説明

合焦方法及び合焦システム

【課題】少ない像の撮像によって速い速度で焦点検出を行い合焦を行うことのできる合焦方法及び合焦システムであって、特別な合焦検出系を配置する必要のない安価で簡易なシステムから成る合焦方法及び合焦システムを提供する。
【解決手段】画像中に存在する像に対して収差解析を行い、光波の波面形状に基づいてデフォーカス量を計算し、前記デフォーカス量に基づいて前記光学系を合焦させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学系の焦点位置を検出して焦点を合わせる合焦方法及び合焦システムに関し、特に光学系を透過した光の像の収差を解析し、その結果を用いて焦点位置を検出する合焦方法及び合焦システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来顕微鏡やカメラ等の撮像装置の合焦は手動で行われていた。例えば、顕微鏡での合焦は、対物レンズと観察対象との相対的な位置関係を調節することによって行うのが一般的であり、合焦機構により観察対象の位置を対物レンズの光軸方向に移動させることにより行われる。
【0003】
近年自動的に合焦動作を行うオートフォーカス機能を備えているものが、広く用いられている。例えば銀塩及びデジタル一眼レフカメラでは、撮像レンズを通った光束をビームスプリッタで分割して、分割した光束の光軸を互いにずらし、2つの結像レンズで焦点検出センサに結像し、2像のずれからデフォーカス量(焦点位置からのずれの大きさ)を計算し、そのデフォーカス量に応じて撮像レンズを駆動し合焦させる、いわゆるTTL(Through The Lens)位相差検出型のオートフォーカスが広く用いられている。
【0004】
特開2006−98771号公報(特許文献1)には、このTTL位相差検方式を採用した焦点検出装置が開示されている。この焦点検出装置では、先ず撮像された2像のズレから、位相差による焦点検出方法でデフォーカス量defの演算を行い、更に第1の測光センサと第2の測光センサの出力差に応じて、カメラマイコンのROM内に記憶されたデータから補正係数kを決定すると共に、ROM内に記憶されたデータから現在の焦点距離及びフォーカス位置に応じた色収差量cを読み出し、最終デフォーカス量を、“k×c+def”として求めている。このようにして、レンズの差により色収差が異なる場合にも、光源の種類によるピントずれを抑制した精度の良いオートフォーカスを実現している。
【0005】
他の方式のオートフォーカスとしては、撮像素子に結像される被写体像の高周波成分を抽出し、撮像レンズを駆動しながらその高周波成分が最も高くなる位置を合焦位置とする、いわゆるコントラスト検出方式のオートフォーカスがある。
【0006】
例えば特開2006−30304号公報(特許文献2)に開示されている顕微鏡の焦点検出装置では、対物レンズの位置を変化させながら、異なる複数の位置の各々で光量信号の強度を記憶し、多数の光量信号の強度に基づいて演算処理を行うことによって合焦位置を決定するようにしている。この焦点検出装置では、光量信号の強度と相対位置との関係をグラフ化したときのピーク形状が平坦な場合でも、合焦位置を正確に検出できるようにしている。
【特許文献1】特開2006−98771号公報
【特許文献2】特開2006−30304号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の特許文献1に記載のTTL位相差検出型の焦点検出装置は、1回の焦点検出動作で合焦させることが可能であり、合焦動作が速いという長所があるが、撮影光束を分離するビームスプリッタや、合焦を行うための結像光学系、焦点検出センサ等を撮像光学系とは別に具備する必要があり、コストが高くなるという問題がある。
【0008】
また、上述の特許文献2に記載のコントラスト検出方式の焦点検出装置では、特別な合焦検出系を配置する必要がないのでコスト面で有利であり、ピント精度も良いという長所があるが、撮像レンズを少しずつ動かして多数の画像を撮像する必要があるため、合焦速度が非常に遅くなるという問題がある。
【0009】
本発明は上述のような事情によりなされたものであり、本発明の目的は、少ない像の撮像によって速い速度で焦点検出を行い合焦を行うことができる合焦方法及び合焦システムであり、特別な合焦検出系を配置する必要のない安価で簡易なシステムから成る合焦方法及び合焦システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、光学系の焦点位置を検出して焦点を合わせる合焦方法に関し、本発明の上記目的は、画像中に存在する像に対して収差解析を行い、光波の波面形状に基づいてデフォーカス量を計算し、前記デフォーカス量に基づいて前記光学系を合焦させることによって、或いは前記収差解析がスポット像解析、位相回復法、シャックハートマンセンサを用いる方法若しくは干渉計を用いる方法であることによって達成される。
【0011】
本発明は、光学系の焦点位置を検出して焦点を合わせる合焦方法に関し、本発明の上記目的は、光学系を透過した光を撮像して得られたデータから前記光の収差を解析する収差解析ステップと、前記収差解析ステップの解析収差からデフォーカス距離Dを算出するデフォーカス距離算出ステップと、前記デフォーカス距離Dに基づいて前記光学系を焦点位置に移動させる移動ステップとを備えたことによって、或いは前記収差解析ステップで解析される収差分布がゼルニケ級数で与えられると共に、前記光学系の2以上の複数位置で前記収差を解析するようにし、前記デフォーカス距離算出ステップは、前記複数位置と、前記複数位置のそれぞれに対する前記ゼルニケ級数のZ3成分とが比例関係にあることに基づいて線形回帰をすることによって前記デフォーカス距離Dを算出するようになっていることによって、或いは前記収差解析ステップで解析される収差分布がゼルニケ級数で与えられると共に、前記デフォーカス距離算出ステップは、NAを前記光学系の開口数、λを前記光の波長として、前記ゼルニケ級数のZ3成分Zとデフォーカス距離Dとの関係式
D=(Z×15λ)/2πC
ただし、

