説明

合理的に設計された、非パリンドローム認識配列を有する単鎖メガヌクレアーゼ

異なる認識配列半部位に対して特異性を持つ一対の酵素サブユニットが単鎖ポリペプチドに結合され、非パリンドローム認識配列を持つ機能的へテロ二量体を形成した、合理的に設計された非天然由来のメガヌクレアーゼを開示する。また本発明は、該メガヌクレアーゼを製造する方法、および該メガヌクレアーゼを使用して組換え核酸および生物を製造する方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分子生物学および組換え核酸技術の分野に関する。特に本発明は、異なる認識配列半部位に関して特異性を持つ一対の酵素サブユニットが単鎖ポリペプチドに結合され、非パリンドローム認識配列を持つ機能的へテロ二量体を形成する、合理的に設計された非天然由来のメガヌクレアーゼに関する。また本発明は、該メガヌクレアーゼを製造する方法、および該メガヌクレアーゼを使用して組換え核酸および生物を製造する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
ゲノム工学には、ゲノム内の特異的な遺伝子配列を挿入、欠失、置換およびその他操作する性能が必要とされ、数多くの治療的および生物工学的な用途がある。ゲノム修飾の効果的な手段の開発は、遺伝子治療、農業技術および合成生物学において大きな目的を残している(非特許文献1、2、3、)。DNA配列を挿入または修飾する一般的な方法は、ゲノム標的に相同性のある配列に挟まれた遺伝子導入DNA配列を導入することと、効果を挙げた相同組換え事象を選択またはスクリーニングすることとを含む。遺伝子導入DNAを用いる組換えが起こることはまれであるが、該組換えは、標的部位で、ゲノムDNA中の二本鎖切断端によって刺激される可能性がある。DNA二本鎖切断端を作るために数多くの方法が使用されてきており、照射処理および化学処理が挙げられる。これらの方法は組換えを効率的に刺激するが、該二本鎖切断端はゲノム中に無作為に分散し、この状態は、変異原性および毒性が高い可能性がある。現在、染色体バックグラウンド内で固有の部位に対し遺伝子修飾を標的にすることができないことは、ゲノム工学の成功への大きな障害となっている。
【0003】
この目的を達成するための一つの取組みとして、ゲノム内の単一部位のみに存在する十分に大きい配列に対して特異性のあるヌクレアーゼを使用して、標的遺伝子座中の二本鎖切断端で相同組換えを刺激することがある(たとえば、非特許文献1参照)。この方法の有効性は、遺伝子操作されたZnフィンガDNA結合ドメインとFokI制限酵素の非特異的ヌクレアーゼドメインとの間のキメラ融合を使用する種々の生物において実証されている(非特許文献4、5、6)。これらの人工的Znフィンガヌクレアーゼは、部位特異的組換えを刺激するが、ヌクレアーゼドメインの制御が十分でないことに起因して、残存非特異的切断活性を保持し、しばしば予想外の部位で切断する(非特許文献7)。このような予想外の切断により、処置された生物では、突然変異および毒性を起こす可能性がある(非特許文献1)。
【0004】
植物および菌類のゲノム中に一般的に見出される15−40塩基対切断部位を認識する一群の天然由来のヌクレアーゼにより、低毒性のゲノム工学的代替物が提供されるかもしれない。そのような「メガヌクレアーゼ」または「ホーミングエンドヌクレアーゼ」は、グループI自己スプライシングイントロンおよびインテインのような寄生性DNAエレメントに会合していることが多い。これらは、染色体中で二本鎖切断端を生成することによって、宿主ゲノム中の特異的な位置で相同組換えまたは遺伝子挿入を自然に促進し、これにより細胞内DNA修復機構が動員される(非特許文献8)。メガヌクレアーゼは、一般的に、四つのファミリ、LAGLIDADGファミリ、GIY−YIGファミリ、His−CysボックスファミリおよびHNHファミリに分類される。これらのファミリは、触媒活性および認識配列に影響を及ぼす構造モチーフを特徴とする。たとえば、LAGLIDADGファミリのメンバは、保存LAGLIDADGモチーフの一つまたは二つのコピーを有することを特徴とする(非特許文献9参照)。一コピーのLAGLIDADGモチーフを持つLAGLIDADGメガヌクレアーゼ(「モノ−LAGLIDADGメガヌクレアーゼ」)は、ホモ二量体を形成し、一方二コピーのLAGLIDADGモチーフを持つメンバ(「ジ−LAGLIDADGメガヌクレアーゼ」)は単量体として見出される。I−CreI、I−CeuIおよびI−MsoIのようなモノ−LAGLIDADGメガヌクレアーゼは、パリンドローム性または擬似パリンドローム性であるDNA部位を認識、切断し、一方、I−SceI、I−AniIおよびI−DmoIのようなジ−LAGLIDADGメガヌクレアーゼは、一般的に、非パリンドローム性であるDNA部位を認識する(非特許文献8)。
【0005】
LAGLIDADGファミリからの天然メガヌクレアーゼは、植物、酵母、ショウジョウバエ、哺乳類細胞およびマウスにおいて、部位特異的なゲノム修飾を効果的に促進するために使用されているが、この取組みは、メガヌクレアーゼ認識配列を保存する相同遺伝子の修飾(非特許文献10)、または認識配列が導入されているプレエンジニアリングされたゲノムに対する修飾(非特許文献11、12、13、14、15)のいずれかに限定されている。
【0006】
ヌクレアーゼ刺激遺伝子修飾の体系的実施には、ゲノム中の既存部位へのDNA破壊を標的にするようにカスタマイズされた特異性をもつ遺伝子操作された酵素を使用することが必要であり、したがって、医学または生物工学関連部位で遺伝子修飾を促進するために、メガヌクレアーゼを適用することは、大きな関心がもたれてきている(非特許文献1、16、17)。
【0007】
I−CreIは、葉緑体染色体中の22塩基対認識配列を認識および切断するLAGLIDADGファミリのメンバであり、メガヌクレアーゼ再設計用の魅力的な標的を提供する。野生型酵素は、各単量体が完全長認識配列において9塩基対と直接接触するホモ二量体である。遺伝的選択技術は、野生型I−CreI切断部位の優先度を変更するために使用されてきた(非特許文献16、18、19、20、21、22、特許文献1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11)。つい最近では、哺乳類、酵母、植物、細菌およびウィルスのゲノム中の部位を始めとする多様なDNA部位を標的にするために、I−CreIおよび他のそのようなメガヌクレアーゼを包括的に再設計しうる、モノ−LAGLIDADGメガヌクレアーゼを合理的に設計する方法が記述された(特許文献12)。
【0008】
大部分の遺伝子工学的用途のために、I−CreIのようなモノ−LAGLIDADGメガヌクレアーゼを使用することの主な限界は、これらの酵素が、パリンドローム性DNA認識部位を自然に標的にするという事実である。そのような冗長な(10〜40bp)パリンドローム性DNA部位は、実際にはまれであり、関心のあるDNA部位において偶然に起こることは、到底不可能である。モノ−LAGLIDADGメガヌクレアーゼを持つ非パリンドロームDNA部位を標的にするために、二つの異なる半部位を認識し、ヘテロ二量体化し、所望の非パリンドローム部位を切断するメガヌクレアーゼを形成する一対の単量体を製造することができる。ヘテロ二量体化は、宿主細胞中で一対のメガヌクレアーゼ単量体を共発現することによって、またはインビトロで一対の精製ホモ二量体メガヌクレアーゼを混合し、該サブユニットをヘテロ二量体に再会合させることによって達成することができる(非特許文献23、24、特許文献12、13、14、15、16)。どちらの取組みも2つの主要な限界を負う。すなわち、(1)これらは、所望のヘテロ二量体種を製造するために、2個のメガヌクレアーゼ遺伝子の発現が必要であること(これは、遺伝子送達およびインビボでの使用を複雑にする)および(2)その結果物は、約25%の第1ホモ二量体、50%のヘテロ二量体および25%の第2ホモ二量体の混合物であるが、所望のものはヘテロ二量体のみであることである。この後者の限界は、特許文献12、17、18、および非特許文献25に記載されるように、二つのメガヌクレアーゼの二量体化境界面を遺伝子操作して、ホモ二量体化よりヘテロ二量体化を促進することによってかなりの程度まで克服することができる。たとえそうであっても、二つのメガヌクレアーゼ遺伝子を発現しなければならず、ホモ二量体化が、完全に阻止されるわけではない。
【0009】
一つ以上のモノ−LAGLIDADGメガヌクレアーゼに由来する非パリンドローム認識部位を持つメガヌクレアーゼの形成への代替の取組みは、二つのメガヌクレアーゼに由来するLAGLIDADGサブユニットの融合を含む単鎖ポリペプチドの製造である。そのようなメガヌクレアーゼを製造するために二つの一般的方法を適用することができる。
【0010】
第1の方法では、ジ−LAGLIDADGメガヌクレアーゼの二つのLAGLIDADGサブユニットの一つを、モノ−LAGLIDADGメガヌクレアーゼからLAGLIDADGサブユニットによって置き換えることができる。この取組みは、ジ−LAGLIDADG I−DmoIメガヌクレアーゼのC末端サブユニットをI−CreIサブユニットに置き換えることによって実証された。(非特許文献17、26、特許文献19)。結果物は、ハイブリッドDNA部位を認識および切断したハイブリッドI−DmoI/I−CreIメガヌクレアーゼであった。
【0011】
第2の方法では、一対のモノ−LAGLIDADGサブユニットを、ペプチドリンカによって結合し、「単鎖ヘテロ二量体メガヌクレアーゼ」を作成することができる。そのようなI−CreIの単鎖誘導体を製造する1つの試みが報告されている(非特許文献17、特許文献19)。しかし、本明細書および非特許文献25で検討するように、現在、この方法では、共有結合したI−CreIサブユニットが一緒に機能し、非パリンドローム認識部位を認識および切断する、単鎖ヘテロ二量体メガヌクレアーゼは製造されないことを示唆する証拠がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開公報第2008/010009号
【特許文献2】国際公開公報第2007/093918号
【特許文献3】国際公開公報第2007/093836号
【特許文献4】国際公開公報第2006/097784号
【特許文献5】国際公開公報第2008/059317号
【特許文献6】国際公開公報第2008/059382号
【特許文献7】国際公開公報第2008/102198号
【特許文献8】国際公開公報第2007/060495号
【特許文献9】国際公開公報第2007/049156号
【特許文献10】国際公開公報第2006/097853号
【特許文献11】国際公開公報第2004/067736号
【特許文献12】国際公開公報第2007/047859号
【特許文献13】国際公開公報第2006/097854号
【特許文献14】国際公開公報第2007/057781号
【特許文献15】国際公開公報第2007/049095号
【特許文献16】国際公開公報第2007/034262号
【特許文献17】国際公開公報第2008/093249号
【特許文献18】国際公開公報第2008/093152号
【特許文献19】国際公開公報第2003/078619号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Porteusら(2005),Nat. Biotechnol.23:967−73
【非特許文献2】Tzfiraら(2005),Trends Biotechnol.23:567−9
【非特許文献3】McDanielら(2005),Curr.Opin.Biotechnol.16:476−83
【非特許文献4】Porteus(2006),Mol.Ther.13:438−46
【非特許文献5】Wrightら(2005),Plant J.44:693−705
【非特許文献6】Urnovら(2005),Nature435:646−51
【非特許文献7】Smithら(2000),Nucleic Acids Res.28:3361−9
【非特許文献8】Stoddard(2006),Q.Rev.Biophys.38:49−95
【非特許文献9】Chevalierら(2001),Nucleic Acids Res.29(18):3757−3774
【非特許文献10】Monnatら(1999),Biochem.Biophys.Res.Commun.255:88−93
【非特許文献11】Rouetら(1994),Mol.Cell.Biol.14:8096−106
【非特許文献12】Chiltonら(2003),Plant Physiol.133:956−65
【非特許文献13】Puchtaら(1996),Proc.Natl.Acad.Sci.USA93:5055−60
【非特許文献14】Rongら(2002),Genes Dev.16:1568−81
【非特許文献15】Goubleら(2006),J.Gene Med.8(5):616−622
【非特許文献16】Sussmanら(2004),J.Mol.Biol.342:31−41
【非特許文献17】Epinatら(2003),Nucleic Acids Res.31:2952−62
【非特許文献18】Chamesら(2005),Nucleic Acids Res.33:el78
【非特許文献19】Seligmanら(2002),Nucleic Acids Res.30:3870−9
【非特許文献20】Arnouldら(2006),J.Mol.Biol.355:443−58
【非特許文献21】Rosenら(2006),Nucleic Acids Res.34:4791−4800
【非特許文献22】Arnouldら(2007).J.Mol.Biol.371:49−65,
【非特許文献23】Smithら(2006),Nuc.Acids Res.34:149−157
【非特許文献24】Chamesら(2005),Nucleic Acids Res.33:178−186
【非特許文献25】Fajardo−Sanchezら(2008).Nucleic Acids Res.36:2163−2173
【非特許文献26】Chevalierら(2002),Mol.Cell10:895−905
【非特許文献27】Cahillら(2006),Front.Biosci.11:1958−1976
【非特許文献28】Prietoら(2007),Nucl.Acids Res.35:3262−3271
【非特許文献29】Juricaら(1998),MoI.Cell2:469−476
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、当該分野では、非パリンドロームDNA部位を認識および切断するために、I−CreIのようなモノ−LAGLIDADG酵素に由来する単鎖ヘテロ二量体メガヌクレアーゼを製造する方法の必要性が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、ペプチドリンカが二つの異種LAGLIDADGメガヌクレアーゼサブユニットを共有結合で連結して「単鎖ヘテロ二量体メガヌクレアーゼ」または「単鎖メガヌクレアーゼ」を形成し、少なくともN末端サブユニットはモノ−LAGLIDADGメガヌクレアーゼに由来し、およびサブユニットは一緒に機能して、二つのサブユニットの認識半部位のハイブリッドである非パリンドロームDNA認識部位に優先的に結合し、これを切断する融合タンパク質の開発に、一部基づく。特に、本発明は、天然由来のメガヌクレアーゼが認識しない、非パリンドロームDNA配列を認識する単鎖メガヌクレアーゼを遺伝子操作するために、使用することができる。また、本発明は、特に、遺伝子操作、遺伝子治療、病原性感染の治療ならびに診断および研究においてインビトロで使用するために、メガヌクレアーゼを利用して生物のゲノム内の限られた数の遺伝子座で所望の遺伝子配列の組換えを起こすことによって、前記メガヌクレアーゼを使用して組換え核酸および生物を製造する方法を提供する。
【0016】
したがって、いくつかの実施形態では、本発明は、一種以上のモノ−LAGLIDADGメガヌクレアーゼに由来する一対の共有結合されたLAGLIDADGサブユニットであって、一緒に機能して非パリンドローム認識部位を認識および切断するサブユニットを含む組換え単鎖メガヌクレアーゼを提供する。いくつかの実施形態では、該モノ−LAGLIDADGサブユニットは、I−CreI、I−MsoIおよびI−CeuIから選択される野生型メガヌクレアーゼに由来する。
【0017】
他の実施形態では、本発明は、N末端サブユニットはI−CreI、I−MsoIおよびI−CeuIから選択される野生型メガヌクレアーゼに由来し、C末端サブユニットもI−CreI、I−MsoIおよびI−CeuIから選択される野生型メガヌクレアーゼに由来するが、N末端サブユニットは、C末端サブユニットとは異なる種の野生型メガヌクレアーゼに由来する、一対のモノ−LAGLIDADGサブユニットを含む組換え単鎖メガヌクレアーゼを提供する。
【0018】
いくつかの実施形態では、本発明は、N末端サブユニットはI−CreI、I−MsoIおよびI−CeuIから選択される野生型メガヌクレアーゼに由来し、およびC末端サブユニットはI−DmoI、I−SceIおよびI−AniIから選択される野生型ジ−LAGLIDADGメガヌクレアーゼからの単一LAGLIDADGサブユニットに由来する、一対のLAGLIDADGサブユニットを含む組換え単鎖メガヌクレアーゼを提供する。
【0019】
野生型モノ−LAGLIDADGメガヌクレアーゼとして、配列番号1のI−CreIメガヌクレアーゼ、配列番号2のI−MsoIメガヌクレアーゼ、および配列番号3のI−CeuIメガヌクレアーゼが挙げられるが、これらに限定されない。野生型ジ−LAGLIDADGメガヌクレアーゼとして、配列番号4のI−DmoIメガヌクレアーゼ、配列番号5のI−SceIメガヌクレアーゼ、および配列番号6のI−AniIメガヌクレアーゼが挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
野生型LAGLIDADGドメインとして、配列番号1の野生型I−CreIメガヌクレアーゼの残基9〜151、配列番号2の野生型I−MsoIメガヌクレアーゼの残基11〜162、および配列番号3の野生型I−CeuIメガヌクレアーゼの残基55〜210、配列番号4の野生型I−DmoIの残基9−96、配列番号4の野生型I−DmoIの残基105〜178、配列番号5の野生型I−SceIの残基32〜123、配列番号5の野生型I−SceIの残基134〜225、配列番号6の野生型I−AniIの残基4〜121、および配列番号6の野生型I−AniIの残基136〜254が挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
野生型LAGLIDADGメガヌクレアーゼに由来するLAGLIDADGサブユニットとして、配列番号1の野生型I−CreIメガヌクレアーゼの残基9〜151、配列番号2の野生型I−MsoIメガヌクレアーゼの残基11〜162、および配列番号3の野生型I−CeuIメガヌクレアーゼの残基55〜210、配列番号4の野生型I−DmoIの残基9〜96、配列番号4の野生型I−DmoIの残基105〜178、配列番号5の野生型I−SceIの残基32〜123、配列番号5の野生型I−SceIの残基134〜225、配列番号6の野生型I−AniIの残基4〜121、および配列番号6の野生型I−AniIの残基136〜254のいずれか一つと、少なくとも85%の配列同一性、または85%〜100%の配列同一性を有するLAGLIDADGドメインを含有するサブユニットが挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
また、野生型LAGLIDADGメガヌクレアーゼに由来するLAGLIDADGサブユニットとして、一つ以上のアミノ酸修飾が、国際公開公報第2007/047859号に開示された、LAGLIDADGメガヌクレアーゼを合理的に設計する方法に従って含有されている前記ポリペプチド配列のいずれかと、当該分野で公知の他の非天然由来のメガヌクレアーゼ変異体とを含むサブユニットが挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
ある実施形態では、本発明は、それぞれが配列番号7〜30から選択される野生型DNA半部位を認識する天然由来のLAGLIDADGサブユニットに由来する、一対のLAGLIDADGサブユニットを含む組換え単鎖メガヌクレアーゼを提供する。
【0024】
他の実施形態では、本発明は、DNA結合特異性に関して遺伝子操作された一対のLAGLIDADGサブユニットであって、それぞれが、少なくとも一つの塩基が、配列番号7〜30から選択される野生型DNA半部位とは異なるDNA半部位を認識するサブユニットを含む組換え単鎖メガヌクレアーゼを提供する。
【0025】
他の実施形態では、本発明は、一つのサブユニットは天然であり、配列番号7〜30から選択される野生型DNA半部位を認識し、もう一つは、DNA結合特異性に関して遺伝子操作され、少なくとも一つの塩基が、配列番号7〜30から選択される野生型DNA半部位とは異なるDNA部位を認識する一対のLAGLIDADGサブユニットを含む組換え単鎖メガヌクレアーゼを提供する。
【0026】
いくつかの実施形態では、LAGLIDADGサブユニットを結合するポリペプチドリンカは、可撓性リンカである。特定の実施形態では、該リンカは、15〜40個の残基、25〜31個の残基、またはこれらの範囲の任意の数の残基を含有することができる。他の特定の実施形態では、リンカを形成する残基の少なくとも50%または50%〜100%が、極性非荷電残基である。
【0027】
他の実施形態では、LAGLIDADGサブユニットを結合するポリペプチドリンカは、安定な二次構造を有する。特定の実施形態では、該安定な二次構造は、少なくとも二つのαへリックス構造を含む。他の特定の実施形態では、該安定な二次構造は、N末端からC末端までに、第1のループ、第1のαへリックス、第1のターン、第2のαへリックスおよび第2のループを含む。ある特定の実施形態では、該リンカは、23〜56個の残基、または該範囲内の任意の数の残基を含有することができる。
【0028】
他の態様では、本発明は、本明細書で記載し、実施可能な単鎖メガヌクレアーゼを使用する種々の方法を提供する。これらの方法は、遺伝子組換え細胞および生物を製造すること、遺伝子治療によって疾患を治療すること、病原体感染を治療すること、および診断または研究のためのインビトロでの用途のために組換え単鎖メガヌクレアーゼを使用することを含む。
【0029】
したがって、一態様では、本発明は、(i)本発明のメガヌクレアーゼをエンコードする第1核酸配列および(ii)関心のある配列を含む第2核酸配列を、細胞にトランスフェクトすることによって、染色体中に挿入された前記関心のある外因性配列を含有する遺伝子組換え真核細胞を製造する方法であって、メガヌクレアーゼにより染色体中に切断部位を作り、該切断部位で、相同組換えまたは非相同的末端結合のどちらかにより、関心のある配列を染色体に挿入する方法を提供する。
【0030】
あるいは、他の態様では、本発明は、本発明のメガヌクレアーゼタンパク質を細胞に導入し、関心のある配列を含有する核酸を該細胞にトランスフェクトすることによって、染色体中に挿入された関心のある外因性配列を含有する遺伝子組換え真核細胞を製造する方法であって、メガヌクレアーゼにより染色体中で切断部位を作り、該切断部位で、相同組換えまたは非相同的末端結合のどちらかにより、関心のある配列を染色体に挿入する方法を提供する。
【0031】
他の態様では、本発明は、染色体中の標的配列を混乱させ、本発明のメガヌクレアーゼをエンコードする核酸を細胞にトランスフェクトすることにより、遺伝子組換え真核細胞を製造する方法であって、メガヌクレアーゼにより染色体中に切断部位を作り、該切断部位で、非相同的末端結合により、標的配列を混乱させる方法を提供する。
【0032】
他の態様では、本発明は、先に記載した方法に従って遺伝子組換え真核細胞を製造し、該遺伝子組換え真核細胞を成長させ、遺伝子組換え生物を製造することによって、遺伝子組換え生物を製造する方法を提供する。これらの実施形態では、真核細胞を、配偶子、接合子、胚盤胞細胞、胚性幹細胞およびプロトプラスト細胞から選択することができる。
【0033】
他の態様では、本発明は、(i)本発明のメガヌクレアーゼをエンコードする第1核酸配列および(ii)関心のある配列を含む第2核酸配列を含有する一つ以上の核酸を、真核生物の少なくとも一つの細胞にトランスフェクトすることで、真核生物において遺伝子治療により疾患を治療する方法であって、メガヌクレアーゼにより染色体中に切断部位を作り、関心のある配列を相同組換えまたは非相同的末端結合により染色体に挿入し、該関心のある配列の挿入により疾患の遺伝子治療がもたらされる方法を提供する。
【0034】
あるいは他の態様では、本発明は、本発明のメガヌクレアーゼタンパク質を真核生物の少なくとも一つの細胞に導入し、関心のある配列を含む核酸を細胞にトランスフェクトすることで、真核生物において遺伝子治療により疾患を治療する方法であって、メガヌクレアーゼにより染色体中に切断部位を作り、該切断部位で、相同組換えまたは非相同的末端結合により関心のある配列を染色体に挿入し、該関心のある配列の挿入により疾患の遺伝子治療がもたらされる方法を提供する。
【0035】
