説明

合成樹脂製U字溝

【課題】 平滑な内壁面と波型に形成された外壁面を有する合成樹脂製U字溝において、合成樹脂製U字溝どうしの接続が容易であると共に、合成樹脂製U字溝を安価に製造することが可能な合成樹脂製U字溝を提供する。
【解決手段】 平板からなる、断面が略U字型をなす内壁材20の外面側に、波型板からなる、断面が略U字型をなす外壁材30を一体成形してなる合成樹脂製U字溝10であって、一端部が、外壁材30の端部が内壁材20の端部からはみ出している接続部Xに形成され、接続部Xの露出している外壁材端部の内側に、接続すべき合成樹脂製U字溝10の他端部が嵌合可能に形成されていることを特徴とする合成樹脂製U字溝10である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製U字溝に関し、より詳細には、平滑な流路面を有しながらも剛性が高く、接続が容易で安価に製造することが可能な合成樹脂製U字溝に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、合成樹脂によるU字溝は多数提案されている。近年においては、平滑な流路を有する合成樹脂製U字溝も提案されている(特許文献1)。
具体的には、略U字状の断面を有する内壁の外面に波形外壁の谷部を融着してU字溝本体を形成し、U字溝本体の一端に、左右両側面が外側に円弧状に湾曲した接続用の嵌受部を形成すると共に、U字溝本体の他端に、上記嵌受部に水平回動自在に嵌込み接続できる接続用の嵌込部が形成されていることを特徴とする合成樹脂製U字溝である。
【0003】
特許文献1において開示されている合成樹脂製U字溝によれば、流路面にゴミ等がたまりにくく、軽量でしかも剛性が高く、接続が容易となるため、重量物の運搬や敷設作業が困難な斜面部等の建設現場において好適に用いられていた。
【特許文献1】特開平8−151667号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、引用文献1の合成樹脂製U字溝においては、外壁面が波型に形成されているため、単純に合成樹脂製U字溝どうしを接続しようとしても、外壁面の接合が困難である。そこで、合成樹脂製U字溝どうしを接続するための嵌受部が形成されており、合成樹脂製U字溝の製造コストが高騰してしまうという課題がある。
【0005】
そこで、本発明は、平滑な内壁面と波型に形成された外壁面を有する合成樹脂製U字溝において、合成樹脂製U字溝どうしの接続が容易であると共に、合成樹脂製U字溝を安価に製造することが可能な合成樹脂製U字溝の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、平板からなる、断面が略U字型をなす内壁材の外面側に、波型板からなる、断面が略U字型をなす外壁材を一体成形してなる合成樹脂製U字溝であって、一端部が、前記外壁材の端部が前記内壁材の端部からはみ出している接続部に形成され、該接続部の露出している前記外壁材端部の内側に、接続すべき合成樹脂製U字溝の他端部が嵌合可能に形成されていることを特徴とする合成樹脂製U字溝である。
【0007】
また、前記他端部側が、前記内壁材の端部が前記外壁材の端部からはみ出している接続部に形成され、該他端部側が、接続すべき合成樹脂製U字溝の一端部側の接続部の外壁材端部の内側に嵌合された際、前記他端部側の突出している内壁材の端部が、接続すべき合成樹脂製U字溝の一端部の内壁材の端部と重なり合うことを特徴とする。
これにより、合成樹脂製U字溝の接続部分において、流路面となる平滑面を重複させることができるので、接続部分からの水漏れのおそれを軽減させることができる。
【0008】
また、前記合成樹脂製U字溝の開口部端縁には、前記外壁材の側壁部外面に沿って下方に延伸するロッドが係止され、該ロッドの下端部には浮き上がり防止部材が取り付けられていることを特徴とする。
これにより、地下水位が高い箇所へ合成樹脂製U字溝を敷設した際において、地下水による浮力が作用しても合成樹脂製U字溝の浮き上がりを防止することができる。
【0009】
