説明

吊り装置

【課題】 可撓巻掛体を被吊り物の周囲に簡易に巻掛け可能にし、昇降装置により可撓巻掛体を直接引き上げて吊り上げ可能にすること。
【解決手段】 被吊り物1に可撓巻掛体40を巻掛け、昇降装置100により該可撓巻掛体40を引き上げて該被吊り物1を吊り移動可能にする吊り装置10において、昇降装置100により昇降される昇降架台20を有し、昇降装置100により引き上げられる可撓巻掛体40を被吊り物1の正背面及び下面に沿うU字状をなすように保持する巻掛アーム30を、被吊り物1の正面と背面に沿って該被吊り物1の正面視で該被吊り物1の外側〜内側の範囲において揺動可能に昇降架台20まわりに支持し、巻掛アーム30の揺動により該巻掛アーム30に保持されている可撓巻掛体40を被吊り物1の正背面及び下面に巻掛けた状態で、昇降装置100により該可撓巻掛体40を引き上げ又は引き下げて該被吊り物1を吊り上げ又は吊り下げ可能にするもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セグメント等の資材類、人体等の被吊り物を吊り上げ可能にする吊り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セグメントのための吊り装置として、特許文献1〜3に記載のものがある。
【0003】
特許文献1に記載の吊り装置は、左右一対の吊り枠部材をセグメントの左右から揺動させて開閉し、閉じ位置に設定された吊り枠部材の枠内にセグメントを保持した状態で、昇降装置により吊り枠部材を昇降させてセグメントを運搬可能にする。
【0004】
特許文献2に記載の吊り装置は、2台のホイスト装置から伸びるワイヤの先端に設けられている電磁石によりセグメントを吸着した状態で、ホイスト装置によりワイヤを伸縮させてセグメントを運搬可能にする。
【0005】
特許文献3に記載の吊り装置は、昇降装置により引き上げられるナイロンスリングやワイヤ等の帯材をセグメントに掛けて取付けた状態で、昇降装置により帯材を昇降させてセグメントを運搬可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9-4361
【特許文献2】特開2000-226998
【特許文献3】特開2001-288999
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の吊り装置は、セグメントを保持する吊り枠部材が、水平吊りビーム部材、吊り軸等を含む吊り冶具を介して昇降装置により引き上げられる。従って、吊り冶具の全体に、セグメントの吊り荷重に相当する大きな強度を確保する必要がある。
【0008】
また、特許文献1に記載の吊り装置は、セグメントを吊り枠部材により保持するものであり、セグメントを可撓巻掛体により保持するものでないから、コンクリート製のセグメントをキズ付けるおそれがある。
【0009】
特許文献2に記載の吊り装置は、2台のホイスト装置から伸びるワイヤの先端の電磁石によりセグメントを吸着して引き上げる。従って、セグメントは電磁石により吸着される鉄板製であることが必要とされ、コンクリート製のセグメントには適用できない。また、電磁石にセグメントの吊り荷重に相当する大きな磁力を確保する必要があり、大型の電磁石が必要になる。
【0010】
特許文献3に記載の吊り装置は、セグメントの周囲に帯材を手動で掛けて取付ける作業が必要であり、作業性が悪い。
【0011】
本発明の課題は、可撓巻掛体を被吊り物の周囲に簡易に巻掛け可能にし、昇降装置により可撓巻掛体を直接引き上げて吊り上げ可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に係る発明は、被吊り物に可撓巻掛体を巻掛け、昇降装置により該可撓巻掛体を引き上げて該被吊り物を吊り移動可能にする吊り装置において、昇降装置により昇降される昇降架台を有し、昇降装置により引き上げられる可撓巻掛体を被吊り物の正背面及び下面に沿うU字状をなすように保持する巻掛アームを、被吊り物の正面と背面に沿って該被吊り物の正面視で該被吊り物の外側〜内側の範囲において揺動可能に昇降架台まわりに支持し、巻掛アームの揺動により該巻掛アームに保持されている可撓巻掛体を被吊り物の正背面及び下面に巻掛けた状態で、昇降装置により該可撓巻掛体を引き上げ又は引き下げて該被吊り物を吊り上げ又は吊り下げ可能にするようにしたものである。
【0013】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において更に、前記昇降架台に巻掛アームのための開閉揺動装置を設けてなり、開閉揺動装置は、巻掛アームを被吊り物の外側から内側に向かう閉じ方向に揺動させる閉じモードにて可撓巻掛体を該被吊り物の周囲に巻掛け、巻掛アームを被吊り物の内側から外側に向かう開き方向に揺動させる開きモードにて可撓巻掛体を該被吊り物の周囲から取外し可能にするようにしたものである。
【0014】
請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明において更に、前記昇降架台が、架台本体と昇降体とからなり、昇降体は架台本体に対して昇降可能にガイドされるとともに、昇降装置に連結されて引き上げられた上昇端で架台本体に制止可能にされ、前記開閉揺動装置が、昇降フレームと、旋回アームと、昇降体に設けられる係脱手段とからなり、昇降フレームは架台本体に昇降可能にガイドされるとともに、巻掛アームの基端部を枢支してなり、旋回アームは架台本体に旋回可能に枢支され、旋回アームの旋回端に巻掛アームの中間部を枢支してなり、昇降装置により架台本体を被吊り物に載架させ、昇降装置により昇降体が上昇端から下降端に向けて下降する第1下降段階では、昇降体に設けられている係脱手段により、昇降体と昇降フレームを係合させて両者を一体結合させることにより、巻掛アームを閉じモードにて動作させて可撓巻掛体を被吊り物の周囲に巻掛け可能にし、昇降