説明

吊り下げ搬送具

【課題】吊り下げ搬送具において、ホイストクレーンによって複数のバッテリモジュールを同時に搬送すると共に、バッテリモジュール間のピッチを調整する。
【解決手段】吊り下げ搬送具(10)は、バッテリモジュールの配列方向に沿って延在するメインフレーム(11)と、ピニオンと一対のラックとからなるラックアンドピニオン機構(12,13)と、前記一対のラックの各々の先端部に設けられたサブフレーム(15)と、前記サブフレームの両端部にそれぞれ設けられたアーム(14)とを備える。そして、ホイストクレーンによって吊り下げられた際に、バッテリモジュール間のピッチ(80)を前記ラックアンドピニオン機構により可変に構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定方向に沿って配列された複数のバッテリモジュールを固定し、ホイストクレーンを用いて吊り下げ搬送するための吊り下げ搬送具の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、重量物などの搬送方法として、ホイストクレーンを用いた吊り下げ搬送が広く用いられている。ホイストクレーンを用いた吊り下げ搬送では、ホイストクレーンのフック部を接続するための接続部を被搬送体側に設ける必要があるため、被搬送体を固定すると共に接続部が設けられた吊り下げ搬送具が被搬送体に取り付けられる。この種の吊り下げ搬送具には、被搬送体を確実に固定すると共に吊り下げ時の姿勢を安定的に保持可能に構成されることが要求される。
【0003】
例えば特許文献1には、車両の組立工程において、車両外部に置かれたバッテリモジュールを、ホイストクレーンを用いて車両内部の搭載位置に吊り下げ搬送するための吊り下げ搬送具が開示されている。特許文献1の吊り下げ搬送具によれば、スパイラル部分を備えたことによって、車両内部のバッテリモジュールの搭載位置が奥まった場所にある場合であっても、吊り下げ搬送時のバッテリモジュールの姿勢を安定的に保持しつつ搬送することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−49053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示すように、ホイストクレーンを用いて車両用のバッテリモジュールを吊り下げ搬送する場合には、バッテリモジュールを一つずつ順に搬送することが一般的である。しかしながら、近年注目が高まっている電気自動車では一つの車両に多数のバッテリモジュールを搭載する必要があるため、従来のようにバッテリモジュールを一つずつ順に搬送していたのでは、作業時間を膨大に費してしまい、作業効率が悪いという問題がある。
【0006】
ここで、ホイストクレーンを用いた吊り下げ搬送の作業効率を改善するための策の一つとして、複数のバッテリモジュールを同時に固定可能な吊り下げ搬送具を導入することによって、一度に複数のバッテリモジュールを搬送することが考えられる。しかしながら、複数のバッテリモジュールを同時に固定し吊り下げると、一つのバッテリモジュールのみを固定する場合に比べて重心が乱れやすく、ホイストクレーンによって吊り下げられた再の姿勢を安定的に保持することが困難であるという技術的課題点がある。
【0007】
ここで、電気自動車用に搭載するためのバッテリモジュールは、製造元から搬送パレット上に複数配列された状態で納入されることが一般的である。このとき、搬送パレット上に配列されたバッテリモジュール間には、輸送時に外部から受ける衝撃を吸収すると共に静電気の発生を防止するための絶縁性の緩衝材が設けられる。そのため、搬送パレット上にある複数のバッテリモジュールは、互いに所定のピッチを隔てて配列されている。一方、当該バッテリモジュールの搭載先である電気自動車側では、限られた搭載スペースに複数のバッテリモジュールを効率的に配置することが望まれるため、搬送パレット上に比べてバッテリモジュール間のピッチを狭めて配列する必要がある。即ち、複数のバッテリモジュールを同時にホイストクレーンで吊り下げ搬送しようとする場合には、ホイストクレーンで吊り下げた状態で、バッテリモジュール間のピッチを狭めるように調整を行う必要が新たに生ずるという問題がある。
【0008】
