説明

吊線付きケーブルの切断分離治具

【課題】構成がシンプルで低コストであり、携帯に便利な小型軽量でありながら切断作業性がよく、ケーブル本体側を損傷することなく確実に樹脂接続片のみの切断が可能であり、更に吊線付きケーブルの端部以外の中間部位のみを所要長切断する引き留め作業への適用も可能であり、非熟練者にとっても疲労せずに切断作業を実施することができる吊線付きケーブルの切断分離治具を提供する。
【解決手段】ケーブル本体31と、吊線35と、ケーブル本体に対して吊線を平行に保持した状態で両樹脂外皮33、37同志を長手方向に沿って接続する樹脂接続片40と、を備えた吊線付きケーブル30を樹脂接続片に沿って切断分離する切断分離治具であって、少なくともケーブル本体、又は吊線の何れか一方の外面に嵌着して軸方向へ移動するスライド部材2と、スライド部材に取り付けられてスライド部材の軸方向への移動時に樹脂接続片を切断する切断刃20と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吊線を備えた光ファイバーケーブル等の吊線付き通信ケーブルの入線作業時に実施される吊線の切断分離作業において、ケーブル本体を損傷させることなく吊線のみをケーブル本体から効率的に切断、分離することができる吊線付きケーブルの切断分離治具に関する。
【背景技術】
【0002】
電柱間に光ファイバーケーブル等の通信ケーブルを架線する際に風圧荷重や自重によりケーブルがダメージを受けることを防止するために、通信ケーブルを電柱に設けた吊り具により支持したり、電柱間に架線したメッセンジャーワイヤーに係止しながら架線するのが一般的である。
また、吊線を光ファイバーケーブルの軸方向に沿って並行に一体化した吊線付き光ファイバーケーブルも知られている。吊線付き光ファイバーケーブルは、鋼線に樹脂外皮を被覆した吊線を、細幅帯状の樹脂接続片を介して光ファイバー心線を被覆する樹脂外皮と一体化した構成を備えている。架線時には、吊線を光ファイバーケーブルから部分的に切り離し、切り離された吊線部分を吊り具やメッセンジャーワイヤーにより係止する。
また、電柱から建物内に光ファイバーケーブルを入線させる際には、ナイフ等の治具により樹脂接続片を端部から長手方向に沿って切断することにより、入線される光ファイバーケーブル部分と一体化された吊線を切断分離した上で光ファイバーケーブルのみを建物内に入線させる作業が行われる。この場合、分離された不要な吊線部分は廃棄されるか、電柱等に配置したプーリにより巻き取られる。
しかし、ナイフ等の刃物を用いて吊線付き光ファイバーケーブルを切断分離する作業は熟練を要する作業であり、特に切断長が数十m、100m以上に達する場合には、熟練者であっても光ファイバーケーブル側の被覆樹脂や内部の心線を誤って損傷することがある。しかも、電柱上でのナイフ等による切断分離作業には多大な労力を要するため、作業員の疲労度が高まり労働環境が悪化する虞がある。また、刃物により樹脂接続片を切断した場合には、切断面の形状にバラツキが発生するため切断面に鋭利な部位が形成され易く、入線済み管路内に後から入線させると隣接する既入線ケーブルに損傷を与えたり、作業者の手等に触れて怪我をする虞がある。
【0003】
また、特開2007−114541公報には、入線する建造物の直近位置にある電柱上に2つの脚部とカッター支持部とを備えたメインユニットを配置し、カッター支持部内に吊線付き光ファイバーケーブルをその端部から挿入し通過させる過程で、光ファイバーケーブルと吊線との間に位置する樹脂接続片をカッターにより切断する吊線分離装置が開示されている。
しかし、この吊線分離装置は、メインユニットが大型、高重量、複雑、高コストあるばかりでなく、使用に際して電柱に固定する必要があるため、運搬性、取扱性、作業性が悪く、設置箇所が限定されるという問題を有している。また、また、この吊線分離装置は、吊線付き光ファイバーケーブルを端部から切断分離する作業には適しているが、吊線付き光ファイバーケーブルの中間位置にある樹脂接続片を所要長だけ切断して光ファイバーケーブル部分から分離した吊線部分を吊り具により係止する引き留め作業時には適用できず、切断手段としてナイフを使用せざるを得ないという問題があった。