他の態様では、本発明は、本発明のメガヌクレアーゼをエンコードした核酸を真核生物の少なくとも一つの細胞にトランスフェクトすることにより、真核生物の染色体中の標的配列を混乱させて、真核生物において遺伝子治療により疾患を治療する方法であって、メガヌクレアーゼにより染色体中に切断部位を作り、該切断部で非相同的末端結合により標的配列を混乱させ、該標的配列の混乱により疾患の遺伝子治療がもたらされる方法を提供する。
【0036】
他の態様では、本発明は、本発明のメガヌクレアーゼをエンコードした核酸を宿主の少なくとも一つの感染細胞にトランスフェクトすることにより、病原体のゲノム中の標的配列を混乱させて、真核生物宿主におけるウィルス性または原核細胞系病原体感染を治療する方法であって、メガヌクレアーゼによりゲノム中に切断部位を作り、(1)該切断部位での非相同的末端結合または(2)第2核酸を用いる相同組換えのいずれかにより標的配列を混乱させ、該標的配列の混乱により感染の治療がもたらされる方法を提供する。
【0037】
これらおよび本発明の他の態様および実施形態は、以下の本発明の詳細な説明に基づき、当業者に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明のリンカ(リンカ9)、および該ライナーによって結合されたエンドヌクレアーゼサブユニットのN末端およびC末端残基の一実施形態の構造成分の図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
1.1 導入
本発明は、ペプチドリンカが二つの異種LAGLIDADGメガヌクレアーゼサブユニットを共有結合で連結して「単鎖ヘテロ二量体メガヌクレアーゼ」を形成し、該サブユニットは一緒に機能して、該二つのサブユニットの認識半部位のハイブリッドである非パリンドロームDNA認識部位に優先的に結合し、これを切断する融合タンパク質の開発に、一部基づく。特に、天然由来のメガヌクレアーゼが認識しない、非パリンドロームDNA配列を認識する単鎖メガヌクレアーゼを遺伝子操作するために、本発明を使用することができる。
【0040】
この発見は、以下に詳細に記載するように、自然ではホモ二量体として機能するモノ−LAGLIDADGメガヌクレアーゼを、単鎖メガヌクレアーゼに結合するために使用されている。さらに、本発明は、DNA認識特異性に関して再設計されたモノ−LAGLIDADGメガヌクレアーゼを、二つのメガヌクレアーゼホモ二量体によって認識されるパリンドローム性部位のハイブリッドであるDNA配列を認識および切断する単鎖ヘテロ二量体に、結合するために使用されている。本発明は、LAGLIDADGサブユニットを単鎖ポリペプチドに結合するための代表的なペプチドリンカ配列を提供する。本発明が、リンカ配列の一般的製造方法および異なるLAGLIDADGサブユニットをつなぐための融合ポイントの一般的選択方法を提供し、機能的な、合理的に設計された単鎖メガヌクレアーゼを製造することは重要である。
【0041】
また、本発明は、特に、遺伝子操作、遺伝子治療、病原性感染および癌の治療、ならびに診断および研究におけるインビトロでの使用のために、メガヌクレアーゼを利用して生物のゲノム内の限られた数の遺伝子座で所望の遺伝子配列の組換えを起こすことによって、前記メガヌクレアーゼを使用して組換え核酸、細胞および生物を製造する方法も提供する。
【0042】
一般的事項として、本発明は、二つのLAGLIDADGサブユニットであって、N末端サブユニットは、I−CreI、I−MsoIまたはI−CeuI、あるいはこれらの変異体のような天然のモノ−LAGLIDADGメガヌクレアーゼに由来し、C末端サブユニットは、モノ−LAGLIDADGメガヌクレアーゼか、あるいはI−SceI、I−DmoIまたはI−AniIのようなジ−LAGLIDADGメガヌクレアーゼの二つのドメインのうちの一つのいずれかに由来するサブユニットを含む単鎖メガヌクレアーゼを生成する方法を提供する。該方法は、先に記載された方法(非特許文献17、26、特許文献19)とは、N末端サブユニットがモノ−LAGLIDADGメガヌクレアーゼに由来する組換え単鎖メガヌクレアーゼを製造するために、特異的な新規リンカ配列および融合ポイントの使用が必要である点で異なる。
【0043】
以下に詳細に記載するように、組換え単鎖メガヌクレアーゼを製造する方法は、結合されるべき二つのLAGLIDADGサブユニットにおいて特定された融合ポイントを使用することと、単鎖ポリペプチドに結合するために特定されたリンカ配列を使用することとを含む。さらに、本明細書では明記されていない融合ポイントを同定するため、および本明細書では明記されていない機能的リンカ配列を製造するために、一組の規則を規定する。
【0044】
したがって、一態様では、本発明は、組換え単鎖LAGLIDADGメガヌクレアーゼを製造する方法を提供する。他の態様では、本発明は、これらの方法により得られる組換え単鎖メガヌクレアーゼを提供する。他の態様では、本発明は、細胞または生物のゲノム内の所望のDNA配列または遺伝子座がDNA配列の挿入、欠失、置換またはその他の操作によって修飾されている組換え核酸、細胞および生物を製造するために、そのような単鎖メガヌクレアーゼを使用する方法を提供する。他の態様では、本発明は、病原体に特異的なまたは癌に特異的な認識配列を有する単鎖メガヌクレアーゼを使用して、病原体または癌細胞の生存率を下げる方法を提供する。
【0045】
1.2 参考文献および定義
本明細書で記載されている特許および科学文献は、当業者に利用可能な知識を構築する。本明細書で挙げた、発行された米国特許、許可された出願、公開された米国およびPCT国際出願、およびGenBankデータベース配列を含む参考文献は、それぞれ、具体的かつ個別に、参照により本発明に組み込まれると記載されているように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0046】
本明細書で使用される用語「メガヌクレアーゼ」は、認識配列で二本鎖DNAを結合するエンドヌクレアーゼであって、長さが12塩基対を超えるものをいう。天然由来のメガヌクレアーゼは、単量体(たとえば、I−SceI)または二量体(たとえば、I−CreI)である可能性がある。本明細書で使用される用語メガヌクレアーゼは、単量体メガヌクレアーゼ、二量体メガヌクレアーゼ、会合して二量体メガヌクレアーゼを形成する単量体、または本発明の組換え単鎖メガヌクレアーゼを指すために使用することができる。用語「ホーミングエンドヌクレアーゼ」は、用語「メガヌクレアーゼ」と同義である。
【0047】
本明細書で使用される用語「LAGLIDADGメガヌクレアーゼ」は、天然では二量体である、単一LAGLIDADGモチーフを含有するメガヌクレアーゼ、または天然では単量体である、二つのLAGLIDADGを含有するメガヌクレアーゼを言う。この二つを区別する必要がある場合は、用語「モノ−LAGLIDADGメガヌクレアーゼ」は、本明細書では、単一LAGLIDADGモチーフを含有するメガヌクレアーゼを指すために使用され、用語「ジ−LAGLIDADGメガヌクレアーゼ」は、本明細書では、二つのLAGLIDADGモチーフを含有するメガヌクレアーゼを指すために使用される。LAGLIDADGモチーフを含有し、酵素活性を有するジ−LAGLIDADGメガヌクレアーゼの二つの構造ドメインのそれぞれ、およびモノ−LAGLIDADGメガヌクレアーゼの個々の単量体のそれぞれは、LAGLIDADGサブユニット、または単純に「サブユニット」と言うことができる。
【0048】
ペプチド配列に関して、本明細書で使用される「終わり」はC末端を指し、「始まり」はN末端を指す。したがって、たとえば、「LAGLIDADGモチーフの始まり」は、LAGLIDADGモチーフを含むペプチド配列中のN最末端アミノ酸を指し、一方、「LAGLIDADGモチーフの終わり」は、LAGLIDADGモチーフを含むペプチド配列中のC最末端アミノ酸を指す。
【0049】
本明細書で使用される用語「合理的に設計された」は、非天然由来のおよび/または遺伝子操作された、を意味する。本発明の合理的に設計されたメガヌクレアーゼは、野生型または天然由来のメガヌクレアーゼと、それらのアミノ酸配列または一次構造が異なり、それらの第二、第三、第四次構造も異なる場合もある。さらに、本発明の合理的に設計されたメガヌクレアーゼは、野生型または天然由来のメガヌクレアーゼと、認識配列特異性および/または活性においても異なる。
【0050】
タンパク質に関して、本明細書で使用される用語「組換え」は、タンパク質をエンコードする核酸、およびタンパク質を発現する細胞または生物に対する遺伝子操作技術の適用の結果、変化したアミノ酸配列を有することを意味する。核酸に関し、用語「組換え」は、遺伝子操作技術の適用の結果、変化した核酸配列を有することを意味する。遺伝子操作技術として、PCRおよびDNAクローニング技術、トランスフェクション、トランスフォーメーションおよび他の遺伝子転移技術、相同組換え、部位特異的変異誘発および遺伝子融合が挙げられるが、これらに限定されない。この定義によれば、天然由来のタンパク質と同一のアミノ酸配列を有するが、異種宿主におけるクローニングおよび発現によって製造されたタンパク質は、組換えとみなされない。
【0051】
組換えタンパク質に関し、本明細書で使用される用語「修飾」は、基準配列(たとえば、野生型)に対する組換え配列において、アミノ酸残基の挿入、欠失または置換のいずれかを意味する。
【0052】
本明細書で使用される用語「遺伝子組換え」は、ゲノムDNA配列が、組換え技術によって計画的に修飾されている細胞または生物、またはこれらの原種が修飾されているものを指す。本明細書で使用される用語「遺伝子組換え」は、用語「遺伝子導入」を包含する。
【0053】
本明細書で使用される用語「野生型」は、メガヌクレアーゼの任意の天然由来の形態を指す。用語「野生型」は、自然の酵素の最も一般的な対立遺伝子変異体を意味するのではなく、自然に見出される全ての対立遺伝子変異体を意味するものである。野生型メガヌクレアーゼは、組換えまたは非天然由来のメガヌクレアーゼとは区別される。
【0054】
本明細書で使用される用語「認識配列半部位」、または単純に「半部位」は、モノ−LAGLIDADGメガヌクレアーゼの単量体、またはジ−LAGLIDADGメガヌクレアーゼの一つのLAGLIDADGサブユニットによって認識される二本鎖DNA分子中の核酸配列を意味する。
【0055】
本明細書で使用される用語「認識配列」は、モノ−LAGLIDADGメガヌクレアーゼ二量体またはジ−LAGLIDADGメガヌクレアーゼ単量体のどちらかによって、結合および切断される半部位の一対を言う。二つの半部位は、酵素によって特異的に認識されない塩基対によって分離されても、されなくてもよい。I−CreI、I−MsoIおよびI−CeuIの場合、各単量体の認識配列半部位は、9塩基対に広がり、二つの半部位は、酵素の結合により直接接触していないが、実際の切断部位(4塩基対オーバーハングを有する)を構築する四つの塩基対によって分離される。したがって、I−CreI、I−MsoIおよびI−CeuIメガヌクレアーゼ二量体の組合わされた認識配列は、通常、4塩基対切断部位の横に位置する、二つの9塩基対半部位を含む22塩基対に広がる。ジ−LAGLIDADGメガヌクレアーゼ単量体であるI−SceIメガヌクレアーゼの場合、認識配列は、約18bp非パリンドローム配列であり、特異的に認識されない中心塩基対は存在しない。慣例により、二本のストランドの一本を「センス」鎖といい、もう一本を「アンチセンス」鎖と言うが、どちらの鎖もタンパク質をエンコードしていなくてよい。
【0056】
本明細書で使用される用語「特異性」は、認識配列と言われる塩基対の特定の配列のみで、または認識配列の特定の一組のみで、二本鎖DNA分子を認識、切断する、メガヌクレアーゼの能力を意味する。認識配列の組みは、ある保存位置または配列モチーフを共有するが、一つ以上の位置で縮重していてもよい。高度に特異的なメガヌクレアーゼは、一つだけまたは非常に少ない数の認識配列を切断することができる。特異性は、実施例1で記載するような切断アッセイによって測定することができる。本明細書で使用されるメガヌクレアーゼは、生理的条件下で、基準メガヌクレアーゼ(たとえば、野生型)によって、結合されるのではなく切断される認識配列を、結合し切断する場合、あるいは認識配列の切断速度が、標準メガヌクレアーゼに対して生理学的に相当な量(たとえば、少なくとも2倍、または2倍〜10倍)によって増加または減少する場合、「変化した」特異性を有する。
【0057】
本明細書で使用される用語「パリンドローム性」は、同一の半部位の逆方向反復を構成する認識配列を指す。しかし、パリンドローム性配列は、酵素の結合によって直接接触していない中心塩基対(たとえば、I−CreI認識部位の四つの中心塩基対)に関して、パリンドローム性である必要はない。天然由来の二量体メガヌクレアーゼの場合、パリンドローム性DNA配列は、二つの単量体が同一の半部位と接触しているホモ二量体によって認識される。
【0058】
本明細書で使用される用語「擬似パリンドローム性」は、同一でないまたは不完全なパリンドローム性半部位の逆方向反復を構成する認識配列を指す。酵素の結合により直接接触していない中心塩基対の他に、擬似パリンドローム性配列は、二つの半部位のそれぞれにおいて、1〜3塩基対で、二つの認識半部位の間のパリンドローム性配列から逸脱する可能性がある。擬似パリンドローム性DNA配列は、二つの同一の酵素単量体が僅かに異なる半部位に接触する野生型ホモ二量体メガヌクレアーゼによって認識される天然DNA部位に特有のものである。
【0059】
本明細書で使用される用語「非パリンドローム」は、メガヌクレアーゼの二つの無関係な半部位で構成された認識配列を指す。この場合、非パリンドローム配列は、二つの半部位のそれぞれで、中心塩基対または4以上の塩基対のいずれかに関して、パリンドローム性である必要はない。非パリンドロームDNA配列は、ジ−LAGLIDADGメガヌクレアーゼ、高縮重モノ−LAGLIDADGメガヌクレアーゼ(たとえば、I−CeuI)によって、または同一でない半部位を認識するモノ−LAGLIDADGメガヌクレアーゼ単量体のヘテロ二量体によって認識される。後者の場合、二つの異なるモノ−LAGLIDADG単量体のヘテロ二量体は、これらが単鎖ポリペプチドに融合していてもしていなくても、各単量体によって認識される一つの半部位を含む認識配列を切断するので、非パリンドローム認識配列を「ハイブリッド配列」と言ってもよい。したがって、ヘテロ二量体認識配列は、二つのホモ二量体認識配列のハイブリッドである。
【0060】
本明細書で使用される用語「リンカ」は、二つのLAGLIDADGサブユニットを単鎖ポリペプチドに結合するために使用される外因性ペプチド配列を言う。リンカは、天然のタンパク質中に見出される配列を有してもよいし、またはいかなる天然のタンパク質中にも見出されない人工的な配列であってもよい。リンカは、可撓性で二次構造が欠けていてもよいし、または生理的条件下で特異的な三次元構造を形成する傾向を有してもよい。
【0061】
本明細書で使用される用語「融合ポイント」は、LAGLIDADGサブユニットとリンカとの間の接合点を指す。具体的には、「N末端融合ポイント」は、リンカ配列の前の、N末端LAGLIDADGサブユニットの最終の(C最末端)アミノ酸であり、「C末端融合ポイント」は、リンカ配列の後の、C末端LAGLIDADGサブユニットの最初の(N最末端)アミノ酸である。
【0062】
本明細書で使用される用語「単鎖メガヌクレアーゼ」は、リンカによって結合された、一対のLAGLIDADGサブユニットを含むポリペプチドを指す。単鎖メガヌクレアーゼは、組織:N末端サブユニット−リンカ−C末端サブユニットを有する。単鎖メガヌクレアーゼは、N末端サブユニットがモノ−LAGLIDADGメガヌクレアーゼから由来していなければならない点において、天然のジ−LAGLIDADGメガヌクレアーゼと区別され、したがって、リンカは、N末端サブユニットに対して外因性でなければならない。
【0063】
本明細書で使用される用語「相同組換え」は、修復テンプレートとして相同DNA配列を用いて、二本鎖DNA切断が修復される自然の細胞内プロセスを指す(たとえば、非特許文献27参照)。相同DNA配列は、内因性の染色体配列であっても、または細胞に送達された外因性核酸であってもよい。したがって、いくつかの実施形態では、合理的に設計されたメガヌクレアーゼは、標的配列内の認識配列を切断するために使用され、標的配列に対し相同性を持つまたは実質的な配列類似性を持つ外因性核酸が細胞に送達され、相同組換えによって修復のためのテンプレートとして使用される。これによって、標的配列と大きく相違するかもしれない外因性核酸のDNA配列が、染色体の配列に導入される。相同組換えのプロセスは、主として、真核生物の生物において起こる。用語「相同性」は、本明細書では、「配列類似性」と同等のものとして使用され、血統または系統的な関連性による同一性は必要とされないものである。
【0064】
本明細書で使用される用語「非相同的末端結合」は、二本鎖DNA切断が二つの非相同性DNAセグメントの直接結合によって修復される、自然の細胞内プロセスを指す(たとえば、Cahillら(2006),Front.Biosci.11:1958−1976参照)。非相同的末端結合によるDNA修復は、エラーを起こしがちで、しばしば、修復部位で非テンプレート付加またはDNA配列の欠失を起こす結果となる。したがって、ある実施形態では、非相同的末端結合によって、遺伝子を混乱させる(たとえば、塩基挿入、塩基欠失またはフレームシフト突然変異を導入することによって)ように標的配列内のメガヌクレアーゼ認識配列で、二本鎖切断端を製造するために、合理的に設計されたメガヌクレアーゼを使用することができる。他の実施形態では、標的配列に対する相同性、または実質的な配列類似性を欠く外因性核酸を、非相同的末端結合によって、メガヌクレアーゼで刺激された二本鎖DNA切断の部位で捕獲してもよい(たとえば、Salomonら(1998),EMBOJ.17:6086−6095参照)。非相同的末端結合のプロセスは、真核生物および細菌のような原核生物の両方において起こる。
【0065】
本明細書で使用される用語「関心のある配列」は、タンパク質、RNAまたは調節エレメント(たとえば、エンハンサ、サイレンサまたはプロモータ配列)をコードする場合、メガヌクレアーゼタンパク質を使用して、ゲノムに挿入されうる、またはゲノムDNA配列の置換えに使用されうる任意の核酸配列を意味する。関心のある配列は、該関心のある配列から発現されるタンパク質またはRNAにタグをつけることを可能にする異種DNA配列を有する可能性がある。たとえば、エピトープ(たとえば、c−myc、FLAG)または他のリガンド(たとえば、ポリ−His)(これらに限定されない)を始めとするタグで、タンパク質にタグをつけることができる。さらに、関心のある配列は、当該分野で公知の技術に従って融合タンパク質をエンコードすることができる(たとえば、Ausubelら,Current Protocols in Molecular Biology,Wiley 1999参照)。いくつかの実施形態では、関心のある配列は、切断用の組換えメガヌクレアーゼに認識されるDNA配列の横に配置されている。したがって、フランキング配列は切断され、関心のある配列が組換えメガヌクレアーゼによって切断されたゲノム認識配列へ正しく挿入される。いくつかの実施形態では、相同組換えにより標的配列が関心のある配列に効率的に置き換わるように、関心のある配列全体が、ゲノム中の標的配列に相同性があるか、あるいは実質的な配列類似性を有する。他の実施形態では、相同組換えによりゲノム内の関心のある配列が標的配列の遺伝子座で挿入されるように、関心のある配列は、標的配列と相同性であるか、あるいは実質的に配列類似性のあるDNA配列に挟まれている。いくつかの実施形態では、メガヌクレアーゼが関心のある配列によって修飾された後、標的配列を切断できないように、関心のある配列は、メガヌクレアーゼ認識配列において、突然変異または他の修飾以外の標的配列に対し実質的に同一である。
【0066】
アミノ酸配列および核酸配列の両方に関して、本明細書で使用される用語「類似性百分率」および「配列類似性」は、整列アミノ酸残基またはヌクレオチド間の類似性を最大にし、配列アラインメントにおける、同一または類似する残基またはヌクレオチドの数、残基またはヌクレオチド総数、およびギャップの存在および長さの関数である、配列のアラインメントに基づく二つの配列が類似する程度の測定値を言う。標準パラメータを使用して配列類似性を測定するために、種々のアルゴリズムおよびコンピュータプログラムが入手可能である。本明細書で使用される配列類似性は、どちらも、National Center for Biotechnology Information(www.ncbi.nlm.nih.gov/)より入手可能であり、アミノ酸配列用のBLASTpプログラムおよび核酸配列用のBLASTnプログラムを使用して測定され、たとえば、Altschulら(1990),J.Mol.Biol.215:403−410、GishおよびStates(1993),Nature Genet.3:266−272、Maddenら(1996),Meth.Enzymol.266:131−141、Altschulら(1997),Nucleic Acids Res.25:33 89−3402)、Zhangら(2000),J.Comput.Biol.7(l−2):203−14に記載されている。本明細書で使用される二つのアミノ酸配列の類似性百分率は、BLASTpアルゴリズム用の以下のパラメータ:語長=3、ギャップ・オープニング・ペナルティ=−11、ギャップ・エクステンション・ペナルティ=−1、およびスコアマトリックス=BLOSUM62に基づくスコアである。本明細書で使用される二つの核酸配列の類似性百分率は、BLASTnアルゴリズム用の以下のパラメータ:語長=11、ギャップ・オープニング・ペナルティ=−5、ギャップ・エクステンション・ペナルティ=−2、マッチリワード=1、およびミスマッチペナルティ=−3に基づくスコアである。
【0067】
二つのタンパク質またはアミノ酸配列の修飾に関して、本明細書で使用される用語「に対応する」は、第1タンパク質の特定の修飾が、第2のタンパク質の修飾と同じアミノ酸残基の置換であり、二つのタンパク質を、標準配列アラインメント(たとえば、BLASTpプログラムを使用して)に供した場合、第1タンパク質の修飾のアミノ酸の位置が、第2のタンパク質の修飾のアミノ酸位置に対応するまたは一致することを示すために使用される。したがって、もし、配列アラインメントにおいて残基XおよびYが互いに対応すれば、XおよびYが異なる数であっても、第1タンパク質における残基「X」のアミノ酸「A」への修飾は、第2のタンパク質における残基「Y」のアミノ酸「A」への修飾に対応することになる。
【0068】
本明細書で使用される変数に関する数字の範囲の記述は、本発明が、その範囲内の任意の値に等しい変数を用いて実施できることを伝えるものである。したがって、本質的に不連続な変数に関して、該変数は、その範囲の終点を含む数字の範囲内の任意の整数と同一でありうる。同様に、本質的に連続した変数に関して、該変数は、その範囲の終点を含む数字の範囲内の任意の実数値と同一でありうる。限定ではない、例示として、もし変数が本質的に不連続であれば、0と2との間の値を持つと記載された変数は、0、1または2の値をとることができ、変数が本質的に連続であれば、変数は、0.0、0.1、0.01、0.001、または≧0および≦2の他の任意の実数をとりうる。
【0069】
他に特定の示唆がない限り、本明細書で使用される用語「または」は、「および/または」を含む意味で使用され、「どちらか/または」の意味は含まない。
【0070】
2.LAGLIDADGサブユニットに由来する単鎖メガヌクレアーゼ
天然のモノ−およびジ−LAGLIDADGメガヌクレアーゼの構造比較は、ジ−LAGLIDADGメガヌクレアーゼのN末端サブユニットが、モノ−LAGLIDADG単量体より小さい傾向にあることを明らかにする。この結果は、ジ−LAGLIDADGメガヌクレアーゼの場合、N末端サブユニットの終点(C末端)は、C末端サブユニットの始点(N末端)に非常に近いということである。これは、比較的短い(たとえば、5〜20アミノ酸)リンカは、二つのサブユニットを結合するのに十分であることを意味する。モノ−LAGLIDADGメガヌクレアーゼの場合、一つの単量体のC末端は、一般的に、第2単量体のN末端から非常に遠い(I−CreIの場合、約48Å)。したがって、一対のモノ−LAGLIDADGメガヌクレアーゼを単鎖ポリペプチドに融合するには、この距離に広がることができるより長い(たとえば、>20アミノ酸)ペプチドリンカが必要である。N末端サブユニットをC末端サブユニットの始点に空間的により近い点でトランケートする代替方法は、先に報告されている(非特許文献17、特許文献19)が、以下の実施例1に示すように、この方法では、どのような機能的へテロ二量体も殆ど製造されない。I−CreIに由来する機能的単鎖メガヌクレアーゼの製造に関する難しさについての広範な検討は、非特許文献25に見出すことができる。
【0071】
2.1 I−CreIに関する融合ポイント
野生型I−CreI、またはそのDNA切断部位優先度に関して変更されたI−CreIの操作された変異体(「CCR2」と示される、配列番号31、特許文献12参照)のどちらかを、天然C末端アミノ酸、Pro163の前で停止させた、一連のトランケーション変異体を作った(表1)。変異体ホモ二量体がE.coli中で発現し、これを精製し、野生型認識配列(配列番号34〜35)またはCCR2認識配列(配列番号32〜33)のどちらかで培養して、切断活性の試験を行った。
【表1】