また、前記ロッドは、前記外壁材の側壁部外面の谷間部分に沿って下方に延伸していることを特徴とする。
これにより、外壁材から余分な部材がはみ出すことがないため合成樹脂製U字溝の敷設作業を安全に行うことができる。また、合成樹脂製U字溝の敷設後の埋め戻し作業において、障害物がなくなるため、埋め戻し作業を確実にしかも効率的に行うことが可能になる。
【発明の効果】
【0010】
本発明による合成樹脂製U字溝によれば、平滑な流路面を有しているので、流路面にゴミ等がたまらず、排水路における堆積物の除去等の管理を軽減することが可能になる。また、U字溝自体が波型形状に形成された外壁部を有する二重構造になっているので、剛性が高く、頑丈な排水路とすることができる。さらに、合成樹脂製U字溝どうしの接続は、合成樹脂製U字溝の外壁材がはみ出している側の端部における外壁材の内側に、合成樹脂製U字溝の他端部における外壁材を嵌合させるだけでよく、簡便にしかも確実に接続することが可能になる。このように、合成樹脂製U字溝どうしの接続部分は嵌合しているので、接続状態を好適に維持することができる。さらにまた、接続部の造作が簡易であるので、接続が簡便であると共に安価に合成樹脂製U字溝を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面に基づいて本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は、本実施の形態における合成樹脂製U字溝の平面図である。図2は、本実施の形態における合成樹脂製U字溝の正面図である。図3は、本実施の形態における合成樹脂製U字溝の左側面図である。図4は、本実施の形態における合成樹脂製U字溝の底面図である。
本実施の形態における合成樹脂製U字溝10は、平板によりなり、断面形状が略U字状をなし、平滑な表面を有する内壁材20と、波型板によりなり、断面形状が略U字状をなし、所要間隔に凹凸を繰り返す波型表面を有する外壁材30と、合成樹脂製U字溝10の上端部に配設されたプレート40に係合し、外壁材30の側壁部32の表面に沿って下方に延伸するロッド50とロッド50の下端部分に係止された浮き上がり防止材60とにより構成されている。
【0012】
外壁材30は、内壁材20の外側表面を覆うようにして一体に形成されている。内壁材20の外側表面には外壁材30の波型部分が所要間隔に当接し、当接部分は互いに融着している。
図1および図2に示すように、合成樹脂製U字溝10の一端部においては内壁材20の端部から外壁材30がはみ出している接続部となっている。一方、合成樹脂製U字溝10の他端部においては外壁材30の端部から内壁材20がはみ出している接続部になっている。合成樹脂製U字溝10の一端側のはみ出し幅W1は、他端側のはみ出し幅W2より幅広になっている。すなわち、合成樹脂製U字溝10を構成する内壁材20と外壁材30の部材延長方向の長さはそれぞれ異なる長さに形成されている。
内壁材20および外壁材30の両側壁部22、32には、外壁材30の外面と内壁材20の内面を貫通する貫通孔Aが合成樹脂製U字溝10の部材延長方向に所要間隔をあけて形成されている。
【0013】
合成樹脂製U字溝10の両上端部には、それぞれ合成樹脂製U字溝10の部材延長方向にプレート40が配設されている。プレート40はL字状に形成されていて、合成樹脂製U字溝10の開口部端縁と内壁材20の側壁部22内面に当接し、貫通孔Aに挿通したボルトZにより合成樹脂製U字溝10に締め付け固定されている。プレート40の上端面には、係止孔Bが所要間隔をあけて配設されている。係止孔Bは内壁材20と外壁材30とが当接する位置に対応するプレート40の位置(すなわち、合成樹脂製U字溝10における外壁材30の谷間部分に対応する位置)に配設されている。また、両プレート40、40間はプレート40に対して直交する連結材42により所要間隔をあけて係止孔の一部に挿通させたボルトZにより締め付けられて連結されている。プレート40と連結材42により合成樹脂製U字溝10の補剛材44が構成される。また、連結材42は、合成樹脂製U字溝10の運搬時に取手として用いられる。
