説明

合成界面活性剤のための新規な脂質混合物

本発明は、合成界面活性剤のための新規な脂質混合物を提供する。特に、本発明は、合成界面活性剤の調製のために使用される一定量の多不飽和リン脂質を含有する特定の脂質混合物を提供する。該界面活性剤およびその製薬学的組成物は、呼吸困難症候群(RDS)のような界面活性剤欠乏症の処置のために有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
内因性肺性界面活性剤は、肺胞内膜の気−液界面における表面張力を低下して、末端呼気における虚脱から肺を防御している。界面活性剤欠乏症は、早産児では普通の障害であり、そして呼吸困難症候群(RDS)を惹起するが、これは細く切り刻んだ哺乳動物の肺もしくは肺洗浄液の脂質抽出物である調製物により効果的に処置することができる。該調製物は、改変天然界面活性剤として知られていて、それらは主としてホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)およびホスファチジルグリセロール(PG)のようなリン脂質(PL)、ならびに疎水性の界面活性剤タンパク質BおよびC(SP−BおよびSP−C)からなる。
【0002】
明白にするために、この特許明細書において引用されるPLのリストは、次のとおりである:
− ホスファチジルコリン:PC、
− ホスファチジルエタノールアミン:PE、
− ホスファチジルグリセロール:PG、
− ホスファチジルイノシトール:PI、
− ホスファチジルセリン:PS、
− スフィンゴミエリン:SM、
− 一般にジパルミトイル−ホスファチジルグリセロール:DPPGとして知られる1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホグリセロール、
− 一般にジパルミトイル−ホスファチジルコリン:DPPCとして知られる1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、
− 一般にパルミトイル−オレイル−ホスファチジルグリセロール:POPGとして知られる1−パルミトイル−2−オレイル−sn−グリセロ−3−ホスホグリセロール、
− 一般にパルミトイル−オレイル−ホスファチジルコリン:POPCとして知られる1−パルミトイル−2−オレイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、
− 一般にジオレイル−ホスファチジルグリセロール:DOPGとして知られる1,2−ジオレイル−sn−グリセロ−3−ホスホグリセロール、
− 一般にパルミトイル−リノレイル−ホスファチジルコリン:PLPCとして知られる1−パルミトイル−2−リノレイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、
− 一般にステアロイル−アラキドノイル−ホスファチジルコリン(SAPC)として知られる1−ステアロイル−2−アラキドノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、
− 1−パルミトイル−2−アラキドノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(PAPC)、
− 一般にジパルミトイル−ホスファチジルエタノールアミン:DPPEとして知られる1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン、
− 一般にジステアロイル−ホスファチジルエタノールアミン:DSPEとして知られる1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン、
− 一般にジパルミトイル−ホスファチジルセリン:DPPSとして知られる1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−L−セリン。
【0003】
リン脂質のグリセロール部分は、主として長鎖脂肪酸(C14−C20)によりエステル化されており、これらは順に、飽和(例えば、ミリスチン酸、パルミチン酸およびステアリン酸)、モノ不飽和(例えば、オレイン酸)または多不飽和(例えば、リノール酸およびアラキドン酸)であってもよい。
【0004】
特徴的な残基として中性もしくは双性イオン部分、例えばグリセロール(PG)、イノシトール(PI)およびセリン(PS)を含有するリン脂質は、酸性リン脂質として知られている。酸性リン脂質の他の例は、DPPG、POPGおよびDPPSである。
【0005】
界面活性剤は、通常、気管を通して肺中への点滴注入によって水性懸濁液の形態において早産児に投与される。それらは、また、重い肺性不全症、例えば成人の呼吸困難症候群(ARDS)を伴う種々の病に罹患した成人に投与されてもよい。
【0006】
生物物理学的および薬理学的/治療学的見地から最適な性質を有するために、界面活性剤調製物は、気管内点滴注入による小容量の投与に際して肺胞レベルにおける最適な送達と分配特性をもつ水性媒質中の濃縮懸濁液の調製物を可能にするように、
i)表面張力を効果的に低下させ;ii)良好な拡散速度を有し;iii)低い粘度を有すべきである。
【0007】
表面張力を効果的に低下させる界面活性剤の能力ならびに他のパラメーター、例えば拡散速度は、いくつかの方法、例えば、非特許文献1に記述されるような「捕捉気泡(captive bubble)法」を用いてイン・ビトロで試験することができる。
【0008】
界面活性剤調製物のもっとも重要な脂質成分の1つは、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DPPC)であり、それは、圧縮中の気−液界面において単分子膜を形成し、多分、表面圧縮の間に相転移(凝固)を受け、それによって異なるサイズをもつ肺胞系を安定化するのである。
【0009】