【0072】
野生型I−CreIは、残基148以上のC末端残基でトランケートされた場合は活性であるが、残基141以上のN末端残基でトランケートされた場合は不活性であることがわかった。したがって、野生型活性のためには、残基141から147の少なくともいくつかの残基、またはそれらの残基の保存的置換が必要である。同様に、CCR2は、残基151以上のC末端残基でトランケートされた場合は活性であるが、残基148以上のN末端残基で停止された場合は不活性であることがわかった。したがって、CCR2活性のためには、残基148から150の少なくともいくつかの残基、またはそれらの残基の保存的置換が必要である。野生型I−CreIと合理的に設計されたCCR2メガヌクレアーゼとの間の違いは、おそらく、未成熟C末端トランケーションによりさらなる不安定化に対してより敏感になるように、CCR2メガヌクレアーゼの構造的安定性における減少によるものであろう。これらのトランケーションの結果は、I−CreIのC末端ループ(アミノ酸138−142)は、切断活性に必須であることが発見されたというPrietoらの刊行物(Prietoら(2007),Nucl.Acids Res.35:3262−3271)と一致する。まとめると、これらの結果は、I−CreIのC末端に近傍のいくつかの残基は、DNA結合および/または触媒活性に必須であり、残基142のほぼ前のI−CreIサブユニットをトランケートする単鎖メガヌクレアーゼの製造方法(たとえば、Epinatら(2003),Nucl.Acids Res.31:2952−62、国際公開公報第2003/078619号)によって、両LAGLIDADGサブユニットが触媒的に活性な単鎖メガヌクレアーゼを得ることは見込みがないことを示す。
【0073】
したがって、本発明によれば、位置142〜151の任意の位置、または残基151に対するC末端の任意の位置を含む、N末端融合ポイント(すなわち、N末端I−CreIサブユニットとリンカとの間)は、N末端サブユニットの残基142に対するC末端にあるべきである。I−CreIの残基154−163は、非構造的であり(Juricaら(1998),MoI.Cell2:469−476)、したがって、これらの残基を含むことにより可撓性が増し、得られる単鎖メガヌクレアーゼの構造の不安定性もおそらく増すであろう。逆に、可撓性を少なくし、構造安定性を強めることが望ましいまたは必要であると決めた場合は、残基142−153の融合ポイントを選択することができる。
【0074】
単鎖メガヌクレアーゼのC末端LAGLIDADGサブユニットがI−CreIに由来するという条件下で、リンカのC末端融合ポイントは、I−CreI配列のN末端に向いている。残基7、8および9は、(1)LAGLIDADGメガヌクレアーゼファミリメンバの間に構造的に保存され、したがって、ヘテロ二量体の形成において、他のLAGLIDADGファミリメンバとの大きな適合性を提供でき、(2)触媒機能に関与する保存LAGLIDADGモチーフを含むαへリックスを開始するという理由で、I−CreI中のC末端融合ポイントとして特に関心がもたれる。しかし、残基1−6の任意の残基を含む残基7に対する融合ポイントN末端も、本発明に従って使用することができる。
【0075】
以下のI−CreI N末端およびC末端融合ポイントは、さらなる実験のために選択したが、本発明の範囲を限定するように考えるべきではない。
【表2】

