説明

合板、パーム合板、合板製造方法、およびパーム合板製造方法

【課題】 品質が比較的良好な樹木の単板をフェイスとバックとして使用せずに、低いコストで合板を製造可能とする。
【解決手段】この合板製造方法は、最も外側の少なくとも1枚の単板がパーム単板である複数の単板を樹脂接着剤で貼り合わせる工程と、パーム単板の表面であって、露出しているパーム繊維に樹脂接着剤を浸透させる面を研磨する工程と、研磨した面に樹脂接着剤を塗布してパーム繊維に樹脂接着剤を浸透させる工程と、樹脂接着剤を乾燥させる工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合板、パーム合板、合板製造方法、およびパーム合板製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
木材の複数の単板を貼り合せて積層した合板が様々な用途に使用されている。
【0003】
通常の合板は、シナ、ラワンなどの広葉樹や、カラマツなどの針葉樹の単板を貼り合わせて製造される(例えば特許文献1参照)。
【0004】
図4は、従来の合板の一例を示す斜視図であり、図5は、従来の合板の製造方法の工程の概要を示すフローチャートである。
【0005】
図4に示す合板は、5層の合板であり、3層のコア材101〜103にフェイス104とバック105が貼り付けられている。
【0006】
このような合板を製造する場合、まず、伐採された樹木の幹を切削して単板を製造する(ステップS101)。
【0007】
次に、切削工程で得られた単板を乾燥する(ステップS102)。乾燥後、コア材101〜103の接着面に接着剤を塗布し(ステップS103)、コア材101〜103を積層させた状態で冷圧(ステップS104)した後、熱圧し(ステップS105)、コアを製造する。
【0008】
このようにしてコアを製造した後、コア材101〜103とフェイス104およびバック105との接着面に接着剤を塗布し(ステップS106)、これらを積層させた状態で冷圧(ステップS107)した後、熱圧する(ステップS108)。
【0009】
最後に所定の寸法に裁断、表面を研磨するなどして仕上げる(ステップS109)。
【0010】
このようにして、各種の樹木を原料として合板が製造可能である。
【0011】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平6−170807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
東南アジアなどでは、パーム油の生産のために、ヤシ(オイルパーム)が栽培されている。パーム油採取後の空果房には繊維などが多く含まれており、種々の用途に活用されている。例えば、ヤシの空果房の繊維を含む繊維ボードなどが製造されている。
【0014】
一方で、毎年伐採されているヤシの幹は有効に活用されておらず、ほとんどが廃棄処分されている。マレーシアなどでは、パーム油の生産のために大量のヤシが栽培されており、毎年、大量のヤシの幹が廃棄処分されており、地球環境の観点から問題視されている。
【0015】
上述のような針葉樹や広葉樹から合板を製造した場合、製造コストが高いため、安価なコストで合板を製造することが求められている。この要望に対して、このような廃棄材を使用することにより、安価なコストで合板が製造できると考えられる。
【0016】
しかしながら、上述のヤシのような廃棄材は、板にした場合の表面の品質が劣るため、合板の表面の品質を高くするためには上述のようなフェイスとバックを貼り付ける必要がある。フェイスとバックを貼り付ける場合、品質が比較的良好な樹木(ラワン類といった南洋材など)の単板をフェイスとバックとして使用するため、製造コストが高くなってしまう。
【0017】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、品質が比較的良好な樹木の単板をフェイスとバックとして使用せずに、低いコストで製造が可能な合板およびパーム合板、並びに合板製造方法およびパーム合板製造方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の課題を解決するために、本発明では以下のようにした。
【0019】
