説明

合成樹脂製容器及びユニット皿

【課題】小魚を収容する扁平な合成樹脂製容器の軽量化と、容器が空の状態では閉じており、容器に小魚を収容すると開くドリップ用逃し孔を形成した合成樹脂製容器を提供する。
【解決手段】合成樹脂シートを真空成形して上面開口の扁平単位容器2を形成する。容器底板25の複数箇所に内側が凹んで外側に膨らんだ脚部4を設け、該脚部にその膨らみ中央部近傍から膨らみ外周部側に延びる複数の切込み条5、5を施して、隣り合う切込み条間に可撓性開閉片41、41を形成し、容器2に収容した内容物の重みで、開閉片が撓むことにより切込み条5、5が開いて逃し孔を形成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として小魚を収容する扁平な合成樹脂製容器、及び該容器の複数個が分離可能に繋がったユニット皿に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数個の扁平な矩形の単位容器を着脱可能に連結して大形のユニット皿とし、該ユニット皿に収容したイカナゴ等の小魚を一挙に茹で、小魚の販売時には単位容器毎に分離して少量づつ販売することが行われている。
単位容器は、合成樹脂の射出成形にて形成され、容器底は小魚が素通りしない網状を呈している(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−52492号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記単位容器は、底が網状であっても全体的に肉厚であり、長さ17cm、幅10cm、高さ2.5cm程度の大きさで、約100gの重さがあった。
容器が重いことは、材料樹脂を多く消費するばかりではなく、材料樹脂製造の際に発するCO2や、使い終わった容器の焼却時に発するCO2が増える問題がある。
【0005】
しかし、単位容器を射出成形すると肉厚を薄くすることが困難である。単位容器を樹脂シートの真空成形により形成すれば肉厚を薄くできるが、ユニット皿に組み立てるときの連結構造に問題が生じる。
【0006】
又、容器内の小魚が容器底の網目から外側に臨出して、容器を置いた床面に直接に触れて不衛生となる。
又、容器を積み重ねても、容器内の小魚を押し潰さない様に、容器内の四隅にストッバを設けているため、空の容器を積み重ねても嵩高であり、空容器の積載性に問題があった。
更に、ユニット皿を単位容器に分離する時、単位容器の連結部が破損して、破損片が小魚に混じってクレームの対象となることがあった。
本発明は、上記問題を解決できる容器を明らかにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の合成樹脂容器は、合成樹脂シートを真空成形して形成され上面が開口した扁平な矩形の容器(2)であって、容器底板(25)の複数箇所に内側が凹んで外側に膨らんだ脚部(4)が形成され、該脚部にその膨らみ中央部近傍を通って切込み条(5)が施されており、容器(2)に収容した内容物の重みで、脚部(4)が撓むことにより切込み条(5) が開いて逃し孔(51)を形成できる。
【0008】
請求項2は、請求項1に記載の合成樹脂容器において、脚部(4)は外側に丸く膨らんでおり、2本の切込み条(5)(5)が脚部(4)の膨らみ中心で直角に交わる様に十字条に施されている。
【0009】
請求項3は、請求項1又は2に記載の合成樹脂容器において、容器(2)の対向する側板(21)(21)には、容器(2)(2)を積み重ねた時に上方の容器の底面に当たって該容器の沈み込みを防止する複数のストッパー(23)(23)、(24)(24)が側板(21)(21)を内側に凹ませて形成され、該ストッパー(23)(23)は上下の容器を積み重ね方向と直交する面内にて相対的に180°反転させると、上位置の容器のストッパー(23)(23)、(24)(24)の外側凹み部(23a)(23a)、(24a)(24a)に下側のストッパー(23)(23)、(24)(24)が嵌り込んで、容器を嵩低く積み重ねできる。
【0010】