装置により昇降体が第1下降段階の下降端から上昇端に向けて上昇する第1上昇段階では、昇降体に設けられている係脱手段により、昇降体と昇降フレームとの係合を解除して昇降体だけを上昇させ、第1上昇段階の上昇端に達した昇降体が架台本体に制止される状態で、昇降装置によって架台本体とともに可撓巻掛体を引き上げることにより、可撓巻掛体が巻掛けられている被吊り物を吊り上げて運搬先へ運搬可能にし、昇降装置により運搬先に吊り下げた被吊り物に架台本体が載架している状態で、昇降装置により昇降体が第1上昇段階の上昇端から下降端に向けて下降する第2下降段階では、昇降体に設けられている係脱手段により、昇降体を昇降フレームと係合させることなく下降させ、昇降装置により昇降体が第2下降段階の下降端から上昇端に向けて上昇する第2上昇段階では、昇降体に設けられている係脱手段により、昇降体に昇降フレームを係合させて両者を一体結合させることにより、巻掛アームを開きモードにて動作させて可撓巻掛体を被吊り物の周囲から取外し可能にするようにしたものである。
【0015】
請求項4に係る発明は、請求項3に係る発明において更に、前記昇降体に設けられている係脱手段が、昇降体に設けられる係脱プレートからなり、第1下降段階では、昇降体の係脱プレートが昇降フレームの係合部に係合され、第1上昇段階と第2下降段階では、昇降体の係脱プレートが第1下降段階の下降端で昇降フレームの切換部材により非係合位置に切換えられ、該係脱プレートが昇降フレームの係合部に非係合とされ、第2上昇段階では、昇降体の係脱プレートが第2下降段階の下降端で昇降フレームの切換部材により係合位置に切換えられ、該係脱プレートが昇降フレームの係合部に係合されるようにしたものである。
【0016】
請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれかに係る発明において更に、前記可撓巻掛体が巻掛アームの被吊り物に臨む内面に取付けた中空カバーに挿通されて保持され、中空カバーは巻掛アームとの間に設けたばねにより常時巻掛アームの内面側に弾発的に引き寄せられてなるようにしたものである。
【0017】
請求項6に係る発明は、請求項3〜5のいずれかに係る発明において更に、前記架台本体と昇降フレームとの間に引張ばねが介装され、引張ばねは架台本体に対し鉛直下向き力を及ぼし可能にするようにしたものである。
【0018】
請求項7に係る発明は、請求項1〜6のいずれかに係る発明において更に、前記被吊り物がセグメントであるようにしたものである。
【発明の効果】
【0019】
(請求項1)
(a)昇降架台まわりに支持してある、巻掛アームの揺動により該巻掛アームに保持されている可撓巻掛体を被吊り物の正背面及び下面に巻掛けた状態で、昇降装置により該可撓巻掛体を引き上げ又は引き下げて該被吊り物を吊り上げ又は吊り下げ可能にする。
【0020】
これにより、巻掛アームの揺動により、可撓巻掛体を被吊り物の周囲に簡易に巻掛けできる。
【0021】
被吊り物に巻掛けた可撓巻掛体により被吊り物を保持して吊り上げるものであるから、被吊り物の材質に関係なく適用でき、被吊り物をキズ付けるおそれもない。
【0022】
被吊り物を保持する可撓巻掛体が昇降装置により直接引き上げられる。従って、被吊り物の吊り荷重は可撓巻掛体によってのみ担持され、昇降架台、巻掛アーム等には及ばないから、それらの昇降架台、巻掛アーム等に大きな強度を確保する必要がなく、全体の装置構成を小型軽量化できる。
【0023】
(請求項2)
(b)昇降架台に設けた開閉揺動装置により、巻掛アームを開閉し、その閉じモードにて可撓巻掛体を被吊り物の周囲に簡易に巻掛け、その開きモードにて可撓巻掛体を被吊り物の周囲から簡易に取外しできる。
【0024】
(請求項3)
(c)開閉揺動装置は、昇降装置により架台本体を被吊り物に載架させ、昇降装置により昇降体が上昇端から下降端に向けて下降する第1下降段階では、昇降体に設けられている係脱手段により、昇降体と昇降フレームを係合させて両者を一体結合させることにより、巻掛アームを閉じモードにて動作させて可撓巻掛体を被吊り物の周囲に巻掛け可能にし、昇降装置により昇降体が第1下降段階の下降端から上昇端に向けて上昇する第1上昇段階では、昇降体に設けられている係脱手段により、昇降体と昇降フレームとの係合を解除して昇降体だけを上昇させ、第1上昇段階の上昇端に達した昇降体が架台本体に制止される状態で、昇降装置によって架台本体とともに可撓巻掛体を引き上げることにより、可撓巻掛体が巻掛けられている被吊り物を吊り上げて運搬先へ運搬可能にする。
【0025】
また、開閉揺動装置は、昇降装置により運搬先に吊り下げた被吊り物に架台本体が載架している状態で、昇降装置により昇降体が第1上昇段階の上昇端から下降端に向けて下降する第2下降段階では、昇降体に設けられている係脱手段により、昇降体を昇降フレームと係合させることなく下降させ、昇降装置により昇降体が第2下降段階の下降端から上昇端に向けて上昇する第2上昇段階では、昇降体に設けられている係脱手段により、昇降体に昇降フレームを係合させて両者を一体結合させることにより、巻掛アームを開きモードにて動作させて可撓巻掛体を被吊り物の周囲から取外し可能にする。
【0026】
これにより、開閉揺動装置は、昇降装置により架台本体を被吊り物に載架させ、昇降装置による第1下降段階で昇降体を昇降フレームに係合させて下降させるだけで、可撓巻掛体を被吊り物の周囲に巻掛けできる。
【0027】
続いて、昇降装置による第1上昇段階で昇降体だけを上昇させ、上昇端に達した昇降体を架台本体に制止させる状態で、昇降装置により架台本体とともに可撓巻掛体を引き上げることにより、可撓巻掛体が巻掛けられている被吊り物を吊り上げて運搬できる。
【0028】
次に、昇降装置により運搬先に吊り下げた被吊り物に架台本体を載架させ、昇降装置による第2下降段階で昇降体を昇降フレームと係合させることなく下降させた後、続いて、昇降装置による第2上昇段階で昇降体を昇降フレームに係合させて上昇させるだけで、可撓巻掛体を被吊り物の周囲から取外しできる。