本発明に係る合板は、接着剤で貼り合わされた複数の単板を備える。そして、複数の単板の表面に露出している繊維に接着剤が浸透させてある。
【0020】
これにより、品質が比較的良好な樹木の単板をフェイスとバックとして使用せずに、低いコストで合板を製造することができる。
【0021】
本発明に係るパーム合板は、樹脂接着剤で貼り合わされた複数の単板を備える。そして、複数の単板のうちの最も外側の少なくとも1枚の単板は、パーム単板であり、パーム単板の表面に露出しているパーム繊維に樹脂接着剤が浸透させてある。
【0022】
これにより、品質が比較的良好な樹木の単板をフェイスとバックとして使用せずに、安価な廃棄材のヤシの幹から製造可能なパーム単板を使用して表面を樹脂接着剤で処理することで、低いコストで合板を製造することができる。
【0023】
また、本発明に係るパーム合板は、上記のパーム合板に加え次のようにしてもよい。この場合複数の単板は、全てパーム単板である。
【0024】
これにより、安価な廃棄材のヤシの幹から製造可能なパーム単板のみを単板として使用するため、安価に合板を製造することができる。
【0025】
また、本発明に係るパーム合板は、上記のパーム合板のいずれかに加え次のようにしてもよい。この場合パーム繊維に浸透させてある樹脂接着剤は、複数の単板を貼り合わせるための使用される樹脂接着剤と同系のものである。
【0026】
これにより、樹脂接着剤が同系であるため、安価に合板を製造することができる。なお、ここでいう「同系」とは、同一の樹脂接着剤、および例えばユリア樹脂接着剤といった同一分類の樹脂接着剤で、構成物の配合(例えば配合比率)を変えたものを含む。
【0027】
また、本発明に係るパーム合板は、上記のパーム合板のいずれかに加え次のようにしてもよい。この場合パーム繊維に樹脂接着剤を浸透させる面を研磨した後に、パーム繊維に樹脂接着剤が浸透させてある。
【0028】
これにより、合板表面から突出するパーム繊維を少なくすることができるとともに、パーム繊維に樹脂接着剤を浸透させやすくすることができる。
【0029】
本発明に係る合板製造方法は、複数の単板を接着剤で貼り合わせる工程と、複数の単板の表面であり、露出している繊維に接着剤を浸透させる面を研磨する工程と、研磨した面に接着剤を塗布して繊維に接着剤を浸透させる工程と、接着剤を乾燥させる工程とを備える。
【0030】
これにより、品質が比較的良好な樹木の単板をフェイスとバックとして使用せずに、低いコストで合板を製造することができる。
【0031】
本発明に係るパーム合板製造方法は、最も外側の少なくとも1枚の単板がパーム単板である複数の単板を樹脂接着剤で貼り合わせる工程と、パーム単板の表面であり、露出しているパーム繊維に樹脂接着剤を浸透させる面を研磨する工程と、研磨した面に樹脂接着剤を塗布してパーム繊維に樹脂接着剤を浸透させる工程と、樹脂接着剤を乾燥させる工程とを備える。
【0032】
これにより、品質が比較的良好な樹木の単板をフェイスとバックとして使用せずに、安価な廃棄材のヤシの幹から製造可能なパーム単板を使用して表面を樹脂接着剤で処理することで、低いコストで合板を製造することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、品質が比較的良好な樹木の単板をフェイスとバックとして使用せずに、低いコストで製造が可能な合板およびパーム合板、並びに合板製造方法およびパーム合板製造方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る合板製造方法の工程の概要を示すフローチャートである。
【図2】図2は、図1のステップS5までの工程で得られる、積層されたパーム単板の一例を示す斜視図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態に係る合板の一例を示す斜視図である。
【図4】図4は、従来の合板の一例を示す斜視図である。
【図5】図5は、従来の合板の製造方法の工程の概要を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0036】
本発明の実施の形態では、伐採されたヤシの幹から合板を製造する。図1は、本発明の実施の形態に係る合板製造方法の工程の概要を示すフローチャートである。
【0037】
まず伐採されたヤシの幹をレース機で切削しパーム単板を製造する(ステップS1)。
