説明

合成ラクトン処方物ならびに使用方法

【課題】抗感染剤、抗増殖剤および抗炎症剤として有効な新たなクラスの化合物を提供すること、ならびに、副作用を最小にするために、特異的細胞傷害性を有する有効な抗新生物剤を提供すること。
【解決手段】ラクトン構造を有する天然および合成の化合物、その化合物の使用方法および作製方法が開示される。その化合物は、抗菌剤、抗真菌剤、および抗炎症剤として、増殖障害(例えば、黒色腫、白血病、乳癌、肺癌、卵巣癌、結腸癌、食道癌、肺癌、およびリンパ性癌)を処置するために有用である。その化合物はまた、炎症性疾患(例えば、アテローム硬化症、肺線維症、全身性エリテマトーデス、膵炎、類肉腫、糸球体炎、および器官移植拒絶の処置または予防に有効である。それらはまた、細菌感染および真菌感染(消化性潰瘍、胃炎、消化不良および胃癌、歯肉炎および歯周炎の処置を含む)の処置または予防に有効である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本出願は、米国特許仮出願第60/424,045号(2002年11月5日出願)に対する優先権を主張する。
【0002】
本発明は、一般に、薬学的に活性なラクトン、それらの薬学的処方物、およびその使用方法、ならびに抗癌剤、抗感染剤および抗炎症剤として有用な化学的に官能化されたラクトンの合成による調製のための方法の分野にある。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
感染、癌および他の障害の処置において有用な多くの異なる化合物の開発にも拘わらず、より低用量で有効であり得、より選択的かつ有効な、より少ない副作用を有するか、または既知の化合物に対する耐性が発生した疾患もしくは障害を処置し得る、新たな化合物を開発する必要が未だにある。
【0004】
化学療法剤は、感染、癌、異常増殖障害(子宮内膜症、再狭窄、乾癬)、および他の障害の処置のために使用される。大部分の化学療法剤は、特異性を欠くことに起因して副作用を有する。例えば、癌は、死亡の主要原因のうちの1つである。癌を処置する主要な様式のうちの1つである、化学療法は、細胞増殖および複製を制限するために特異的に使用される。大部分の化学療法剤はまた、新生物細胞および正常組織(例えば、骨髄、毛包など)の迅速に増殖する細胞に影響を及ぼし、これは、いくつかの負の副作用(毛髪の喪失、悪心、嘔吐、および骨髄機能の抑制が挙げられる)を生じる。さらに、これらの薬剤の有効性は、耐性の発生に起因して、時間を経るにつれて、頻繁に消失する。
【0005】
化学療法剤に対する耐性は、細菌疾患および真菌疾患の処置においてさらにより不活動性である。例えば、Helicobacter pyloriは、米国における多数の人口において胃障害の原因である。このような障害に有効な処置がないことにより、消化性潰瘍、胃炎、消化不良および胃癌の発症がもたらされ得る。別の一般的な細菌疾患は、歯周病であり、そのうち、主要な原因は、細菌プラークであり、そのプラークは、歯周炎の発生および最終的には歯の喪失を生じ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、抗感染剤、抗増殖剤、および抗炎症剤として有効な新たなクラスの化合物を提供することである。
【0007】
本発明の別の目的は、副作用を最小にするために、特異的細胞傷害性を有する有効な抗新生物剤を提供することである。
【0008】
本発明のさらなる目的は、特異的かつ現在使用されている多くの他の薬物とは異なる抗感染剤を提供することであり、薬物耐性生物のための処置の別の方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の要旨)
ラクトン構造を有する式Ia、IbおよびIcの天然化合物および合成化合物、ならびにその化合物を使用する方法および作製する方法、ならびにその化合物の投与のための組成物を開発した。その化合物は、抗菌剤、抗真菌剤、および抗炎症剤として有用であり、増殖性障害(例えば、黒色腫、白血病、乳癌、肺癌、卵巣癌、結腸癌、食道癌、肝臓癌、およびリンパ性癌)を処置するために有用である。その化合物はまた、炎症性疾患(例えば、アテローム硬化症、肺線維症、全身性エリテマトーデス、膵炎、類肉腫、糸球体炎、および器官移植拒絶の処置または予防のために有効である。さらに、それらは、細菌感染および真菌感染の処置または予防(消化性潰瘍、胃炎、消化不良および胃癌の処置を含む)、歯肉炎および歯周炎の処置または予防に有効である。
【0010】
式Ia、Ib、およびIcの化合物を作製するための方法は、一般に、以下の工程を包含する:a)ラクトン構造を有する前駆物質を提供する工程、およびb)その前駆物質と、1以上の化学試薬とを反応させて、その化合物を提供する工程。その化合物は、求核剤(例えば、アルコール、アルコキシド、アミン、または任意の他の中性またはアニオン性の求核試薬)と反応させることによってさらに誘導体化され得る。
本発明はまた、以下の項目を提供する。
(項目1)
式Ia、Ib、またはIcの化合物を作製する方法であって、以下の工程:
a)ラクトン構造を有する前駆物質を提供する工程、および
b)該前駆物質と1以上の化学試薬とを反応させて、式Ia、Ib,およびIcのうちの1つを有する生成物を提供する工程、
を包含する、方法。
(項目2)
項目1に記載の方法であって、前記前駆物質は、式II:
【化1】

の構造を有し、
ここでRおよびRは、独立して解釈され、水素原子またはアルキル基、置換型アルキル基、アリル基、置換型アリル基、アルケニル基、置換型アルケニル基、アルキニル基、置換型アルキニル基、フェニル基、置換型フェニル基、アリール基、置換型アリール基、ヘテロアリール基、置換型ヘテロアリール基、ハロ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、置換型アルコキシ基、アロキシ、フェノキシ基、置換型フェノキシ基、アローキシ基、置換型アローキシ基、アルキルチオ基、置換型アルキルチオ基、フェニルチオ基、置換型フェニルチオ基、アリールチオ基、置換型アリールチオ基、シアノ基、イソシアノ基、置換型イソシアノ基、カルボニル基、置換型カルボニル基、カルボキシル基、置換型カルボキシル基、アミノ基、置換型アミノ基、アミド基、置換型アミド基、スルホニル基、置換型スルホニル基、スルホン酸基、ホスホリル基、置換型ホスホリル基、ホスホニル基、置換型ホスホニル基、ポリアリール基、置換型ポリアリール基、C1〜C20環式基、置換型C1〜C20環式基、複素環式基、置換型複素環式基、アミノ酸基、ペプチド基、およびポリペプチド基からなる群より選択される基もしくは基群である、方法。
(項目3)
以下の構造:
【化2】

のうちの1つによって規定される単離された化合物または合成化合物であって、
ここでR〜Rは、独立して解釈され、水素原子またはアルキル基、置換型アルキル基、アリル基、置換型アリル基、アルケニル基、置換型アルケニル基、アルキニル基、置換型アルキニル基、フェニル基、置換型フェニル基、アリール基、置換型アリール基、ヘテロアリール基、置換型ヘテロアリール基、ハロ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、置換型アルコキシ基、アロキシ基、フェノキシ基、置換型フェノキシ基、アローキシ基、置換型アローキシ基、アルキルチオ基、置換型アルキルチオ基、フェニルチオ基、置換型フェニルチオ基、アリールチオ基、置換型アリールチオ基、シアノ基、イソシアノ基、置換型イソシアノ基、カルボニル基、置換型カルボニル基、カルボキシル基、置換型カルボキシル基、アミノ基、置換型アミノ基、アミド基、置換型アミド基、スルホニル基、置換型スルホニル基、スルホン酸基、ホスホリル基、置換型ホスホリル基、ホスホニル基、置換型ホスホニル基、ポリアリール基、置換型ポリアリール基、C1〜C20環式基、置換型C1〜C20環式基、複素環式基、置換型複素環式基、アミノ酸基、ペプチド基、およびポリペプチド基からなる群より選択される基もしくは基群であり;
Zは、直鎖状、分枝状、または環式の構造形式における、酸素、硫黄、および窒素の基群からなる群より選択されるヘテロ原子であり;
Xは、直鎖状、分枝状、または環式の構造形式における、酸素、硫黄、および窒素の基群からなる群より選択されるヘテロ原子である、
化合物。
(項目4)
表1に規定される化合物1〜50からなる群より選択される、項目3に記載の化合物。
(項目5)
生理学的に受容可能なキャリアと組み合わせて、ラクトン化合物またはその薬学的に受容可能な塩もしくは水和物を含む、薬学的組成物であって、該ラクトン化合物は、以下の構造:
【化3】

