説明

吊り下げ式揮散剤用容器

【課題】洋服ダンス等のバーに衣類等とともにバーに吊り下げられた状態でも容器内に収容された揮散剤の残量を容易に確認できる吊り下げ式揮散剤用容器を提供する。
【解決手段】吊り下げ式揮散剤用容器1は、相互に合わさって内側に揮散剤Sを保持する収納空間を形成する一対の本体半部9,10からなる容器本体3と、該容器本体3を吊り下げ保持するフック7と、インジケータIを収容するとともに該インジケータIを外部に露呈させる窓部30が形成されたインジケータケース7とを備える。インジケータケース7は、一対の本体半部9,10にそれぞれ一体に設けられ、該本体半部9,10を互いに合わせた際に相互に合わさってインジケータI用の収納部を形成する一対のケース半部27,28からなり、インジケータケース7を、基端部5aの後方側でかつ窓部30が後方側を指向するようフック5の延在する面に対して直交して配置してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮散剤を収容し、洋服ダンスやクローゼット等のバーに吊り下げて使用する吊り下げ式揮散剤用容器に関するものであり、とくに、揮散剤の残量の目安となるインジケータが設けられたものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、衣類用の防虫剤容器等の吊り下げ式の揮散剤用容器としては、例えば特許文献1に提案されており、このものは、容器内側に収容する揮散剤として、防虫効果のある薬剤を含浸させたシート(防虫シート)を用いるとともに、上部に一体連結したフックにより、洋服ダンスやクローゼット等のバーにハンガーに掛けられた衣類等とともに直接吊り下げられるようにしたものであって、このような容器によれば、揮散剤の収容スペースを狭めて容器を偏平状にできるので、衣類等の収納スペースを犠牲にすることがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−333943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような揮散剤用容器にあっては、通常、シートに含浸された薬剤の残量の目安とすべくインジケータが設けられるところ、上述した従来の容器にあっては、揮散した薬剤を外部に放出させるための窓孔を形成する、容器の側壁板に、該窓孔と併せてインジケータ窓部も形成するものであるため、容器を洋服ダンス等のバーに吊り下げた状態では隣り合う衣類等に邪魔されてインジケータを直接視認することができず、容器をバーから取り外したり、吊り下げられた衣類を横にずらしたりする必要があって、インジケータの確認作業が煩雑であった。
【0005】
それゆえ、本発明は、洋服ダンスやクローゼット等のバーに衣類等とともに吊り下げられた状態でも容器内に収容された揮散剤の残量を容易に確認できる吊り下げ式揮散剤用容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の吊り下げ式揮散剤用容器は、相互に合わさって内側に揮散剤を保持する収納空間を形成する一対の本体半部からなる容器本体と、該容器本体を吊り下げ保持するフックと、前記揮散剤の残量の目安を示すインジケータを収容するとともに該インジケータを外部に露呈させる窓部が形成されたインジケータケースと、を備える吊り下げ式揮散剤用容器であって、前記インジケータケースは、前記一対の本体半部にそれぞれ一体に設けられ、前記一対の本体半部を互いに合わせた際に相互に合わさって前記インジケータのための収納部を形成する一対のケース半部からなり、前記フックの基端部から先端部に向かう方向を前方側としたとき、前記インジケータケースを前記基端部の後方側に配置するとともに、前記窓部が後方側を指向するよう前記フックの延在する面に対して直交して配置してなることを特徴とするものである。
【0007】
なお、本発明の吊り下げ式揮散剤用容器にあっては、前記インジケータケースの上部に前記インジケータの差込み口を設けるとともに、該インジケータケースの内壁に前記差込み口から前記収納部内に差し込まれたインジケータに係止する押え爪を設けることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の揮散剤用容器によれば、フックの基端部の後方側でかつ窓部が後方側を指向するようインジケータケースを設置したことから、衣類のかさばりに拘りなくインジケータを容易に視認することができる。また、一対の本体半部を合わせるだけで、揮散剤の収容空間とインジケータ用の収納部を同時に形成することができて組み立て、セット作業も容易である。
【0009】
また、本発明の揮散剤用容器において、インジケータケースの上部にインジケータの差込み口を設けるとともに、該インジケータケースの内壁に差込み口から収納部内に差し込まれたインジケータに係止する押え爪を設けた場合には、インジケータを、インジケータケースの組み立て後にセットすることができるとともに、該インジケータケースからインジケータが脱落するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1実施形態の吊り下げ式揮散剤用容器の側面図である。
【図2】図1中のA−A線に沿う断面図である。
【図3】図1の吊り下げ式揮散剤用容器の正面図である。
【図4】図1の吊り下げ式揮散剤用容器の平面図である。
【図5】図1の吊り下げ式揮散剤用容器の分解図である。