【特許文献1】特開2007−114541公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、吊線付き光ファイバーケーブルから吊線を切断、分離する作業は、屋外、高所でのナイフ等の刃物を用いた熟練を要する作業であり、切断長が数十mから、100mを越える場合には疲労度の高い非効率的な作業とならざるを得なかった。また、ケーブル本体側を刃物により損傷するミスが発生したり、切断面に鋭利な部位が残されることによって他の入線ケーブルを損傷させたり、作業者が怪我をすることがあった。特許文献1に開示された吊線分離装置は、装置構成が大型で、工事に際して電柱への取付け、取り外し作業が必要となるばかりでなく、吊線付き光ファイバーケーブルの端部以外の中間部位を切断する引き留め作業には適さないという問題があった。
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、構成がシンプルで低コストであり、携帯に便利な小型軽量でありながら切断作業性がよく、ケーブル本体側を損傷することなく確実に樹脂接続片のみの切断が可能であり、更に吊線付きケーブルの端部以外の中間部位のみを所要長切断する引き留め作業への適用も可能であり、非熟練者にとっても疲労せずに切断作業を実施することができる吊線付きケーブルの切断分離治具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、請求項1の発明に係る吊線付きケーブルの切断分離治具は、ケーブル心線及び該ケーブル心線を被覆する樹脂外皮を有したケーブル本体と、鋼線及び該鋼線を被覆する樹脂外皮を有した吊線と、前記ケーブル本体に対して前記吊線を平行に保持した状態で両樹脂外皮同志を長手方向に沿って接続する樹脂接続片と、を備えた吊線付きケーブルを前記樹脂接続片に沿って切断分離する切断分離治具であって、少なくとも前記ケーブル本体、又は前記吊線の何れか一方の外面に嵌着して軸方向へ移動するスライド部材と、スライド部材に取り付けられてスライド部材の軸方向への移動時に前記樹脂接続片を切断する切断刃と、を備えたことを特徴とする。
ケーブル本体、吊線、或いは両者の外面を覆って長手方向へスライドするスライド部材を備え、スライド部材の軸方向移動時にスライド部材に設けた切断刃によって樹脂接続片の一定位置を長手方向に沿って切断するように構成したので、作業者の作業能力の良否に関係なく常に一定部位を切断することができる。従って、切断長が長い場合であってもケーブル本体、或いは吊線側を損傷することなく、安定して分離することができる。しかも、構成がシンプルであるため、小型化、軽量化が可能であり、携帯に適しているため、高所での作業であっても使い勝手がよい。
請求項2の発明に係る吊線付きケーブルの切断分離治具は、請求項1において、前記スライド部材は、前記樹脂接続片に対応する部位にスリットを有した管体と、該管体内部に配置されて前記ケーブル本体、或いは前記吊線の外面と摺動する低摩擦材料から成るアダプタと、を備えていることを特徴とする。
管体として摺動抵抗の高い金属等を用いた場合には、樹脂外皮との間の摩擦抵抗を低下させるために、低摩擦材料から成るアダプタを管体内に配置すればよい。
【0006】
請求項3の発明に係る吊線付きケーブルの切断分離治具は、請求項2において、前記アダプタは、前記管体内に着脱自在であることを特徴とする。
共通の管体を使用しつつ、異なったサイズの吊線付きケーブルに対する切断作業を行う場合、アダプタを交換するだけで対応することが可能となる。
請求項4の発明に係る吊線付きケーブルの切断分離治具は、請求項1、2又は3において、前記切断刃は、前記管体に対して着脱自在であることを特徴とする。
切断刃は、損耗するため、管体に対して種々の構造により着脱自在に構成するのが好ましい。
