説明

合成皮革用ポリウレタン樹脂組成物及びそれを用いた合成皮革

【課題】 本発明の課題は、耐加水分解性及び耐磨耗性に優れる合成皮革表皮層の得られる合成皮革用ポリウレタン樹脂組成物及びそれを用いた合成皮革を提供することである。
【解決手段】 ポリイソシアネート(A)とポリオール(B)と鎖伸長剤(C)とを含有する合成皮革用ポリウレタン樹脂組成物において、前記ポリオール(B)が二塩基酸成分中にセバシン酸を60〜100モル%使用するポリエステルポリオール(B−1)を含有することを特徴とする合成皮革用ポリウレタン樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐摩耗性、耐加水分解性に優れた合成皮革表皮層の得られる合成皮革用ポリウレタン樹脂組成物及びそれを用いた合成皮革に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン樹脂はその優れた機械的性質や耐久性から、合成皮革用の材料として使用されている。特にポリウレタン系合成皮革としては、主としてアジペート系のポリエステルポリオールを用いたポリウレタン樹脂組成物が合成皮革に広く使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールとアジピン酸とからなるポリエステルポリオールと、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートとを反応させて得られるポリウレタン樹脂組成物及びそれを用いて得られた合成皮革が開示されている(特に実施例参照。)。
しかしながら、二塩基酸成分としてアジピン酸を主成分とするポリエステルポリオールを用いたポリウレタン樹脂組成物を使用した合成皮革の場合、加水分解による劣化が生じたり、磨耗による表面膜の亀裂や破損が生じ、使用不可となる等の問題点があった。
【0004】
このような欠点を解決する手段として、ポリカーボネートポリオール単独あるいはこれと他のポリエステルポリオールを併用したポリウレタン樹脂組成物を用いる合成皮革が開発されたが、ポリカーボネートポリオールは高価であるため、一部しか使用しない場合はその効果が十分に発揮されず、単独で用いた場合は大幅なコストアップにつながり、用途はごく一部に限られ、工業上、大きな用途展開は不可能であった。
【0005】
このように、産業界からはポリエスエルポリオールを用いたポリウレタン樹脂組成物で、機械的強度、耐加水分解性及び耐摩耗性に優れた合成皮革用ポリウレタン樹脂組成物が強く求められているものの、未だ見出されていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−292952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、耐加水分解性及び耐磨耗性に優れる合成皮革表皮層の得られる合成皮革用ポリウレタン樹脂組成物及びそれを用いた合成皮革を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、耐加水分解性と耐摩耗性の改善されたポリウレタン樹脂組成物を得るため、そのポリオールについて鋭意研究の結果、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、ポリイソシアネート(A)とポリオール(B)と鎖伸長剤(C)とを含有する合成皮革用ポリウレタン樹脂組成物において、前記ポリオール(B)が二塩基酸成分中にセバシン酸を60〜100モル%使用するポリエステルポリオール(B−1)を含有することを特徴とする合成皮革用ポリウレタン樹脂組成物及びそれを用いた合成皮革を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の合成皮革用ポリウレタン樹脂組成物は、二塩基酸成分中にセバシン酸を特定量含有するポリエステルポリオールを使用することにより、耐加水分解性及び耐磨耗性に優れる合成皮革表皮層及びそれを有する合成皮革を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
はじめに、本発明で使用する前記ポリイソシアネート(A)について説明する。
【0012】
