説明

同軸落射照明装置及び同軸落射照明方法

【課題】 対象物に均一に光を照射することができ、且つその光の色の設定が容易な同軸落射照明装置を提供すること。
【解決手段】 上下方向に伸びる筒体、この筒体内部に筒体の長さ方向に沿って互いに同軸に配置された一対の光学レンズ、この一対の光学レンズの間にレンズの軸に対して表面を傾斜させて配置されたハーフミラー、そして上記筒体の側部に備えられ、上記ハーフミラー表面での反射を介してレンズの軸と同軸に且つ筒体の下側方向に伝わる光を発する光源からなり、この光源が、直流電圧の印加により発光する有機エレクトロルミネッセンス素子を少なくとも一個備えていることを特徴とする同軸落射照明装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外観検査において検査対象物に光を照射するために有利に用いることのできる同軸落射照明装置と、この照明装置を用いた同軸落射照明方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板の配線パターンの外観検査(例、配線パターンの形状や断線の有無の検査)あるいは電子部品や機械部品の外観検査(例、寸法や傷の有無の検査)などには、画像処理装置を備えた検査装置が用いられている。検査装置は、検査対象物に光を照射する照明装置、光照射された検査対象物の光学像を撮像して、この光学像に対応する画像データを出力する撮像装置、そして撮像装置が出力する画像データと参照データとの照合を行なう画像処理装置などから構成されている。従来より、このような検査装置の照明装置の光源としては、ハロゲンランプや発光ダイオードが用いられている。
【0003】
特許文献1には、平面上に存在する平滑表面を持つ凸状物体を前記平面に垂直な方向から観察する場合、例えば、自動車ワックスの性能評価試験としてワックス処理面に置かれた水滴(凸状物体)の形状を観察する場合に、観察方向と光軸を同じくする同軸落射照明を用いることにより、平面上に存在する凸状物体の視認を容易とする照明方法が開示されている。この照明方法において、具体的には、光源ランプにて発生した光を、ハーフミラー表面での反射を介して観察方向と同軸に伝わる光として凸状物体に照射している。
【0004】
特許文献2には、照明装置の光源として、交流電圧の印加により面発光するエレクトロルミネッセンスシートを用いた画像処理システムが開示されている。この画像処理システムは、例えば、ウエハなどの撮像対象物を撮像して、撮像した画像と予め記憶されている画像とのパターンマッチングを行なったり、ウエハのノッチの位置や角度を算出するために用いられる。そして照明装置の光源として上記のエレクトロルミネッセンスシートを用いることにより、照明装置の薄型化が可能となるために画像処理システムの設計の自由度を高めることができ、さらに照明装置の輝度が均一化されるために画像処理における擾乱原因を低減できるとされている。この特許文献2には、上記のエレクトロルミネッセンスシートにて発生した光を、ハーフミラーを介して撮像対象物の表面に垂直に照射する照明方法についての記載がある。
【特許文献1】特開平5−231844号公報(図2)
【特許文献2】特開2003−132343号公報(図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、外観の検査が必要とされる製品や部品には様々なものがあり、その形状や色も多岐にわたる。検査対象物の外観の検査を行なう場合には、照明装置の光の色を、検査対象物に応じた色に設定することが好ましい。
【0006】
例えばプリント配線板は、表面に銅配線パターンを備えた基板、前記の銅配線パターン上に形成された金端子、そして基板上の金端子を除く部分を覆う半透明の緑色のソルダレジスト層から構成されている。このような構成のプリント配線板の銅配線パターンの外観は、半透明の緑色のレジストを通して検査される。このようにして銅配線パターンの外観を検査する場合には、プリント配線板に緑色の光を照射することが好ましい。一方、ソルダレジスト層に覆われていない金端子の外観を検査する場合には、プリント配線板に赤色の光を照射することが好ましい。
【0007】
上記の特許文献1に記載の照明方法は、光源ランプが点光源であるために、プリント配線板の配線パターンの検査などのように広い面積の領域に均一に光を照射するためには十分に満足できるものではない。
【0008】
また特許文献2に記載の画像処理システムの照明装置の光源として用いられるエレクトロルミネッセンスシートは、撮像対象物に均一に光を照射できるものの、その発光色を調節することが難い。これは、上記のエレクトロルミネッセンスシートに用いられる交流電圧の印加により発光する材料は、その発光色のバリーションに乏しく、所望の色に発光する材料の探索が難しいからである。
