説明

吊り金具装置

【課題】取り付けや調整等が容易であると共に、不用意な負荷により破損等することを抑制可能な脱輪防止部材を備えた吊り金具装置を提供すること。
【解決手段】略矩形板状の底板部と、略矩形板状の立設板部とを備える吊り金具本体と、レール本体上を転動可能に形成される一対のハンガローラを有するローラ部と、を備える吊り金具装置において、立設板部に一対のハンガローラを上下方向に調整可能に取り付け、立設板部のレール部と吊り金具本体の底板部との間に、断面形状における長径方向に位置する長径部と、断面形状における短径方向に位置する短径部と、長径部と短径部との間に位置する曲面部とによって構成する当接部を有する一対の脱輪防止部材を、吊り金具本体の立設板部に取り付けた際に、一対の長径部が立設板部の短手方向に対して時計回り方向に傾斜した状態になるように配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊り金具装置に関し、特には、スライド式の自動ドアを吊り下げた状態で移動させる吊り金具装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動ドアには、当該自動ドアを吊り下げた状態で移動させるために、吊り金具装置が取り付けられる。吊り金具装置は、自動ドアの上部に取り付けられる吊り金具本体と、吊り金具本体に回転自在に固定されるハンガローラとを備える。
【0003】
一方、自動ドアを吊り下げた状態で移動させるための自動ドア取り付け枠には、その上枠に、いわゆる、自動ドア吊り込み用のハンガレールが設けられている。ハンガレールは、自動ドア取り付け枠の上枠に固定されるベース部と、ベース部に一体に形成されるレール部とを備える。
【0004】
自動ドアは、ハンガレールのレール部の上を、吊り金具装置のハンガローラを転動させることにより、移動するように構成されている。そのため、自動ドアにおいては、ハンガローラがレール部の上を移動するときにレール部から脱輪することを防止することが重要となる。
【0005】
これに対しては、レール部を移動するハンガローラの他に、脱輪を防止する脱輪防止用の複数のローラを設けた吊り金具装置に係る技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、特許文献1に記載の吊り金具装置は、ハンガローラの他に複数のローラが必要になる。そのため、部品点数が増えると共に、吊り金具本体の形状が複雑になる。これにより、コストアップに繋がるという問題がある。また、吊り金具本体に複数のローラを取り付けるための複数の取り付け穴を形成するため、吊り金具本体の強度が低下するという問題がある。
【0006】
これに対しては、レール部の上を転動するハンガローラの上方に、脱輪を防止するための突き出し部をベース部と一体に形成した技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
特許文献2に記載の技術は、ハンガレールに突き出し部を設けることにより、部品点数を増やすことなく吊り金具装置の脱輪を防止することができる。
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載の技術は、自動ドアを吊り込むときに、レール部にハンガローラを乗せた後、自動ドアの上部に取り付けた吊り金具本体をハンガローラに固定しなければならない。そのため、例えば、自動ドアの幅が広い場合には吊り金具本体同士の間も広くなり、位置合わせを行うことが困難となる。これは、作業者にとって大変繁雑な作業であった。
【0008】
これに対しては、レール部における脱輪を抑制する脱輪防止部材を吊り金具本体に取り付けるにより、自動ドアの吊り込み作業の困難性が解消されると共に、脱輪が抑制可能となる。脱輪防止部材を脱輪防止部材とハンガローラとでレール部を挟むように配置することにより、例えば、ハンガローラに脱線しようとする作用が働いたときに、脱線防止部材がレール部の下部に接触し、ハンガローラの脱線が抑制される。
【0009】
ここで、脱輪防止部材は、レール部との間に所定(例えば、0.5〜1.0mm)のクリアランスを設けて取り付けられる。また、脱輪防止部材は、通常、ボルトナットにより吊り金具本体に固定される。そのため、例えば、ナットを締めるとボルトつきの脱輪防止部材がナットと同じ方向に回転しやすい。これにより、上述のクリアランスの設定が困難になるという問題がある。
【0010】
