説明

合成樹脂製容器

【課題】底板を容器の内側にむけて押し込んで上げ底姿勢に保持された合成樹脂製容器に関し、この上げ底姿勢を確実に維持することができる技術を提案する。
【解決手段】本発明の合成樹脂製容器は、折返し予定線1cを有する環状壁1dを介して底板1aと胴部1bとを連結し、底板1aを胴部1bの内側へ向けて押し込むとともに環状壁1dを折返し予定線1cに沿って折返すことによって底板1aを上げ底姿勢に保持し、さらに上げ底姿勢にて、環状壁1dを胴部1bとの相互間で挟み込む支持部材2を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばブロー成型により形成された合成樹脂製容器の底板を、容器の内側にむけて押し込んで上げ底姿勢にすることで容器の強度を高めた、底板反転タイプの容器に関するものであり、特に、反転させた底板の上げ底姿勢を確実に維持することができる技術を提案するものである。
【背景技術】
【0002】
シャンプーや洗剤、整髪剤、芳香剤、衣料用糊剤、住居用ワックス等の液体を入れた合成樹脂製の容器においては、容器を安価に製造することを目的に、肉厚を薄くして容器に係る材料を削減しつつ、容器の強度は維持させる改善が行われており、このような容器としては、例えば特許文献1に記載のような、ブロー成型等により形成された合成樹脂製容器の底板を、容器の内側にむけて押し込んで上げ底姿勢をなす底板反転タイプの容器が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−155630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような底板反転タイプの容器は、上げ底姿勢とされた底板で容器の胴部を内側から支持できるだけでなく、底板を取り囲む環状壁と胴部の下部とが密着して二重配置となる底部周壁が形成されるので、胴部の肉厚を薄くしてもなお、必要な強度を確保できるところ、例えば内容物が充填されて容器の口部をキャップ等で閉塞した状態で胴部に外力が加わる場合には、容器内の内圧が上昇して底板が元の姿勢に戻ってしまう懸念があった。また、充填された内容物の減圧に伴う容器の変形により、容器の見映えが損なわれたり、容器が自立する際にがたつきが生じたりするおそれもあった。
【0005】
本発明の課題は、底板を容器の内側にむけて押し込んで上げ底姿勢に保持された合成樹脂製容器に関し、容器内の内圧が不可避的に上昇する場合があったとしても、この上げ底姿勢を確実に維持することができる技術を提案するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、折返し予定線を有する環状壁を介して底板と胴部とを連結し、該底板を胴部の内側へ向けて押し込むとともに該環状壁を折返し予定線に沿って折返すことによって前記底板を上げ底姿勢に保持する合成樹脂製容器であって、
前記容器は、前記上げ底姿勢にて、前記環状壁を前記胴部との相互間で挟み込む支持部材を備えることを特徴とする合成樹脂製容器である。
【0007】
前記環状壁は、前記上げ底姿勢にて、前記胴部の内面に向けて屈曲又は湾曲する凹状壁部であることが望ましい。
【0008】
前記支持部材は、その一端側が薄肉部を介して前記底板と傾倒可能に一体連結しており、他端側を前記環状壁に押し当てて該環状壁を前記胴部との相互間で挟み込む支持片であることが望ましい。
【0009】
前記支持片を、前記底板の中間部に2つ以上連結するとともに、少なくとも1つの支持片の傾倒方向に対し残りの支持片を逆向きに傾倒させて、各支持片の他端側と前記胴部との相互間に前記環状壁を挟みこむことが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