前記ポリイソシアネート(A)としては、特に限定されないが、例えば、1,5−ナフタレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニルジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートと2,6−トリレンジイソシアネートの混合物、キシレン−1,4−ジイソシアネート、キシレン−1,3−ジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添化トリレンジイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート等が挙げられ、これらは、単独又は2種以上併用して使用することができる。これらの中でも、耐久性・機械的強度の観点から、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを使用することが好ましい。
【0013】
次に、本発明で使用する前記ポリオール(B)について説明する。
【0014】
前記ポリオール(B)は、二塩基酸成分中にセバシン酸を60〜100モル%使用するポリエステルポリオール(B−1)を含有するものある。その酸価が、好ましくは2以下、より好ましくは0.5以下であり、好ましくは水酸基価が25〜75、より好ましくは45〜60のものである。
【0015】
前記ポリエステルポリオール(B−1)は、グリコール成分と二塩基酸成分とを反応させて得られるものであり、前記二塩基酸成分中にセバシン酸を60〜100モル%使用するものである。
【0016】
また、前記ポリエステルポリオール(B−1)の数平均分子量は、好ましくは1500〜4500のものである。なお、前記数平均分子量はポリスチレン換算のGPCにより測定した値を示す。
【0017】
前記グリコールとは、好ましくは炭素数2〜18の脂肪族の短鎖ジオールであり、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル1,3−ペンタンジオール、2−エチル1,3−ヘキサンジオール、2−メチル1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール等が挙げられ、これらの単独または2種以上で用いることができる。好ましくは側鎖含有ジオールをグリコール成分中20から100モル%含有するものである。
【0018】
前記側鎖含有ジオールとは、好ましくは1,2−プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール等が挙げられる。
【0019】
前記二塩基酸としては、セバシン酸を60〜100モル%、好ましくは70〜100モル%、更に好ましくは80〜100モル%含有する。その際、40モル%未満併用できる二塩基酸としては、好ましくは脂肪族二塩基酸であり、例えば、コハク酸、グルタール酸、アジピン酸、ピメリン酸、シュベリン酸、アゼライン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸等の単独または2種以上を用いることができる。また、本発明の効果を損なわない範囲で芳香族二塩基酸、例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸又はそれらの無水物等を単独あるいは2種以上併用して用いることができる。
【0020】
前記ポリエステルポリオール(B−1)の製造法としては、特に限定されるものではないが、例えば、セバシン酸を含む前記二塩基酸成分と前記グリコール成分とを通常用いられるエステル化触媒の存在下で脱水縮合反応して製造する方法等が好ましく挙げられる。
【0021】
前記ポリエステルポリオール(B−1)は、耐擦傷性、耐加水分解性、耐久性を向上できる観点から、好ましくはポリオール成分(B)中に20〜100重量%、より好ましくは50〜100重量%含まれるものである。
【0022】
前記ポリエステルポリオール(B−1)と併用できるその他のポリオール(B−2)としては、アジピン酸等の二塩基酸の酸成分と前記短鎖ジオール成分とから構成される通常のポリエステルポリオールや、短鎖グリコールを反応開始剤としてラクトン類を開環重合させることによって得られるポリエステルポリオール、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリエーテルポリオール等が挙げられる。もちろん、これらの併用するポリオールは平均官能基数が2.0を越えるものであっても差し支えなく、本発明の効果を損なわない範囲で使用できる。
【0023】
