説明

吊り上げ装置

【課題】タンクの浮き屋根のサポート孔に対する部材や装置等の被吊り上げ部材の取り外し、取り付け作業等を効率よく行うことができる吊り上げ装置を提供する。
【解決手段】台座部と、台座部に設けられ、台座部を移動させるための移動機構と、台座部に設けられた支柱と、支柱に設けられた滑車機構と、滑車機構に巻回され、被吊り上げ部材を吊り上げるための吊り上げ用ロープと、吊り上げ用ロープを牽引する防爆型の駆動手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吊り上げ装置、特に、タンクの浮き屋根のサポート孔に対する部材や装置等の被吊り上げ部材の取り外し、取り付け作業を行う吊り上げ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、石油備蓄用石油タンクのような大容量の石油タンクでは、時間の経過により石油タンクの底にスラッジが堆積する。そのため、適宜、石油タンク内のスラッジの堆積量や堆積箇所を検査することが行われる。そして、定期的に、石油タンク内を洗浄して、スラッジを除去することが行われる。
【0003】
大容量の石油タンクでは、屋根が貯蔵物である石油液面に浮いており、液面とともに上下する浮き屋根式タンク(フローティングルーフタンク)が採用されている。浮き屋根式タンクでは、石油タンクの開放点検時等の場合に、浮き屋根を、石油タンクの底板上方の例えば高さ2m位の位置に浮き屋根を保持する必要がある。そのため、浮き屋根に多数の浮き屋根サポート(ルーフサポート)を取り付け、石油タンク内に石油が無くなっても、浮き屋根サポートにより浮き屋根を底板上方に保持するようにしている。
【0004】
石油タンク内のスラッジの検査や、石油タンク内の洗浄作業では、浮き屋根から一部の浮き屋根サポート(ルーフサポート)を抜き取り、抜き取った浮き屋根サポート(ルーフサポート)の取り付け孔であるサポート孔を利用する。例えば、サポート孔から検査装置を挿入して石油タンク内のスラッジを検査したり、サポート孔に洗浄マシーンを取り付けて石油タンク内を洗浄したりする(特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平07−108241号公報
【特許文献2】特開平09−030596号公報
【特許文献3】特開平10−273197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、石油タンク内のスラッジの検査や、石油タンク内の洗浄作業のためには、ルーフサポートの抜き取り・取り付け作業や、検査装置や洗浄マシーンの取り付け・取り外し作業を効率よく行う必要がある。
【0007】
しかしながら、従来、これらの作業は、全て作業員の人力により行われており、作業員の大きな負担となると共に、検査や洗浄作業を効率よく実施する上での大きな障害となっていた。
【0008】
本発明の目的は、タンクの浮き屋根のサポート孔に対する部材や装置等の被吊り上げ部材の取り外し、取り付け作業等を効率よく行うことができる吊り上げ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様による吊り上げ装置は、台座部と、前記台座部に設けられ、前記台座部を移動させるための移動機構と、前記台座部に設けられた支柱と、前記支柱に設けられた滑車機構と、前記滑車機構に巻回され、被吊り上げ部材を吊り上げるための吊り上げ用ロープと、前記吊り上げ用ロープを牽引する防爆型の駆動手段とを有することを特徴とする。
【0010】
上述した吊り上げ装置において、前記駆動手段は、不活性なガスにより駆動するガス駆動手段であるようにしてもよい。
【0011】
上述した吊り上げ装置において、前記台座部に設けられた水準器と、前記台座部の水平状態を調節する調節機構とを更に有するようにしてもよい。
【0012】
上述した吊り上げ装置において、前記台座部に設けられ、吊り上げられる前記被吊り上げ部材が転倒しないように、前記台座部上方の空間を囲うガード部材を更に有するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