【0076】
2.2 I−CreIに由来する単鎖メガヌクレアーゼ用のリンカ
一対のI−CreI単量体を単鎖ポリペプチドに結合する目的で、二つの一般的なクラスのリンカ、(1)二次構造を欠く非構造化リンカ、および(2)二次構造を有する構造化リンカについて考慮した。非構造化リンカの例は、当該分野で周知であり、GIyおよびSer含有率が高い、または反復を含む人工配列が挙げられる。構造化リンカも当該分野で周知であり、タンパク質ホールディングの基本的な原理を使用して設計されたもの(たとえば、AuroraおよびRose(1998),Protein Sci.7:21−38、Fersht,Structure and Mechanism in Protein Science,W.H.Freeman 1998)が挙げられる。
【0077】
「LAMl」(配列番号36)および「LAM2」(配列番号37)と呼ばれる一対の合理的に設計されたI−CreI単量体を使用して、本発明を検証した。これらの合理的に設計されたエンドヌクレアーゼは、国際公開公報第2007/047859号に記載された方法を使用して製造され、該公報で特徴付けられている。しかし、当業者には明らかであろうが、LAM1およびLAM2単量体は、野生型モノ−LAGLIDADGサブユニット、N末端および/またはC−末端がトランケートされた野生型モノ−LAGLIDADGサブユニット、N末端および/またはC末端がトランケートされた野生型ジ−LAGLIDADGサブユニットおよび先に記載した任意のものの合理的に設計された修飾形態を始めとする、使用することができる多くの単量体の単なる例示である。
【0078】
単量体の一例であるLAM1は、野生型I−CreIとは7つのアミノ酸が異なり、半部位:
5’−TGCGGTGTC−3’(配列番号38)
3’−ACGCCACAG−5’(配列番号39)
を認識する。したがって、LAM1ホモ二量体は、パリンドローム性認識配列(ここで、各Nは非拘束型である):
5’−TGCGGTGTCNNNNGACACCGCA−3’(配列番号40)
3’−ACGCCACAGNNNNCTGTGGCGT−5’(配列番号41)
を認識する。
【0079】
他の単量体の例示であるLAM2は、野生型I−CreIとは5個のアミノ酸が異なり、半部位:
5’−CAGGCTGTC−3’(配列番号42)
3’−GTCCGACAG−5’(配列番号43)
を認識する。したがって、LAM2ホモ二量体は、パリンドローム性認識配列(ここで、各Nは非拘束型である):
5’−CAGGCTGTCNNNNGACAGCCTG−3’(配列番号44)
3’−GTCCGACAGNNNNCTGTCGGAC−5’(配列番号45)
を認識する。
【0080】
一つのLAM1単量体と一つのLAM2単量体とを含む(「LAM1/LAM2ヘテロ二量体」)ヘテロ二量体は、そのため、ハイブリッド認識配列:
5’−TGCGGTGTCNNNNGACAGCCTG−3’(配列番号40)
3’−ACGCCACAGNNNNCTGTCGGAC−5’(配列番号41)
を認識する。
【0081】
2.2.1 単鎖メガヌクレアーゼ用の可撓性リンカ
種々の高可撓性ペプチドリンカは当該分野で公知であり、本発明に従って使用することができる。たとえば、限定ではないが、Gly−Ser−Ser反復単位を含むペプチドリンカは、非構造的で、可撓性であることが知られている(Fersht,Structure and Mechanism in Protein Science,W.H.Freeman 1998)。この組成および類似する組成を持つリンカは、たとえば、単鎖抗体(Mackら(1995),Proc.Nat.Acad.Sci 92:7021−7025)、成長因子受容体(Uedaら(2000),J.Immunol.Methods 241:159−170)、酵素(Brodeliusら(2002),269:3570−3577)、およびDNA結合およびヌクレアーゼドメイン(Kimら(1996),Proc.Nat.Acad.Sci.93:1156−1160)と一緒に、タンパク質ドメインを融合するために、しばしば使用される。
【0082】
一般的事項として、可撓性リンカは、生理的条件下で安定な二次構造を形成しない任意のポリペプチド配列を含みうる。いくつかの実施形態では、リンカは、高い割合(たとえば、>50%、60%、70%、80%または90%、あるいは一般的には、50%〜100%)で、極性非荷電残基(すなわち、Gly、Ser、Cys、Asn、GIn、Tyr、Thr)を含有する。さらに、いくつかの実施形態では、リンカは、大きな疎水性残基(すなわち、Phe、Trp、Met)を含有する割合が低い。リンカは、種々の長さの繰返し(たとえば、(SG)、(GSS)、(SGGS))、ランダム配列、またはこれらの二つの組合せを含んでもよい。
【0083】
したがって、本発明に従って、Val−151またはAsp−153をN末端融合ポイントとして、およびPhe−9をC末端融合ポイントとして使用して、高可撓性ペプチドリンカがN末端(LAM1)サブユニットをC末端(LAM2)サブユニットに共有結合した一組の単鎖融合を、LAM1とLAM2との間に製造した。単鎖タンパク質は、E.coliで発現し、これを精製し、一つのLAM1半部位と一つのLAM2半部位と(配列番号46および47)を含むハイブリッドDNA部位を切断する能力に関して、試験した。切断活性を、−:活性は検出不能、+:最小活性、++:中程度の活性、+++:エンドヌクレアーゼ精製前のE.coli中の二つの単量体の共発現により製造されたLAM1/LAM2ヘテロ二量体に匹敵する活性の四点スケールで評価した。また、発現または精製中にリンカ領域がタンパク分解され、二つのサブユニットを遊離する程度を測定するSDS−PAGEによっても、該タンパク質を評価した。
【表3】

【0084】
結果は、表3中のGly−Serリンカのような可撓性リンカは、長さが正しければ、単鎖メガヌクレアーゼ製造に適することを示した(実施例2も参照)。たとえば、表3に関して、それぞれ合計22個および25個のアミノ酸を含むリンカ1および2を含有する単鎖メガヌクレアーゼは、試験された融合ポイントに関して、いかなる検出可能な切断活性も発揮しなかった。SDS−PAGEによれば、これらのメガヌクレアーゼは未変化で、プロテアーゼによって分解されなかったことが示され、つまり、これらの単鎖メガヌクレアーゼは、構造的には安定であるが、機能的には、あまりに短すぎて個々のLAGLIDADGサブユニットに、DNA結合および/または触媒作用のために必要な立体配座を適用できないリンカによって制約されているという結論に達した。それぞれ28、29、30および28個のアミノ酸を含むリンカ3、6、7および8は、全て、低い切断活性のレベルを示した。SDS−PAGEによれば、それぞれ、少量(5%〜10%)は、個々のサブユニットにタンパク分解されるが、一方、大部分は、完全長単鎖メガヌクレアーゼ(約40キロダルトン)に対応する分子量を持つことが示された。3および8は、同じリンカ配列を有するが、N末端融合ポイントは、それぞれ、Val−151およびAsp−153であった。両単鎖メガヌクレアーゼは、同等の活性を示し、この場合、正確な融合ポイントは重大な意味を持つものではないことを示した。最後に、E.coliから精製した場合、それぞれ、31個および34個のアミノ酸を含むリンカ4および5からは、検出しうる単鎖メガヌクレアーゼが得られなかった。SDS−PAGEによって検出されたように、これらのリンカは、個々のLAM1および/またはLAM2サブユニットに完全にタンパク分解され、したがって、これらのメガヌクレアーゼの切断活性は、これ以上調べなかった。
【0085】
これらの結果により、本発明者らは、リンカの長さが、25アミノ酸より長く31アミノ酸より短ければ、Gly−Serリンカは、モノ−LAGLIDADGメガヌクレアーゼI−CreIおよび使用した特定の融合ポイントのLAGLIDADGサブユニットに基づく単鎖メガヌクレアーゼの製造にふさわしいと結論付けた。これらの融合ポイントを持つI−CreI系単鎖メガヌクレアーゼに関しては、より短いリンカは触媒作用を妨げるが、より長いリンカは、不安定で、プロテアーゼによってクリッピングする傾向がある。
【0086】
ふさわしいリンカの長さにおける融合ポイントの変化の効果は、日常的な実験により経験的に測定することができおよび/またはタンパク質構造の三次元モデル化に基づいて予測することができる。融合ポイントはN末端またはC末端を移動させるので、融合ポイントに近いタンパク質の第二および第三次構造に依存して、他の融合ポイントにより近くに、あるいは該ポイントからより遠くに動きうるということは重要である。したがって、たとえば、C末端方向へ(たとえば、残基150から残基155へN末端融合ポイントを)動かすが、物理的にC末端融合ポイントに近いN末端融合ポイントとなる結果には必ずしもならない。なぜなら、たとえば、その領域内のN末端残基は、C末端融合ポイントに向かう、あるいは該ポイントから離れる方向を指す第二/第三次構造の一部であるかもしれないからである。したがって、N末端融合ポイントをN末端またはC末端方向に動かす、またはC末端融合ポイントをN末端またはC末端方向に動かすことによって、ふさわしいリンカ長さの範囲内で、より長いまたはより短いリンカに向かってシフトすることになる可能性がある。しかし、該シフトは、本明細書で報告されている実験例、日常の実験および/または三次元モデル化によって示されるように、簡単に測定される。
【0087】
したがって、いくつかの実施形態では、単鎖メガヌクレアーゼ系の二つのI−CreI LAGLIDADGサブユニットに関して、有用な可撓性リンカは、表3に示すように、25残基を超え、31残基未満(間の全ての値を含む)の長さを有する。しかし、他の実施形態では、リンカが広範囲にタンパク分解されず、単鎖メガヌクレアーゼが、本明細書に記載する簡単なアッセイによって測定されるDNA結合および切断活性を保持するという条件下で、有用な可撓性リンカは、異なるLAGLIDADGサブユニットおよび/または異なる融合ポイントを使用して、15を超えおよび40未満の残基(間の全ての値を含む)の長さを有することができる。
【0088】
2.2.2 単鎖メガヌクレアーゼ用に設計、構造化されたリンカ
長期間にわたって保存が十分安定でかつタンパク分解に対して十分な耐性がある、天然の二量体酵素に匹敵するヌクレアーゼ活性を持つ単鎖I−CreI系メガヌクレアーゼを製造することを目的として、サブユニットを共有結合するために、安定な二次構造を有するリンカを使用することができる。タンパク質データバンク(www.rcsb.org)検索では、I−CreI中で認識されたNおよびC末端融合ポイント間の長い距離(約48Å)にわたって広がるのに適したリンカを持つ、任意の構造的に特徴付けられたLAGLIDADGタンパク質は、明らかにされなかった。したがって、二つのサブユニットを結合するのに適した構造要素を持つことが期待される一組のリンカを製造するために、タンパク質構造を管理する公知の最初の原理(たとえば、AuroraおよびRose(1998),Protein Sci.7:21−38、Fersht,Structure and Mechanism in Protein Science,W.H.Freeman 1998)を使用した。具体的には、適切なリンカは、以下(N末端融合ポイントからC末端融合ポイントまでを挙げる)を含むと仮定した。
【0089】
(1)ループ1.この構造要素は、N末端融合ポイントから始まり、それ自身の上でペプチド鎖の方向を逆転させる(180°ターン)。配列は、3〜8アミノ酸が可能であり、少なくとも一つのグリシン残基、いくつかの実施形態では、2〜3グリシンを含みうる。この構造要素は、「Cキャッピング」モチーフを導入することによって安定化することができ、I−CreIのC末端αへリックスを終わらせ、後続のターンを開始する。へリックス・キャップ・モチーフは、普通、へリックスの最終ターン中の疎水性アミノ酸で始まるように記載される(AuroraおよびRose(1998),Protein Sci.7:21−38)。Cキャップは、表4に挙げる形態の任意のものをとることができる。
【表4】

表中、h=疎水性アミノ酸(Ala、Val、Leu、Ile、Met、Phe、Trp、Thr、またはCys)、p=極性アミノ酸(Gly、Ser、Thr、Asn、Gln、Asp、Glu、Lys、Arg)、n=β分岐していないアミノ酸(Val、Ile、ThrまたはProではない)、x=hまたはp基からの任意のアミノ酸、G=グリシン、およびP=プロリンである。Thrは、その側鎖に、疎水性(メチル基)および極性(水酸基)官能基の両方を持つので、h基およびp基の両方に現れることに注意すべきである。ハイフンは、αへリックスの末端を示し、hは、へリックスの最終ターンにおける疎水性アミノ酸(すなわち、N末端融合ポイントの前の疎水性アミノ酸、0〜4個のアミノ酸)である。I−CreIの場合、hは、普通、Val−151またはLeu−152である。したがって、モチーフ7の例は、配列:V151152153S−PGSVである(たとえば、表6、リンカ9参照)。
【0090】
(2)αへリックス1.ループ1の後、リンカ中のこの最初のαへリックスが、約30Åの距離でタンパク質の外面上をI−CreI中のC末端へリックス(アミノ酸144〜153)に対し逆平行に走るように設計される。このセグメントは、長さが10−20アミノ酸であるべきで、NおよびCキャッピングモチーフ(下方)の外側にグリシンアミノ酸もプロリンアミノ酸も含むべきではなく、一つのへリックス面(疎水性面)はN末端I−CreIサブユニットの面に対して埋められ、一方他の面は溶剤に触れるように、3〜4アミノ酸周期性を持つ疎水性および極性アミノ酸が交互に並んでいる。たとえば、該へリックスは、形態:pphpphhpphpp(ここで、pは任意の極性アミノ酸であり、hは任意の疎水性アミノ酸である)をとることができるが、配列:SQASSAASSASSのようなグリシンでもプロリンでもない(たとえば、表6、リンカ9参照)。ペプチド配列の螺旋性向を測定するために、複数のアルゴリズムが利用可能であり(たとえば、BMERC−PSA,http://bmerc−www.bu.edu/psa/、NNPREDICT,http://alexander.compbio.ucsf.edu/〜nomi/nnpredict.html、PredictProtein,http://www.predictprotein.org)、αヘリカル二次構造への適用が期待できる適正な長さの配列を作るために、これらのどれでも使用することができる。あるいは、このへリックス配列は、既存の天然または設計されたタンパク質においてαヘリカル二次構造を適用することが知られているペプチド配列に由来しうる。そのようなペプチド配列の数多くの例が、タンパク質データバンク(www.rcsb.org)にある。
【0091】
さらに、その構造を安定化するために、Nキャッピングモチーフを持つαへリックスから開始することが望ましいこともある(AuroraおよびRose(1998),Protein Sci.7:21−38)。このモチーフは、ループ−αへリックス接合点に広がり、普通、表5に示される形態の一つを有する。
【表5】


表中、記号は、先の表4と同じであり、ハイフンは、ループとへリックスとの間の接合点を表わす。モチーフ番号2の例は、配列:L−SPSQAである(たとえば、表6、リンカ9参照)。
【0092】
(3)ターン1.αへリックス1の後、ペプチド鎖の全配向を、αへリックス1の配向に対して約90°曲げるために、短い、可撓性ペプチド配列が導入される。この配列は、長さが3〜8アミノ酸であってもよく、1、またはいくつかの実施形態では、2〜3グリシンを含みうる。また、この配列は、αへリックス1を安定化し、ターンを開始するために、表4のモチーフの1つのようなCキャップを含むこともできる。例示として、Cキャッピングモチーフ番号6に一致する配列:ASSS−PGSGIがある(たとえば、表6、リンカ9参照)。この場合、配列:ASSSは、αへリックス1の最終ターンであり、一方配列:PGSGIはターン1である。
【0093】
(4)αへリックス2.このヘリックスは、ターン1の後に続き、LAGLIDADGサブユニット間の境界面に作られた溝中のI−CreIの面に存在するように設計される。この溝の面は、本質的に、N末端サブユニットのアミノ酸94〜100および134〜139、ならびにC末端サブユニットのアミノ酸48〜61を含む。
【0094】
αへリックス2は、αへリックス1より短くなるように設計することができ、該へリックス(4〜12個のアミノ酸)のターンを1〜3つ含むことができる。αへリックス2は、αへリックス1と同じ全アミノ酸組成を有することができ、表5のNキャッピングモチーフの追加によって安定化することもできる。配列:I−SEALRは、Nキャッピングモチーフ番号1と一致する例(たとえば、表6、リンカ9)である。リンカ9は、約二つのターンを作ることが予測される配列:SEALRAを含む、比較的短いαへリックス2を取込む。異なるリンカαへリックス2配列に関する実験により、リンカのこの領域でのヘリカルレジスタの重要性が実証されている。グリシンアミノ酸を用いてαへリックス2の停止前の単一アミノ酸(たとえば、A、リンカ11)、二つのアミノ酸(たとえば、AS、リンカ12)、あるいは三つのアミノ酸(たとえば、ASS、リンカ13)を付加することにより、不安定で、E.coliからの精製ですぐに析出する単鎖I−CreIタンパク質(表6)となる可能性がある。対照的に、一つの追加の完全ターンを作り、ヘリカルレジスタをリンカ1のものに回復することが予測される、四つのアミノ酸(たとえば、ASSA、リンカ14)の付加は、安定で活性である。
【0095】
(5)ループ2.このループは、αへリックス2を停止し、C末端融合ポイントで、C末端I−CreIサブユニットと結合するために、ペプチド鎖をそれ自身の上で逆転させる。ループ1のように、この配列は、長さが3〜8アミノ酸とすることができ、一つ以上のグリシンを含みうる。また、αへリックス2を安定化するために、表4のCキャッピングモチーフを含みうる。たとえば、リンカ9からの配列:ALRA−GAは、Cキャッピングモチーフ番号1と一致する。さらに、このセグメントは、C末端I−CreIサブユニットのN末端αへリックス(アミノ酸7〜20)上で、Nキャップを開始することができる。たとえば、リンカ9からの配列:T−KSKは、Nキャッピングモチーフ番号2と一致する。この場合、C末端融合ポイントはLys−7である。他の場合、融合ポイントを第2サブユニット(たとえば、アミノ酸8または9)にさらに移動させることができ、場合によっては、1〜2アミノ酸をループ2に付加することで、C末端融合ポイントを移動させるように、ヘリカルレジスタの変化を補う。たとえば、以下の表6のリンカ15〜23は、C末端融合ポイントとしてGlu−8を有し、全て、リンカ1〜6に対しループ2内に追加のアミノ酸を有する。
【0096】
先に記載した原理を使用して、表6に概要を述べたリンカの組を発現させた。LAM1サブユニットとLAM2サブユニットとの間にリンカを取込む一組の単鎖I−CreIメガヌクレアーゼを構築し、それぞれについて、LAM1/LAM2ハイブリッド認識配列に対する活性を試験した。全ての場合で、N末端融合ポイントはLAM1のAsp−153であり、C末端融合ポイントは、LAM2のLys−7またはGlu−8(「CFP」カラム中で表示される)のどちらかであった。切断活性を、−:活性は検出不能、+:最小活性、++:中程度の活性、+++:エンドヌクレアーゼ精製前にE.coli中で二つの単量体を共発現することにより製造したLAM1/LAM2ヘテロ二量体に匹敵する活性の四点スケールで評価した。精製直後、単鎖メガヌクレアーゼを遠心(2100g10分間)し、沈殿したタンパク質(構造不安定性を示す)をペレット化し、観測した沈殿物の量(ppt)をスコア化した。−:沈殿なし、+:僅かに沈殿、++:有意に沈殿。有意な程度まで沈殿したタンパク質サンプルは、切断活性に関してアッセイできなかった。
【表6】