また、吊り金具装置には、自動ドアの建付けに追従できるように、脱輪防止部材が上下方向にスライドできるように脱輪防止部材の取付部を長穴に形成したものがある(例えば、特許文献3、4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平10−238205号公報
【特許文献2】実開昭63−19675号公報
【特許文献3】特開平6−33664号公報
【特許文献4】特開昭52−94638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述の脱輪防止部材は、例えば、自動ドアが不用意に押し上げられた場合等、下から過剰な負荷が加わった場合には、長穴における脱輪防止部材の位置ずれを起こしやすい。また、脱輪防止部材が破損するおそれもある。これにより、ハンガローラの脱輪を招くおそれがある。
これに対しては、例えば、脱輪防止部材に設けられるボルトの軸を太くして強度を向上させ、脱輪防止部材の位置ずれや破損等を抑制することが考えられる。しかしながら、ボルトの軸を太くすると、ナットが大きくなってしまう。そのため、脱輪防止部材の取り付け時や調整時等に大形状のナット締め付け工具を必要とし、作業性が悪化する。
【0013】
本発明は、取り付けや調整等が容易であると共に、不用意な負荷により破損等することを抑制可能な脱輪防止部材を備えた吊り金具装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の本発明の吊り金具装置は、自動ドアの上部に固定され略矩形板状の底板部と、底板部と直交する方向に立設する略矩形板状の立設板部とを備える吊り金具本体と、
前記吊り金具本体の立設板部に回転自在に軸支され、自動ドア取り付け枠の上枠に固定されたベース部と一体に形成されるレール部に形成され上方に隆起するように形成されるレール本体上を転動可能に形成される一対のハンガローラを有するローラ部と、
を備える吊り金具装置において、
前記一対のハンガローラは、前記レール本体の隆起形状に合わせて円弧状に凹む溝部を形成してなり、
前記吊り金具本体の立設板部に前記ローラ部を上下方向に調整可能に取り付けることにより前記一対のハンガローラを上下方向に調整可能に取り付け、
前記吊り金具本体の立設板部の前記レール部と前記吊り金具本体の底板部との間に、断面形状における長径方向に位置する長径部と、断面形状における短径方向に位置する短径部と、前記長径部と前記短径部との間に位置する曲面部とによって構成する当接部を有する一対の脱輪防止部材を、前記吊り金具本体の立設板部に取り付けた際に、前記一対の長径部が前記立設板部の短手方向に対して時計回り方向に傾斜した状態になるように配置することを特徴としている。
【0015】
請求項2記載の本発明の吊り金具装置は、請求項1に記載の吊り金具装置において、前記当接部を、断面形状がオーバル形状の柱状に形成し、外周面に長径部、短径部及び曲面部が設けられていることを特徴としている。
【0016】
請求項3記載の本発明の吊り金具装置は、請求項1に記載の吊り金具装置において、前記当接部を、断面形状が楕円形状の柱状に形成し、外周面に長径部、短径部及び曲面部が設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、取り付けや調整等が容易であると共に、不用意な負荷により破損等することを抑制可能な脱輪防止部材を備えた吊り金具装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る吊り金具装置を示す側面図である。
【図2】本実施形態に係る吊り金具装置の側面図である。
【図3】本実施形態に係る吊り金具装置の正面図及び背面図の一部を示す説明図である。
【図4】本実施形態に係る吊り金具装置の分解組立図である。
【図5】(a)は本実施形態に係る吊り金具本体の正面図であり、(b)は吊り金具本体の平面図である。
【図6】(a)は本実施形態に係る脱輪防止部材の正面図であり、(b)は脱輪防止部材の側面図であり、(c)は脱輪防止部材の平面図である。
【図7】(a)は他の形態に係る脱輪防止部材の正面図であり、(b)は他の形態に係る脱輪防止部材の側面図であり、(c)は他の形態に係る脱輪防止部材の平面図である。
【図8】本実施形態に係る脱輪防止部材を回転させた状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態に係る吊り金具装置1について、図1から図7(c)を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る吊り金具装置1を示す側面図である。
