアクチュエータによって出没し、図3に示す台車2の端面に接触可能な突出位置と係合部材6の上面と同一平面以下となる収納位置とを選択的に占める。第1ラック5及び係合部材6により入力部材7が構成される。
【0012】
本体4の内部であって平面視において第1ラック5と対向する位置には、図3において左右方向に移動自在に支持された第2ラック8が配設されている。ラック部を内側に向けて配置された第2ラック8の上面には、移動力付与部材としての押し出し部材9が一体的に配置されている。押し出し部材9は第2ラック8の上面に起倒自在に支持されており、平生図示しない付勢手段の付勢力によって図3(A)に二点差線で示す起立位置を占め、図3に矢印Cで示す向きの力が作用した際には第2ラック8の上面とほぼ同一平面となる倒伏位置を占める。第2ラック8及び押し出し部材9により出力部材10が構成される。
【0013】
本体4の内部であって第1ラック5と第2ラック8との間の位置には2段ギヤ11及びギヤ12が配設されている。2段ギヤ11は小径の第1ギヤ11aと大径の第2ギヤ11bとを上下2段で一体に有しており、第1ギヤ11aを第1ラック5のラック部に噛合する態様で本体4に回転自在に支持されている。第1ギヤ11aとほぼ同じ大きさのギヤ12は、第2ラック8のラック部及び第2ギヤ11bにそれぞれ噛合する態様で本体4に回転自在に支持されている。2段ギヤ11及びギヤ12により伝達部材13が構成される。
【0014】
第1ラック5の図3(B)において左端には、復帰手段としてのリターンばね14が配設されている。リターンばね14は伸縮自在に構成されており、第1ラック5が外力を受けて図3(B)の右方向に移動した後にラック5に対する外力が作用しなくなった際に、第1ラック5を非動力で初期位置に復帰させる。
【0015】
上述の構成に基づき、台車送り装置1の動作を説明する。先ず、台車送り装置1を、台車送りストロークを変更させたい位置に配置する。初期状態において台車送り装置1は、図3に示すように第1ラック5及び第2ラック8が左端側(台車を左方から右方へと移動させる場合)に位置する初期位置を占めており、このとき出没片6aは突出位置を占めている。
【0016】
図示しない押し出し装置が作動して複数台の台車2が押し出され、台車送り装置1上に台車2が移動してくると、図3(A)に示すように位置Dにおいて台車2の端面が突出位置を占めている出没片6aに接触し、台車2の移動力により突出片6aと一体の係合部材6及び第1ラック5が右方へと移動する。台車2が位置Dを占めたとき、押し出し部材9は台車2の下方に潜り込む位置を占める。
【0017】
台車2の移動力により入力部材7が右方へと移動すると、第1ラック5の移動に伴い2段ギヤ11が図3(B)において反時計回り方向に回転し、これと噛合するギヤ12が時計回り方向に回転して第2ラック10が右方へと移動する。このとき、第2ギヤ11bが第1ギヤ11aよりも大径でありギヤ12が第1ギヤ11aとほぼ同じ大きさであることから、第1ラック5の移動量に比して第2ラック10の移動量が増大することとなり、台車2の端面に接触した出没片6aが図3(A)に示す位置Eまで移動したときに、第2ラック10と一体に移動する押し出し部材9は付勢手段の付勢力により起立位置を占めつつ右方へと移動し、次の台車2の端面を押しながら位置Eよりも右方に位置する位置Fを占める。
【0018】
次の台車2が位置Fを占めて所定の位置に位置決めされると、図示しないアクチュエータが作動して出没片6aが収納位置に移動され、入力部材7はリターンばね14の付勢力により初期位置に復帰する。入力部材7の初期位置への復帰に伴い伝達部材13が先程とは逆向きに回転することにより、出力部材10も初期位置へと復帰する。この初期位置への復帰時において、押し出し部材9は先の台車2の下方へと潜り込む位置を占める。
【0019】
上述の構成によれば、台車送り装置1は非動力であるので、動力として電力や空気圧、油圧を使用するものに比してコスト低減及び省スペース化を図ることができ、さらに簡単に移動することができるので工程短縮を図ることができる。また、台車2を押し出す押し出し部材9が初期位置において台車2の下方に潜り込む位置を占めるので、突出した押し出し部材に作業者が躓く等の不具合の発生を未然に防止することができる。
【符号の説明】
【0020】
1 台車送り装置
2 台車
7 入力部材
9 移動力付与部材(押し出し部材)
10 出力部材
13 伝達部材
14 復帰手段(リターンばね)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数台の台車を一方より押して他方へ搬送する押し出し搬送方式の台車送り装置であって、
押し出し装置による押し出し力を受けて移動する第1の台車と第1の台車の前記他方向側に配置された第2の台車との間に配置され、第1の台車の押し出し力を受けて移動する入力部材と、自身の移動により第2の台車に移動力を与える出力部材と、前記入力部材の移動量を増大させて前記出力部材に伝達する伝達部材とを有することを特徴とする台車送り装置。
【請求項2】
請求項1記載の台車送り装置において、
第2の台車の移動後に前記入力部材及び前記出力部材を付勢力により初期位置まで復帰させる復帰手段を有することを特徴とする台車送り装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の台車送り装置において、
前記出力部材は第2の台車に接触して移動力を与える移動力付与部材を有し、該移動力付与部材は、前記出力部材の移動時に第2の台車に接触可能な第1の位置を占め、前記出力部材が前記初期位置を占めた際に第1の台車の下方に潜り込む第2の位置を占めることを特徴とする台車送り装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−93647(P2011−93647A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−248154(P2009−248154)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【出願人】(000176811)三菱自動車エンジニアリング株式会社 (402)
【Fターム(参考)】