請求項5の発明に係る吊線付きケーブルの切断分離治具は、請求項1、2、3又は4において、前記管体は、2つの半筒状の分割片を対向する各端縁に設けたヒンジ部により開閉自在に軸支した構成を備えていることを特徴とする。
管体を軸方向に沿って二分割し、開閉自在に構成することにより、吊線付きケーブルの途中において吊線を切断分離することが可能となる。
請求項6の発明に係る吊線付きケーブルの切断分離治具は、請求項5において、前記アダプタは、前記管体内に挿着される内側部材と、前記管体外に位置して前記各分割片を閉止状態に保持する外側部材と、から構成されていることを特徴とする。
管体を二分割可能に構成した場合、閉止状態で固定する手段としてアダプタを兼用することが効率的である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ケーブル本体、または吊線の少なくとも何れか一方の外面を覆って長手方向へスライドするスライド部材を備え、スライド部材の軸方向移動時にスライド部材に設けた切断刃によって樹脂接続片の一定位置を長手方向に沿って切断するように構成したので、作業者に過大な労力を負担させることなく、作業者の作業能力の良否に関係なく常に樹脂接続片の一定部位を切断することができる。従って、切断長が長い場合であってもケーブル本体、或いは吊線側を過剰に損傷することなく、安定して分離することができる。しかも、構成がシンプルであるため、小型化、軽量化が可能であり、携帯に適しているため、高所での作業であっても使い勝手がよい。
管体として摺動抵抗の高い金属等を用いた場合には、樹脂外皮との間の摩擦抵抗を低下させるために、低摩擦材料から成るアダプタを管体内に配置することが有効である。
共通の管体を使用しつつ、異なったサイズの吊線付きケーブルに対する切断作業を行う場合、アダプタを交換するだけで対応することが可能となる。
切断刃は、損耗するため、管体に対して種々の構造により着脱自在に構成するのが好ましい。
管体を軸方向に沿って二分割し、開閉自在に構成することにより、吊線付きケーブルの途中において吊線を切断分離することが可能となる。
管体を二分割可能に構成した場合、閉止状態で固定する手段としてアダプタを兼用することが効率的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を図面に示した実施の形態により詳細に説明する。
図1(a)は本発明の一実施形態に係る吊線付きケーブルの切断分離治具の構成を示す分解斜視図であり、(b)は本発明の吊線付きケーブルの切断分離治具により切断分離される吊線付きケーブルの構成を示す斜視図であり、図2(a)(b)(c)(d)(e)はこの吊線付きケーブルの切断分離治具の正面図、平面図、左側面図、右側面図、及びケーブル本体を挿入した状態の右側面図である。
吊線付きケーブルの切断分離治具(以下、切断分離治具、という)1は、図1(b)に示した吊線付きケーブル30を切断分離するために使用する治具である。吊線付きケーブル30は、例えば吊線付き光ファイバーケーブルであり、この吊線付き光ファイバーケーブル30は、光ファイバー心線(ケーブル心線)32及び光ファイバー心線32を被覆する樹脂外皮33を有したケーブル本体31と、鋼線36及び鋼線36を被覆する樹脂外皮37を有した吊線35と、ケーブル本体31に対して吊線35を平行に保持した状態で両樹脂外皮33、37同志を長手方向に沿って接続する樹脂接続片40と、を備えている。切断分離治具1は、その内部にケーブル本体31を挿通させる過程で、切断刃によって樹脂接続片40をその長手方向へ沿って切断して吊線35を分離させるための手段である。
切断分離治具1は、少なくともケーブル本体31、又は吊線35の何れか一方の外面に嵌着して軸方向へ移動するスライド部材2と、スライド部材2に取り付けられてスライド部材の軸方向への移動時に樹脂接続片40を切断する切断刃20と、を備えている。
【0009】
なお、吊線35を切断分離治具1内に挿通する過程で樹脂接続片40を切断するように構成することも可能であるが、以下の実施形態ではケーブル本体31を切断分離治具内に挿通する構成例について述べる。