また、酸性リン脂質はDPPCの拡散を支援するので、それらは良好な活性を得るために卓越した重要性を有することが一般に認識されている。
【0010】
他方、DPPCのような高濃度の飽和PLは、脂質懸濁液の他の性質、例えば、調製物の粘度に影響することがある。
【0011】
小容量における濃縮懸濁液を調製することの可能性は、気管内点滴注入による低体重の新生児への界面活性剤の投与のために特に重要な特性である。
【0012】
治療用途のために利用できる改変した天然の界面活性剤は、一般に25〜50mg/mlを含有する濃度を有する。それらの1種「Curosurf(R)」のみが、80mg/mlである比較的高濃度において利用することができる。
【0013】
動物組織から得られる界面活性剤調製物は、どうしても、限定された量におけるそれらの利用性、製造と滅菌工程の複雑さおよび関連する製造費用のような若干の欠点を示す:結果として、多くの努力が合成界面活性剤を調製するためになされた。
【0014】
Wilson(非特許文献2)によれば、合成界面活性剤は:
天然の界面活性剤の脂質組成と機能を模倣するように製剤化される、単純には合成化合物、主としてリン脂質および他の脂質の混合物からなる界面活性剤タンパク質を欠いた「人工」界面活性剤;ならびに
動物から単離されるかまたは特許文献1に記述されるような組み換え技術を通して製造される界面活性剤タンパク質、あるいは特許文献2、特許文献3および特許文献4に記述されるような合成界面活性剤タンパク質類似体を添加された人工界面活性剤である「再構成」界面活性剤;
に区別される。
【0015】
再構成界面活性剤の開発は、主に界面活性剤タンパク質類似体に焦点を当てられたが、脂質組成はほとんど注目されなかった。
【0016】
開発下の合成界面活性剤の組成および脂質混合物濃度に関する多くの情報は利用できない。
【0017】
第III相、ピボタール(pivotal)、遮蔽し、多国籍の、無作為の試行において、Surfaxin(R)5.8ml/kgもしくは175mg/kgが、RDSの予防においてその性質をExosurf(R)に対して比較するために投与された(Moya F.et al Abstract n.2643 of the Annual meeting of the Paediatric Academy Societies,San Francisco,May 1−4,2004)。これらの評価から、Surfaxin(R)は30mg/mlの濃度において投与されたことが推定できる。
【0018】
またKL4−Surfactantとしても報告されたSurfaxin(R)は、重量比で3:1におけるリン脂質ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DPPC)および1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホグリセロール(POPG)を有機溶媒中でパルミチン酸(PA)、リン脂質に対して15重量%と混合することによって調製された合成ペプチド含有界面活性剤である。
【0019】
先の研究において、それは、リン脂質濃度として表された2つの濃度:26.6mg/mlおよび35mg/mlにおいて利用された(非特許文献3)。
【0020】
先行技術
先行技術において、人工および/または再構成界面活性剤の脂質組成に関するデータは、次の文献において報告されている。
【0021】
Suzukiら(非特許文献4)は、低分子量界面活性剤タンパク質および重量比で80:20のDPPCと1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホグリセロール(DPPG)から構成されるリン脂質混合物から作成された界面活性剤のイン・ビトロおよびイン・ビボの性質を記述している。彼らは、不飽和リン脂質が、気−液界面において効果的な拡散を促進することを報告した、DPPGは、小さいアポタンパク質と再組み合せされたDPPC系では、不飽和PGよりも優れていることが見い出された。
【0022】
Notterら(非特許文献5)では、DPPCの再拡散特性に及ぼす脂質またはリン脂質、例えばジオレイル−PC、PE、コレステロール、短鎖飽和PC、脂肪酸およびグリセリドの効果が再考された。一般的結果は、DPPC単独に比べて亢進した劇的な再拡散を示した。本文では、DPPC:卵−PG7:3から作成された人工界面活性剤が文献において使用されたことがまた報告されている。
【0023】
Darfler FJ(非特許文献6)では、組織培養における使用に適当なタンパク質不含の脂質ミクロエマルションが精製した合成脂質から調製されて、無菌濾過できる均質な水溶性の安定な懸濁液が製造される。ミクロエマルションの組成は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞の成長に及ぼす影響を観察して最適化された。表2で報告された調製したミクロエマルションはα−トコフェロールおよび少なくとも16.3%の酢酸コレステロールを含有する。
【0024】
Scrippsの名における特許文献2および特許文献3は、SP−Bのポリペプチド類似体に対向される。この明細書では、脂質部分(界面活性剤組成物の、著者の注釈)は、好ましくは約50〜約90、より好ましくは約50〜75重量%DPPCであり、残りの部分は不飽和のPC、PG、トリアシルグリセロール、パルミチン酸、スフィンゴミエリンもしくはそれらの混合物であることが包括的に報告されているが、それにも拘わらず両出願の実施例では、重量でDPPC:PG3:1(75:25)の混合物4または10mg/mlを含有する界面活性剤のサンプルがそれらのイン・ビトロの性質について調査された。イン・ビボの性質の研究では、ある場合にはパルミチン酸をさらに含有して、同じ混合物20mg/mlの濃度が使用された。
【0025】