図1に示すように、本実施形態に係る吊り金具装置1は、自動ドア10の上面(上部)10aに金具固定ボルト11により固定され、自動ドア10を吊り下げた状態で、自動ドア取り付け枠の上枠12に固定されたハンガレール(上部レール)13の上を移動自在に形成されている。
【0020】
まず、吊り金具装置1が自動ドア10を吊り下げた状態で移動するハンガレール13について簡単に説明する。
図1に示すように、ハンガレール13は、アルミニウム引き抜き材により形成されている。ハンガレール13は、自動ドア取り付け枠の上枠12に沿って自動ドア10が移動するように、上枠12に沿って形成される。本実施形態においては、ハンガレール13は、上枠12に沿った直線状に形成されている。
【0021】
ハンガレール13は、自動ドア取り付け枠の上枠12に固定されるベース部14と、ベース部14と一体に形成されるレール部15とを備える。
ベース部14は、上枠に固着される固着部16と、所定の強度を確保するために中空状に形成された中空部17aを有する補強部17と、を備える。
レール部15は、補強部17と一体に形成されている。レール部15は、基端が補強部17に連結されており、補強部17から延出するように形成されている。
【0022】
また、レール部15は、先端に形成される鍔部18と、鍔部18と基端(補強部17)との間に形成されるレール本体19と、を備える。
鍔部18は、上方に突出するように形成されており、後述のハンガローラ3の脱輪を規制する。
レール本体19は、上方に隆起するように形成されており、後述のハンガローラ3が転動する。
【0023】
次に、吊り金具装置1について、図1に加え、図2から図6(c)を参照しながら説明する。
図2は、本実施形態に係る吊り金具装置1の側面図である。図3は、本実施形態に係る吊り金具装置1の正面図及び背面図の一部を示す説明図である。図4は、本実施形態に係る吊り金具装置1の分解組立図である。図5(a)は、本実施形態に係る吊り金具本体2の正面図である。図5(b)は、吊り金具本体2の平面図である。図6(a)は、本実施形態に係る脱輪防止部材4の正面図である。図6(b)は、脱輪防止部材4の側面図である。図6(c)は、脱輪防止部材4の平面図である。
【0024】
図1から図4に示すように、吊り金具装置1は、自動ドア10の上面10aに取り付けられる吊り金具本体2と、吊り金具本体2をレール部15に沿って移動させる一対のハンガローラ3,3を有するローラ部5と、一対のハンガローラ3,3の脱輪を抑制する一対の脱輪防止部材4,4と、を備える。
【0025】
図1から図5(b)に示すように、吊り金具本体2は、所定形状に打ち抜かれた金属板を折り曲げ加工(略L字状に折り曲げ加工)することにより形成されている。吊り金具本体2は、略矩形板状の底板部20と、底板部20と直交する方向に立設する略矩形板状の立設板部21と、を備える。
【0026】
底板部20は、自動ドア10の上面10aに当接可能に形成されている。また、底板部20の長手方向における両端部の近傍には、自動ドア10の上面10aに当接させたときに、自動ドア10の上面10aに形成された一対の固定穴10b、10b(図4参照)と位置を同じくする(一対の固定穴10b、10bと重複可能な)一対の挿通穴22,22が形成されている。
【0027】
一対の挿通穴22,22は、底板部20の短手方向に長い長穴状に形成されている。また、一対の挿通穴22,22は、一対の固定穴10b、10b(図4参照)に螺合可能な一対の金具固定ボルト11,11を挿通可能に形成されている。つまり、一対の挿通穴22,22を挿通させた一対の金具固定ボルト11,11を、一対の固定穴10b、10bに螺合することにより、吊り金具本体(底板部20)2は、自動ドア10に固定される(図1及び図4参照)。
【0028】
立設板部21は、基端部が底板部20の長手方向に延びる一方側の周縁と連結しており、底板部20と略90度の角度をなすように立設している。また、立設板部21の長手方向は、底板部の長手方向と一致しており、立設板部21の短手方向は、立設板部21が立設する方向(底板部と略90度をなす方向)となっている。
立設板部21は、一対の第1位置調整穴(第1調整部)23,23と、一対の第2位置調整穴24,24と、連結部25と、を備える。
【0029】