【0097】
単鎖メガヌクレアーゼでは、11〜13および23(これらは調べなかった)以外のこれらのリンカのそれぞれは、SDS−PAGEゲル上で所望の分子量(約40キロダルトン)の単一バンドとして走り、リンカ配列のタンパク質分解切断に対して抵抗性があることを示していた。少なくとも一つのケース(リンカ9)では、単鎖LAMメガヌクレアーゼを、切断活性の劣化または喪失のいかなる証拠もなしに、4℃で4週間を超えて保存することができた。さらに、数多くの単鎖LAMエンドヌクレアーゼ(9、10および14)は、精製LAM1/LAM2ヘテロ二量体に匹敵する効率で、ハイブリッドLAM1/LAM2認識配列を切断し、これらのリンカを使用してI−CreIサブユニットを融合することで、エンドヌクレアーゼ活性は大きく損なわれないことが示された(実施例2参照)。
【0098】
精製LAM1/LAM2ヘテロ二量体(これは、実際、ホモおよびヘテロ二量体の混合物)とは全く対照的に、表6のリンカを導入する単鎖LAMメガヌクレアーゼは、パリンドローム性配列のどれよりも、ハイブリッド部位をより高い効率で切断する(実施例2参照)。パリンドローム性配列は、普通、ハイブリッド部位に対して<5%の効率で切断される。この予想外のパリンドローム性DNA部位の切断は、(1)一対の異なる単鎖タンパク質からのLAM1またはLAM2サブユニットのホモ二量体化、(2)単鎖メガヌクレアーゼ内の単一サブユニット(LAM1またはLAM2)によるパリンドローム性配列の両鎖の逐次ニッキング、または(3)単鎖メガヌクレアーゼをその個々のサブユニットにタンパク質分解切断された後に形成される、僅かな量のホモ二量体LAM1またはLAM2のためであろう(SDS−PAGE結果は、この後の説明をなさそうにするが)。単鎖I−CreIメガヌクレアーゼは、パリンドローム性DNA部位に対するある活性を維持するが、該活性は、ハイブリッド部位のほうに非常に大きく偏り、この取組みは今ある方法を超えて、非常に大きな重要性を示す。
【0099】
3.I−MsoIに由来する単鎖メガヌクレアーゼ
I−MsoIは、I−CreIに近い構造的同族体であり、このメガヌクレアーゼのDNA結合特異性を再設計するために、類似の方法が存在している(国際公開公報第2007/047859号)。先に挙げた単鎖I−CreIメガヌクレアーゼの製造方法は、I−MsoIに直接適用することができる。I−MsoIのアミノ酸Phe−160、Leu−161およびLys−162は、それぞれ、I−CreIのVal−151、Leu−152およびAsp−153と、構造的に相同性がある。したがって、これらのアミノ酸を、I−MsoI用のN末端融合ポイントとして選択することができる。さらに、I−MsoIのX線結晶構造により、アミノ酸161〜166は、自然にC−キャップとして作用し、ペプチド鎖の方向を逆転するタンパク質のC末端でターンを開始することが明らかである。したがって、ループ1のCキャップ部分を取除くために、リンカをそのN末端で縮められれば、Ile−66を、N末端融合ポイントとして選択することができる。I−MsoIのPro−9、Thr−10およびGlu−11は、それぞれ、I−CreIのLys−7、Glu−8およびPhe−9と、構造的に相同性があり、I−MsoIに関するC末端融合ポイントとして選択することができる(表7)。さらに、I−MsoIの配列:L101112は、天然N−キャップ(表5のモチーフ2)を形成するので、Leu−7を、融合ポイントとして挙げることができる。
【表7】

【0100】
表3または6中のリンカはどれも、単鎖I−MsoIエンドヌクレアーゼの製造に使用することができる。たとえば、Lys−162およびPro−9を融合ポイントとして使用して一対のI−MsoIサブユニットを機能的単鎖メガヌクレアーゼに結合するために、表6のリンカ9を使用してもよい。一実施形態では、プロリンは構造的に制約されているので、Pro−9を異なるアミノ酸(たとえば、アラニンまたはグリシン)に変える。これは、Thr−10をC末端融合ポイントとして選択すること、および表3または6に列挙されたリンカのC末端への付加的アミノ酸を付加することと類似している。たとえば、表8のリンカ26および27は、C末端での単一アミノ酸の付加を除いて表6のリンカ9と同一であり、C末端融合ポイントにおいてPro−9(I−CreI Lys−7と構造的に相同性のある)からThr−10(I−CreI Glu−8に構造的に相同性のある)への変化する原因となる。
【0101】
別の実施形態では、実施例4に記載するように、I−166がN末端融合ポイントとして選択され、Leu−7がC末端融合ポイントとして選択される、表8のリンカ28〜30から選択されるリンカ配列を使用して、I−Msoに由来する単鎖メガヌクレアーゼの製造を成功させることもできる。I−166がN末端融合ポイントとして選択されるので、ループ1のCキャップ部分(表6の各リンカの最初の6個のアミノ酸に対応する)を移動させることができる。さらに、リンカ28−30のαへリックス1は、表6に挙げられるリンカに対して、へリックスの追加の1ターンに対応する3個のアミノ酸(AAS、表8中の下線部)で延長される。リンカ28−30および特定の融合ポイントを使用して、一対のI−Mso−由来サブユニットを含む、プロテアーゼ−耐性型の高活性単鎖メガヌクレアーゼを製造することが可能である(実施例4参照)。
【表8】

【0102】
4.I−CeuIに由来する単鎖メガヌクレアーゼ
I−CeuIは、I−CreIに構造的に近い同族体であり、このメガヌクレアーゼのDNA結合特異性を再設計する類似の方法が存在している(国際公開公報第2007/047859号)。先に挙げた単鎖I−CreIメガヌクレアーゼの製造方法は、I−CeuIに直接適用することができる。I−CeuIのアミノ酸Ala−210、Arg−211およびAsn−212は、それぞれ、I−CreIのVal−151、Leu−152およびAsp−153と構造的に相同性がある。したがって、これらのアミノ酸を、I−CeuI用のN末端融合ポイントとして選択することができる。I−CeuIのSer−53、Glu−54およびSer−55は、それぞれ、I−CreIのLys−7、Glu−8およびPhe−9と構造的に相同性があり、I−CeuI用のC末端融合ポイントとして選択しうる(表9)。
【表9】

【0103】
表3または6中のいずれのリンカも、単鎖I−CeuIエンドヌクレアーゼの製造に効果的である可能性がある。たとえば、I−CeuIサブユニットは、Asn−212をN末端融合ポイントとして、Ser−53をC末端融合ポイントとして使用して、表6のリンカ9によって結合しうる。
【0104】
I−CeuI用に選択されたC末端融合ポイントは、アミノ酸1〜52をC末端I−CeuIサブユニットから除去する結果となる。構造分析(Spiegelら(2006),Structure14:869−880)は、これらのアミノ酸が、I−CeuIの面に静止し、アミノ酸94〜123により提供される疎水性表面積の相当量を埋める、構造ドメインを形成することを明らかにする。したがって、このN末端ドメインの除去により、単鎖メガヌクレアーゼ中のC末端I−CeuIサブユニットが不安定化される可能性がある。この可能性を軽減するため、このN末端ドメインの除去によって、曝される疎水性アミノ酸を極性アミノ酸に突然変異させることができる(たとえば、β分岐状ではない疎水性アミノ酸をSerに突然変異させることができ、一方β分岐状の疎水性アミノ酸をThrに突然変異させることができる)。たとえば、Leu−101、Tyr−102、Leu−105、Ala−121およびLeu−123をSerに突然変異させることができ、一方、Val−95、Val−98およびIle−113をThrに突然変異させることができる。
【0105】
あるいは、C末端I−CeuIサブユニットのN末端ドメインを、大部分、無処理のまま残し、トランケートされたリンカを介してN末端サブユニットに結合することができる。これは、C末端融合ポイントとしてLys−7、Pro−8、Gly−9またはGlu−10を使用して、達成することができる。該リンカは、その長さ(すなわち、(GSS)Gまたは(GSS)G)の約50%までトランケートされた、可撓性Gly−Serリンカ(たとえば、表3のリンカ)でありえる。あるいは、該リンカは、ターン1内でトランケートされた表6のリンカのいずれであってもよい。したがって、例として、表6のリンカ9を使用して、単鎖I−CeuIメガヌクレアーゼを以下の組成で作ることができる。
N末端サブユニットN2I2−SLPGSVGGLSPSQASSAASSASSSPGS−GC末端サブユニット
【0106】
5.二種の異なるLAGLIDADGファミリメンバに由来する単鎖メガヌクレアーゼ
また、本発明により、サブユニットのそれぞれが異なる天然LAGLIDADGドメインに由来する単鎖メガヌクレアーゼの製造も可能になる。本明細書で記載される「異なる」は、同じ天然LAGLIDADGファミリメンバに由来しないLAGLIDADGサブユニットを言う。したがって、本明細書で使用されるように、同じファミリメンバから合理的に設計されたLAGLIDADGサブユニット(たとえば、DNA切断特異性に関して遺伝子操作されている、二つのI−CreIサブユニット)は、「異なる」とは考えない。具体的には、本発明は、異なるモノ−LAGLIDADGメガヌクレアーゼ、またはジ−LAGLIDADGメガヌクレアーゼの二つのLAGLIDADGドメインのどちらかに由来するC末端サブユニットに結合するモノ−LAGLIDADGメガヌクレアーゼ(たとえば、I−CreI、I−MsoIまたはI−CeuI)に由来するN末端サブユニットを含む、単鎖メガヌクレアーゼの製造を可能にする。たとえば、DNA認識部位特異性に関して合理的に設計されていても、されていなくてもよいC末端I−MsoIサブユニットに結合するN末端I−CreIサブユニット(これも、DNA認識部位特異性に関して合理的に設計されていても、されていなくてもよい)を含む単鎖メガヌクレアーゼを製造することができる。
【0107】
I−CreI、I−MsoIおよびI−CeuIの場合、望ましい融合ポイントおよびリンカは先に記載した通りである。たとえば、単鎖I−CreIからI−MsoI融合は、I−CreI Asp−153をI−MsoI Thr−10に結合するため、表6のリンカ9を使用して製造することができる。表9は、ジ−LAGLIDADGメガヌクレアーゼI−SceI、I−DmoIおよびI−AniIからの個々のLAGLIDADGドメイン用の可能性のあるC末端融合ポイントを列挙する。
【表10】