Cochraneら(非特許文献7)では、KLのような単純なペプチドおよびDPPCとPG3:1、DPPCと1−パルミトイル−2−オレイルPG(POPG)3:1、DPPCと1−パルミトイル−2−オレイルPC(POPC)3:1から作成されたPLのイン・ビトロでの機能が検討された。KLは3%の濃度で試験されたが、他のペプチドは3〜5%の濃度で試験された。3:1の割合のDPPC:POPG(モノ不飽和リン脂質)と15%パルミチン酸の脂質混合物における3%KLのイン・ビボの性質もまた試験された。著者らは、これらの単純なペプチドとDPPC:POPGの組み合わせは、27日齢の胎児ウサギおよび130日齢の胎児アカゲザルにおいて優れた界面活性剤を提供すると包括的に結論している。
【0026】
Yuら(非特許文献8)では、振動気泡(pulsating bubble)技術が使用されて、1%SP−Bとの組み合わせて比率7:3w/wにおいてDPPCと不飽和酸性PL、例えば卵−PG、POPGもしくは卵−ホスファチジン酸を含有する2成分リン脂質混合物の表面活性を研究した。
【0027】
SP−Cのポリペプチド類似体に対向されたByk Guldenの名における特許出願(特許文献1)では、リン脂質部分がDPPC、POPG(もしくはPG)および粘度を下げるための塩、例えば塩化CaもしくはMgもしくはNaを含有してもよいことが包括的に報告されている。実施例では、DPPC:POPG:パルミチン酸7:3:0.25+CaClの混合物が利用された。
【0028】
Curstedtら(9th International Workshop on Surfactant Replacement,Jerusalem,May 22−25,1994)は、CaClの存在または不在下で、次の脂質混合物:DPPC:POPC:DOPG55:35:10(この場合、POPGとDOPGはモノ不飽和リン脂質である);DPPC:PG7:3;DPPC:PG:パルミチン酸68:22:9と組み合わせたSP−C類似体のイン・ビトロ活性に関して報告した。DPPC:PG:パルミチン酸68:22:9を含有する調製物は、他の脂質混合物よりも速やかな吸収速度と、より低い平衡表面張力を有した。
【0029】
Krillら(非特許文献9)は同じ結論に到達した;合成タンパク質Bフラグメント、DPPCおよびPOPGから作成された界面活性剤組成物のイン・ビトロ特性を評価することを目的とした研究において、彼らは、パルミチン酸の存在が低い表面張力値を達成できるDPPCの安定な脂質薄膜を確立することに役立つことを示唆した。組成物中の比率の指示は報告されていない。
【0030】
SP−C類似体ペプチドに対向した出願者名の特許文献4では、安定な脂質/リン脂質が、PC(好ましくはDPPC)、PG、パルミチン酸、トリアシルグリセロール、スフィンゴミエリンからなる群から選ばれてもよいことが包括的に報告されている。実施例において、DPPC:PG7:3w/wまたはDPPC:PG:パルミチン酸68:22:9w/w/wとの組み合わせ物において特許請求されるペプチドの1種、例えばSP−C(LKS)から作成された界面活性剤調製物がイン・ビトロにおいて試験された。
【0031】
Palmbladら(非特許文献10)では、特許文献4の同じデータが報告された。本文では、また、最適なイン・ビトロの特徴がSP−C(LKS)、SP−B、DPPCおよびPGを含有する調製物(すなわち、この場合、パルミチン酸が脂質混合物から除かれた)から得られたことが述べられている。
【0032】
Diemelら(非特許文献11)は、SP−BおよびDPPC:DPPG80:20もしくはDPPC:POPG80:20もしくはDPPC:POPC:DPPG60:20:20から調製された界面活性剤混合物の構造的特性について報告した。
【0033】
後者の混合物では、飽和(DPPG)およびモノ不飽和(POPC)リン脂質が使用された。
【0034】
特許文献5は、脂質酸化または微生物増殖に関連する症状を処置する方法に関し、そして抗酸化性または抗微生物性の肺界面活性剤タンパク質化合物、例えばタンパク質AおよびDおよびそれらの誘導体の薬物学的に有効な量を含んでなる組成物を投与するという段階を含む。本文では、その発明による方法は、有機溶媒であってもよい担体、ホスファチジルコリン、コレステロールまたは界面活性剤リン脂質と組み合わせて該化合物を投与することを含むことが包括的に述べられている。実施例では、卵ホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、コレステロールおよび1−オレオイル−2−リノレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(それぞれ、1:1:0.15:0.15,w/w)からなる界面活性剤脂質混合物が、脂質酸化を防止する肺界面活性剤タンパク質の能力をチェックする基質として使用された。この混合物において、卵−PCおよびDPPCは、43%の量で存在するが、一方、1−オレオイル−2−リノレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリンおよびコレステロールは、混合物の総重量に対してそれぞれ7%の量で存在する。
【0035】
特許文献6は、肺界面活性剤を含んでなる肺界面活性剤組成物に向けられており、これは、−周囲温度において10%w/wの濃度で、0.9%w/w塩化ナトリウム中粉末または粒子として分散された場合−膨潤過程において、偏光顕微鏡による観察されるように約0.5分から約120分までの時間内に気−液−固界面において複屈折網もしくは細管を形成することができる。本文では、この発明による肺界面活性剤組成物は、リン脂質、例えば、飽和および不飽和のリン脂質またはそれらの混合物を含有することが包括的に述べられている。リン脂質はジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)を含んでもよい。
【0036】