のうちの1つを有し、
ここでR〜Rは、独立して解釈され、水素原子またはアルキル基、置換型アルキル基、アリル基、置換型アリル基、アルケニル基、置換型アルケニル基、アルキニル基、置換型アルキニル基、フェニル基、置換型フェニル基、アリール基、置換型アリール基、ヘテロアリール基、置換型ヘテロアリール基、ハロ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、置換型アルコキシ基、アロキシ基、フェノキシ基、置換型フェノキシ基、アローキシ)基、置換型アローキシ基、アルキルチオ基、置換型アルキルチオ基、フェニルチオ基、置換型フェニルチオ基、アリールチオ基、置換型アリールチオ基、シアノ基、イソシアノ基、置換型イソシアノ基、カルボニル基、置換型カルボニル基、カルボキシル基、置換型カルボキシル基、アミノ基、置換型アミノ基、アミド基、置換型アミド基、スルホニル基、置換型スルホニル基、スルホン酸基、ホスホリル基、置換型ホスホリル基、ホスホニル基、置換型ホスホニル基、ポリアリール基、置換型ポリアリール基、C1〜C20環式基、置換型C1〜C20環式基、複素環式基、置換型複素環式基、アミノ酸基、ペプチド基、およびポリペプチド基からなる群より選択される基もしくは基群であり;
Zは、直鎖状、分枝状、または環式の構造形式における、酸素、硫黄、および窒素の基群からなる群より選択されるヘテロ原子であり;
Xは、直鎖状、分枝状、または環式の構造形式における、酸素、硫黄、および窒素の基群からなる群より選択されるヘテロ原子である、
薬学的組成物。
(項目6)
前記ラクトン化合物は、表1に規定される化合物1〜50からなる群より選択される、項目5に記載の薬学的組成物。
(項目7)
前記ラクトン化合物は、抗菌剤、抗真菌剤、抗新生物剤、抗炎症剤、歯肉炎に対する薬剤、または歯周炎に対する薬剤として有効である、項目5に記載の薬学的組成物。
(項目8)
前記ラクトン化合物は、抗菌剤、抗真菌剤、抗新生物剤、抗炎症剤、または歯周炎に対する薬剤として有効である、項目6に記載の薬学的組成物。
(項目9)
前記ラクトン化合物は、アテローム硬化症、肺線維症、全身性エリテマトーデス、膵炎、類肉腫、糸球体炎、および器官移植拒絶からなる群より選択される炎症性疾患を処置または予防するための抗炎症剤として有効である、項目7に記載の薬学的組成物。
(項目10)
前記ラクトン化合物は、アテローム硬化症、肺線維症、全身性エリテマトーデス、膵炎、類肉腫、糸球体炎、および器官移植拒絶からなる群より選択される炎症性疾患を処置または予防するための抗炎症剤として有効である、項目8に記載の薬学的組成物。
(項目11)
前記ラクトン化合物は、癌を処置または予防するための抗新生物剤として有効である、項目7に記載の薬学的組成物。
(項目12)
前記ラクトン化合物は、癌を処置または予防するための抗新生物剤として有効である、項目8に記載の薬学的組成物。
(項目13)
前記ラクトン化合物は、黒色腫、白血病、乳癌、肺癌、卵巣癌、結腸癌、食道癌、肝臓癌、およびリンパ性癌からなる群より選択される癌を処置または予防するための抗新生物剤として有効である、項目7に記載の薬学的組成物。
(項目14)
前記ラクトン化合物は、黒色腫、白血病、乳癌、肺癌、卵巣癌、結腸癌、食道癌、肝臓癌、およびリンパ性癌からなる群より選択される癌を処置または予防するための抗新生物剤として有効である、項目8に記載の薬学的組成物。
(項目15)
前記ラクトン化合物は、消化性潰瘍、胃炎、消化不良、または胃癌を処置または予防するためのHelicobacter pyloriに対して有効な抗菌剤である、項目7に記載の薬学的組成物。
(項目16)
前記ラクトン化合物は、消化性潰瘍、胃炎、消化不良、または胃癌を処置または予防するためのHelicobacter pyloriに対して有効な抗菌剤である、項目8に記載の薬学的組成物。
(項目17)
前記ラクトン化合物は、歯肉炎および/または歯周炎に対して有効であり、前記組成物は、グラム陰性嫌気性微生物Bacteriodes assaccharolyticus、Bacteriodes gingivalisおよびこれらの混合物に対して有効な第2の抗歯肉炎剤をさらに含む、経口組成物である、項目7に記載の薬学的組成物。
(項目18)
前記ラクトン化合物は、歯肉炎および/または歯周炎に対して有効であり、前記組成物は、グラム陰性嫌気性微生物Bacteriodes assaccharolyticus、Bacteriodes gingivalisおよびこれらの混合物に対して有効な第2の抗歯肉炎剤をさらに含む、経口組成物である、項目8に記載の薬学的組成物。
(項目19)
前記器官移植拒絶は、腎臓移植、肝臓移植、肺移植、および心臓移植からなる群より選択される器官移植の拒絶である、項目9に記載の薬学的組成物。
(項目20)
前記器官移植拒絶は、腎臓移植、肝臓移植、肺移植、および心臓移植からなる群より選択される器官移植の拒絶である、項目10に記載の薬学的組成物。
(項目21)
前記化合物は、消化器カンジダ症、尿路カンジダ症、膣カンジダ症、または皮膚カンジダ症、クリプトコッカス症、気管支肺アスペルギルス症、または肺アスペルギルス症、または免疫抑制系の侵襲性アスペルギルス症に対して有効である、項目7に記載の薬学的組成物。
(項目22)
前記化合物は、消化器カンジダ症、尿路カンジダ症、膣カンジダ症、または皮膚カンジダ症、クリプトコッカス症、気管支肺アスペルギルス症、または肺アスペルギルス症、または免疫抑制系の侵襲性アスペルギルス症に対して有効である、項目8に記載の薬学的組成物。
(項目23)
障害を処置または予防する方法であって、該方法は、有効量の化合物またはその薬学的に受容可能な塩もしくは水和物を含む組成物を動物に投与する工程を包含し、該化合物は、以下の構造のうちの1つ:
【化4】

を有し、
ここでR〜Rは、独立して解釈され、水素原子またはアルキル基、置換型アルキル基、アリル基、置換型アリル基、アルケニル基、置換型アルケニル基、アルキニル基、置換型アルキニル基、フェニル基、置換型フェニル基、アリール基、置換型アリール基、ヘテロアリール基、置換型ヘテロアリール基、ハロ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、置換型アルコキシ基、アロキシ基、フェノキシ基、置換型フェノキシ基、アローキシ基、置換型アローキシ基、アルキルチオ基、置換型アルキルチオ基、フェニルチオ基、置換型フェニルチオ基、アリールチオ基、置換型アリールチオ基、シアノ基、イソシアノ基、置換型イソシアノ基、カルボニル基、置換型カルボニル基、カルボキシル基、置換型カルボキシル基、アミノ基、置換型アミノ基、アミド基、置換型アミド基、スルホニル基、置換型スルホニル基、スルホン酸基、ホスホリル基、置換型ホスホリル基、ホスホニル基、置換型ホスホニル基、ポリアリール基、置換型ポリアリール基、C1〜C20環式基、置換型C1〜C20環式基、複素環式基、置換型複素環式基、アミノ酸基、ペプチド基、およびポリペプチド基からなる群より選択される基もしくは基群であり;
Zは、直鎖状、分枝状、または環式の構造形式における、酸素、硫黄、および窒素の基群からなる群より選択されるヘテロ原子であり;
Xは、直鎖状、分枝状、または環式の構造形式における、酸素、硫黄、および窒素の基群からなる群より選択されるヘテロ原子であり、
ここで該障害は、癌、歯肉炎、歯周炎、細菌疾患、真菌疾患、および炎症性疾患からなる群より選択される、
方法。
(項目24)
前記化合物は、表1に規定される化合物1〜50からなる群より選択される、項目23に記載の方法。
(項目25)
前記癌は、黒色腫、白血病、乳癌、肺癌、卵巣癌、結腸癌、食道癌、肝臓癌、およびリンパ性癌からなる群より選択される、項目23に記載の方法。
(項目26)
前記細菌疾患は、消化性潰瘍、胃炎、消化不良および胃癌からなる群より選択される、Helicobacter pyloriによって引き起こされる、項目23に記載の方法。
(項目27)
前記炎症性疾患は、アテローム硬化症、肺線維症、全身性エリテマトーデス、膵炎、類肉腫、糸球体炎、および器官移植拒絶からなる群より選択される、項目23に記載の方法。
(項目28)
前記器官移植拒絶は、腎臓移植、肝臓移植、肺移植、および心臓移植からなる群より選択される器官移植の拒絶である、項目23に記載の方法。
(項目29)
前記障害は、歯肉炎または歯周炎であり、前記組成物は、口腔に毎日投与される局所的処方物である、項目23に記載の方法。
(項目30)
前記障害は、歯肉炎もしくは歯周炎であり、前記組成物は、口腔に毎日投与される局所的処方物である、項目23に記載の方法。
(項目31)
前記真菌疾患は、消化器カンジダ症、尿路カンジダ症、膣カンジダ症、および皮膚カンジダ症、クリプトコッカス症、気管支肺アスペルギルス症、および肺アスペルギルス症、ならびに免疫抑制系の侵襲性アスペルギルス症からなる群より選択される、項目23に記載の方法。
【0011】
(発明の詳細な説明)
(I.ラクトン組成物)
(A.ラクトン)
ラクトンおよびγ位にヒドロキシルを有するそれらそれぞれの誘導体が開示される。ラクトンおよびその誘導体は、合成され得るか、または天然供給源から単離され得る。一実施形態において、そのラクトンおよび誘導体は、クロマトグラフィー方法によって、植物から単離され得、その植物の分類科学名は、Securidaca virgataであり、この植物は、植物科として、Polygalaceaeに属する。本明細書中で使用される場合、用語「ラクトン」とは、五員環ラクトン構造を有する任意の有機化学物質であって、ここでそのC=O基の酸素原子は、硫黄原子または窒素基群によって置換され得る有機化学物質を包含する。用語「誘導体」とは、本明細書中で使用される場合、そのラクトンと、1以上の化学試薬とを反応させることによって、そのラクトンから作製された任意の化合物をいう。その用語はまた、そのラクトンを有機求核剤または無機求核剤で開環して、例えば、その酸、エステル、アミド、または任意の他の生成物を形成することによって、獲得可能な任意の生成物をいう。
【0012】
一実施形態において、そのラクトンは、以下の化学構造:
【0013】
【化5】