請求項4は、請求項1乃至3の何れかに記載の複数個の容器(2)(2)(2)(2)が繋ぎシート片(3)を介して繋がった状態のユニット皿(1)であって、繋ぎシート片(3)を含めて複数個の容器(2)(2)(2)(2)が合成樹脂シートで一体に形成され、各容器(1)のフランジ(26)と繋ぎシート片(3)の境界には引き千切り可能にスポット的な繋がり部(31)を残して切条(32)が施されている。
【0011】
請求項5は、請求項4に記載のユニット皿において、4つの容器(2)が縦横2個づつ配置され、繋ぎシート片(3)は十字状を呈している。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の合成樹脂容器は、合成樹脂シートを真空成形して形成されているから薄肉に形成でき、材料樹脂を節約できる。これにより、材料樹脂製造の際に発するCO2の削減、使い終わった容器の焼却時に発するCO2の削減を画ることができる。
【0013】
空の容器(2)をテーブルに置いても、容器自体の重みでは、脚部(4)は弾性変形せず、脚部(4)に施した切込み条(5) は閉じたままであり、テーブル上の異物が容器内に侵入することを防止できる。
容器(2)に小魚を詰めると、小魚の重みで脚部(4)の底に上向きの反力が作用し、切込み条(5)が開いてスリット状の逃し孔(51)が生じる。
小魚からでるドリップは逃し孔(51)から排出されるので、ドリップが容器底に溜まった状態となることを防ぐことができる。
脚部(4)には、小魚の重量が下向きに作用しているから、小魚が零れ落ちるほどに切込み条(5)が開くことはない。
【0014】
請求項2の容器(2)は、外側に丸く膨らんだ脚部(4)にその膨らみ中央部近傍で交わる複数本の切込み条(5)(5)を施しているから、容器(2)に収容した小魚の重みによる反力で切込み条(5)(5)間が無理なく上向きに撓むことにより、切込み条(5)(5)が開いて逃し孔(51)を形成できる。
脚部(4)には小魚の重量が作用しているから、切込み条(5)(5)間が大きく上方に湾曲することはなく、逃し孔(51)から小魚が零れ落ちることも防止できる。
【0015】
請求項3の容器(2)は、下方の容器に上方の容器を嵌め込んで、嵩低く積み重ねできるので、搬送時等における積載性に優れ、搬送コストを軽減できる。
小魚を収容した容器(2)を積み重ねる場合、上方の容器底を下方の容器のストッパー(23)(24)に当てて積み重ねることにより、上方の容器の重みで小魚を押し潰すことは防止できる。
【0016】
請求項4のユニット皿(1)は、一個づつの容器(2)は、上記請求項1乃至3の何れかに記載の容器と同じ効果を奏する。
ユニット皿(1)は、一度に複数個の容器(2)を真空成形するから、容器の製造能率が向上し、製造コストを低減できる。
又、一度に複数個の容器(2)(2)に小魚を詰めて、茹で等の加工を行なうことができるから、加工の能率も向上できる。
又、加工した小魚を搬送する場合も、ユニット皿(1)に小魚を収容したままできるので、扱いが容易である。
小魚を店頭販売する際は、ユニット皿(1)の繋ぎシート片(3)を引き千切って、1個の容器(2)単位で販売できるので、小魚の加工、搬送、店頭販売を容器(2)に容れたまま、即ち、小魚を別容器に移し代える手間なく、且つ人の手に触れることなく行なうことができるので衛生的である。
【0017】
請求項5のユニット皿は、4つの容器(2)が縦横2個づつ配置され、繋ぎシート片(3)は十字状を呈しているので、ユニット皿としてバランスが良く、扱い易い大きさである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】単位容器の斜視図である。
【図2】ユニット皿の斜視図である。
【図3】ユニット皿の要部平面図である。
【図4】図2A線に沿う断面図である。
【図5】図2B線に沿う断面図である。
【図6】a図は容器が空の状態の脚部の断面図、b図は脚部の平面図である。