Evansら(非特許文献12)は、ほとんどの完全に飽和したリン脂質の表面粘度は非常に高く、そしてある種の不飽和リン脂質のそれは非常に低いことを報告している。彼らはまた、コレステロールがDPPCのモノレアーにおいて表面粘度を低下させることを報告している。しかしながら、彼らは、薄膜圧縮の間に低い表面張力を効果的に低下させる能力を維持しながらその粘度を低下させるために、界面活性剤調製物の脂質混合物の組成をいかに調整するかは教示していない。
【0037】
肺界面活性剤のための担体としての脂質混合物に関する先行技術のほとんどの文献では、PGもしくはPOPGと組み合わせて70重量%に等しいか、またはそれより高い飽和PL、特にDPPCの含量を含んでなる脂質組成物が、特に、低い値まで表面張力を減少されるために好適であるとして利用されているか、または示唆されている。
【0038】
しかしながら、飽和PLの比較的高い含量は、特に、濃縮された合成界面活性剤組成物、すなわち、約30mg/mlに等しいか、それより高い、好ましくは40mg/mlより高い、より好ましくは50mg/mlより高い組成物が所望される場合、調製物の粘度を増加することによって流動学的性質に影響を与えるかも知れない。高い粘度は、事実、界面活性剤の拡散、それ故、肺の気管支肺胞部分へのその分配にネガティブな影響を与える(非特許文献13)。さらに、許容できる粘度をもつ高含量の飽和PLを含有する脂質混合物の濃縮した懸濁液を調製するためには、加熱と激しい撹拌という操作にたよることが必要である。
【0039】
これらの欠点に鑑みて、良好なイン・ビトロおよびイン・ビボ特性の達成を可能にしつつ、投与に際して肺の気管支肺胞部分への送達と分配に好適な濃縮した界面活性剤調製物の粘度を低く維持できる、合成界面活性剤の調製において使用される脂質混合物を提供することは非常に得策であろう。
【特許文献1】WO95/32992
【特許文献2】WO89/06657
【特許文献3】WO92/22315
【特許文献4】WO00/47623
【特許文献5】WO02/06301
【特許文献6】米国特許第2002/0072540号
【非特許文献1】Schurch,S.,Bachofen,H.,Goerke,J.,Possmayer,H.(1989)”A captive bubble method reproduces the in situ behaviour of lung surfactant monolayers”J.Appl.Physiol.,67:2389−2396
【非特許文献2】Expert Opin Pharmacother 2001,2,1479−1493.
【非特許文献3】Am J Respir Orit Care Med 1996,vol 153,pp404−410
【非特許文献4】Eur J Respir Dis 1986,69,336−345
【非特許文献5】Clin Perinatology 1987,14,433−479
【非特許文献6】In Vitro Cell Dev Biol.1990,26(8),779−83
【非特許文献7】Science,1991,254,566−568
【非特許文献8】Biochimica and Biophysica Acta 1992,1126,26−34
【非特許文献9】Chemistry and Physics of Lipids 71,47−59,1994
【非特許文献10】Biochem J 1999,339,381−386
【非特許文献11】J Biol Chem,2002,277,21179−21188
【非特許文献12】Lipids 15,524−535
【非特許文献13】King et al Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol 2002,282,L277−L284
【発明の開示】
【0040】
本発明は、少なくとも95重量%のリン脂質からなる合成界面活性剤を調製するための脂質混合物であって、該リン脂質が:
少なくとも40重量%、好ましくは40〜65重量%の間を占め、より好ましくは45〜60重量%の間を占める、特に、45〜55重量%の間を占める量で、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DPPC);
10重量%以上、好ましくは20重量%以上、より好ましくは20〜45重量%、特に、30〜40重量%の間を占める量で、多不飽和リン脂質;および
10重量%以上、好ましくは10〜30重量%の間を占め、より好ましくは15〜30重量%の間を占める量で、飽和またはモノ不飽和酸性リン脂質;
を含有し、
すべて上記の量が脂質混合物の総重量に対して計算され、
場合によっては、5重量%までの量における中性脂質をさらに含有する、脂質混合物に関する。
【0041】
そのような組成を有する脂質混合物を使用することによって、良好なイン・ビトロ特性、すなわち、薄膜圧縮の間の低い表面張力および速い拡散速度、ならびに良好な生物学的活性を特徴とする界面活性剤調製物の製造が可能であることが実際に見い出された。未熟な新生児ウサギにおいて実施されたイン・ビボ実験は、本発明の脂質混合物の1種を含有する再構成した界面活性剤は、高い呼吸(干満、tidal)容量および肺気体(Lung Gas)容量値を惹起することを実際に証明した。
【0042】
特に、30%以上の不飽和PLおよび10%以上の酸性リン脂質の量を含有する再構成界面活性剤が、より低い量を含有するそれらよりも肺気体容量値の見地からより良好な性能を惹起することが見い出された。
【0043】
本発明の脂質混合物を含有する合成界面活性剤調製物は、有利には、5〜20センチポアズ、好ましくは6〜15センチポアズの間に含まれる、したがって投与に際して肺へのそれらの送達と分配に好適である低い粘度を特徴とする、リン脂質混合物30mg/mlに等しいか、それより高い、好ましくは40mg/mlより高い、より好ましくは50mg/mlより高い80mg/mlまでの濃縮した水性懸濁液の調製を可能にする技術的特徴を有する。