一対の第1位置調整穴23,23は、底板部20の近傍であって、立設板部21の長手方向における両端部の近傍に形成されている。また、一対の第1位置調整穴23,23は、短手方向(立設板部21における上下方向)に長い長穴状に形成されている。一対の第1位置調整穴23,23は、一対の脱輪防止部材4,4を短手方向(立設板部21における上下方向)における所定の位置で固定するために用いられる。
【0030】
一対の第2位置調整穴24,24は、一対の第1位置調整穴23,23の上方側であって、立設板部21の長手方向における両端部の近傍に形成されている。また、一対の第2位置調整穴24,24は、短手方向(立設板部21における上下方向)に長い長穴状に形成されている。一対の第2位置調整穴24,24は、一対のハンガローラ3,3を備えるローラ部5を短手方向(立設板部21における上下方向)における所定の位置で固定するために用いられる。
【0031】
連結部25は、立設板部21の略中央部における上端部近傍に形成されている。連結部25は、一対の第2位置調整穴24,24で所定の位置に固定されたローラ部5を、連結ボルト27で吊り金具本体2に連結する(図1及び図4参照)。連結部25は、立設板部21の一部を折り曲げ加工することにより形成されている。連結部25は、立設板部21に対して略90度の折り曲げ加工がなされており、立設板部21の基端部において底板部20が位置する側と反対側に折り曲げられている。
また、連結部25の略中央には、連結穴26が形成されている。連結穴26は、連結ボルト27を螺合可能に形成されている。
【0032】
ローラ部5は、一対のハンガローラ3,3と、一対のハンガローラ3,3を回転自在に固定する第1金具部50と、第1金具部50を固定する第2金具部51と、を備える。
ハンガローラ3は、ローラ本体30と、軸部31と、を備える。
ローラ本体30は、耐摩耗性を有する合成樹脂材料により形成されている。また、ローラ本体30は、円弧状に凹む溝部32と、テーパ部33とを備える。溝部32は、ローラ本体30の全周に渡って形成されている。また、溝部32は、脱輪防止及び耐摩耗性等の観点から、レール部15におけるレール本体19の隆起形状に合わせて(レール本体19と溝部32とが当接するように)形成されている。テーパ部33は、溝部32における両側の周縁に、全周に渡って形成されている。
【0033】
軸部31は、基端部が第1金具部50に連結されており、ローラ本体30を回転自在に第1金具部50に固定する。
【0034】
第1金具部50は、矩形板状に形成されている。第1金具部50の長手方向における両側には、軸部31の基端部が連結されている。また、第1金具部50の長手方向における略中央には、締結穴(図示せず)が形成されている。
【0035】
第2金具部51は、矩形板状に形成された第2金具本体部52と、第1金具部50の締結穴を貫通可能に形成された第1ボルト部53(図3参照)と、一対の第2位置調整穴24,24を貫通可能に形成された一対の第2ボルト部54,54と、立設板部21の連結部25と連結可能に形成された被連結部55と、を備える。
【0036】
第1ボルト部53は、第2金具本体部52の一方側の面52aに連結されている。第1ボルト部53は、第1金具部50の締結穴を貫通した後、所定の締結ナット(例えば、M8のナット)56を締結することにより、第1金具部50を第2金具本体部52に固定する(図3参照)。
一対の第2ボルト部54,54は、第2金具本体部52の他方側の面52bに連結されている。一対の第2ボルト部54,54は、一対の第2位置調整穴24,24を貫通した後、所定の締結ナット(例えば、M8のナット)57,57を締結することにより、第2金具本体部52を吊り金具本体2に固定する。
被連結部55は、第2金具本体部52の他方側の面52aに設けられている。また、被連結部55は、連結穴26に螺合される連結ボルト27と係合可能に形成されている。つまり、被連結部55と係合させた状態で連結ボルト27を連結穴26に螺合させることにより、吊り金具本体2と第2金具本体部52とが連結される。
【0037】
図6(a)から図6(c)に示すように、脱輪防止部材4は、軸方向と直交する方向における断面形状が楕円形状に形成された筒形の当接部40と、第1位置調整穴23を貫通可能に形成された回転調整ボルト41と、を備える。
【0038】
当接部40は、金属材料により形成された当接部本体42と、合成樹脂材料により形成された樹脂部43と、を備える。
当接部本体42は、柱状に形成されており、軸方向と直交する方向における断面形状が楕円形状に形成されている。