【図7】a図は小魚を収容した容器の脚部の断面図、b図は脚部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は単位容器(2)を示し、図2は4つの単位容器(2)と該容器を十字状の繋ぎシート片(3)で繋がった状態に成形したユニット皿(1)を示している。
【0020】
単位容器(2)は、樹脂シート、実施例ではポリプロピレンシートの真空成型により形成され、長さ約17cm、幅長さ約10cm、高さ約2.5cmの上面開口の扁平直方体を呈している。単位容器(2)の重さは約40gである。
【0021】
単位容器(2)の開口縁は全周に亘ってフランジ(26)を具えている。図4に示す如く、該フランジ(26)は外側に逆U字状に屈曲している。
【0022】
単位容器(2)の4つの側板(21)(21)(22)(22)は開口側へ外向きに傾斜しており、嵌め込んで積み重ね可能である。
長手方向に沿い対向する側板(21)(21)には、容器(2)(2)を積み重ねた時に上方の容器の底面に当たって該容器の沈み込みを防止する複数(実施例では2箇所づつ)のストッパー(23)(23)、(24)(24)が側板(21)(21)を内側に凹ませて形成される。
【0023】
ストッパー(23)(24)は、対向する側板上のストッパーに対して位置がずれており、上下の容器を積み重ね方向と直交する面内にて互いに相対的に180°反転させると、上位置の容器のストッパー(23)(23)、(24)(24)の外側凹み部(23a)(23a)、(24a)(24a)に下側のストッパー(23)(23)、(24)(24)が嵌り込んで、容器を嵩低く積み重ねできる。
【0024】
単位容器(2)の底板(25)には、長手方向に沿って左右3個づつ脚部(4)が設けられている。
脚部(4)は、底板(25)を外側に丸く膨らませて形成され、内側は凹んで接地面積が点当たりに近い状態に徐々に縮形している。
脚部(4)の最大径は約15mm、高さは約3mmである。
【0025】
上記脚部(4)にはその膨らみ中央部近傍を通過して1又は複数条の切込み条(5)が施される。切込み条(5) は、容器(2)に収容した内容物の重みによる反力で脚部(4)を弾性変形させて切込み条(5)を開いて逃し孔(51)を形成するためのものである。
実施例では、長さ10mmの2本の切込み条(5)(5)を夫々長さ中心が脚部(4)の膨らみ中心で直角に交わる様に施され、隣り合う切込み条(5)(5)間に開閉片(41)(41)を形成している。
【0026】
図2に示すユニット皿(1)は、上記単位容器(2)が十字状の繋ぎシート片(3)を介して縦横2個つづ繋がったものである。
但し、各容器(1)のフランジ(26)と繋ぎシート片(3)の境界には引き千切り可能にスポット的な繋がり部(31)を残して切条(32)が施されている。
【0027】
繋ぎシート片(3)を含む4つの単位容器(2)が、1枚のポリプロピレンシートから真空成型により繋がった状態で形成され、後加工のカット工程により、上記切条(32)及び脚部(4)の切込み条(5) (5)が施され、更に樹脂シートの外周耳部の切断除去がなされる。
【0028】
然して、単位容器(2)は、合成樹脂シートを真空成形して形成されているから薄肉に形成でき、材料樹脂を節約できる。これにより、材料樹脂製造の際に発するCO2の削減、使い終わった容器の焼却時に発するCO2の削減を画ることができる。
【0029】
図6a、図6bに示す如く、空の容器(2)をテーブル(6)に置いても、容器自体の重みでは、脚部(4)は弾性変形せず、脚部(4)に施した十字状の切込み条(5)(5)は閉じたままでであり、テーブル上の異物が容器内に侵入することを防止できる。
図7a、図7bに示す如く、容器(2)に小魚を詰めると、小魚の重みで脚部(4)の底に上向きの反力が作用し、切込み条(5)(5)間の開閉片(41)(41)が上側に撓んで切込み条(5) (5)が開き、スリット状の逃し孔(51)が生じる。
小魚からでるドリップは逃し孔(51)から排出されので、ドリップが容器底に溜まった状態となることを防ぐことができる。
開閉片(41)(41)には、小魚の重量が下向きに作用しているから、小魚が零れ落ちるほどに開閉片(41)(41)が上側に撓んで切込み条(5)(5)が大きく開くことはない。