【図6】図5の吊り下げ式揮散剤用容器を上から見た平面図である。
【図7】本発明の第2実施形態の吊り下げ式揮散剤用容器を組み立て前の状態で示した図である。
【図8】図7中のB−B線に沿う断面図である。
【図9】(a)は図7の吊り下げ式揮散剤用容器を組み立てた状態で示す側面図であり、(b)はその平面図であり、(c)はその断面図(C−C断面)であり、(d)はその正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
図1〜4に示すように、本実施形態の吊り下げ式揮散剤用容器(以下、単に「揮散剤用容器1」という。)1は、防虫成分や芳香成分、消臭成分等を有する薬剤が含浸された矩形シート状(板状)の揮発剤Sを内部に収納、保持する容器本体3と、この容器本体3を洋服ダンスやクローゼット等のバー(図示省略)に吊り下げるフック5と、上記揮散剤Sに含浸された薬剤の残量の目安を示す小片(シート状)のインジケータIを収容、保持するインジケータケース7と、を備えて構成される。なお、本明細書において、「上方」または「上」とは揮散剤用容器1を吊り下げた際に容器本体3からみてフック5の位置する方向を指し、「下方」または「下」とは、該上方とは反対の方向を指し、「前方」または「前」とは、フック5の基端部5aから先端部5bに向かう方向を指し、「後方」または「後」とは、該前方とは反対の方向を指すものとする。
【0013】
以下、これらの各構成部材の詳細を説明するに、先ず、容器本体3は、図5及び6に示すように、相互に合わさって内側に上記揮散剤Sを保持する収納空間を形成する一対の本体半部9,10からなり、各本体半部9,10は、揮散剤Sから揮散した薬剤を外部に放出するための複数の揮散孔12を形成する略矩形で平坦な側壁部15,16と、該側壁部15,16の周縁から立ち上がる周壁部18,19であって上記一対の本体半部9,10が合わさった際に先端が他方の本体半部9,10の周壁部18,19の先端と突き合わさる周壁部18,19とを有する。
【0014】
また、各側壁部15,16の内面には、対向する側壁部15,16に向けて突出するピン21であって、対向するピン21との間に上記揮散剤Sを狭持するピン21が複数(この例ではそれぞれ6つ)設けられている。また、一方の本体半部9の側壁部15の、上記揮散孔12の周りには、他方の本体半部10の側壁部16に向けて突出する係止爪23が複数(この例では4つ)設けられるとともに、該他方の本体半部10の側壁部16には、これらの係止爪23に対応する位置に該係止爪23の先端を挿通させる孔25が設けられている。これにより、一対の本体半部9,10を合わせると、つまり一対の本体半部9,10の周壁部18,19の先端を互いに突き合わせると、係止爪23が孔25に入り込んで該孔25の周囲に係止され、容器本体3を閉姿勢に維持することができる。なお、この例では、容器本体3の材質はPET(ポリエチレンテレフタレート)としているがこれに限定されず、また、一対の本体半部9,10の係止構造やピン21の位置、個数等も図示例に限定されない。
【0015】
次に、フック5は、上記側壁部15,16の延在面と平行な面で延び、弧状を呈するとともに容器本体3の上部に配置されており、この例では、一対の本体半部9,10のうちの一方の本体半部9の周壁部18の、上側の長辺部分18aの中央に本体半部9と一体に形成されている。なお、図示しないが、フック5は、本体半部9,10と同様に、本体半部9,10を合わせた際に重なって一つのフック5を形成する一対のフック半部より構成するようにしてもよく、この場合、各フック半部は、一対の本体半部9,10にそれぞれ一体に形成することができる。
【0016】
そして、インジケータケース7は、上記一対の本体半部9,10にそれぞれ一体に設けられ一対の本体半部9,10を互いに合わせた際に相互に合わさってインジケータIのための収納部を形成する一対のケース半部27,28からなる。インジケータケース7は、フック5の基端部5aの後方側に配置されるとともに、収納部に収められたインジケータIを外部に露呈される窓部30が後方側を指向するようフック5の延在する面に対して直交して配置されている。
【0017】
より詳細には、各ケース半部27,28は、本体半部9,10の周壁部18,19の、上側の長辺部分18a,19aからフック5の延在する面に対して直交する向きで各々立ち上がるとともにその相互間に隙間を形成する前壁半部32,33及び後壁半部35,36と、これらの前壁半部32,33及び後壁半部35,36をつなぐ側壁38,39とからなり、一対の本体半部9,10を合わせた際に前壁半部32,33の側縁同士が連結されるとともに後壁半部35,36の側縁同士が連結されて内側に上記収納部が形成されることとなる。また、各前壁半部32,33には、上記窓部30を形成する切り欠き32a,33aが形成されている。また、この例では、フック5が一方の本体半部9,10にのみ形成されていることから、ケース半部27,28の一方のみがフック5に一体とされている。
【0018】
また、図3に示すように、インジケータケース7の上部には、インジケータIを収納部に差し込むための差込み口41が設けられるとともに、インジケータケース7の内壁(側壁38,39の内面)にはそれぞれ、差込み口41から収納部内に差し込まれたインジケータIの側縁に係止する押え爪43,44が一体に形成されている。また、各側壁38,39の、押え爪43,44の真下位置には開口46,47が形成されており、これにより、インジケータIを差し込んで押え爪43,44の先端がインジケータIの側縁に圧接した際に押え爪43,44を十分に撓ませてインジケータIを確実に係止、保持することが可能となる。