よりデフォーカス距離Dを算出するようになっていることによって達成される。
【0012】
本発明は、光学系の焦点位置を検出して焦点を合わせる合焦方法に関し、本発明の上記目的は、光学系を透過した光を撮像して得られたデータから前記光の収差を解析する収差解析ステップと、前記収差解析ステップによって得られる収差分布からデフォーカス距離Dを算出するデフォーカス距離算出ステップと、前記デフォーカス距離Dに基づいて前記光学系を焦点位置に移動させる駆動制御ステップとで構成され、前記デフォーカス距離算出ステップは、前記収差分布と球面波分布とから最小2乗問題の目的関数を定式化し、前記最小2乗問題を解いてデフォーカス距離Dを決定することによって、或いは前記光の波長をλ、前記光学系の開口数をNAとし、前記収差分布がs(r,θ)であり、前記球面波分布が

であり、

を定式化して前記最小2乗問題を解くようになっていることによって達成される。
【0013】
本発明の上記目的は、前記収差解析ステップは、1つのデフォーカス位置又は2つのデフォーカス位置のスポット像を解析することによって収差を解析するようになっていることによって、或いは前記収差解析ステップは、1つのデフォーカス位置又は2つのデフォーカス位置の像から位相回復法によって収差を解析するようになっていることによって、或いは前記収差解析ステップは、干渉計を用いることによって収差を解析するようになっていることによって、或いは前記収差解析ステップは、シャックハートマンセンサを用いることによって収差を解析するようになっていることによって、或いは前記収差解析ステップは、前記光学系を透過した光をビームスプリッタで光1及び光2に分離し、前記光1はデフォーカス光学系を透過し撮像素子1で撮像され、前記光2は撮像素子2で撮像されるようにすることによって、前記2つのデフォーカス位置のスポット像を同時に撮像するようになっていることによって、より効果的に達成される。
【0014】
本発明は、光学系の焦点位置を検出して焦点を合わせる合焦システムに関し、本発明の上記目的は、画像中に存在する像に対して収差解析を行い、光波の波面形状に基づいてデフォーカス量を計算し、前記デフォーカス量に基づいて前記光学系を合焦させることより達成され、前記像がスポットや線等の単純形状であることにより、或いは前記収差解析がスポット像解析、位相回復法、シャックハートマンセンサを用いる方法若しくは干渉計を用いる方法であることにより、より効果的に達成される。
また、本発明は光学系の合焦システムに関し、本発明の上記目的は、光を照射する光源と、前記光が透過する光学系と、前記光学系を透過した光を撮像して得られたデータから前記光の収差を解析する収差解析部と、前記収差解析部の解析収差からデフォーカス距離Dを算出するデフォーカス距離算出部と、前記デフォーカス距離Dに基づいて前記光学系を焦点位置に移動させる駆動制御部とで構成することにより達成され、前記収差解析部で解析される収差分布がゼルニケ級数で与えられると共に、前記光学系の2以上の複数位置で前記収差を解析するようにし、前記デフォーカス距離算出部は、前記複数位置と、前記複数位置のそれぞれに対する前記ゼルニケ級数のZ3成分とが比例関係にあることに基づいて線形回帰をすることによって前記デフォーカス距離Dを算出することにより、或いは前記収差解析部で解析される収差分布がゼルニケ級数で与えられると共に、前記デフォーカス距離算出部は、NAを前記光学系の開口数、λを前記光の波長として、前記ゼルニケ級数のZ3成分Zとデフォーカス距離Dとの関係式
D=(Z×15λ)/2πC
ただし、
【0015】

