説明

合成樹脂製容器及びその輸送方法

【課題】輸送時の振動、特に共振振動によってピンホールが生じるなどして容器が損傷し、内容物が漏えいしてしまうのを防止することができる輸送適性に優れた合成樹脂製容器及びその輸送方法を提供する。
【解決手段】箱詰めされた際に箱内で隣接する各容器1の互いの上下動を抑制しあう凸条7を、少なくとも胴部3の最大胴径部に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸送適性に優れた合成樹脂製容器及びその輸送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエチレンテレフタレートなどの合成樹脂を用いて有底筒状のプリフォームを形成し、次いで、このプリフォームを延伸ブロー成形などによってボトル状に成形してなる合成樹脂製の容器が、各種飲料品を内容物とする飲料用容器として知られている。
【0003】
このような合成樹脂製の容器は、近年、急速に普及、浸透するようになってきており、その広範な普及に伴って、容器の軽量化が強く求められている。なかでも、比較的容量の多い用途に供されるものにあっては、容器の大型化にともなう重量の増加が問題視さるようになってきており、また、材料樹脂の使用量も増えるなどのコスト的な不利についても改善が要求されている。
【0004】
このため、特許文献1には、容器の軽量化と樹脂の使用量の削減とを図るべく、ボトル状容器の平均肉厚を0.1〜0.2mmとする旨の記載があり、容器の軽量化や、材料樹脂の使用量の削減を図るには、容器を薄肉にすることが考えられる。
【0005】
【特許文献1】特開2003−191319号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、この種の容器は、通常、各種の内容物が充填された後に段ボール箱などに箱詰めされ、トラックなどの荷台に積まれて輸送される。このことを考慮して、本発明者らが容器のさらなる薄肉化を図るために鋭意検討を重ねていったところ、従来にはなかった新たな問題が見出された。
【0007】
すなわち、日本工業規格で定められている包装貨物−振動試験方法(JIS Z 0232)に準拠して、輸送時の振動による影響について調べてみたところ、容器を薄肉化していくにしたがって、内容物が漏えいしてしまうという不具合が生じる頻度が高くなっていった。そして、内容物が漏えいした容器を観察してみたところ、そのような容器の底部にピンホールの発生が認められた。
【0008】
そこで、そのようなピンホールの発生メカニズムについて検討したところ、例えば、2L程度の大容量の容器に内容物を充填したものにあっては、その重量や形状に関係なく、上記試験において、容器には9〜15Hz程度の範囲で1次共振域が認められた。本発明者らの検討の結果、振動による衝撃によってピンホールが生じるというよりは、共振により容器が激しく上下動して脈動を起こすなど、容器の全高が弾性的に大きく伸び縮みするくらいの著しい撓み変形を繰り返す際の疲労破壊が、容器にピンホールを生じさせる主な原因となっていることをつきとめた。
【0009】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、輸送時の振動、特に共振振動によってピンホールが生じるなどして容器が損傷し、内容物が漏えいしてしまうのを防止することができる輸送適性に優れた合成樹脂製容器及びその輸送方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る合成樹脂製容器は、口部、肩部、胴部及び底部を有する合成樹脂製容器であって、箱詰めされた際に箱内で隣接する各容器の互いの上下動を抑制しあう一又は複数の凸部を、少なくとも前記胴部の最大胴径部に形成した構成としてある。
【0011】
また、本発明に係る合成樹脂製容器の輸送方法は、口部、肩部、胴部及び底部を有する合成樹脂製容器に内容物を充填密封した後に箱詰めして輸送する合成樹脂製容器の輸送方法であって、箱詰めされて隣接する各容器の前記胴部が輸送時の振動によって当接した際に、少なくとも前記胴部の最大胴径部に設けた一又は複数の凸部によって互いの上下動を抑制する方法としてある。
【発明の効果】
【0012】
以上のような本発明によれば、内容物を充填密封した後に箱詰めして輸送するときの振動、特に共振振動によって容器が損傷して内容物が漏えいしてしまうのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
ここで、図1は、本実施形態に係る合成樹脂製容器の概略を示す説明図であり、図1(a)は、本実施形態に係る合成樹脂製容器の概略を示す正面図、図1(b)は、同平面図、図1(c)は、同底面図である。
