説明

合わせ板状部材の支持構造及び支持方法

【課題】本発明は、長期耐久性があり、合わせ板状部材の表面から支持部材が外方に突出したり露出したりすることのない意匠性のよい合わせ板状部材の支持構造及び支持方法を提供する。
【解決手段】合わせガラス10の辺部を面取り加工して形成される溝部20に、シリコーンゴム26を介して支持金具22を装着する。この支持構造12では、合わせガラス10の外面から支持金具22が外方に突出したり露出したりすることなく合わせガラス10を支持金具22を介して建築物の躯体に支持できる。また、シリコーンゴム26があらかじめ取り付けられている支持金具22を、シリコーンゴム26を介して合わせガラス10の溝部20に装着するだけなので、シリコーンゴム26及び支持金具22を各々別個に装着する支持構造と比較して、施工性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は合わせ板状部材の支持構造及び支持方法に係り、特に2枚の板ガラスを中間接着層を介して接合してなる合わせガラスの支持構造及び支持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
板状部材として広く使用されている板ガラスを、合わせガラスとして構成した例について説明する。合わせガラスは、一般に2枚の板ガラスを中間接着層であるポリビニルブチラール製のシート等を介して加熱圧着することにより構成され、自動車等車両の風防ガラスや、建築物の防犯ガラス等の安全ガラスとして使用されている。
【0003】
このように構成された合わせガラスは、通常、金属製のサッシ枠に取り付けられて支持されるが、サッシ枠はガラス面から外方に突出されているため、建物全体として意匠性が劣り見栄えが悪いという問題があった。そのため、最近では、ガラス面から突出する不要な部材を無くした合わせガラスの支持構造が開発されている。
【0004】
その一例として、特許文献1に開示された構造シリコーン構法(以下、「SSG構法」という)による支持構造は、板ガラスを実質上支持するアルミニウム等からなる金属製部材と、この金属製部材と板ガラスとを接合するシリコーンシーラント等からなる構造シール材とから構成され、板ガラスと室内側の金属製部材とを構造シール材によって接着する。このSSG構法によれば、金属製サッシ等の金属製部材を建築物の外面から外方に突出させることなくパネル(板ガラス)を保持できるため、意匠性が向上するという利点がある。
【0005】
一方、特許文献2に開示された孔あき強化ガラス構法(以下、「DPG構法」という)による支持構造は、板ガラス(強化ガラス)の4隅部に皿孔を加工し、隣接する4枚の板ガラスの隅部の皿孔に、取付金物の皿ボルトをそれぞれ嵌合し、この取付金物をワイヤやロッドを介して建物の躯体に支持することにより、複数枚の板ガラスによって壁面を構築する。このDPG構法によっても、板ガラスの外面から外方に突出する部材がないため、意匠性が向上する。
【特許文献1】特開2001−303023号公報
【特許文献2】特開平11−210124号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、SSG構法は、板ガラスと金属製部材とを構造シール材で接着させることにより板ガラスを支持する構造であるため、長期耐久性の問題があり、また、板ガラスの四辺のうち二辺がサッシ枠に取付けられるため、意匠性が飛躍的に改善されるものではない。
【0007】
一方、DPG構法は、板ガラスの壁面を外側から見たときに板ガラスの表面に皿ボルトの表面が見えるため、その部分の意匠性が劣るという問題があった。また、DPG構法は、板ガラスの室内側に取付金物が大きく突出するため、板ガラスの室内面の清掃に手間がかかるという問題があった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、長期耐久性があり、合わせ板状部材の表面から支持部材が外方に突出したり露出したりすることのない意匠性のよい合わせ板状部材の支持構造及び支持方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、前記目的を達成するために、2枚以上の板状部材が、それぞれの板状部材間に中間接着層を介して接着されてなる合わせ板状部材を支持する合わせ板状部材の支持構造であって、前記2枚以上の板状部材のうち、少なくとも1枚の板状部材の中間接着層側の面の少なくとも一つの辺部が面取り加工されて、該辺部が合わせ板状部材において溝部となるように形成され、前記溝部には、該溝部と合致する形状の緩衝材が取り付けられた支持部材が、該緩衝材を介して装着されていることを特徴とする合わせ板状部材の支持構造を提供する。
