説明

合成複合材料及びその製造方法

【課題】 集塵ダストを有効的に再利用することにより環境改善の目的を実現しうる合成複合材料及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 廃タイヤを破砕処理して粒径を略2mm以下の細粒状にした廃タイヤチップを生成する工程(ステップS1)、粒径が略0.075mm以下の集塵ダストと廃タイヤチップと集塵ダスト及び廃タイヤチップを結合させるつなぎ樹脂とを混練する工程(ステップS2)、混合物を高速攪拌する工程(ステップS3)、高速攪拌の際に生じる摩擦熱で前記つなぎ樹脂を溶融させることにより混合物をゲル状にする工程(ステップS4)を経て合成複合材料は製造される。ゲル状に製造された合成複合材料は成型品への加工が容易であり、たとえば、防音材や防振材に加工することができる(ステップS5)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳造工場等から排出される集塵ダスト等の廃棄物の再利用技術に関し、防音・防振材の主材料となる合成複合材料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工場や工事現場で生じる騒音や振動を防止する防音材及び防振材としては合成ゴムを主成分とする商品が流通しており、騒音や共鳴の防止あるいは衝撃の緩和や高周波振動の遮断に一定の効果を上げているものの、これらの商品の多くは新品のゴムを主原料とするため製造コストがかかるという問題がある。問題はコスト面だけではない。地球環境の悪化や資源の枯渇化が懸念される近年においては資源の有効利用の必要性が高まり、これまで捨てられるだけであった廃棄物でさえもリサイクルないしリユースする取り組みが進められており、このような観点からみても新品のゴムを主原料とするのは好ましいとはいえない。
【0003】
廃棄物の再利用については、廃タイヤの例がよく知られている。廃タイヤは港の防舷材や公園等の遊具として原形のまま再利用されることもあれば、製鉄所や製紙工場、発電所で代替燃料として再利用されることもあり、一部粒状化(ゴムチップ化)して歩道舗装材の原料や再生ゴムやゴムシートの原料として再利用されることもある(例えば、特許文献1参照。)。
また、近年では製鉄所や鋳造工場、鋳造工場から排出される集塵ダストの再利用についても考えられており、セメントの原材料や路盤材として再利用することや製鉄所の製鋼工程における添加剤として再利用する等の例がある(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2008−208545号公報
【特許文献2】特開2007−15879号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、廃タイヤにしても集塵ダストにしても産業廃棄物として処理される場合が多い。集塵ダストにいたっては、再利用される例はごくわずかであり、ほとんどが埋め立て処分とされており、有効な再利用は進められていないのが現状である。集塵ダストは空気よりも軽いために大気中に飛散して大気汚染の原因となるだけでなく、気流によって北極圏まで到達して北極圏の氷を溶解させる一因になっているとも言われており、その処理は喫緊の課題といえる。
【0005】
そこで、本発明は、上記のような問題点に鑑みなされたものであり、集塵ダストを有効的に再利用することにより環境改善の目的を実現しうる合成複合材料及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る合成複合材料は、粒径が略0.075mm以下の集塵ダストと、廃タイヤを破砕して粒径を略2mm以下の細粒状にした廃タイヤチップと、前記集塵ダストと前記廃タイヤチップとを混練し結合させるつなぎ樹脂とから構成されることを特徴とする。
この合成複合材料は、集塵ダストを主成分とするものであるから、集塵ダストの有効な再利用が可能となる。そして、この合成複合材料は防音材及び防振材の原料として利用可能であり、防音材及び防振材を安価に提供することが可能となる。
【0007】
ここで、前記集塵ダストを10〜50重量%、前記つなぎ樹脂を20〜25重量%、残部を前記廃タイヤチップとする比率で配合されているとするのが好ましい。
この比率で集塵ダスト、廃タイヤチップ及びつなぎ樹脂を配合することにより、合成複合材料から製造される製品の耐久性を高めることができる。
【0008】
また、本発明に係る合成複合材料の製造方法は、粒径が略0.075mm以下の集塵ダストと、廃タイヤを破砕して粒径を略2mm以下の細粒状にした廃タイヤチップと、前記集塵ダストと前記廃タイヤチップとを結合させるつなぎ樹脂とを混練して混合物を生成する混練工程と、混練された混合物を高速攪拌し、その際に生じる摩擦熱で前記つなぎ樹脂を溶融させることにより、前記混合物をゲル状化させるゲル状化工程とを含むことを特徴とする。