【0014】
ロッド50は、上下両端部分にフック部52、54が設けられている。ロッド50は、上端側のフック部52をプレート40に設けられた係止孔Bのうち、一部の係止孔Bを選択して係止させた後、外壁材30の側壁部32の谷間部分に沿って下方に延伸する。ロッド50の他端部に設けられたフック部54には、合成樹脂製U字溝10の浮き上がり防止材60が係止されている。本実施の形態においては、合成樹脂製U字溝10の底面位置と、浮き上がり防止材60の底面位置は互いに一致している。
【0015】
浮き上がり防止材60は、外壁材30と同様の波型表面を有するL字状の板材により形成されている。L字状の垂直壁62部分にはロッド50の係止部54が係止する係止孔64が設けられている。浮き上がり防止材60は、浮き上がり防止材60の波型と外壁材30の波型とを重ね合わせて配設されている。本実施の形態においては、浮き上がり防止材60の垂直壁62の高さは、合成樹脂製U字溝10の高さの半分程度となるように形成されている。
浮き上がり防止材60の底板66の延出幅Lは合成樹脂製U字溝10の底面幅の半分程度の幅に形成されている。
【0016】
以上に、本実施の形態における合成樹脂製U字溝10を説明した。続いて、上流側の合成樹脂製U字溝10Aと、下流側の合成樹脂製U字溝10Bとを接続する方法について説明する。
図5は合成樹脂製U字溝10の接続方法を示す平面図である。図6は図5におけるA部分の拡大図である。図7は、合成樹脂製U字溝10を接続した状態を示す平面図である。
【0017】
2本の合成樹脂製U字溝10A、10Bを図5に示すように並べた後、外壁材30Bがはみ出している接続部Xの上方から内壁材20Aがはみ出している接続部Yを嵌入させる。
上流側の合成樹脂製U字溝10Aの内壁材20Aは、図6に示すように接続箇所において幅L1にわたって一重構造となっていると共に、プレート40も配設されていない。一方、下流側の合成樹脂製U字溝10Bの外壁材30Bは、接続箇所において幅L2にわたって一重構造となっていると共に、プレート40も配設されていない。すなわち、接続箇所においては、合成樹脂製U字溝10A、10Bの側壁部22Aおよび側壁部32Bはそれぞれ弾性変形可能に設けられている。
【0018】
具体的には、下流側の合成樹脂製U字溝10Bの接続箇所の外壁材30Bにおける側壁部32Bを拡幅方向に弾性変形させて拡げた後に、上流側の合成樹脂製U字溝10Aの外壁材30Aを嵌入させる。一方、上流側の内壁材20における側壁部22Aは、縮幅方向に弾性変形させた後、上流側の側壁部22Aを下流側の内壁材20Bの側壁部22Bの内側に進入させることにより重複させる。
弾性変形により外側に拡げられた側壁部32Bおよび、内側に倒しこむように変形させた側壁部22Aは材料の弾性により元の形状に戻る力が作用する。これにより、下流側の側壁部32Bと上流側の側壁部32Aが嵌合状態になると共に、内壁材どうし20A、20Bの側壁部22A、22Bが当接する。
以上により、図7に示すように合成樹脂製U字溝10A、10Bが接続され、接続状態が好適に維持されることになる。なお、図7における矢印は水の流れる方向を示すものである。
【0019】
なお、本実施の形態においては、合成樹脂製U字溝10Aを上流側とし、合成樹脂製U字溝10Bを下流側として接続する形態について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、側壁部32Bを拡幅方向に弾性変形させた後、内壁材20Aの側壁部22Aを内壁材20Bの側壁部22Bの外側に進入させて側壁部22A、22Bどうしを重複させる形態とすれば、互いの重複幅は減少するものの、水密性を維持した状態での接続は何ら問題なく行うことができる。
【0020】
以上に本発明にかかる合成樹脂製U字溝10について図面に基づいて詳細に説明してきたが、本発明は以上の実施の形態に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない範囲における各種の改良をしても本発明の技術的範囲に属することはいうまでもない。
