説明

合成樹脂フィルムシートの接合方法及び合成樹脂フィルムシート接合装置

【課題】一対の合成樹脂フィルムを熱溶着し、広幅のシートを形成するにあたり、溶着強度に優れた方法を提供する。
【解決手段】一対のシート同士を直接接合することのできるフィルムの接合方法及び合成樹脂フィルムの接合装置を提供するものであって、一方の合成樹脂製フィルムシート1aの接続端縁部分を一定幅に亘って研磨することにより少なくともコーティング層が点在する状態に形成し、このコーティング層が研磨除去されている端縁部に他方の合成樹脂製フィルムシート2aの非コーティング面での接続端縁部を重ね合わせ、この重ね合わせ部を熱溶着するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂フィルムシートの接合方法及び合成樹脂フィルムシート接合装置に関し、特に、施設園芸ハウスに展伸使用する合成樹脂フィルムシートの接合方法及び合成樹脂フィルムシート接合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、農業用被覆資材として広幅フィルムが使用される。この農業用合成樹脂フィルム等の工業的に製造されるフィルムは1〜4mの幅であり、農業用被覆資材としては幅が不充分である。そこで該フィルムを接合して得た、さらに広幅のフィルムが農業用被覆用資材として使用される。このフィルムの接合方法としては、通常、2枚のフィルムの端部を重ね合わせてあるいは突合せて加熱圧着する接合方法が採用されている。
【0003】
近年、施設園芸ハウスなどに使用されるフィルムシートにあっては、耐候性、流滴性、防塵性を得るために、フィルムシートの片面にフッ素樹脂、アクリル樹脂、あるいはチタンコーティング等のコーティング層を設けるようにしている。
【0004】
このコーティング層は熱接着性に劣ることから、従来は、片面にコーティング層を有する一対のフィルムシートを接合する場合、その重合わせ部あるいは突合せ部での非コーティング面側に接合用テープを配置し、この接合用テープをそれぞれのフィルムシートの非コーティング面に加熱圧着するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−30346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、フィルムシートのコーティングされていない面での接合部分に接合テープを添設し、この接合テープを各フィルムシートの非コーティング面に接合しているものでは、接合テープが位置する部分の肉厚が厚くなるうえ、接合テープという副資材を必要とするという問題がある。
【0007】
本発明は、このような点に着目してなされたもので、一対のフィルムシート同士を直接接合することのできるフィルムシートの接合方法及びその方法により得られた農業用フィルムシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するために請求項1に記載の本発明は、片面がコーティングされている一対の合成樹脂フィルムシートを熱溶着して幅を接ぎ、広幅のフィルムシートに形成するに当り、一方の合成樹脂製フィルムシートの接続端縁部分を一定幅に亘って研磨することにより少なくともコーティング層が点在する状態に形成し、このコーティング層が研磨除去されている端縁部に他方の合成樹脂製フィルムシートの非コーティング面での接続端縁部を重ね合わせ、この重ね合わせ部を熱溶着するようにしたことを特徴としている。
【0009】
また、請求項3に記載の本発明では、片面がコーティングされている一対の合成樹脂フィルムシートをその端縁同士で熱溶着されている幅広のフィルムシートを形成する合成樹脂フィルムシート接合装置であって、一方の合成樹脂フィルムシートの繰り出し部から熱接着装置の入口までの間の合成樹脂フィルムシート走行路を挟む状態で回転式研磨具と押圧回転ローラとを対向配置し、回転式研磨具を合成樹脂フィルムシートのコーティング面側に配置するとともに、押圧回転ローラを合成樹脂フィルムシートの非コーティング面側に配置し、この押圧回転ローラを合成樹脂フィルムシート走行路側に進出する状態に弾性付勢してあることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、一方の合成樹脂フィルムシートの接合端縁部分でのコーティング層を一定幅でコーティング層が点在する状態まで研磨除去し、このコーティング層をが除去された部分を他方合成樹脂フィルムシートの非コーティング面での接合端縁部分に重ね合わせて、熱溶着するようにしてあることから、一対の合成樹脂シートが直接的に接合され、素材樹脂同士の溶融接着となることから、強い一体性を持って接合されることになる。
【0011】
しかも、従来必要とされていた接合テープを不要とすることから、広幅フィルムシートの製造コストを低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明を適用した合成樹脂フィルムシート熱接合装置の側面図である。
【図2】研磨装置部分の取り出し側面図である。