本発明は、上述した問題点に鑑みなされたものであり、ホイストクレーンを用いて複数のバッテリモジュールを同時に吊り下げ搬送するための吊り下げ搬送具であって、吊り下げ時の姿勢を安定的に保持可能であると共に、複数のバッテリモジュール間のピッチを調整可能な吊り下げ搬送具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の吊り下げ搬送具は上記課題を解決するために、所定方向に沿って配列された複数のバッテリモジュールを固定し、ホイストクレーンによって吊り下げ搬送するための吊り下げ搬送具であって、前記複数のバッテリモジュールの配列方向に沿って延在し、中央部に前記ホイストクレーンを接続するための接続部を有するメインフレームと、前記メインフレームの中央部に設けられたピニオンと、該ピニオンに上下からそれぞれ係合し、該ピニオンとの係合部から前記メインフレームに沿って互いに反対方向に延在するように設けられた一対のラックとからなるラックアンドピニオン機構と、前記一対のラックの各々の先端部に、前記配列方向に交差する交差方向に沿って延在して設けられたサブフレームと、前記サブフレームの両端部にそれぞれ設けられ、前記複数のバッテリモジュールを前記交差方向に沿って両側から挟み込むように固定するアームとを備え、前記ホイストクレーンによって吊り下げられた際に、前記アームによって挟み込むように固定された前記複数のバッテリモジュール間のピッチを、前記ラックアンドピニオン機構により可変に構成したことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、複数のバッテリモジュールをサブフレームの先端に設けられたアームによって挟み込むように固定することによって、ホイストクレーンを用いて複数のバッテリモジュールを同時に搬送することができる。また、バッテリモジュールを固定するアームは、サブフレームを介してラックアンドピニオン機構に接続されているため、当該ラックアンドピニオン機構を稼働させることによって、バッテリモジュール間のピッチを可変に調整することができる。このように、本発明の吊り下げ搬送具は、ホイストクレーンを用いた複数のバッテリモジュールの吊り下げ搬送に適しており、電気自動車へのバッテリモジュールの搭載作業における作業効率を格段に向上することができる。
【0011】
本発明において好ましくは、前記サブフレームは、前記一対のラックのうち前記ピニオンから等距離となる位置にそれぞれ設けられているとよい。
【0012】
このような構成によれば、配列方向における吊り下げ搬送具の重心がメインフレームの中央部に一致するため、ホイストクレーンによって吊り下げられた際の姿勢を安定的に保持することができる。
【0013】
本発明において好ましくは、前記ラックアンドピニオン機構は、一対の第1のラックと第1のピニオンとからなる第1のラックアンドピニオン機構と、一対の第2のラックと第2のピニオンとからなる第2のラックアンドピニオン機構と含んでなり、前記第1のラックアンドピニオン機構及び前記第2のラックアンドピニオン機構は、前記交差方向に沿って、前記メインフレームから等距離にとなる位置にそれぞれ配置されているとよい。
【0014】
このような構成によれば、複数のラックアンドピニオン機構を備えるため、より多くのバッテリモジュールを同時に吊り下げ搬送でき、電気自動車へのバッテリモジュールの搭載作業における作業効率をより一層向上させることができる。また、第1のラックアンドピニオン機構及び第2のラックアンドピニオン機構を、交差方向に沿って、メインフレームから等距離にとなる位置にそれぞれ配置することによって、交差方向における吊り下げ搬送具の重心がメインフレームの中央部に一致するため、ホイストクレーンによって吊り下げられた際の姿勢を安定的に保持することができる。
【0015】
この場合、前記一対の第1のラックの前記配列方向の長さは、前記一対の第2のラックの前記配列方向の長さと異なっており、前記第1のピニオンの径の前記第2のピニオンの径に対する比は、前記一対の第1のラックの長さの前記一対の第2のラックの長さに対する比に等しくなるように設定するとよい。
【0016】
このような構成によれば、本発明の吊り下げ搬送具が取り付けられる複数のバッテリモジュール間のそれぞれのピッチ比を一定に保ちつつ、ホイストクレーンによる吊り下げ搬送前後におけるピッチを可変に調整することができる。
【0017】
本発明において好ましくは、前記ホイストクレーンによって吊り下げられた際に、前記サブフレーム及び前記アームを前記メインフレームに対して固定するロック機構を備えるとよい。
【0018】