【0030】
ユニット皿(1)は、一度に複数個の容器を真空成形するから、容器の製造能率が向上し、製造コストを低減できる。
又、一度に複数個の容器に小魚を詰めて、茹で等の加工を行なうことができるから、加工の能率も向上できる。
又、加工した小魚を搬送する場合も、ユニット皿(1)に小魚を収容したまま行なうことができるので、扱いが容易である。
小魚を店頭販売する際は、ユニット皿(1)の繋ぎシート片(3)を引き千切って、容器(2)単位で販売できるので、小魚の加工、搬送、店頭販売を容器(2)に容れたまま、即ち、小魚を別容器に移し代える手間なく、且つ人の手に触れることなく出来るので衛生的である。
【0031】
従来の様に、射出成形した単位容器を複数個連結する場合、射出成形では容器の肉厚を薄くすることが出来ないこと、連結に手間が掛かること、店頭販売の際には連結を外す手間が掛かること、連結を外す際に、連結部が破損して破片が小魚に混じる虞れかある等、種々の問題があったが、本発明では、樹脂シートを真空成形して4つの単位容器(2)が繋がった状態にユニット皿(1)を製造でき、又、繋ぎシート片(3)を引き千切るだけで、単位容器(2)に分離できるので、従来例の問題は全て解決できる。
【符号の説明】
【0032】
1 ユニット皿
2 単位容器
26 フランジ
3 繋ぎシート片
31 繋がり部
32 切条
4 脚部
41 開閉片
5 切込み条

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂シートを真空成形して形成され上面が開口した扁平な矩形の容器(2)であって、容器底板(25)の複数箇所に内側が凹んで外側に膨らんだ脚部(4)が形成され、該脚部にその膨らみ中央部近傍を通って切込み条(5)が施されており、容器(2)に収容した内容物の重みで、脚部(4)が撓むことにより切込み条(5) が開いて逃し孔(51)を形成できる、合成樹脂製容器。
【請求項2】
脚部(4)は外側に丸く膨らんでおり、2本の切込み条(5)(5)が脚部(4)の膨らみ中心で直角に交わる様に十字条に施されている、請求項1に記載の合成樹脂容器。
【請求項3】
容器(2)の対向する側板(21)(21)には、容器(2)(2)を積み重ねた時に上方の容器の底面に当たって該容器の沈み込みを防止する複数のストッパー(23)(23)、(24)(24)が側板(21)(21)を内側に凹ませて形成され、該ストッパー(23)(23)は上下の容器を積み重ね方向と直交する面内にて互いに相対的に180°反転させると、上位置の容器のストッパー(23)(23)、(24)(24)の外側凹み部(23a)(23a)、(24a)(24a)に下側のストッパー(23)(23)、(24)(24)が嵌り込んで、容器を嵩低く積み重ねできる、請求項1又は2に記載の合成樹脂性容器。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載の複数個の容器(2)(2)(2)(2)が繋ぎシート片(3)を介して繋がった状態のユニット皿(1)であって、繋ぎシート片(3)を含めて複数個の容器(2)(2)(2)(2)が合成樹脂シートで一体に形成され、各容器(1)のフランジ(26)と繋ぎシート片(3)の境界には引き千切り可能にスポット的な繋がり部(31)を残して切条(32)が施されている、ユニット皿。
【請求項5】
4つの容器(2)が縦横2個づつ配置され、繋ぎシート片(3)は十字状を呈している、請求項4に記載のユニット皿。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−131919(P2011−131919A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−293679(P2009−293679)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(510000116)有限会社新日本化成 (1)
【出願人】(592028938)
【Fターム(参考)】