説明

合撚糸

【課題】高次加工して、衣服などに使用する際、衣服などに使用する際、杢調のカラーバリエーションを持たせたり、深色性を持たせたりすることができ、ストレッチ性に優れた布帛を得られる合撚糸を提供する。
【解決手段】ポリエステル繊維と他の繊維とからなる合撚糸であって、前記ポリエステル繊維が原着ポリエステル繊維であり、かつ、伸縮伸長率が45%以上であることを特徴とする合撚糸。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原着ポリエステル繊維と他の繊維との組み合わせにおいて、原着ポリエステル繊維と異なる色で他の繊維を染色することにより杢調のカラーバリエーションを持たせたり、同色で染色することで深色性を持たせたりすることができ、かつ、ストレッチ性に優れた布帛を得られる合撚糸に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、優れた伸縮性を有するポリエステル繊維として、ポリトリメチレンテレフタレートが注目され、ストレッチを要する布帛には、好んで使用されるようになってきている。ポリトリメチレンテレフタレートが有する伸縮性をさらに増幅させるため、仮ヨリや複合紡糸などに関する提案も多々されている(特許文献1、2参照)。また、ポリトリメチレンテレフタレート繊維は、他の繊維との複合混繊糸として使用されたり交編、交織したりして使用される。その際、複数のカラーバリエーションや深色性を追及したり、汚染や染色堅牢度などの染色での問題を解決するため、ポリエステル繊維側を先染め糸として用いることが多数提案されてきた(特許文献3参照)。しかし、このような方法であると先染めの際、糸が十分に収縮できず、所望の捲縮、伸縮性を得ることは困難であった。
【0003】
一方、ポリトリメチレンテレフタレート原着繊維に関する提案もある(特許文献4参照)。しかしながら、この文献に記載の提案であると他の繊維と混繊、交編または交織して使用する際、予め、仮ヨリ加工を施さないと伸縮性を得ることはできず、そのストレッチ性は十分なものとは言えない。
【特許文献1】特開平11−93026号公報
【特許文献2】特開2001−055634号公報
【特許文献3】特開2005−082908号公報
【特許文献4】特開2003−138426号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、原着ポリエステル繊維と他の繊維との組み合わせにおいて、原着ポリエステルと異なる色で他の繊維を染色することにより杢調のカラーバリエーションを持たせたり、同色で染色することで深色性を持たせたりすることができ、ストレッチ性に優れた布帛を得られる合撚糸を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の合撚糸は、次の構成を有する。すなわち、ポリエステル繊維と他の繊維とからなる合撚糸であって、前記ポリエステル繊維が原着ポリエステル繊維であり、かつ、伸縮伸長率が45%以上であることを特徴とする合撚糸である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の合撚糸を用いることにより、ストレッチ性に優れた布帛であっても、杢調のカラーバリエーションを持たせたり、深色性を持たせたりすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の合撚糸は、ポリエステル繊維と他の繊維とからなる合撚糸であって、前記ポリエステル繊維が原着ポリエステル繊維であり、かつ、伸縮伸長率が45%以上であることを特徴とする合撚糸である。
【0008】
本発明で用いるポリエステル繊維は原着糸である。原着糸の態様の例としては、カーボンブラック系顔料のような無機系顔料や、フタロシアニン系顔料、アンスラキノン系着色剤、スチレン系着色剤、及びキナクリドン系着色剤などのような有機系着色剤が含有された糸を挙げることができる。着色剤の添加方法としては、ポリエステル製造のためのエステル化工程、エステル交換工程、又は重縮合反応工程において添加する方法、チップ乾燥時にブレンドして紡糸する方法、または、着色剤を高濃度に含有するマスターチップを使用し、ベースチップとブレンド混和し溶融混合する方法などの一般的な添加技術を適用することが出来、任意の添加時期が選択され得るが、品質の安定性、操業の安定性、及び生産コストなどの点を考慮すると、マスターチップを使用し、ベースチップとブレンド混和し溶融混合する方法が特に有効である。
【0009】