【0014】
を有し、
ここでR〜Rは、独立して解釈され、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、または任意の数の炭素原子(好ましくは、1〜8個の炭素原子)を含む任意の他の有機基群であり、必要に応じて、直鎖状、分枝状、または環式の構造形式における酸素、硫黄または窒素基群のようなヘテロ原子を含み、代表的なR〜R基群は、H、アルキル基、置換型アルキル基、アリル基、置換型アリル基、アルケニル基、置換型アルケニル基、アルキニル基、置換型アルキニル基、フェニル基、置換型フェニル基、アリール基、置換型アリール基、ヘテロアリール基、置換型ヘテロアリール基、ハロ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、置換型アルコキシ基、アロキシ(alloxy)基、フェノキシ基、置換型フェノキシ基、アローキシ(aroxy)基、置換型アローキシ(substituted aroxy)基、アルキルチオ基、置換型アルキルチオ基、フェニルチオ基、置換型フェニルチオ基、アリールチオ基、置換型アリールチオ基、シアノ基、イソシアノ基、置換型イソシアノ基、カルボニル基、置換型カルボニル基、カルボキシル基、置換型カルボキシル基、アミノ基、置換型アミノ基、アミド基、置換型アミド基、スルホニル基、置換型スルホニル基、スルホン酸基、ホスホリル基、置換型ホスホリル基、ホスホニル基、置換型ホスホニル基、ポリアリール基、置換型ポリアリール基、C1〜C20環式基、置換型C1〜C20環式基、複素環式基、置換型複素環式基、アミノ酸基、ペプチド基、またはポリペプチド基であり;
Zは、直鎖状、分枝状、または環式の構造形式における酸素、硫黄または窒素基群のようなヘテロ原子であり;
Xは、直鎖状、分枝状、または環式の構造形式における酸素、硫黄、または窒素基群のようなヘテロ原子である。
【0015】
別の実施形態において、そのラクトンは、以下の化学構造:
【0016】
【化6】

【0017】
を有し、
ここでR〜Rは、独立して考慮され、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、または任意の数の炭素原子(好ましくは、1〜8個の炭素原子)を含む任意の他の有機基群であり得、必要に応じて、直鎖状、分枝状、または環式の構造形式における酸素、硫黄、または窒素基群のようなヘテロ原子を含み、代表的なR〜R基群は、H、アルキル、置換型アルキル基、アリル基、置換型アリル基、アルケニル基、置換型アルケニル基、アルキニル基、置換型アルキニル基、フェニル基、置換型フェニル基、アリール基、置換型アリール基、ヘテロアリール基、置換型ヘテロアリール基、ハロ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、置換型アルコキシ基、アロキシ(alloxy)基、フェノキシ基、置換型フェノキシ基、アローキシ(aroxy)基、置換型アローキシ(substituted aroxy)基、アルキルチオ基、置換型アルキルチオ基、フェニルチオ基、置換型フェニルチオ基、アリールチオ基、置換型アリールチオ基、シアノ基、イソシアノ基、置換型イソシアノ基、カルボニル基、置換型カルボニル基、カルボキシル基、置換型カルボキシル基、アミノ基、置換型アミノ基、アミド基、置換型アミド基、スルホニル基、置換型スルホニル基、スルホン酸基、ホスホリル基、置換型ホスホリル基、ホスホニル基、置換型ホスホニル基、ポリアリール基、置換型ポリアリール基、C1〜C20環式基、置換型C1〜C20環式基、複素環式基、置換型複素環式基、アミノ酸基、ペプチド基、またはポリペプチド基であり;
Xは、直鎖状、分枝状、または環式の構造形式における酸素、硫黄または窒素基群のようなヘテロ原子であり;
Zは、直鎖状、分枝状、または環式の構造形式における酸素、硫黄、または窒素基群のようなヘテロ原子である。
【0018】
なお別の実施形態において、αメチレン基を有するそのラクトンは、以下に示されるような構造:
【0019】
【化7】

【0020】
を有し得、
ここでR1〜R4は、独立して考慮され、
水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、または任意の数の炭素原子(好ましくは、1〜8個の炭素原子)を含む任意の他の有機基群であり得、必要に応じて、直鎖状、分枝状、または環式の構造形式における酸素、硫黄、または窒素基群のようなヘテロ原子を含み、代表的なR〜R基群は、アルキル基、アリル基、置換型アルキル基、アルケニル基、アリル基、置換型アリル基、置換型アルケニル基、アルキニル基、置換型アルキニル基、フェニル基、置換型フェニル基、アリール基、置換型アリール基、ヘテロアリール基、置換型ヘテロアリール基、ハロ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、置換型アルコキシ基、アロキシ(alloxy)基、フェノキシ基、置換型フェノキシ基、アローキシ(aroxy)基、置換型アローキシ(substituted aroxy)基、アルキルチオ基、置換型アルキルチオ基、フェニルチオ基、置換型フェニルチオ基、アリールチオ基、置換型アリールチオ基、シアノ基、イソシアノ基、置換型イソシアノ基、カルボニル基、
置換型カルボニル基、カルボキシル基、置換型カルボキシル基、アミノ基、置換型アミノ基、アミド基、置換型アミド基、スルホニル基、置換型スルホニル基、スルホン酸基、ホスホリル基、置換型ホスホリル基、ホスホニル基、置換型ホスホニル基、ポリアリール基、置換型ポリアリール基、C1〜C20環式基、置換型C1〜C20環式基、複素環式基、置換型複素環式基、アミノ酸基、ペプチド基、またはポリペプチド基であり;
Zは、直鎖状、分枝状、または環式の構造形式における酸素、硫黄または窒素基群のようなヘテロ原子であり;
Xは、直鎖状、分枝状、または環式の構造形式における酸素、硫黄、または窒素基群のようなヘテロ原子である。
【0021】
式Ia、Ib、およびIcの代表的ラクトンは、以下の表Iに列挙される:
(表I.代表的な合成ラクトン)
【0022】
【化8】