よりデフォーカス距離Dを算出することにより、より効果的に達成される。
更に、本発明は光学系の合焦システムに関し、本発明の上記目的は、光を照射する光源と、前記光が透過する光学系と、前記光学系を透過した光を撮像して得られたデータから前記光の収差を解析する収差解析部と、前記収差解析部によって得られる収差分布からデフォーカス距離Dを算出するデフォーカス距離算出部と、前記デフォーカス距離Dに基づいて前記光学系を焦点位置に移動させる駆動制御部とで構成され、前記デフォーカス距離算出部は、前記収差分布と球面波分布とから最小2乗問題の目的関数を定式化し、前記最小2乗問題を解いてデフォーカス距離Dを決定することにより達成され、前記光の波長をλ、前記光学系の開口数をNAとし、前記収差分布がs(r,θ)であり、前記球面波分布が
【0016】

であり、
【0017】

を定式化して前記最小2乗問題を解くことにより、或いは前記収差解析部は、1つのデフォーカス位置又は2つのデフォーカス位置のスポット像を解析することによって収差を解析するようになっていることにより、或いは前記収差解析部は、1つのデフォーカス位置又は2つのデフォーカス位置の像から位相回復法によって収差を解析するようになっていることにより、或いは前記収差解析部は、干渉計を用いることによって収差を解析するようになっていることにより、或いは前記収差解析部は、シャックハートマンセンサを用いることによって収差を解析するようになっていることにより、或いは前記収差解析部は、前記光学系を透過した光をビームスプリッタで光1及び光2に分離し、前記光1はデフォーカス光学系を透過し撮像素子1で撮像され、前記光2は撮像素子2で撮像されるようにすることによって、前記2つのデフォーカス位置のスポット像を同時に撮像するようになっていることにより、より効果的に達成される。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る合焦方法及び合焦システムによれば、少ない数の像から焦点位置を同定できるので、速い速度での合焦が可能である。具体的には、1μmのレンジに対し、コントラスト検出方式で100回の撮像により達成される精度を、本発明による合焦方法及び合焦システムでは2回の撮像で達成でき、従来のコントラスト検出方式に比べて非常に速い合焦速度が達成できる。
【0019】
また、特別な合焦検出系を配置する必要がなく、安価で簡易なシステムによって焦点検出を行い、合焦を行うことが可能である。
【0020】
なお、本発明に係る合焦方法及び合焦システムは、リアルタイム性が要求される製品検査等に好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明に係る合焦方法及び合焦システムでは、光源から照射され、1又は複数のレンズから成る光学系を透過した光のスポットや線等の形状の像の収差解析を行い、光波の波面形状からデフォーカス距離Dを算出し、算出されたデフォーカス距離Dに基づいて光学系を焦点位置に移動させるようにする。そのため、安価で簡易なシステムで、少ない像の撮像によって速い速度での焦点検出及び合焦を行うことができる。
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0023】
本発明に係る合焦システムは図1のように構成される。即ち、光源1から光L1が照射され、光L1は1又は複数のレンズから成る光学系2を透過する。光学系2を透過した光L2は、収差解析部3で撮像され、撮像によって得られたデータから光L2の収差が解析される。デフォーカス距離算出部4では、収差解析部3において解析された収差からデフォーカス距離Dを算出する。移動制御部5は、デフォーカス距離算出部4で算出されたデフォーカス距離Dに基づいて光学系2を焦点位置に移動させるように移動駆動部6を制御し、移動制御部5の制御に基づいて移動駆動部6は光学系2を焦点位置に移動させるようになっている。
【0024】
図2は、収差解析部3で、光のスポット像の収差分布を得る手順例を示すフローチャートである。先ず、光源1から光L1が照射され、光学系2を透過した光L2のスポット像を撮像素子で撮像し、撮像によって得られたデータからスポット像の強度分布|f|を計測する(ステップS11)。r及びθを曲座標とすると、光L2のスポット像の収差分布は下記数1で表される。
(数1)
s(r,θ)