【0029】
即ち、開閉揺動装置は、昇降装置により昇降体を第1下降段階、第1上昇段階、第2下降段階、第2上昇段階の各段階にて順に昇降させるだけで、被吊り物への可撓巻掛体の巻掛け、可撓巻掛体が巻掛けられている被吊り物の運搬、運搬先での可撓巻掛体の被吊り物からの取外しを行なうことができる。
【0030】
(請求項4)
(d)昇降体に設けられている係脱手段が、昇降体に設けられる係脱プレートからなり、第1下降段階では、昇降体の係脱プレートが昇降フレームの係合部に係合され、第1上昇段階と第2下降段階では、昇降体の係脱プレートが第1下降段階の下降端で昇降フレームの切換部材により非係合位置に切換えられ、該係脱プレートが昇降フレームの係合部に非係合とされ、第2上昇段階では、昇降体の係脱プレートが第2下降段階の下降端で昇降フレームの切換部材により係合位置に切換えられ、該係脱プレートが昇降フレームの係合部に係合される。
【0031】
これにより、開閉揺動装置が昇降装置により昇降体を上述(c)の如くに第1下降段階、第1上昇段階、第2下降段階、第2上昇段階の各段階にて順に昇降させるときに、昇降体の係脱プレートを昇降フレームの係合部に確実に係合又は非係合させ、結果として、被吊り物への可撓巻掛体の巻掛け、可撓巻掛体が巻掛けられている被吊り物の運搬、運搬先での可撓巻掛体の被吊り物からの取外しを簡易な構成により確実に行なうことができる。
【0032】
(請求項5)
(e)前記可撓巻掛体は巻掛アームの被吊り物に臨む内面に取付けた中空カバーに挿通されて保持され、中空カバーは巻掛アームとの間に設けたばねにより常時巻掛アームの内面側に弾発的に引き寄せられる。
【0033】
(請求項6)
(f)架台本体と昇降フレームとの間に引張ばねが介装され、引張ばねが架台本体に対し鉛直下向き力を及ぼし可能にする。これにより、上述(c)の第2上昇段階で、昇降装置により昇降体及び昇降フレームを上昇させるとき、巻掛アームが開きモードにて動作する前に、架台本体が被吊り物から浮き上がることを防止し、可撓巻掛体を被吊り物の周囲から確実に取外し可能にする。
【0034】
(請求項7)
(g)セグメントを被吊り物とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は吊り装置を示す正面図である。
【図2】図2は吊り装置を示す側面図である。
【図3】図3は吊り装置を示す平面図である。
【図4】図4は吊り装置の昇降フレームと旋回アームと巻掛アームの移動軌跡を示す模式図である。
【図5】図5は吊り装置の要部を拡大して示す正面図である。
【図6】図6は巻掛アームと可撓巻掛体を示し、(A)は正面図、(B)は側面図である。
【図7】図7は可撓巻掛体のための巻掛ガイドを示し、(A)は平面図、(B)は正面図である。
【図8】図8は昇降装置による可撓巻掛体の引き上げ過程を示す模式図である。
【図9】図9は開閉揺動装置を示し、(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は平面図である。
【図10】図10は第1下降段階における巻掛アームの保持動作を示す模式図である。
【図11】図11は第1下降段階から第1上昇段階における巻掛アームの切換え動作を示す模式図である。
【図12】図12は第1上昇段階における可撓巻掛体の引き上げ動作を示す模式図である。
【図13】図13は第2上昇段階における巻掛アームの開き動作を示す模式図である。
【図14】図14は開閉揺動装置の動作を示す模式図である。
【図15】図15は開閉揺動装置の動作を示す模式図である。
【図16】図16は開閉揺動装置の動作を示す模式図である。
【図17】図17は開閉揺動装置の動作を示す模式図である。
【図18】図18は開閉揺動装置の動作を示す模式図である。
【図19】図19は開閉揺動装置の動作を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
吊り装置10は、図1〜図4に示す如く、被吊り物1、本実施例ではセグメントに帯状ナイロンスリング等の可撓巻掛体40を巻掛け、クレーン等の昇降装置100により該可撓巻掛体40を引き上げて該被吊り物1を吊り移動可能にする。図1において、2は被吊り物1を保管しておくための台座を示す。
【0037】
吊り装置10は、昇降装置100により昇降される昇降架台20を有するとともに、昇降装置100により引き上げられる左右一対をなす可撓巻掛体40のそれぞれを被吊り物1の左右から該被吊り物1の正面及び背面並びに下面に沿うU字状をなすように保持する左右の巻掛アーム30を有する。吊り装置10は、左右の巻掛アーム30を被吊り物1の正面と背面に沿って該被吊り物1の正面視(図1)で該被吊り物1の外側〜内側の範囲において揺動可能とするように、昇降架台20まわりに支持する。左右の各巻掛アーム30は、被吊り物1の正面の側に配置されるアーム30Aと、被吊り物1の背面の側に配置されるアーム30Bとからなる(図2、図3)。
【0038】
そして、吊り装置10は、左右の巻掛アーム30の上述の揺動により、それらの巻掛アーム30に保持されている左右の可撓巻掛体40を被吊り物1の正面及び背面並びに下面に巻掛けた状態で、昇降装置100によりそれらの可撓巻掛体40を引き上げ又は引き下げ、該被吊り物1を吊り上げ又は吊り下げ可能にする。
【0039】
また、吊り装置10は、昇降架台20に巻掛アーム30のための開閉揺動装置50を設けてある。開閉揺動装置50は、左右の各巻掛アーム30を被吊り物1の外側(原位置)から内側(巻掛位置)に向かう閉じ方向(図1、図4の矢印K方向)に揺動させる閉じモードにて、左右の各可撓巻掛体40を被吊り物1の周囲に巻掛け可能にする。また、開閉揺動装置50は、左右の各巻掛アーム30を被吊り物1の内側(巻掛位置)から外側(原位置)に向かう開き方向(図1、図4の矢印L方向)に揺動させる開きモードにて、左右の各可撓巻掛体40を被吊り物1の周囲から取外し可能にする。