以上の通り、本発明によれば、台座部と、前記台座部に設けられ、前記台座部を移動させるための移動機構と、前記台座部に設けられた支柱と、前記支柱に設けられた滑車機構と、前記滑車機構に巻回され、被吊り上げ部材を吊り上げるための吊り上げ用ロープと、前記吊り上げ用ロープを牽引する防爆型の駆動手段とを設けたので、タンクの浮き屋根のサポート孔に対する部材や装置等の被吊り上げ部材の取り外し、取り付け作業を効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】石油タンクの原油洗浄工法の概要の説明図である。
【図2】本発明の一実施形態による吊り上げ装置の正面図である。
【図3】本発明の一実施形態による吊り上げ装置の側面図である。
【図4】本発明の一実施形態による吊り上げ装置の平面図である。
【図5】本発明の一実施形態による吊り上げ装置のシリンダの配管図である。
【図6】ルーフサポートを示す図である。
【図7】本発明の一実施形態による吊り上げ装置を用いたルーフサポート取り付け作業の説明図(その1)である。
【図8】本発明の一実施形態による吊り上げ装置を用いたルーフサポート取り付け作業の説明図(その2)である。
【図9】洗浄マシーンを示す図である。
【図10】本発明の一実施形態による吊り上げ装置を用いた洗浄マシーンの取り付け作業の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(石油タンクの洗浄工法)
本発明による吊り上げ装置の説明の前に、石油備蓄用石油タンクのような大型の石油タンクを洗浄する工法の一例として原油洗浄工法(COW:Crude Oil Washing)の概要について説明する。本発明による吊り上げ装置は、石油タンクの洗浄工法において用いられ、洗浄作業の効率化に寄与する。
【0016】
図1は、石油タンクの原油洗浄工法の概要の説明図である。
【0017】
石油タンク10は、長期間に亘って石油を備蓄していると、その底にスラッジ12が堆積する等の汚染が進行する。このため、定期的に、石油タンク10内を洗浄する必要がある。
【0018】
石油タンク10を洗浄する際には、一旦、石油タンク10から備蓄している石油を抜き取る。石油タンク10から石油が抜かれると、図1に示すように、石油に浮遊していた浮き屋根14が下降するが、浮き屋根14はルーフサポート16により石油タンク10の底面上方で保持される。
【0019】
ルーフサポート16は、浮き屋根14面内でほぼ等間隔で多数取り付けられ、浮き屋根14が石油タンク10の底板に接触するのを防止している。石油が全て抜かれた状態でも、浮き屋根14は、図1に示すように、ルーフサポート16により、石油タンク10の底板から所定距離上方で保持される。
【0020】
石油タンク10を洗浄するためには、多数のルーフサポート16のうちの一部のルーフサポート16を浮き屋根14から一旦取り外し、その取り外した浮き屋根の孔(サポート孔)18に洗浄マシーン20を取り付ける。
【0021】
原油洗浄工法(COW:Crude Oil Washing)では、洗浄マシーン20から原油を噴射して石油タンク10内を洗浄する。回収タンク(図示せず)の払出しライン22から、電動ポンプ24により原油を払出し、石油タンク10の洗浄用配管26に供給する。洗浄用配管26から原油が洗浄マシーン20に供給され、洗浄マシーン20から原油が石油タンク10内に噴射される。洗浄マシーン20から噴射され、石油タンク10の底部に溜まった原油は、電動ポンプ28により吸引され、回収タンク(図示せず)のスロップライン30に排出される。
【0022】
原油洗浄作業における原油引火等による危険を防止するため、窒素タンクローリー32から窒素気化器34を介して生成した窒素を常に供給し、石油タンク10内を窒素で充満させておく。また、電動ポンプ24、28は防爆構造のものを用いる。
【0023】
このように、石油タンクの原油洗浄工法では、原油洗浄前に、ルーフサポート16を浮き屋根14のサポート孔から抜き取る作業と、洗浄マシーン20を浮き屋根14のサポート孔に取り付ける作業とを行い、原油洗浄後に、洗浄マシーン20を浮き屋根14のサポート孔から取り外す作業と、ルーフサポート16を浮き屋根14のサポート孔に取り付ける作業を行う。