【0108】
表7、9および10に列挙された融合ポイントは、問題になっているメガヌクレアーゼと、I−CreI融合ポイントに構造的に相同性のあるアミノ酸位置が同定されたI−CreIとの間の構造比較に基づいている。また、融合ポイントは、I−CreIに対するタンパク質配列アラインメントを使用して、構造的に特徴付けられていないLAGLIDADGサブユニットにおいても同定することができる。これは、保存LAGLIDADGモチーフの位置に基づき、任意のLAGLIDADGサブユニットにおいて簡単に同定することができるC末端融合ポイントに特に当てはまることである。LAGLIDADGモチーフの始点の4〜6残基N末端であるアミノ酸は、許容可能なC末端融合ポイントである。
【0109】
異なるLAGLIDADGエンドヌクレアーゼからのサブユニット間の二量体化の境界面は変化するので、該サブユニットは、単鎖ポリペプチドとして共有結合されたとしても、機能的「ヘテロ二量体」に会合しないかもしれない。会合を促進するために、二つのサブユニットの間の境界面を国際公開公報第2007/047859号に記載するように、合理的に設計することができる。最も簡単には、これは、境界面残基を一つのサブユニットから他へ置換することを含む。たとえば、I−CreIおよびI−MsoIは、本質的に、I−CreI Glu−8(これは、I−MsoIの相同位置におけるThr、アミノ酸10である)、およびLeu−11(これは、I−MsoIの相同位置におけるAla、アミノ酸13である)での界面領域において相違する。したがって、I−CreIおよびI−MsoIサブユニットは、I−CreIサブユニットのGlu−8およびLeu−11を、それぞれ、ThrおよびAlaに変えることによって、あるいはI−MsoIサブユニットのThr−10およびAla−13を、それぞれ、GluおよびLeuに変えることによって、効率的に相互作用させることができる。
【0110】
また、コンピュータによるタンパク質設計アルゴリズムのような技術も、サブユニット境界面を合理的に設計するために使用することができる。該方法は、当該分野で公知である。たとえば、Chevalierらは、I−CreIおよびI−DmoIのN末端LAGLIDADGドメインの間の境界面を再設計するために、コンピュータによるアルゴリズムを使用して、該二つが相互作用することを可能にした(Chevalierら(2002),Mol.Cell 10:895−905)。これらの結果を考慮に入れれば、I−CreIに由来するN末端サブユニットと、I−DmoIのN末端LAGALIDADGドメインに由来するC末端サブユニットとを含む単鎖メガヌクレアーゼは、(1)表2のI−CreI中のN末端融合ポイントを選択し、(2)表10のI−DmoI中のC末端融合ポイントを選択し、(3)表6のリンカを選択し(または、規定される規則に基づいて類似するリンカを設計し)、および(4)Chevalierらが提案するように、突然変異L11A、F16I、K96NおよびL97FをI−CreIサブユニットに、および突然変異I19W、H51FおよびL55RをI−DmoIサブユニットに取り込むことによって製造することができる。
【0111】
あるいは、定向進化のような実験的な方法を、二つの異なるLAGLIDADGサブユニットの間の境界面を操作するために使用することができる。該方法は当該分野で公知である。たとえば、サブユニット境界面中の特異的なアミノ酸が無作為化された遺伝子ライブラリを作ることができ、該二つのサブユニット間の相互作用を可能にするライブラリメンバを、実験的にスクリーニングすることができる。そのようなスクリーニング方法は、当該分野で公知であり(たとえば、Sussmanら(2004),J.Mol.Biol.342:31−41、Chamesら(2005),Nucl.Acids Res.33:el78、Seligmanら(2002),Nucl.Acids Res.30:3870−9,Arnouldら(2006),J.Mol.Biol.355:443−58)、そして酵母または細菌の細胞内でハイブリッドDNA部位を切断する、二つの異なるLAGLIDADGサブユニットを含む単鎖メガヌクレアーゼの能力に関して、試験を行うことができる。
【0112】
6.変更されたDNA切断特異性、活性および/またはDNA結合親和性を持つ単鎖メガヌクレアーゼ
本発明は、種々の方法を使用して、DNA切断特異性に関して遺伝子操作されている、個々のLAGLIDADGサブユニットを含む単鎖メガヌクレアーゼを製造するために使用することができる。該方法として、合理的な設計(たとえば、国際公開公報第2007/047859号)、コンピュータを用いる設計(たとえば、Ashworthら(2006),Nature 441:656−659)、および遺伝子選択(Sussmanら(2004),J.Mol.Biol.342:31−41、Chamesら(2005),Nucl.Acids Res.33:el78、Seligmanら(2002),Nucl.Acids Res.30:3870−9,Arnouldら(2006),J.Mol.Biol.355:443−58)が挙げられる。そのようなメガヌクレアーゼは、野生型メガヌクレアーゼによって認識される部位とは異なるDNA部位に的を絞ることができる。また、本発明は、合理的に設計され、変更した活性(たとえば、国際公開公報第2007/047859号、Arnouldら(2007),J.Mol.Biol371(1):49−65)、または国際公開公報第2007/047859号に記載されるようなDNA結合親和性を有するLAGLIDADGサブユニットを結合するためにも、使用することができる。
【0113】
7.組換え細胞および生物の製造方法
本発明の態様は、さらに、単鎖メガヌクレアーゼを使用して、組換え、遺伝子導入またはその他、遺伝子組換え細胞および生物を産生する方法も提供する。したがって、ある実施形態では、細胞または生物のゲノムDNA中の単一部位または比較的少ない部位で、二本鎖切断端を特異的に起こすように、組換え単鎖メガヌクレアーゼを成長させ、相同組換えにより関心のある配列を正確に挿入すること(複数を含む)を可能にする。他の実施形態では、細胞または生物のゲノムDNA中の単一部位または比較的少ない部位で、二本鎖切断端を特異的に起こすように、組換えメガヌクレアーゼを成長させ、(a)非相同的末端結合による関心のある配列の挿入を殆ど起こさせないようにすること、あるいは(b)非相同的末端結合により標的配列を混乱することを可能にする。関心のある配列の相同組換えまたは非相同的末端結合に関して、本明細書で使用される用語「挿入」は、関心のある配列が染色体に組み込まれるように、関心のある配列を染色体に連結することを意味する。相同組換えの場合、本来のDNAが、該DNAと同じ長さであるが、変更されたヌクレオチド配列を持つ外因性DNAによって置き換えられるように、挿入された配列は、内因性配列を置き換えることができる。あるいは、挿入された配列は、それが置き換える配列よりも多いまたは少ない塩基を含みうる。
【0114】
したがって、本発明のこの態様によれば、組換え生物として、コメ、コムギ、コーン(トウモロコシ)およびライムギのような単子葉植物種、およびマメ科植物(たとえば、インゲンマメ、ダイズ、レンズマメ、ピーナッツ、エンドウマメ)、アルファルファ、クローバ、タバコ、およびアラビドプシスのような双子葉植物種が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、組換え生物として、ヒトおよびヒトではない霊長類、ウマ、ウシ、ヤギ、ブタ、ヒツジ、イヌ、ネコ、モルモット、ラット、マウス、トカゲ、サカナ、およびショウジョウバエ種のような昆虫を挙げることができるが、これらに限定されない。他の実施形態では、生物は、カンジダ、パンカビまたは酵母類のような真菌類である。
【0115】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、関心のある配列を、成熟組換え生物になりうる、または得られた遺伝子組換え生物がそのゲノム中に挿入された関心のある配列を持つ子孫を生じさせる生殖細胞または幹細胞のような細胞に導入することを含む。
【0116】
メガヌクレアーゼタンパク質は、細胞に送達され、ゲノムDNAを切断することができ、これによって、当該分野で公知の種々の異なるメカニズムにより、該切断部位で、関心のある配列を相同組換えまたは非相同的末端結合させる。たとえば、組換えメガヌクレアーゼタンパク質は、マイクロインジェクションまたはリポソームトランスフェクション(たとえば、Lipofectamine(商標),Invitrogen社,Carlsbad,CA)(これらに限定されない)を始めとする技術によって、細胞に導入することができる。リポソーム形成は、標的細胞を持つ脂質二重膜融合を促進するために使用することができ、これによって、その表面と会合しているリポソームまたはタンパク質の内容物を、細胞中に持ち込むことが可能になる。あるいは、酵素を融合し、細胞摂取を指示するHIV TATタンパク質からの摂取ペプチドのような、適正な摂取ペプチドとすることができる(たとえば、Hudeczら(2005),Med.Res.Rev.25:679−736参照)。
【0117】
あるいは、当該分野で公知の技術を使用して、メガヌクレアーゼタンパク質をエンコードする遺伝子配列をベクタに挿入し、真核細胞にトランスフェクトする(たとえば、Ausubelら,Current Protocols in Molecular Biology,Wiley1 999参照)。関心のある配列を、同じベクタ、異なるベクタに、または当該分野で公知の他の方法によって、導入することができる。
【0118】
DNAトランスフェクション用のベクタの限定ではない例示として、ウィルス性ベクタ、プラスミド、コスミドおよびYACベクタが挙げられる。DNA配列のトランスフェクションは、当業者に公知の種々の方法によって達成することができる。たとえば、リポソームおよび免疫リポソームは、DNA配列を細胞に送達するために使用される(たとえば、Lasicら(1995),Science 267:1275−76参照)。さらに、ベクタを細胞に導入するために、ウィルスを利用することができる(たとえば、米国特許第7,037,492号参照)。あるいは、トランスフェクション手法は、ベクタをネイキッドDNAとして導入するように、利用することができる(たとえば、Ruiら(2002),Life Sci.71(15):1771−8参照)。
【0119】
核酸を細胞に送達する一般的方法として、(1)化学的方法(Grahamら(1973),Virology54(2):536−539、Zatloukalら(1992),Ann.N.Y.Acad.Sci.,660:136−153、(2)マイクロインジェクション(Capecchi(1980),Cell 22(2):479−488)、エレクトロポレーション(Wongら(1982),Biochim.Biophys.Res.Commun.107(2):584−587、Frommら(1985),Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 82(17):5824−5828、米国特許第5,384,253号)、およびバリスティックインジェクション(Johnstonら(1994),Methods Cell.Biol.43(A):353−365、Fynanら(1993),Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 90(24):11478−11482)のような物理的方法、(3)ウィルス性ベクタ(Clapp(1993),Clin.Perinatol.20(1):155−168、Luら(1993),J.Exp.Med.178(6):2089−2096、Eglitisら(1988),Avd.Exp.Med.Biol.241:19−27、Eglitisら(1988),Biotechniques 6(7):608−614)、および(4)受容体介在性メカニズム(Curielら(1991),Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 88(19):8850−8854、Curielら(1992),Hum.Gen.Ther.3(2):147−154、Wagnerら(1992),Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 89(13):6099−6103)が挙げられる。
【0120】
ある実施形態では、ゲノムに挿入された関心のある配列を含有する、遺伝子組換え植物を産生する。ある実施形態では、植物細胞に、組換えメガヌクレアーゼおよび関心のある配列に対応するDNA配列であって、メガヌクレアーゼ認識配列および/または標的配列に実質的に同一の配列によって挟まれていても、あるいは挟まれていなくてもよいDNA配列をトランスフェクトすることによって、遺伝子組換え植物を産生する。他の実施形態では、植物細胞に、切断により非相同的末端結合が促進され、認識配列を含有する標的配列を混乱させるような、組換えメガヌクレアーゼだけに対応するDNA配列をトランスフェクトすることによって、遺伝子組換え植物を産生する。そのような実施形態では、メガヌクレアーゼ配列は、宿主植物細胞においてメガヌクレアーゼの発現を可能にする調節配列のコントロール下にある。これらの調節配列として、NOSプロモータのような構成植物プロモータ、デキサメタゾン誘導性プロモータ(たとえば、Gremillonら(2004),Plant J.37:218−228参照)のような化学的誘導性遺伝子プロモータ、およびLGC1プロモータ(たとえば、Singhら(2003),FEBS Lett.542:47−52参照)のような植物組織特異的プロモータが挙げられるが、これらに限定されない。
【0121】
植物細胞にDNAを導入する適切な方法としては、DNAを細胞に導入することができる実質的にいかなる方法も挙げられ、たとえば、アグロバクテリウム感染、プロトプラストのPEG介在形質転換(Omirullehら(1993),Plant Molecular Biology,21:415−428)、乾燥/抑制介在DNA摂取、エレクトロポレーション、シリコンカーバイド繊維による攪拌、バリスティックインジェクション、または微粒子銃などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0122】
他の実施形態では、組換えメガヌクレアーゼを使用して遺伝子組換え動物を産生する。植物細胞と同様に、核酸配列を、生殖細胞または最終的に遺伝子導入生物になる細胞に導入する。いくつかの実施形態では、細胞は受精卵であり、外因性DNA分子を受精卵の前核に注入することができる。次いで、マイクロインジェクトされた卵を、偽妊娠仮親の卵管に移し、成長させる。組換えメガヌクレアーゼは受精卵中で発現し(たとえば、3−ホスホグリセリン酸キナーゼのような、構成プロモータのコントロール下で)、ゲノム中の1個または数個の別々の部位への関心のある配列の相同組換えを容易にする。あるいは、Gosslerら(1986),Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:9065 9069によって記載されているように、遺伝子導入発生用の組換え胚幹(「ES」)細胞を利用することによって、遺伝子組換え動物を得ることができる。
【0123】
ある実施形態では、組換え哺乳類発現ベクタは、特定の細胞型において、核酸の組織特異的発現を優先的に導くことができる。組織特異的調節エレメントは、当該分野で公知である。適切な組織特異的プロモータの限定ではない例示として、アルブミンプロモータ(肝臓特異的なもの、Pinkertら(1987),Genes Dev.1:268−277)、リンパ系特異的プロモータ(CalameおよびEaton(1988),Adv.Immunol.43:235−275)、特に、T細胞受容体のプロモータ(WinotoおよびBaltimore(1989),EMBO J.8:729−733)および免疫グロブリン(Banerjiら(1983),Cell 33:729−740、QueenおよびBaltimore(1983),Cell 33:741−748)、神経特異的プロモータ(たとえば、神経フィラメントプロモータ、ByrneおよびRuddle(1989),Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:5473−5477)、膵臓特異的プロモータ(Edlundら(1985),Science 230:912−916)、および乳腺特異的プロモータ(たとえば、乳漿プロモータ、米国特許第4,873,316号および欧州特許公報第0264166号)が挙げられる。また、発育的に調節されたプロモータも包含され、たとえば、マウスhoxプロモータ(KesselおよびGruss(1990),Science249:374−379)およびα胎児タンパク質プロモータ(CampesおよびTilghman(1989),Genes Dev.3:537−546)がある。
【0124】
ある実施形態では、単鎖メガヌクレアーゼに、ペプチドエピトープ(たとえば、HA、FLAGまたはMycエピトープ)でタグを付け、発現レベルや局在化をモニターしてもよい。いくつかの実施形態では、メガヌクレアーゼは、核局在化シグナル(たとえば、SV40からの核局在化シグナル)のようなサブ細胞局在化シグナル、あるいは葉緑体またはミトコンドリア局在化シグナルに融合してもよい。他の実施形態では、メガヌクレアーゼを、核外移行シグナルに融合し、これを細胞質に局在化してもよい。また、メガヌクレアーゼを、DNA修復または相同組換えを刺激するタンパク質(たとえば、recA、RAD51、RAD52、RAD54、RAD57またはBRCA2)のような無関係のタンパク質またはタンパク質ドメインに融合してもよい。
【0125】
8.遺伝子治療の方法
本発明の態様は、遺伝子治療のために組換えメガヌクレアーゼを使用することを可能にする。本明細書で使用される「遺伝子治療」は、少なくとも一つの遺伝子または遺伝子調節配列、たとえば、プロモータ、エンハンサまたはサイレンサの機能コピーを患者に導入し、その構造および/または機能に欠陥のある遺伝子または遺伝子調節領域を置き換えることを含む、治療的処置を意味する。また、用語「遺伝子治療」は、遺伝子の発現を減らすまたは消す、有害な遺伝子または調節エレメント(たとえば、癌遺伝子)に対してなされる修飾を指すこともできる。遺伝子治療は、先天的な状態、突然変異または患者の生涯にわたる特異的な遺伝子座に対する障害に起因する状態、または感染性生物に起因する状態を治療するために行うことができる。
【0126】
本発明のいくつかの態様では、遺伝子発現に影響を及ぼすゲノムの領域に外因性核酸配列を挿入することによって、機能障害性遺伝子を、置換えまたは無能にする。ある実施形態では、状態を緩和するように、組換えメガヌクレアーゼを、修飾されるべきゲノムの領域内の特定の配列に標的化する。配列は、エクソン、イントロン、プロモータまたは遺伝子の機能障害性発現を起こしている他の調節領域内の領域が可能である。本明細書で使用される用語「機能障害性発現」は、遺伝子産物をあまりにも少なく、遺伝子産物をあまりにも多く産生する細胞による、あるいは必要な機能のない、または必要以上の機能を持つ異なる機能を有する遺伝子産物を産生することによる、遺伝子産物の異常な発現を意味する。
【0127】
修飾領域に挿入された外因性核酸配列は、遺伝子を正常化する「修復された」配列を提供するために使用することができる。遺伝子修復は、正しい遺伝子配列を、再構築されるべき正しい機能を可能にする遺伝子に導入することによって、達成することができる。これらの実施形態では、挿入されるべき核酸配列は、タンパク質の完全コード配列が可能であり、またはある実施形態では、修復されるべき領域だけを含む遺伝子のフラグメントが可能である。他の実施形態では、挿入されるべき核酸配列は、異常な発現または調節を起こす突然変異が修復されているプロモータ配列または他の調節エレメントを含む。他の実施形態では、挿入されるべき核酸配列は、変異遺伝子中にはない適正な翻訳停止コドンを含有する。また、核酸配列は、適正な翻訳停止シグナルのない組換え遺伝子において、翻訳を停止するための配列を有することもできる。
【0128】
あるいは、核酸配列は、遺伝子の調節配列を混乱させることにより、または遺伝子機能を排除するサイレンサを提供することにより、遺伝子機能を一斉に除去することができる。いくつかの実施形態では、外因性核酸配列は、翻訳停止コドンを提供し、遺伝子産物の発現を阻止する。他の実施形態では、外因性核酸配列は、転写停止要素を提供し、完全長RNA分子の発現を阻止する。さらに他の実施形態では、遺伝子機能を、塩基挿入、塩基欠失および/または非相同的末端結合によるフレームシフト突然変異を導入することによって、メガヌクレアーゼで直接混乱させる。
【0129】
多くの場合、正しい遺伝子配列を、標的細胞または疾患状態の原因である細胞集団に導くことが望ましい。そのような治療上の標的化は、健康な細胞が治療による標的となることを回避する。これにより、治療の効率は増加し、一方、治療による健康な細胞へ与える可能性のある潜在的な副作用は減少する。
【0130】
ゲノムに挿入されるべき組換えメガヌクレアーゼ遺伝子および関心のある配列を、関心のある細胞に送達することは、種々のメカニズムによって達成することができる。いくつかの実施形態では、ウィルスの複製を阻止するために不活性化した、特別のウィルス性遺伝子を持つウィルスによって、核酸を細胞に送達する。したがって、標的細胞内のみへ送達および維持することができるが、標的細胞または組織内で複製する能力は保持しないように、ウィルスを変更することができる。一つ以上のDNA配列を、ベクタのように作用するウィルス性ゲノムを産生するように、変更されたウィルス性ゲノムに導入することができ、これを宿主ゲノムに挿入し次いでこれを発現させてもよいし、しなくてもよい。より具体的には、ある実施形態は、MFGまたはpLJベクタ(これらに限定されない)のようなレトロウィルス性ベクタを使用することを含む。MFGベクタは、polおよびenvタンパク質をエンコードするDNA配列が欠失し、複製欠損になっている、単純化されたモロニーマウス白血病ウィルスベクタ(MoMLV)である。また、pLJレトロウィルス性ベクタは、MoMLVの形態でもある(たとえば、Kormanら(1987),Proc.Nat’l Acad.Sci.,84:2150−2154参照)。他の実施形態では、組換えアデノウィルスまたはアデノ関連ウィルスを、送達ベクタとして使用することができる。
【0131】