【0023】
【化9】

【0024】
【化10】

【0025】
その式Ia、Ib、またはIcの化合物の薬学的に受容可能な酸付加塩は、式1の遊離塩基の溶液または懸濁液を、薬学的に受容可能な酸の約1種の化学的等価物で処理することによって、従来の様式で調製され得る。従来の濃縮および再結晶化技術は、その塩を単離するために使用され得る。
【0026】
酸性基を含む式1の化合物の薬学的に受容可能な塩基付加塩は、例えば、塩基の約1種の化学的等価物と反応させることによって、その酸から、従来の様式で調製され得る。
【0027】
(B.賦形剤)
そのラクトンおよび機能的誘導体は、経腸投与、非経口投与、または局所的投与(例えば、Encyclopedia of Controlled Drug Delivery,Edith Mathiowitz,Ed.,John Wiley&Sons,Inc.,New York,1999を参照のこと)のための標準的な技術を使用して処方され得る。有効な投薬量は、当業者に公知のインビトロアッセイ(例えば、例において記載されるアッセイ)に基づいて決定され得る。
【0028】
非経口送達に適した薬学的に受容可能なビヒクルとしては、滅菌生理食塩水、リン酸緩衝化生理食塩水、無発熱性滅菌ビヒクル、および標準的な注射用微粒子状処方物(ポリマーマイクロスフェア、マイクロカプセル、リポソーム、およびエマルジョンが挙げられる)が挙げられる。これらは、分解性ポリマー(例えば、ポリ乳酸およびポリグリコール酸、ならびにこれらのコポリマー)、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリヒドロキシアルカノエートを含み得る。
【0029】
適した薬学的に受容可能なキャリアとしては、タルク、アラビアガム、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ココアバター、水性ビヒクルもしくは非水性ビヒクル、動物起源もしくは植物起源の脂肪性物質、パラフィン誘導体、グリコール、種々の湿潤剤、分散剤または乳化剤、ならびに防腐剤が挙げられる。
【0030】
注射のために、そのラクトンは、代表的には、液体キャリア中の溶液または懸濁液として処方される。
【0031】
局所的送達のために、そのラクトンは、軟膏、クリーム、ローション、ゲル、スプレー、または制御放出処方物もしくは徐放性処方物(例えば、経皮パッチ)中に処方され得る。
【0032】
経腸送達のために、そのラクトンは、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、坐剤、懸濁液もしくは液剤(賦形剤(例えば、ラクトースのような糖)、不活性化合物(例えば、ステアリン酸マグネシウム)、パラフィン誘導体、グリコールまたはアラビアガム中に溶解もしくはカプセル化される)に処方され得る。その処方物は、色素、矯味矯臭剤、防腐剤、分散剤もしくは乳化剤、またはその処方物の放出もしくは安定性の特性を改変する物質をさらに含み得る。
【0033】
その活性化合物は、第2の薬学的に受容可能な抗菌剤、ニトロイミダゾール抗生物質(例えば、チニダゾールおよびメトロニダゾール);テトラサイクリン(例えば、テトラサイクリン、ドキシサイクリンおよびミノサイクリン);ペニシリン(例えば、アモキシシリンおよびメチシリン(meziocillin));セファロスポリン(例えば、セファクロル、セファドロキシル、セファドリン、セフロキシム、セフロキシムアキセチル、セファレキシン、セフポドキシムプロキセチル、セフタジジムおよびセファトリアキソン);カルバペネム(例えば、イミペネムおよびメロペネム);アミノグリコシド(例えば、パロモマイシン);マクロライド抗生物質(例えば、エリスロマイシン、クラリスロマイシンおよびアジスロマイシン);リンコサミド抗生物質(例えば、クリンダマイシン);リファマイシン(例えば、リファンピシン);およびニトロフラントインと組み合わせて使用され得る。
【0034】
その化合物と薬学的な制酸剤との組み合わせは、酸関連障害の処置において使用され得る(例えば、酸ポンプインヒビター(例えば、オメプラゾールおよびランソプラゾール)またはHアンタゴニスト(例えば、ラニチジン、シメチジン、およびファモチジン))。
【0035】
(II.ラクトンの合成)
式Ia、Ib、およびIcのラクトンの合成は、以下の工程を包含する:a)そのラクトン構造を有する中間体もしくは前駆物質を形成する工程、およびb)その中間体と1以上の適切な化学薬剤とを、式Ia、Ib、およびIcのラクトンへと反応させる工程。
【0036】
一実施形態において、その方法は、以下の工程を包含する:a)以下の構造:
【0037】
【化11】

【0038】
を有する前駆物質を提供する工程、およびb)その前駆物質と1つ以上の適切な化学試薬とを反応させて、式Ia、Ib、またはIcのラクトン生成物を提供する工程(スキーム1)。
【0039】
【化12】