かかる原着ポリエステル繊維を他の繊維と合撚したものであるので、本発明の合撚糸は、原着色と他の繊維を染色する際の染色との組合せで杢感と様々なカラーバリエーションを表現することが出来、原着と同色で染色することにより深色性を得ることができる。そして、本発明の合撚糸を用いて織編物を形成した後に染色する場合には、合わせされる他の繊維に依存した染色条件で染色することができるので、分散染料による汚染や染色堅牢度の問題を大幅に軽減することができる。さらに、糸染めする場合に比べ安価であり、原着ポリエステル繊維の伸縮性を減ずることがない。
【0010】
原着ポリエステル繊維と他の繊維とを合撚する方法としては、市販の複合撚糸機を用いて、糸条を引き揃えながら合撚する方法や、ワインダー上で、糸条を引き揃えて後、ダブルツイスターなどで撚糸する方法などが一般的である。その他の方法として、カバリング、精紡交撚、結束紡績のいずれの方法であっても良い。
【0011】
さらに、前記原着ポリエステルの伸縮伸長率は45%以上である。伸縮伸長率が45%未満では布帛を形成したとき所望のストレッチ性を得ることができない。一方、伸縮伸長率の上限は特に制限されるものではないが、一般的には120%程度となる。
【0012】
本発明で用いる原着ポリエステル繊維は、一方の構成成分がポリエチレンテレフタレートを主成分とし、他方の構成成分がポリトリメチレンテレフタレートを主成分とするサイドバイサイド型または偏心芯鞘型であるポリエステル系複合繊維であることが好ましい。
【0013】
適度なストレッチ性を得るために、それぞれの成分は極限粘度が異なるものが好ましく、低粘度側のポリエステルの極限粘度[ηb]と高粘度側のポリエステル極限粘度[ηa]の極限粘度比([ηb]/[ηa])が0.3〜0.8であることがさらに好ましい。
【0014】
このように極限粘度の異なる二つの重合体が貼り合わされることによって、紡糸・延伸時に高粘度側に応力が集中するため、二成分間で内部歪みが異なる。そのため、延伸後の弾性回復率差および布帛の熱処理工程での熱収縮差により高粘度側が大きく収縮するために単繊維内で歪みが生じて3次元コイル捲縮の形態をとる。この3次元コイルの径および単繊維長当たりのコイル数は、高収縮成分と低収縮成分との収縮差(弾性回復率差を含む)によって決まるといってもよく、収縮差が大きいほどコイル径が小さく、単位繊維長当たりのコイル数が多くなる。ストレッチ素材としてコイル捲縮は、コイル径が小さいこと、単位繊維長当たりのコイル数が多いこと(すなわち、伸長特性に優れ、見映えがよいこと)、コイルの耐へたり性がよいこと(伸縮回数に応じたコイルのへたり量が小さく、ストレッチ保持性に優れること)が好ましい。さらに、コイルの伸縮特性は、低収縮成分を支点とした高収縮成分の伸縮特性が支配的となるため、高収縮成分に用いる重合体には高い伸長性と回復性を有することが好ましい。
【0015】
ポリエステル系複合繊維に用いられるポリエチレンテレフタレートとしては、エチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とする重合体成分からなるものである。すなわち、テレフタル酸を主たる酸成分とし、エチレングリコールを主たるグリコ−ル成分として得られるポリエステルが好ましい。他のエステル結合を形成可能な共重合成分が20モル%以下の割合で含まれていてもよく、好ましくは10モル%以下の割合で含まれる。共重合可能な化合物としては、イソフタル酸、コハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、ダイマ酸、セバシン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などのジカルボン酸類、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ハイドロキノン、ビスフェノールAなどのジオール類を用いることができる。また、必要に応じて、艶消し剤となる二酸化チタン、滑剤としてのシリカやアルミナの微粒子、抗酸化剤としてヒンダードフェノール誘導体などを添加してもよい。
【0016】
ポリエステル系複合繊維に用いられるポリトリメチレンテレフタレートとしては、トリメチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とする重合体成分からなるものである。すなわち、テレフタル酸を主たる酸成分とし、1,3−プロパンジオールを主たるグリコ−ル成分として得られるポリエステルが好ましい。他のエステル結合を形成可能な共重合成分が20モル%以下の割合で含まれていてもよく、好ましくは10モル%以下の割合で含まれる。共重合可能な化合物として、イソフタル酸、コハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、ダイマ酸、セバシン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などのジカルボン酸類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのジオール類を用いることができる。