【0009】
本発明の目的は、対象物に均一に光を照射することができ、且つその光の色の設定が容易な同軸落射照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上下方向に伸びる筒体、この筒体内部に筒体の長さ方向に沿って互いに同軸に配置された一対の光学レンズ、この一対の光学レンズの間にレンズの軸に対して表面を傾斜させて配置されたハーフミラー、そして上記筒体の側部に備えられ、上記ハーフミラー表面での反射を介してレンズの軸と同軸に且つ筒体の下側方向に伝わる光を発する光源からなり、この光源が、直流電圧の印加により発光する有機エレクトロルミネッセンス素子を少なくとも一個備えていることを特徴とする同軸落射照明装置にある。
【0011】
以下、このような同軸落射照明装置の構成を第一の構成と記載する。第一の構成の同軸落射照明装置において、ハーフミラー表面とレンズの軸とのなす角度は45度であることが好ましい。
【0012】
本発明はまた、上記第一の構成の同軸落射照明装置と照明対象の物品とを用意する工程、この照明装置を照明対象の物品の上方に配置する工程、そして上記照明装置の有機エレクトロルミネッセンス素子に直流電圧を印加することにより生じた発光を、照明装置のハーフミラー表面での反射を介して照明対象の物品に照射する工程を含む同軸落射照明方法にもある。
【0013】
本発明はまた、上下方向に伸びる筒体、この筒体内部に筒体の長さ方向に沿って互いに同軸に配置された一対の光学レンズ、上記筒体の下側端部に固定された、前記のレンズの軸に沿って上下に開口が形成された筐体、この筐体内に上記レンズの軸に対して表面を傾斜させて配置されたハーフミラー、そして上記筐体に収容され、前記のハーフミラー表面での反射を介してレンズの軸と同軸に且つ筐体の下側方向に伝わる光を発する光源からなり、この光源が、直流電圧の印加により発光する有機エレクトロルミネッセンス素子を少なくとも一個備えていることを特徴とする同軸落射照明装置にもある。
【0014】
以下、このような同軸落射照明装置の構成を第二の構成と記載する。第二の構成の同軸落射照明装置の好ましい態様は、下記の通りである。
(1)ハーフミラー表面とレンズの軸とのなす角度が45度である。
(2)筒体と筐体とが脱着可能とされている。
【0015】
本発明はまた、上記第二の構成の同軸落射照明装置と照明対象の物品とを用意する工程、この照明装置を照明対象の物品の上方に配置する工程、そして上記照明装置の有機エレクトロルミネッセンス素子に直流電圧を印加することにより生じた発光を、照明装置のハーフミラー表面での反射を介して照明対象の物品に照射する工程を含む同軸落射照明方法にもある。
【0016】
本発明はまた、上下に開口が形成された筐体、この筐体の上下の開口の間に上下方向に対して表面を傾斜させて配置されたハーフミラー、そして上記筐体に収容され、前記のハーフミラー表面での反射を介して筐体の下側方向に伝わる光を発する光源からなり、この光源が、直流電圧の印加により発光する有機エレクトロルミネッセンス素子を少なくとも一個備えていることを特徴とする互いに同軸に配置された一対の光学レンズが収容された筒体と組み合わせて使用するための発光装置にもある。
【0017】
本発明の発光装置において、ハーフミラー表面と筐体の上下方向とのなす角度は45度であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の同軸落射照明装置には、直流電圧の印加により発光する有機エレクトロルミネッセンス素子が備えられている。有機エレクトロルミネッセンス素子は、例えば、透明基板上に、透明陽電極層、正孔輸送層、有機発光材料層、そして陰電極層をこの順に積層して構成される。有機エレクトロルミネッセンス素子は、その陽電極層と陰電極層とに挟まれた有機発光材料層部分が均一に面発光し、その発光色を有機発光材料層の材料の選定により所望の色に設定することが容易である。このような有機エレクトロルミネッセンス素子を備えた本発明の同軸落射照明装置は、対象物に均一に光を照射することができ、且つその光の色の設定が容易である。このため、本発明の同軸落射照明装置を検査装置に用いることにより、検査対象物に均一に光を照射することができ、且つその光の色を検査対象物に応じた色に設定することができるため、各種の検査対象物の外観を精度良く検査することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の同軸落射照明装置を、添付の図面を用いて説明する。図1は、本発明の第一の構成の同軸落射照明装置の一例を示す断面図である。