【0010】
請求項1の支持構造は、合わせ板状部材の辺部を面取り加工し、これによって形成される溝部に、緩衝材を介して支持部材を装着(嵌合)させる構造であるため長期耐久性を有する。また、この支持構造では、合わせ板状部材の外面から支持部材が外方に突出したり露出したりすることなく合わせ板状部材を支持部材を介して躯体に支持できるので、意匠性が向上する。更に、緩衝材があらかじめ取り付けられている支持部材を、この緩衝材を介して合わせ板状部材の溝部に装着するだけなので、緩衝材及び支持部材を各々別個に装着する支持構造と比較して、施工性が向上する。
【0011】
ところで一般的に使用される支持部材は、押出し成形により製造されたアルミニウム合金製の金物であり、このような金属製の支持部材を溝部に直接装着すると、合わせ板状部材が特に透明の合わせガラスの場合には、ガラスの強度低下を招いたり、意匠性を損なったりするという不具合が発生する。この不具合を防止するために支持部材と溝部との間にシーリング材を注入し、このシーリング材を緩衝材として兼用することにより、溝部の傷付きを防止することが考えられる。しかしながら、この支持構造では、シーリング材が溝部から漏れ出てしまい、漏れ出たシーリング材によって溝部の見栄えが悪くなるという問題が発生していた。
【0012】
よって、溝部に合致した形状にあらかじめ形成されている緩衝材を介して支持部材を溝部に装着するとともに、この緩衝材があらかじめ支持部材に取り付けられている本発明の合わせ板状部材の支持構造とすることにより、漏れ出た緩衝材によって溝部の見栄えが悪くなるような問題は発生せず、また、前述したように緩衝材のみを溝部に装着する手間を省くことができるので、施工性が向上するという利点がある。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記支持部材は、前記合わせ板状部材の室内側に配置される板状部材の中間接着層側の面とは反対側の面にシーリング材により接着されていることを特徴としている。
【0014】
請求項2に記載の発明は、支持部材と板状部材との接着に関する発明であり、室内側に配置される板状部材の中間接着層側の面とは反対側の面に支持部材をシーリング材により接着したことを特徴としている。かかる特徴により、溝部からシーリング材が漏れ出るという不具合を防止しつつ、支持部材を合わせ板状部材に確実に接着することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2において、前記緩衝材は、シリコーンゴムであることを特徴としている。
【0016】
請求項3の如く、緩衝材をシリコーンゴムとすることにより、着色する色を自由に選択できるので、合わせ板状部材が特に透明の合わせガラスである場合に、溝部を透過して見える緩衝材の色を好みの色に選択することができ、意匠性が向上する。また、シリコーンゴムは通気性があるため、シーリング材の硬化時にシーリング材から自己発生する反応ガスを、このシリコーンゴムを介して外気に放出することができる。したがって、緩衝材としてシリコーンゴムを選択することにより、シーリング材を安定して硬化させることができる。
【0017】
請求項4に記載の発明は、請求項1、2又は3において、前記緩衝材は、前記合わせ板状部材の室外側に配置される板状部材に接触する部分が、突起又は連続突起を有する形状に形成されていることを特徴としている。
【0018】
請求項4の如く、緩衝材の室外側に配置される板状部材に接触する部分を、突起又は連続突起を有する形状に形成することにより、緩衝材に形状吸収作用を持たせたので、緩衝材、支持部材の寸法誤差を吸収することができ、緩衝材があらかじめ取り付けられた支持部材を合わせ板状部材の溝部に確実に装着することができる。
【0019】