樹脂部43は、当接部本体42の外周面を被覆する。また、樹脂部43は、当接部本体43の断面形状(楕円形状)における長径方向の外周面に位置する一対の長径部44a,44bと、当接部本体43の断面形状(楕円形状)における短径方向の外周面に位置する一対の短径部45a,45bと、一対の長径部44a,44bと一対の短径部45a,45bとの間に位置する二対の曲面部46a,46bとを備える。
二対の曲面部46a,46bそれぞれは、長径部44a,44bから短径部45a,45bに向かってなだらかな曲面を構成するように形成されている。
【0039】
回転調整ボルト41は、金属材料により形成されており、基端部が当接部本体42に連結されている。また、回転調整ボルト41の先端部には、回転調整部(第2調整部)47が形成されている。
回転調整部47は、溝状に形成されており、例えば、マイナスドライバー等の先端を係合可能に形成されている。また、回転調整ボルト41の外周面には、所定の調整ナット(例えば、M8のナット)48と螺合可能なネジ溝が形成されている。
【0040】
ここで、脱輪防止部材4の他の形態(脱輪防止部材4A)について、図7(a)から図7(c)を参照しながら説明する。
図7(a)は、他の形態に係る脱輪防止部材4Aを示す正面図である。図7(b)は、他の形態に係る脱輪防止部材4Aを示す側面図である。図7(c)は、他の形態に係る脱輪防止部材4Aを示す平面図である。
【0041】
図7(a)から図7(c)に示すように、他の形態に係る脱輪防止部材4Aは、当接部40Aの形状が異なる点において、脱輪防止部材4と相違する。そのため、ここでは、脱輪防止部材4と相違する点、つまり、当接部40Aについて説明する。なお、脱輪防止部材4Aにおいては、脱輪防止部材4と同様の構成のものについては、同じ符号を付して説明を省略する。また、脱輪防止部材4と同様の機能を有するものについては、同じ番号の後に符号「A」を付して、後述の作用の説明は省略する。
【0042】
脱輪防止部材4Aは、柱状の当接部40Aと、第1位置調整穴23を貫通可能に形成された回転調整ボルト41と、を備える。
当接部40Aは、金属材料により形成された当接部本体42Aと、合成樹脂材料により形成された樹脂部43Aと、を備える。
【0043】
当接部本体42Aは、柱状に形成されており、軸方向と直交する方向における断面形状が長径と短径を有する略矩形状に形成されている。具体的には、当接部本体42Aは、軸方向と直交する方向の断面形状のうち、対角線上にある一対の角部に該当する部分を曲線状にした形状に形成されている。
【0044】
樹脂部43Aは、当接部本体42Aの外周面を被覆する。また、樹脂部43は、当接部本体42Aにおける断面形状の長径方向の外周面に位置する一対の長径部44aA,44bAと、当接部本体42Aにおける断面形状の短径方向の外周面に位置する一対の短径部45aA,45bAと、一対の長径部44aA,44bAと一対の短径部45aA,45bAとの間に位置する一対の曲面部46aA,46bAと、を備える。
一対の曲面部46aA,46bAは、長径部44aA,44bAから短径部45aA,45bAに向かってなだらかな曲面を構成するように形成される。
【0045】
次に、本実施形態に係る吊り金具装置1の作用について、図1から図6(c)に加え、図8を参照しながら説明する。
図8は、本実施形態に係る脱輪防止部材4を回転させた状態を示す説明図である。
【0046】
図4に示すように、まず、吊り金具本体2にローラ部5及び脱輪防止部材4を取り付ける。具体的には、一対の第2位置調整穴24,24に第2金具部51に設けられる一対の第2ボルト部54,54を貫通させた後、一対の第2ボルト部54,54に締結ナット57,57を螺合する。
このとき、一対の第2位置調整穴24,24は、自動ドア10の建付時に調整ができるように、立設板部21における上下方向に長い長穴状に形成されている。そのため、ここでは、ローラ部5は、適当な位置(例えば、最上部)に仮止めしておく。
【0047】
同様に、一対の第1位置調整穴23,23に、一対の脱輪防止部材4,4の回転調整ボルト41,41を貫通させた後、回転調整ボルト41,41に調整ナット48,48を螺合する。
このとき、一対の第1位置調整穴23,23は、自動ドア10の建付時に調整ができるように、立設板部21における上下方向に長い長穴状に形成されている。そのため、ここでは、脱輪防止部材4は、適当な位置(例えば、最下部)に仮止めしておく。
【0048】