【0017】
ポリトリメチレンテレフタレートは、代表的なポリエステル長繊維であるポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートと同等の力学的特性や化学的特性を有しつつ、伸長回復性がきわめて優れている。これは、ポリトリメチレンテレフタレートの結晶構造においてアルキレングリコール部のメチレン鎖がゴーシュ−ゴーシュ構造(分子鎖が90度に屈曲)であること、さらにはベンゼン環同士の相互作用(スタッキング、並列)による拘束点密度が低く、フレキシビリティーが高いことから、メチレン基の回転により分子鎖が容易に伸長・回復するためと考えている。
【0018】
本発明において、ポリエステル系複合繊維は、上記のようなポリエチレンテレフタレートを前記一方の構成成分における最大重量成分(すなわち主成分)として含有し、上記のようなポリトリメチレンテレフタレートを前記他方の構成成分における最大重量成分として含有することが好ましく、必要に応じて、ポリエステル系複合繊維には、艶消し剤となる二酸化チタン、滑剤としてのシリカやアルミナの微粒子、抗酸化剤としてヒンダードフェノール誘導体などを添加してもよい。
【0019】
本発明の合撚糸の形態としては、芯に上記原着ポリエステル繊維、鞘に他の繊維を配することが好ましい。芯側に上記原着ポリエステル繊維を配することにより、ポリエステル繊維の伸縮性を十分に活かすことができる構造となる。原着ポリエステル繊維を芯側に配する方法としては、他の繊維と撚り合わせる直前で、フィード差をつけたり、糸張力差をつけたりしても良く、カバリング、精紡交撚や結束紡績ではポリエステル繊維を芯糸として用いればよい。
【0020】
上記原着ポリエステル繊維と合撚する他の繊維としては、ポリアミド繊維、ポリプロピレン繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリ塩化ビニリデン系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリフルオロエチレン系繊維等の合成繊維、レーヨンやアセテートなどのセルロース系の半合成繊維、綿やシルク、ウール、麻などの天然繊維が好ましく、このうち、良好な風合いを観点からセルロース系繊維やポリアミド繊維が特に好ましい。
【0021】
上記他の繊維の態様は、フィラメント糸または紡績糸のいずれであってもよく、例えば、フィラメント糸の場合、原糸、仮撚加工糸、撚糸などのいずれであってもよく、また、これらの複合糸であってもよい。また、紡績糸としては、単独で紡績されたものまたは混紡されたもののいずれであってもよい。
【実施例】
【0022】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。ただし、本発明がこれら実施例により限定されるものではない。
【0023】
なお、実施例中の極限粘度[η]、伸縮伸長率(%)、編織物の深色性、織物の伸長率(%)、編物の伸び率(%)は次の方法で求めた。
【0024】
<極限粘度[η]>
オルソクロロフェノール10mlに対し試料0.10gを溶解し、温度25℃においてオストワルド粘度計を用いて測定した。
【0025】
<伸縮伸長率(%)>
1.8×10-3cN/デシテックス荷重下で周長1mの手回し検尺器にて10回巻のカセを作り、これに1.8×10-3cN/デシテックスの荷重をかけた状態で90℃、20分間の熱水処理をする。次いで、荷重を外し、1昼夜風乾する。その後、再度1.8×10-3cN/デシテックス荷重を加え、その状態で試料の長さを測定する(L0)。続いて、荷重を88.3×10-3cN/デシテックスに変更し、2分後に試料の長さを測定する(L1)。そして下記式にて伸縮伸長率を算出する。なお、試験回数は20回とし、その平均値を求めた。
伸縮伸長率(%)=[(L1−L0)/L0]×100
<編織物の深色性>
編織物の深色性は、スガ試験機製SMカラーコンピューターを用い、明度L値(−)を求めた。L値(−)は濃色ほど値が小さく、淡色ほど値が大きくなる。
<織物の伸長率(%)>
JIS−L−1096(1999)「一般織物試験方法」の「8.14.1 伸長率」の
C法(繰返し定荷重法)に記載の試験方法で伸長率を求めた。なお、試験はヨコ方向のみで実施した。
【0026】
<編物の伸び率(%)>
JIS−L−1018(1999)「ニット生地試験方法」の「8.14.2 定荷重時伸び率」に記載の試験方法で伸び率を求めた。サンプル巾は5cm、つかみ間の距離は20cmとし、一定荷重を20Nとした。なお、試験はコース方向のみで実施した。
【0027】
[実施例1]