【0020】
図1の同軸落射照明装置10は、上下方向に伸びる筒体11、この筒体11の内部に筒体11の長さ方向に沿って互いに同軸に配置された一対の光学レンズ12a、12b、一対の光学レンズ12a、12bの間にレンズの軸に対して表面を傾斜させて配置されたハーフミラー13、そして上記筒体11の側部に備えられ、ハーフミラー13の表面での反射を介してレンズの軸と同軸に且つ筒体11の下側方向に伝わる光を発する光源14から構成されている。そして図1の同軸落射照明装置の光源14には、直流電圧の印加により発光する有機エレクトロルミネッセンス素子15が一個備えられている。
【0021】
同軸落射照明装置10の製造を容易とするために、ハーフミラー13の表面とレンズの軸とのなす角度は45度であることが好ましい。
【0022】
同軸落射照明装置10の光は、照明装置10と照明対象の物品とを用意する工程、この照明装置10を照明対象の物品の上方に配置する工程、そして上記照明装置10の有機エレクトロルミネッセンス素子15に直流電圧を印加することにより生じた発光を、照明装置10のハーフミラー13の表面での反射を介して照明対象の物品に照射する工程を含む同軸落射照明方法によって、照明対象の物品に照射される。
【0023】
図2は、図1の同軸落射照明装置10が備える有機エレクトロルミネッセンス素子15の構成を示す断面図である。図2の有機エレクトロルミネッセンス素子15は、透明基板21の表面に、透明陽電極層22、正孔輸送層23、有機発光材料層24、そして陰電極層25がこの順に積層された構成を有している。透明陽電極層22及び陰電極層25には、これらの電極間に直流電圧を印加するために、それぞれ電気的接続端子27a、27bが備えられている。
【0024】
有機エレクトロルミネッセンス素子15は、その陽電極層22と陰電極層25との間に直流電圧を印加すると、陽電極層22から正孔が、そして陰電極層25から電子が有機発光材料層24の内部に注入され、この正孔と電子との再結合により生成した励起子(エキシトン)が失活する際の光の放出により発光する発光素子である。
【0025】
図2の有機エレクトロルミネッセンス素子15の発光は、透明基板21の側から取り出される。図2に記入した矢印26は、有機エレクトロルミネッセンス素子15の発光の取り出し方向を示している。
【0026】
有機エレクトロルミネッセンス素子15は、その陽電極層22と陰電極層25とに挟まれた有機発光材料層部分が均一に面発光し、その発光色を有機発光材料層24の材料の選定により所望の色に設定することが容易である。
【0027】
透明基板21は、例えば、ガラスなどの透明な材料から形成される。「透明」とは、可視光の透過率が70%以上であることを意味する。なお、透明基板に代えて、金属材料やセラミックス材料から形成された不透明な基板を用いることもできる。不透明な基板を用いる場合には、有機エレクトロルミネッセンス素子を、不透明な基板の側から、例えば、陰電極層、有機発光材料層、正孔輸送層、そして透明電極層がこの順に積層された構成とする。この場合、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光は、基板の側とは逆側から取り出される。
【0028】
透明陽電極層22としては、例えば、スパッタ法により形成された錫ドープ酸化インジウム(ITO)の薄膜が用いられる。透明陽電極層22の厚みは、1μm以下であることが好ましく、200nm以下であることがさらに好ましい。
【0029】
正孔輸送層23としては、例えば、真空蒸着法により形成されたトリフェニルジアミン(TPD)の薄膜が用いられる。正孔輸送層23の厚みは、2乃至200nmの範囲にあることが好ましい。正孔輸送層23は、陽電極層22から注入された正孔を有機発光材料層24に効率良く注入して、有機エレクトロルミネッセンス素子15の発光効率を高くする機能を有している。
【0030】
有機発光材料層24は、有機発光材料から形成するか、キャリア輸送性(正孔輸送性、電子輸送性、または両性輸送性)を示す有機材料(以下、ホスト材料と記載する)に少量の有機発光材料を添加した材料から形成される。有機発光材料層24に用いる有機発光材料の選定により、有機エレクトロルミネッセンス素子15の発光色を容易に設定することができる。
【0031】
有機発光材料層24を有機発光材料から形成する場合、有機発光材料としては、成膜性に優れ、膜の安定性に優れた材料が用いられる。このような有機発光材料の例としては、Alq3 (トリス−(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム)に代表される金属錯体、ポリフェニレンビニレン(PPV)誘導体、およびポリフルオレン誘導体などが挙げられる。