【0024】
これらの作業におけるルーフサポート16や洗浄マシーン20の吊り上げを本発明による吊り上げ装置を用いて行う。
【0025】
(吊り上げ装置)
次に、本発明の一実施形態による吊り上げ装置について図面を用いて説明する。図2は本発明の一実施形態による吊り上げ装置の正面図であり、図3は本発明の一実施形態による吊り上げ装置の側面図であり、図4は本発明の一実施形態による吊り上げ装置の平面図であり、図5は本発明の一実施形態による吊り上げ装置のシリンダの配管図である。
【0026】
本実施形態による吊り上げ装置50の下部には、H字形状の台座フレーム52が設けられている。H字形状の台座フレーム52は、並列している2本の部材52a、52bの中央を2本の梁部材52c、52dにより結合している(図4参照)。
【0027】
台座フレーム52の四隅、すなわち、2本の部材52a、52bの両端にはそれぞれストッパー付きの自在キャスター54が取り付けられ、台座フレーム52を移動させるための移動機構として機能している。ストッパー付きの自在キャスター54を設けているので、吊り上げ装置50をスムーズに移動し、所望の位置で停止させ、動かないようにすることができる(図2、図3参照)。
【0028】
自在キャスター54は、台座フレーム52の上方に突出した取り付けボルト54aに設けられたジャッキ用ナット54bを回転することにより、台座フレーム52に対する上下方向の位置調整を行う(図2、図3参照)。
【0029】
台座フレーム52の四隅に設けられた4つの自在キャスター54の上下方向の位置を調整することにより、台座フレーム52の水平状態を調整する。例えば、台座フレーム52に水準器(図示せず)を載置し、水準器の表示を見ながら、各自在キャスター54のジャッキ用ナット54bを適宜左回転又は右回転することにより、台座フレーム52が水平になるように調整する。なお、水準器(図示せず)を台座フレーム52の適当な位置に予め固定しておいてもよい(図2、図3参照)。
【0030】
台座フレーム52の中央、すなわち、台座フレーム52の2本の梁部材52c、52dのほぼ中央には、吊り上げ用支柱56が設けられている。吊り上げ用支柱56は、吊り上げる対象物の長さの2倍程度の高さである。吊り上げ用支柱56の上端には2個の定滑車58、60が設けられ、下端には1個の定滑車62が設けられている。吊り上げ支柱56の中央上部には、転倒防止ロープ(図示せず)を掛けるための転倒防止ロープ用金具64が設けられ、中央下部には、荷揚げ用金具66が設けられている(図2、図3参照)。
【0031】
台座フレーム52の正面奧側の中央、すなわち、台座フレーム52の梁部材52cのほぼ中央には、2個のガスリフト68、70が設けられている(図4参照)。ガスリフト68、70は、多段シリンダ構造をしている。2個のガスリフト68、70の上端は梁部材72により結合されていて、梁部材72の中央上部には動滑車74が設けられている。2個のガスリフト68、70の下端には、吊り上げ用ロープの端部を固定するための吊り上げロープ用金具76が設けられている(図3参照)。
【0032】
台座フレーム52の正面手前側の左右、すなわち、台座フレーム52の梁部材52dの左右端部には、炭酸ガス等のガスボンベを固定して設置するためのガスボンベ設置スペース78、80が設けられている(図4参照)。
【0033】
図5に示すように、ガスボンベ(図示せず)からのガス供給パイプ82は、圧力計83、バルブ84を介してガスリフト68、70に接続されている。ガス供給バルブ84にはガス抜きのためのボールバルブ86が設けられている。ガスリフト68、70にはガス排出パイプ88が接続されている。ガス排出パイプ88には圧抜きのためのバルブ90が設けられている。
【0034】
ガス供給パイプ82のバルブ84を開くと、ガスボンベ(図示せず)からガスリフト68、70にガスが供給され、そのガス圧により多段シリンダが伸び、梁部材72の動滑車74を上方に持ち上げる。
【0035】