折返し予定線に沿う折返しにて底板を上げ底姿勢に保持するとともに、上げ底姿勢にて環状壁を胴部との相互間で挟み込む支持部材を設けたので、底板を取り囲む環状壁は、胴部の内側に押し付けられた状態となり、上げ底姿勢を確実に維持することができ、自立時のがたつきが抑制される上、密閉された容器を上げ底姿勢に変形する際に内容物が加圧される状態となるため、内容物の減圧に伴う容器の変形を防止することができる。
【0011】
環状壁を、上げ底姿勢にて、胴部の内面に向けて屈曲又は湾曲する凹状壁部とする場合は、支部部が凹状壁部に嵌まり込んで容器から容易に外れることが無くなるので、より確実に上げ底姿勢を維持することができる。
【0012】
支持部材を、その一端側が薄肉部を介して底板と傾倒可能に一体連結しており、他端側を環状壁に押し当てて環状壁を胴部との相互間で挟み込む支持片とする場合は、容器と支持片とを一体に成型できるので、構成部材の形成に必要な金型数が減って容器を安価に製造することができる。
【0013】
支持片を、底板の中間部に2つ以上連結するとともに、少なくとも1つの支持片の傾倒方向に対し残りの支持片を逆向きに傾倒させて、各支持片の他端側と胴部との相互間に環状壁を挟みこむようにする場合は、環状壁が複数の部位で支持されるので、さらに確実に上げ底姿勢を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に従う合成樹脂製容器の実施の形態を示す、底部周辺を断面で示す部分側面図であり、容器の軸線から左半分は容器を成型した状態である成型姿勢を示す図であり、右半分は底板を胴部の内側へ向けて押し込んだ上げ底姿勢を示す図である。
【図2】図1に示す合成樹脂製容器を、底部周辺を断面で示した部分背面図であり、容器の軸線から左半分は成型姿勢を示す図であり、右半分は上げ底姿勢を示す図である。
【図3】図1に示す合成樹脂製容器の底面図であり、(a)は成型姿勢を示す図であり、(b)は上げ底姿勢を示す図である。
【図4】本発明に従う合成樹脂製容器の他の実施の形態を示す図であって、(a)は矩形状の支持板を環状壁に嵌め込んだ上げ底姿勢を示す図であり、(b)は十字状の支持板を環状壁に嵌め込んだ上げ底姿勢を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明をより具体的に説明する。
図1は、本発明に従う合成樹脂製容器の実施の形態を示す、底部周辺を断面で示す部分側面図であり、容器の軸線から左半分は容器を成型する際の状態である成型姿勢を示す図であり、右半分は底板を胴部の内側へ向けて押し込んだ上げ底姿勢を示す図である。図2は、図1に示す合成樹脂製容器を、底部周辺を断面で示した部分背面図であり、容器の軸線から左半分は成型姿勢を示す図であり、右半分は上げ底姿勢を示す図である。図3は、図1に示す合成樹脂製容器の底面図であり、(a)は成型姿勢を示す図であり、(b)は上げ底姿勢を示す図である。図4は、本発明に従う合成樹脂製容器の他の実施の形態を示す図であって、(a)は矩形状の支持板を環状壁に嵌め込んだ上げ底姿勢を示す図であり、(b)は十字状の支持板を環状壁に嵌め込んだ上げ底姿勢を示す図である。
【0016】
図1において、1は、合成樹脂製容器の本体部となる容器本体である。容器本体1は、その内側を内容物の充填空間Mとする合成樹脂製の薄肉の容器であって、例えばブロー成型によって形成される。容器本体1は、図1の左半分に示す成型姿勢において、底板1aと、上端開口(図示せず)を有する胴部1bとを備えており、底板1aと胴部1bとを、底板1aの縁部と連結するとともに上部を折返し予定線1cとする環状壁1dによって一体連結している。図示の例で底板1aは、胴部1b及び環状壁1dよりも肉厚であり、これにより容器本体1の強度を高めることができる。一方、折返し予定線1cは、周辺の胴部1b及び環状壁1dと同一の肉厚でもよいが、周辺部位よりも薄肉にする場合は、図1の右半分に示す、上げ底姿勢とする際の折返し作業が容易となる。また図示の例で環状壁1dは、成型姿勢にて、容器本体1の軸線より外側に向かって屈曲した「く」の字形状をなしており、環状壁1dの折返しに際してはその屈曲頂部1dを基点にして環状壁1dそのものも反転するようになっている(反転後の形状はかわらない)。
