説明

合成樹脂の射出成形時に形成される樹脂残留部

【目的】 合成樹脂を材料に射出成形する際に、製品と共に成形されるスプルー、ランナ、ゲートの各部分からなる樹脂の残留物につき、これを再使用する際に他の合成樹脂材料と混合して製品価値を失うのを回避する。
【構成】 金型内において成形されるスプルー(2)、ランナ(3)、ゲート(4)の各部分からなる樹脂残留部(1)の前記スプルー、ランナ、ゲートの少なくとも1つの部分の外表面に使用合成樹脂材料を表示する識別表示部(5)を形成し、樹脂残留部の使用合成樹脂材料の混同を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂を材料に射出成形法によって製品を製造する際に金型の樹脂注入口から製品成形部に至る間において成形されるスプルー、ランナー、ゲートの各部分からなる樹脂残留部に関するものであり、更に詳しくはこの樹脂残留部に識別表示を施し、その使用材料を識別し特定できるようにした樹脂残留部に関する。
【背景技術】
【0002】
広く知られる様に、合成樹脂を材料に射出成形法によって樹脂製品を製造する場合、製品と共に金型の樹脂注入口と製品の成形部との間、つまり金型内にあって樹脂を誘導する流路に沿ってスプルー、ランナー、ゲートと言った樹脂の残留部が棒状の形態で形成されることになる。
この樹脂の残留部は、製品の成形後、製品と共に金型から取り出され、ゲート部分の先端から製品を切り離したのち、直ちに粉砕処理機において粉砕処理するか、ある程度の量が纏まるまで保管し、その後粉砕処理して再利用に回されるのが普通である。
【0003】
この樹脂残留部の粉砕処理に当って、前記前者の場合は問題となることは少ないが、後者のように製品の成形作業後直ちに粉砕処理に回すことなく、ある程度の量が纏まったとき粉砕処理に回す場合には異なる樹脂を材料にした樹脂残留部と紛れる危険があり、異なる樹脂の混入によって同一の樹脂としての再利用ができなくなる問題があった。
ことに、複数種の製品を異なる樹脂を使って製造する場合、多種類の樹脂残留部が発生することになるが、その中には異形状ではあっても同種の樹脂であるもの、或いは同形状であっても異種の樹脂であるもの等が存在し、これらの管理が不充分であると他の樹脂が混入し、粉砕処理後の樹脂の同一性が図れず、物性、品質の低下をもたらし、再利用に適さないものとなる危険があった。
【0004】
従来、この製品成形後に発生する樹脂残留部の処理において異なる樹脂の混入を防止する方法は保管管理を徹底することに頼っているのが現状である。しかし、多くの場合、製品の製造者において処理されず、廃棄業者やリサイクル業者等第三者に渡ることがあることから保管管理が一貫せず、移動の過程において識別が不可能になり、混入する危険を回避できない状態にある。
また、この樹脂残留部は成形する製品によって、また金型によって様々な形態に作られることからこの残留部のみからその材料、つまり使用樹脂を直ちに判別することは困難であり、ことに同一の形状をなす異種の樹脂から形成された樹脂残留部が混入した場合、樹脂毎に選別することすら困難になる。
【0005】
ところで、現在合成樹脂製品において廃棄処分後における再利用を図る上から資源有効利用促進法に基づき樹脂製品に使用樹脂名を表示することが義務付けられているが、これは製品に対してであって、成形時に発生する樹脂残留部については及ばず、表示されていない。
また、識別の方法として従来からプラスチック製の模型、即ちプラモデルにおいて製品(部品)を繋ぐゲート部分に組立のための番号を表示したものがあるが、この番号は樹脂材料を特定するものでも、また識別するものでもなく、部品そのものを特定するに止るものとなっており、使用材料の特定は不可能である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述したような事情に鑑み、合成樹脂を材料とした射出成形法によって製品を製造する際に、製品と共に成形されるスプルー、ランナ、ゲートを含む樹脂残留部について、脱型後に製品を切り離したのち当該樹脂残留部が特定の合成樹脂材料で成形されたものであることを識別することができ、また他の樹脂材料が混入したとき簡単に判別し、選り分けられるようにした合成樹脂を材料に射出成形によって製品と共に成形される樹脂残留部を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上述の目的を達成するため、射出成形機の金型の樹脂注入口から製品形成部に至る間の流路において形成されるスプルー、ランナ、ゲートの各部分を構成する樹脂の残留部の前記スプルー、ランナ、ゲート部分の少なくともいずれか1つの部分に使用樹脂材料を表示する識別表示部を形成したことにある。