次に、本発明で使用する前記鎖伸長剤(C)について説明する。
【0024】
前記鎖伸長剤(C)としては、特に限定されないが、炭素数2〜18の脂肪族の短鎖ジオールを好ましく使用することができる。前記炭素数2〜18の脂肪族の短鎖ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル1,3−ペンタンジオール、2−エチル1,3−ヘキサンジオール、2−メチル1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール等が挙げられ、これらの単独または2種以上で用いることができる。
【0025】
前記ポリエステルポリオール(B−1)を含むポリオール(B)とポリイソシアネート(A)、鎖伸長剤(C)とからポリウレタン樹脂を製造するには、公知のプレポリマー法、ワンショット法等の従来公知の製造方法が使用できる。使用するポリイソシアネート(A)とポリオール(B)との(A)/(B)+(C)の当量比率は、好ましくはNCO/OH=0.98〜1.1である。NCO/OHの比率が、0.98より小さくなると、耐加水分解性及び耐磨耗性が低下し、NCO/OHの比率が1.1を越えると、得られるポリウレタン樹脂の耐候性が悪くなり、変色を引起し、実用性に耐えないものとなる。
【0026】
本発明のポリウレタン樹脂組成物は、必要により、反応性調整剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤、充填剤、着色剤(顔料、染料)、強化剤、離型剤、難燃剤、帯電防止剤等の添加剤を添加してもよい。
【0027】
本発明の合成皮革とは、本発明のポリウレタン樹脂組成物から得られるポリウレタンフィルムを表皮層として、接着剤、好ましくはポリウレタン樹脂系接着剤により、繊維基材、あるいはポリウレタン樹脂を含浸した繊維基材に貼り合わせた繊維積層体であればいずれでも構わない。
【0028】
その際の接着加工は、ドライラミネート法、ウェットラミネート法である。即ち、前記接着剤を本発明のポリウレタン樹脂組成物から得られるフィルム又は繊維基材に塗布し、必要により乾燥し、貼り合わせ接着する。
【0029】
前記繊維基材とは、一般に用いられる繊維基材であれば全て特に制限なく使用することができる。その材質は、例えば、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリルなどの合成繊維およびこれらの改良繊維;羊毛、絹、木綿、麻などの天然繊維;アセテート、レーヨンなどの半合成繊維など、あるいはこれらの混用繊維からなる織編布、不織布等の繊維シート状物が挙げられる。更に、これら繊維シート状物に有機溶媒系あるいは水性ポリウレタン樹脂がコーティング加工(発泡コーティングも含む)あるいは含浸加工されてマイクロポーラスを形成したものも挙げられる。
【0030】
前記ポリウレタン樹脂系接着剤の塗布方法は、従来公知のいずれの方法でもよく、例えば、グラビアロール、リバースロール、ロッド、ナイフオーバーロール、スプレーなどによる塗布方法が挙げられるが、ナイフオーバーロールによる塗布が好ましく、塗布厚みは、乾燥後で5〜100μmとなればよく、好ましくは5〜50μmである。また、該接着剤の塗布面は、ポリウレタン樹脂フィルムあるいは繊維基材のいずれでも構わないが、通常好ましくは、ポリウレタン樹脂フィルム上に塗布される。
【0031】
ポリウレタン樹脂系接着剤の乾燥方法は、従来公知の乾燥方法であれば広く使用することができる。例えば、熱風乾燥機、赤外線照射式乾燥機、マイクロ波照射式乾燥機、あるいは、これらのうち少なくとも2種類以上を併用した乾燥装置等を挙げることができる。乾燥条件は、ポリウレタン樹脂系接着剤中の水分或いは溶剤が蒸発するのに必要な条件であれば特に限定はなく、一般に60〜150℃で10秒〜2分間程度乾燥される。ただし過乾燥は、ポリウレタン樹脂フィルム、繊維基材、接着剤層の熱劣化、変質を起こすだけでなく、ポリウレタン樹脂とポリイソシアネート化合物の硬化反応を促進し接着不良を起こすため好ましくなく、また乾燥不足の場合には水分や溶剤が十分に蒸発せず、表皮層の浮き、繊維基材への樹脂の浸透が大きく十分な接着力が得られない等の問題を引き起こすことがある。乾燥条件は70〜130℃で20秒〜1分間程度の乾燥が好ましい。
【0032】
