説明

吊り下げ袋

【課題】本発明は、吊り下げ具を挿通させるための吊り下げ部近傍の強度に優れ、効率的かつ低コストで製造が可能な吊り下げ袋を提供する。
【解決手段】吊り下げ袋1は、樹脂フィルムよりなる第1シート2a及び第2シート2bを重ね合わせて周辺部をシールすることによって構成され、周辺部の一部に開口部が設けられる袋本体と、樹脂フィルムよりなり、開口部の近傍に位置する第1シート2aの内面の一部と、開口部の近傍に位置する第2シート2bの内面の一部とに貼り合わされる一対の補強テープ3aおよび3bとを備える。第1シート2aと補強テープ3aとの重なり部分と、第2シート2bと補強テープ3bとの重なり部分とに、吊り下げ具の一部を挿通させるための開孔5が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊り下げ具に吊り下げて使用される吊り下げ袋に関する。
【背景技術】
【0002】
商品を吊り下げ陳列するための包装用吊り下げ袋として、樹脂フィルムで成形したチューブ状のパウチに吊り下げ用穴を設けたものや、樹脂フィルムで作製した袋体の開口部に、吊り下げ用穴が形成されたプラスチック部品を接着したものが利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−155042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の吊り下げ袋には、次のような問題がある。
【0005】
まず、チューブ状のパウチに吊り下げ用穴を設けた構成では、チューブ状のパウチを製造できる材質がポリエチレンやポリプロピレン等に限定されるため、吊り下げ用穴の近傍の強度が不足しやすい。高密度ポリエチレンのような腰の強い材質を使用することも考えられるが、パウチ全体を同一材料で作製する必要があるため、パウチの製造コストが上昇してしまう。
【0006】
次に、樹脂フィルムで作製した袋体の開口部に、吊り下げ用穴が形成されたプラスチック部品を接着した構成では、樹脂フィルムの製袋時に同時にプラスチック部品を溶着できないので、別途プラスチック部品をシールまたは接着する必要があり、製造効率及び製造コストの面で好ましくない。
【0007】
それ故に、本発明は、吊り下げ具を挿通させるための吊り下げ部近傍の強度に優れ、効率的かつ低コストで製造が可能な吊り下げ袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、吊り下げ具に吊り下げ可能な吊り下げ袋に関するものである。本発明に係る吊り下げ袋は、樹脂フィルムよりなる第1シート及び第2シートを重ね合わせて周辺部をシールすることによって構成され、周辺部の一部に開口部が設けられる袋本体と、樹脂フィルムよりなり、開口部の近傍に位置する第1シートの内面の一部と、開口部の近傍に位置する第2シートの内面の一部とに貼り合わされる一対の補強テープとを備える。第1シートと補強テープとの重なり部分と、第2シートと補強テープとの重なり部分とに、吊り下げ具の一部を挿通させるための開孔または切り込みよりなる吊り下げ部が形成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、吊り下げ部近傍が補強テープによって補強されるので、吊り下げ部の強度を向上させた吊り下げ袋を実現できる。また、樹脂フィルムよりなる第1シート及び第2シートと、樹脂フィルムよりなる補強テープとによって吊り下げ袋が構成されるため、両者を製袋工程で溶着することができ、効率的かつ低コストに製造が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態に係る吊り下げ袋の平面図
【図2】図1に示したII−IIラインの断面図
【図3】変形例に係る吊り下げ袋の平面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、実施形態に係る吊り下げ袋の平面図であり、図2は、図1に示したII−IIラインの断面図である。尚、図1に示す網掛け部はヒートシール部を表す。
【0012】
吊り下げ袋1は、フックや突起等の吊り下げ具に吊り下げ可能な袋であり、第1シート2a及び第2シート2bをシールすることによって構成される袋本体と、一対の補強テープ3a及び3bとを備える。
【0013】