【0014】
図1に示す容器1は、口部2、肩部3,胴部4、及び底部5を備えている。口部2は円筒状とされ、このような口部2の開口端側の側面には、ねじ式キャップとされた蓋体6を取り付けるためのねじ山が、蓋体取り付け手段として設けられている。これにより、内容物を充填した後に、蓋体6を口部2に取り付けることによって、容器内を密封できるようになっている。
なお、蓋体取り付け手段は、蓋体6として打栓式キャップを用いる場合には、口部2に係止リングを設けて打栓により蓋体6を取り付けるようにするなど、他の手段を採用してもよい。
【0015】
また、口部2は、この種の容器に一般に形成されるサポートリング2aの直下でほぼ同一径となっている部分を含み、高さ方向下方に向かって拡径しはじめる部位を口部2と肩部3との境界とすることができる。
ここで、高さ方向とは、口部2を上にして容器1を水平面に置いたときに、水平面に直交する方向に沿った方向(鉛直方向)をいうものとする。
【0016】
胴部4は、容器1の高さ方向の大半を占めるほぼ同一径の円筒状に形成された部位をいい、この胴部4の上端から絞り込まれて口部2に連続する部位を肩部3という。そして、このような絞り込みが開始される位置を、胴部4と肩部3との境界とすることができる。
また、底部5は、胴部4の下端から絞り込まれていった下位の部分をいい、このときの絞り込みの開始位置を、胴部4と底部5との境界とすることができる。
【0017】
また、図1に示す例では、円筒状に形成された胴部3に、その側面に沿って一条の凹溝8が螺旋状に形成されている。そして、このような凹溝8を形成することにより、高さ方向に隣接する凹溝8の間には、凹溝8と並列して凸条7が形成されている。
なお、本実施形態では、箱詰めされた際に箱内で隣接する各容器の互いの上下動を抑制しあう凸部として凸条7を形成してある。
【0018】
本実施形態において、胴部3に形成する凸条7は、内容物が充填密封された複数の容器1を縦横に並べて段ボール箱などに箱詰めして輸送するにあたり、箱内で隣接する各容器1の胴部3が輸送時の振動によって当接した際に互いの凸条7が干渉しあうように、少なくとも胴部3の最大胴径部となる部位に形成されていればよい。このような凸条7を少なくとも胴部3の最大胴径部となる部位に形成することで、輸送時の振動による容器1の上下動を隣接する容器1どうしが互いに抑制しあうようになる。
これにより、輸送時の共振振動が抑止され、共振により容器1が激しく上下動して撓み変形を繰り返す際の疲労破壊によってピンホールが生じるなどして容器1が損傷し、内容物が漏えいしてしまうのを防止することが可能になる。
【0019】
また、箱詰めされた容器1は、その輸送時に振動を受けながら箱内のわずかな隙間(予め箱の内面と容器1との間に設定されている隙間や、箱詰めして静置されているときには容器1の天面が箱の内面に押さえられていても、振動時に容器1の全高が弾性的に縮むことによって箱の内面との間に生じる隙間など)の範囲で軸周りに回転したり、隣接する容器1に近づいたり、離れたりするというように不規則に移動する。
ここで、図2に、箱内で隣接する二つの容器1を取り出して示す。各容器1は、この状態で輸送時の振動により軸周りに回転したり、隣接する容器1に近づいたり、離れたりする。
【0020】
このとき、箱内で隣接する各容器1の胴部3が当接する際に、例えば、図3(a)に示す状態から、容器1が軸周りに回転することによって(図2参照)、一方の容器1に形成された凸条7と、他方の容器1に形成された凹溝8との高さ位置が同じになり(図3(b)参照)、このときに凸条7と凹溝8とが係合するようになっていれば(図3(c)参照)、箱内で隣接する各容器1の互いの上下動をより効果的に抑制することができる。
しかも、一方の容器1に形成された凸条7と、他方の容器1に形成された凹溝8との係合は、輸送時の振動を利用してなされるため、容器1を箱詰めする際に予め凸条7と凹溝8とを係合させておく必要はない。このため、容器1の箱詰め作業は容易となり、特に、図1に示すような円筒状の胴部3を有する丸形ボトルとした場合は、箱詰めする際の容器1の方向を考慮しなくてもよいので、箱詰めする際の作業性も良好である。
ここで、図3は、図2中鎖線で囲む部分に相当する縦断面拡大図であり、作図上、その切断面の肉厚を省略している。
【0021】
なお、一方の容器1に形成された凸条7と、他方の容器1に形成された凹溝8とは、輸送中、常に係合した状態にある必要はない。係合と解除を繰り返すこととなっても、箱内で隣接する各容器1の互いの上下動を抑制して、輸送時の共振振動を十分に抑止することができる。
【0022】