【発明の詳細な説明】
【0044】
本発明の脂質混合物および対応する合成界面活性剤調製物の特徴は、次の詳細な説明において記述されるであろう。
【0045】
有利には、脂質混合物は、リン脂質の少なくとも95重量%、好ましくは少なくとも98重量%からなる。リン脂質フラクションは、脂質混合物の総重量に対して計算される、少なくとも40重量%、好ましくは40〜65重量%含まれる、より好ましくは45〜60重量%含まれる、特に、45〜55重量%含まれる量で、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DPPC)を含有する。
【0046】
DPPCは合成経路によって調製されても、または天然起源から得られてもよい。
【0047】
有利には、リン脂質フラクションは、脂質混合物の総重量に対して計算される、10重量%以上、好ましくは20重量%以上、より好ましくは20〜45重量%、特に、30〜40重量%含まれる、多不飽和リン脂質の量を含有する。
【0048】
多不飽和リン脂質としては、本発明者らは、先に定義されたようなリン脂質(PL)を意図し、ここでは、エステル化する脂肪酸残基の少なくとも1種は、脂肪族鎖中に1個の二重結合以上を含有する。典型的な多不飽和脂肪酸残基は、リノール酸、リノレン酸およびアラキドン酸である。この種の多不飽和リン脂質は、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルグリセロール(PG)およびスフィンゴミエリン(SM)である。
【0049】
好適な多不飽和リン脂質は、1−パルミトイル−2−リノレイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(PLPC)、1−パルミトイル−2−アラキドノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(PAPC)および1−ステアロイル−2−アラキドノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(SAPC)である。
【0050】
多不飽和リン脂質は、一般に、市販されており、そして合成経路によって調製されても、または天然起源、例えば、哺乳動物組織から得られてもよい。
【0051】
本発明の1つの実施態様では、多不飽和リン脂質の起源としては、また、天然抽出物が使用できる。例えば、卵から単離されるホスファチジルエタノールアミン(卵−PE)または肝臓からの単離によって得られる多不飽和脂肪酸を含有するリン脂質混合物(肝−PL)もまた使用できる。卵−PEは、種々のエステル化する酸、中でも、多不飽和のリノレン酸およびアラキドン酸を含有する。肝−PLは、通常、約PC50重量%、PE25重量%、スフィンゴミエリン10重量%、酸性リン脂質15重量%の平均パーセント組成を有し、この場合、若干のPL種は多不飽和酸によりエステル化される。当業者は、脂質混合物の最終組成が本発明の脂質混合物の要求を満たすような量において卵−PEおよび/または肝−PLを使用するであろう。
【0052】
有利には、リン脂質フラクションは、脂質混合物の総重量に対して計算される、10重量%以上、好ましくは10〜30重量%含まれる、より好ましくは15〜30重量%含まれる量で飽和またはモノ不飽和酸性リン脂質を含有する。
【0053】
飽和酸性リン脂質としては、本発明者らは、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリンのようなリン脂質を意図し、ここでは、エステル化する脂肪酸は飽和されており、一方、モノ不飽和酸性リン脂質については、本発明者らは、エステル化する脂肪酸の少なくとも1種がモノ不飽和であるものを意図する。飽和PLの典型的な例は、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホグリセロール(DPPG)および1,2−ジオレイル−sn−グリセロ−3−ホスホグリセロール(DOPG)および1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−L−セリン(DPPS)である。モノ不飽和PLの例は、1−パルミトイル−2−オレイル−sn−グリセロ−3−ホスホグリセロール(POPG)および1−パルミトイル−2−オレイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(POPC)である。好ましくは、本発明の脂質混合物における酸性リン脂質は、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホグリセロール(DPPG)、1−パルミトイル−2−オレイル−sn−グリセロ−3−ホスホグリセロール(POPG)およびそれらの混合物である。
【0054】
DPPC、多不飽和リン脂質および飽和またはモノ不飽和の酸性リン脂質の他に、本発明の脂質混合物のリン脂質フラクションは、エステル化する脂肪酸が飽和またはモノ不飽和である他のリン脂質を含有してもよい。該種類の典型的なリン脂質は、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DPPE)および1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DSPE)である。
【0055】
有利には、本発明の脂質混合物において、飽和リン脂質と不飽和(モノ不飽和および多不飽和)リン脂質との比は重量で65:35〜40:60、好ましくは重量で55:45〜45:55含まれ、かつ酸性リン脂質と他のリン脂質との比は重量で10:90〜30:70、好ましくは重量で15:85〜25:75含まれる。
【0056】