例えば、本実施の形態においては、合成樹脂製U字溝10の上端部にプレート40と連結材42による補剛材44を配設しているが、合成樹脂製U字溝10はそもそも二重構造であるため、十分な剛性を確保していると判断できる場合には、補剛材44の配設を省略することができる。この際ロッド50は、内壁材20と外壁材30の谷間部分に配設すれば良い。ロッド50の係止部52、54は、図8に示すように、互いにねじれの位置関係となるように形成すればよい。このようなロッド50によれば、係止部52が流路面内に進入せず好適である。
【0021】
また、合成樹脂製U字溝10どうしの接続は、内壁材20の切断面どうしが水密に当接可能であれば、必ずしも内壁材20の側壁部22どうしを重複させた状態で接続しなくても良い。この際、内壁材20の切断面にゴム等の天然樹脂または合成樹脂によるシール材(図示せず)が配設されていれば好適である。内壁材20の切断面どうしを当接させた状態であっても、外壁材30どうしは嵌合させることは十分可能であるため、合成樹脂製U字溝10の接続状態(嵌合状態)は十分維持される。
【0022】
さらにまた、浮き上がり防止材60の底板66の延出幅Lは大きければ浮き上がり防止作用が向上するが、合成樹脂製U字溝10の敷設時における掘削量の増加を伴うため、浮き上がり防止材60の配設間隔や一箇所当たりの配設延長を調整することで浮き上がり防止効果を加減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施の形態における合成樹脂製U字溝の平面図である。
【図2】本実施の形態における合成樹脂製U字溝の正面図である。
【図3】本実施の形態における合成樹脂製U字溝の左側面図である。
【図4】本実施の形態における合成樹脂製U字溝の底面図である。
【図5】合成樹脂製U字溝の接続方法を示す平面図である。
【図6】図5におけるA部分の拡大図である。
【図7】合成樹脂製U字溝を接続した状態を示す平面図である。
【図8】ロッドの他の形態例を示す正面図である。
【符号の説明】
【0024】
10 合成樹脂製U字溝
20 内壁材
22 側壁部
30 外壁材
32 内壁部
40 プレート
42 連結材
44 補剛材
50 ロッド
60 浮き上がり防止材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板からなる、断面が略U字型をなす内壁材の外面側に、波型板からなる、断面が略U字型をなす外壁材を一体成形してなる合成樹脂製U字溝であって、
一端部が、前記外壁材の端部が前記内壁材の端部からはみ出している接続部に形成され、
該接続部の露出している前記外壁材端部の内側に、接続すべき合成樹脂製U字溝の他端部が嵌合可能に形成されていることを特徴とする合成樹脂製U字溝。
【請求項2】
前記他端部側が、前記内壁材の端部が前記外壁材の端部からはみ出している接続部に形成され、
該他端部側が、接続すべき合成樹脂製U字溝の一端部側の接続部の外壁材端部の内側に嵌合された際、前記他端部側の突出している内壁材の端部が、接続すべき合成樹脂製U字溝の一端部の内壁材の端部と重なり合うことを特徴とする請求項1記載の合成樹脂製U字溝。
【請求項3】
前記合成樹脂製U字溝の開口部端縁には、前記外壁材の側壁部外面に沿って下方に延伸するロッドが係止され、
該ロッドの下端部には浮き上がり防止部材が取り付けられていることを特徴とする請求項1または2記載の合成樹脂製U字溝。
【請求項4】
前記ロッドは、前記外壁材の側壁部外面の谷間部分に沿って下方に延伸していることを特徴とする請求項3記載の合成樹脂製U字溝。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−63541(P2006−63541A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−244212(P2004−244212)
【出願日】平成16年8月24日(2004.8.24)
【出願人】(390034795)鳥居化成株式会社 (10)
【Fターム(参考)】