次に、上記数1で表される収差分布のゼルニケ(Zernike)係数{z}を仮定し(ステップS12)、スポット像のモデル強度分布|F({z})|を構築する(ステップS13)。
そして、スポット像の強度分布|f|とモデル強度分布|F({z})|の残差を算出し(ステップS14)、残差が許容範囲であるかかどうかを判定する(ステップS15)。残差が許容範囲を超える場合、非線形最適化法の目的関数
【0025】
【数2】

を定式化して、非線形最適化問題を解いてゼルニケ係数{z}を修正し、修正されたモデル強度分布|F({z})|を算出し(ステップS16)、上記ステップS14にリターンする。
一方、上記ステップS15において残差が許容範囲内の場合、モデル強度分布|F({z})|から数1で示される収差分布s(r,θ)が得られ(ステップS17)、収差解析部3における収差の解析が終了する。
【0026】
なお、図2の例では、1つのデフォーカス位置のスポット像から収差を解析するようにしているが、2つのデフォーカス位置のスポット像から収差を解析するようにしても良い。
【0027】
次に、デフォーカス距離算出部4におけるデフォーカス距離Dの算出方法について説明する。先ず、光学系2の2以上の複数の位置
(数3)
x(i) (1≦i≦n,n≧2)
で収差解析を行い、光学系2の位置x(i)における収差分布s(r,θ;i)を求める。収差分布s(r,θ;i)はゼルニケ級数で与えられており、ゼルニケ級数から、光学系2の位置x(i)におけるゼルニケ係数のz3成分(rの成分)であるZ(i)を抽出する。焦点位置をxとすると、デフォーカス距離Dは下記数4で与えられる。
(数4)
D(i)=x(i)−x
デフォーカス距離D(i)とゼルニケ係数のz3成分であるZ(i)には、αを係数として下記数5の比例関係が成り立つ。
(数5)
D(i)= α・Z(i)
上記数4及び数5より、下記数6の関係が得られる。
(数6)
x(i)−x= α・Z(i) (1≦i≦n,n≧2)

数6の関係から、最小2乗法などの線形回帰を行うことにより、係数α及び焦点位置xを決定することができる共に、数4によりデフォーカス距離D(i)を算出することができる。
【0028】
デフォーカス距離D(i)若しくは焦点位置xに基づいて、移動制御部5は光学系2を焦点位置に移動させるように移動駆動部6を制御し、移動駆動部6は移動制御部5の制御に基づいて光学系2を焦点位置に移動させることによって、合焦システムの合焦動作が完了する。
【0029】
次に、デフォーカス距離算出部4におけるデフォーカス距離Dの別の算出方法について説明する。
光学系2のデフォーカス位置において収差解析部3で収差解析を行い、得られた収差分布s(r,θ)からゼルニケ係数のz3成分であるz3成分Zを抽出する。z3成分Zとデフォーカス距離Dとの間には、下記の数7で与えられる関係式が成り立つ。
(数7)
D=(Z×15λ)/2πC
ここで、λは光源1から照射される光L1の波長であり、Cは下記数8で与えられる。
【0030】
【数8】