場合によっては、本発明の脂質混合物は、中性脂質の5重量%まで、好ましくは2重量%に等しいかまたはそれ未満の量において含有する。中性脂質は、トリアシルグリセロール、コレステロール、コレステロールエステルおよび脂肪酸、例えばパルミチン酸を含む。
【0057】
好適な中性脂質は、それが脂質混合物の粘度を低下させるのを助けるので、コレステロールである。
【0058】
本発明の脂質混合物の例として、比45:30:10:5:10(重量で)におけるDPPC:PLPC:SAPC:DPPG:POPGおよび比50:40:10(重量で)におけるDPPC:肝臓PL:POPGが使用された。
【0059】
本発明の脂質混合物は、再構成界面活性剤の調製において特に有用である。
【0060】
特定の実施態様では、本発明は、動物から単離されるか、またはWO95/32992に記述されるような組み換え技術を通して製造される界面活性剤タンパク質、あるいはWO89/06657、WO92/22315およびWO00/47623に記述されるような界面活性剤タンパク質SP−BもしくはSP−Cの合成類似体またはそれらの混合物と組み合わせて、前記脂質混合物の1種を含んでなる再構成界面活性剤に関する。
【0061】
タンパク質は、SP−A、SP−B、SP−C、SP−Dまたはそれらの合成もしくは組み換え類似体から選ばれるいずれの界面活性剤タンパク質であってもよい。
【0062】
また、本発明の再構成した界面活性剤は、界面活性剤タンパク質SP−Bの機能的代替物として、ポリミキシン、好ましくはポリミキシンBを含んでもよい。
【0063】
好ましくは、SP−Cの合成類似体として、1文字のアミノ酸コードによる一般式(I)のペプチドが利用できる:
IPZZPVHLKR(XB)(XB)(XB)GALLΩGL (I)[式中、
Xは、I,LおよびnL(ノルロイシン)からなる群から選ばれるアミノ酸であり;
Bは、K,I,W,F,Yおよびオルニチンからなる群から選ばれるアミノ酸であり;
Zは、エステル結合を介して側鎖に結合されている12〜22個の炭素原子を含有するアシル基により、場合によっては置換されるSであり;
Ωは、M,I,LおよびnL(ノルロイシン)からなる群から選ばれるアミノ酸であり;aは、1〜19から、好ましくは1〜11からの整数であり;
bは、1〜19から、好ましくは1〜8からの整数であり;
cは、1〜21から、好ましくは1〜5からの整数であり;
dは、0〜20から、好ましくは1〜11からの整数であり;
eは、0もしくは1であり;
fは、0もしくは1であり;
nは、0もしくは1であり;
mは、0もしくは1であり;
この場合、好ましくは:
− n+m≧0;
− f≧e,
− (XB)(XB)(XB)は、最大22個のアミノ酸、好ましくは10〜22個のアミノ酸をもつ配列である]。
【0064】
なおより好適には、式(II)のペプチドの使用である:
IPSSPVHLKRLBLLLLLLLLILLLILGALLΩGL (II)
[式中、
Bは、K,W,F,Yおよびオルニチンからなる群から選ばれるアミノ酸であり;
Ωは、M,I,LおよびnL(ノルロイシン)からなる群から選ばれるアミノ酸であり;そしてこの場合、セリンは、例えばパルミトイルにより、場合によってはアシル化されてもよい]。
【0065】
以下に報告される、非アシル化形態におけるペプチド(SP−C33)は、本発明のもっとも好適なペプチドである:
IPSSPVHLKRLKLLLLLLLLILLLILGALLMGL
(SP−C33)
該ペプチドはWO00/47623において報告された方法にしたがって調製することができる。
【0066】
再構成界面活性剤における界面活性剤タンパク質またはペプチドの量は、総混合物の重量に対して0.1%〜5%、好ましくは0.5%〜3%、より好ましくは1%〜2%の範囲において変えられる。
【0067】
特許請求される再構成界面活性剤は、脂質混合物の有機溶媒中の溶液をペプチドまたはタンパク質と混合し、続いて乾燥粉末が得られるまで調製物を乾燥することによって調製できる。
【0068】
また、本発明は、界面活性剤欠乏症の治療処置の必要な被験者に投与するための、本発明の脂質混合物を含んでなる合成界面活性剤からなる製薬学的調合物に関する。
【0069】
該製薬学的調合物は、気管内に、または水性媒質中の懸濁剤の形態において噴霧化によって、または適当な不活性噴射剤におけるエアゾル投与によって投与することができる。好ましくは、それらは、0.9%塩化ナトリウム水溶液中の懸濁剤として気管内に投与することができる。有利には、界面活性剤濃度(リン脂質含量として表される)は、30mg/ml以上、好ましくは40mg/ml以上、より好ましくは50mg/ml以上、なおより好ましくは50〜80mg/mlの間である。
【0070】
50〜80mg/mlの間に含まれる界面活性剤濃度において、100〜500s−1の範囲のせん断速度を適用して250℃で測定された界面活性剤の粘度は、有利には、2〜30センチポアズ、好ましくは5〜20センチポアズ、より好ましくは6〜15センチポアズの間、更に好ましくは6〜10センチポアズの間にさえ含まれる。
【0071】
本発明の脂質混合物を含んでなる界面活性剤は、界面活性剤欠乏症のすべての症例の処置のため、典型的には、新産の呼吸困難症候群(NRDS)、成人における急性呼吸困難症候群(ARDS)、胎便吸入症候群(MAS)、数タイプの肺炎および気管支肺異形成の処置において使用することができる。
【0072】
本発明の利点は、次の実施例によって具体的に説明される。
【実施例1】
【0073】
再構成界面活性剤の調製
材料