【0019】
次に、上記のように構成される揮散剤用容器1の組み立て、使用方法について説明する。先ず、図2に示すように、一対の本体半部9,10のピン21の相互間にシート状の揮散剤Sを挟み込むようにして一対の本体半部9,10を合わせ、係止爪23を孔25の周りに係止させる。これにより、容器本体3を閉姿勢とし、内部に揮散剤Sを保持することができる。続いて、一対の本体半部9,10を合わせるのと同時に一対のケース半部27,28が合わさって形成されたインジケータケース7の差込み口41からインジケータIを差し込むことで、図3に示すように、押え爪43,44がインジケータIの側縁に係止してインジケータIが収納部内にセット、保持される。なお、インジケータIへの薬剤の含浸は、インジケータケース7内に収納する前に予め施しておいてもよいが、インジケータIをインジケータケース7内に差し込んだ後に、インジケータケース7の窓部30を通じて薬剤を滴下するようにしてもよい。このようにして使用準備が整った後には、揮散剤用容器1のフック5を洋服ダンスやクローゼットのバーに吊り下げることで容器本体3内の揮散剤Sの薬剤を揮散孔12を通して揮散させることができる。そして、揮散剤Sに含浸された薬剤の残量を確認する際には、フック5の基端部5aの後方側(確認者からみて手前側)に位置し、確認者の方を向いて開口する窓部30を通してインジケータIを視認することができる。
【0020】
したがって、この揮散剤用容器1によれば、フック5の基端部5aの後方側でかつ窓部30が後方側を指向するようインジケータケース7を設置したことから、衣類のかさばりに拘りなくインジケータIを容易に視認することができる。また、一対の本体半部9,10を合わせて相互に嵌合させるだけで、揮散剤Sの収容空間とインジケータI用の収納部を同時に形成することができて組み立て、セット作業も容易である。
【0021】
次いで、本発明の他の実施形態の揮散剤用容器1を図7〜9を参照して説明する。なお、前述の実施形態の揮散剤用容器1と同様の要素には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0022】
この図に示す実施形態の揮散剤用容器1は、容器本体3を構成する一対の本体半部9,10をその下部にて一以上(ここでは2つ)のヒンジ51,52にて連結している点で前述の実施形態の揮散剤用容器1とは異なる。
【0023】
かかる実施形態の揮散剤用容器1によれば、一対の本体半部9,10、一対のケース半部27,28、及びフック5を全て一体成形により同時に形成することができて製造が容易であり、しかも、ヒンジ51,52を介して一方の本体半部10を揺動させて他方の本体半部9に被せるだけで容器本体3を形成することができ、一方の本体半部10を他方の本体半部9に位置合わせしながら合わせるという手間が省けるため、組み立て、セット作業をより一層容易に行うことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
かくして、本発明により、洋服ダンスやクローゼット等のバーに衣類等とともに吊り下げられた状態でも容器内に収容された揮散剤の残量を容易に確認できる吊り下げ式揮散剤用容器を提供することが可能となった。
【符号の説明】
【0025】
1 吊り下げ式揮散剤用容器
3 容器本体
5 フック
7 インジケータケース
9,10 本体半部
12 揮散孔
23 係止爪
25 孔
27,28 ケース半部
30 窓部
41 差込み口
43,44 押え爪
46,46 開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に合わさって内側に揮散剤を保持する収納空間を形成する一対の本体半部からなる容器本体と、該容器本体を吊り下げ保持するフックと、前記揮散剤の残量の目安を示すインジケータを収容するとともに該インジケータを外部に露呈させる窓部が形成されたインジケータケースと、を備える吊り下げ式揮散剤用容器であって、
前記インジケータケースは、前記一対の本体半部にそれぞれ一体に設けられ、前記一対の本体半部を互いに合わせた際に相互に合わさって前記インジケータのための収納部を形成する一対のケース半部からなり、
前記フックの基端部から先端部に向かう方向を前方側としたとき、前記インジケータケースを前記基端部の後方側に配置するとともに、前記窓部が後方側を指向するよう前記フックの延在する面に対して直交して配置してなることを特徴とする吊り下げ式揮散剤用容器。
【請求項2】
前記インジケータケースの上部に前記インジケータの差込み口を設けるとともに、該インジケータケースの内壁に前記差込み口から前記収納部内に差し込まれたインジケータに係止する押え爪を設けてなる、請求項1に記載の吊り下げ式揮散剤用容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−228206(P2012−228206A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98541(P2011−98541)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】