ガス排出パイプ88のバルブ90を開くと、ガスリフト68、70から炭酸ガス等のガスが排出され、ガス圧の低下により多段シリンダが縮み、梁部材72の動滑車74が下方に移動する。
【0036】
原油洗浄作業における原油引火等による危険を防止するため、ガスリフト68、70の駆動するためのガスとしては不活性のガスを使用する。例えば、炭酸ガス、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス等である。本実施形態では安価な炭酸ガスを用いる。
【0037】
台座フレーム52の2本の部材52a、52bの正面手前側には、コの字形状の直立フレーム92が設けられている。コの字形状の直立フレーム92は、2本の部材52a、52bに固着された柱部材92a、92bの上端部を梁部材92cにより結合している。梁部材92cの中央には荷揚げ用金具94が設けられている(図3参照)。
【0038】
直立フレーム92の上部には、吊り上げ用支柱56を保持するための保持用フレーム96が設けられている。保持用フレーム96は、直立フレーム92の柱部材92a、92bから吊り上げ用支柱56方向に水平に伸び、吊り上げ用支柱56を保持する(図3参照)。
【0039】
直立フレーム92の下部には、吊り上げ用装置50の内部をガードするためのガード手摺98が設けられている。ガード手摺98は、直立フレーム92の柱部材92a、92bから吊り上げ用支柱56方向に水平に伸び、吊り上げ装置50の外周を取り囲んでいる(図3、図4参照)。ガード手摺98は、立っている作業員の手とほぼ同じ高さとなる位置に設けられている。吊り上げ用装置50を移動させるときには、作業員は、ガード手摺98を持って行う。
【0040】
吊り上げ用ワイヤ100は、図3に示すように、その一端をガスリフト68、70下端の吊り上げロープ用金具76に固定され、ガスリフト68、70上端の動滑車74、吊り上げ用支柱56下端の定滑車62、吊り上げ支柱56上端の定滑車58、60の順番に巻回される。吊り上げ用ワイヤ100の他端に吊り上げる部材や装置を取り付ける。
【0041】
保持用フレーム96とガード手摺98は、台座フレーム52上方の空間を囲い、吊り上げられる部材や装置が何らかの原因により傾いたりしても、作業員に当たらないようなガード部材として機能する。吊り上げ作業中は、吊り上げられる部材や装置の下端を、保持用フレーム96とガード手摺98で囲われた空間内に位置するようにしておけば、万が一、吊り上げられる部材や装置が大きく傾いたり、吊り上げ装置50から外れたりしても、保持用フレーム96とガード手摺98によりガードされ、周囲の作業員に当たることを防止する。
【0042】
(石油タンク洗浄作業)
石油タンクを洗浄するためには、多数のルーフサポートのうちの一部の所定のルーフサポートを浮き屋根から一旦取り外し、その取り外した浮き屋根の孔(サポート孔)に洗浄マシーンを取り付ける。洗浄マシーンを用いて石油タンクを洗浄した後、サポート孔から洗浄マシーンを取り外し、取り外したルーフサポートをサポート孔に取り付ける。これにより石油タンク洗浄作業が完了する。
【0043】
この石油タンク洗浄作業において、本実施形態による吊り上げ装置は、浮き屋根からルーフサポートを抜き取るルーフサポート抜き取り作業、サポート孔に洗浄マシーンを取り付ける洗浄マシーン取り付け作業、サポート孔から洗浄マシーンを取り外す洗浄マシーン取り外し作業、サポート孔にルーフサポートを取り付けるルーフサポート取り付け作業において用いられる。
【0044】
(ルーフサポート抜き取り作業)
本実施形態による吊り上げ装置を用いたルーフサポート抜き取り作業について図面を用いて説明する。図6はルーフサポートを示す図であり、図7及び図8は吊り上げ装置を用いたルーフサポート取り付け作業の説明図である。
【0045】
ルーフサポート抜き取り作業において抜き取るルーフサポートについて図6を用いて説明する。ルーフサポート110は、例えば、長さ約3m、直径約10cmの円柱形状をしている。ルーフサポート110の上部には、サポート孔のガイドに固定するためのピンを挿入するピン孔110aが形成されている。ルーフサポート110の上端には、吊り上げ用ワイヤ100の端部を掛けるためのフック110bが設けられている。フック110bには、ルーフサポート110の直径よりも大きなつば部110cが設けられている。