【0040】
以下、吊り装置10の昇降架台20、巻掛アーム30、可撓巻掛体40、開閉揺動装置50の各部の具体的構成について、詳述する(図5〜図9)。
【0041】
昇降架台20は、図5に示す如く、架台本体21と左右一対をなす昇降体22とからなる。架台本体21は、吊り装置10による被吊り物1の吊り上げ/吊り下げ時に、被吊り物1の上面に載架される。架台本体21は、被吊り物1の上面に載架されるとき、被吊り物1の奥行き長さ(正面〜背面の長さ)の中央に吊り装置10、昇降架台20の中心が配置されるように、被吊り物1の正面に当接して被吊り物1に対する該昇降架台20の載架位置を規制する位置決めホーク21Fを有している(図1)。左右の昇降体22は、架台本体21に対して昇降可能にガイドされる(本実施例では、左右の昇降体22は、図9に示す如く、架台本体21に昇降可能にガイドされるように設けられる昇降フレーム51(昇降フレーム51に設けた左右の柱状スライドガイド51P)に、昇降可能にガイドされている)とともに、昇降装置100に金属ワイヤ等の連結体23を介して連結され、昇降装置100によりそのスライドガイド51Pに沿って昇降される。昇降装置100により引き上げられる昇降体22は、上昇端で架台本体21の不図示のストッパに衝合して制止される。
【0042】
左右の各巻掛アーム30は、図5に示す如く、架台本体21に昇降可能にガイドされるように設けられている昇降フレーム51から左右の外方に延出されているアーム支持部51Aに設けた枢支点Aにその基端部が枢支されるとともに、架台本体21の左右の両側部に設けた旋回中心Rに枢支した旋回アーム52の旋回端に設けた枢支点Bにその中間部が枢支される。昇降装置100により昇降フレーム51が架台本体21に対して昇降するとき、昇降フレーム51の枢支点Aが架台本体21の旋回中心Rに対する鉛直上位〜鉛直下位の範囲をa、b、c…r、s、tの如くの軌跡を描いて移動する結果、各巻掛アーム30のアーム30A、30Bの先端部に後述する如くに掛け渡した巻掛ガイド31、及び該巻掛ガイド31の内面に保持した可撓巻掛体40を被吊り物1の外側〜内側の周辺で閉じ方向K又は開き方向Lに沿うa、b、c…r、s、tの如くの軌跡を描いて移動可能にする。
【0043】
本実施例では、図4に示す如く、各巻掛アーム30のアーム30A、30Bの先端部に架け渡した巻掛ガイド31、及び可撓巻掛体40を、閉じモード(閉じ方向K)では、鉛直上位の側で被吊り物1の上方周辺の原位置からa、b、c…の如くに一旦被吊り物1から側方に離れる外側に大きく開いた後、続いて…r、s、tの如くに被吊り物1の下方周辺に臨む内側に閉じ、該可撓巻掛体40を被吊り物1の下部周囲に巻掛ける。また、開きモード(開き方向L)では、鉛直下位の側で被吊り物1の下部周囲の巻掛位置からt、s、r…の如くに一旦被吊り物1から側方に離れる外側に開いた後、続いて被吊り物1の上方周辺で…c、b、aの如くに閉じて原位置に戻り、該可撓巻掛体40を被吊り物1の周囲から取外す。
【0044】
左右の各可撓巻掛体40は、図1〜図3、図5に示す如く、左右の各巻掛アーム30の正面の側のアーム30Aと背面の側のアーム30Bに保持され、U字状をなす。このとき、可撓巻掛体40は、被吊り物1がコンクリート製であれば帯状ナイロンスリングとすることが好ましく、被吊り物1が鋼板製であれば金属ワイヤとしても良い。可撓巻掛体40のU字の2条をなす各縦辺部は、図5、図6に示す如く、巻掛アーム30の各アーム30A、30Bの被吊り物1の正面と背面に臨む内面に沿うように、それらの内面に後述する引張ばね41Aを介して取付けた中空カバー41に挿通されて保持される。可撓巻掛体40のU字の底辺部は、図5、図6に示す如く、巻掛アーム30の各アーム30A、30Bの先端部に掛け渡した巻掛ガイド31の被吊り物1の下面に臨む内面に沿うように、その内面に後述する板ばね42Aを介して取付けた中空カバー42に挿通されて保持される。中空カバー42は巻掛ガイド31の上述の内面への取付部(後述するつなぎ板33)から各アーム30A、30Bの先端部の上述の内面に沿う側にまで延在されるL字状をなす。
【0045】
ここで、巻掛アーム30の各アーム30A、30Bと中空カバー41との間に設けた引張ばね41Aが、中空カバー41を常時各アーム30A、30Bの上述の内面側に弾発的に引寄せる。また、中空カバー42の中空部に挿入されて該中空カバー42とともに巻掛ガイド31の後述するつなぎ板33に取付けた板ばね42Aの自由端が、中空カバー42を常時巻掛ガイド31と各アーム30A、30Bの上述の内面側に弾発的に引寄せる。
【0046】
尚、巻掛ガイド31は、図7に示す如く、2本のガイドロッド32、32をそれらの両端側で各つなぎ板33により連結一体化してなり、それらのガイドロッド32の先端部を巻掛アーム30の各アーム30A、30Bの先端部に取付けたスライドガイド34の2条の長孔35、35のそれぞれに挿通してある。各ガイドロッド32は、それらの両端部に取付けたストッパ板32Aにより、スライドガイド34の長孔35から抜け止めされる。巻掛ガイド31は、巻掛アーム30の長孔35から抜け止めされる。巻掛ガイド31は、巻掛アーム30の各アーム30A、30Bの基端部〜先端部に沿う長手方向に穿設されている上述の長孔35に沿ってスライド自在とされており、自由状態ではその自重により長孔35内でアーム30A、30Bの先端部の側に位置する。そして、前述した中空カバー42及び板ばね42Aの取付端が、巻掛ガイド31のつなぎ板33にリベット止め等により取付けられる。
【0047】