次に、吊り金具本体2を自動ドア10の上面10aに固定する。吊り金具本体2は、底板部20に形成された一対の挿通穴22,22に一対の金具固定ボルト11,11を挿通させた後、一対の金具固定ボルト11,11を、一対の固定穴10b、10bに螺合することにより、自動ドア10の上面10aに固定される。
このとき、一対の挿通穴22,22は、底板部20の短手方向に長い長穴状に形成されている。そのため、吊り金具装置1(吊り金具本体2)は、自動ドア10の上面10aに対して短手方向における適当な位置に取り付けることができる。
【0049】
次に、吊り金具装置1をハンガレール13に取り付ける(図1参照)。
まず、ローラ部5を吊り金具本体2に固定する。ローラ部5の固定は、一対の第2位置調整穴24,24に一対の第2ボルト部54,54を貫通させ、適当な位置にローラ部5を配置した後、締結ナット57,57で一対の第2ボルト部54,54を吊り金具本体2に固定することにより行われる。
【0050】
次いで、レール部15のレール本体19の上に一対のローラ本体30,30を乗せる。このとき、ローラ本体30,30の溝部32がレール本体19と当接するように一対のローラ本体30,30をレール本体19に乗せる。これにより、ローラ本体30は、レール本体19の上を転動可能となる。つまり、吊り金具装置1がハンガレール13の上を移動可能となる。
【0051】
次に、一対の脱輪防止部材4,4の位置合わせを行う。
レール本体19の上に一対のローラ本体30,30を乗せることにより、一対の脱輪防止部材4,4は、レール本体19の下方(レール本体19の下部と底板部20との間)に位置する。そこで、まず、一対の脱輪防止部材4,4を吊り金具本体2に固定する。
【0052】
ここで、一対の脱輪防止部材4,4は、自動ドア10や底板部20等に下方側から負荷が加わった場合に、図8に示すように、回転調整ボルト41が調整ナット48に対して締結する方向(図8の矢印Bに示す方向)に回転するように、樹脂部43における一対の長径部44a,44bを配置する。つまり、一対の長径部44a,44bが立設板部21の短手方向に対して時計回り(右回り)方向に傾斜した状態になるように配置する。このように配置することにより、例えば、自動ドア10や底板部20等に下方側から負荷が加わった場合においても、回転調整ボルト41を締める方向に当接部40が回転するため、回転調整ボルト41が緩むことがなくなる。
【0053】
また、一対の脱輪防止部材4,4は、樹脂部43の曲面部46bを底板部20に当接するように配置する。このように配置することにより、例えば、自動ドア10や底板部20等に下方側から負荷が加わった場合に、負荷に対して吊り金具本体(底板部20)2を補強することが可能になり、吊り金具装置1の破損を抑制することが可能になる。
【0054】
そして、この状態で一対の脱輪防止部材4,4を固定する。一対の脱輪防止部材4,4の固定は、調整ナット48で回転調整ボルト41を吊り金具本体2に固定することにより行われる。
なお、高さ方向における脱輪防止部材4の位置は、長穴状に形成された第1位置調整穴23における所定の位置(曲面部46bを底板部20に当接させると共に、レール本体10の下部と曲面部46aとの間に所定のクリアランス(0.5から1.0mm)を設けた位置)を選択することにより行う。
【0055】
ここで、調整ナット48を回転調整ボルト41に螺合して一対の脱輪防止部材4,4を吊り金具本体2に固定すると、固定時に回転調整ボルト41(当接部40)が回転してしまい、上述のクリアランス等の確保が不十分になる場合がある。そのため、一対の脱輪防止部材4,4をある程度固定した後、回転調整ボルト41の先端部に形成された回転調整部47を、調整ナット48を固定した状態で図8に示す矢印Aの方向に回転させる。これにより、当接部40が回転して、好適な位置に当接部40を配置することが可能になる。
【0056】
また、このとき、所定の厚さ(0.5から1.0mm)に形成されたスペーサをレール本体10の下部と曲面部46aとの間に差し込み、上述の作業を行ってもよい。これにより、好適な位置に当接部40を配置することが容易となる。なお、スペーサは、作業が終わった後にレール本体10の下部と曲面部46aとの間から引き抜く。
【0057】
このようにして、当接部40における曲面部46a,46bを底板部20に当接させた状態で、レール本体10との間に適当なクリアランスが得られるように調節しながら、一対の脱輪防止部材4,4の固定を行うことができる。その結果、取り付けや調整等が容易であると共に、不用意な負荷により破損等することを抑制可能な脱輪防止部材4を備えた吊り金具装置1を提供することができる。
【0058】
