説明

吊り下げ搬送装置

【課題】被搬送物支持用ハンガーアームに設けられた位置切換自在な受け具18の支持構造と位置切換手段の構成を簡略化する。
【解決手段】受け具18を横動可能に支持する平行リンク24の軸支部に設けられて受け具18の上動を許す長孔31、受け具18を引き下げるバネ材28a,28b、受け具18が内外両位置P1,P2にあって且つ受け具支持部材21bに支持されるレベルにあるときに係止部材33に嵌合する内外2つの係合凹部32a,32bを備え、少なくとも内側係合凹部32aと当該係止部材33とは、受け具18の内側位置P1への移動を阻止する形状とし、受け具18を外側位置P2から内側位置P1へ切り換える受け具切換位置には、受け具18を押し上げて内側係合凹部32aと係止部材33との嵌合を解除するプッシャー41と、受け具18を内側位置P1へ横動させる溝形部材42とが配設された構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送用走行体に吊り下げられた被搬送物支持用ハンガーが、下端内側に被搬送物の受け具を備え且つ上端側が左右揺動自在に軸支された左右一対の開閉自在なハンガーアームを備えている吊り下げ搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記のような吊り下げ搬送装置では、特許文献1にも記載されるように、取り扱う被搬送物における左右両側辺の被支持位置(前記受け具で支持される位置)間の間隔の変化に対応できるように、前記各受け具をハンガーアームに対して開閉方向内外両位置間で位置切り換え自在に構成することが知られている。具体的には、前記受け具は、前記開閉方向内外両位置間で横動できるようにハンガーアーム側の受け具支持部材にスライドガイドレールを介して直線的に移動可能に支持され、この受け具側に昇降自在なロックピンと当該ロックピンを下降方向に付勢するスプリングとが設けられ、前記受け具支持部材側には、前記ロックピンが前記スプリングの付勢力で降下嵌合する係止凹部を両端に備えたロックピンスライドガイドが設けられ、搬送用走行体の走行経路中に設定された受け具切換位置には、前記係止凹部に嵌合しているロックピンを押し上げて受け具のロックを解除するロックピン押し上げ手段と、前記受け具を位置切換方向に横動させる受け具駆動手段とが配設された構成となっている。
【特許文献1】特開平4−153118号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に記載された従来の構成では、受け具を前記開閉方向内外両位置それぞれでロックピンによりロックしなければ受け具の位置が定まらない構造であって、受け具を内側位置から外側位置に切り換える場所と、その逆に受け具を外側位置から内側位置に切り換える場所との両方でロックピンを押し上げてロック解除することが必須になる。また、受け具を内外両位置間で移動自在に支持するスライドガイドレールが必要であるばかりでなく、昇降自在なロックピンとこれを案内するロックピンスライドガイドが必要であるなど、構造が複雑で、受け具部分全体のサイズが大きくなる問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は上記のような従来の問題点を解消し得る吊り下げ搬送装置を提供することを目的とするものであって、その手段を後述する実施形態の参照符号を付して示すと、搬送用走行体1に吊り下げられた被搬送物支持用ハンガー14が、下端内側に被搬送物Wの受け具18を備え且つ上端側が左右揺動自在に軸支された左右一対の開閉自在なハンガーアーム16を備え、両受け具18がハンガーアーム16に対して開閉方向の内側位置P1と外側位置P2との間で位置切り換え自在に構成されている吊り下げ搬送装置において、前記受け具18は、ハンガーアーム16側の受け具支持部材21a,21bに平行リンク23,24により前記内外両位置P1,P2間で横動可能に支持され、この平行リンク23,24の軸支部には、前記受け具18の上動を許す長孔31が設けられると共に、この受け具18を前記受け具支持部材21a,21b上に引き下げる方向に作用するバネ材(引張スプリング28a,28bが設けられ、前記受け具支持部材21a,21b側には係止部材33が設けられ、前