【0038】
次に、切削工程で得られたパーム単板をドライヤで乾燥する(ステップS2)。
【0039】
パーム単板の乾燥後、パーム単板に樹脂接着剤を塗布する(ステップS3)。この実施の形態では、樹脂接着剤としては、ユリア樹脂接着剤が使用される。
【0040】
樹脂接着剤を塗布した後、隣接する単板の繊維の方向が略直交するように、複数かつ奇数枚のパーム単板を積層させ、コールドプレス機で冷圧する(ステップS4)。
【0041】
次に、ホットプレス機で熱圧し、樹脂接着剤を硬化させる(ステップS5)。
【0042】
ここまでの工程で、上述のコアに相当する部分が製造される。図2は、図1のステップS5までの工程で得られる、積層されたパーム単板の一例を示す斜視図である。
【0043】
図2では、3枚のパーム単板1〜3が積層されて接着されている。パーム単板1〜3には、比較的太くて脆いパーム繊維11が多く含まれており、特にパーム単板1,3の表面からパーム繊維11が別離しやすい。この実施の形態では、フェイスとバックを使用せずに、以下の工程により、合板表面を安定化する。
【0044】
パーム単板を接着した後、積層されているパーム単板のうち、最も外側の2つのパーム単板2,3の表面(側面を除く、他のパーム単板が接着されていない平面)を研磨機で研磨して平滑する(ステップS6)。この研磨により、合板の厚み調整を行ってもよい。そして、パーム単板1〜3からなる合板を所望のサイズに裁断する(ステップS7)。
【0045】
その後、樹脂接着剤を、積層されているパーム単板1〜3のうち、最も外側の2枚のパーム単板2,3の表面(つまり、研磨機で研磨した面)に塗布してパーム繊維11にその樹脂接着剤を浸透させるとともに表面をコーティングする(ステップS8)。この実施の形態では、ステップS3で使用される同一の樹脂接着剤または同系で配合率の違うものを、パーム単板2,3の表面に塗布してもよい。
【0046】
その後、塗布した樹脂接着剤を乾燥させて固化させるために、ステップS8で表面処理された合板をドライヤで乾燥する(ステップS9)。
【0047】
なお、パーム単板2,3の両方の表面に樹脂接着剤を塗布して表面処理を行う場合には、片面ずつ、合計2回、ステップS8,S9の工程を実行する。
【0048】
このようにして、パーム単板1〜3によるパーム合板を製造できる。
【0049】
図3は、本発明の実施の形態に係る合板の一例を示す斜視図である。図3に示すように、合板表面に露出しているパーム繊維11が樹脂接着剤により合板に固定されるため、表面からパーム繊維11が別離しにくくなって表面が安定し、表面の品質が向上する。
【0050】
以上のように、上記実施の形態による合板製造方法は、最も外側の少なくとも1枚の単板がパーム単板である複数の単板1〜3を樹脂接着剤で貼り合わせる工程と、パーム単板の表面であって、露出しているパーム繊維11に樹脂接着剤を浸透させる面を研磨する工程と、研磨した面に樹脂接着剤を塗布してパーム繊維11に樹脂接着剤を浸透させる工程と、樹脂接着剤を乾燥させる工程とを備える。
【0051】
したがって、上記実施の形態による合板は、樹脂接着剤で貼り合わされた複数の単板1〜3を備える。そして、複数の単板1〜3のうちの最も外側の少なくとも1枚の単板は、パーム単板であり、パーム単板の表面に露出しているパーム繊維11に樹脂接着剤が浸透させてある状態となる。
【0052】
これにより、品質が比較的良好な樹木の単板をフェイスとバックとして使用せずに、安価な廃棄材のヤシの幹から製造可能なパーム単板を使用して表面を樹脂接着剤で処理することで、低いコストで合板を製造することができる。
【0053】
尚、上述の実施の形態は、本発明の好適な例であるが、本発明は、これらに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形、変更が可能である。
【0054】
例えば、上記実施の形態では、原料として、ヤシ(パーム)の幹が使用されているが、ポプラ、ユーカリなどの他の樹木を原料として上述のようにして合板を製造するようにしてもよい。
【0055】
また、上記実施の形態においては、3枚の単板から合板を製造しているが、5枚、7枚といった他の枚数の単板から合板を同様に製造することができる。
【0056】