【0040】
スキーム1により示されるように、アセチレンは、ホスフィン[CH(CHPの存在下でアルデヒドと反応して、化合物Aを形成し得、化合物Aは、環再編成反応を受けて、エノール形態の化合物Bを形成する。エノール化合物Bは、そのケトン形態である化合物Cと平衡状態にある。塩基(例えば、ブチルリチウム、炭酸ナトリウム、水素化ナトリウム、またはナトリウムメトキシドもしくはナトリウムエトキシド)の存在下でのBまたはCのいずれかの反応は、化合物E(式Ic)またはF(式Ib)を形成する。代わりに、そのエノール化合物Bは、NaBHとの還元反応に供されて、飽和化合物Dが形成され得る。化合物Dは、HCOEtとの縮合反応を受けて、エキソ環式エノレートである化合物Gを形成し得、これは、次いで、ホルミルアルデヒドによって還元されて、化合物Hが形成され得る。化合物Hは、塩基(例えば、炭酸ナトリウム、水素化ナトリウムまたはナトリウムメトキシドもしくはナトリウムエトキシド)の存在下で、例えば、ハロアルキルを使用して、容易に誘導体化されて、化合物I(式Ia)が形成され得る。
【0041】
より官能化されるラクトンは、当該分野で容易に利用可能な合成法により調製され得る(例えば、March,「Advanced Organic Chemistry」,第4版,1992,Wiley−Interscience Publication,New Yorkを参照のこと)。
【0042】
式Ia〜cのラクトン化合物の薬学的に受容可能な塩は、酸または塩基(例えば、アミン)の形態にある場合、式Ia〜cの化合物の溶液または懸濁液で、薬学的に受容可能な塩基もしくは酸の約1種の化学的等価物を処理することによって、従来の様式で調製され得る。従来の濃縮および再結晶化技術は、その塩を単離するにあたって使用される。
【0043】
(III.処置方法)
(A.処置される障害)
そのラクトンは、広い範囲の障害を予防または処置するために有用な、抗感染剤、抗増殖剤、および抗炎症剤として有用である。特に、そのラクトンは、例えば、癌、歯肉炎、歯周炎、Helicobacter pyloriにより引き起こされる疾患、細菌により引き起こされる疾患、真菌により引き起こされる疾患、および炎症性疾患を含む障害を処置するために有用である。
【0044】
そのラクトンは、殺真菌組成物、抗菌組成物、抗癌組成物、および抗炎症性組成物に処方され得る。殺真菌組成物は、殺真菌的に有効量の式Ia、IbもしくはIcの化合物またはそれらの塩および不活性な薬学的キャリアから構成される。その殺真菌組成物は、Saccharomyces cerevisiae、Candida albicansおよび他のCandida(例えば、Candida glabrata、krusei、tropicalis、pseudotropicalisおよびparapsilosis)に対して、Aspergillus fumigatus、Aspergillus flavus、Aspergillus niger、Cryptococcus neoformans、Microsporum canis、Trichophyton rubrun、Trichophyton mentagrophyteに対して、および特に消化器カンジダ症、尿路カンジダ症、膣カンジダ症、または皮膚カンジダ症、クリプトコッカス症(例えば、神経髄膜クリプトコッカス症(neuromeningeal cryptococcosis)、肺クリプトコッカス症(pulmonary cryptococcosis)または皮膚クリプトコッカス症(cutaneous cryptococcosis))、気管支肺アスペルギルス症、または肺アスペルギルス症、ならびに免疫抑制系の侵襲性アスペルギルス症と戦うために有効である。その組成物はまた、先天性または後天性の免疫学的抑制における真菌罹患の予防に使用され得る。
【0045】
そのラクトンは、炎症性疾患を処置または予防するために投与され得る。代表的な炎症性疾患としては、アテローム硬化症、肺線維症、全身性エリテマトーデス、膵炎、類肉腫、糸球体炎、および器官移植拒絶(例えば、腎臓移植、肝臓移植、肺移植、および心臓移植)が挙げられる。
【0046】
そのラクトンはまた、増殖性障害(癌を含む)を処置するために投与され得る。細胞成長または増殖における阻害が示される癌の代表的な型としては、黒色腫、白血病、乳癌、肺癌、卵巣癌、結腸癌、食道癌、肝臓癌、およびリンパ性癌が挙げられる。そのラクトンが処置において有用であり得る、異常な増殖性障害の他の型としては、子宮内膜症および血管形成後に内皮組織の異常な過剰増殖によって引き起こされる再狭窄が挙げられる。
【0047】
その抗菌組成物は、例えば、Helicobacter pyloriにより引き起こされる疾患(例えば、消化性潰瘍疾患、胃炎、消化不良、および胃癌)を含む細菌障害を処置または予防するために投与され得る。H.pyloriにより引き起こされる疾患を処置または予防するために有用なその抗菌組成物は、第2の薬学的に受容可能な抗菌剤または薬学的に受容可能な制酸剤と組み合わせて使用され得る。
【0048】
そのラクトン抗菌組成物は、口腔疾患(例えば、歯周炎、プラーク、および歯肉炎)を処置または予防するために有用である。その組成物は、歯肉炎と関連する特定の嫌気性グラム陰性生物に対して有効である。そのラクトン組成物は、動物の口腔に局所投与するための経口処方物の形態で経口ビヒクルに溶解され得る。その経口処方物は、例えば、マウスリンスまたは歯磨剤の形態にあり得る。そのラクトン組成物はまた、そのラクトン組成物を口腔に局所的に適用することによって、口腔衛生を改善するための口腔用組成物に処方され得る。
【0049】
(B.投薬量)
有効量は、処置されるべき疾患または障害、投与様式およびその処方物に基づいて決定される。有効投薬量は、実施例中に記載されるもののようなインビトロアッセイを使用して決定された有効投薬量に基づいて決定され得る。
【0050】
Escherichia coli、Klebsiela pneumoniae、Pseudomona aeroginosa、Staphyloccus aureusに対する4,5−ジヒドロ−3−メチレン−2[3H]フラノン(「Securolide」または「LMSV−6」)(ある型のαメチルラクトン)の高活性およびその低分子量は、非常に有益である。Securolideの利点としては、その利便性および薬理学的応答を促進する迅速性;細胞膜障壁を横断するその可能性(ここで、高分子量が主な妨害である)、およびPseudomonas(これは、より多くの薬物耐性微生物のうちの1つである)に対するその強力な活性が挙げられる。
【0051】
真菌感染と戦うための方法は、殺真菌的に有効な量の式Iの化合物またはその酸付加塩を、口腔経路、直腸経路、非経口経路によって、または皮膚および粘膜上に局所的塗布としての局所経路によって投与する工程を包含するが、その好ましい経路は、口腔経路である。有用な一日用量は、その投与方法、処置される状態、および特定の化合物に依存して、1〜5mg/kgである。
【0052】
その化合物は、単独で投与され得るが、一般に、意図される投与経路および標準的な薬学的実務に関して選択された薬学的キャリアと混合して投与される。例えば、その化合物は、経口的に投与され得るかまたはデンプンもしくはラクトースのような賦形剤を含む錠剤の形態で、または単独でもしくは賦形剤と混合したかのいずれかのカプセル剤において、または矯味矯臭剤もしくは着色剤を含有するエリキシル剤もしくは坐剤の形態において、投与され得る。動物の場合、その化合物は、有利には、約5〜5000ppm、好ましくは、約25〜約500ppmの濃度にある動物飼料もしくは飲料用液体中に含まれる。その化合物は、非経口的に、例えば、筋肉内に、静脈内に、または皮下に注射され得る。非経口投与のために、その化合物は、滅菌水溶液の形態で最もよく使用される。この滅菌水溶液は、他の溶質(例えば、その溶液を等張性にするに十分な塩もしくはグルコース)を含み得る。動物の場合、化合物は、約0.1〜約50mg/kg/日、好ましくは、約0.2〜約10mg/kg/日の投薬レベルにおいて、筋肉内にもしくは皮下に投与され得、単一の一日用量もしくは4分割用量までで与えられ得る。
【0053】
その化合物は、経口経路もしくは非経口経路のいずれかによって、H.pylori感染の処置のためにヒトに投与され得、約0.1〜約50mg/kg、有利には、約0.5〜50mg/kg/日の投薬量レベルにおいて経口的に投与され得、一日用量もしくは4分割用量までで与えられ得る。筋肉内投与もしくは静脈内投与のために、用量レベルは、約0.1〜約100mg/kg/日、好ましくは約0.5〜約50mg/kg/日である。筋肉内投与が単一用量または4分割用量までであり得る一方で、静脈なく投与は、点滴を含み得る。バリエーションは、当業者に公知であるように、処置される被験体の体重および状態ならびに選択される特定の投与経路に依存して、必然的に存在する。
【0054】
第2の抗菌剤および制酸剤は、本発明の化合物について上記と同じ様式で化合物とともに投与され得る。従って、特定の薬剤に依存して、投与は、約0.1〜約500mg/kg、例えば、約1〜3g/日の第2の抗菌剤、および約40〜80mg/日の制酸剤で経口的であり得るか、または約0.1〜約200mg/kg/日で注射によってであり得る。
【0055】
(C.投与様式)
そのラクトン組成物は、任意の適切な投与様式において温血動物に投与され得る。その投与様式は、局所投与または全身投与であり得る。その投与様式は、処置もしくは予防されるべき障害により変動し得る。
【0056】
その組成物は、経腸的投与、非経口投与、または局所投与を介して、動物に投与され得る。代表的な投与様式としては、以下が挙げられる:経口投与、経鼻投与、肺投与、血管内注射、皮下注射、経皮投与、粘膜投与、および口腔経路、直腸経路、もしくは膣経路を介する投与。
【0057】
本発明は、以下の非限定的実施例によってさらに理解される。
【実施例】
【0058】
(実施例1:微生物感受性アッセイ)
培養培地:
溶媒:リン酸緩衝液 0.1N pH=8.0
抗生物質:LMSV−6(Securolide):
【0059】
【化13】