【0032】
有機発光材料層24をホスト材料に少量の有機発光材料を添加した材料から形成する場合、ホスト材料としては、例えば、上記のAlq3 、TPD、電子輸送性のオキサジアゾール誘導体、ポリカーボネート系共重合体、あるいはポリビニルカルバゾールなどが用いられる。ホスト材料と共に用いる有機発光材料としては、添加量が少ないために、上記の有機発光材料の他に、単独では安定な薄膜を形成し難い蛍光色素なども用いることができる。蛍光色素の例としては、クマリン、DCM誘導体、キナクリドン、ペリレン、およびルブレンが挙げられる。なお、上記のように有機発光材料層を有機発光材料から形成する場合にも、発光色を調節するために蛍光色素などを少量添加することもできる。
【0033】
有機発光材料層24を形成する方法の例としては、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法、スプレー法、ブレードコート法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、およびインクジェット印刷法などが挙げられる。
【0034】
有機発光材料層24の厚みは、実用的な発光輝度を得るために、200nm以下であることが好ましい。
【0035】
陰電極層25としては、例えば、真空蒸着法により形成されたマグネシウム−銀(Mg−Ag)合金の薄膜が用いられる。陰電極層25の厚みは、1μm以下であることが好ましく、200nm以下であることがさらに好ましい。
【0036】
有機エレクトロルミネッセンス素子の有機発光材料層には、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光効率を高くするたに、その陰電極層側の面に電子輸送層を付設することも知られている。以下に、有機エレクトロルミネッセンス素子の層構成の例を示す。
【0037】
(a)陽電極層/有機発光材料層/陰電極層
(b)陽電極層/正孔輸送層/有機発光材料層/陰電極層
(c)陽電極層/有機発光材料層/電子輸送層/陰電極層
(d)陽電極層/正孔輸送層/有機発光材料層/電子輸送層/陰電極層
【0038】
また、有機エレクトロルミネッセンス素子の陽電極層と陰電極層との間には、上記の正孔輸送層や電子輸送層の他にも様々な層、例えば、陽電極層(もしくは陰電極層)の有機発光材料層の側の表面に正孔注入層(もしくは電子注入層)を付設することが知られている。
【0039】
また、有機エレクトロルミネッセンス素子は、大気中の水分や酸素の影響を受け、その発光特性が劣化(例、輝度の低下や非発光部の生成など)することが知られている。このような発光特性の劣化を防止するため、図2の有機エレクトロルミネッセンス素子15には、発光素子15を気密封止するためのガラス板28が備えられている。封止用のガラス板28は、低透湿性の封止用接着剤層(例、紫外線硬化型のアクリル樹脂系接着剤を硬化させて形成された層)29により基板21に固定されている。有機エレクトロルミネッセンス素子を気密封止する方法は、上記のガラス板により気密封止する方法に限定される訳ではなく、例えば、金属製キャップにより気密封止する方法、あるいは発光素子15の表面を低透湿性の薄膜(例、二酸化ケイ素薄膜)により覆って気密封止する方法など、公知の気密封止方法を用いることができる。
【0040】
有機エレクトロルミネッセンス素子の層構成や材料、及びその発光色を所定の色に設定する方法は、公知の有機エレクトロルミネッセンス素子の場合と同様である。有機エレクトロルミネッセンス素子については、例えば、「有機LED素子の残された研究課題と実用化戦略」(ぶんしん出版、1999年)及び「光・電子機能有機材料ハンドブック」(朝倉書店、1997年)などに詳しい記載がある。
【0041】
本発明の同軸落射照明装置には、直流電圧の印加により発光する有機エレクトロルミネッセンス素子が備えられている。有機エレクトロルミネッセンス素子は、上記のように、その陽電極層と陰電極層とに挟まれた有機発光材料層部分が均一に面発光し、その発光色を有機発光材料層の材料の選定により所望の色に設定することが容易である。このような有機エレクトロルミネッセンス素子を備えた本発明の同軸落射照明装置は、対象物に均一に光を照射することができ、且つその光の色の設定が容易である。このため、本発明の同軸落射照明装置を検査装置に用いることにより、検査対象物に均一に光を照射することができ、且つその光の色を検査対象物に応じた色に設定することができるため、各種の検査対象物の外観を精度良く検査することができる。