本発明は、これにより、製品成形完了後、脱型したのちに前記樹脂残留部について当該識別表示部によって使用樹脂材料を識別可能にし、同一材料の保管管理を容易にすると共に、異なる材料が混入したとき簡単に選り分けられるようにして、再利用に当って粉砕処理する際に異なる樹脂の混入を有効に防止できるようにしたことにある。
【0008】
前記樹脂残留部に形成する識別表示部は視覚的に認識できるものであり、更にはより簡単に判別できるものであることが望まれる。
一般に樹脂残留部となるスプルー部分乃至ゲート部分は樹脂の注入が円滑に行われるように断面形が円形若しくは円形に近い形に形成されるが、本発明はこの樹脂の注入を妨げない範囲で金型の樹脂の流路を加工し、成形される樹脂残留部の表面に形状的特徴を表現し、これにより識別表示部を形成するものとしている。
【0009】
そのため、本発明は前記樹脂残留部を従来の円形断面形に代えて多角形断面形に形成し、或いは非真円形断面形に形成して、この特定される断面形と使用樹脂材料とを合せて外形的形状から使用樹脂材料を特定し、識別できるようにしている。
【0010】
また本発明は、前記樹脂残留部に突起を形成し、この突起の形状によって、或いは数、或いは形成位置、更には複数個の突起による場合は大きさの違い、突起間の間隔の相違等によって個別に特徴を設定し、使用樹脂材料を表示し、識別できるものとしている。
【0011】
また、前記識別表示部は樹脂残留部を形成するスプルー、ランナ、ゲートそれぞれの部分のいずれか、若しくは複数部分に形成し表示することを含み、また、より識別を明確に、且つ容易に判別できるようにするため前記断面形状の特定と共に前記突起を併せ形成するものとしている。
【0012】
更に、前記識別表示部は樹脂残留部の表面に凹部を形成することによって表わすことを含んでいる。
前記凹部は前記突起と同様にその大きさによって、或いは単数、複数の差により、また複数個とする場合は数の違い、相互の間隔の違い等によって個別化し、それぞれの表現を特定化して使用樹脂材料毎の表示を可能とする。勿論、この場合も前記突起の場合と同様に樹脂残留部を構成する部分のいずれか、若しくは複数の部分に表示することを含んでいる。
【0013】
尚、識別表示部を前記凹部によって形成する場合、金型内の流路に突起を形成することになることから樹脂の注入の妨げとなる場合がある。このため凹部を形成する場合はその底部を凹孤面形にしたり、浅く形成して注入の妨げとなるのを回避するよう配慮することになる。
【0014】
ところで、前述の通り、識別表示部の形成は樹脂残留部のいずれの部分に形成表示してもよいが、確認を容易にする上からはスプルー若しくはランナ部分に形成するのが良い。ことに製造する製品が小型である場合は、ゲート部分はこれに伴って細くなり小型化するため断面形状の相違や、凹凸の相違、個数の相違等を判別することが困難になる。従って断面形の大きな部所、即ちスプルー部分或いはランナ部分が形成部所として適することになる。
【発明の効果】
【0015】
以上の如く本発明は、スプルー、ランナ、ゲートそれぞれの部分からなる樹脂残留部について、この樹脂残留部のいずれかの部分に使用樹脂を表示する識別表示部を形成し、これを視覚的に確認できるようにしたことから、製品成形後、製品をゲートから外して樹脂残留部のみを取り纏めておいても、この残留部が前記識別表示部が断面形状によって、或いは突起により、また凹部により特定の使用樹脂を表現するものとなるため、使用樹脂を確認することができる。
【0016】
従って、同一樹脂材料毎の樹脂残留同志を取り纏め保管しておくのに都合がよいと同時に、もし間違えて他の樹脂に係る樹脂残留部が混入することがあっても、その混入を視覚的に識別し、取り除くことが可能であり、再利用に当って樹脂の混入によって生ずる物性乃至品質の低下を有効に且つ容易に回避し、商品価値の低下を防ぐことができる。