このような構成によれば、メインフレームに対して可動な部材であるサブフレームやアームを固定することで、ホイストクレーンによる吊り下げられた際の姿勢を安定的に保持することができるので、作業者の安全性をより確実に確保することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、複数のバッテリモジュールをサブフレームの先端に設けられたアームによって挟み込むように固定することによって、ホイストクレーンを用いて複数のバッテリモジュールを同時に搬送することができる。また、バッテリモジュールを固定するアームは、サブフレームを介してラックアンドピニオン機構に接続されているため、当該ラックアンドピニオン機構を稼働させることによって、バッテリモジュール間のピッチを可変に調整することができる。このように、本発明の吊り下げ搬送具は、ホイストクレーンを用いた複数のバッテリモジュールの吊り下げ搬送に適しており、電気自動車へのバッテリモジュールの搭載作業における作業効率を格段に向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の吊り下げ搬送具の被搬送体であるバッテリモジュールの単体構造を示す斜視図である。
【図2】搬送パレット上に配列された複数のバッテリモジュールを示す斜視図である。
【図3】本発明の吊り下げ搬送具を上方から示した要部平面図である。
【図4】本発明の吊り下げ搬送具を図3のA方向から示した要部正面図である。
【図5】図3のB線における要部断面図である。
【図6】本発明の吊り下げ搬送具を図3のC方向から示した要部側面図である。
【図7】ロック機構に含まれるクランプ機構の構成を示す平面図である。
【図8】電気自動車側に搭載された複数のバッテリモジュールに固定された本発明の吊り下げ搬送具の構成を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0022】
本実施形態では、製造元から搬送パレット上に配列された状態で納入された複数のバッテリモジュールを、本発明の吊り下げ搬送具で固定し、ホイストクレーンを用いて同時に吊り下げ搬送することによって電気自動車に搭載するケースを例に説明する。
【0023】
図1は、本発明の吊り下げ搬送具の被搬送体であるバッテリモジュールの単体構造を示す斜視図であり、図2は搬送パレット上に配列された複数のバッテリモジュールを示す斜視図である。バッテリモジュール50は、符号50aから50hで示す8個のリチウムイオン蓄電池からなるバッテリセルが直列に接続されてなる電気自動車用のバッテリモジュールである。該バッテリモジュール50は、搬送パレット60上にX方向に沿って複数配列された状態で納入される。このとき、搬送パレット60上に配列されたバッテリモジュール50間には、絶縁性材料からなる緩衝材70が設けられている。
【0024】
緩衝材70は、輸送時に外部から受ける衝撃を吸収すると共に静電気の発生を防止する機能を有する。搬送パレット60上に配列されたバッテリモジュール50を納入先から輸送する際、バッテリモジュール50は外部から衝撃を受けたり、周辺に配置された部材(例えば、搬送パレット60が格納される輸送用コンテナの内壁など)との摩擦によって静電気が発生する場合があり、これらが原因で輸送中にバッテリモジュール50が故障してしまうおそれがある。特に、この種のバッテリモジュール50には、バッテリセルの動作状況をモニタするためのCMU(Cell Monitor Unit)が内蔵されており、静電気によって容易に故障してしまうため問題となる。そこで、搬送パレット60のバッテリモジュール50間に緩衝材70を設けることによって、このような外部からの衝撃や静電気から保護している。
【0025】
このように搬送パレット60上にある複数のバッテリモジュール50は、互いに所定のピッチ80を隔てて配列されている。本実施形態では特に、当該ピッチ80は44mmに設定されている。
【0026】
次に、図3から図6を参照して、本発明の吊り下げ搬送具10の構成について説明する。図3は本発明の吊り下げ搬送具10を上方から示す平面図であり、図4は図3のA方向から示した要部正面図であり、図5は図3のB線における要部断面図であり、図6は図3のC方向から示した要部側面図である。尚、図3から図6では、本発明の吊り下げ搬送具10の各部位の構成を分かりやすく示すために、吊り下げ搬送具10によって固定されるバッテリモジュール50を併せて示してある。
【0027】