請求項5に記載の発明は、2枚以上の板状部材が、それぞれの板状部材間に中間接着層を介して接着されてなる合わせ板状部材を支持する合わせ板状部材の支持方法であって、前記2枚以上の板状部材のうち、少なくとも1枚の板状部材の中間接着層側の面の少なくとも一つの辺部が面取り加工されて、該辺部が合わせ板状部材において溝部となるように形成され、前記溝部には、該溝部と合致する形状の緩衝材が取り付けられた支持部材が、該緩衝材を介して装着された合わせ板状部材の支持方法において、前記支持部材は、前記合わせ板状部材の室内側に配置される板状部材の中間接着層側の面とは反対側の面に接触されるゴム部分を有し、前記合わせ板状部材の室内側に配置される板状部材と前記ゴム部分と前記支持部材とによって包囲された空間に、前記支持部材に形成された孔から、シーリング材を注入することにより、前記支持部材が合わせ板状部材に接着されることを特徴とする合わせ板状部材の支持方法を提供する。
【0020】
請求項5の如く、室内側に配置される板状部材とゴム部分と支持部材とによって包囲された空間に、支持部材に形成された孔からシーリング材を注入することによりシーリング材の漏れを防止したので、意匠性が向上する。
【0021】
請求項6に記載の発明は、2枚以上の板状部材が、それぞれの板状部材間に中間接着層を介して接着されてなる合わせ板状部材を支持する合わせ板状部材の支持方法であって、前記2枚以上の板状部材のうち、少なくとも1枚の板状部材の中間接着層側の面の少なくとも一つの辺部が面取り加工されて、該辺部が合わせ板状部材において溝部となるように形成され、前記溝部には、該溝部と合致する形状の緩衝材が取り付けられた支持部材が、該緩衝材を介して装着された合わせ板状部材の支持方法において、前記支持部材と前記合わせ板状部材の室内側に配置される板状部材との間の隙間に、その隙間の側方からシーリング材を打設することにより、前記支持部材が合わせ板状部材に接着されることを特徴とする合わせ板状部材の支持方法を提供する。
【0022】
請求項6によれば、支持部材と室内側の板状部材との間の隙間に、その隙間の側方からシーリング材を打設して、支持部材を合わせ板状部材に接着されたので、意匠性が向上する。
【0023】
請求項7に記載の発明によれば、2枚以上の板状部材が、それぞれの板状部材間に中間接着層を介して接着されてなる合わせ板状部材を支持する合わせ板状部材の支持方法であって、前記2枚以上の板状部材のうち、少なくとも1枚の板状部材の中間接着層側の面の少なくとも一つの辺部が面取り加工されて、該辺部が合わせ板状部材において溝部となるように形成され、前記溝部には、該溝部と合致する形状の緩衝材が取り付けられた支持部材が、該緩衝材を介して装着された合わせ板状部材の支持方法において、前記支持部材と前記合わせ板状部材の室内側に配置される板状部材との間の隙間に、その隙間の側方からグレイジングビードを押し込むことにより、前記支持部材が合わせ板状部材に固定されることを特徴とする合わせ板状部材の支持方法を提供する。
【0024】
請求項7の発明によれば、支持部材と室内側の板状部材との間の隙間に、その隙間の側方からグレイジングビードを押し込んで、支持部材を合わせ板状部材に固定したので、意匠性が向上する。
【0025】
なお、本発明の合わせ板状部材の支持構造に用いる合わせ板状部材としては、積層される板状部材が無機質の板ガラスであるもの、有機質のポリカーボネート樹脂板であるもの、アクリル樹脂板等を積層したもの、更には、それらを混合して積層させたものも含む。また、板ガラスを用いる場合、通常のフロート板ガラスのほか、熱線反射ガラス、ハードコートLow−Eガラス、セラミックプリントガラス、網入り板ガラス等の各種板ガラスが適用可能であり、更に、単板の板ガラスのみならず、合わせガラスや複層ガラスを用いることも可能である。
【0026】
また、面取り加工とは、一般に板状部材の辺部をテーパ形状に研削加工することをいうが、本発明においては、テーパ形状に研削加工するもののみならず、段差状に加工する段付き加工をも含む。このような形状を有する板状部材であっても同様の効果が得られるからである。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る合わせ板状部材の支持構造によれば、溝部に合致した形状にあらかじめ形成されている緩衝材を介して支持部材を溝部に装着するとともに、この緩衝材をあらかじめ支持部材に取り付けたので、長期耐久性があり、また、漏れ出たシーリング材によって溝部の見栄えが悪くなるような前記問題は発生せず、更に、緩衝材のみを溝部に装着(接着)する手間を省いて簡易に製造できるので施工性が向上する。
【0028】