この方法によれば、合成複合材料を成型に適した粘度を有するゲル状にすることができる。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように、本発明に係る合成複合材料及びその製造方法は、これまで主に埋め立て処分するしかなかった集塵ダストを合成複合材料の主成分として利用することができ、集塵ダストの新たな再利用方法を提供するものである。また、本発明に係る合成複合材料から製造される製品は、これまで新品のゴムを主原料とする従来の防音材及び防振材の代替物になるから、省資源化に資するとともに防音材及び防振材の製造コストを低減することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本実施の形態に係る合成複合材料は、集塵ダストと、廃タイヤチップと、集塵ダスト及び廃タイヤチップを混練し結合させるつなぎ樹脂とから構成される。
【0011】
集塵ダストは、製鉄所や鋳造工場あるいは鍛造工場から排出される細粒物であり、粒径が略0.075mm以下の細粒で構成されている。この集塵ダストは、シリカ(SiO2)を主成分として含み(50〜80%)、その他の成分として炭素(C),酸化アルミニウム(Al23),酸化第二鉄(Fe23),酸化カルシウム(CaO)等を含有している。なお、集塵ダストの成分は、例えば製鉄所であれば炭素含有率と酸化アルミニウム含有率が、アルミ鋳造工場であれば酸化アルミニウム含有率がやや高くなる傾向にあり、排出される工場によって異なるが、シリカを主成分とするものであればその他の成分量の違いは合成複合材料から製造される製品の性能に影響を及ぼすものではない。
【0012】
廃タイヤチップは、廃タイヤのゴム部分を破砕処理し、粒径が略2mm以下の細粒状にしたものである。普通乗用車用やトラック用など一般的な各種の廃タイヤを原料とすることができる。
つなぎ樹脂は、集塵ダストと廃タイヤチップとを合成融着させるバインダーとして機能する、熱融着可能な硬質樹脂であり、例えば、エラストマー系樹脂である。
【0013】
本実施の形態に係る合成複合材料は、重量比率で集塵ダストを10〜50重量%と、つなぎ樹脂を20〜25重量%とを含み、残部を廃タイヤチップとする比率で配合することにより構成される。
集塵ダストの配合比率が10重量%未満であると、廃タイヤチップの再生ゴムの成分比率が高くなり軟化しすぎて、合成複合材料から製造される製品の耐摩耗性が著しく低下し、ひいては製品寿命の短命化を引き起こしてしまうので好ましくない。また、集塵ダストの配合比率が50重量%を超えると、合成複合材料をプレス成型する際の適切な粘度を得られず、プレス成型後の製品には線上割れが生じる、表面に粗さが目立つ等の外観上の問題を生じさせてしまったり、融着強度が著しく低下し耐久性にも劣る場合があるので好ましくない。
つなぎ樹脂の配合比率が20重量%未満であると、融着材としての絶対量が不足するため合成複合材料をプレス成型する際の適切な粘度を得られないので適さない。また、配合比率が25重量%を超えると、プレス成型後に固形化しない部分が残留してしまうので好ましくない。
【0014】
次に、本実施の形態に係る合成複合材料の製造、並びに、合成複合材料を用いた製品の製造方法について説明する。
図1は、本実施の形態に係る合成複合材料およびこれを用いた製品の製造方法の手順を示すフロー図である。
まず、廃タイヤを加工して合成複合材料の原料となる廃タイヤチップを作る(ステップS1)。
次に、合成複合材料の構成物、すなわち、集塵ダストと廃タイヤチップとつなぎ樹脂とを上記の配合比率の範囲におさまるよう混練する(ステップS2)。
続いて、混練された構成物(混合物)を高速攪拌させる(ステップS3)。このとき、高速攪拌時に生じる摩擦熱がつなぎ樹脂を溶融させるので、集塵ダストと廃タイヤチップは分散して混合され、成型に適した粘度を有するゲル状の合成複合材料を得ることができる(ステップS4)。
ゲル状化された合成複合材料は、例えばプレス加工によりシート状にする等して、成型品へと加工することができる(ステップS5)。
このような手順を経て製造される合成複合材料を用いた製品は、製造工場や建物の内壁に取り付けられる防音材や防振材として使用できる。
【0015】
(試験例)
以下、試験例を挙げて本発明に係る合成複合材料について、さらに詳細に説明する。
構成物の配合比率を変えて合成複合材料を生成し、得られた合成複合材料を成型して製造した製品について硬度や表面粗度を評価する混合成型試験を行なった。その結果を表1に示す。