前記フィルム及び/又は繊維基材いずれかに形成された接着剤層は、前記フィルムあるいは繊維基材と重ね合わせ、圧着ロールにより好ましくは0.1〜30kgf/cm2の圧力でラミネートされ、十分な初期接着性を有する繊維積層体、特に合成皮革が得られる。その後、引き続き、必要に応じて好ましくは20〜60℃の雰囲気下でエージングさせる事により、ポリウレタン樹脂とポリイソシアネート化合物との硬化反応を完結させ、更に、強固な接着性、すなわち耐湿熱性、耐寒性、耐熱性、耐水接着性が得られる。
【0033】
また本発明の合成皮革は、更に、表面処理、揉み加工等の後加工をしても構わない。
【0034】
本発明の合成皮革は、靴、バッグ等の日用品に使用される材料である。
【実施例】
【0035】
次に、実施例及び比較例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。実施例及び比較例の部は、特記しないかぎり重量部を表す。
【0036】
〔ポリエステルポリオール(PES1〜8)の合成〕
〔合成例1〕PES1
5リットル4つ口フラスコに、エチレングリコール950部、1,2−プロピレングリコール500部、セバシン酸3950部、テトラブチルチタネート0.06部を仕込み、窒素気流下、220℃で24時間反応させた。反応後、得られたポリエステルポリオール(PES1)は、酸価が0.12、水酸基価が54.2であった。
【0037】
〔合成例2〕PES2
5リットル4つ口フラスコに、1,4−ブタンジオール1290部、1,2−プロピレングリコール460部、セバシン酸3650部、テトラブチルチタネート0.06部を仕込み、窒素気流下、220℃で24時間反応させた。反応後、得られたポリエステルポリオール(PES2)は、酸価が0.18、水酸基価が56.3であった。
【0038】
〔合成例3〕PES3
5リットル4つ口フラスコに、1,6−ヘキサンジオール1540部、ネオペンチルグリコール580部、セバシン酸3280部、テトラブチルチタネート0.06部を仕込み、窒素気流下、220℃で24時間反応させた。反応後、得られたポリエステルポリオール(PES3)は、酸価が0.25、水酸基価が54.7であった。
【0039】
〔合成例4〕PES4
5リットル4つ口フラスコに、3−メチルペンタンジオール2170部、セバシン酸3230部、テトラブチルチタネート0.06部を仕込み、窒素気流下、220℃で24時間反応させた。反応後、得られたポリエステルポリオール(PES4)は、酸価が0.11、水酸基価が55.4であった。
【0040】
〔合成例5〕PES5
5リットル4つ口フラスコに、1,4−ブタンジオール1330部、1,2−プロピレングリコール480部、セバシン酸3040部、アジピン酸550部、テトラブチルチタネート0.06部を仕込み、窒素気流下、220℃で24時間反応させた。反応後、得られたポリエステルポリオール(PES5)は、酸価が0.18、水酸基価が55.9であった。
【0041】
〔合成例6〕PES6
5リットル4つ口フラスコに、1,4−ブタンジオール930部、2−メチル−1,3−プロパンジオール930部、セバシン酸2940部、イソフタル酸600部、テトラブチルチタネート0.06部を仕込み、窒素気流下、220℃で24時間反応させた。反応後、得られたポリエステルポリオール(PES6)は、酸価が0.20、水酸基価が56.1であった。
【0042】
〔比較合成例1〕PES7
セバシン酸をアジピン酸に変えた以外は合成例1と同様に反応を行った。得られたポリエステルポリオール(PES7)は、酸価が0.21、水酸基価が54.9であった。
【0043】
〔比較合成例2〕PES8
セバシン酸をアジピン酸に変えた以外は合成例2と同様に反応を行った。得られたポリエステルポリオール(PES8)は、酸価が0.23、水酸基価が55.0であった。
【0044】
〔比較合成例3〕PES9
5リットル4つ口フラスコに、エチレングリコール1590部、セバシン酸1420部、アジピン酸2390部、テトラブチルチタネート0.06部を仕込み、窒素気流下、220℃で24時間反応させた。反応後、得られたポリエステルポリオール(PES9)は、酸価が0.15、水酸基価が55.0であった。
【0045】
<ポリウレタン樹脂溶液(U1〜8)の合成>
〔実施例1〕U1
5リットル4つ口フラスコに合成例に示したポリエステルポリオールPES1を929部、鎖伸長剤1,4−ブタンジオール25部と鎖伸長剤エチレングリコール17部を混合し、ジメチルホルムアミド1212部を加えて均一にした後、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート255部を加えて80℃にて反応した後にメチルエチルケトン1616部加えて固形分30%で粘度540ポイズのポリウレタン樹脂溶液(U1)を得た。