また、本発明に係る合わせ板状部材の支持方法によれば、室内側に配置される板状部材とゴム部分と支持部材とによって包囲された空間に、支持部材に形成された孔からシーリング材を注入することによりシーリング材の漏れを防止したので、意匠性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、添付図面に従って本発明に係る合わせ板状部材の支持構造及び支持方法の好ましい実施の形態について詳説する。
【0030】
図1は、本発明の合わせ板状部材の支持構造が、建築物の壁面を構成する合わせガラス10、10の支持構造12に適用された横断面の斜視図である。また、図2は、図1に示した支持構造12の要部拡大断面図、図3は支持構造12の組立斜視図である。
【0031】
図1〜3に示すように、合わせガラス10は室内側板ガラス14と室外側板ガラス16とが、中間接着層18を介して積層されるとともに、これらを加熱圧着することにより構成される。中間接着層18としては、ポリビニルブチラール(PVB)、エチレンビニルアセテート(EVA)、ウレタン等の接着性フィルムのほか、熱可塑性樹脂接着剤、エラストマー接着剤、熱硬化性樹脂接着剤等が好ましく使用できるが、本例では、接着性能や耐水性能に優れるエチレンビニルアセテート製のシートを用いた。また、室内側板ガラス14の中間接着層18側の縦方向辺部がテーパ状に面取り加工されることにより、合わせガラス10の縦方向辺部に略V字状の溝部20が形成される。なお、溝部20は、室外側板ガラス16の中間接着層18側の縦方向辺部を面取り加工して形成してもよく(図8参照)、また、双方の板ガラス14、16の縦方向辺部を面取り加工して形成してもよい(図9参照)。また、縦方向辺部に限定されず、横方向辺部を面取り加工して溝部20を形成してもよい。
【0032】
なお、本発明において、「室内側板ガラス」、「室外側板ガラス」という表現を便宜的に用いたが、本発明の支持構造12が建物の屋内に配置される場合、「室外側板ガラス」とは、その外面に支持金物22(後述)等の突起物がなく、隣接する板ガラスが面一となるように配置される側を意味する。
【0033】
室内側板ガラス14のみが面取り加工される場合、合わせガラス10の、溝部20が形成された縦方向辺部において、室外側板ガラス16は室内側板ガラス14より側方に若干量張り出していることが好ましい(図1〜7参照)。このように構成することにより、合わせガラス10の躯体への取り付けにおいて、合わせガラス10の外面から支持金物(支持部材)22が突出したり露出したりするのを防止できる。溝部20は、合わせガラス10の縦方向辺部の全長に亘って形成してもよく、縦方向辺部の一部に形成してもよい。
【0034】
溝部20には、支持金物22の差込部24が、緩衝材としてのシリコーンゴム26を介して装着され、この支持金物22等を介して合わせガラス10が建物の躯体に支持される。この支持金物22は、押出し成形により製造されたアルミニウム合金製のものであり、また、差込部24は、略V字状の溝部20との嵌合性を高めるために断面三角形状に形成されている。
【0035】
支持金物22は図4の如く、先端に形成された断面三角形状の差込部24、平坦部28、L字状に形成されたシーリング材注入部30、及びL字状に形成されたフック部32から構成されている。
【0036】
一方、シリコーンゴム26は、差込部24及び平坦部28の側面形状に沿ったシート状に形成されている。また、シリコーンゴム26の長手方向に連続して形成された断面略円形状の凸部34が、差込部24の長手方向に連続して形成された断面略円形状の凹部36に係合されることにより、シリコーンゴム26が支持金物22にあらかじめ装着されている。
【0037】
このようにシリコーンゴム26があらかじめ装着された支持金物22を図5の如く、差込部24を溝部20に押し込むことにより、合わせ板状部材の溝部20に支持金物22をシリコーンゴム26を介して装着する。このとき、シリコーンゴム26は、室外側板ガラス16の裏面に接触する部分に、支持金物22の長手方向に連続した突起38が形成されているので、すなわち、前記部分に形状吸収作用を持たせたので、シリコーンゴム26、支持金物22の寸法誤差を吸収することができる。よって、シリコーンゴム26があらかじめ取り付けられた支持金物22を合わせガラス10の溝部20に確実に装着することができる。なお、突起38の数は一つでもよい。