以上のような構成を有する本実施形態に係る吊り金具装置1によれば、以下のような効果を奏する。
本発明の実施形態に係る吊り金具装置1は、吊り金具本体2を介して自動ドア10に当接する脱輪防止部材4を備える。そのため、例えば、自動ドア10が押し上げられて吊り金具装置1に下方側から負荷が加わった場合においても、脱輪防止部材4が吊り金具本体(底板部20)2に接触(自動ドア10と間接的に接触)しているため、当該負荷に対して吊り金具本体(底板部20)2を補強することが可能になる。これにより、吊り金具装置1の破損を抑制することが可能になり、自動ドア10の脱輪、ひいては、自動ドア10の破損を抑制することができる。その結果、自動ドア10における防犯効果が向上する。
【0059】
また、本実施形態に係る脱輪防止部材4の当接部40は、長径部44a,44bと、短径部45a,45bと、曲面部46a,46bと、を備える楕円形状に形成されている。そのため、例えば、自動ドア10や底板部20等に下方側から負荷が加わった場合に、回転調整ボルト41が調整ナット48に対して締結する方向(図8の矢印Bに示す方向)に回転するように、当接部40(樹脂部43の長径部44a,44b)を配置することができる。これにより、自動ドア10や底板部20等に下方側から負荷が加わった場合においても脱輪防止部材4が緩むことを防止することができる。その結果、脱輪防止部材4が不用意に外れること等を防止することが可能となり、自動ドア10の脱輪、ひいては、自動ドア10の破損を抑制することができる。
【0060】
また、本実施形態に係る吊り金具装置1は、脱輪防止部材4の高さ調節が可能に形成されると共に、長径部44a,44b、短径部45a,45b及び曲面部46a,46bの位置調節が可能に形成されている。そのため、例えば、脱輪防止部材4を適当な位置に容易に配置させることができる。これにより、レール部15の位置が異なるハンガレール13に対しても使用することができる。
【0061】
また、本実施形態に係る吊り金具装置1は、脱輪防止部材4における当接部40の軸方向と直交する方向における断面形状が楕円形状に形成されている。そのため、樹脂部43における曲面部46a,46bを大きくすることができる。これにより、当接部40の位置設定可能な範囲が広くなり、脱輪防止部材4をより好適な位置に配置させることができる。
【0062】
また、本実施形態に係る吊り金具装置1は、当接部40を回転自在に形成された回転調整部47を備える。そのため、例えば、容易に当接部40の位置を調節することができる。つまり、長径部44a,44b、短径部45a,45b及び曲面部46a,46bの位置調節が容易となる。これにより、脱輪防止部材4をより好適な位置に配置させることが容易となる。
【0063】
また、回転調整部47は、例えば、マイナスドライバー等で簡単に操作することができる。そのため、例えば、容易に当接部40の位置を調節することができる。つまり、長径部44a,44b、短径部45a,45b及び曲面部46a,46bの位置調節が容易となる。これにより、脱輪防止部材4をより好適な位置に配置させることが容易となる。
【0064】
また、本実施形態に係る脱輪防止部材4の当接部40は、樹脂部43を備えており、樹脂部43により外周面が弾性変形可能に形成されている。そのため、例えば、底板部20に当接させた状態で、下方から不用意に自動ドア10が押し上げられた場合や過剰な負荷が加わった場合等においても、当接部40が当該負荷に干渉して、脱輪防止部材4に対する負荷を和らげることができる。
【0065】
また、本実施形態に係る吊り金具装置1は、同じサイズのナット(例えば、M8サイズのナット)を使用して各ボルトを締結している。そのため、例えば、M8ナット用の締め付け工具のみでナットの締結ができる。これにより、締め付け工具の選択及び複数の締め付け工具を持ち歩くこと等を行う必要がなくなる。その結果、作業性を向上させることができる。
【0066】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されない。
【0067】
例えば、本実施形態においては、吊り金具本体2の底板部20に脱輪防止部材4の当接部40を当接させる(吊り金具本体2の底板部20を介して当接部40を自動ドア10の上面10aに当接させる)構成としたが、本発明においては、これに限定されない。
脱輪防止部材4の当接部40は、自動ドア10の上面10aに、直接、当接させる構成であってもよい。例えば、吊り金具本体2を板状に形成すると共に、自動ドア10の側面に固定する。そして、当接部40が自動ドア10の上面10aに直接当接するように吊り金具本体2に固定する構成であってもよい。