【0046】
〔実施例2〕U2
5リットル4つ口フラスコに合成例に示したポリエステルポリオールPES2を894部、鎖伸長剤1,4−ブタンジオール25部と鎖伸長剤エチレングリコール17部を混合し、ジメチルホルムアミド1191部を加えて均一にした後、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート255部を加えて80℃にて反応した後にメチルエチルケトン1588部加えて固形分30%で粘度550ポイズのポリウレタン樹脂溶液(U2)を得た。
【0047】
〔実施例3〕U3
5リットル4つ口フラスコに合成例に示したポリエステルポリオールPES3を919部、鎖伸長剤1,4−ブタンジオール25部と鎖伸長剤エチレングリコール17部を混合し、ジメチルホルムアミド1216部を加えて均一にした後、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート255部を加えて80℃にて反応した後にメチルエチルケトン1621部加えて固形分30%で粘度570ポイズのポリウレタン樹脂溶液(U3)を得た。
【0048】
〔実施例4〕U4
5リットル4つ口フラスコに合成例に示したポリエステルポリオールPES4を910部、鎖伸長剤1,4−ブタンジオール25部と鎖伸長剤エチレングリコール17部を混合し、ジメチルホルムアミド1207部を加えて均一にした後、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート255部を加えて80℃にて反応した後にメチルエチルケトン1609部加えて固形分30%で粘度490ポイズのポリウレタン樹脂溶液(U4)を得た。
【0049】
〔実施例5〕U5
5リットル4つ口フラスコに合成例に示したポリエステルポリオールPES5を900部、鎖伸長剤1,4−ブタンジオール25部と鎖伸長剤エチレングリコール17部を混合し、ジメチルホルムアミド1197部を加えて均一にした後、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート255部を加えて80℃にて反応した後にメチルエチルケトン1596部加えて固形分30%で粘度550ポイズのポリウレタン樹脂溶液(U5)を得た。
【0050】
〔実施例6〕U6
5リットル4つ口フラスコに合成例に示したポリエステルポリオールPES6を897部、鎖伸長剤1,4−ブタンジオール25部と鎖伸長剤エチレングリコール17部を混合し、ジメチルホルムアミド1194部を加えて均一にした後、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート255部を加えて80℃にて反応した後にメチルエチルケトン1592部加えて固形分30%で粘度570ポイズのポリウレタン樹脂溶液(U6)を得た。
【0051】
〔比較例1〕U7
5リットル4つ口フラスコに合成例に示したポリエステルポリオールPES7を916部、鎖伸長剤1,4−ブタンジオール25部と鎖伸長剤エチレングリコール17部を混合し、ジメチルホルムアミド1213部を加えて均一にした後、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート255部を加えて80℃にて反応した後にメチルエチルケトン1617部加えて固形分30%で粘度510ポイズのポリウレタン樹脂溶液(U7)を得た。
【0052】
〔比較例2〕U8
5リットル4つ口フラスコに合成例に示したポリエステルポリオールPES8を914部、鎖伸長剤1,4−ブタンジオール25部と鎖伸長剤エチレングリコール17部を混合し、ジメチルホルムアミド1211部を加えて均一にした後、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート255部を加えて80℃にて反応した後にメチルエチルケトン1614部加えて固形分30%で粘度520ポイズのポリウレタン樹脂溶液(U8)を得た。
【0053】
〔比較例3〕U9