ポリトリメチレンテレフタレートレジンにカーボンブラック顔料を混練し、20重量%のカーボンブラックを含有する極限粘度が1.31のマスターチップを作成した。一方、ポリエチレンテレフタレートレジンにカーボン顔料を混練し、20重量%のカーボンブラックを含有する極限粘度が0.52のマスターチップを作成した。これらマスターチップをそれぞれ別々に溶融し、紡糸温度260℃で24孔の複合紡糸口金よりポリエチレンテレフタレート/ポリトリメチレンテレフタレートの重量比率が50/50となるように吐出し、紡糸速度1400m/分で引き取り、135デシテックス24フィラメントの未延伸糸を得た。さらに、ホットロール−熱板系延伸機を用い、ホットロール温度70℃、熱板温度145℃、延伸倍率3.0で延伸して、44デシテックス24フィラメントのサイドバイサイド型原着ポリエステル系複合繊維(延伸糸)を得た。得られたポリエステル系複合繊維の伸縮伸長率は61.2%であった。
【0028】
得られたポリエステル系複合繊維と綿方式の番手で80’sの綿糸を用い、石川製作所製複合撚糸機DTFを用いて下記加工条件にて合撚を施した。なお、合撚で芯糸と鞘糸を引き揃える際、芯糸に0.1cN/デシテックス、鞘糸に0.02cN/デシテックスの張力がかかるようワッシャーテンサーで調整した。
[合撚加工条件]
ヨリ数:S450T/m
スピンドル回転数:8000rpm
得られた合撚糸を緯糸、40’sの綿糸を経糸として用いて1/3のツイル織物を形成し、直接染料で黒色に染色、160℃で仕上げセットし、織物を得た。得られた織物はL値が20.4と深色性に富み、ヨコ方向の伸長率が18.5%とストレッチ性が良好であった。
【0029】
[実施例2]
実施例1と同様に得られた44デシテックス24フィラメントのサイドバイサイド型原着ポリエステル系複合繊維(延伸糸)を芯糸、44デシテックス13フィラメントのポリアミドフィラメント糸を鞘糸とし、カバリング機を使用して以下の条件でカバリングを施した。なお、カバリングの際、芯糸に0.1cN/デシテックス、鞘糸に0.02cN/デシテックスの張力がかかるようワッシャーテンサーで調整した。
[カバリング加工条件]
ヨリ数:500T/m
ドラフト:1.05
スピンドル回転数:6000rpm
永田精機製の4口靴下編み機KT−C4で、得られたカバリング糸のS、Z撚りをそれぞれ2本ずつ用いて、レッグ部、パンツ部に配置し、タイツを製編した。得られた生地を
酸性染料で黄色に染色、仕上げ、型板セットを実施してタイツを得た。得られたタイツは杢感を有し、伸長時に黒色の芯糸が特に外側に露出するため、伸縮とともに色感変化の富み、コース方向の伸び率が65.5%とストレッチ性が良好であった。
【0030】
[実施例3]
実施例1と同様に44デシテックス24フィラメントのサイドバイサイド型原着ポリエステル系複合繊維(延伸糸)を得た。
【0031】
一方、他の繊維として綿(平均繊度2.1デシテックス、平均繊維長30mm)を通常の梳毛工程を通して0.35g/mの太さのスライバーを製造した。
【0032】
スライバーをリング精紡機に仕掛け、前述のポリエステル系複合繊維をフロントトップローラー〜セカンドトップローラー間から短繊維束の中心位置に、フィラメント用のフィードローラー装置と糸道ガイドを介して供給し、リング精紡機のドラフト率を40倍、撚り数を27.8T/2.54cmに設定して、綿方式の番手で30’sの長短複合糸を得た。
【0033】
得られた長短複合糸を緯糸、40’sの綿糸を経糸として用いて1/3のツイル織物を形成し、直接染料で黒色に染色、160℃で仕上げセットし、織物を得た。得られた織物はL値が23.2と深色性に富み、ヨコ方向の伸長率が16.8%とストレッチ性が良好であった。
【0034】
[実施例4]
実施例1と同様に44デシテックス24フィラメントのサイドバイサイド型原着ポリエステル系複合繊維(延伸糸)を得た。
【0035】
一方、他の繊維として改質セルロース系短繊維(モダール繊維、平均繊度1.3デシテックス、平均繊維長39mm:LENZING社製)を使用し、通常の紡績方式を経て1.0g/mの太さのスライバーを作成した。
【0036】
スライバーをMVS精紡機に仕掛け、フィラメント用のフィードローラ装置と糸道ガイドを介して、前述のポリエステル系複合繊維をフロントトップローラー〜セカンドトップローラ間から短繊維束の幅方向中心位置に供給し、綿方式の番手で40’sの長短複合糸を得た。
【0037】
得られた長短複合糸を緯糸として、経糸を前記改質セルロース繊維の40’sとし、通常の織機を用いて、3/1ツイル織物を形成し、直接染料で黒色に染色、160℃で仕上げセットし、織物を得た。得られた織物はL値が25.6と深色性に富み、ヨコ方向の伸長率が13.2%とストレッチ性が良好であった。
[比較例1]