左右の各可撓巻掛体40は、たるみ状態でU字の2条をなす各縦辺部の自由端を昇降装置100のフック101に引掛けられ(図5)、開閉揺動装置50の閉じモードで閉じ動作される左右の各巻掛アーム30によって被吊り物1の周囲に巻掛けられ、その後、各可撓巻掛体40は昇降装置100により引き上げられるとき、昇降装置100が付与する引き上げ力に基づく張力により巻掛ガイド31を巻掛アーム30の各アーム30A、30Bの先端部に設けてあるスライドガイド34の長孔35に沿って図8(A)に示した待機位置から図8(B)の如くに引き上げ、巻掛アーム30及び巻掛ガイド31に設けてある中空カバー41、42を引張ばね41A、板ばね42Aの弾発力に抗して図8(B)〜(C)の如くに被吊り物1の表面に接するまで引き寄せる。これにより、各可撓巻掛体40は、中空カバー41、42を介して被吊り物1の正背面及び下面に隙間なく巻掛けられ、被吊り物1を吊り上げて運搬可能にする。
【0048】
尚、昇降装置100により被吊り物1を運搬先に吊り下げたときには、左右の各可撓巻掛体40は昇降装置100が付与していた張力を失う結果、中空カバー41、42は引張ばね41A、板ばね42Aの弾発力により巻掛アーム30の各アーム30A、30Bの内面側に沿う位置まで引き戻され、巻掛ガイド31は自重により巻掛アーム30の各アーム30A、30Bの先端部に設けてあるスライドガイド34の長孔35内でそれらのアーム30A、30Bの先端部の側の待機位置に復帰せしめられる(図8(A))。これにより、左右の各可撓巻掛体40は被吊り物1の周囲に巻掛けられた状態で、該被吊り物1の表面から離隔したたるみ状態になる。
【0049】
開閉揺動装置50は、昇降フレーム51と、旋回アーム52と、昇降体22に設けられる係脱手段53とからなる。昇降フレーム51は、前述した如く、架台本体21に設けた不図示のスライドガイドに昇降可能にガイドされるとともに、巻掛アーム30(アーム30A、30B)の基端部を枢支点Aにて枢支するアーム支持部51Aを左右の外方に延出して備える。旋回アーム52は架台本体21の左右の両側部に設けた旋回中心Rに旋回可能に枢支され、旋回アーム52の旋回端に設けた枢支点Bに巻掛アーム30(アーム30A、30B)の中間部を枢支する。
【0050】
開閉揺動装置50は、昇降装置100により架台本体21を被吊り物1の上面に載架させ、昇降装置100により昇降体22が上昇端から下降端に向けて下降する第1下降段階では、昇降体22に設けられている係脱手段53により、昇降体22と昇降フレーム51を係合させて両者を一体結合させることにより、巻掛アーム30(アーム30A、30B)を前述の閉じモードにて閉じ動作させ、可撓巻掛体40を被吊り物1の周囲に巻掛け可能にする。
【0051】
昇降装置100により昇降体22が第1下降段階の下降端から上昇端に向けて上昇する第1上昇段階では、昇降体22に設けられている係脱手段53により、昇降体22と昇降フレーム51との係合を解除して昇降体22だけを上昇させる。
【0052】
第1上昇段階の上昇端に達した昇降体22が架台本体21の不図示のストッパに制止される状態で、昇降装置100によって架台本体21とともに可撓巻掛体40を引き上げることにより、可撓巻掛体40が巻掛けられている被吊り物1を吊り上げて運搬先へ運搬可能による。
【0053】
昇降装置100により運搬先に吊り下げた被吊り物1に架台本体21が載架している状態で、昇降装置100により昇降体22が第1上昇段階の上昇端から下降端に向けて下降する第2下降段階では、昇降体22に設けられている係脱手段53により、昇降体22を昇降フレーム51と係合させることなく下降させる。
【0054】
昇降装置100により昇降体22が第2下降段階の下降端から上昇端に向けて上昇する第2上昇段階では、昇降体22に設けられている係脱手段53により、昇降体22に昇降フレーム51を係合させて両者を一体結合させることにより、巻掛アーム30(アーム30A、30B)を前述の開きモードにて開き動作させて可撓巻掛体40を被吊り物1の周囲から取外し可能にする。
【0055】
ここで、開閉揺動装置50の係脱手段53は、図9に示す如く、昇降体22に枢支点Pまわりで転回可能に枢支される蝶の羽根状をなす係脱プレート54からなる。そして、前述の第1下降段階では、昇降体22の係脱プレート54が昇降フレーム51の係合部、本実施例では窓孔状係合部55に係合される。また、前述の第1上昇段階と第2下降段階では、昇降体22の係脱プレート54が第1下降段階の下降端で昇降フレーム51の切換部材、本実施例では丸ロッド状切換部材56により非係合位置に切換えられ、該係脱プレート54が昇降フレーム51の丸孔状係合部55に非係合とされる。また、前述の第2上昇段階では、昇降体22の係脱プレート54が第2下降段階の下降端で昇降フレーム51の丸ロッド状切換部材56により係合位置に切換えられ、該係脱プレート54が昇降フレーム51の窓孔状係合部55に係合される。
【0056】
尚、吊り装置10にあっては、架台本体21の正背面及び左右側面まわりで、架台本体21と昇降フレーム51との間に複数条の引張ばね60が介装され、引張ばね60は架台本体21に対し鉛直下向き力を及ぼし可能にしている。
【0057】
従って、吊り装置10による被吊り物1の吊り上げ/吊り下げ、運搬作業は以下の如くになされる。
【0058】
(A)第1下降段階(図10(A)、(B)、(C)、図11(A)、(B)、図14(A)、(B)、図15(A)、(B)、図16(A)、(B))
昇降装置100のフック101に、昇降架台20の左右の昇降体22に設けてある連結体23を引掛け連結するとともに、左右のU字状可撓巻掛体40のU字の自由端を引掛け連結する。
【0059】
昇降装置100により、昇降架台20の架台本体21を、図10(A)に示す如く、被吊り物1の上面(本実施例では3層に積層した3個のセグメント1のうち、最上層に位置するセグメント1の上面)に載架される。
【0060】
昇降装置100により左右の昇降体22が上昇端から下降端に向けて下降する第1下降段階では、図10(A)、(B)、(C)、図11(A)、(B)に示す如く、昇降体22に設けられている係脱手段53により、昇降体22と昇降フレーム51を係合させて両者を一体化させることにより、昇降フレーム51が架台本体21に対し昇降体22とともに下降し、左右の巻掛アーム30を前述の如くに閉じモードにて閉じ動作させて左右の可撓巻掛体40を被吊り物1の周囲に巻掛ける。このとき、可撓巻掛体40はたるみ状態である。