5リットル4つ口フラスコに合成例に示したポリエステルポリオールPES9を916部、鎖伸長剤1,4−ブタンジオール25部と鎖伸長剤エチレングリコール17部を混合し、ジメチルホルムアミド1213部を加えて均一にした後、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート255部を加えて80℃にて反応した後にメチルエチルケトン1617部加えて固形分30%で粘度500ポイズのポリウレタン樹脂溶液(U9)を得た。
【0054】
[耐加水分解性の評価方法]
実施例1〜6、比較例1〜3で得られたポリウレタン樹脂溶剤溶液を離型紙上に100ミクロンになるよう塗布し、70℃2分、さらに110℃2分乾燥させポリウレタンフィルムを得た。得られたフィルムを70℃X95%の湿熱条件下で2週間養生した。抗張力及び伸びをJIS K7312に従って、養生前後で測定を行った。養生前の値を100として養生後の相対値で表した。
【0055】
[耐磨耗性の評価方法]
実施例1〜6、比較例1〜3で得られたポリウレタン樹脂溶剤溶液を用い、下記の表皮層配合に従い、表皮層配合液を得た。得られた表皮層配合液を離型紙上に100ミクロンになるよう塗布し、90℃2分、さらに110℃2分乾燥させた。次いで、その上に下記の接着層配合に従い得られた接着層配合液を100ミクロンになるように塗布し、直ちに起毛布を貼り合わせて120℃3分乾燥した後に、室温で5日間熟成し、離型紙を剥離して合成皮革を得た。この合成皮革をJISNo.L−1096、磨耗輪H−22、荷重500g、1000回転でテーパー磨耗試験装置(東洋精機製作所社製ロータリーアブレージョンテスタ)に掛け、磨耗量をmg単位の数値で示した。
【0056】
表皮層配合
・ポリウレタン樹脂溶液 100部
・ダイラック・ブラック・Lカラー 15部
(DIC(株)製着色剤)
・ジメチルホルムアミド 30部
【0057】
接着層配合
・クリスボン 4010 100部
(DIC(株)製ポリウレタン樹脂 固形分50%)
・バーノック D−750 10部
(DIC(株)製有機ポリイソシアネート架橋剤、有効成分75%)
・クリスボン アクセルHM 3部
(DIC(株)製 アミン系触媒)
・トルエン 15部
【0058】
【表1】

【0059】
【表2】

【0060】
セバシン酸に代えてアジピン酸を使用したポリエステルポリオールを用いたポリウレタン樹脂である比較例1,2は、いずれも耐摩耗性、耐加水分解性が悪かった。セバシン酸を酸成分に30モル%使用したポリエステルポリオールを用いたポリウレタン樹脂である比較例3は、耐加水分解性が悪く、耐摩耗性も十分でなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネート(A)とポリオール(B)と鎖伸長剤(C)とを含有する合成皮革用ポリウレタン樹脂組成物において、
前記ポリオール(B)が二塩基酸成分中にセバシン酸を60〜100モル%使用するポリエステルポリオール(B−1)を含有することを特徴とする合成皮革用ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリエステルポリオール(B−1)を構成するグリコール成分が、側鎖含有ジオールを含有するものであることを特徴とする請求項1に記載の合成皮革用ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリエステルポリオール(B−1)を構成するグリコール成分が、側鎖含有ジオールを20モル%以上含有することを特徴とする請求項1〜2いずれか1項に記載の合成皮革用ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項4】
前記側差含有ジオールが、1,2−プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、3−メチルペンタンジオール及び2−メチル−1,3−プロパンジオールからなる群より選ばれる1種以上である、請求項1〜3いずれか1項に記載の合成皮革用ポリウレタン組成物。
【請求項5】
前記鎖伸長剤(C)が、炭素数2〜18の脂肪族の短鎖ジオールである、請求項1〜4の何れか1項に記載の合成皮革用ポリウレタン組成物。
【請求項6】
請求項1〜5何れか1項に記載のポリウレタン組成物を用いてなる合成皮革。

【公開番号】特開2012−51973(P2012−51973A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−193762(P2010−193762)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】