【0068】
また、本実施形態においては、筒形に形成され、軸方向と直交する方向における断面形状が楕円形状の当接部40を有する脱輪防止部材4を用いて説明したが、本発明においてはこれに限定されない。当接部は、例えば、断面形状が卵形や長円形等のオーバル形状であってもよい。また、当接部は、例えば、変形例に示した形状のように、長径部44a,44b、短径部45a,45b及び曲面部46a,46bを有する形状のものであればよい。
【0069】
また、本実施形態においては、樹脂部43は、当接部本体42の外周面の全部を被覆した状態で設けられたが、本発明においてはこれに限定されない。樹脂部43は、例えば、当接部本体42の外周面における所定の位置を被覆するように配置する構成であってもよい。例えば、樹脂部43における曲面部46a,46bを構成する位置に配置する構成であってもよい。
【0070】
また、本実施形態においては、当接部40は、金属材料により形成された当接部本体42と、合成樹脂材料により形成された樹脂部43と、を備えるものを用いて説明したが、本発明においてはこれに限定されない。当接部40は、例えば、樹脂部を備えないもの、すなわち、全部が金属材料で形成されたものであってもよい。また、例えば、全部が合成樹脂材料により形成されたものであってもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 吊り金具装置
2 吊り金具本体
3 ハンガローラ
4、4A 脱輪防止部材
5 ローラ部
10 自動ドア
10a 上面(上部)
12 上枠(自動ドア取り付け枠)
13 ハンガレール(上部レール)
15 レール部
18 鍔部
19 レール本体
23 第1位置調整穴(第1調整部)
24 第2位置調整穴
30 ローラ本体
31 軸部
32 溝部
40、40A 当接部
41 回転調整ボルト(第2調整部)
42 当接部本体
43 樹脂部
44a、44b、44aA、44bA 長径部
45a、45b、45aA、45bA 短径部
46a、46b、46aA、46bA 曲面部
47 回転調整部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動ドアの上部に固定され略矩形板状の底板部と、底板部と直交する方向に立設する略矩形板状の立設板部とを備える吊り金具本体と、
前記吊り金具本体の立設板部に回転自在に軸支され、自動ドア取り付け枠の上枠に固定されたベース部と一体に形成されるレール部に形成され上方に隆起するように形成されるレール本体上を転動可能に形成される一対のハンガローラを有するローラ部と、
を備える吊り金具装置において、
前記一対のハンガローラは、前記レール本体の隆起形状に合わせて円弧状に凹む溝部を形成してなり、
前記吊り金具本体の立設板部に前記ローラ部を上下方向に調整可能に取り付けることにより前記一対のハンガローラを上下方向に調整可能に取り付け、
前記吊り金具本体の立設板部の前記レール部と前記吊り金具本体の底板部との間に、断面形状における長径方向に位置する長径部と、断面形状における短径方向に位置する短径部と、前記長径部と前記短径部との間に位置する曲面部とによって構成する当接部を有する一対の脱輪防止部材を、前記吊り金具本体の立設板部に取り付けた際に、前記一対の長径部が前記立設板部の短手方向に対して時計回り方向に傾斜した状態になるように配置する
ことを特徴とする吊り金具装置。
【請求項2】
前記当接部は、断面形状がオーバル形状の柱状に形成され、外周面に長径部、短径部及び曲面部が設けられることを特徴とする請求項1に記載の吊り金具装置。
【請求項3】
前記当接部は、断面形状が楕円形状の柱状に形成されることを特徴とする請求項1に記載の吊り金具装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−83149(P2013−83149A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−1550(P2013−1550)
【出願日】平成25年1月9日(2013.1.9)
【分割の表示】特願2010−34225(P2010−34225)の分割
【原出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(000132758)株式会社ソリック (18)
【Fターム(参考)】