スライド部材2は、樹脂、金属等の硬質材料から成り且つ樹脂接続片40に対応する部位にスリット4を有した管体3と、管体3の内部に配置されてケーブル本体31の外面と摺動する低摩擦材料(例えば、ウレタン樹脂)から成るアダプタ10と、を備えている。
管体3は、ケーブル本体31の端部を差し込む側の開口3aがケーブル本体及びアダプタ10を受入れ得るように大きく開放する一方で、他方の開口3bはケーブル本体31だけを外部に引き出せるように小さく開口する。他方の開口3bを形成する端面部3cはアダプタ10の端部と当接してこれを位置決めさせるストッパとして機能する。端面部3cには小孔3dを形成し、アダプタ10の端部を押圧して管体外へ押し出すための棒をこの小孔から差し入れ得るように構成する。
切断刃20は、本例では、図2(b)(c)(d)中に示すようにスリット4の開口3a側の端面から軸方向へ所要長さに形成した凹所4aによって両端縁を支持されることにより、その刃先20aを開口3a側に向けた状態で固定される。凹所4aは、スリット4を間に挟んで対向する管体3の両端縁に形成された溝であり、この両凹所4a内に切断刃20を着脱することができる。従って、切断刃の交換が可能となる。
【0010】
なお、管体3自体が低摩擦材料である場合にはアダプタ10は不要であり、管体3の内周面のサイズ、形状をケーブル本体31を挿通するのに適した状態に設定すればよい。
アダプタ10は、外周面で管体3内面に密着して位置決めされると共に、管体3内に端部から圧入されるケーブル本体31をスムーズに受け入れるための凹所11をスリット4と対向する位置に有する。アダプタ10は管体3内に予め一体化しておいてもよいが、アダプタの耐久性の低下、ゴミ詰まり等の理由により、取り外したり、交換する必要も生じるため、管体3に対して着脱自在に構成するのが好ましい。
また、アダプタ10を切断するケーブルのサイズに応じて交換することにより、共通の管体を使用しつつアダプタだけを交換してサイズの異なるケーブルの切断に対応することができる。
管体3はアダプタ10を収容し、且つケーブル本体31を挿通することができる形状であれば、その内面形状が円筒状である必要はない。また、外面形状も円筒状である必要はなく、多角形状等々任意の形状であってもよい。
【0011】
図3は本発明の切断分離治具1によって吊線35をケーブル本体31から切断分離している状態を示す断面図であり、作業者が切断分離治具1を手で把持した状態で吊線付き光ファイバーケーブル30の一端部からケーブル本体31を管体3の開口部3a内に圧入する。圧入されたケーブル本体31はアダプタ10の凹所11に沿ってガイドされながら他端開口3bから引き出されてゆく。管体3内にケーブル本体31の端部を圧入した時点でスリット4内には樹脂接続片40が入り込んでおり、スリット4を挟んで対向する管体の両端縁に跨って配置された切断刃20の刃先20aによって樹脂接続片40はその長手方向に沿って切断開始される。
切断作業中、ケーブル本体はアダプタの凹所11により支持され続けるので、ケーブル本体に対する切断刃20の移動軌跡が安定し、刃先がケーブル本体側に入り込み過ぎて樹脂外皮や心線にダメージを与えることがない。
なお、必要に応じて管体3の底部に作業者が手で把持する取手5(図3)を設けて作業者の作業性を向上してもよい。
【0012】
また、図1中に示した符号21はシート状のヤスリであり、切断刃20と同様にスリット4に跨った状態で配置することにより、内面側に設けたヤスリ面により、通過してゆく切断後のケーブル本体外面に形成される鋭利な突起部や粗面を削減して無害な平滑状態に均すことができる。
図4(a)及び(b)は本発明の他の実施形態に係る切断分離治具1の要部平面図、及びその側面図である。
この切断分離治具1にあっては、管体3の開口3a側の上面適所に切断刃20の一端部をネジ止め支持するための切断刃支持部6を設け、切断刃支持部6に設けたネジ穴にネジ7を螺着可能に構成している。切断刃20の一端部にはネジ7を挿通する穴があり、この穴とネジ穴を挿通させた状態でネジ7により切断刃20を切断刃支持部6上に固定する。刃先20aはスリット4内に位置しており、図3に示した切断作業中に樹脂接続片40を切断する。ネジ7を取り外すことにより切断刃20を新たなものと交換することができる。