以上のようにして、箱内で隣接する一方の容器1に形成された凸条7と、他方の容器1に形成された凹溝8との係合によって、当該各容器1の互いの上下動を抑制するにあたり、水平方向に対する凹溝8及び凸条7の傾斜角度θは、10゜以下とするのが好ましい。水平方向に対する凹溝8及び凸条7の傾斜角度θが10゜を超えると、箱内で隣接する一方の容器1に形成された凸条7と、他方の容器1に形成された凹溝8とが係合しにくくなってしまう傾向にある。
また、胴部4の側面に沿って凹溝8を螺旋状に形成するにあたり、そのピッチPは、16.5mm以下とするのが好ましい。このようにすると、箱内で隣接する一方の容器1に形成された凸条7と、他方の容器1に形成された凸条7とが干渉しあいやすくなる。
【0023】
また、箱内で隣接する一方の容器1に形成された凸条7と、他方の容器1に形成された凹溝8との係合が、より確実になされるようにするには、凹溝8の幅Wを7〜14mm、凹溝8の深さDを0.5〜10mmとするとともに、凸条7の幅Wを2.5〜9.5mmとするのが好ましい。このとき、凹溝8の幅Wと凸条7の幅Wとの間に、W≧Wとなる関係が成り立っていると凸条7が凹溝8にかみ合いやすくなり、特に、W>Wとなる関係が成り立つときには、凸条7が凹溝8内に収まりやすくなり、より効果的に共振を抑止することができ好ましい。
【0024】
また、箱内で隣接する一方の容器1に形成された凸条7と、他方の容器1に形成された凹溝8とが係合した状態でも、容器1を箱から取り出しやすくするためには、水平方向に対する凹溝8の側面の傾斜角度θを4〜7゜とするのが好ましい。
当該角度θが4゜に満たないと、容器1を箱から取り出す際の抵抗が大きくなり、容器1の取り出しに支障をきたしてしまうことがある。当該角度θが7゜を超えてしまうと、箱内で隣接する一方の容器1の胴部に形成された凸条7と、他方の容器1に形成された凹溝8との係合が解除されやすくなる傾向にある。
【0025】
なお、凹溝8のピッチP、凹溝8の幅W、深さD、凸条7の幅W、水平方向に対する凹溝8の側面の傾斜角度θの各値は、高さ方向に沿った容器1の縦断面における値とする(図3(a)参照)。
【0026】
また、共振により容器が激しく上下動して撓み変形を繰り返す際の疲労破壊によってピンホールが生じるのは、主として容器底部であるところ、そのようなピンホールが容器底部に生じないようにするために、底部5は、図1に示すような形状とするのが好ましい。
図1に示す例において、底部5は、その底面側の周縁に複数(図示する例では八つ)の接地部5aが形成されており、隣接する接地部5a間には溝部5bが放射状に形成されている。そして、それぞれの接地部5aには、ほぼ同一円周上に位置する稜線部5cが形成されており(図1(c)参照)、この稜線部5cが接地面に接した状態で容器1が正立するようになっている。
【0027】
このようにすることで、容器1に、その上下動による負荷がかかっても、底部5が弾性的に変形して形状を維持し、接地部5aが折れ曲がるように変形して潰れてしまうのを有効に回避することができる。共振により容器が激しく上下動して接地部5aが、例えば、図1(c)中一点鎖線で示す部位(一つの接地部5aについて代表して示す)で折れ曲がるように繰り返し変形すると、その折り曲げられた部位にピンホールが発生しやすくなる。このため、接地部5aが折れ曲がるように変形しないようにするのは、ピンホールの発生を防止する上で有効である。
【0028】
また、容器1を箱詰めするに際しては、容器1を収容して蓋をした箱を静置した状態で、箱の内面と容器1との間に隙間が形成されないようにするのが好ましい。箱の内面と容器1との間に形成される隙間の設計値としての好ましい許容範囲は、容器1の高さ方向と、これに直交する横方向(水平方向)のいずれにおいても±5mm程度である。
【0029】
ここで、例えば、一般にA式箱と称される段ボール箱を利用すると、通常、内側フラップの間に隙間ができるが、この内側フラップの間に厚みの同じカートン材を敷くなどすれば、箱詰めして静置した状態での容器1の高さ方向の隙間をなくすようにすることができる。
【0030】
以上のような本実施形態における容器1は、例えば、公知の射出成形や圧縮成形などにより製造された、熱可塑性樹脂からなる有底筒状のプリフォームを二軸延伸ブロー成形するなどして所定形状に成形することができる。
容器1を成形するのに使用する熱可塑性樹脂としては、延伸ブロー成形が可能であれば、任意の樹脂を使用することができる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート,ポリカーボネート,ポリアリレート,ポリ乳酸又はこれらの共重合体などの熱可塑性ポリエステル,これらの樹脂あるいは他の樹脂とブレンドされたものなどが好適である。特に、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂が、好適に使用される。また、アクリロニトリル樹脂,ポリプロピレン,プロピレン−エチレン共重合体,ポリエチレンなども使用することができる。