リン脂質 1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DPPC)、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホグリセロール(DPPG)、1−パルミトイル−2−オレイル−sn−グリセロ−3−ホスホグリセロール(POPG)、1−パルミトイル−2−リノレイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(PLPC)、1−ステアロイル−2−アラキドノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(SAPC)および肝臓からの単離によって得られるリン脂質混合物(肝−PL)が、脂質混合物を調製するために使用され、そして市販品から得られた。
【0074】
ペプチドSP−C33はWO00/47623に報告される方法にしたがって合成された。
【0075】
再構成界面活性剤の調製
クロロホルム/メタノール98:2(v/v)中に溶解された脂質を、それぞれ、比45:30:10:5:10および比50:40:10(重量で)における割合DPPC:PLPC:SAPC:DPPG:POPGおよびDPPC:肝臓PL:POPGにおいて混合して、本発明の教示にしたがう脂質混合物(脂質混合物AおよびB)を得た。対応する再構成界面活性剤調製物(界面活性剤AおよびB)は、脂質混合物にSP−C33を2重量%の量で添加することによって調製した。界面活性剤Aを窒素下で蒸発させ、そしてそれぞれ、10mg/mlおよび80mg/mlの脂質濃度において150mmol/l NaCl中に再懸濁し、一方、界面活性剤Bを80mg/mlの脂質濃度において再懸濁した。
【0076】
界面活性剤Bの肝−PLのリン脂質組成は、次ぎのように特性決定される:ホスファチジルコリン(PC)50%、ホスファチジルエタノールアミン(PE)25%、スフィンゴミエリン(SM)10%、酸性リン脂質15%。
【実施例2】
【0077】
イン・ビトロ活性
表面の性質を、捕捉(cative)気泡サーファクトメーターにおいて測定した。チャンバーをスクロース溶液で満たし、界面活性剤A(10mg/ml)2μlを注入した;次いで、空気10μlを吹き込んで気泡を生成した。気−液界面における表面張力を、薄膜吸着と、続く準静的循環領域圧縮(cyclic area compression)の間の気泡の形状から測定した。
【0078】
界面活性剤Aは、最小表面張力に達するのに要する表面領域圧縮に関して良好な性能を例証した。
【実施例3】
【0079】
界面活性剤Aのイン・ビボ活性
満期前(pre−term)のウサギ胎児(n=34)を帝王切開によって妊娠27日齢(満期=31日)において取り上げた。取り上げた時点で、動物を腹腔内ナトリウムペントバルビタール(0.1ml:6mg/ml)により麻酔し、気管切開し、腹腔内臭化パンクロニウム(0.1〜0.15ml:0.2mg/ml)により麻痺させ、そして37℃において血量計装置において維持した。それらを、100%酸素を送る改変Servo−Ventilatorを用いて並列に機械的に換気した。界面活性剤の点滴注入後、ピークの圧力を始めに1分間35cmHOに上げて、肺における界面活性剤の分配を容易にし、次いで、25cmHOに低下させた。次に、動物をピーク圧25cmHOにより15分間換気し、これを5分間20cmHO、さらに5分間15cmHOまで下げ、次いで、再び、5分間25cmHOに上げた。呼吸(tidal)容量を血量計ボックスに接続された呼吸速度描写器(pneumotachograph)により記録した。
【0080】
頻度は1分当たり40であり、吸気:呼気の時間比は1:1であった。ポジティブな末端呼気圧は適用されなかった。
【0081】
未熟な新生ウサギはに任意に抜き取られて誕生時に界面活性剤A(80mg/ml)2.5ml/kg体重を気管カニューレを通して受けた。対照動物では、気道中に物質を注入されなかった。全動物は30分間換気された。
【0082】
呼吸容量(V)は、Sun et al,Eur Respir J 1991,4,364−370に記述されるように血量計装置を用いて測定し、そして末端−呼気(end−expiratory)肺気体容量(LGV)を、肺容量と肺湿潤重量との間の差異から評価した(Scherle et al Mikroscopie 1970,26,57)。
【0083】
これらの実験において、界面活性剤Aは高い呼吸容量を示すことが観察された。また、肺気体容量値は顕著に増加した。
【実施例4】
【0084】
界面活性剤Bのイン・ビボ活性
界面活性剤B(80mg/ml)および市販品の改変した天然界面活性剤(Curosurf)(80mg/ml)を、実施例3の同じ動物モデルにおいて呼吸容量および肺気体容量について比較した:本発明により調製された再構成界面活性剤Bは、改変した天然界面活性剤に匹敵する活性を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成界面活性剤を調製するための脂質混合物であって、該脂質混合物が、主として:
少なくとも95重量%のリン脂質からなり、該リン脂質が:
少なくとも40重量%の量で1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DPPC);
10重量%より多い量で多不飽和リン脂質;および
10重量%より多い量で飽和またはモノ不飽和酸性リン脂質;
を含有し、
すべて上記の量が脂質混合物の総重量に対して計算されている、脂質混合物。
【請求項2】
脂質混合物の総重量に対して5重量%までの量で中性脂質をさらに含有する、請求項1に記載の脂質混合物。
【請求項3】
中性脂質が、トリアシルグリセロール、コレステロール、コレステロールエステルおよび脂肪酸の群から選ばれる、請求項2に記載の脂質混合物。
【請求項4】
DPPCの量が40〜65重量%の間を占める、請求項1〜3に記載の脂質混合物。
【請求項5】
DPPCの量が45〜55重量%の間を占める、請求項4に記載の脂質混合物。
【請求項6】
多不飽和リン脂質の量が20重量%を越える、先行請求項のいずれかに記載の脂質混合物。
【請求項7】
多不飽和リン脂質の量が30〜40重量%の間を占める、請求項6に記載の脂質混合物。