【0013】
次に、図5(a)及び(b)は本発明の他の実施形態に係る切断分離治具1の構成を示す分解斜視図、及び組付け状態を示す正面図である。この実施形態に係る切断分離治具1の管体3は、2つの半筒状の分割片8を、近接する各端縁に設けたヒンジ部8aにより開閉自在に軸支した構成を備えている。
この実施形態におけるアダプタ10は、2つの分割片8を閉止状態に保持するロック手段としての機能を併有している。
即ち、アダプタ10は、管体3内に挿入され上面に凹所11を有したガイド部(内側部材)12と、ガイド部12の一端部に一体化されたストッパ部(外側部材)13と、から構成されている。ガイド部12を管体3内に挿入した状態であっても、ストッパ13が閉止状態にある管体3の開口部3a側の端面から外周面にかけて延在しているため、各分割片8はヒンジ8aを中心として開放することができない状態となる。一方、スリット4は管体全長に亘って開放された状態にあるため、スリット4内に切断刃20を配置することにより図3に示した如き操作を行う過程で樹脂接続片40を切断することができる。或いは、切断刃20の取付け構造を図4の如き構成としてもよい。
【0014】
また、図5(b)に示すように取手5を設けて管体の把持性を高めても良い。取手5は何れか一方の分割片8側に固定してもよいし、或いは図5(c)に示すように両分割片8に夫々同形状の取手5を設け使用時には両取手を合わせた状態で片手で把持するようにしてもよい。
或いは、図5(d)に示すように取手5をペンチの如き構成としてもよい。即ち、この取手5は、軸5aを中心として一方に2本の把持部5bを、他方に2本の作動片5cを備えており、各作動片5cの先端部には夫々分割片8が固定されている。図示のように把持部5bを握って近接させたときに作動片5cが近接して各分割片8を閉じた状態に移行させる。把持部5bを開放することにより分割片8も開放する。これによれば、分割片の開放作業性が高まり、しかもアダプタ10にストッパとしての機能を付与する必要がなくなるため、アダプタの構成をシンプル化することができる。
【0015】
本実施形態に係る切断分離治具の利点は、吊線付き光ファイバーケーブルの中間位置にある樹脂接続片40を所要長だけ切断して光ファイバーケーブル部分から分離した吊線部分を吊り具により係止する引き留め作業にも適用できる、という点である。即ち、管体3が開閉自在な構造であるため、吊線付き光ファイバーケーブルの中間位置(非端部位置)にある樹脂接続片40だけを所要長切断する際に、開放状態にある分割片8を当該切断部位にあるケーブル本体外面に被せてからアダプタ10を管体の端部開口3aから取り付けて分割片をロックする。その際、切断刃20がスリット4内に位置するようにセットする。なお、事前に樹脂接続片40の切断開始箇所にナイフにより短い切り込みを形成しておき、切断刃20がこの切り込み内に納まるように分割片8を閉じる。その後、ケーブル本体に沿って管体3を移動させることにより切断刃により所望長だけ樹脂接続片40を切断することができる。切断された樹脂接続片40は電柱、或いはメッセンジャーケーブルに設けた吊り金物などによって係止される。
【0016】
次に、図6(a)(b)及び(c)は変形例に係る切断分離治具の正面図、平面図、及び側面図であり、図7(a)及び(b)はこの変形例に係る切断分離治具による切断手順を示す正面図、及び側面図である。
上記各実施形態に係る切断分離治具とは管体の形状が異なっている。即ち、上記実施形態の管体は筒状体であったが、図6、図7の実施形態に示した管体3は一端部の正面形状が鋭角状になっている。このように構成することにより一端開口部3aからケーブル本体31の端部を差し込む作業性が向上する。
なお、上記実施形態では、管体3内にケーブル本体31を挿通させる例を示したが、吊線35を挿通させる構成としてもよい。