記受け具18側には、当該受け具18が内外両位置P1,P2にあって且つ前記受け具支持部材21a,21bに支持されるレベルにあるときに前記係止部材33に嵌合する内外2つの係合凹部32a,32bが設けられ、この両係合凹部32a,32bの内、前記受け具18が少なくとも前記外側位置P2にあるときに前記係止部材33に嵌合する内側係合凹部32aと当該係止部材33とは、当該受け具18の内側位置P1への移動を阻止する形状とし、搬送用走行体1の走行経路中の、少なくとも前記受け具18を外側位置P2から内側位置P1へ切り換える受け具切換位置には、前記受け具18を前記受け具支持部材21a,21bに支持されるレベルから押し上げて前記内側係合凹部32aと係止部材33との嵌合を解除する受け具押し上げ手段(プッシャー41)と、前記受け具18を内側位置P1へ横動させる受け具駆動手段(溝形部材42)とが配設された構成となっている。
【0005】
上記構成の本発明を実施するについて、請求項2に記載のように、前記両係合凹部32a,32bの内、前記受け具18が前記内側位置P1にあるときに前記係止部材33に嵌合する外側係合凹部32bと当該係止部材33とは、前記受け具18の外側位置P2への移動時に当該受け具18が前記係止部材33に乗り上げて通過できる形状とすることができる。
【0006】
また、請求項3に記載のように、前記受け具支持部材21a,21bは一対並設し、この受け具支持部材21a,21b上で支持される前記受け具18には、一対の前記受け具支持部材21a,21b間に遊嵌するリンク軸支部材22a,22bを突設し、前記平行リンク23,24は、一対の前記受け具支持部材21a,21b間に架設された下側支軸26a,26bと前記リンク軸支部材22a,22bに設けられた上側支軸27a,27bとの間に介装し、前記平行リンク23,24の軸支部の長孔31は、平行リンク23,24の前記上側支軸27a,27bが貫通する軸孔として設け、内外2つの前記係合凹部32a,32bは、前記リンク軸支部材22a,22bの下辺に形成し、前記係止部材33は一対の前記受け具支持部材21a,21b間に架設し、前記受け具押し上げ手段(プッシャー41)は、一対の前記受け具支持部材21a,21b間で前記リンク軸支部材22a,22bの下辺を押し上げるように構成することができる。
【0007】
この場合、請求項4に記載のように、前記バネ材は、平行リンク23,24を支承する前記下側支軸26a,26bと上側支軸27a,27bとの間に介装された引張スプリング28a,28bで構成することができる。更に、請求項5に記載のように、前記リンク軸支部材22a,22bと前記平行リンク23,24とはそれぞれ一対並設し、前記引張スプリング28a,28bは、一対の前記リンク軸支部材22a,22b間に配設することができる。
【発明の効果】
【0008】
上記構成の本発明に係る吊り下げ搬送装置によれば、受け具が内外両位置で自動的に係合凹部と係止部材との嵌合により位置決めされる構成でありながら、当該係止部材は、従来の昇降自在なロックピンのような可動部材である必要はなく、受け具支持部材側に固定されたもので良いので、受け具が平行リンクで支持される構造であること、そして従来のロックピンを案内するロックピンスライドガイドが不要であることと相まって、受け具部分全体の構造が非常に簡単になり、且つ小型に構成することができる。
【0009】
また、受け具が内外両位置で係合凹部と係止部材との嵌合により位置決めされた状態は、受け具を受け具支持部材側に引き下げるバネ材の付勢力で保持できるので、基本的には受け具を内外両位置でロックする手段は不要なものであるが、当該受け具が外側位置にあるときは、被搬送物の積み下ろしのためにハンガーアームを外側に開動させたとき、受け具の内側位置への移動方向が斜め上下方向になって、重力が受け具の内側位置への移動を助長する方向に作用するので、反動などで前記バネ材の付勢力に抗して係合凹部が係止部材に乗り上げて離脱し、受け具が不測に内側位置へ横動して位置が切り換わってしまう恐れが考えられるところであるが、受け具が少なくとも前記外側位置にあるときは、係合凹部と係止部材とが受け具の内側位置への移動を確実に阻止できるので、受け具を外側位置に確実に保持させて安全性を高めることができる。
【0010】