【請求項8】
酸性リン脂質の量が15〜30重量%の間を占める、先行請求項のいずれかに記載の脂質混合物。
【請求項9】
多不飽和リン脂質が、1−パルミトイル−2−リノレイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(PLPC)、1−パルミトイル−2−アラキドノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(PAPC)および1−ステアロイル−2−アラキドノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(SAPC)、卵から単離されるホスファチジルエタノールアミン(卵−PE)または肝臓からの単離によって得られるリン脂質混合物(肝−PL)の群から選ばれる、先行請求項のいずれかに記載の脂質混合物。
【請求項10】
酸性リン脂質が、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホグリセロール(DPPG)、1−パルミトイル−2−オレイル−sn−グリセロ−3−ホスホグリセロール(POPG)、1,2−ジオレイル−sn−グリセロ−3−ホスホグリセロール(DOPG)、1−パルミトイル−2−オレイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(POPC)および1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−L−セリン(DPPS)の群から選ばれる、先行請求項のいずれかに記載の脂質混合物。
【請求項11】
酸性リン脂質が、DPPG、POPGおよびそれらの混合物から選ばれる、請求項10に記載の脂質混合物。
【請求項12】
飽和リン脂質と不飽和(モノ不飽和および多不飽和)リン脂質との比が、重量で65:35〜40:60の間にある、請求項1〜11に記載の脂質混合物。
【請求項13】
酸性リン脂質と他のリン脂質との比が、重量で10:90〜30:70の間にある、請求項1〜11に記載の脂質混合物。
【請求項14】
SP−A、SP−B、SP−C、SP−D、それらの合成または組み換え類似体から選ばれる1種以上の界面活性剤タンパク質と組み合わせて請求項1〜13の脂質混合物を含んでなる再構成界面活性剤。
【請求項15】
界面活性剤タンパク質が、総混合物の重量で約0.1%〜5%の量において存在する、請求項14に記載の再構成界面活性剤。
【請求項16】
界面活性剤タンパク質が、アミノ酸の1文字コードによる一般式(I):
IPZZPVHLKR(XB)(XB)(XB)GALLΩGL (I)のSP−Cの合成または組み換え類似体であって、
Xは、I,LおよびnL(ノルロイシン)からなる群から選ばれるアミノ酸であり;
Bは、K,I,W,F,Yおよびオルニチンからなる群から選ばれるアミノ酸であり;
Zは、エステル結合を介して側鎖に結合されている12〜22個の炭素原子を含有するアシル基により、場合によっては置換されていてもよいSであり;
Ωは、M,I,L、nLからなる群から選ばれるアミノ酸であり;
aは、1〜19からの整数であり;
bは、1〜19からの整数であり;
cは、1〜21からの整数であり;
dは、0〜20からの整数であり;
eは、0もしくは1であり;
fは、0もしくは1であり;
nは、0もしくは1であり;
mは、0もしくは1であり;
この場合、
− n+m≧0;
− f>e,
− (XB)(XB)(XB)は、最大22個のアミノ酸、好ましくは10〜22個のアミノ酸をもつ配列であることを特徴とする、SP−Cの類似体である、請求項14および15に記載の再構成界面活性剤。
【請求項17】
SP−C類似体が、式(II):
IPSSPVHLKRLBLLLLLLLLILLLILGALLΩGL (II)
[式中、
Bは、K,W,F,Yおよびオルニチンからなる群から選ばれるアミノ酸であり;
Ωは、M,I,LおよびnL(ノルロイシン)からなる群から選ばれるアミノ酸であり;そしてこの場合、セリンは、例えばパルミトイルにより、場合によってはアシル化されてもよい]
を有する、請求項16に記載の再構成界面活性剤。
【請求項18】
SP−C類似体が、次のアミノ酸組成:
IPSSPVHLKRLKLLLLLLLLILLLILGALLMGL
を有する、請求項17に記載の再構成界面活性剤。
【請求項19】
請求項14〜18の再構成界面活性剤を含んでなる、製薬学的調合物。
【請求項20】
界面活性剤濃度(リン脂質含量として表される)が30mg/ml以上である0.9%塩化ナトリウム水溶液中の懸濁剤の形態における請求項19に記載の製薬学的調合物。
【請求項21】
界面活性剤濃度が40mg/ml以上である、請求項20に記載の製薬学的調合物。
【請求項22】
界面活性剤濃度が50mg/ml以上である、請求項21に記載の製薬学的調合物。
【請求項23】
界面活性剤濃度が50mg/ml〜80mg/mlの間に含まれる、請求項22に記載の製薬学的調合物。
【請求項24】
5〜20センチポアズの間に含まれる粘度を特徴とする、請求項19〜23に記載の製薬学的調合物。
【請求項25】
6〜15センチポアズの間に含まれる粘度を特徴とする、請求項24に記載の製薬学的調合物。

【公表番号】特表2007−500199(P2007−500199A)
【公表日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−529928(P2006−529928)
【出願日】平成16年5月26日(2004.5.26)
【国際出願番号】PCT/EP2004/005683
【国際公開番号】WO2004/105726
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(591095465)キエシ・フアルマチエウテイチ・ソチエタ・ペル・アチオニ (12)
【Fターム(参考)】