袋本体は、互いに重ね合わせた矩形状の第1シート2a及び第2シート2bの間に、2つ折りにした底テープ4を挿入して周辺部をシールしたパウチである。より具体的には、底テープ4の挿入部分においては、第1シート2a及び第2シート2bと底テープ4とがヒートシールされ、底テープ4が挿入されていない部分においては、第1シート2a及び第2シート2bの周辺部同士がヒートシールされている。矩形状の第1シート2a及び第2シート2bの3辺をシールすることにより、残りの1辺の部分に袋本体の開口部が設けられている。第1シート2a及び第2シート2bと底テープとがヒートシールされる部分に、切り欠きを設けることによって、第1シート2a及び第2シート2bとを直接ヒートシールすることによって、スタンディングパウチとすることもできる。
【0014】
第1シート2a及び第2シート2bには、ヒートシールが可能な樹脂製の単層フィルムまたは積層フィルムを利用できる。第1シート2a及び第2シート2bには、例えば、延伸ナイロン/直鎖状低密度ポリエチレンの層構成や、延伸ポリプロピレン/ポリエチレン/直鎖状低密度ポリエチレンの層構成を有する積層フィルムを好適に利用できる。ここで例示した積層フィルムを用いれば、袋本体に十分な強度を付与することができる。また、袋本体の収容物の種類に応じて、静電防止効果のある直鎖状低密度ポリエチレンを使用しても良い。
【0015】
補強テープ3a及び3bは、開孔5の吊り下げ強度を向上させるために袋本体にシールされる帯状部材であり、袋本体の開口部近傍の第1シート2aの内面の一部と、袋本体の開口部近傍の第2シート2bの内面とにそれぞれシールされている。本実施形態では、補強テープ3a及び3bの最内面にシーラント層が設けられていないため、
補強テープ3a及び3b同士は互いにシールされていない。したがって、補強テープ3a及び3bの両端部には、開口部から長さLに渡ってスリットが形成されている。
【0016】
補強テープ3a及び3bには、ヒートシールが可能な樹脂製の単層フィルムまたは積層フィルムを利用できる。補強テープ3aおよび3bは、第1シート2a及び第2シート2bと同一の樹脂フィルムであっても良いし、第1シート2a及び第2シート2とは異なる樹脂フィルムであっても良い。補強テープ3a及び3bとして、第1シート2a及び第2シート2bとは異なる樹脂フィルムを用いる場合、補強テープ3a及び3bの材質によって開孔5の吊り下げ強度を調整できる。すなわち、袋本体を製袋しやすい樹脂フィルムで構成し、必要な強度を補強テープ3a及び3bの材質によって付与することが可能となる。補強テープ3a及び3bには、例えば、ポリエチレンテレフタレート/延伸ナイロン/高密度ポリエチレンの層構成や、延伸ポリプロピレン/延伸ナイロン/ポリエチレンの層構成を有する積層フィルムを好適に利用できる。
【0017】
吊り下げ具の一部を挿通させるための吊り下げ部となる開孔5は、第1シート2a及び補強テープ3aの重なり部と、第1シート2b及び補強テープ3bの重なり部とに複数形成されている。補強テープ3a及び3bによって、開孔5近傍の引張り強度が向上しているため、開孔5に吊り下げ具を挿通させた使用状態において、開孔5近傍が伸びたり裂けたりすることを防止できる。
【0018】
ここで、本実施形態に係る吊り下げ袋1の製造方法を説明する。吊り下げ袋1は、既存のスタンディングパウチ製袋機を用いて製造することができる。具体的には、第1シート2a及び第2シート2bとなる一対の樹脂フィルムの間に、2つ折りにした底テープ4と、2つ折りにした補強テープ用の樹脂フィルムをそれぞれ挿入する。このとき、補強テープ用の樹脂フィルムには、折り曲げ線上または折り曲げ線に沿ってスリット加工を施しておく。このスリット加工は、吊り下げ袋1の一辺を開口させるための処理である。続いて、普通のスタンディングパウチの製袋と同様にヒートシール及び裁断を行った後、開孔5をパンチ加工等により形成することによって、吊り下げ袋1が完成する。
【0019】
図3は、変形例に係る吊り下げ袋の平面図である。
【0020】
吊り下げ袋7は、底テープを介在させずに、第1シート2a及び第2シート2bの3辺を直接シールすることによって袋本体が構成されている点と、開口部の代わりにU字型の切り込み6が設けられている点とにおいて、図1に示した吊り下げ袋1と相違する。切り込み6は、吊り下げ袋7の輪郭形成時に同時に形成可能である。したがって、図1に示した吊り下げ袋1と比べて、製造工程を1工程削減することができ、コスト的に有利である。また、吊り下げ袋7の打ち抜きと切り込み6の形成とを同時に行うことによって、輪郭から切り込み6までの距離dを一定に維持することができるので、吊り下げ強度の安定化を図ることが可能となる。ただし、切り込み6を設ける場合、切り込み6を起点として吊り下げ部が裂けることを防止するために、切り込み6の両端部が切り込み6の中央部よりも底部側に位置するように、切り込み6の形状及び向きを設定することが好ましい。吊り下げ袋7の輪郭形成と同時に切り込み6を形成する以外は、図1に示した吊り下げ袋と同様の製造工程によって吊り下げ袋7が製造される。
【0021】