【0038】
支持金物22のシーリング材注入部30には図4の如く、断面矩形状のシリコーンゴム(ゴム部分、ガスケット)40が装着され、これにより図5の如く室内側板ガラス14と、シリコーンゴム40と支持金物22とによって包囲された断面矩形状の空間42にシーリング材44を注入し充填することができる。シーリング材44の注入は、フック部32に形成された貫通孔46からシーリング材注入部30に形成された貫通孔48を介して注入用ノズル50を空間42に挿入することにより行われる。これらの貫通孔46、48は図3の如く、支持金物22の長手方向に所定の間隔をもって形成されている。また、注入されるシーリング材44は、シリコーンゴム26、40が室内側板ガラス14に密着されているため、シリコーンゴム26、40と室内側板ガラス14との間に漏れ出ることはない。よって、意匠性が向上する。なお、シリコーンゴム40は図4の如く、シリコーンゴム40の長手方向に連続して形成された断面略円形の凹部52が、シーリング材注入部30の長手方向に連続して形成された断面略円形の凸部54に係合されることにより、シーリング材注入部30に装着される。以上により、1枚の合わせガラス10に支持金物22が装着される。
【0039】
次に、支持金物22が装着された合わせガラス10によって建築物の壁面を構築する場合には、図1、図2の如く支持金物22、22が対向するように2枚の合わせガラス10、10を配置し、支持金物22、22の差込部24、24間の隙間にバッカーと称される断面矩形状のスポンジ56を介在させ、この後、室外側板ガラス16、16間の隙間にシーリング材58を打設する。これにより、実施の形態の支持構造12により2枚の合わせガラス10、10を支持することができる。この後、図2の如く、支持金物22、22を連結部材60、60を介してフラットバー62に支持させることにより合わせガラス10、10を建築物に支持させる。連結部材60は、支持金物22のフック部32に係合する係合部64が形成されたフレーム66と、フレーム66をフラットバー62に固定するピン68とから構成されている。
【0040】
以上の如く、実施の形態の合わせガラス10の支持構造によれば、合わせガラス10の辺部を面取り加工し、これによって形成される溝部20に、シリコーンゴム26を介して支持金物22を装着させる構造であるため長期耐久性を有する。また、この支持構造12では、合わせガラス10の外面から支持金物22が外方に突出したり露出したりすることなく合わせガラス10を支持金物22を介して建築物の躯体に支持できるので、意匠性が向上する。更に、シリコーンゴム26があらかじめ取り付けられている支持金物22を、シリコーンゴム26を介して合わせガラス10の溝部20に装着するだけなので、シリコーンゴム26及び支持金物22を各々別個に装着する支持構造と比較して、施工性が向上する。
【0041】
更にまた、実施の形態の支持構造12では、支持金物22は、室内側板ガラス14の中間接着層側の面とは反対側の面にシーリング材44により接着されているので、溝部20からシーリング材が漏れ出るという不具合を防止しつつ、支持金物22を合わせガラス10に確実に接着することができる。
【0042】
また、緩衝材としては、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)やクロロプレンゴム(CR)等も使用できるが、シリコーンゴム26とすることにより、着色する色を自由に選択できるので、合わせ板状部材が特に透明の合わせガラス10である場合に、溝部20を透過して見えるシリコーンゴム26の色を好みの色に選択することができ、意匠性が向上する。更に、シリコーンゴム26、40は通気性があるため、シーリング材44の硬化時にシーリング材44から自己発生する反応ガスを、このシリコーンゴム26、40を介して外気に放出することができる。したがって、緩衝材としてシリコーンゴム26、40を選択することにより、シーリング材44を安定して硬化させることができる。
【0043】
なお、合わせガラス10の面取り加工された部分の少なくとも一方の端部は、面取りした面を含めてコーナー部を略45度に切り落とした形状に加工されている。これにより、振動時のコーナー部の破損を防止できる。
【0044】