【0017】
勿論、前記識別表示部は金型の作成時に樹脂残留部を形成することになる樹脂の注入流路について多角形断面形をなすように、或いは真円形断面形をなす流路の壁面に突起を形成するための凹部を設けたり、またこれとは逆に壁面に小突起を隆設して樹脂残留部に凹部が形成されるようにそれぞれ加工を施せば実施することができる。特に、上記突起として識別表示部を形成する場合は、流路に凹部を穿つことで実施することが可能であるため、既製の金型に対して実施することができる。
次に、本発明を実施の形態に基づき説明し、理解を助けると共に、本発明のその他の特徴とするところを併せて説明することにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
添付する図面の図1から図3は本発明の第1の実施の形態を示すものである。図面において1はスプルー部分2、ランナ部分3、ゲート部分4からなる本発明に係る樹脂残留部である。
上記樹脂残留部1は、製品の射出成形に当って射出成形機の金型内に圧入される合成樹脂によって求める製品と共に樹脂の流路内に残され固化することによって成形される残留物であり、周知のように前記スプルー2は成形機のノズルからの溶融した樹脂を受入れる注入部において形成され、前記ランナ3はスプルー2からの樹脂を複数の製品形成部(キャビティ)に分散供給する流路部分で形成される。そして、ゲート4は上記各ランナ3の先端に接続し、各製品形成部との間の流路において形成されることになる。
【0019】
尚、図示するように、ここではスプルー2の端部から左右に2本の一次ランナ3,3を出し、更に各ランナの端から二次ランナ3a,3bを各直交するように出して、その各先端部にゲート部分4が位置するように設けている。
【0020】
この様な樹脂残留部1において、本実施形態ではランナ部分3について、即ちここでは一次ランナ部分3,3と二次ランナ部分3a,3bについて各断面形状を正四角形断面形に形成して識別表示部5を設けている。
上記識別表示部5は製品の製造に当って使用した樹脂材料を表示するもので、通常断面真円形にして円柱状に形成されるランナ部分についてこれを前記した如く正四角形断面形の角柱状に形成することにより、一つの表示機能を付与したものである。
【0021】
上記識別表示部5と使用樹脂材料との関係は実施者において任意選択し、特定すればよく、例えば図示の識別表示部5の形状をポリカーボネート使用時のものとすれば、同一形状の樹脂残留部1は全てポリカーボネートを使用したとき発生したものとなり、製品を切り離してその使用樹脂を推測する手掛りを全く失った場合においてもこの識別表示部5によって材料を確認することができることになる。
【0022】
尚、前述したように上記識別表示部5は見易く、また特徴が判別し易いことが有利であり、そのためこの実施形態では一次ランナ部分3,3及び二次ランナ部分3a,3bに表現したが、この様に断面形状によって識別できるようにする場合には、一次ランナ部分3,3についてだけ断面四角形にして他を通常の真円形断面としても識別表示機能を発揮することができる。
【0023】
また更に、この様な断面形状をランナ部分3に代えてスプルー部分2に表わし、識別表示部を形成しても、これの使用樹脂を表示することができることは言うまでもない。
要するに、樹脂残留部1を構成するスプルー2、ランナ3、ゲート4の各部分は金型内の製品形成部に樹脂を均一に且つ円滑に誘導するため通常円形断面形に形成されるのを利用して本発明ではこれを異なる断面形にすることで使用合成樹脂の種類に対応させたのである。
【0024】
そのため、本発明では樹脂残留部を構成する各部の断面形状を四角形断面形を含む多角形断面形を以て識別表示部5を形成する場合は、その形成位置を選択し、異ならせることによって複数種の表示態様を作ることができ、これらを使用樹脂のそれぞれの種類に対応させ使用することで識別表示部5の観察を通して樹脂残留部の使用樹脂を判別し、確認することができるのである。
【0025】
図4、図5は樹脂残留部1の部分の断面形状を特定の形状とすることに代えて突起6を設け、識別表示部5を形成するようにした他の実施形態を示すものである。