ただし、NAは光学系2の開口数である。

上記数7及び数8より、デフォーカス距離Dを算出することができる。
【0031】
このようにして算出されたデフォーカス距離Dに基づいて、移動制御部5は光学系2を焦点位置に移動させるように移動駆動部6を制御し、移動駆動部6は移動制御部5の制御に基づいて光学系2を焦点位置に移動させることによって、合焦システムの合焦動作が完了する。
【0032】
次に、デフォーカス距離算出部4におけるデフォーカス距離Dの更に別の算出方法について説明する。
光学系2のデフォーカス位置において、収差解析部3で収差解析を行い、収差分布s(r,θ)を得る。得られた収差分布s(r,θ)と、下記数9で示される球面波分布h(r,θ)とから、下記数10で与えられる最小2乗問題の目的関数を定式化する。
【0033】
【数9】

【0034】
【数10】

上記数10で与えられる最小2乗問題を解くことによって、デフォーカス距離Dを算出することができる。このようにして算出されたデフォーカス距離Dに基づいて、移動制御部5は光学系2を焦点位置に移動させるように移動駆動部6を制御し、移動駆動部6は移動制御部5の制御に基づいて光学系2を焦点位置に移動させることによって、合焦システムの合焦動作が完了する。
【0035】
収差解析部3で収差を解析する際、2つのデフォーカス位置のスポット像から収差を解析する場合、収差解析部3を図3に示すように構成することによって、2つのデフォーカス位置のスポット像を同時に撮像して、収差解析を行うようにすることができる。
【0036】
即ち、収差解析部3は、光源1から照射された光L2を光学系2を透過させ、光学系2を透過した光L2を2つの光L2A及びL2Bに分離するためのビームスプリッタ31を具備している。ビームスプリッタ31で分離された光L2Aのデフォーカス距離をずらすためにデフォーカス光学系32が配置され、デフォーカス光学系32を透過した光L2CはCCD等で成る撮像素子33Aで受光される。ビームスプリッタ31で分離されたもう一方の光L2Bは、CCD等で成る撮像素子33Bで受光される。撮像素子33A及び撮像素子33Bで得られたデータは解析部34に入力され、スポット像の収差が解析される。
【0037】
スポット像を観察する代表的な例としては、DVDピックアップから照射されるレーザの焦点の観察や粒子等の微小散乱体の観察がある。
【0038】
本発明に係る合焦システムを顕微鏡に適用した場合、スライドグラスや金属面等の観察面を対物レンズの焦点に合焦する必要がある。この場合、予め補助的にスポット光を観察面に照射し、観察面で反射されたスポット光の鏡像を収差解析するようにする。そして、収差解析の結果に基づいて焦点位置を検出する。スポット光と対物レンズの焦点の位置関係若しくはスポット光と観察面の位置関係が既知であれば、対物レンズの焦点と観察面の位置関係を知ることができ、対物レンズの焦点と観察面とを合焦することができる。
【0039】
解析部34での収差解析の手順は、図2のフローチャートに示される手順で行われるが、図2のフローチャートに示される収差解析の手順は、収差解析部3で光のスポット像を解析することによって収差解析を行うようにした場合の収差解析の手順例である。本発明に係る合焦システムでは、収差解析部3における収差解析方法は、スポット像解析による収差解析方法に限定されるものではない。