【0031】
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、前述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
【0032】
例えば、前述した実施形態では、円筒状に形成された胴部3の側面に沿って一条の凹溝8を螺旋状に形成し、この凹溝8と並列するように凸条7を形成したが、複数条の凸条7及び凹溝8を形成することもできる。
【0033】
また、前述した実施形態では、箱内で隣接する各容器の互いの上下動を抑制する凸部として、高さ方向に隣接する凹溝8の間に凸条7を形成した例を示したが、かかる凸部の具体的な形態はこれに限定されない。
すなわち、箱内で隣接する各容器に形成された凸部が互いに干渉しあい、一方の凸部が他方の凸部を乗り越えて、当該他方の凸部が形成されている容器の上下動を押さえ込んで、輸送時の振動による容器の上下動を隣接する容器どうしが互いに抑制しあうようになっていればよい。
【0034】
また、前述した実施形態では、丸形ボトルの例を示したが、本発明は、容器の横断面が正方形状、長方形状とされた角形ボトルのほか、横断面が多角形状、楕円形状とされた各種形態の容器に適用することもできる。
また、例えば、角形ボトルに本発明を適用する場合、箱内で隣接する各容器の互いの上下動を抑制する凸部は、容器胴部の全周にわたって形成せずに、互いに当接する胴部側面(最大胴径部)に部分的に形成されたものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
以上のような本発明は、輸送適性に優れた合成樹脂製容器及びその輸送方法として広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る合成樹脂製容器の実施形態の概略を示す説明図である。
【図2】箱内で隣接する二つの容器を取り出して示す説明図である。
【図3】図2中鎖線で囲む部分に相当する縦断面拡大図である。
【符号の説明】
【0037】
1 容器
2 口部
3 肩部
4 胴部
5 底部
7 凸条(凸部)
8 凹溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
口部、肩部、胴部及び底部を有する合成樹脂製容器であって、
箱詰めされた際に箱内で隣接する各容器の互いの上下動を抑制しあう一又は複数の凸部を、少なくとも前記胴部の最大胴径部に形成したことを特徴とする合成樹脂製容器。
【請求項2】
前記凸部が、
円筒状とされた前記胴部の側面に沿って一又は複数の凹溝を螺旋状に形成することにより、高さ方向に隣接する前記凹溝間に形成された凸条である請求項1に記載の合成樹脂製容器。
【請求項3】
水平方向に対する前記凹溝及び前記凸条の傾斜角度が10゜以下である請求項2に記載の合成樹脂製容器。
【請求項4】
前記凹溝の幅が7〜14mm、前記凹溝の深さが0.5〜10mmであり、前記凸条の幅が2.5〜9.5mmである請求項2又は3のいずれか一項に記載の合成樹脂製容器。
【請求項5】
前記凹溝のピッチが16.5mm以下である請求項2〜4のいずれか一項に記載の合成樹脂製容器。
【請求項6】
口部、肩部、胴部及び底部を有する合成樹脂製容器に内容物を充填密封した後に箱詰めして輸送する合成樹脂製容器の輸送方法であって、
箱詰めされて隣接する各容器の前記胴部が輸送時の振動によって当接した際に、少なくとも前記胴部の最大胴径部に設けた一又は複数の凸部によって互いの上下動を抑制することを特徴とする合成樹脂製容器の輸送方法。
【請求項7】
前記凸部が、
円筒状とされた前記胴部の側面に沿って一又は複数の凹溝を螺旋状に形成することにより、高さ方向に隣接する前記凹溝間に形成された凸条であり、
箱内で隣接する各容器の一方に形成された前記凸条と、他方に形成された前記凹溝とが係合するようにして互いの上下動を抑制する請求項6に記載の合成樹脂製容器の輸送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−89790(P2010−89790A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−258719(P2008−258719)
【出願日】平成20年10月3日(2008.10.3)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】