しかも、外側位置にある受け具を内側位置に切り換えるときは、係合凹部が係止部材から上方に離脱するように受け具そのものを押し上げれば良く、従来のように受け部部分から横側方に突出する小さなロックピンを押し上げなければならない場合と比較して、搬送用走行体の走行経路側に設置される押し上げ手段の構成が簡単になる。
【0011】
尚、請求項2に記載の構成によれば、内側位置にある受け具を外側位置に切り換えるときは、受け具を押し上げて係合凹部と係止部材との嵌合を解除する必要がなく、直接受け具を外側位置へ強制移動させるだけで良いので、搬送用走行体の走行経路中に設定された受け具切換位置の内、内側位置にある受け具を外側位置に切り換える受け具切換位置には、ロック解除手段、即ち、受け具押し上げ手段の設置を省いて構成を簡略化し、コストダウンを図ることができる。しかも、当該内側位置から外側位置に受け具を移動させるときは、バネ材の付勢力に抗して係止部材から係合凹部を乗り上げさせて離脱させなければならないので、そのときの抵抗を十分に大きくすることができ、振動などで不測に受け具が内側位置から外側位置に移動してしまう恐れを解消できる。
【0012】
また、請求項3に記載の構成によれば、ハンガーアーム下端内側の受け具とその支持構造体の全体を非常にコンパクトに構成することができるだけでなく、搬送経路側に配設される受け具押し上げ手段もコンパクトに構成することができる。この場合、請求項4に記載の構成によれば、ハンガーアーム下端内側の受け具の支持構造が一層簡単になる。更に、請求項5に記載の構成によれば、受け具の安定性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明の具体的実施例を添付図に基づいて説明すると、図1及び図2において、1は搬送用走行体であって、トロリーガイドレール2に支持される前後一対のロードトロリー3,4、この両ロードトロリー3,4によって吊り下げられたロードバー5、及び各ロードトロリー3,4に連結ロッド6,7を介して連結され且つ前記トロリーガイドレール2に支持される前部フリートロリー8と後部フリートロリー9から構成されている。この搬送用走行体1の駆動は、トロリーガイドレール2に沿ってその上側に架設された駆動チエンガイドレール10にトロリーーを介して吊り下げられ且つ図外の駆動手段により駆動される駆動チエン11に設けられたプッシャー12が前部フリートロリー8に設けられた出退自在な主ドッグ13を後押しすることにより行われる。
【0014】
前記搬送用走行体1には、ロードバー5に被搬送物支持用ハンガー14が吊り下げられている。このハンガー14は、前側左右一対のハンガーアーム15と後側左右一対のハンガーアーム16とから構成されたもので、各左右一対のハンガーアーム15,16は、ロードバー5の前後両端に左右横向きに連設された左右方向部材5a,5bの左右両端に、上端が前後方向水平支軸17により左右方向に開閉自在に軸支され、下端内側には、被搬送物Wの左右両側辺の底部を支持する受け具18が設けられている。
【0015】
この実施形態でのハンガー14では、後側左右一対のハンガーアーム16は、アーム上部16aと、受け具18を備えたアーム下部16bとに分割され、アーム上部16aは、前記支軸17によって軸支されると共に、前側左右一対のハンガーアーム15の上部とそれぞれ左右一対の前後方向連結部材19a,19bにより連結一体化され、アーム下部16bは、前記連結部材19a,19bに範囲L内で前後方向位置変更可能に支持されている。従って、後側左右一対のハンガーアーム16のアーム下部16bの前後方向位置を変更することにより、前側左右一対のハンガーアーム15の受け具18と後側左右一対のハンガーアーム16の受け具18との前後方向間隔を被搬送物Wの種類などに応じて変更することができる。また、左右一対の前後方向連結部材19aに設けられた開動操作用レバー20a,20bを走行経路脇に配設された操作手段で上方に押し上げることにより、前側左右一対のハンガーアーム15と後側左右一対のハンガーアーム16とを一体に開動させることができる。
【0016】
また、この実施形態でのハンガー14では、後側左右一対のハンガーアーム16の受け具18が当該ハンガーアーム16の開閉方向(左右横方向)に位置変更可能に構成されている。以下の詳細構造及び作用の説明においては、この後側左右一対のハンガーアーム16の受け具18を位置切換対象受け具18と称する。