【0040】
例えば、収差解析部3での収差解析方法として、位相回復法を採用しても良い。この場合、撮像素子で撮像する像はスポット像又は平行光の像である。位相回復法での収差解析には、2つのデフォーカス位置における像が必要になり、これらの像を同時に得るために収差解析部3を図3に示されるような構成にしても良い。
【0041】
その他、収差解析部3での収差解析方法として、シャックハートマンセンサを用いる方法を採用した場合は、レンズアレイセンサを通した後の像を撮像素子で受光するようにする。また、収差解析部3での収差解析方法として、干渉計を用いる方法を採用した場合、干渉させた干渉縞の像を撮像素子で受光するようにする。
【0042】
以上、本発明の実施形態について具体的に説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る合焦システムの構成例を示すブロック図である。
【図2】スポット像を解析することによって収差解析を行う場合の、収差解析の手順を示すフローチャートである。
【図3】2つのデフォーカス位置における像を同時に撮像して収差解析を行うようにした収差解析部3の構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0044】
1 光源
2 光学系
3 収差解析部
4 デフォーカス距離算出部
5 移動制御部
6 移動駆動部
31 ビームスプリッタ
32 デフォーカス光学系
33A、33B 撮像素子
34 解析部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学系の焦点位置を検出して焦点を合わせる合焦方法であって、画像中に存在する像に対して収差解析を行い、光波の波面形状に基づいてデフォーカス量を計算し、前記デフォーカス量に基づいて前記光学系を合焦させることを特徴とする合焦方法。
【請求項2】
前記収差解析がスポット像解析、位相回復法、シャックハートマンセンサを用いる方法若しくは干渉計を用いる方法である請求項1に記載の合焦方法。
【請求項3】
光学系を透過した光を撮像して得られたデータから前記光の収差を解析する収差解析ステップと、前記収差解析ステップの解析収差からデフォーカス距離Dを算出するデフォーカス距離算出ステップと、前記デフォーカス距離Dに基づいて前記光学系を焦点位置に移動させる移動ステップとを備えたことを特徴とする合焦方法。
【請求項4】
前記収差解析ステップで解析される収差分布がゼルニケ級数で与えられると共に、前記光学系の2以上の複数位置で前記収差を解析するようにし、前記デフォーカス距離算出ステップは、前記複数位置と、前記複数位置のそれぞれに対する前記ゼルニケ級数のZ3成分とが比例関係にあることに基づいて線形回帰をすることによって前記デフォーカス距離Dを算出するようになっている請求項3に記載の合焦方法。
【請求項5】
前記収差解析ステップで解析される収差分布がゼルニケ級数で与えられると共に、前記デフォーカス距離算出ステップは、NAを前記光学系の開口数、λを前記光の波長として、前記ゼルニケ級数のZ3成分Zとデフォーカス距離Dとの関係式
D=(Z×15λ)/2πC
ただし、