他の実施形態では、組換えメガヌクレアーゼタンパク質および/または組換えメガヌクレアーゼ遺伝子配列の標的細胞への送達を、リポソームを使用することによって達成する。核酸および/またはタンパク質カーゴを含有するリポソームの製造は、当該分野で公知である(たとえば、Lasicら(1995),Science 267:1275−76参照)。免疫リポソームは、細胞関連抗原に対する抗体をリポソームに取込み、メガヌクレアーゼ用のDNA配列、またはメガヌクレアーゼそれ自体を特異的な細胞型に送達することができる(たとえば、Lasicら(1995),Science 267:1275−76、Youngら(2005),J.Calif.Dent.Assoc.33(12):967−71、Pfeifferら(2006),J.Vace.Surg.43(5):1021−7参照)。リポソーム製剤を製造し使用する方法は、当該分野において周知である(たとえば、米国特許第6,316,024号、米国特許第6,379,699号、米国特許第6,387,397号、米国特許第6,511,676号および米国特許第6,593,308号、およびこれらに挙げてある参考文献を参照)。いくつかの実施形態では、関心のある配列、および組換えメガヌクレアーゼタンパク質または組換えメガヌクレアーゼ遺伝子配列を送達するために、リポソームを使用する。
【0132】
9.病原体感染を治療する方法
また、本発明の態様は、病原体による感染を治療する方法も提供する。病原体生物として、単純ヘルペスウィルス1、単純ヘルペスウィルス2、ヒト免疫不全ウィルス1、ヒト免疫不全ウィルス2、痘瘡ウィルス、ポリオウィルス、エプスタイン・バー・ウィルス、およびヒトパピローマウィルス(これらに限定されない)のようなウィルス、およびバシラスアンスラシス、ヘモフィルス種、肺炎球菌種、黄色ブドウ球菌、ストレプトコッカス種、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌およびマイコプラスマ結核病原体(これらに限定されない)のような細菌生物が挙げられる。また、病原体生物として、カンジダ、ブラストミセス、クリプトコッカスおよびヒストプラズマ種(これらに限定されない)のような真菌生物が挙げられる。
【0133】
いくつかの実施形態では、単鎖メガヌクレアーゼは、病原体ゲノム内の認識配列、たとえば、成長、複製、または病原体の毒性に必須の遺伝子または調節エレメントに、標的化されうる。ある実施形態では、認識配列は、細菌プラスミド中にあってもよい。病原体ゲノムにおける認識配列のメガヌクレアーゼ介在切断は、非相同的末端結合を刺激することによって、標的化された必須遺伝子内で、挿入、欠失またはフレームシフトの形態で、突然変異を刺激することができる。あるいは、細菌プラスミドの切断により、プラスミドとともにそこにエンコードされていた全ての遺伝子、たとえば、毒性遺伝子(たとえば、炭疽菌致死因子遺伝子)または抗生物質耐性遺伝子も消滅する結果となりうる。先に記載したように、メガヌクレアーゼを、当該分野で一般的な技術を使用して、タンパク質あるいは核酸の形態で、感染した患者、動物または植物に送達してもよい。ある実施形態では、メガヌクレアーゼ遺伝子を、病原体細菌に送達するバクテリオファージゲノムに取込んでもよい。
【0134】
また、本発明の態様は、ある形態の癌を処置するための治療を提供する。ヒトウィルスは、しばしば、腫瘍形成(たとえば、エプスタイン・バー・ウィルスと上咽頭癌、ヒトパピローマウィルスと子宮頸癌)と関連するので、これらのウィルス性病原体の不活性化により、癌の発現および進行を阻止してもよい。あるいは、単鎖メガヌクレアーゼを使用して、これらの腫瘍関連ウィルスのゲノムに標的化された二本鎖切断端に対して、DNA損傷応答経路によりアポトーシスを開始させるように使用してもよい。この方法では、ウィルス性ゲノムを内部に持つ腫瘍細胞に、アポトーシスを選択的に誘導することが可能であるかもしれない。
【0135】
10.遺伝子型同定および病原体同定方法
また、本発明の態様は、インビトロでの分子生物学研究開発のためのツールも提供する。真核生物および原核細胞系生物から、プラスミド、PCR産生物、BAC配列、YAC配列、ウィルスおよびゲノム配列のような核酸を、単離、クローニングおよび操作するために、部位特異的なエンドヌクレアーゼ(たとえば、制限酵素)を使用することは、当該分野ではよくあることである(たとえば、Ausubelら,Current Protocols in Molecular Biology,Wiley 1999参照)。したがって、いくつかの実施形態では、単鎖メガヌクレアーゼを、核酸配列をインビトロで操作するために使用する。たとえば、同じDNA分子内の一対の認識配列を認識する単鎖メガヌクレアーゼを、細菌プラスミド、BACまたはYACへの連結のような後続の操作のために、介在DNAセグメントを単離するために使用することができる。
【0136】
他の態様では、本発明は、病原体遺伝子および生物を同定するツールを提供する。一実施形態では、単鎖メガヌクレアーゼを、疾患を起こす対立遺伝子を健康な対立遺伝子から区別するために、疾患と相関関係がある多形性遺伝子領域に対応する認識部位を切断するのに使用することができる(たとえば、ヒトCFTR遺伝子のΔF−508対立遺伝子を認識する単鎖メガヌクレアーゼ、実施例4参照)。この実施形態では、ヒト患者または他の生物から単離されたDNA配列を、可能であれば追加の部位特異的なヌクレアーゼとともに、単鎖メガヌクレアーゼで消化し、得られたDNAフラグメントパターンを、ゲル電気泳動法、キャピラリ電気泳動法、質量分析法、または当該分野で公知の他の方法によって分析する。この細分化パターンおよび、具体的には、単鎖メガヌクレアーゼによる切断の存在または不存在は、認識配列がゲノム中に存在するか否かを明らかにすることにより、生物の遺伝子型を示す。別の実施形態では、単鎖メガヌクレアーゼを、病原体ウィルス、真菌または細菌のゲノム中の多形領域に対して標的化し、生物を同定するために使用する。この実施形態では、単鎖メガヌクレアーゼは、病原体に固有の認識配列を切断し(たとえば、バクテリア中の16Sおよび23S rRNA遺伝子間のスペーサー領域、たとえば、van der Giessenら(1994),Microbiology 140:1103−1108参照)、ゲノムのエンドヌクレアーゼ消化後の他の密接に関連した生物から病原体を区別し、電気泳動、質量分析、または当該分野で公知の他の方法によるその後の細分化パターンの分析のために使用することができる。
【0137】
11.カスタムDNA結合ドメインの製造方法
他の態様では、本発明は、エンドヌクレアーゼ切断活性のない単鎖DNA結合タンパク質を提供する。単鎖メガヌクレアーゼの触媒活性は、触媒作用(たとえば、I−CreIにおけるQ47のEへの突然変異、Chevalierら(2001),Biochemistry.43:14015−14026参照)、I−SceIにおけるD44またはD145のNへの突然変異、I−CeuIにおけるE66のQへの突然変異、I−MsoIにおけるD22のNへの突然変異)に関与するアミノ酸に突然変異を起こすことによって、除去することができる。次いで、不活性化されたメガヌクレアーゼを、転写アクチベータ(たとえば、GAL4トランス活性化ドメインまたはVP16トランス活性化ドメイン)、転写抑制因子(たとえば、クルッペルタンパク質からのKRABドメイン)、DNAメチラーゼドメイン(たとえば、M.CviPIまたはM.SssI)、またはヒストンアセチル基転移酵素ドメイン(たとえば、HDAC1またはHDAC2)(これらに限定されない)を始めとする他のタンパク質から効果ドメインに融合することができる。操作されたDNA結合ドメイン、いわゆる操作されたZnフィンガドメイン、および効果ドメインを構成するキメラタンパク質は、当該分野で公知である(たとえば、Papworthら(2006),Gene 366:27−38参照)。
【実施例】
【0138】
本発明を、以下の実施例によってされに説明するが、これらの実施例を、限定として解釈すべきではない。当業者は単なる日常の実験、本明細書に記載の特定の物質および手段と数多くの同等のものを使用することで、認識し、あるいは確認することができるであろう。そのような同等のものとは、以下の実施例に続く、請求項の範囲に包含されるものである。実施例1では、先に記載した単鎖I−CreIメガヌクレアーゼの製造方法(Epinatら(2003),Nucleic Acids Res.31:2952−62、国際公開公報第2003/078619号)が、非パリンドロームDNA部位を認識するメガヌクレアーゼの製造としては十分ではないという証拠を示す。実施例2および3では、可撓性Gly−Serリンカ(実施例2)または設計された構造化リンカ(実施例3)を使用する、本明細書に記載された方法が、非パリンドロームDNA部位を認識する単鎖I−CreIメガヌクレアーゼを製造するのに十分であるという証拠を示す。実施例2および3は、以下で、特にI−CreIに基づく単鎖メガヌクレアーゼについて記載するが、I−SceI、I−MsoI、I−CeuI、I−AniIに由来するサブユニットで構成される単鎖メガヌクレアーゼおよび他のLAGLIDADGメガヌクレアーゼも本明細書で記載されるのと同様に製造および使用することができる。
【実施例1】
【0139】
Epinatらの方法の評価
【0140】
1.Epinatらの方法を使用する単鎖メガヌクレアーゼ
Epinatら(2003),Nucleic Acids Res.31:2952−62および国際公開公報第2003/078619号は、I−CreIメガヌクレアーゼに由来する単鎖メガヌクレアーゼの製造を報告する。具体的には、筆者らは、I−DmoIに由来する11アミノ酸ペプチドリンカ(I−DmoIのアミノ酸94〜104,配列:MLERIRLFNMR)を使用して、N末端I−CreIサブユニット(I−CreIのアミノ酸1〜93)をC末端I−CreIサブユニット(アミノ酸8〜163)に結合した。このN末端サブユニット−リンカC末端サブユニットの特定の配置は、ジ−LAGLIDADG I−DmoIメガヌクレアーゼのドメイン組織を最もよく模倣しているので、これを選択した。筆者らは、単鎖I−CreIメガヌクレアーゼを実験的に評価し、野生型I−CreIホモ二量体に対して有意に少ない割合でも、野生型I−CreI認識配列を効率的に切断することを見出した。
【0141】
該筆者らによって製造された融合タンパク質は、両方とも同じDNA半部位を認識する、二つの別の野生型サブユニットを含んでいたので、擬似パリンドローム性野生型DNA部位を使用して、単鎖メガヌクレアーゼを試験する必要があった。したがって、前記筆者らは、観察された切断活性が、個々の単鎖メガヌクレアーゼによる切断ではなく、それぞれの一つのドメインが会合し、野生型ホモ二量体のように、効率的に挙動する機能的メガヌクレアーゼを形成する、二つの単鎖メガヌクレアーゼの分子間二量体による切断のためであるという可能性を取除くことはできなかった。事実、N末端I−CreIサブユニットの実質的な部分(アミノ酸94〜163)は、Epinatらによって報告されている単鎖メガヌクレアーゼの製造において、除去された。三次元I−CreI結晶構造検査(Juricaら(1998),Mol.Cell 2:469−476)により、このトランケーションにより、三つのαへリックスがN末端サブユニットの表面から除去され、次いで、大部分の疎水性表面積が溶剤に曝されたことは明らかである。したがって、本発明者らは、Epinatらの単鎖I−CreIメガヌクレアーゼからのN末端サブユニットは不安定で、不活性であり、観察されたDNA切断活性は、実際、二つの単鎖タンパク質からのC末端サブユニットの二量体化によるものであると仮定した。Epinatらの方法の適用から生じるタンパク質安定性の問題は、Fajardo−Sanchezら(2008),Nucleic Acids Res.36:2163−2173でも検討されている。
【0142】
2.Epinatらの方法を使用した単鎖LAMメガヌクレアーゼの設計
Epinatらによって報告されている単鎖I−CreIメガヌクレアーゼの製造方法(Epinatら(2003),Nucleic Acids Res.31:2952−62、国際公開公報第2003/078619号)を、さらにはっきりと評価するために、NおよびC末端I−CreIドメインが異なるDNA半部位を認識する単鎖メガヌクレアーゼを製造した。Epinatらが報告する方法を使用して、一つのLAM1ドメインと一つのLAM2ドメインとを含む、一対の単鎖メガヌクレアーゼを製造した。この「LAM1epLAM2」メガヌクレアーゼ(配列番号:48)は、N末端LAM1ドメインと、C末端LAM2ドメインを含み、一方、「LAM2epLAM1」(配列番号:49)は、N末端LAM2ドメインとC末端LAM1ドメインを含む。全体で、両単鎖メガヌクレアーゼは、Epinatらによって報告されたものとは11アミノ酸が異なり、全アミノ酸変化は、サブユニット相互作用に影響を及ぼすことが期待されない、DNA認識に関与する酵素の領域内で起こる。
【0143】
3.単鎖メガヌクレアーゼの構成
LAM1epLAM2およびLAM2epLAM1を、I−DmoIリンカ配列(MLERIRLFNMRに翻訳する)を導入するプライマー、およびクローニング用の制限酵素部位を用い、既存のLAM1およびLAM2遺伝子のPCRによって製造した。次いで、2個の該LAMサブユニットを、精製用完全長単鎖遺伝子(Novagen社,San Diego,CA)の3’終点で融合された六ヒスチジンタグで、pET−21aベクタにクローン化した。全ての核酸配列を、Sangerジデオキシヌクレオチド配列決定(Sangerら(1977),Proc.Natl.Acad.Sci.USA.74(12):5463−7参照)を用いて確認した。
【0144】
以下の方法を使用して、LAMepメガヌクレアーゼを発現させ、精製した。pET21aベクタにクローン化された構築物を、化学的に形質転換受容性のあるBL21(DE3)pLysSに形質転換し、200μg/mlのカルベニシリンの入った標準の2xYTプレートに播いた。一晩成長させた後、形質転換細菌コロニを、プレートからこすり落とし、50mlの2XYTブロスを接種するために使用した。細胞を振盪しながら37℃で600nmの波長の吸光度が0.9になるまで成長させた。次いで、成長温度を37℃から22℃に下げた。タンパク質発現を1mMのIPTGの添加により誘発し、細胞を攪拌しながら2時間半培養した。次いで、細胞を6000×gで10分、遠心分離によってペレット化した。ペレットをボルテックス処理によって1mlの結合緩衝液(20mMのトリ−HCL、pH8.0、500mMのNaCl、10mMのイミダゾール)に再懸濁した。次いで、細胞を50%電力で12パルスの音波処理によって崩壊し、細胞の残骸を14,000×gで15分間の遠心分離によってペレット化した。細胞上澄みを4mlの結合緩衝液で希釈し、200μlのニッケルを詰めた金属キレート・セファロース・カラム(Pharmacia社)に充填した。
【0145】
続いて、カラムを、4mlの洗浄緩衝液(20mMのトリ−HCl、pH8.0、500mMのNaCl、60mMのイミダゾール)、および0.2mlの溶離緩衝液(20mMのトリ−HCl、pH8.0、500mMのNaCl、400mMのイミダゾール)で洗浄した。メガヌクレアーゼ酵素を、追加の0.6ml溶離緩衝液で溶離し、Vivospin使い捨て濃縮器(ISC社,Kaysville,UT)を使用して、50〜130μlに濃縮した。アッセイおよび保存のため、該酵素を、Zebaスピン脱塩カラム(Pierce Biotechnology社,Rockford,IL)を使用して、SA緩衝液(25mMのトリ−HCL、pH8.0、100mMのNaCl、5mMのMgCl、5mMのEDTA)に交換した。酵素濃度を、23,590M−1cm−1の吸光係数を使用して、280nmでの吸光度によって測定した。次いで、酵素の純度および分子量を、MALDI−TOF質量分析により確かめた。
【0146】
4.切断アッセイ
先に記載したように精製した全ての酵素の活性を、メガヌクレアーゼ認識配列を含む直鎖二本鎖DNA基質を用いる培養によってアッセイした。認識配列のセンスおよびアンチセンス鎖の両方に対応する合成オリゴヌクレオチドをアニールし、ブラントエンド連結により、pUC19プラスミドのSmal部位にクローン化した。クローン化された結合部位の配列を、Sangerジデオキシヌクレオチド配列決定によって確認した。全てのプラスミド基質を、メガヌクレアーゼ消化と同時にXmnIまたはScaIにより直線化した。酵素分解物は、5μlの0.05μMのDNA基質、2.5μlの5μM単鎖メガヌクレアーゼ、9.5μlのSA緩衝液、および0.5μlのXmnIまたはScaIを含んでいた。分解物を37℃で4時間培養した。分解を0.3mg/mlのプロテイナーゼKおよび0.5%SDSを加えることによって停止し、分解物を37℃で1時間培養した。分解物を1.5%アガロースで分析し、臭化エチジウム染色によって視覚化した。
5.結果
【0147】
Epinatらの方法を使用して製造されたLAMepメガヌクレアーゼを、LAM1パリンドローム(配列番号:40および41)、LAM2パリンドローム(配列番号:44および45)、またはLAM1/LAM2ハイブリッド部位(配列番号:46および47)を含むDNA基質で培養した。LAM1epLAM2単鎖メガヌクレアーゼは、主としてLAM2パリンドロームを切断することが確認され、一方LAM2epLAM1単鎖メガヌクレアーゼは、主としてLAM1パリンドロームを切断することが見られた。どちらの単鎖メガヌクレアーゼも、ハイブリッド部位を有意な程度に切断しなかった。これらの結果は、Epinatらの方法では、実際、非パリンドロームDNA配列を切断することができない単鎖メガヌクレアーゼを産生することを示唆している。両単鎖メガヌクレアーゼは、C末端サブユニットによって認識される半部位のパリンドロームに対応する認識配列を主として切断することが見られ、N末端サブユニットは不活性であることを示唆している。したがって、Epinatらによって特徴付けられた活性メガヌクレアーゼ種は、本質的に、一対の単鎖I−CreIメガヌクレアーゼのC末端サブユニット間の二量体であるようである。あるいは、パリンドローム性DNA部位の切断は、異なる単鎖I−CreIメガヌクレアーゼのC末端サブユニットによる逐次一本鎖ニッキングによるためかもしれない。どちらの場合も、Epinatらによる主張とは対照的に、該方法では、実質的に機能的な単鎖I−CreIヘテロ二量体を産生せず、一般的に、非パリンドロームDNA部位の認識および切断に有用ではない。
【実施例2】
【0148】
可撓性Glv−Serリンカを用いて製造された単鎖I−CreIメガヌクレアーゼ
【0149】
1.Gly−Serリンカを用いた単鎖LAMメガヌクレアーゼの設計
表3のリンカ3を使用して、設計されたLAM1およびLAM2エンドヌクレアーゼを融合し、単鎖ポリペプチドとした。Val−151をN末端融合ポイント(LAM1サブユニットに対する)として使用し、一方Phe−9をC末端融合ポイント(LAM2サブユニットに対する)として使用した。実施例1に記載したように、得られた単鎖メガヌクレアーゼ、「LAM1gsLAM2」(配列番号:50)をpET21aにクローン化し、E.coli中で発現させ、精製した。
【0150】
2.結果
LAM1gsLAM2の切断活性を、実施例1記載のものと同じDNA基質および培養条件を使用してアッセイした。LAMepメガヌクレアーゼに関する結果とは対照的に、LAM1gsLAM2は、主にハイブリッドLAM1/LAM2認識配列(配列番号:46および47)を切断することが見られた。切断の程度は、E.coli中でLAM1およびLAM2単量体を共発現することによって製造したLAM1/LAM2ヘテロ二量体に比べて有意に減少した。同じ反応条件下で、ヘテロ二量体はLAM1/LAM2認識配列を完全に切断し、これは、Gly−Serリンカは、ある程度切断活性を弱めることを示唆する。それにもかかわらず、LAM1gsLAM2は、ハイブリッド部位に関し、パリンドローム性LAM1またはLAM2部位よりも非常に強い優先度を示し、したがって、これは、特異性が活性より大きく重要である用途のために有用性がある。
【実施例3】
【0151】
構造化リンカを用いる単鎖I−CreIメガヌクレアーゼ製造
【0152】
1.設計された、構造化リンカを用いる単鎖LAMメガヌクレアーゼの設計
表6のリンカ9を使用して、設計されたLAM1およびLAM2エンドヌクレアーゼを融合し、単鎖ポリペプチドとした。Asp−153をN末端融合ポイント(LAM1サブユニットに対する)として使用し、一方Lys−7をC末端融合ポイント(LAM2サブユニットに対する)として使用した。実施例1に記載されるように、得られた単鎖メガヌクレアーゼ、「LAM1desLAM2」(配列番号:51)をpET21aにクローン化し、E.coli中で発現させ、精製した。
【0153】
2.結果
LAM1desLAM2の切断活性を、実施例1記載のものと同じDNA基質および培養条件を使用してアッセイした。LAMepメガヌクレアーゼに関する結果とは対照的に、LAMldesLAM2は、主にハイブリッドLAM1/LAM2認識配列(配列番号:46および47)を切断することが見られた。切断の程度は、LAM1およびLAM2単量体をE.coli中で共発現することによって製造されるLAM1/LAM2ヘテロ二量体に匹敵している。これらの結果は、リンカ9のような設計された、構造化リンカは、切断活性を有意に妨げないことを示唆している。しかも、LAM1desLAM2は、構造的に安定であり、SA緩衝液中4℃で保存した場合、触媒活性を>3週間維持する。LAM1desLAM2は、パリンドローム性LAM1およびLAM2部位(配列番号:40および41および44および45)に対して最小限の活性を示し、本明細書で開示された方法により製造された機能的種は、主に単鎖ヘテロ二量体であることを示していることは重要である。
【実施例4】
【0154】
構造化リンカを用いて製造した単鎖I−MsoIメガヌクレアーゼ
【0155】
1.設計された、構造化リンカを用いる単鎖I−MsoIメガヌクレアーゼの設計
表8のリンカ30を使用して、一対のI−MsoIエンドヌクレアーゼサブユニット(DNA切断特異性に関して非修飾である)を融合し、単鎖ポリペプチドとした。Ile−166をN末端融合ポイントとして使用し、一方Leu−7をC末端融合ポイントとして使用した。得られた単鎖メガヌクレアーゼ、「MSOdesMSO」(配列番号:52)をC末端6xHis−タグを持つpET21aにクローン化し、精製を容易にした。次いで、実施例1に記載するように、該メガヌクレアーゼをE.coli中で発現させ、精製した。
【0156】
2.結果
実施例1で記載されるような培養条件下で、精製MSOdesMSOの、野生型I−MsoI認識配列(配列番号:53および配列番号:54および54)を内部に持つプラスミド基質を切断する能力をアッセイした。該酵素は、I−MsoIホモ二量体(この場合、これは、MSOdesMSOと同じ認識配列を認識および切断することが予測される)に匹敵する切断活性を有することが見出された。SDS−PAGE分析により、MSOdesMSOは、約40キロダルトンの見かけ上の分子量を有し、一対の共有結合されたI−MsoIサブユニットで構成されるものと一致し、タンパク質分解産物は現れなかったことが明らかになった。これらの結果は、本発明が、安定で、高活性のI−MsoIに由来する単鎖メガヌクレアーゼの製造に適していることを示している。
【表11】