【0017】
後側左右一対のハンガーアーム16の下端には、図3〜図5に示すように、内側に向かって延出する受け具支持アーム部16aが設けられ、この受け具支持アーム部16aの先端部には、内側に向かって突出する一対の受け具支持部材21a,21bが並設されている。前記位置切換対象受け具18は、受け具支持部材21a,21b上でハンガーアーム開閉方向に移動可能に支持される基板18aの上側に被搬送物支持用アタッチメント18bを付設したもので、前記基板18aの下側には、前記受け具支持部材21a,21bと平行で当該受け具支持部材21a,21b間に遊嵌する一対のリンク軸支部材22a,22bが突設され、このリンク軸支部材22a,22bと前記受け具支持部材21a,21bとは、一対のリンク軸支部材22a,22b間に並列配置された2組の平行リンク23,24によって連結されている。
【0018】
各平行リンク23,24を構成する一対の互いに平行なリンク25a,25bの下端は、一対の受け具支持部材21a,21b間に架設された下側支軸26a,26bに支承され、リンク25a,25bの上端は、一対のリンク軸支部材22a,22b間に架設された上側支軸27a,27bに支承されている。従って位置切換対象受け具18は、2組の平行リンク23,24の平行揺動運動を伴ってハンガーアーム開閉方向に内側位置P1と外側位置P2との間で平行移動することができる。この内側位置P1と外側位置P2との間の平行移動時には、位置切換対象受け具18の基板18aは一対の受け具支持部材21a,21bから浮上するが、両端の内側位置P1と外側位置P2とにおいては、一対の受け具支持部材21a,21bで支持されることになる。
【0019】
位置切換対象受け具18側の一対のリンク軸支部材22a,22bとハンガーアーム16側の一対の受け具支持部材21a,21bとの間には、位置切換対象受け具18を受け具支持部材21a,21b側に引き下げるバネ材として、一対の引張スプリング28a,28bが2組介装されている。この引張スプリング28a,28bは、スプリング線材をS字形に曲げ加工したもので、その両端円弧部29,30を、一対のリンク軸支部材22a,22b間において、リンク軸支部材22a,22b側の上側支軸27a,27bと受け具支持部材21a,21b側の下側支軸26a,26bとに外嵌させることにより介装され、このとき両端円弧部29,30間がこれら両端円弧部29,30の弾性に抗する変形によって若干引き延ばされ、上側支軸27a,27bと下側支軸26a,26bとの間に引張力が作用するように引張スプリング28a,28bの初期長さが設定されている。
【0020】
尚、この実施形態では、必要な強さの引張力を得るために、上側支軸27a,27bと下側支軸26a,26bとの間にそれぞれ2本の引張スプリング28a,28bを介装しているが、引張スプリング28a,28bの設計によっては、上側支軸27a,27bと下側支軸26a,26bとの間にそれぞれ1本の引張スプリング28a,28bを介装することもできるし、場合によっては、上側支軸27a(または27b)と下側支軸26a(または26b)との間にのみ1本または並列させた2本の引張スプリング28a(または28b)を介装することも可能である。更に、平行リンクを軸支する上側支軸27a,27b及び下側支軸26a,26bとは別に、受け具18側の一対のリンク軸支部材22a,22bとハンガーアーム16側の一対の受け具支持部材21a,21bとにスプリング係止部を設け、これら両スプリング係止部間に引張スプリングを介装することもできる。勿論、バネ材として上記構成の引張スプリング28a,28b以外の一般的なコイルスプリングや板バネなどを利用することも可能である。
【0021】
図11に示すように、平行リンク23,24の各リンク25a,25bの上端に上側支軸27a,27bを貫通させるために設けられる軸孔は、位置切換対象受け具18が外側位置P2(図8参照)にあるときに上側支軸27a,27bから垂直上方に延出する長孔31としている。従って、内側位置P1(図7参照)または外側位置P2(図8参照)にあって、一対の受け具支持部材21a,21bで基板18aが支持されるレベルにある位置切換対象受け具18は、当該長孔31の長さ方向に引張スプリング28a,28bの引張力に抗して当該長孔31の範囲内で上動することができる。