また、上記実施の形態では、すべての単板がパーム単板であるが、両側に他の単板が接着される単板(例えば図2および図3における単板1)については、パーム以外の材質の単板であってもよい。
【0057】
また、上記実施の形態において、ステップS8においてパーム単板2,3の一方のみの表面に樹脂接着剤を塗布して表面処理を行うようにしてもよい。また、上記実施の形態において、更にパーム単板1〜3の側面に樹脂接着剤を塗布して表面処理を行ってもよい。
【0058】
また、上記実施の形態において、ステップS8で使用する樹脂接着剤は、ステップS3で使用する樹脂接着剤と異なるものでもよい。
【0059】
また、上記実施の形態において、ステップS8およびステップS9で樹脂接着剤による表面処理および乾燥の後に、合板の表面すなわち乾燥した樹脂接着剤を研磨機ですべて削り取らない程度に、合板の表面を平滑研磨するようにしてもよい。
【0060】
また、上記実施の形態において、ステップS8およびステップS9で樹脂接着剤による表面処理および乾燥の後に、合板の表面すなわち乾燥した樹脂接着剤の面を研磨機で平滑研磨した後、更にステップS8およびステップS9で樹脂接着剤による表面処理を施してもよい。
【0061】
また、上記実施の形態において、樹脂接着剤は塗布による方法の他に、含浸による方法でもよい。
【0062】
また、上記実施の形態においては、樹脂接着剤は、用途に応じて別のもの(メラミン樹脂接着剤、メラミン・ユリア樹脂接着剤、フェノール樹脂接着剤など)を使用するようにしてもよい。
【0063】
なお、上記実施の形態における合板は、隣接する単板を繊維方向がほぼ直交するように貼り合わせたものであるが、隣接する単板を繊維方向がほぼ平行となるように貼り合わせたLVL(Laminated Veneer Lumber)としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、例えば、パーム廃材を利用したパーム合板の製造に適用可能である。
【符号の説明】
【0065】
1〜3 パーム単板(単板の一例)
11 パーム繊維(繊維の一例)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤で貼り合わされた複数の単板を備え、
前記複数の単板の表面に露出している繊維に接着剤が浸透させてあること、
を特徴とする合板。
【請求項2】
樹脂接着剤で貼り合わされた複数の単板を備え、
前記複数の単板のうちの最も外側の少なくとも1枚の単板は、パーム単板であり、
前記パーム単板の表面に露出しているパーム繊維に樹脂接着剤が浸透させてあること、
を特徴とするパーム合板。
【請求項3】
前記複数の単板は、すべてパーム単板であることを特徴とする請求項2記載のパーム合板。
【請求項4】
前記パーム繊維に浸透させてある樹脂接着剤は、前記複数の単板を貼り合わせるための使用される樹脂接着剤と同系のものであることを特徴とする請求項2または請求項3記載のパーム合板。
【請求項5】
前記パーム繊維に樹脂接着剤を浸透させる面を研磨した後に、前記パーム繊維に樹脂接着剤が浸透させてあることを特徴とする請求項2から請求項4のうちのいずれか1項記載のパーム合板。
【請求項6】
複数の単板を接着剤で貼り合わせる工程と、
前記複数の単板の表面であって、露出している繊維に接着剤を浸透させる面を研磨する工程と、
前記研磨した面に接着剤を塗布して前記繊維に前記接着剤を浸透させる工程と、
前記接着剤を乾燥させる工程と、
を備えることを特徴とする合板製造方法。
【請求項7】
最も外側の少なくとも1枚の単板がパーム単板である複数の単板を樹脂接着剤で貼り合わせる工程と、
前記パーム単板の表面であって、露出しているパーム繊維に樹脂接着剤を浸透させる面を研磨する工程と、
前記研磨した面に樹脂接着剤を塗布して前記パーム繊維に前記樹脂接着剤を浸透させる工程と、
前記樹脂接着剤を乾燥させる工程と、
を備えることを特徴とするパーム合板製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−68015(P2011−68015A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−220593(P2009−220593)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(509267672)
【Fターム(参考)】