また、図5に示した例では、貫通孔46、48からシーリング材44を注入するように構成したが、これに限定されるものではない。例えば、図6の如く支持金物22と室内側板ガラス14との間の隙間に、その隙間の側方からシーリング材70を直接打設する一般的な接着方法で合わせガラス10と支持金物22とを接着してもよい。また、図7の如く支持金物22と室内側板ガラス14との間の隙間に、その隙間の側方からグレイジングビード72を押し込んで合わせガラス10と支持金物22とを固定してもよい。
【0045】
図8は、室内側板ガラス14の縦方向辺部には面取り加工せず、室外側板ガラス16の中間接着層18側の縦方向辺部のみを面取り加工して溝部20を形成した支持構造の断面図であり、図9は、室内側及び室外側の板ガラス14、16の縦方向辺部をそれぞれ面取り加工して溝部20、20を形成した支持構造の断面図である。これらの図において、図1〜図7に示した支持構造と同一又は類似の部材については同一の符号を付している。
【0046】
また、これらの図8、図9において、使用される室内側板ガラス14は、金属製網15入りの板ガラスである。このように、室外側板ガラス16を面取り加工することにより、室内側板ガラス14に全く面取り加工を施さない(図8)、または室内側板ガラス14の面取り量を小さくする(図9)ことができる。このような室内側板ガラス14は、エッジ強度が向上するため、支持金物22で支持した場合に有利である。なお、金属製網15入りの板ガラスに限定されず、強化ガラス、倍強度ガラス、着色合わせガラス、太陽電池モジュールが埋設された合わせガラスでもよく、その他各種の板ガラスが適用可能である。
【0047】
更に、図8、図9の実施例において、室外側板ガラス16の面取り部を粗面(粗ズリ、不図示)とすることにより、室外側からシリコーンゴム26が見え難くなり外観上目立たなくなるので、合わせガラス10の意匠性が高まる。また、面取り部を磨き面とすることで、真正面からは光を反射を反射するので、シリコーンゴム26が更に目立たない意匠とすることもできる。同様に、図2の例において、シリコーンゴム26が接触する室外側板ガラス16の面を粗面とすることにより同様の効果を得ることができる。粗面化方法としては、#80〜#200の研削砥石による研削加工が一般的であるが、用いるガラス品種や外観上の要請に応じて#200〜#500の粒度の砥石を用いてつや消し調の加工としたり、乾式/湿式加工等、各種方法を適用し得る。
【0048】
更にまた、図9の例においては、室内側板ガラス14及び室外側板ガラス16の辺部を予め面取り加工し、この後、中間接着層18を介在させた合わせガラス10に構成している。図2、図8の例の如く一方の板ガラスのみに面取り加工がなされた合わせガラス10は、2枚の板ガラス14、16を重ねた後に中間接着層18の端部処理(余分な端部の中間接着層18を除去する処理)を行う。これに対して、図9のように双方の板ガラス14、16があらかじめ面取り加工されているものは、邪魔になるものが少ないため、中間接着層18の端部処理がし易くなるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の合わせ板状部材の支持構造が、建築物の壁面を構成する合わせガラスの支持構造に適用された横断面の斜視図
【図2】図1に示した支持構造の要部拡大断面図
【図3】図1に示した支持構造の組立斜視図
【図4】合わせガラスに対する支持金具の取り付け方法を示した説明図
【図5】合わせガラスに支持金具が取り付けられた説明図
【図6】合わせガラスに対する支持金具の他の取り付け方法を示した説明図
【図7】合わせガラスに対する支持金具の他の取り付け方法を示した説明図
【図8】室外側板ガラスの中間接着層側の縦方向辺部を面取り加工して溝部を形成した支持構造の断面図
【図9】室内側及び室外側の板ガラスの縦方向辺部を面取り加工して溝部を形成した支持構造の断面図
【符号の説明】
【0050】
10…合わせガラス、12…支持構造、14…室内側板ガラス、16…室外側板ガラス、18…中間接着層、20…溝部、22…支持金物、24…差込部、26…シリコーンゴム、28…平坦部、30…シーリング材注入部、32…フック部、34…凸部、36…凹部、38…突起、40…シリコーンゴム、42…空間、44…シーリング材、46…貫通孔、48…貫通孔、50…注入用ノズル、52…凹部、54…凸部、56…スポンジ、58…シーリング材、60…連結部材、62…フラットバー、64…係合部、68…ピン、70…シーリング材、72…グレイジングビード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚以上の板状部材が、それぞれの板状部材間に中間接着層を介して接着されてなる合わせ板状部材を支持する合わせ板状部材の支持構造であって、