【0022】
位置切換対象受け具18側の一対のリンク軸支部材22a,22bの下辺の平行リンク23,24の中間位置には、その下辺長さ方向の2箇所(ハンガーアーム開閉方向の内外2箇所)に係合凹部32a,32bが設けられている。一方、ハンガーアーム16側の一対の受け具支持部材21a,21b間には、位置切換対象受け具18が外側位置P2にあるとき(図8参照)に内側係合凹部32aに嵌合すると共に、位置切換対象受け具18が内側位置P1にあるとき(図7参照)に外側係合凹部32bに嵌合する係止部材33が架設されている。この係止部材33は、平行リンク23,24の中間位置で両端を一対の受け具支持部材21a,21bに溶接などにより固着した丸棒材から成るものであって、垂直係止面34が丸棒材周面の切削により形成されている。この係止部材33の垂直係止面34は、位置切換対象受け具18が外側位置P2にあって、係止部材33が内側係合凹部32aに嵌合した状態では、当該内側係合凹部32aの片側の内側垂直面に当接して、位置切換対象受け具18が内側位置P1の方へ移動するのを阻止する。また、図7に示す内側位置P1にある位置切換対象受け具18が外側位置P2の方へ移動するときは、外側係合凹部32bに嵌合している係止部材33に対して位置切換対象受け具18(一対のリンク軸支部材22a,22bの下辺)が、外側係合凹部32bの片側の下広がり傾斜側面と係止部材33の丸棒材周面とを利用して乗り上げ、係止部材33に対する外側係合凹部32bの嵌合が解かれるように構成されている。このときの係止部材33に対する位置切換対象受け具18(一対のリンク軸支部材22a,22bの下辺)の乗り上げは、前記長孔31内での上側支軸27a,27bの上動と、平行リンク23,24の揺動起立に伴う位置切換対象受け具18(一対のリンク軸支部材22a,22b)の上動とを伴って行われる。
【0023】
上記構成から明らかなように、図7に示すように、内側位置P1にある位置切換対象受け具18は、引張スプリング28a,28bの引張力で外側係合凹部32bが係止部材33に嵌合することにより当該内側位置P1に保持されているだけであるから、一定以上の操作力をもってすれば、位置切換対象受け具18を外側位置P2の方へ強制的に移動させることができるが、図8に示すように、外側位置P2にある位置切換対象受け具18は、引張スプリング28a,28bの引張力で内側係合凹部32aが係止部材33に嵌合することにより当該外側位置P2に保持されていると同時に、内側位置P1への移動が、内側係合凹部32aの片側の内側垂直面と係止部材33の垂直係止面34との当接により完全に阻止されている。即ち、外側位置P2で位置切換対象受け具18がロックされており、このままでは位置切換対象受け具18を内側位置P1へ強制移動させることができない。
【0024】
図3〜図6に示すように、搬送用走行体1の走行経路中に設定された受け具切換位置には、受け具押し上げ手段35A,35Bと受け具駆動手段36A,36Bとが配設されている。受け具押し上げ手段35A,35Bと受け具駆動手段36A,36Bとは、搬送用走行体1が所定位置で停止したとき、当該搬送用走行体1の被搬送物支持用ハンガー14の後側左右一対のハンガーアーム16の各受け具18、即ち、位置切換対象受け具18に対応するようにそれぞれ左右一対並設されているが、先に説明したように位置切換対象受け具18を備えた後側左右一対のハンガーアーム16は、範囲L内で位置変更可能なものであるから、受け具押し上げ手段35A,35Bは、搬送用走行体1が所定位置で停止したときの後側左右一対のハンガーアーム16の現在位置に対応して、その位置が搬送用走行体1の走行方向前後に自動調整されるものである。
【0025】