極限粘度が1.31のポリトリメチレンテレフタレートと極限粘度が0.52のポリエチレンテレフタレートをそれぞれ別々に溶融し、紡糸温度260℃で24孔の複合紡糸口金よりポリエチレンテレフタレート/ポリトリメチレンテレフタレートの重量比率が50/50となるように複合させて吐出し、紡糸速度1200m/分で引き取り、続いてホットロール温度60℃、ホットプレート温度140℃、延伸倍率3倍、延伸速度800m/分で延伸して巻き取り、56デシテックス24フィラメントのサイドバイサイド型ポリエステル系複合繊維(延伸糸)を製造した。得られたポリエステル系複合繊維の伸縮伸長率は62.8%であった。
【0038】
これを石川製作所社製のチューブヒーター搭載型ワインダーDDWを用いて、弛緩熱処理、チーズワインドを一貫工程で行って先染め用チーズを得た。加工条件を下記に示す。
[弛緩熱処理条件]
加工速度:40m/min
弛緩熱処理時の熱処理温度:140℃、 弛緩率:+70%
チーズの染色チューブ径:58mm
巻密度:0.20g/cm3
巻量:1kg
得られたチーズをチーズ染色機にセットし、常法により90℃で精練した後、黒色の分散染料を用い、120℃で20分間の条件で染色した。次いで、シリコン柔軟剤により50℃で20分間オイリング処理した。その後、脱水、乾燥し、ヨコ取り法でパッケージ状にリワインドした。得られた先染め糸の伸縮伸長率は42%であった。
【0039】
得られた先染め糸と綿方式の番手で80’sの綿糸を用い、合撚機を使用して、以下の条件で合撚を施した。
[合撚加工条件]
ヨリ数:S450T/m
スピンドル回転数:8000rpm
得られた合撚糸を緯糸、40’sの綿糸を経糸として用いて1/3のツイル織物を形成し、直接染料で黒色に染色、160℃で仕上げセットし、織物を得た。得られた織物は、L値が29.4と深色性には優れているものの、ヨコ方向の伸長率が4.2%と十分なストレッチ性が得られなかった。
【0040】
[比較例2]
エチレンテレフタレートレジンにカーボン顔料を混練し、20重量%のカーボンブラックを含有する極限粘度が0.52のマスターチップを作成した。これらマスターチップをそれぞれ別々に溶融し、紡糸温度260℃で24孔の複合紡糸口金より吐出し、紡糸速度1400m/分で引き取り、135デシテックス24フィラメントの未延伸糸を得た。さらに、ホットロール−熱板系延伸機を用い、ホットロール温度70℃、熱板温度145℃、延伸倍率3.0で延伸して、44デシテックス24フィラメントの原着ポリエステル繊維(延伸糸)を得た。
【0041】
これを石川製作所社製の仮ヨリ機IVF−334を使用して、以下の条件で仮ヨリを施した。
[仮ヨリ条件]
加工速度:600m/min
延伸倍率:1.02
仮ヨリヒータ温度:195℃
D/Y比:1.65
得られた原着の仮ヨリ加工糸の伸縮伸長率は38.2%であった。
【0042】
得られた仮ヨリ加工糸と綿方式の番手で80’sの綿糸を用い、合撚機を使用して、以下の条件で合撚を施した。
[合撚加工条件]
ヨリ数:S450T/m
スピンドル回転数:8000rpm
得られた合撚糸を緯糸、40’sの綿糸を経糸として用いて1/3のツイル織物を形成し、直接染料で黒色に染色、160℃で仕上げセットし、織物を得た。得られた織物は、L値が26.4と深色性には優れているものの、ヨコ方向の伸長率が3.8%と十分なストレッチ性が得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の合撚糸は、衣服などに使用する際、杢調のカラーバリエーションを持たせたり、深色性を持たせたりすることができ、ストレッチ性に優れた布帛を得られる合撚糸を提供できるが、その応用範囲はこれらに限られるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル繊維と他の繊維とからなる合撚糸であって、前記ポリエステル繊維が原着ポリエステル繊維であり、かつ、伸縮伸長率が45%以上であることを特徴とする合撚糸。
【請求項2】
前記ポリエステル繊維が、サイドバイサイド型または偏心芯鞘型のポリエステル系複合繊維であって、構成成分の一方がポリエチレンテレフタレートを主成分とし、他方がポリトリメチレンテレフタレートを主成分とすることを特徴とする請求項1に記載の合撚糸。
【請求項3】
芯部に前記ポリエステル繊維、鞘部に前記他の繊維を配することを特徴とする請求項1または2に記載の合撚糸。
【請求項4】
前記他の繊維がセルロース系繊維および/またはポリアミド系繊維であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の合撚糸。

【公開番号】特開2009−120991(P2009−120991A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−296368(P2007−296368)
【出願日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(502179282)オペロンテックス株式会社 (100)
【Fターム(参考)】