【0061】
この第1下降段階の下降過程で、昇降体22の係脱手段53たる係脱プレート54は、図14(A)、(B)に示す如く、昇降フレーム51の窓孔状係合部55に係合し、昇降体22と昇降フレーム51を係合させて一体結合する。
【0062】
そして、第1下降段階の下降端から第1上昇段階への切換過程で、図15(A)、(B)、図16(A)、(B)に示す如く、昇降体22の係脱プレート54における枢支点Pを挟んで昇降フレーム51の窓孔状係合部55に対すると反対端の下面を昇降フレーム51の丸ロッド状切換部材56に当て、係脱プレート54を枢支点Pまわりで転回させることにより、係脱プレート54を昇降フレーム51の窓孔状係合部55との非係合位置に切換える。
【0063】
(B)第1上昇段階(図11(C)、図12(A)、(B)、(C)、図17)
上述(A)の第1下降段階に続き、昇降装置100により昇降体22が第1下降段階の下降端から上昇端に向けて上昇する第1上昇段階では、図11(C)、図12(A)、図17に示す如く、昇降体22に設けられている係脱手段53の係脱プレート54により、昇降体22と昇降フレーム51の窓孔状係合部55との係合を上述(A)の如くに解除して昇降体22だけを上昇させる。昇降装置100は昇降体22を上昇させるとともに、左右の可撓巻掛体40を引き上げるものになる。
【0064】
昇降装置100により第1上昇段階の上昇端に達した昇降体22は、図12(B)、(C)に示す如く、架台本体21の不図示のストッパに衝合して制止される。このとき、左右の可撓巻掛体40は、昇降装置100から張力を付与され、中空カバー41、42を引張ばね41A、板ばね42Aの弾発力に抗して被吊り物1の表面に接するまで引き寄せ、結果として該中空カバー41、42を介して該被吊り物1の正背面及び下面に緊張状態で隙間なく巻掛けられる。
【0065】
昇降装置100が左右の可撓巻掛体40を更に引き上げるとき、左右の可撓巻掛体40は、図12(C)に示す如く、被吊り物1を台座2から吊り上げて運搬先へ運搬可能にする。
【0066】
(C)第2下降段階(図18)
上述(B)の第1上昇段階で昇降装置100により運搬した被吊り物1を運搬先に吊り下げる。この被吊り物1に架台本体21が載架している状態で、昇降装置100により昇降体22が第1上昇段階の上昇端から下降端に向けて下降する第2下降段階では、図18に示す如く、昇降体22に設けられている係脱手段53の係脱プレート54により、昇降体22と昇降フレーム51の窓孔状係合部55との係合が前述(A)の如くに解除されており、昇降体22は昇降フレーム51と係合することなく下降する。
【0067】
この第2下降段階の下降端では、図18に示す如く、昇降体22の係脱プレート54における枢支点Pを挟んで昇降フレーム51の窓孔状係合部55に対すると反対端の下面が昇降フレーム51の丸ロッド状切換部材56に当たり、係脱プレート54を枢支点Pまわりで転回させることにより、係脱プレート54を昇降フレーム51の窓孔状係合部55との係合位置に切換える。
【0068】
このとき、左右の各可撓巻掛体40が昇降装置100により付与されていた張力を失う結果、中空カバー41、42は引張ばね41A、板ばね42Aの弾発力により巻掛アーム30、及び自重により待機位置に復帰せしめられる巻掛ガイド31の内面側に引き戻される。これにより、可撓巻掛体40は被吊り物1の周囲に巻掛けられた状態で該被吊り物1の表面から離隔してたるみ状態になる。
【0069】
(D)第2上昇段階(図13(A)、(B)、図19(A)、(B))
上述(C)の第2下降段階に続き、昇降装置100により昇降体22が第2下降段階の下降端から上昇端に向けて上昇する第2上昇段階では、図13(A)、(B)、図19(A)、(B)に示す如く、昇降体22に設けられている係脱手段53の係脱プレート54が昇降フレーム51の窓孔状係合部55と前述(C)の如くに係合している。従って、この第2上昇段階では、昇降フレーム51が架台本体21に対し、昇降体22とともに上昇し、左右の巻掛アーム30を前述の如くに開きモードにて開き動作させて左右の可撓巻掛体40を被吊り物1の周囲から取外す。
【0070】
その後、昇降装置100により、昇降体22を更に引き上げることにより、第2上昇段階の上昇端に達する昇降体22は、架台本体21の不図示のストッパに衝合して制止される。昇降装置100が昇降体22を更に引き上げると、架台本体21が被吊り物1の上面から離隔されるとともに、左右の可撓巻掛体40も被吊り物1の周囲から上述の如くに既に取外されていて、吊り装置10の全体が被吊り物1を運搬先に置き去りにし、新たな被吊り物1の吊り上げのために運搬元等へと移動可能になる。
【0071】
本実施例によれば、以下の作用効果を奏する。
(a)昇降架台20まわりに支持してある、巻掛アーム30の揺動により該巻掛アーム30に保持されている可撓巻掛体40を被吊り物1の正背面及び下面に巻掛けた状態で、昇降装置100により該可撓巻掛体40を引き上げ又は引き下げて該被吊り物1を吊り上げ又は吊り下げ可能にする。
【0072】
これにより、巻掛アーム30の揺動により、可撓巻掛体40を被吊り物1の周囲に簡易に巻掛けできる。
【0073】
被吊り物1に巻掛けた可撓巻掛体40により被吊り物1を保持して吊り上げるものであるから、被吊り物1の材質に関係なく適用でき、被吊り物1をキズ付けるおそれもない。
【0074】
被吊り物1を保持する可撓巻掛体40が昇降装置100により直接引き上げられる。従って、被吊り物1の吊り荷重は可撓巻掛体40によってのみ担持され、昇降架台20、巻掛アーム30等には及ばないから、それらの昇降架台20、巻掛アーム30等に大きな強度を確保する必要がなく、全体の装置構成を小型軽量化できる。
【0075】