【0060】
培地被覆:2mL/100mLの培地
接種物:4mL/ペトリ皿
培養培地の調製物:
Staphylococo aureus用の培養培地(USP 23<81>)
ペプトン 1.0g
消化性膵臓カゼイン 4.0g
酵母抽出物 3.0g
牛肉抽出物 1.5g
デキストロース 1.0g
寒天 15.0g
水 約1.0リットルにする
滅菌後のpH 6.6±0.1。
【0061】
Pseudomonas aeruginosa用の培養培地(USP23<81>)
膵臓消化性カゼイン 17.0g
大豆パパイン消化物 3.0g
塩化ナトリウム 5.0g
二塩基性リン酸カリウム 2.5g
デキストロース 2.5g
寒天 20.0g
水 約1.0リットルになるまで
滅菌後のpH 7.2±0.1。
【0062】
E.coliおよびk.neumoniae用の培養培地(USP23<81>に従う)
ペプトン 5.0g
酵母抽出物 1.5g
牛肉抽出物 1.5g
塩化ナトリウム 3.5g
デキストロース 1.0g
二塩基性リン酸カリウム 3.68g
一塩基性リン酸カリウム 1.32g
水 約1.0リットルになるまで
滅菌後のpH 7.0±0.05。
【0063】
抗菌活性アッセイ(最小阻害濃度、MIC)
(MIC)試験番号1
方法論:プレートに注ぐ、培地 Mueler Hinton pH=8
セフトリアキソンパターン希釈用の緩衝液 pH=8
サンプル希釈のために2%でTWEEN20TM
使用される微生物:Sarcina lutea
サンプル(S):LMSV−6(感受性ディスクに適用される5純粋μL)
パターン(P):セフトリアキソン(10μgを有するディスク)
P(mm) S(mm)
12 40
15 44
X=127×100=295.35%(10μgのセフトリアキソンに関して)
16 43
43 127
阻害のサンプルゾーンは、パターンより3倍大きかった。
【0064】
(MIC)試験番号2
方法論:プレートに注ぐ、培地 Mueler Hinton pH=8
セフトリアキソンパターン希釈用の緩衝液 pH=8
サンプル希釈のために2%でTWEEN20TM
使用される微生物:Sarcina lutea
サンプル(S):16.0μl/100mLおよび感受性ディスクに適用される10μL)
パターン(P):セフトリアキソン(10gを有するディスク)
P(mm) S(mm)
18 20
16 23
15 19
49 62
X=62×100/49=126.53%(10μgのセフトリアキソンに関して)
(MIC)試験番号3
方法論:プレートに注ぐ、培地 Mueler Hinton pH=8
セフトリアキソンパターン希釈用の緩衝液 pH=8
LMSV−6(Securolide)希釈のために2%でのTween20
使用される微生物:Sarcina lutea
サンプル(10μl/10mLおよび感受性ディスクに適用される20μL)
パターン(P):セフトリアキソン(10μgを有するディスク)
P(mm) S(mm)
18 3
16 3
15 4
49 10
X=10×100/49=20.4%(10μgのセフトリアキソンに関して)
49 10
X=10×100/49=20.4%(10μgのセフトリアキソンに関して)
有意な阻害ゾーンは存在しなかった。従って、最小阻害濃度(MIC)は、0.2μLのLMSV−6に非常に近い。
【0065】
ディスクに適用される容量 阻害ゾーン
5μL.....................42.0mm
1.6M....................20.0mm
MICは、0.2μLのLMSV−6である.....3.3mm
(結果および考察)
ラットを、手術で感染させて、感染を生じさせ、次いで、連続してSecurolideで処置した。とりわけ、Escherichia coli、Klebsiela pneumoniae、Pseudomonas aeroginosa、Staphylococo aureusに対するこれらのラクトンの高い活性、およびその低分子量は、有利である。その試験は、Securolideが、Pseudomonas(これは、排除するのが困難な微生物のうちの1つである)に対して高い活性を有することを明らかに示す。
【0066】
(実施例2:抗真菌活性の決定)
材料および方法:
雌性マウス(体重18〜22g)を使用し、10CFU/マウス(CFU:コロニー形成単位)の割合の量のCandida Albicans 44858を尾静脈に投与した。そのマウスを5匹のマウスの5つのバッチに分け、それらを、以下の様式で処置した:
感染後1時間
群1:そのマウスを、25mg/kgで経口により生成物で処置した
群2:そのマウスを、25mg/kgの用量で、腹腔内により生成物で処置した
群3:そのマウスを、25mg/kgのケトコナゾールで経口により処置した
群4:そのマウスを、25mg/kg用量のケトコナゾールで腹腔内により処置した
群5:そのマウスに、いかなる抗真菌処置も与えなかった。
【0067】
22日の期間にわたって、死亡したマウスを計数した。
【0068】
(結果および考察)
生成物の活性は、2つの投与法で使用された用量において優れていた。その同じ処置はまた、皮膚真菌(例えば、白癬菌)の致死量未満モデルでの「局所的処置」において有効であった。
【0069】
(最小阻害濃度(MIC))
Candida albicans細胞を、J.Antimicrobial Chemotherapy,38,579−587に示されるように調製し、0.1M リン酸溶液で3回洗浄し、その直後に使用して、最小阻害濃度(MIC)を決定した。そのMICを、Comite Nationalの実験室臨床標準の標準的方法に従って、マイクロタイタープレートの改変によって決定した。
【0070】
RPMI−1640およびL−グルタミンを、pH7で、MOPS(3−[N−モルホリノ]プロパンスルホン酸)の0.15M溶液を用いて緩衝化した。Candida albicans細胞(1.5×10細胞/ml)を、RPMI−1640および抗真菌剤の希釈液を含む96ウェルプレートのウェルに添加した。結果を35℃でのインキュベーションの48時間後に読み取り、Candida albicans細胞の増殖を阻害したそのMIC、すなわち、最小阻害濃度を決定した。
【0071】
(最小殺真菌濃度)
48時間でMICを読み取った後、そのプレートを振盪し、10μlのウェルアリコートをウェルから取り出し、それを、デキストロース糖を含む矩形のディスク上に置いた。そのプレートを、35℃で48時間インキュベートし、その最小殺真菌濃度および、コロニー形成単位が全く見られない抗真菌剤の濃度を決定した。
【0072】
(実施例3:細胞傷害性アッセイまたは抗新生物アッセイ)
薬物の抗増殖効果および細胞傷害性効果の定量を、テトラゾリウム塩(MTT(3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド))を用いて行い得る。この比色アッセイにおいて、その黄色のテトラゾリウム塩であるMTTは、生きた細胞のみにある、ミトコンドリア酵素である、スクシネート−デヒドロゲナーゼにより切断されて紫色のホルマザンになる。ホルマザンは、細胞膜に対して非浸透性であるので、生存細胞内に蓄積する。生成されたホルマザンの量は、薬物処置後の生細胞の量に比例する。このアッセイを使用して、多くの癌細胞株に対する本発明者らの化合物の細胞傷害性効果または抗新生物効果を検出する。
【0073】
前者の方法は、種々の癌細胞株(例えば、HEP−2(咽頭癌腫)、HELA(頸部癌腫))を用いる周知の組織培養技術を利用する。そのホルマザン濃度は、マルチウェル走査型分光光度計(ELISAリーダー)によって、Securolide濃度の勾配において測定される。その後のデータ統計処理により、阻害濃度50(IC50)を確立することが可能になり、このIC50は、抗新生物活性の定量的パラメーターである。
【0074】
(材料および方法)
材料:
−培養培地 (DMEN+全て)
−EDTA(細胞膜に存在するCa++/Mg++イオンを捕捉し、プレートからの細胞膜剥離を容易にするためのキレート剤(Quelant Agent))
−トリプシン−EDTA
−DMEM+全ておよび10% TERNERO RECENTAL SERUM
−ジメチルスルホキシド(DMSO、不活性溶媒)
−MTT[3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド]
−マルチウェル走査型分光光度計(ELISAリーダー)
(抗新生物アッセイ)
細胞増殖阻害の評価を、Skehanら,J.Nat.Cancer Inst.82:1107(1990)の方法に従って決定した。細胞を、400〜1200細胞/ウェルの間で96ウェルプレートにプレートし、薬物を添加して、細胞の結合を可能にする前に、37℃で15〜18時間インキュベートした。試験した化合物を、100% DMSOに溶解し、10mM HEPESを含有するRPMI−1640中でさらに希釈した。各細胞株を、化合物の10通りの濃度で処理した(5log範囲)。72時間のインキュベーション後、100mlの氷冷50% TCAを各ウェルに添加し、4℃で1時間インキュベートした。次いで、プレートを、水道水で5回洗浄して、TCA、低分子量代謝産物および血清タンパク質を除去した。スルホロダミンB(SRB)(0.4%、50mL)を各ウェルに添加した。室温で5分間インキュベーションした後、プレートを、0.1% 酢酸で5回すすぎ、風乾した。結合した色素を、旋回振盪機上で、10mM Tris塩基(pH10.5)で5分間溶解させた。光学密度を、570nmで測定した。
【0075】