ここでは、図4に示したようにスプルー部分2の下端から左右に延びる2つのランナ部分3,3にそれぞれ長さの途中に直角に起立する2つの突起6,6を設けている。
【0026】
言うまでもなく、突起6はランナ部分の機能において全く無関係なものであり、従って使用樹脂を特定するに足りる大きさ、形であればよい。
図示するように、2つの突起6は互いに逆向きに突出しているが、この様な形成によって1つの形態を作り、1つの使用樹脂を特定表示することができる。勿論、一方の突起6を省略すれば、他の使用樹脂を表示することができ、また突き出しの向きを揃えたり、突起の数を増したり、突起間の間隔を違える等してそれぞれ異なる表示形態を作り、それぞれに異なる使用樹脂を割り当てることによって樹脂残留部の使用樹脂を特定し、判別することができることになる。
【0027】
この様な突起6の形成による識別表示部5の形成は、ランナ3部分に設ける場合の外にスプルー部分2に、或いはゲート部分4に設ける場合がある。
また突起6の形成に併せて、前記説明の断面形状を特定し、識別表示部を形成するようにすることと併用すると更に表示形態を増すことができ、形状選択の範囲を広げて識別表示部の差別化を図り、個々の使用樹脂の識別を更に容易にすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、パチンコ機に組込まれる合成樹脂製部品の成形の際に発生する樹脂残留部のリサイクルに当って粉砕処理の際に異種の使用樹脂が混入し、物性乃至品質を低下させるのを防止する目的で開発されたものであるが、樹脂の射出成形により金型内で製品と共に成形される全ての樹脂残留物の使用樹脂の識別に実施できるものであり、利用範囲を一つに特定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】金型内で成形される製品を切り離した状態の樹脂残留部の平面図。
【図2】図1の樹脂残留部の正面図。
【図3】図1のA−A線に沿った縦断右側面図。
【図4】その他の樹脂残留部の平面図。
【図5】図4の樹脂残留部の正面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 樹脂残留部
2 スプルー部分
3 ランナ部分
4 ゲート部分
5 識別表示部
6 識別表示のための突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形金型における樹脂材料の注入口から製品成形部に至る間において成形されるスプルー、ランナ、ゲートの各部分からなる樹脂残留部にあって、前記スプルー、ランナ、ゲートの各部分の少なくとも1つの部分の外表面に使用樹脂材料を表示する識別表示部を形成してなることを特徴とした合成樹脂の射出成形時に形成される樹脂残留部。
【請求項2】
請求項1の記載において、識別表示部は樹脂残留部のいずれかの部分を多角形断面形に形成して表示することを特徴とした合成樹脂の射出成形時に形成される樹脂残留部。
【請求項3】
請求項1の記載において、識別表示部は樹脂残留部のいずれかの部分を非真円形断面形に形成して表示することを特徴とした合成樹脂の射出成形時に形成される樹脂残留部。
【請求項4】
請求項1の記載において、識別表示部は樹脂残留部のいずれかの部分に1又は複数個の識別突起を形成して表示することを特徴とした合成樹脂の射出成形時に形成される樹脂残留部。
【請求項5】
請求項1の記載において、識別表示部は樹脂残留部のいずれかの部分に1又は複数個の識別凹部を形成して表示することを特徴とした合成樹脂の射出成形時に形成される樹脂残留部。
【請求項6】
請求項1乃至5までの各請求項の記載において、識別表示部は樹脂残留部のスプルー部分若しくはランナ部分に表示することを特徴とした合成樹脂の射出成形時に形成される樹脂残留部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−7735(P2006−7735A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−192265(P2004−192265)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(000154679)株式会社平和 (1,976)
【Fターム(参考)】