【表1】


評価は、優良(◎)、良(○)、可(△)、不可(×)の4段階で行なった。
表1から、試験例1および2が製品に適した配合比率であり、特に試験例2が最適な配合比率であることが分かる。試験例3および4は、表面粗度の点で試験例1および2に劣るものの硬度は十分であり製品として使用可能である。上記実施の形態において示した配合比率の範囲から外れる試験例5については製品として使用に適さないことがわかった。
ところで、参考例は、試験例2の配合比率で、集塵ダストの代替として粒径が2mm以下の砂を採用した場合の結果である。集塵ダストが砂に近い成分系を有することから、この配合についても試験を行なったところ、試験例2と比較して表面粗度の点で評価が劣るものの、試験例1と同程度の評価が得られた。これにより、細粒砂が集塵ダストの代替物となりうることが確認できた。なお、粒径が2mmを超える砂を使用した場合には、合成複合材料の融着強度が低下し、かつ、この配合から得られる製品は使用中に製品表面から砂粒が脱落してしまうことがあった。このことから、合成複合材料の原料として粒径は2mm以下であることが望ましく、廃タイヤチップは粒径を2mm以下にすることが好ましいことが導かれている。
【0016】
(実施例)
上記試験例2の配合比率で得られた合成複合材料をシート状にプレス加工して合成複合シート(長さ490mm×幅460mm×厚さ6mm)を製造した。この合成複合シートを、製鉄所の焼結工場設備である焼結鉱排鉱部のシュートライナー(耐摩耗鋼板:一辺1,000mmの正方形×厚さ9mm)と排鉱部材との間に、均等間隔で4枚配列して固定し、シュートライナーの耐用度と排鉱部外での焼結鉱排鉱時に生じる騒音について、3ヶ月間の実証評価を行なった。その結果を表2に示す。
【表2】


表2に示すとおり、合成複合シートを併用することにより、シュートライナーの耐用度が向上し、焼結鉱排鉱時に生じる騒音も低減されていることがわかる。また、シュートライナーの耐用度の向上によりシュートライナーの製品寿命の延長も期待でき、この試験結果からみて従来の1.3〜1.5倍延長させることができると推測できる。
【0017】
以上、本発明に係る合成複合材料及びその製造方法について、実施の形態に基づいて説明したが本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の目的を達成でき、かつ発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々設計変更が可能であり、それらも全て本発明の範囲内に包含されるものである。
例えば、上記実施の形態では、つなぎ樹脂としてエラストマー系樹脂を用いたが、熱融着可能な樹脂であればその他の樹脂を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明に係る合成複合材料及びその製造方法は、鋳造工場等から排出される集塵ダスト等の廃棄物の再利用に好適であり、特に、防音材及び防振材の原料として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】合成複合材料及びこれを用いた製品の製造方法の手順を示すフロー図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒径が略0.075mm以下の集塵ダストと、
廃タイヤを破砕して粒径を略2mm以下の細粒状にした廃タイヤチップと、
前記集塵ダストと前記廃タイヤチップとを混練し結合させるつなぎ樹脂とから構成される
ことを特徴とする合成複合材料。
【請求項2】
前記集塵ダストを10〜50重量%、
前記つなぎ樹脂を20〜25重量%、
残部を前記廃タイヤチップとする比率で配合されている
ことを特徴とする請求項1記載の合成複合材料。
【請求項3】
粒径が略0.075mm以下の集塵ダストと、廃タイヤを破砕して粒径を略2mm以下の細粒状にした廃タイヤチップと、前記集塵ダストと前記廃タイヤチップとを結合させるつなぎ樹脂とを混練して混合物を生成する混練工程と、
混練された混合物を高速攪拌し、その際に生じる摩擦熱で前記つなぎ樹脂を溶融させることにより、前記混合物をゲル状化させるゲル状化工程とを含む
ことを特徴とする合成複合材料の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−155875(P2010−155875A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−333370(P2008−333370)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000225027)特殊電極株式会社 (26)
【出願人】(505329118)有限会社ACRECO (6)
【出願人】(398000956)株式会社コーハン (14)
【Fターム(参考)】