本発明の吊り下げ搬送具10は、主にメインフレーム11と、該メインフレーム11に沿って設けられたラックアンドピニオン機構12及び13と、両端にバッテリモジュール50を固定するためのアーム14が設けられたサブフレーム15と、ホイストクレーンのフック部を接続するためのプレート16と、ホイストクレーンによって吊り下げられた際に上記各部材を固定するためのロック機構17とを備えてなる。
【0028】
メインフレーム11は、搬送パレット60上に配列されたバッテリモジュール50の配列方向(即ちX方向)に沿って延在して設けられている。メインフレーム11は、本発明の吊り下げ搬送具10の中心的役割を有しており、以下に説明する各部材が固定されるため、十分な強度を有するように形成されている。
【0029】
ラックアンドピニオン機構12は、メインフレーム11の中央部に設けられたピニオン12aと、該ピニオン12aに上下から係合する一対のラック12b及び12cから構成されている。ラック12b及び12cは、ピニオン12aとの係合部からメインフレーム11に沿って互いに反対方向に延在するように設けられている。
【0030】
ラックアンドピニオン機構12においてラック12b及び12cは同じ長さを有するように形成されており、それぞれの先端部にはサブフレーム15a及び15eが固定されている。即ち、サブフレーム15a及び15eは一対のラック12b及び12cのうちピニオン12aから等距離となる位置にそれぞれ設けられている。そのため、配列方向(即ちX方向)における吊り下げ搬送具10の重心をホイストクレーンの吊り下げ部(即ちプレート16)の直下にすることができるため、ホイストクレーンによって吊り下げられた際の姿勢を安定的に保持することができる。
【0031】
サブフレーム15a及び15eのそれぞれの両端には、バッテリモジュール50をY方向の両側から挟みこむように固定するアーム14が設けられている。アーム14の先端には、バッテリモジュール50の側壁から突出したボルトに係合可能な係合部14´が備えられており、当該係合部14´によってバッテリモジュール50を吊り下げ搬送具10に固定可能となっている。
【0032】
ラックアンドピニオン機構13は、ラックアンドピニオン機構12と同様に、メインフレーム11の中央部に設けられたピニオン13aと、該ピニオン13aに上下から係合する一対のラック13b及び13cとから構成されており、その両端に設けられたアーム14によってバッテリモジュール50を挟み込むように固定している。
【0033】
また、ラックアンドピニオン機構12及び13は、Y方向に沿ってメインフレーム11から等距離にとなる位置にそれぞれ配置されている。これにより、Y方向における吊り下げ搬送具10の重心をホイストクレーンの吊り下げ部(即ちプレート16)の直下とすることができるので、ホイストクレーンによって吊り下げられた際の姿勢を安定的に保持することができる。
【0034】
尚、プレート16の直下を通るサブフレーム15cはメインフレーム11に固定されており(即ち、他のフレームのようにラックアンドピニオン機構によって可動することができないように固定されており)、その両端に設けられたアーム14によってバッテリ50cを固定している。
【0035】
アーム14は、初期状態では図5において一点鎖線で示す位置にあるが、作業者が固定レバー18を操作することにより、実線で示すようにバッテリモジュール50を両側から挟みこむように固定する。特に、各サブフレーム15の両端に設けられたアーム14は互いに連動しており、作業者が固定レバー18を操作することにより、全てのバッテリモジュール50がそれぞれの両側に位置するアーム14によって挟み込まれるように固定されるように構成されている。
【0036】
尚、図5に示すように、サブフレーム15の下部には、アーム14でバッテリモジュール50を固定した際に上側から当接する樹脂ガイド19が設けられており、固定されたバッテリモジュール50の表面を保護し、傷がつくことを防止している。
【0037】
このように吊り下げ搬送具10によって固定されたバッテリモジュール50は、ホイストクレーンのフック部をプレート16に接続することにより、吊り下げ搬送される。ホイストクレーンによって吊り下げ搬送具10が吊り下げられると、アーム14及びサブフレーム15は、ロック機構17によってメインフレーム11に対してロックされる。
【0038】
ロック機構17は、図5に示すようにピン20、アームロック21、及びクランプ機構22から構成されている。プレート16がホイストクレーンによって吊り上げられると、プレート16に連結されたピン20が上方に引き上げられ、当該ピン20に当接したアームロック21が点線の位置から実線の位置に向って回転するように駆動される。すると、アームロック21の回転軸近傍に取り付けられたクランプ機構22によって、ピン20及びアームロック21の姿勢がロックされる。