よりデフォーカス距離Dを算出するようになっている請求項3に記載の合焦方法。
【請求項6】
光学系を透過した光を撮像して得られたデータから前記光の収差を解析する収差解析ステップと、前記収差解析ステップによって得られる収差分布からデフォーカス距離Dを算出するデフォーカス距離算出ステップと、前記デフォーカス距離Dに基づいて前記光学系を焦点位置に移動させる駆動制御ステップとで構成され、前記デフォーカス距離算出ステップは、前記収差分布と球面波分布とから最小2乗問題の目的関数を定式化し、前記最小2乗問題を解いてデフォーカス距離Dを決定することを特徴とする合焦方法。
【請求項7】
前記光の波長をλ、前記光学系の開口数をNAとし、前記収差分布がs(r,θ)であり、前記球面波分布が

であり、

を定式化して前記最小2乗問題を解くようになっている請求項6に記載の合焦方法。
【請求項8】
前記収差解析ステップは、1つのデフォーカス位置又は2つのデフォーカス位置のスポット像を解析することによって収差を解析するようになっている請求項3乃至7のいずれかに記載の合焦方法。
【請求項9】
前記収差解析ステップは、1つのデフォーカス位置又は2つのデフォーカス位置の像から位相回復法によって収差を解析するようになっている請求項3乃至7のいずれかに記載の合焦方法。
【請求項10】
前記収差解析ステップは、干渉計を用いることによって収差を解析するようになっている請求項3乃至7のいずれかに記載の合焦方法。
【請求項11】
前記収差解析ステップは、シャックハートマンセンサを用いることによって収差を解析するようになっている請求項3乃至7のいずれかに記載の合焦方法。
【請求項12】
前記収差解析ステップは、前記光学系を透過した光をビームスプリッタで光1及び光2に分離し、前記光1はデフォーカス光学系を透過し撮像素子1で撮像され、前記光2は撮像素子2で撮像されるようにすることによって、前記2つのデフォーカス位置のスポット像を同時に撮像するようになっている請求項3乃至11のいずれかに記載の合焦方法。
【請求項13】
光学系の焦点位置を検出して焦点を合わせる合焦システムにおいて、画像中に存在する像に対して収差解析を行い、光波の波面形状に基づいてデフォーカス量を計算し、前記デフォーカス量に基づいて前記光学系を合焦させることを特徴とする合焦システム。
【請求項14】
前記像がスポットや線等の単純形状である請求項13に記載の合焦システム。
【請求項15】
前記収差解析がスポット像解析、位相回復法、シャックハートマンセンサを用いる方法若しくは干渉計を用いる方法である請求項13又は14に記載の合焦システム。
【請求項16】
光を照射する光源と、前記光が透過する光学系と、前記光学系を透過した光を撮像して得られたデータから前記光の収差を解析する収差解析部と、前記収差解析部の解析収差からデフォーカス距離Dを算出するデフォーカス距離算出部と、前記デフォーカス距離Dに基づいて前記光学系を焦点位置に移動させる駆動制御部とで構成されたことを特徴とする合焦システム。
【請求項17】
前記収差解析部で解析される収差分布がゼルニケ級数で与えられると共に、前記光学系の2以上の複数位置で前記収差を解析するようにし、前記デフォーカス距離算出部は、前記複数位置と、前記複数位置のそれぞれに対する前記ゼルニケ級数のZ3成分とが比例関係にあることに基づいて線形回帰をすることによって前記デフォーカス距離Dを算出するようになっている請求項16に記載の合焦システム。
【請求項18】
前記収差解析部で解析される収差分布がゼルニケ級数で与えられると共に、前記デフォーカス距離算出部は、NAを前記光学系の開口数、λを前記光の波長として、前記ゼルニケ級数のZ3成分Zとデフォーカス距離Dとの関係式
D=(Z×15λ)/2πC
ただし、

よりデフォーカス距離Dを算出するようになっている請求項16に記載の合焦システム。
【請求項19】
光を照射する光源と、前記光が透過する光学系と、前記光学系を透過した光を撮像して得られたデータから前記光の収差を解析する収差解析部と、前記収差解析部によって得られる収差分布からデフォーカス距離Dを算出するデフォーカス距離算出部と、前記デフォーカス距離Dに基づいて前記光学系を焦点位置に移動させる駆動制御部とで構成され、前記デフォーカス距離算出部は、前記収差分布と球面波分布とから最小2乗問題の目的関数を定式化し、前記最小2乗問題を解いてデフォーカス距離Dを決定することを特徴とする合焦システム。
【請求項20】
前記光の波長をλ、前記光学系の開口数をNAとし、前記収差分布がs(r,θ)であり、前記球面波分布が


であり、

を定式化して前記最小2乗問題を解くようになっている請求項19に記載の合焦システム。
【請求項21】
前記収差解析部は、1つのデフォーカス位置又は2つのデフォーカス位置のスポット像を解析することによって収差を解析するようになっている請求項16乃至20のいずれかに記載の合焦システム。
【請求項22】
前記収差解析部は、1つのデフォーカス位置又は2つのデフォーカス位置の像から位相回復法によって収差を解析するようになっている請求項16乃至20のいずれかに記載の合焦システム。
【請求項23】
前記収差解析部は、干渉計を用いることによって収差を解析するようになっている請求項16乃至20のいずれかに記載の合焦システム。
【請求項24】
前記収差解析部は、シャックハートマンセンサを用いることによって収差を解析するようになっている請求項16乃至20のいずれかに記載の合焦システム。
【請求項25】
前記収差解析部は、前記光学系を透過した光をビームスプリッタで光1及び光2に分離し、前記光1はデフォーカス光学系を透過し撮像素子1で撮像され、前記光2は撮像素子2で撮像されるようにすることによって、前記2つのデフォーカス位置のスポット像を同時に撮像するようになっている請求項16乃至24のいずれかに記載の合焦システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−36824(P2009−36824A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−198868(P2007−198868)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【出願人】(503155555)株式会社カツラ・オプト・システムズ (11)
【Fターム(参考)】