即ち、受け具押し上げ手段35A,35Bは、搬送用走行体1が所定位置で停止したときの後側左右一対のハンガーアーム16の現在位置に対応して、その位置が搬送用走行体1の走行方向前後に連動して自動調整される左右一対の可動部材37a,37bに各別に取り付けられたもので、可動部材37a,37bの内端に昇降ガイドロッド38を介して昇降自在に支持され且つ流体圧シリンダー39により一定範囲内で昇降駆動される昇降支持アーム40と、この昇降支持アーム40の先端上側に取り付けられたプッシャー41とから構成され、図8に示すように、位置切換対象受け具18が外側位置P2に保持されている搬送用走行体1が所定位置で停止したとき、図8及び図10に示すように、プッシャー41が平行リンク23,24の内側のリンク25aと係止部材33との間の真下に位置し、係る状態で流体圧シリンダー39により昇降支持アーム40を上昇させることにより、プッシャー41が左右一対の受け具支持部材21a,21b間に下側から入り込み、図9に示すように、左右一対のリンク軸支部材22a,22bを介して位置切換対象受け具18を押し上げることができるように構成されている。
【0026】
受け具駆動手段36A,36Bは、搬送用走行体1が所定位置で停止したときの後側左右一対のハンガーアーム16の現在位置が範囲L内の何れにあっても、当該ハンガーアーム16の下端内側の位置切換対象受け具18における被搬送物支持用アタッチメント18bに対して嵌合することができる、前記範囲Lと同一長さの下側開放の溝形部材42を備えている。この溝形部材42をそれぞれ外端部で各別に支持する左右一対の可動部材43は、被搬送物支持用ハンガー14の移動経路下側に配設された左右横方向の架台44上にスライドガイドレール45とこれに嵌合するスライダー46とを介して左右横方向(ハンガーアーム16の開閉方向)に横動自在に支持され、当該架台44と各溝形部材42との間に介装された左右一対の流体圧シリンダー47により往復駆動される。
【0027】
上記構成の搬送装置において、位置切換対象受け具18が外側位置P2に保持されている搬送用走行体1が受け具切換位置に到着すれば、この受け具切換位置に対する当該搬送用走行体1の到着前または到着後の可動部材37a,37bの位置調整によって、図8及び図10に示すように、当該位置切換対象受け具18の真下所定位置に位置している受け具押し上げ手段35A,35Bを作動させる。即ち、流体圧シリンダー39により昇降支持アーム40を上昇させることにより、図9に示すように、左右一対の受け具支持部材21a,21b間に下側から入り込むプッシャー41が、左右一対のリンク軸支部材22a,22bを介して位置切換対象受け具18を押し上げる。この結果、図8に示すように左右一対のリンク軸支部材22a,22bの下辺の内側係合凹部32aに嵌合していた係止部材33に対し、図9に示すように、リンク軸支部材22a,22bが長孔31の長さの範囲内で押し上げられ、内側係合凹部32aが係止部材33から上方に離脱して、外側位置P2での位置切換対象受け具18のロックが解除される。
【0028】
一方、搬送用走行体1が受け具切換位置に到着したときは、後側左右一対のハンガーアーム16の位置が調整範囲L内の何れにあっても、また、位置切換対象受け具18が内側位置P1と外側位置P2の何れにあっても、当該位置切換対象受け具18は、図7または図9に示すように、受け具駆動手段36A,36Bのホームポジションで待機している下側開放溝形部材42内に入り込んだ状態になる。従って、前記のように受け具押し上げ手段35A,35Bによって外側位置P2にある位置切換対象受け具18のロックを解除した後に当該受け具駆動手段36A,36Bの流体圧シリンダー47を作動させ、図9に仮想線で示すように、前記溝形部材42をホームポジションから内側(搬送経路の左右幅方向の中央位置側)へ横動させることにより、外側位置P2にあってロックが解除された位置切換対象受け具18を、その被搬送物支持用アタッチメント18bを介して内側位置P1へ移動させることができる。
【0029】
ロック解除のために位置切換対象受け具18を押し上げていた受け具押し上げ手段35A,35Bのプッシャー41は、内側係合凹部32aが係止部材33の真上位置から内側へ離れるように移動した後、位置切換対象受け具18が内側位置P1に達する直前までに降下させれば良い。この結果、位置切換対象受け具18が内側位置P1に達したとき、図7に示すように、引張スプリング28a,28bの引張力によって位置切換対象受け具18が引き下げられていることにより、係止部材33に対し外側係合凹部32bが嵌合し、当該位置切換対象受け具18が内側位置P1に保持されることになる。
【0030】