或いは、ケーブル本体31及び吊線35を共に挿通させる達磨形の管体を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(a)は本発明の一実施形態に係る吊線付きケーブルの切断分離治具の構成を示す分解斜視図であり、(b)は本発明の吊線付きケーブルの切断分離治具により切断分離される吊線付きケーブルの構成を示す斜視図である。
【図2】(a)(b)(c)(d)(e)はこの吊線付きケーブルの切断分離治具の正面図、平面図、左側面図、右側面図、及びケーブル本体を挿入した状態の右側面図である。
【図3】本発明の切断分離治具によって吊線をケーブル本体から切断分離している状態を示す断面図である。
【図4】(a)及び(b)は本発明の他の実施形態に係る切断分離治具1の要部平面図、及びその側面図である。
【図5】(a)及び(b)は本発明の他の実施形態に係る切断分離治具1の構成を示す分解斜視図、及び組付け状態を示す正面図であり、(c)及び(d)は他の実施形態に係る切断分離治具の構成説明図である。
【図6】(a)(b)及び(c)は変形例に係る切断分離治具の正面図、平面図、及び側面図である。
【図7】(a)及び(b)はこの変形例に係る切断分離治具による切断手順を示す正面図、及び側面図である。
【符号の説明】
【0018】
1…切断分離治具、2…スライド部材、3…管体、3a…一端開口部、3b…他端開口、3c…端面部、3d…小孔、4…スリット、4a…凹所、5…取手、5a…軸、5b…把持部、5c…作動片、6…切断刃支持部、7…ネジ、8…分割片、8a…ヒンジ、10…アダプタ、11…凹所、12…ガイド部、13…ストッパ、20…切断刃、20a…刃先、21…ヤスリ、30…光ファイバーケーブル、31…ケーブル本体、32…光ファイバー心線、33…樹脂外皮、35…吊線、36…鋼線、37…樹脂外皮、40…樹脂接続片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブル心線及び該ケーブル心線を被覆する樹脂外皮を有したケーブル本体と、鋼線及び該鋼線を被覆する樹脂外皮を有した吊線と、前記ケーブル本体に対して前記吊線を平行に保持した状態で両樹脂外皮同志を長手方向に沿って接続する樹脂接続片と、を備えた吊線付きケーブルを前記樹脂接続片に沿って切断分離する切断分離治具であって、
少なくとも前記ケーブル本体、又は前記吊線の何れか一方の外面に嵌着して軸方向へ移動するスライド部材と、スライド部材に取り付けられてスライド部材の軸方向への移動時に前記樹脂接続片を切断する切断刃と、を備えたことを特徴とする吊線付きケーブルの切断分離治具。
【請求項2】
前記スライド部材は、前記樹脂接続片に対応する部位にスリットを有した管体と、該管体内部に配置されて前記ケーブル本体、或いは前記吊線の外面と摺動する低摩擦材料から成るアダプタと、を備えていることを特徴とする請求項1に記載の吊線付きケーブルの切断分離治具。
【請求項3】
前記アダプタは、前記管体内に着脱自在であることを特徴とする請求項2に記載の吊線付きケーブルの切断分離治具。
【請求項4】
前記切断刃は、前記管体に対して着脱自在であることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の吊線付きケーブルの切断分離治具。
【請求項5】
前記管体は、2つの半筒状の分割片を対向する各端縁に設けたヒンジ部により開閉自在に軸支した構成を備えていることを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載の吊線付きケーブルの切断分離治具。
【請求項6】
前記アダプタは、前記管体内に挿着される内側部材と、前記管体外に位置して前記各分割片を閉止状態に保持する外側部材と、から構成されていることを特徴とする請求項5に記載の吊線付きケーブルの切断分離治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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