【0046】
まず、図7に示すように、浮き屋根112上において、吊り上げ装置50を移動させ、抜き取るべきルーフサポート110が取り付けられているサポート孔114がある場所に吊り上げ装置50をセットする。
【0047】
作業員が吊り上げ装置50をそのサポート孔114がある位置に移動させる。吊り上げ装置50から自然状態で垂らした吊り上げ用ワイヤ100の端部が、そのサポート孔114に取り付けられたルーフサポート110のフック110bの位置に正確に合致するように調整する。
【0048】
このとき、台座フレーム52に水準器(図示せず)を載置し、水準器の表示を見ながら、各自在キャスター54のジャッキ用ナット54bを適宜左回転又は右回転することにより、台座フレーム52が水平になるように調整する。
【0049】
吊り上げ装置50の正確な位置調整が完了すると、自在キャスター54のストッパーを有効にして、作業中に吊り上げ装置50が移動しないようにする。
【0050】
次に、図7に示すように、吊り上げ用ワイヤ100の端部を、ルーフサポート110のフック110bに掛ける。そして、ルーフサポート110のピン孔110aからピン(図示せず)を抜いておく。
【0051】
次に、ガス供給パイプ82のバルブ84を開き、ガスボンベ(図示せず)からガスリフト68、70にガスを供給する。ガス圧により多段シリンダが伸び、梁部材72の動滑車74を上方に持ち上げ、図8に示すように、サポート孔114からルーフサポート110が引き抜かれ、サポート孔114にガイド116が残る。
【0052】
次に、ガス排出パイプ88のバルブ90を開き、ガスリフト68、70からガスを排出する。これにより多段シリンダが縮み、梁部材72の動滑車74が下方に移動して、吊り上げられたルーフサポート110を降下させる。
【0053】
作業員は、降下させたルーフサポート110を持ち、サポート孔114近傍の浮き屋根112上に仮置きする。
【0054】
これによりルーフサポート抜き取り作業が完了する。
【0055】
(洗浄マシーン取り付け作業)
本実施形態による吊り上げ装置を用いた洗浄マシーン取り付け作業について図面を用いて説明する。図9は洗浄マシーンを示す図であり、図10は吊り上げ装置を用いた洗浄マシーン取り付け作業の説明図である。
【0056】
洗浄マシーン取り付け作業において取り付ける洗浄マシーンについて図9を用いて説明する。洗浄マシーン120は、例えば、長さ約3m、直径約8cmのほぼ円柱形状をしている。洗浄マシーン120の先端にはノズル122が設けられている。洗浄マシーン120の中央部には取り付け金具124が設けられている。洗浄マシーン120の上部には接続フランジ126が設けられている。洗浄マシーン120の上部には、洗浄マシーン120を駆動制御するためのエアモータ128とギヤケース130とコントロールボックス132が設けられている。
【0057】
吊り上げ装置50はサポート孔に対して既に正確に位置調整されているので、その設置位置のままで洗浄マシーン取り付け作業を行う。
【0058】
まず、ルーフサポート110の取り外し時に降下している吊り上げ用ワイヤ100の端部を、洗浄マシーン120のフック(図示せず)に掛ける。
【0059】
次に、ガス供給パイプ82のバルブ84を開き、ガスボンベ(図示せず)からガスリフト68、70にガスを供給する。ガス圧により多段シリンダが伸び、梁部材72の動滑車74を上方に持ち上げ、図10に示すように、洗浄マシーン120が上方に引き上げられる。
【0060】
次に、ガス排出パイプ88のバルブ90を開き、ガスリフト68、70からガスを排出し、多段シリンダが縮み、梁部材72の動滑車74が下方に移動して、吊り上げられた洗浄マシーン120を降下させる。
【0061】
作業員は、降下した洗浄マシーン120を持ち、そのノズル122がサポート孔144挿入されるようにする。洗浄マシーン120を更に降下させ、洗浄マシーン120の取り付け金具をガイド116に取り付け、洗浄マシーン120を固定する。