【表12】

【表13】

【表14】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1モノ−LAGLIDADGメガヌクレアーゼから誘導され、第1認識半部位を有する第1LAGLIDADGサブユニットと、
第2モノ−LAGLIDADGメガヌクレアーゼまたはジ−LAGLIDADGメガヌクレアーゼから誘導され、第2認識半部位を有する第2LAGLIDADGサブユニットと
を含む組換え単鎖メガヌクレアーゼであって、
前記第1および第2LAGLIDADGサブユニットは、第1LAGLIDADGドメインがリンカに対しN末端となり、第2LAGLIDADGドメインが前記リンカに対しC末端となるように、ポリペプチドリンカにより共有結合され、
前記第1および第2LAGLIDADGサブユニットは一緒に機能して、前記第1認識半部位および前記第2認識半部位のハイブリッドである非パリンドロームDNA配列を、認識、切断することができる、組換え単鎖メガヌクレアーゼ。
【請求項2】
前記第1LAGLIDADGサブユニットは、I−CreI、I−MsoIおよびI−CeuIからなる群から選択されるモノ−LAGLIDADGメガヌクレアーゼから誘導され、
前記第2LAGLIDADGサブユニットは、(1)I−CreI、I−MsoIおよびI−CeuIからなる群から選択されるモノ−LAGLIDADGメガヌクレアーゼ、または(2)I−DmoI、I−SceIおよびI−AniIからなる群から選択されるジ−LAGLIDADGメガヌクレアーゼのいずれかから誘導される、
請求項1に記載の組換え単鎖メガヌクレアーゼ。
【請求項3】
前記第1LAGLIDADGサブユニットは、前記第2LAGLIDADGサブユニットとは異なる種から誘導される、請求項1に記載の組換え単鎖メガヌクレアーゼ。
【請求項4】
前記第1LAGLIDADGサブユニットは、配列番号1の野生型I−CreIメガヌクレアーゼの残基9〜151、配列番号2の野生型I−MsoIメガヌクレアーゼの残基11〜162、および配列番号3の野生型I−CeuIメガヌクレアーゼの残基55〜210からなる群から選択される第1LAGLIDADGドメインと、少なくとも85%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む、請求項1に記載の組換え単鎖メガヌクレアーゼ。
【請求項5】
前記第2LAGLIDADGサブユニットは、配列番号1の野生型I−CreIメガヌクレアーゼの残基9〜151、配列番号2の野生型I−MsoIメガヌクレアーゼの残基11〜162、配列番号3の野生型I−CeuIメガヌクレアーゼの残基55〜210、配列番号4の野生型I−DmoIの残基9〜96、配列番号4の野生型I−DmoIの残基105〜178、配列番号5の野生型I−SceIの残基32〜123、配列番号5の野生型I−SceIの残基134〜225、配列番号6の野生型I−AniIの残基4〜121、および配列番号6の野生型I−AniIの残基136〜254からなる群から選択される第2LAGLIDADGドメインと、少なくとも85%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む、請求項2に記載の組換え単鎖メガヌクレアーゼ。
【請求項6】
前記LAGLIDADGサブユニットはそれぞれ、配列番号1の野生型I−CreIメガヌクレアーゼの残基9〜151、配列番号2の野生型I−MsoIメガヌクレアーゼの残基11〜162、配列番号3の野生型I−CeuIメガヌクレアーゼの残基55〜210、配列番号4の野生型I−DmoIの残基9〜96、配列番号4の野生型I−DmoIの残基105〜178、配列番号5の野生型I−SceIの残基32〜123、配列番号5の野生型I−SceIの残基134〜225、配列番号6の野生型I−AniIの残基4〜121、および配列番号6の野生型I−AniIの残基136〜254からなる群から独立して選択されるLAGLIDADGドメインと、少なくとも85%の配列同一性を含み、
前記LAGLIDADGドメインの少なくとも1つは、表11、12、13および14のいずれかに開示された少なくとも1つのアミノ酸修飾を含む、
請求項2に記載の組換え単鎖メガヌクレアーゼ。
【請求項7】
少なくとも一つのLAGLIDADGドメインがI−CreIから誘導され、かつ少なくとも一つの修飾が表11、12、13および14のいずれかの表1から選択され、
少なくとも一つのLAGLIDADGドメインがI−MsoIから誘導され、かつ少なくとも一つの修飾が表12から選択され、
少なくとも一つのLAGLIDADGドメインがI−CeuIから誘導され、かつ少なくとも一つの修飾が表13から選択され、または
少なくとも一つのLAGLIDADGドメインがI−SceIから誘導され、かつ少なくとも一つの修飾が表14から選択される、
請求項6に記載の組換え単鎖メガヌクレアーゼ。
【請求項8】
前記LAGLIDADGサブユニットはそれぞれ、配列番号7〜30からなる群から選択される認識半部位を有する、請求項2に記載の組換え単鎖メガヌクレアーゼ。
【請求項9】
前記LAGLIDADGサブユニットの少なくとも一つは、配列番号7〜30からなる群から選択される認識半部位を有し、
他の前記LAGLIDADGサブユニットは、少なくとも一つの塩基対の修飾が、配列番号7〜30からなる群から選択される認識半部位と異なる認識半部位を有する、
請求項8に記載の組換え単鎖メガヌクレアーゼ。
【請求項10】
前記ポリペプチドリンカは、可撓性リンカである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組換え単鎖メガヌクレアーゼ。
【請求項11】
前記リンカは、15〜40個の残基を含む、請求項10に記載の組換え単鎖メガヌクレアーゼ。
【請求項12】
リンカは、25〜31個の残基を含む、請求項10に記載の組換え単鎖メガヌクレアーゼ。
【請求項13】
前記リンカの少なくとも50%は、極性非荷電残基を含む、請求項10に記載の組換え単鎖メガヌクレアーゼ。
【請求項14】
前記ポリペプチドリンカは、安定な二次構造を有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組換え単鎖メガヌクレアーゼ。
【請求項15】
前記安定な二次構造は、少なくとも二つのαへリックス構造を含む、請求項14に記載の組換え単鎖メガヌクレアーゼ。
【請求項16】
前記安定な二次構造は、N末端からC末端まで、第1のループ、第1のαへリックス、第1のターン、第2のαへリックスおよび第2のループを含む、請求項14に記載の組換え単鎖メガヌクレアーゼ。
【請求項17】
前記リンカは、23〜56個の残基を含む、請求項14に記載の組換え単鎖メガヌクレアーゼ。
【請求項18】
真核細胞の染色体中に挿入された関心のある外因性配列を含有する遺伝子組換え真核細胞を製造する方法であって、
(i)メガヌクレアーゼをエンコードする第1核酸配列と、
(ii)前記関心のある配列を含む第2核酸配列と
を含む一つ以上の核酸を用いて、真核細胞にトランスフェクトすることを含み、
前記メガヌクレアーゼにより前記染色体内に切断部位が作られ、該切断部位で前記関心のある配列が前記染色体に挿入され、
前記メガヌクレアーゼは、請求項1〜17のいずれか一項に記載の組換え単鎖メガヌクレアーゼである方法。
【請求項19】
前記第2核酸は、さらに、前記切断部位を挟む配列に相同性のある配列を含み、前記関心のある配列は前記切断部位で相同組換えによって挿入される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第2核酸は前記切断部位に対し実質的な相同性を欠き、前記関心のある配列は非相同的末端結合によって前記染色体に挿入される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
真核細胞の染色体中に挿入された関心のある外因性配列を含有する遺伝子組換え真核細胞を製造する方法であって、
メガヌクレアーゼタンパク質を真核細胞に導入することと、
前記関心のある配列を含有する核酸を用いて前記真核細胞にトランスフェクトすることとを含み、
前記メガヌクレアーゼにより前記染色体中に切断部位を作り、該切断部位で前記関心のある配列を前記染色体に挿入し、
前記メガヌクレアーゼは請求項1〜17のいずれか一項に記載の組換え単鎖メガヌクレアーゼである、
遺伝子組換え真核細胞を製造する方法。
【請求項22】
前記核酸は、さらに、前記切断部位を挟む配列に相同性のある配列を含み、前記関心のある配列を前記切断部位で相同組換えによって挿入する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記核酸は、前記切断部位に対し実質的な相同性を欠き、前記関心のある配列を非相同的末端結合によって前記染色体に挿入する、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
真核細胞の染色体中で標的配列を混乱させることによって遺伝子組換え真核細胞を製造する方法であって、
メガヌクレアーゼをエンコードする核酸を用いて真核細胞にトランスフェクトすることを含み、
前記メガヌクレアーゼにより前記染色体中に切断部位を作り、該切断部位で前記標的配列を非相同的末端結合によって混乱させ、
前記メガヌクレアーゼは請求項1〜17のいずれか一項に記載の組換え単鎖メガヌクレアーゼである方法。
【請求項25】
遺伝子組換え生物を製造する方法であって、
請求項18〜24のいずれか一項に記載の方法に従って遺伝子組換え真核細胞を製造することと、
前記該遺伝子組換え真核細胞を成長させ、前記遺伝子組換え生物を製造することと
を含む方法。
【請求項26】
前記真核細胞が、配偶子、接合子、胚盤胞細胞、胚性幹細胞、およびプロトプラスト細胞からなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
真核生物において遺伝子治療により疾患を治療する方法であって、
(i)メガヌクレアーゼをエンコードする第1核酸配列と、
(ii)関心のある配列を含有する第2核酸配列と
を含有する1種以上の核酸を用いて前記真核生物の少なくとも一つの細胞にトランスフェクトすることを含み、
前記メガヌクレアーゼにより前記染色体中に切断部位を作り、該切断部位で前記関心のある配列を前記染色体に挿入し、
前記メガヌクレアーゼは請求項1〜17のいずれか一項に記載の組換え単鎖メガヌクレアーゼであり、
前記関心のある配列の挿入によって前記疾患の前記遺伝子治療を提供する方法。
【請求項28】
前記第2核酸配列は、さらに、前記切断部位を挟む配列に相同性のある配列を含み、前記関心のある配列を前記切断部位で相同組換えによって挿入する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記第2核酸配列は、前記切断部位に対し実質的な相同性を欠き、前記関心のある配列を非相同的末端結合によって前記染色体に挿入する、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
真核生物において遺伝子治療によって疾患を治療する方法であって、
メガヌクレアーゼタンパク質を前記真核生物の少なくとも一つの細胞に導入することと、
関心のある配列を含有する核酸を用いて前記真核細胞にトランスフェクトすることとを含み、
前記メガヌクレアーゼにより前記染色体中に切断部位を作り、該切断部位で前記染色体に前記関心のある配列を挿入し、
前記メガヌクレアーゼは請求項1〜17のいずれか一項に記載の組換え単鎖メガヌクレアーゼであり、
前記関心のある配列の挿入によって前記疾患の前記遺伝子治療を提供する方法。
【請求項31】
前記核酸は、さらに、前記切断部位を挟む配列に相同性のある配列を含み、前記関心のある配列を前記切断部位で相同組換えによって挿入する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記核酸は前記切断部位に対し実質的な相同性を欠き、前記関心のある配列を非相同的末端結合によって前記染色体に挿入する、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
真核細胞の染色体中で標的配列を混乱させることによって、前記真核生物において遺伝子治療により疾患を治療する方法であって、
メガヌクレアーゼをエンコードする核酸を用いて前記真核生物の少なくとも一つの細胞にトランスフェクトすることを含み、
前記メガヌクレアーゼにより前記染色体中に切断部位を作り、該切断部位で非相同的末端結合により前記標的配列を混乱させ、
前記メガヌクレアーゼは請求項1〜17のいずれか一項に記載の組換え単鎖メガヌクレアーゼであり、
前記標的配列の混乱により前記疾患の前記遺伝子治療を提供する方法。
【請求項34】
ウィルス性病原体のゲノム中で標的配列を混乱させることによって、真核生物宿主における前記ウィルス性病原体感染を治療する方法であって、
メガヌクレアーゼをエンコードする核酸を用いて前記真核生物宿主の少なくとも一つの感染細胞にトランスフェクトすることを含み、
前記メガヌクレアーゼにより前記ウィルス性ゲノム中に切断部位を作り、該切断部位で非相同的末端結合により前記標的配列を混乱させ、
前記メガヌクレアーゼは請求項1〜17のいずれか一項に記載の組換え単鎖メガヌクレアーゼであり、
前記標的配列の混乱により前記感染の治療を提供する方法。
【請求項35】
ウィルス性病原体のゲノム中で標的配列を混乱させることによって、真核生物宿主における前記ウィルス性病原体感染を治療する方法であって、
メガヌクレアーゼをエンコードする第1核酸および第2核酸を用いて前記真核生物宿主の少なくとも一つの感染細胞にトランスフェクトすることを含み、
前記メガヌクレアーゼにより前記ウィルス性ゲノム中に切断部位を作り、該切断部位で前記ウィルス性ゲノムおよび前記第2核酸の相同組換えにより前記標的配列を混乱させ
前記メガヌクレアーゼは請求項1〜17のいずれか一項に記載の組換え単鎖メガヌクレアーゼであり、
前記第2核酸は前記切断部位を挟む配列に相同性のある配列を含み、
前記標的配列の混乱により前記感染の治療を提供する方法。
【請求項36】
原核細胞系病原体のゲノム中で標的配列を混乱させることによって、真核生物宿主における前記原核細胞系病原体の感染を治療する方法であって、
メガヌクレアーゼをエンコードする核酸を用いて、前記真核生物宿主に感染する前記原核細胞系病原体の少なくとも一つの細胞にトランスフェクトすることを含み、
前記メガヌクレアーゼにより前記原核細胞系ゲノム中に切断部位を作り、該切断部位で非相同的末端結合により前記標的配列を混乱させ、
前記メガヌクレアーゼは請求項1〜17のいずれか一項に記載の組換え単鎖メガヌクレアーゼであり、
前記標的配列の混乱により前記感染の治療を提供する方法。
【請求項37】
原核細胞系病原体のゲノム中で標的配列を混乱させることによって、真核生物宿主における前記原核細胞系病原体の感染を治療する方法であって、
メガヌクレアーゼをエンコードする第1核酸および第2核酸を用いて、前記真核生物宿主に感染する前記原核細胞系病原体の少なくとも一つの細胞にトランスフェクトすることを含み、
前記メガヌクレアーゼにより前記原核細胞系ゲノム中に切断部位を作り、該切断部位で前記原核細胞系ゲノムおよび前記第2核酸の相同組換えにより前記標的配列を混乱させ、
前記メガヌクレアーゼは請求項1〜17のいずれか一項に記載の組換え単鎖メガヌクレアーゼであり、
前記第2核酸は前記切断部位を挟む配列に相同性のある配列を含み、
前記標的配列の混乱により前記感染の治療を提供する方法。

【図1】
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【公表番号】特表2011−501971(P2011−501971A)
【公表日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−532293(P2010−532293)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【国際出願番号】PCT/US2008/082072
【国際公開番号】WO2009/059195
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(508117721)プレシジョン バイオサイエンシズ,インク. (5)
【Fターム(参考)】