【0017】
図1において、2は支持部材であり、特に図示の例では支持部材が支持片2である場合を示している。支持片2は、図2の左半分に示すように、一端側が薄肉部2aを介して底板1aと一体連結しており、容器本体1を成型する際には、支持片2も同時に形成することができる。また、薄肉部2aで連結することにより、この薄肉部2aをヒンジとして機能させることができ、図2の右半分に示す、上げ底姿勢での支持片2の傾倒作業が容易に行えることとなる。他方、他端側は、図示の例では傾斜端部2bとなっている。さらにここでは、図3(a)に示すように、2つの支持片2を底板1aの中央部に、容器本体1の軸線を挟んで間隔をおいて配設している。
【0018】
また、図1、図2において、3はポンプ式注出器である。ポンプ式注出器3は、胴部1bの上端開口を通して吊り下げられる、吸引管付きのポンプ3aを有しており、ポンプ3aは固定部材3bを介して容器本体1に固定保持されている。図示の例では、押圧ヘッド3cが最下部まで押し下げられて、固定部材3bの上部に取り付けられたアダプター3dに係合された、押し下げ不能姿勢となっているが、アダプター3dとの係合を解除すると、押圧ヘッド3cが上昇して、ポンプ3aの操作が可能となる押し下げ可能姿勢となる。そして押し下げ可能姿勢から、押圧ヘッド3cの押し込みと復帰動作を交互に繰り返すことにより、ポンプ3aを駆動させて容器本体1内の内容物を吸引、加圧、圧送し、押圧ヘッド3cに連結させたノズル3eを通して内容物を吐出させることができる。なお、ポンプ3aの詳細な内部構造についての説明は省略するが、公知の各種ポンプを採用することができる。また本発明において容器本体1の上部開口に取り付けるものとしては、図示のポンプ式注出器に限られずトリガー式の注出器であってもよく、さらには注出器を用いずに容器本体1を傾けて内容物を注出する場合には、充填空間Mを閉塞するキャップであってもよい。
【0019】
上記の構成となる合成樹脂製容器においては、内容物を充填する前に、容器本体1を成型姿勢から上げ底姿勢に変更する。底板1aを胴部1bの内側へ向けて押し込むと、底板1aと環状壁1dが折返し予定線1cに沿って折返され、底板1aを上げ底姿勢にすることができる。これにより、自立時のがたつきを十分に抑制することが可能となり、しかも密閉された容器を上げ底姿勢に変形する際に内容物が加圧される状態となるため、内容物の減圧に伴う容器の変形を防止することができる。このとき、底板1aを胴部1b及び環状壁1dよりも肉厚にする場合には、底板1aは容易に変形しないため、折返し作業が簡易に行えるとともに、所期する上げ底形状を確実に形成することができる。
【0020】
続いて、図2に示すように、支持片2の一端側である薄肉部2aを支点として傾倒させ、他端側である傾斜端部2bを環状壁1dに押し当てる。支持片2の他端側を傾斜端部2bとすることで、環状壁1dにはめ込みやすくなるため作業性の向上を図ることができる。この時環状壁1dは、胴部1bと傾斜端部2bとの相互間に挟まれて胴部1bの内面に押し付けられた状態となるため、容器本体1内に内容物を充填しポンプ式注出器3を取り付けた状態で容器本体1の内圧が上昇した場合にも、底板1aは容易に元の成型姿勢に戻ることがない。
【0021】
ここで、図示のように、成型姿勢における環状壁1dを、容器本体1の軸線より外側に向かって屈曲させる場合には、上げ底姿勢にした際に、環状壁1dを、胴部1bの内面に向けて屈曲する凹状壁部1eとすることができるので、支持片2が容易に外れることがない。特に、支持片2の他端側を傾斜端部2bとする場合には、凹状壁部1eに傾斜端部2bがより密着した状態となるので、支持片2をより外れにくくすることができる。なお図示の例では、凹状壁部1eが屈曲する場合を示したが、湾曲させてもよい。
【0022】