【0062】
次に、洗浄マシーン120のフック(図示せず)から吊り上げ用ワイヤ100を取り外す。
【0063】
これにより洗浄マシーン取り付け作業が完了する。
【0064】
(洗浄マシーンによる洗浄作業)
このようにして、多数のルーフサポートのうちの一部である所定数のルーフサポートを浮き屋根から取り外し、その所定数のサポート孔への洗浄マシーンの取り付け作業が完了すると、これら所定数の洗浄マシーンを用いて石油タンクを洗浄する。
【0065】
(洗浄マシーン取り外し作業)
石油タンクの洗浄が完了すると、サポート孔に取り付けられた洗浄マシーンを取り外す洗浄マシーン取り外し作業を行う。
【0066】
まず、浮き屋根112上において、吊り上げ装置50を移動させ、洗浄マシーン120が取り付けられているサポート孔114がある場所に吊り上げ装置50をセットする。必要に応じて、水準器による吊り上げ装置50の水平調整を行う。
【0067】
吊り上げ装置50の位置調整が完了すると、自在キャスター54のストッパーを有効にして、作業中に吊り上げ装置50が移動しないようにする。
【0068】
次に、吊り上げ用ワイヤ100の端部を、洗浄マシーン120のフック(図示せず)に掛ける。
【0069】
次に、ガス供給パイプ82のバルブ84を開き、ガスボンベ(図示せず)からガスリフト68、70にガスが供給する。ガス圧により多段シリンダが伸び、梁部材72の動滑車74を上方に持ち上げ、図8に示すように、サポート孔114のガイド116から洗浄マシーン120が引き上げられる。
【0070】
次に、ガス排出パイプ88のバルブ90を開き、ガスリフト68、70からガスを排出し、多段シリンダが縮み、梁部材72の動滑車74が下方に移動して、吊り上げられた洗浄マシーン120を降下させる。
【0071】
作業員は、降下させた洗浄マシーン120を持ち、サポート孔114近傍の浮き屋根112上に仮置きする。
【0072】
これにより洗浄マシーン取り外し作業が完了する。
【0073】
(ルーフサポート取り付け作業)
洗浄マシーン取り外し作業が完了すると、引き続き、ルーフサポート取り付け作業を行う。
【0074】
まず、洗浄マシーン120の取り外し時に降下している吊り上げ用ワイヤ100の端部を、サポート孔114近傍に仮置きされていたルーフサポート110のフック110bに掛ける。
【0075】
次に、ガス供給パイプ82のバルブ84を開き、ガスボンベ(図示せず)からガスリフト68、70にガスを供給する。ガス圧により多段シリンダが伸び、梁部材72の動滑車74を上方に持ち上げ、図8に示すように、ルーフサポート110が上方に引き上げられる。
【0076】
次に、ガス排出パイプ88のバルブ90を開き、ガスリフト68、70からガスを排出し、多段シリンダが縮み、梁部材72の動滑車74が下方に移動して、吊り上げられたルーフサポート110を降下させる。
【0077】
作業員は、降下したルーフサポート110を持ち、その先端がサポート孔144に挿入されるようにする。ルーフサポート110を更に降下させて、ガイド116にセットする。そして、ルーフサポート110のピン孔110aにピン(図示せず)を挿入する。
【0078】
なお、石油タンクの洗浄作業等の影響により浮き屋根112の高さが微妙に変化して、ピン(図示せず)がピン孔110aに挿入できない場合がある。そのような場合には、浮き屋根112のその部分を数mm〜1cm程度ジャッキアップして高さ調節して、ピン孔110aにピン(図示せず)を挿入するようにする。
【0079】
次に、ルーフサポート110のフック110cから吊り上げ用ワイヤ100を取り外す。
【0080】
これによりルーフサポート取り付け作業が完了する。このようにして、全てのルーフサポートの取り付け作業が完了すると、一連の石油タンク洗浄作業が完了する。
【0081】
(変形実施形態)
本発明は上記実施形態に限らず種々の変形が可能である。
【0082】