前記2枚以上の板状部材のうち、少なくとも1枚の板状部材の中間接着層側の面の少なくとも一つの辺部が面取り加工されて、該辺部が合わせ板状部材において溝部となるように形成され、
前記溝部には、該溝部と合致する形状の緩衝材が取り付けられた支持部材が、該緩衝材を介して装着されていることを特徴とする合わせ板状部材の支持構造。
【請求項2】
前記支持部材は、前記合わせ板状部材の室内側に配置される板状部材の中間接着層側の面とは反対側の面にシーリング材により接着されていることを特徴とする請求項1に記載の合わせ板状部材の支持構造。
【請求項3】
前記緩衝材は、シリコーンゴムであることを特徴とする請求項1又は2に記載の合わせ板状部材の支持構造。
【請求項4】
前記緩衝材は、前記合わせ板状部材の室外側に配置される板状部材に接触する部分が、突起又は連続突起を有する形状に形成されていることを特徴とする請求項1、2又は3のうちいずれか一つに記載の合わせ板状部材の支持構造。
【請求項5】
2枚以上の板状部材が、それぞれの板状部材間に中間接着層を介して接着されてなる合わせ板状部材を支持する合わせ板状部材の支持方法であって、前記2枚以上の板状部材のうち、少なくとも1枚の板状部材の中間接着層側の面の少なくとも一つの辺部が面取り加工されて、該辺部が合わせ板状部材において溝部となるように形成され、前記溝部には、該溝部と合致する形状の緩衝材が取り付けられた支持部材が、該緩衝材を介して装着された合わせ板状部材の支持方法において、
前記支持部材は、前記合わせ板状部材の室内側に配置される板状部材の中間接着層側の面とは反対側の面に接触されるゴム部分を有し、
前記合わせ板状部材の室内側に配置される板状部材と前記ゴム部分と前記支持部材とによって包囲された空間に、前記支持部材に形成された孔から、シーリング材を注入することにより、前記支持部材が合わせ板状部材に接着されることを特徴とする合わせ板状部材の支持方法。
【請求項6】
2枚以上の板状部材が、それぞれの板状部材間に中間接着層を介して接着されてなる合わせ板状部材を支持する合わせ板状部材の支持方法であって、前記2枚以上の板状部材のうち、少なくとも1枚の板状部材の中間接着層側の面の少なくとも一つの辺部が面取り加工されて、該辺部が合わせ板状部材において溝部となるように形成され、前記溝部には、該溝部と合致する形状の緩衝材が取り付けられた支持部材が、該緩衝材を介して装着された合わせ板状部材の支持方法において、
前記支持部材と前記合わせ板状部材の室内側に配置される板状部材との間の隙間に、その隙間の側方からシーリング材を打設することにより、前記支持部材が合わせ板状部材に接着されることを特徴とする合わせ板状部材の支持方法。
【請求項7】
2枚以上の板状部材が、それぞれの板状部材間に中間接着層を介して接着されてなる合わせ板状部材を支持する合わせ板状部材の支持方法であって、前記2枚以上の板状部材のうち、少なくとも1枚の板状部材の中間接着層側の面の少なくとも一つの辺部が面取り加工されて、該辺部が合わせ板状部材において溝部となるように形成され、前記溝部には、該溝部と合致する形状の緩衝材が取り付けられた支持部材が、該緩衝材を介して装着された合わせ板状部材の支持方法において、
前記支持部材と前記合わせ板状部材の室内側に配置される板状部材との間の隙間に、その隙間の側方からグレイジングビードを押し込むことにより、前記支持部材が合わせ板状部材に固定されることを特徴とする合わせ板状部材の支持方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−39994(P2007−39994A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−225791(P2005−225791)
【出願日】平成17年8月3日(2005.8.3)
【出願人】(391017975)旭硝子ビル建材エンジニアリング株式会社 (28)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【出願人】(302045705)トステム株式会社 (949)
【Fターム(参考)】