以上説明したように、本発明によれば、開孔5または切り込み6の形成箇所が補強テープ3a及び3bによって補強されるので、吊り下げ強度に優れた吊り下げ袋1及び7を実現できる。また、第1シート2a及び第2シート2bからなる袋本体と、補強テープ3a及び3bとはいずれも樹脂フィルムによって構成されるので、製袋工程で両者を容易に溶着することができ、効率的かつ低コストに製造が可能となる。
【0022】
尚、補強テープ3a及び3bの最内面に更にシーラント層を設けて、補強テープ3a及び3bの端部同士を更にシールしても良い。
【0023】
また、補強テープ3a及び3bの両端部に更に開口部を設け、開口部から露出する第1シート2a及び第2シート2b同士をシールすることによって、開口部の両サイドを溶着しても良い。
【0024】
更に、補強テープ3a及び3bの最内面をポリエチレンテレフタレート層またはナイロン層とし、この際内面に粘着テープとライナーとを貼り付けても良い。最内面をポリエチレンテレフタレート層またはナイロン層とすることによって、粘着テープの接着性を向上させることができる。特に、改ざん防止機能を付与した粘着テープを補強テープ3a及び3bの内面に貼り付けた構成の吊り下げ袋は、欧州などで用いられている回転ドラム式の貴重品預入機に装着される収納袋として利用できる。
【0025】
更に、本実施形態では、袋本体として、底シールを挿入したパウチ及び3方をシールしたパウチを例示したが、袋本体の形状は特に限定されず、任意で良い。
【0026】
更に、本実施形態では、開口部の中央部に切欠部が設けられているが、この切欠部は吊り下げ具の形状に対応して設けられるものであるため、切欠部はなくても良い。
【0027】
更に、本実施形態では、開口部の端縁に沿って補強テープ3aおよび3bがシールされているが、開口部の端縁と補強テープ3aおよび3bの端縁とが必ずしも一致している必要はなく、開口部近傍の一部に補強テープ3aおよび3bが張り合わされていれば良い。
【実施例】
【0028】
以下、袋本体を構成するシート材と補強テープ材の様々な組み合わせを作製し、吊り下げ強度を評価した。吊り下げ強度の試験方法は次の通りである。25mm幅の試験片の一端に直径6mmの丸孔を形成し、形成した丸孔に金属棒を通して固定した。試験片の他端を引っ張り試験機によって速度300mm/minで引っ張り試験を行い、引っ張り強度を求めた。表1に実施例及び比較例に係る試験片の構成及び引っ張り強度を示す。
【表1】

【0029】
表1に示される比較例1は、重ね合わせた2枚のポリプロピレンフィルムの間に合成紙を挟んだ構成であり、比較例2及び3は、2枚のポリエチレンフィルムを重ね合わせた構成である。比較例1〜3は、いずれも市販されている吊り下げ袋と同一材質である。実施例1〜6は、比較例1〜3と同等の引っ張り強度を有することが確認された。また、比較例2、3においては補強テープが伸びてしまったが、実施例1〜6では、伸びは発生しなかった。。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、吊り下げ具に吊り下げて用いられる吊り下げ袋、別体の取っ手パーツを備える手提げ袋等に利用できる。
【符号の説明】
【0031】
1 吊り下げ袋
2a 第1シート
2b 第2シート
3a、3b 補強テープ
4 底テープ
5 開孔
6 切り込み
7 吊り下げ袋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊り下げ具に吊り下げ可能な吊り下げ袋であって、
樹脂フィルムよりなる第1シート及び第2シートを重ね合わせて周辺部をシールすることによって構成され、周辺部の一部に開口部が設けられる袋本体と、
樹脂フィルムよりなり、前記開口部の近傍に位置する前記第1シートの内面の一部と、前記開口部の近傍に位置する前記第2シートの内面の一部とに貼り合わされる一対の補強テープとを備え、
前記第1シートと前記補強テープとの重なり部分と、前記第2シートと前記補強テープとの重なり部分とに、前記吊り下げ具の一部を挿通させるための開孔または切り込みよりなる吊り下げ部が形成される、吊り下げ袋。
【請求項2】
前記第1シートおよび前記第2シートを構成する樹脂フィルムと、前記補強テープを構成する樹脂フィルムとが異なる、請求項1に記載の吊り下げ袋。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−23247(P2013−23247A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159197(P2011−159197)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】