(b)昇降架台20に設けた開閉揺動装置50により、巻掛アーム30を開閉し、その閉じモードにて可撓巻掛体40を被吊り物1の周囲に簡易に巻掛け、その開きモードにて可撓巻掛体40を被吊り物1の周囲から簡易に取外しできる。
【0076】
(c)開閉揺動装置50は、昇降装置100により架台本体21を被吊り物1に載架させ、昇降装置100により昇降体22が上昇端から下降端に向けて下降する第1下降段階では、昇降体22に設けられている係脱手段53により、昇降体22と昇降フレーム51を係合させて両者を一体結合させることにより、巻掛アーム30を閉じモードにて動作させて可撓巻掛体40を被吊り物1の周囲に巻掛け可能にし、昇降装置100により昇降体22が第1下降段階の下降端から上昇端に向けて上昇する第1上昇段階では、昇降体22に設けられている係脱手段53により、昇降体22と昇降フレーム51との係合を解除して昇降体22だけを上昇させ、第1上昇段階の上昇端に達した昇降体22が架台本体21に制止される状態で、昇降装置100によって架台本体21とともに可撓巻掛体40を引き上げることにより、可撓巻掛体40が巻掛けられている被吊り物1を吊り上げて運搬先へ運搬可能にする。
【0077】
また、開閉揺動装置50は、昇降装置100により運搬先に吊り下げた被吊り物1に架台本体21が載架している状態で、昇降装置100により昇降体22が第1上昇段階の上昇端から下降端に向けて下降する第2下降段階では、昇降体22に設けられている係脱手段53により、昇降体22を昇降フレーム51と係合させることなく下降させ、昇降装置100により昇降体22が第2下降段階の下降端から上昇端に向けて上昇する第2上昇段階では、昇降体22に設けられている係脱手段53により、昇降体22に昇降フレーム51を係合させて両者を一体結合させることにより、巻掛アーム30を開きモードにて動作させて可撓巻掛体40を被吊り物1の周囲から取外し可能にする。
【0078】
これにより、開閉揺動装置50は、昇降装置100により架台本体21を被吊り物1に載架させ、昇降装置100による第1下降段階で昇降体22を昇降フレーム51に係合させて下降させるだけで、可撓巻掛体40を被吊り物1の周囲に巻掛けできる。
【0079】
続いて、昇降装置100による第1上昇段階で昇降体22だけを上昇させ、上昇端に達した昇降体22を架台本体21に制止させる状態で、昇降装置100により架台本体21とともに可撓巻掛体40を引き上げることにより、可撓巻掛体40が巻掛けられている被吊り物1を吊り上げて運搬できる。
【0080】
次に、昇降装置100により運搬先に吊り下げた被吊り物1に架台本体21を載架させ、昇降装置100による第2下降段階で昇降体22を昇降フレーム51と係合させることなく下降させた後、続いて、昇降装置100による第2上昇段階で昇降体22を昇降フレーム51に係合させて上昇させるだけで、可撓巻掛体40を被吊り物1の周囲から取外しできる。
【0081】
即ち、開閉揺動装置50は、昇降装置100により昇降体22を第1下降段階、第1上昇段階、第2下降段階、第2上昇段階の各段階にて順に昇降させるだけで、被吊り物1への可撓巻掛体40の巻掛け、可撓巻掛体40が巻掛けられている被吊り物1の運搬、運搬先での可撓巻掛体40の被吊り物1からの取外しを行なうことができる。
【0082】
(d)昇降体22に設けられている係脱手段53が、昇降体22に設けられる係脱プレート54からなり、第1下降段階では、昇降体22の係脱プレート54が昇降フレーム51の窓孔状係合部55に係合され、第1上昇段階と第2下降段階では、昇降体22の係脱プレート54が第1下降段階の下降端で昇降フレーム51の丸ロッド状切換部材56により非係合位置に切換えられ、該係脱プレート54が昇降フレーム51の窓孔状係合部55に非係合とされ、第2上昇段階では、昇降体22の係脱プレート54が第2下降段階の下降端で昇降フレーム51の丸ロッド状切換部材56により係合位置に切換えられ、該係脱プレート54が昇降フレーム51の窓孔状係合部55に係合される。
【0083】
これにより、開閉揺動装置50が昇降装置100により昇降体22を上述(c)の如くに第1下降段階、第1上昇段階、第2下降段階、第2上昇段階の各段階にて順に昇降させるときに、昇降体22の係脱プレート54を昇降フレーム51の窓孔状係合部55に確実に係合又は非係合させ、結果として、被吊り物1への可撓巻掛体40の巻掛け、可撓巻掛体40が巻掛けられている被吊り物1の運搬、運搬先での可撓巻掛体40の被吊り物1からの取外しを簡易な構成により確実に行なうことができる。
【0084】
(e)前記可撓巻掛体40は巻掛アーム30の被吊り物1に臨む内面に取付けた中空カバーに挿通されて保持され、中空カバー41、42は巻掛アーム30との間に設けたばね41A、42Aにより常時巻掛アーム30の内面側に弾発的に引き寄せられる。
【0085】
(f)架台本体21と昇降フレーム51との間に引張ばね60が介装され、引張ばね60が架台本体21に対し鉛直下向き力を及ぼし可能にする。これにより、上述(c)の第2上昇段階で、昇降装置100により昇降体22及び昇降フレーム51を上昇させるとき、巻掛アーム30が開きモードにて動作する前に、架台本体21が被吊り物1から浮き上がることを防止し、可撓巻掛体40を被吊り物1の周囲から確実に取外し可能にする。
【0086】
(g)セグメントを被吊り物1とすることができる。
【0087】
以上、本発明の実施例を図面により詳述したが、本発明の具体的な構成はこの実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。例えば、被吊り物に巻掛けられる可撓巻掛体、又は該可撓巻掛体を保持する巻掛アーム等は左右一対をなすことなく、唯1個からなるものでも良い。
【0088】
また、昇降架台のための昇降装置と、可撓巻掛体のための昇降装置とは、互いに異なるものでも良い。
【0089】