そして、図3(a)、(b)に示すように、2つの支持片2を互いに逆向きに傾倒させて、それぞれの支持片2の他端側と胴部1bとの相互間に環状壁1dを挟み込むようにしてもよい。この場合、環状壁1dの互いに対向する部位が、支持片2によって、互いに離隔する向きに胴部1bの内面に向けて押し付けられるため、支持片2をさらに外れにくくすることができる。なお、支持片2は3つ以上であってもよく、この場合は少なくとも1つの支持片2の傾倒方向に対し残りの支持片2を逆向きに傾倒させるようにすればよい。
【0023】
支持片2の中間部には、図1に示すように開口(窓孔)2cを設けてもよい。これにより、支持片2の強度を損なうことなしに、開口2cを設けた分の樹脂材料を減らすことができる。
【0024】
さらに本発明に従う支持部材は、底板1aと一体連結する支持片2に代えて底板1aとは別体となる支持板でもよく、例えば図4(a)に示すように矩形状の板である支持板20とすることもできる。支持板20を用いる場合は、環状壁1dの一方側の壁部と、この壁部に対向する他方側の壁部との相互間に、この支持板20が嵌まり込むようにする。なお支持板20を用いる場合は、容器本体1とは別に金型が必要となるが、容器本体1に支持片2を設ける必要がないので、それぞれの金型の構成を簡素化することができる。
【0025】
また、支持板20の代わりに、十字状の支持板21を用いることもできる。この場合、環状壁1dを直角方向に押し広げることができるので、さらに効果的に環状壁1dから外れにくくすることができる。なお、支持部材の形状は上記形状に限られず、円盤状であってもよく、底板1aの形状に合わせて適宜選択することができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明によれば、底板を容器の内側にむけて押し込んで上げ底姿勢に保持された合成樹脂製容器に関し、容器内の内圧上昇にかかわらず、この上げ底姿勢を確実に維持することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 容器本体
1a 底板
1b 胴部
1c 折返し予定線
1d 環状壁
1e 凹状壁部
2 支持片(支持部材)
2a 薄肉部
2b 傾斜端部
2c 開口
3 ポンプ式注出器
3a ポンプ
3b 固定部材
3c 押圧ヘッド
3d アダプター
3e ノズル
20 支持板(支持部材)
21 支持板(支持部材)
M 充填空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
折返し予定線を有する環状壁を介して底板と胴部とを連結し、該底板を胴部の内側へ向けて押し込むとともに該環状壁を折返し予定線に沿って折返すことによって前記底板を上げ底姿勢に保持する合成樹脂製容器であって、
前記容器は、前記上げ底姿勢にて、前記環状壁を前記胴部との相互間で挟み込む支持部材を備えることを特徴とする合成樹脂製容器。
【請求項2】
前記環状壁は、前記上げ底姿勢にて、前記胴部の内面に向けて屈曲又は湾曲する凹状壁部である請求項1記載の合成樹脂製容器。
【請求項3】
前記支持部材は、その一端側が薄肉部を介して前記底板と傾倒可能に一体連結しており、他端側を前記環状壁に押し当てて該環状壁を前記胴部との相互間で挟み込む支持片である請求項1又は2記載の合成樹脂製容器。
【請求項4】
前記支持片を、前記底板の中間部に2つ以上連結するとともに、少なくとも1つの支持片の傾倒方向に対し残りの支持片を逆向きに傾倒させて、各支持片の他端側と前記胴部との相互間に前記環状壁を挟みこんでなる請求項3に記載の合成樹脂製容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−136278(P2012−136278A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291311(P2010−291311)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】