【0039】
図7は、ロック機構17に含まれるクランプ機構22の構成を示す平面図である。クランプ機構22は、シリンダ23a及び23bと、該シリンダ23a及び23bによってそれぞれ伸縮可能なシャフト24a及び24bが回転部材25の両側に設けられてなる。シャフト24aの回転部材25とは反対側の端部はサブフレーム15cに固定されると共に、シャフト24bの回転部材25とは反対側の端部は前述のアームロック21に連結されている。アームロック21が図5に示す点線の位置から実線の位置に向って回転するように駆動されると(即ち、プレート16がホイストクレーンによって吊り上げられると)、回転部材25は符号aに示す方向に回転する。このとき、回転部材25の回転量が上死点を超えると、所定量のトルクが印加されない限り逆方向(即ち、符号bの方向)に戻らないようにクランプし、ロック機構17がピン20及びアームロック21の姿勢をロックする。
【0040】
本発明の吊り下げ搬送具10は、このようなロック機構17を備えることにより、ホイストクレーンによって吊り下げられた際に、ピン20が上方に引き上げられることによってアームロック21を介してクランプ機構22がピン20及びアームロック21の姿勢をロックするように構成されている。これにより、ホイストクレーンによって吊り下げられた際の吊り下げ搬送具10の姿勢を安定的に保持することができる。
【0041】
このように複数のバッテリモジュール50がホイストクレーンによって吊り下げられた状態では、作業者が操作レバー26及び27を図4の矢印方向に操作することによって、ラックアンドピニオン機構12及び13を可動し、バッテリモジュール50間のピッチを適宜調整することができる。
【0042】
本実施形態では特に、ピニオン12a及び13aは共通の回転軸を有しており、作業者が操作レバー26及び27を操作することによって、ラックアンドピニオン機構12及び13は連動して可動に構成されている。上述したように、ラック12b及び12cはラック13b及び13cに比べて2倍の長さを有することにより、その両端に設けられたアーム14によってバッテリモジュール50b及び50dの2倍の距離に配置されたバッテリモジュール50a及び50eを固定している。また、ピニオン12aはピニオン13aの2倍の径を有している。即ち、ラック13b及び13cの長さは、ラック12b及び12cの長さと互いに異なるように設定されており、且つ、ピニオン13aの径のピニオン12aの径に対する比が、ラック13b及び13cの長さのラック12b及び12cの長さに対する比に等しくなるように設定されている。これにより、操作レバー26及び27を操作すると、バッテリモジュール50a及び50eは、バッテリモジュール12b及び12dに比べて2倍の移動量で稼働される。そのため、吊り下げ搬送具10が取り付けられる複数のバッテリモジュール50間のそれぞれのピッチ比を一定に保ちつつ、ピッチ80を可変に調整することができる。
【0043】
搬送パレット60上で所定のピッチ80で配列されていた複数のバッテリモジュール50は、電気自動車では限られた搭載スペースに効率的に設置するために、ホイストクレーンによって吊り下げられている間に、上述のように当該所定のピッチを狭めるように調整される。本実施形態では、具体的には、搬送パレット60上での44mmのピッチ80は、14mm程度に狭められる。
【0044】
本発明の吊り下げ搬送具10は、メインフレーム11の下部に設けられたストッパブロック28と、アーム14に設けられたストッパボルト29とからなるストッパ機構30を備える。このようにストッパ機構30を配置することにより、バッテリモジュール50間のピッチが所望の値になった際にストッパボルト29がストッパブロック28に当接し、操作レバー26及び27による過度な操作が禁止される。これにより、安全且つ確実にバッテリモジュール50間のピッチ80を所望の大きさに調整することできる。
【0045】
図8は、電気自動車側に搭載された複数のバッテリモジュール50に固定された本発明の吊り下げ搬送具10の構成を示す正面図である。ホイストクレーンによって吊り下げ搬送されたバッテリモジュール50が電気自動車の搭載位置に降ろされると、自重によって固定されていたロック機構17が解除される。そして、作業者が固定レバー18を固定時とは逆方向に操作することで、アーム14をバッテリモジュール50から解除し、バッテリモジュール50の一連の搬送作業が完了する。