また、開閉揺動装置は巻掛アームを閉じモードと開きモードで揺動させ、可撓巻掛体を被吊り物の周囲に巻掛け、取外し可能にするものであれば良く、昇降フレームと旋回アームと係脱手段とからなるものに限らない。
【0090】
また、架台本体の自重が大きく、第2上昇段階における巻掛アームの開きモードで、架台本体が被吊り物の上面から浮き上がるおそれがないときには、架台本体と昇降フレームとの間の引張ばねは必須とされない。
【0091】
また、被吊り物はセグメントに限らず、他の資材類、又は人体等であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明によれば、可撓巻掛体を被吊り物の周囲に簡易に巻掛け可能にし、昇降装置により可撓巻掛体を直接引き上げて吊り上げ可能にする。
【符号の説明】
【0093】
1 被吊り物
10 吊り装置
20 昇降架台
21 架台本体
22 昇降体
30 巻掛アーム
31 巻掛ガイド
40 可撓巻掛体
50 開閉揺動装置
51 昇降フレーム
52 旋回アーム
53 係脱手段
54 係脱プレート
60 引張ばね
100 昇降装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被吊り物に可撓巻掛体を巻掛け、昇降装置により該可撓巻掛体を引き上げて該被吊り物を吊り移動可能にする吊り装置において、
昇降装置により昇降される昇降架台を有し、
昇降装置により引き上げられる可撓巻掛体を被吊り物の正背面及び下面に沿うU字状をなすように保持する巻掛アームを、被吊り物の正面と背面に沿って該被吊り物の正面視で該被吊り物の外側〜内側の範囲において揺動可能に昇降架台まわりに支持し、
巻掛アームの揺動により該巻掛アームに保持されている可撓巻掛体を被吊り物の正背面及び下面に巻掛けた状態で、昇降装置により該可撓巻掛体を引き上げ又は引き下げて該被吊り物を吊り上げ又は吊り下げ可能にすることを特徴とする吊り装置。
【請求項2】
前記昇降架台に巻掛アームのための開閉揺動装置を設けてなり、
開閉揺動装置は、
巻掛アームを被吊り物の外側から内側に向かう閉じ方向に揺動させる閉じモードにて可撓巻掛体を該被吊り物の周囲に巻掛け、
巻掛アームを被吊り物の内側から外側に向かう開き方向に揺動させる開きモードにて可撓巻掛体を該被吊り物の周囲から取外し可能にする請求項1に記載の吊り装置。
【請求項3】
前記昇降架台が、架台本体と昇降体とからなり、
昇降体は架台本体に対して昇降可能にガイドされるとともに、昇降装置に連結されて引き上げられた上昇端で架台本体に制止可能にされ、
前記開閉揺動装置が、昇降フレームと、旋回アームと、昇降体に設けられる係脱手段とからなり、
昇降フレームは架台本体に昇降可能にガイドされるとともに、巻掛アームの基端部を枢支してなり、
旋回アームは架台本体に旋回可能に枢支され、旋回アームの旋回端に巻掛アームの中間部を枢支してなり、
昇降装置により架台本体を被吊り物に載架させ、昇降装置により昇降体が上昇端から下降端に向けて下降する第1下降段階では、昇降体に設けられている係脱手段により、昇降体と昇降フレームを係合させて両者を一体結合させることにより、巻掛アームを閉じモードにて動作させて可撓巻掛体を被吊り物の周囲に巻掛け可能にし、
昇降装置により昇降体が第1下降段階の下降端から上昇端に向けて上昇する第1上昇段階では、昇降体に設けられている係脱手段により、昇降体と昇降フレームとの係合を解除して昇降体だけを上昇させ、
第1上昇段階の上昇端に達した昇降体が架台本体に制止される状態で、昇降装置によって架台本体とともに可撓巻掛体を引き上げることにより、可撓巻掛体が巻掛けられている被吊り物を吊り上げて運搬先へ運搬可能にし、
昇降装置により運搬先に吊り下げた被吊り物に架台本体が載架している状態で、昇降装置により昇降体が第1上昇段階の上昇端から下降端に向けて下降する第2下降段階では、昇降体に設けられている係脱手段により、昇降体を昇降フレームと係合させることなく下降させ、
昇降装置により昇降体が第2下降段階の下降端から上昇端に向けて上昇する第2上昇段階では、昇降体に設けられている係脱手段により、昇降体に昇降フレームを係合させて両者を一体結合させることにより、巻掛アームを開きモードにて動作させて可撓巻掛体を被吊り物の周囲から取外し可能にする請求項2に記載の吊り装置。
【請求項4】
前記昇降体に設けられている係脱手段が、昇降体に設けられる係脱プレートからなり、
第1下降段階では、昇降体の係脱プレートが昇降フレームの係合部に係合され、
第1上昇段階と第2下降段階では、昇降体の係脱プレートが第1下降段階の下降端で昇降フレームの切換部材により非係合位置に切換えられ、該係脱プレートが昇降フレームの係合部に非係合とされ、
第2上昇段階では、昇降体の係脱プレートが第2下降段階の下降端で昇降フレームの切換部材により係合位置に切換えられ、該係脱プレートが昇降フレームの係合部に係合される請求項3に記載の吊り装置。
【請求項5】
前記可撓巻掛体が巻掛アームの被吊り物に臨む内面に取付けた中空カバーに挿通されて保持され、中空カバーは巻掛アームとの間に設けたばねにより常時巻掛アームの内面側に弾発的に引き寄せられてなる請求項1〜4のいずれかに記載の吊り装置。
【請求項6】
前記架台本体と昇降フレームとの間に引張ばねが介装され、引張ばねは架台本体に対し鉛直下向き力を及ぼし可能にする請求項3〜5のいずれかに記載の吊り装置。
【請求項7】
前記被吊り物がセグメントである請求項1〜6のいずれかに記載の吊り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−28428(P2013−28428A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164835(P2011−164835)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(511182725)ケイエムテック株式会社 (1)
【Fターム(参考)】