【図3】研磨装置部分の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この合成樹脂フィルムシート熱接合装置は、一面をアクリル樹脂等でコーティングした合成樹脂フィルムが巻回してある原反ロール(1)(2)をそれぞれ回転可能に保持している原反支持台車(3)(4)と、原反支持台車(3)(4)に支持されている原反ロール(1)(2)から引き出された合成樹脂フィルムシート(1a)(2a)の端部を重ね合わせ、その端部同士を熱融着させる熱接着装置(5)とで構成してある。
【0014】
この熱接着装置(5)は、基台(6)とこの基台(6)に支持されている上部枠(7)とに無端ベルト(8)をその一部で対向する状態に配置し、この無端ベルト(8)を対向部分で同方向に移動するように構成し、この無端ベルト(8)の対向配置されている部分での裏面側に加熱ユニット(9)と冷却ユニット(10)とを無端ベルト移動方向上流側から順に配置してある。なお、この各無端ベルト(8)は四フッ化エチレン樹脂等の耐熱性・耐摩耗性に優れた合成樹脂で構成されている。
【0015】
一方の原反支持台車(3)には原反ロール(1)から導出された合成樹脂フィルムシートの走行路(T)に、該合成樹脂フィルムシート(1a)を挟む状態で回転式研磨具(11)と押圧回転ローラ(12)とを対向配置し、回転式研磨具(11)を合成樹脂フィルムシート(1a)のコーティング面側に配置するとともに、押圧回転ローラ(12)を合成樹脂フィルムシート(1a)の非コーティング面側に配置してある。そして、この押圧回転ローラ(12)を合成樹脂フィルムシート走行路(T)側に進出する状態に弾性付勢具(13)で弾性付勢することにより、合成樹脂フィルムシート(1a)と回転式研磨具(10)との当接圧力を予め設定した圧力に制御できるようにしてある。
【0016】
この回転式研磨具(10)としては、回転砥石や無端ベルトに形成した研磨布を一対のローラ間に張設したサンダーあるいは、多数の研磨紙を放射に配置してなるフラップホイールを使用することができるが、対象素材が合成樹脂フィルムシートであること、及び目詰まり対策を考えれば、フラップホイールが好ましい。
【0017】
このように、一方の合成樹脂フィルムシート(1a)のコーティング面側の端縁部を回転式研磨具(10)で一定幅の分だけ研磨すると、その部分でのコーティング層が除去される。このとき、研削対象物が合成樹脂フィルムシートという極薄物での積層体であることからコーティング層を完全に除去することは困難であることから、コーティング層が部分的に点在する梨地の状態に研削・研磨する。
【0018】
次に、この梨地となっている一定幅の端縁部分に他方の合成樹脂フィルムシート(1b)の非コーティング面での端縁部分を重ね合わせた状態で加熱処理装置(5)に供給し、重ね合わせ部分を加熱融着する。このとき、重ね合わせ部では、コーティング層のないポリ塩化ビニル樹脂と梨地処理されて露出しているポリ塩化ビニル樹脂成分同士が直接的に当接して溶融され一体化することになるから、いわゆる接着剤成分がなくとも、両者は強固に接合されることになる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は、ビニールハウスなどに使用される広幅農業用フィルムシートの製造やテント等の製造に利用することができる。
【符号の説明】
【0020】
1a・2a…合成樹脂フィルムシート、5…熱接着装置、11…回転式研磨具(フラップホイール)、12…押圧回転ローラ、T…合成樹脂フィルムシート走行路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
片面がコーティングされている一対の合成樹脂フィルムシート(1a)(2a)を熱溶着して幅を接ぎ、広幅のフィルムシートに形成するに当り、
一方の合成樹脂製フィルムシート(1a)の接続端縁部分を一定幅に亘って研磨することにより少なくともコーティング層が点在する状態に形成し、このコーティング層が研磨除去されている端縁部に他方の合成樹脂製フィルムシート(2a)の非コーティング面での接続端縁部を重ね合わせ、この重ね合わせ部を熱溶着するようにしたことを特徴とする合成樹脂フィルムシートの接合方法。
【請求項2】
合成樹脂製フィルムシート(1a)の接続端縁部分をフラップホイール(11)で一定幅に亘って研磨する請求項1に記載した合成樹脂フィルムシートの接合方法。
【請求項3】
片面がコーティングされている一対の合成樹脂フィルムシート(1a)(2a)をその端縁同士で熱溶着されている合成樹脂フィルムシート接合装置であって、
一方の合成樹脂フィルムシート(1a)の繰り出し部から熱接着装置(5)の入口までの間の合成樹脂フィルムシート走行路(T)を挟む状態で回転式研磨具(11)と押圧回転ローラ(12)とを対向配置し、回転式研磨具(11)を合成樹脂フィルムシート(1a)のコーティング面側に配置するとともに、押圧回転ローラ(12)を合成樹脂フィルムシート(1a)の非コーティング面側に配置し、この押圧回転ローラ(12)を合成樹脂フィルムシート走行路(T)側に進出する状態に弾性付勢してあることを特徴とする合成樹脂フィルムシート接合装置。
【請求項4】
回転式研磨具(11)がフラップホイールである請求項4に記載した合成樹脂フィルムシート接合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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