データを、Sigmoid−Emax Concentration−Effectモデル(Holford,N.H.G.:Scheiner,L.B.,「Understanding the dose−effect relationship:Clinical applications of pharmacokinetic−pharmacodynamic models」,Clin.Pharimiacokin 6:429−453(1981)を参照のこと)で、非線形回帰を用いずにフィットさせ、推定応答の平方の逆数によって重み付けした。そのフィッティングソフトは、Roswell Park Instituteにより、Microsoft FORTRANとともに、Nash(Nash.J.C.,「Compact numericsal method for computers:Linear algebra and function minimization」,John Wiley&Sons,New York,1979を参照のこと)によって採用されるように、Marquardtアルゴリズム(Marquardt,D.W.,「An algorithm for least squares estimation of nonlinear parameters」,J.Soc.Ind.Appl.Math.1963,11,431−441を参照のこと)を用いて、非線形回帰について開発された。50%増殖阻害(IC50)を生じる薬物の濃度を計算した。
【0076】
(実施例4:頸部癌細胞および前立腺癌細胞に対するLMSV−6のインビトロ細胞傷害性)
4種の腫瘍細胞株(ヒト前立腺癌PC−4(アンドロゲン非感受性)およびLnCaP(アンドロゲン非感受性)ならびにヒト頚部癌CaSKi(ヒトパピローマウイルス−(HPV)16型陽性およびC−33(HPV陰性)を含む)を、RPMI−10% ウシ血清、グルタミンおよび抗生物質中、5% COおよび37℃で培養した。
【0077】
LMSV−6(1〜1000g/mLまたは10.2−10,200μMにおいて試験した)の細胞傷害性を、C−33について4時間後に記録した(LD50=538μM)が、他のものについては記録しなかった(LD50>1,982μM)。72時間後に、1×10−2〜10μMの濃度のLMSV−6の存在下での全ての細胞型に対する抗増殖活性が存在した。各細胞株の致死投薬量は、以下に列挙される:
細胞 LD50(μM)
C−33 7.10
LNCaP 26.5
PC−4 59.2
CaSKi 64.3
一般に、メトトレキサート、ドキソルビシン、およびパクリタキセル(LC50=0.1μM)は、0.001〜0.5μM未満の濃度で全ての癌の型の増殖活性を阻害した。唯一の例外は、メトトレキサートであり、これは、CaSKiに対する活性を欠いていた。
【0078】
タモキシフェンは、4種の細胞型全てに対して細胞傷害性であることが分かった(予測された50μMと比較して、LD50=34.5〜79.7μMと測定された)。1000μg LMSV−6および1000μM タモキシフェンの増殖阻害%を表すその曲線は、類似の形状かつ同様の傾向を有し、タモキシフェンは、LMSV−6の1.53倍程度強力であった(それぞれ、LD50=345μMおよび528μM)。
【0079】
(実施例5:Helicobacter pyloriに対する活性)
(抗菌化合物の寒天希釈)
6mgの評価されるべき化合物を、0.6mlの100% ジメチルスルホキシド(DMSO)中に溶解し、次いで、これを滅菌ブルセラブロスで6mlにし、その溶解度を記録した。DMSOの最終濃度は、総容積の10%であった。連続2倍希釈液(3mL Securolide+3mL ブルセラブロス)を、次いで、滅菌ブルセラブロスで作製した。この系列内の各ブロス希釈液の2mLアリコートを、別個の滅菌ペトリ皿に入れ、そのペトリ皿に、18mlの7% ウマ血液を補充した溶解して冷却した(約50℃)ブルセラ寒天を添加した。これは、寒天中、最終的に、Securolideの1:10希釈液、および1%というDMSOの最終濃度を生じた。例えば、寒天中の薬物の最高濃度が100μg/mLである場合。寒天プレートを、接種する一日前に調製し、冷蔵庫に一晩入れておいた。
【0080】
(接種物調製)
Helicobacter pylori培養物を、トリプティケースソイ−5% ヒツジ血液寒天プレート上で維持し、48時間毎に移した。Helicobacter mustelae培養物を、同じ寒天上で維持し、前に移した増殖物の程度に依存して、48〜60時間毎に移した。プレートを、パラジウム触媒を有する水活性化(10ml)CampyPak Plus(BBL Microbiol.Systems)袋とともに、GasPakジャーの中で、37℃でインキュベートした。
【0081】
Helicobacter培養物を、深いペトリ皿中、10ml容積において、10%ウシ胎仔血清を補充したブルセラブロス中で増殖させた。そのプレートを、パラジウム触媒を有する水活性化(10ml)CampyPak Plus袋とともに、GasPakジャー中、50rpmの振盪機上で、37℃で18〜20時間インキュベートした。
【0082】
一晩培養物(約10CFU/mL)を、標準接種物として使用するために、ねじ蓋付き試験管中、ブルセラブロス(FCSなし)中で10倍希釈した。Steerレプリケーターのウェルに、0.8mLの希釈した生物を満たし、0.002ml中約2×10細胞を、寒天表面に配置した。接種したプレートを、GasPakジャーに入れた。そのジャーに、パラジウム触媒を有する水活性化(10ml)CampyPak Plus袋を添加し、37℃で48時間インキュベートした。
【0083】
(結果および考察)
インキュベーション後、全ての試験プレートを、Securolide非含有増殖コントロールプレートに対して比較した。そのMICは、コントロールプレートと比較して、増殖を阻害する濃度である。より高濃度で見ることができる増殖の薄いフィルムは、考慮に入れず、真のMICと考えなかった。コントロール生物をまた、各プレートに接種し、接種物として使用するために1000倍希釈した。そのコントロール生物は、Campylobacter jejuni、およびE.coli[ATCC 35218、Lote 202602,Exp 05/2000(19−258)]、Pseudomonas aeroginosa[ATCC 27853,Lote 202992,Exp 08/2000(19−060)]、E.Cloacae、Providencia stuartiiおよびP.rettgeriのスクリーニング培養物を含む。プレートおよび/または接種物の移動は、2時間より長く微小嫌気環境の外にあるべきではない。Helicobacter培養物を含む全ての操作を、その培養物が糸状菌で汚染される機会を減少するために層流フード中で行った。
【0084】
Leeら,Gastroenterology,99:1315−23(1990)のマウスモデルを、ヒトにおけるH.pyloriに対する化合物のインビボ活性を推定するために使用した。Helicobacter felisを、10%ウシ胎仔血清を含有するブルセラブロス中で増殖させた。凍結培養物を、迅速に融解し;その培養物を、運動性に関してチェックし、0.5ccの融解した凍結培養物を、9.5ccのブルセラ/血清混合物を含む深い組織培養ディッシュに接種した。そのディッシュを、CapyPakジャー[BBL]の中に置いて、微小嫌気環境を確実にした。そのジャーを、37℃のインキュベーター中、60rpmで回転振盪機上に置いた。18時間後、目に見える濁りがなければならない。この培養物を、(位相)顕微鏡下で純度および移動性についてチェックし、次いで、フラスコ中にプールした。Swiss−Webster雌性マウス(18〜20g)を、感染前の18時間にわたって、絶食させた。そのマウスを、1週間の間の別の日に3回感染させた。投薬を、生物の最後の用量が終わって2週間後に始めた。処置を、14連続日にわたって、1日1回施した。治療を完了して約3週間後に屠殺を行った。各マウスについて、その胃を切除し、大きい方の弯曲に沿って開いた。プラグ(3mm組織切片)を、その胃の洞領域から採取した。そのプラグ表面を洗浄し、細片にし、100μlのウレアーゼ試薬を有する試験管に入れた。そのウレアーゼ試薬(pH6.3〜6.5)は、尿素およびフェノールレッドを含んだ。Helicobacterが存在する場合、ウレアーゼは、尿素を分解して、pHの変化を生じる。紫色(アルカリ性)は、Helicobacter陽性であることを示す;赤色/黄色(変化なし)は、Helicobacter陰性であることを示す。あらゆる色の変化を18時間後に記録した。通常、1処置群あたり20匹のマウスが存在し;各群についての陽性%を記録した。
【0085】
Helicobacter pyloriがヒト被験体に存在するか否かを決定するために臨床的に使用される方法がいくつか存在し、この方法は、処置前の感染の初期診断のため、およびその患者から生物を根絶するにあたって、処置の成功を決定するために、使用される。
【0086】
尿素呼吸試験は、放射性標識尿素の消化を包含する。H.pyloriは、尿素を分解するウレアーゼ酵素を生成し;哺乳動物の胃細胞は、この酵素を含まない。従って、標識二酸化炭素の呼気(使用される同位体に依存して、質量分析および放射活性により分析される)は、H.pyloriが存在していることを示す。
【0087】
H.pyloriの感染を評価するために、血清学もまた使用され得る。H.pyloriに対する血清抗体(例えば、IgGおよびIgA)の検出を、酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)を用いて行った。多くの異なるH.pyloriタンパク質を、抗原として使用し得る。
【0088】
患者の内視鏡検査により、組織サンプルが提供され、この組織サンプルを微小嫌気環境中で培養して、H.pylori感染を診断し得る。あるいは、そのサンプルを、多くの染色のうちの1つ(例えば、ギムザまたはヘマトキシリン−エオシン)を使用することによって、組織学的に試験し得る。尿素試験は、H.pyloriによるウレアーゼの生成を再び利用し、この試験もまた、適用され得る。この試験は、尿素加水分解からアンモニアが形成されることによる。このアンモニアにより、pHの観察可能な変化が生じる。
【0089】
(実施例6:歯肉炎に対する活性のアッセイ)