【0046】
以上説明したように、本発明の吊り下げ搬送具10によれば、複数のバッテリモジュール50をサブフレーム15の先端に設けられたアーム14によって挟み込むように固定することによって、ホイストクレーンを用いて複数のバッテリモジュール50を同時に搬送すると共に、ラックアンドピニオン機構12及び13を稼働させることによって、バッテリモジュール50間のピッチ80を可変に調整することができるので、電気自動車へのバッテリモジュールの搭載作業における作業効率を格段に向上することができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の吊り下げ搬送具は、所定方向に沿って配列された複数のバッテリモジュールを固定し、ホイストクレーンを用いて吊り下げ搬送するための吊り下げ搬送具に利用可能である。
【符号の説明】
【0048】
10 吊り下げ搬送具
11 メインフレーム
12,13 ラックアンドピニオン機構
14 アーム
15 フレーム
16 プレート
17 ロック機構
18 固定レバー
19 樹脂ガイド
20 ピン
21 アームロック
22 クランプ機構
26,27 操作レバー
30 ストッパ機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に沿って配列された複数のバッテリモジュールを固定し、ホイストクレーンによって吊り下げ搬送するための吊り下げ搬送具であって、
前記複数のバッテリモジュールの配列方向に沿って延在し、中央部に前記ホイストクレーンを接続するための接続部を有するメインフレームと、
前記メインフレームの中央部に設けられたピニオンと、該ピニオンに上下からそれぞれ係合し、該ピニオンとの係合部から前記メインフレームに沿って互いに反対方向に延在するように設けられた一対のラックとからなるラックアンドピニオン機構と、
前記一対のラックの各々の先端部に、前記配列方向に交差する交差方向に沿って延在して設けられたサブフレームと、
前記サブフレームの両端部にそれぞれ設けられ、前記複数のバッテリモジュールを前記交差方向に沿って両側から挟み込むように固定するアームと
を備え、
前記ホイストクレーンによって吊り下げられた際に、前記アームによって挟み込むように固定された前記複数のバッテリモジュール間のピッチを、前記ラックアンドピニオン機構により可変に構成したことを特徴とする吊り下げ搬送具。
【請求項2】
前記サブフレームは、前記一対のラックのうち前記ピニオンから等距離となる位置にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1に記載の吊り下げ搬送具。
【請求項3】
前記ラックアンドピニオン機構は、
一対の第1のラックと第1のピニオンとからなる第1のラックアンドピニオン機構と、
一対の第2のラックと第2のピニオンとからなる第2のラックアンドピニオン機構とを含んでなり、
前記第1のラックアンドピニオン機構及び前記第2のラックアンドピニオン機構は、前記交差方向に沿って、前記メインフレームから等距離にとなる位置にそれぞれ配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の吊り下げ搬送具。
【請求項4】
前記一対の第1のラックの前記配列方向の長さは、前記一対の第2のラックの前記配列方向の長さと異なっており、
前記第1のピニオンの径の前記第2のピニオンの径に対する比は、前記一対の第1のラックの長さの前記一対の第2のラックの長さに対する比に等しくなるように設定されていることを特徴とする請求項3に記載の吊り下げ搬送具。
【請求項5】
前記ホイストクレーンによって吊り下げられた際に、前記サブフレーム及び前記アームを前記メインフレームに対して固定するロック機構を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の吊り下げ搬送具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−76888(P2012−76888A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−224146(P2010−224146)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】