例えば、上記実施形態では、駆動源としてガスにより伸縮する多段シリンダを有するガスリフトを用いたが、他の駆動源を用いてもよい。例えば、防爆構造の電動機(防爆型モータ)を用いてもよい。また、作業員の人力により巻き取り駆動する防爆構造のワイヤ巻き取り装置を用いてもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、吊り上げ装置を移動させる移動機構として自在キャスターを用いたが、他の構成の移動機構を用いてもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、吊り上げ用ロープを牽引するために3個の定滑車と1個の動滑車を有する滑車機構を用いたが、他の構成の滑車機構を用いてもよい。
【0085】
また、上記実施形態では、保持用フレームとガード手摺によるガード部材を用いたが、他の構成による台座部上方の空間を囲うガード部材としてもよい。
【0086】
また、上記実施形態では、石油タンクの洗浄作業における部材や装置の取り付け、取り外し作業に用いたが、装置や部材を吊り上げる作業であれば、他のいかなる作業においても使用することができる。
【符号の説明】
【0087】
10…石油タンク
12…スラッジ
14…浮き屋根
16…ルーフサポート
18…サポート孔
20…洗浄マシーン
22…払出しライン
24…電動ポンプ
26…洗浄用配管
28…電動ポンプ
30…スロップライン
32…窒素タンクローリー
34…窒素気化器
50…吊り上げ装置
52…台座フレーム
52a、52b…部材
52c、52d…梁部材
54…自在キャスター
54a…取り付けボルト
54b…ジャッキ用ナット
56…吊り上げ用支柱
58、60…定滑車
62…定滑車
64…転倒防止ロープ用金具
66…荷揚げ用金具
68、70…ガスリフト
72…梁部材
74…動滑車
76…吊り上げロープ用金具
78、80…ガスボンベ設置スペース
82…ガス供給パイプ
83…圧力計
84…バルブ
86…ボールバルブ
88…ガス排出パイプ
90…バルブ
92…直立フレーム
92a、92b…柱部材
92c…梁部材
94…荷揚げ用金具
96…保持用フレーム
98…ガード手摺
100…吊り上げ用ワイヤ
110…ルーフサポート
110a…ピン孔
110b…フック
110c…つば部
112…浮き屋根
114…サポート孔
116…ガイド
120…洗浄マシーン
122…ノズル
124…取り付け金具
126…接続フランジ
128…エアモータ
130…ギヤケース
132…コントロールボックス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
台座部と、
前記台座部に設けられ、前記台座部を移動させるための移動機構と、
前記台座部に設けられた支柱と、
前記支柱に設けられた滑車機構と、
前記滑車機構に巻回され、被吊り上げ部材を吊り上げるための吊り上げ用ロープと、
前記吊り上げ用ロープを牽引する防爆型の駆動手段と
を有することを特徴とする吊り上げ装置。
【請求項2】
請求項1記載の吊り上げ装置において、
前記駆動手段は、不活性なガスにより駆動するガス駆動手段である
ことを特徴とする吊り上げ装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の吊り上げ装置において、
前記台座部に設けられた水準器と、
前記台座部の水平状態を調節する調節機構と
を更に有することを特徴とする吊り上げ装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の吊り上げ装置において、
前記台座部に設けられ、吊り上げられる前記被吊り上げ部材が転倒しないように、前記台座部上方の空間を囲うガード部材
を更に有することを特徴とする吊り上げ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−35917(P2012−35917A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174384(P2010−174384)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【出願人】(000226518)日陽エンジニアリング株式会社 (19)
【Fターム(参考)】