Securolide含有うがい薬を使用した歯肉炎に対する経口用組成物の評価(10週間にわたる30匹のビーグル犬の研究において行った)によって、歯肉炎に対する優れた有効性が明らかに示される。使用される手順は、硬いまたは軟らかい歯の沈着物の完全な除去を包含する。その後、そのイヌを、軟らかい食餌を与えて6週間飼育して、歯肉炎を発生させた。次いで、歯列を、試験液で1週間に5日、1日2回、口の片方に対して約15秒間処置した。その動物を試験し、歯肉の炎症の程度を、0〜3の尺度に従ってスコア付けした:
0=炎症なし、
1=軽度、局所的に水腫、および歯肉縁の赤み、穏やかに指で圧を加えても、出血はもたらされない、
2=中程度の浮腫、歯肉縁の赤み、および穏やかに指で圧を加えると、出血あり、
3=重度の浮腫ならびに歯肉縁および付着歯肉の潰瘍化、ならびに、穏やかに指で圧を加えなくても、出血あり。プラシーボのうがい薬および0.5% メトロニダゾールうがい薬を、それぞれ、陰性コントロールおよび陽性コントロールとして使用した。
【0090】
(結果および考察)
プラシーボと比較すると、Securolideうがい薬は、歯肉炎の発生を有意に減少させた。その得られた生成物は、歯肉炎を調節し、歯周炎を処置するにあたって有効である。さらに、この生成物は、1日あたり1〜3回の口腔への適用という規則正しいレジメンで使用される場合、口腔衛生を改善する単純な手段を提供する。
【0091】
(実施例7:LSV−6のインビトロ変異誘発性研究(エイムス試験)
この研究を、毒物学分析法についてのガイドラインを定めるUSC 79/831の基準に従って行った。
【0092】
エイムス試験は、Salmonella typhimuriumの予め変異させた株における薬物誘導性「復帰変異」を検出する。その株は全て、化学薬剤に対してそれらの細胞膜を透過性にするrfa変異を有する。各試験株は、ヒスチジンオペロン中に既知の変異(塩基対の欠失、置換または付加)を有する。これらの変異の存在は、ヒスチジン欠乏培養培地中でのこれらの細胞の増殖を不能にする。薬物による「復帰変異」は、これらの変異のいずれかの効果を逆にすることができ、その前のヒスチジン陽性状態にその株を回復させ、よって、ヒスチジン欠乏培地中でのS.typhimuriumの増殖を増大させる。
【0093】
薬物は、ヒスチジン欠乏培地中で増殖しているコロニー数の2倍を超える増加を生じる場合、変異誘発性であるといわれる。LMSV−6(1または10μg/mLにおいて)を細菌株TA98に添加すると、ヒスチジン欠乏培地中での通常のコロニー数を増大させず、LMSV−6(100μg/mL以下で)を細菌株TA100に添加しても増大させず、従って、変異誘発性の基準を満たした。これらの予備結果は、LMSV−6は、S.typhimurium TA98またはTA100変異を復帰させず、ヒトゲノムにおいて変異を引き起こすとは予測されないことを示す。
【0094】
(実施例8:健常ボランティアにおけるLMSV−6に対する有害反応の研究)
(方法)
19名の健常ボランティアを、研究に参加させた。その参加者の年齢は、21〜40歳の間であり、平均30.5±7.2歳であった。その体重は、150〜190ポンドの間であり、中央値は、163.2±14.3ポンドであった。その伸長は、1.8〜2.1メートルであり、平均1.9±0.1メートルであった。その被験体を、ヒトでの調査について確立されたその国内基準および国際基準に従って、無作為に選択した。
【0095】
参加者の健康状態を、いくつかの臨床評価、実験室での試験、および心電図および胸部X線写真を使用して確立した。肝臓系および腎臓系の機能を、化学的酵素研究により確認した。同様に、各参加者について、本発明者らは、血液化学試験、病理学試験および検尿を行った。女性に関しては、妊娠および/または授乳していないことを、実験室での試験および婦人科学的評価によって確認した。
【0096】
参加者を、無作為に選択した3群に分けた(n=6):
群I(プラシーボ)には、2.0mlの生理食塩水溶液を与えた(ClNa、0.9%)、
群IIには、60mgのLMSV−6を筋肉内に与え、群III(n=7)には、100mgのLMSV−6を筋肉内に与えた。その参加者は、その分析の客観的パラメーターの基本値を確立するために使用されるいくつかの試験を受け、その試験には、以下が含まれる:
実験室試験:ヘモグラム、血液化学検査、検尿、および検便
心血管機能:動脈内血圧(TA)、心拍数(FC)、橈骨動脈波(PR)、および心調律(RC)
肺機能:肺呼吸(VP)および呼吸頻度(FR)
腎機能:尿容量および尿頻度(FU)
感覚系:聴覚、視覚、嗅覚、味覚、および感覚反射
皮膚および/または外皮:感受性、皮膚の肌理、温度、および筋骨格緊張
自律神経機能:唾液線活性および汗腺活性、胃腸運動性、および内臓反射
過敏性反応:局所的感受性および全身性感受性
評価は、以下の時間間隔にて行った:時間0.0分、5.0分、15.0分、20.0分、30.0分および45.0分;1.0時間、1.5時間、2.0時間、3.0時間、4.0時間、6.0時間、8.0時間、12.0時間、24.0時間、36.0時間、および48.0時間。
【0097】
(結果)
実験室試験および参加者の健康状態を確認するために実施した特別試験の報告によって、上記の値が基礎レベル内に維持されたこと、およびプラシーボを与えた群に関して、いかなる差異も観察されなかったことが、示された。
【0098】
尿機能および微生物学的パターンを取り扱う、実施した実験室試験の結果により、上記の値が、使用した方法についての参照値内に存在することが見出された。同様に、コプラ分析の結果もまた、病理学的変化がないことを示す。
【0099】
この試験の前および間の参加者の群1つ当たりの個々の値および平均±標準偏差を測定して、心血管パラメーター(動脈内血圧(TA)、心拍数(FC)、橈骨動脈波(PR)、および心調律(RC)が挙げられる)に関する、有害な反応およびLMSV−6に対する許容性の幅を決定した。健常なボランティア(60mgおよび100mgのLMSV−6を与え、プラシーボとして0.9%の塩化ナトリウムを与えた)について、これらの結果は、基礎値およびプラシーボコントロール群の値に関連して、TA、FC、PR、およびRCのレベルは、上記の処置によって変化しなかったことを示す。同様に、基礎状態と本研究の後との間で、心電計パターンに変化は存在しなかった。
【0100】
健常ボランティアにおける呼吸機能に関するLMSVの影響の評価に関与する群1つ当たりの個々の値および平均±標準偏差もまた、測定した。その結果は、基礎値およびプラシーボコントロール群の値に関連して、試験した投与量での処置は、参加者の呼吸力学および動力学を変化させなかった。呼吸頻度(FR)は、試験全体の間に、1分間当たり18呼吸〜20呼吸の範囲で維持された。
【0101】
基礎状態およびプラシーボ群において観察されたことに従って、呼吸動力学、吸息、吸引、気管呼吸、気管支呼吸、および胸肺拡張、ならびに上方気流および下方気流を取り扱う、評価したパラメーターのいずれも、いかなる変化も被らなかった。
【0102】
腎機能パラメータに関するLMSV−6の影響の評価は、コントロール群の個体における尿頻度の値、および処置された個体における尿頻度の値は、直接観察した12時間の間に、3.1±0.7〜3.3±1.5回の範囲内に維持され、有意な変動はなかったことを示した。同様に、同じ期間内の平均尿容量は、プラシーボ群において、434.2±213.2ml、489.2±94.3mlおよび394.3±103.9mlの間であった。このことは、基本的腎機能にこの処置が影響を与えなかったことを示す。
【0103】
精神状態および感覚の鋭さ(視覚、聴覚、嗅覚および味覚の識別)に対するLMSV−6の影響のデータは、上記の処置が、機能または分析したパラメータのいずれにおいても、いかなる変化も惹起しなかったことを示す。
【0104】
皮膚の感受性および皮膚温度に対するLMSV−6の影響の評価のデータは、参加者の皮膚の感受性においても、温度においても、いかなる変化も惹起されなかったことを示す。同様に、コントロール群の参加者にも、処置群の参加者のいずれにおいても、筋骨格緊張のいかなる変化の証拠も存在しない。
【0105】
上記の処置は、本研究において、参加者のいずれにおいても、皮膚の肌理または水分においていかなる変化も生じなかった。処置の効果に起因する口腔粘膜および鼻粘膜の特徴における何の変化も生じなかった。
【0106】
局所的および全身的の両方でのアレルギー性の影響(反応性)の評価を取り扱うデータは、参加者のいずれにおいても、アレルギー性反応のいかなる症状発現も存在しなかったことを示す。
【0107】
自律神経レベル(腺および内臓)におけるLMSV−6の評価および影響のデータは、研究した投与量(60mgおよび100mg)の範囲で、胃腸内臓レベル、尿生殖器レベル、咽頭−眼の腺における自律神経変化のいかなる症状発現の証拠も、強心性の影響も、存在しないことを示す。これは言わば、外分泌腺および内分泌腺のレベルで、変化が存在しないことを示す。
【0108】
本研究の結果によって、LMSV−6が、十分な許容性の幅を保有すること、および試験した最大投与量(100mg)は、すべての参加者によって十分に許容されたことが、確認される。同様に、本研究に関与したすべての参加者において有害な反応の証拠も、徴候も、症状も、存在しない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。

【公開番号】特開2010−248261(P2010−248261A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174911(P2010−174911)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【分割の表示】特願2004−548861(P2004−548861)の分割
【原出願日】平成15年11月5日(2003.11.5)
【出願人】(503459497)マグナケム インターナショナル ラボラトリーズ, インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】