以上のようにして、外側位置P2でロックされていた位置切換対象受け具18を、受け具押し上げ手段35A,35Bによりロック解除すると共に受け具駆動手段36A,36Bにより内側位置P1へ移動させて、当該位置切換対象受け具18の位置切換を行うことができるのであるが、図7に示すように、内側位置P1に保持されている位置切換対象受け具18を外側位置P2へ位置切換するときは、受け具押し上げ手段35A,35Bを作動させないで、受け具駆動手段36A,36Bの溝形部材42を直ちにホームポジションから外側へ横動させれば良い。この場合、先に説明したように、溝形部材42に嵌合している被搬送物支持用アタッチメント18bを介して位置切換対象受け具18が当該溝形部材42の横動により強制的に内側位置P1から外側位置P2に向かって移動せしめられるとき、引張スプリング28a,28bの引張力に抗する位置切換対象受け具18の上動を伴って、外側係合凹部32bが係止部材33を乗り越えて外方へ通過移動することになる。そして位置切換対象受け具18が外側位置P2に達したとき、図8に示すように、引張スプリング28a,28bの引張力で位置切換対象受け具18が引き下ろされ、内側係合凹部32aが係止部材33に嵌合し、受け具支持部材21a,21bで支持された状態の位置切換対象受け具18が係止部材33(垂直係止面34)とこれに嵌合する内側係合凹部32aとによってロックされる。
【0031】
尚、被搬送物支持用ハンガー14として、前側左右一対のハンガーアーム15との間の間隔を調整するために位置変更可能に構成された後側左右一対のハンガーアーム16を備えたものを例示したが、前後のハンガーアーム15,16間の間隔が一定に固定された被搬送物支持用ハンガー14であっても良い。また、前後2組のハンガーアーム15,16を備えた被搬送物支持用ハンガー14を例示したが、左右一対のハンガーアームに前側受け具と後側受け具とを備えた被搬送物支持用ハンガーであっても良い。更に、左右一対前後2組の合計4つの受け具18の内、後側左右一対の受け具18をハンガーアーム開閉方向の内外両位置間で位置切換自在に構成したが、全ての受け具18を位置切換自在に構成することもできる。
【0032】
また、搬送用走行体1の走行経路中に設定された受け具切換位置には、受け具押し上げ手段35A,35Bと受け具駆動手段36A,36Bとが配設された例を説明したが、若し、位置切換対象受け具18を内側位置P1から外側位置P2へ切り換える作用のみが行われる受け具切換位置が存在するときは、当該受け具切換位置には、受け具押し上げ手段35A,35Bは不要である。しかしながら、外側係合凹部32bと係止部材33とを、内側係合凹部32aと係止部材33との関係と同様に、内側位置P1に保持された位置切換対象受け具18が外側位置P2へ移動するのを阻止する形状に構成すると共に、長孔31を、位置切換対象受け具18が内側位置P1に保持されているときの上側支軸27a,27bに対しても真上方向に延出する形状(従って扇形となる)に構成することにより、位置切換対象受け具18を内側位置P1でもロックできるように構成するときは、何れの受け具切換位置にも受け具押し上げ手段35A,35Bが必要となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】被搬送物支持用ハンガーを備えた搬送用走行体を示す側面図である。
【図2】同搬送用走行体の正面図である。
【図3】受け具切換位置における受け具駆動手段と受け具とを示す平面図である。
【図4】受け具切換位置における受け具押し上げ手段と受け具とを示す平面図である。
【図5】受け具切換位置における片側の受け具駆動手段、受け具押し上げ手段、及び受け具を示す背面図である。
【図6】受け具切換位置における片側の受け具駆動手段、受け具押し上げ手段、及び受け具を内側から見た一部縦断側面図である。
【図7】内側位置に保持された受け具、受け具駆動手段、及び受け具押し上げ手段を示す要部の縦断正面図である。
【図8】図7に示す受け具を受け具駆動手段で外側位置に移動させた状態を示す要部の縦断正面図である。
【図9】外側位置にある受け具を受け具押し上げ手段で押し上げた状態を示す要部の縦断正面図である。
【図10】図7または図8の縦断側面図である。
【図11】受け具支持構造の詳細を示す一部分解縦断側面図である。
【図12】受け具支持構造の係止部材位置での縦断側面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 搬送用走行体
14 被搬送物支持用ハンガー
15 前側左右一対のハンガーアーム
16 後側左右一対のハンガーアーム
18 受け具
21a,21b 一対の受け具支持部材
22a,22b 一対のリンク軸支部材
23,24 2組の平行リンク
25a,25b リンク
26a,26b 下側支軸
27a,27b 上側支軸
28a,28b 引張スプリング
31 長孔
32a,32b 内外2つの係合凹部
33 係止部材
34 垂直係止面
35A,35B 受け具押し上げ手段
36A,36B 受け具駆動手段
37a,37b 左右一対の可動部材
38 昇降ガイドロッド
39 流体圧シリンダー
40 昇降支持アーム
41 プッシャー
42 下側開放の溝形部材
43 左右一対の可動部材
45 スライドガイドレール
46 スライダー
47 左右一対の流体圧シリンダー
P1 位置切換対象受け具の内側位置
P2 位置切換対象受け具の外側位置
W 被搬送物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送用走行体に吊り下げられた被搬送物支持用ハンガーが、下端内側に被搬送物の受け具を備え且つ上端側が左右揺動自在に軸支された左右一対の開閉自在なハンガーアームを備え、両受け具がハンガーアームに対して開閉方向の内側位置と外側位置との間で位置切り換え自在に構成されている吊り下げ搬送装置において、前記受け具は、ハンガーアーム側の受け具支持部材に平行リンクにより前記内外両位置間で横動可能に支持され、この平行リンクの軸支部には、前記受け具の上動を許す長孔が設けられると共に、この受け具を前記受け具支持部材上に引き下げる方向に作用するバネ材が設けられ、前記受け具支持部材側には係止部材が設けられ、前記受け具側には、当該受け具が内外両位置にあって且つ前記受け具支持部材に支持されるレベルにあるときに前記係止部材に嵌合する内外2つの係合凹部が設けられ、この両係合凹部の内、前記受け具が少なくとも前記外側位置にあるときに前記係止部材に嵌合する内側係合凹部と当該係止部材とは、当該受け具の内側位置への移動を阻止する形状とし、搬送用走行体の走行経路中の、少なくとも前記受け具を外側位置から内側位置へ切り換える受け具切換位置には、前記受け具を前記受け具支持部材に支持されるレベルから押し上げて前記内側係合凹部と係止部材との嵌合を解除する受け具押し上げ手段と、前記受け具を内側位置へ横動させる受け具駆動手段とが配設されている、吊り下げ搬送装置。
【請求項2】
前記両係合凹部の内、前記受け具が前記内側位置にあるときに前記係止部材に嵌合する外側係合凹部と当該係止部材とは、前記受け具の外側位置への移動時に当該受け具が前記係止部材に乗り上げて通過できる形状とした、請求項1に記載の吊り下げ搬送装置。
【請求項3】
前記受け具支持部材は一対並設され、この受け具支持部材上で支持される前記受け具には、一対の前記受け具支持部材間に遊嵌するリンク軸支部材が突設され、前記平行リンクは、一対の前記受け具支持部材間に架設された下側支軸と前記リンク軸支部材に設けられた上側支軸との間に介装され、前記平行リンクの軸支部の長孔は、平行リンクの前記上側支軸が貫通する軸孔として設けられ、内外2つの前記係合凹部は、前記リンク軸支部材の下辺に形成され、前記係止部材は一対の前記受け具支持部材間に架設され、前記受け具押し上げ手段は、一対の前記受け具支持部材間で前記リンク軸支部材の下辺を押し上げる、請求項1または2に記載の吊り下げ搬送装置。
【請求項4】
前記バネ材は、平行リンクを支承する前記下側支軸と上側支軸との間に介装された引張スプリングから成る、請求項3に記載の吊り下げ搬送装置。
【請求項5】
前記リンク軸支部材と平行リンクとはそれぞれ一対並設され、前記引張スプリングは、一対の前記リンク軸支部材間に配設されている、請求項4に記載の吊り下げ搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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