【0042】
また、本発明の同軸落射照明装置には、二個以上の有機エレクトロルミネッセンス素子が備えられていてもよい。そして二個以上の有機エレクトロルミネッセンス素子の発光色を互いに異なる色に設定することにより、検査対象物に変更があった場合にも、変更後の検査対象物に応じた色の光を発する発光素子を点灯させることで、検査対象物に応じて同時落射照明装置を交換することなく精度の良い外観検査が可能となる。
【0043】
さらにまた、同軸落射照明装置を、例えば、赤、緑、青のそれぞれの色で発光する三個で一組の有機エレクトロルミネッセンス素子を少なくとも一組備える構成として、各組のそれぞれの発光素子の光の色を混色して照明装置の光の色を調節することもできる。
【0044】
次に、本発明の同軸落射照明装置を備えた検査装置について説明する。図3は、本発明の同軸落射照明装置を備えた検査装置の構成例を示す図である。図3の検査装置30には、図1の同軸落射照明装置10が用いられている。
【0045】
図3の検査装置30は、例えば、プリント配線板などの検査対象物32に光を照射する同軸落射照明装置10、同軸落射照明装置10により光照射された検査対象物32の光学像を撮像し、この光学像に対応する画像データを出力する撮像装置33、そして前記画像データと参照データとの照合を行なう画像処理装置34などから構成されている。検査対象物32は、例えば、支持台31の上に配置される。
【0046】
検査装置30には、その同軸落射照明装置10に直流電圧を供給するための直流電源35、そして撮像装置33により撮像された検査対象物32の外観、あるいはその検査結果などを表示するための表示装置36が備えられている。
【0047】
同軸落射照明装置10は、直流電源35によって直流電圧が印加されることにより有機エレクトロルミネッセンス素子(図1:15)が発する光を、検査対象物32に照射する。そして撮像装置33は、光照射された検査対象物32の光学像を撮像して、この光学像に対応する画像データを出力する。この画像データは、画像処理装置34に送られる。画像処理装置34は、撮像装置33が出力した画像データと参照データとを照合する。この照合により、検査対象物32の外観が検査される。表示装置36には、例えば、外観検査の結果、あるいは不良と判定された検査対象物の光学像などが表示される。
【0048】
検査装置30は、その同軸落射照明装置10が備える有機エレクトロルミネッセンス素子により、検査対象物に応じた色の光を均一に照射することができるため、検査対象物32の外観を精度良く検査することができる。
【0049】
画像データと参照データとの照合は、公知の検査装置の場合と同様の方法により行なわれる。データの照合方法の例としては、撮像された検査対象物に対応する画像データと、予め撮像された検査対象物に対応する画像データ(参照データ)とをパターンマッチングする方法、および撮像された検査対象物に対応する画像データから形状や寸法に関する数値データを算出し、この数値データと良品の検査対象物の許容範囲を示す数値データ(参照データ)とを照合する方法などが挙げられる。
【0050】
また、従来の検査装置の場合と同様に、画像処理装置34における画像データの取り扱いを容易とするために、撮像装置33が出力する画像データに各種の前処理を行なうこともできる。前処理の例としては、二値化処理、ガンマ補正処理、濃度変換処理、およびシェーディング処理などが挙げられる。
【0051】
検査装置30の撮像装置33が出力する画像データには、検査対象物32の色やその表面における反射光の強弱を示す情報などが含まれている。このような情報をもとに検査装置30の同軸落射照明装置10が備える有機エレクトロルミネッセンス素子の発光色や輝度を、検査対象物32に応じて調節することもできる。このように発光色や輝度を調節すると、検査対象物に変更があった場合でも同軸落射照明装置の光の色や輝度を検査対象物に応じて簡単に設定することができるため、検査装置の汎用性を高めることができる。
【0052】
また、同軸落射照明装置10の有機エレクトロルミネッセンス素子を間欠的に点灯させることもできる。有機エレクトロルミネッセンス素子は、その点灯時の発熱により有機発光材料層が変質して発光特性が劣化(例、輝度の低下)し易いことが知られている。有機エレクトロルミネッセンス素子を間欠的に点灯させることにより、その発熱が抑えられ、上記発光特性の劣化が低減される。このため、検査装置を長時間にわたって使用した場合であっても、検査対象物を安定に検査することができる。
【0053】
さらにまた、同軸落射照明装置10の有機エレクトロルミネッセンス素子の駆動電圧を、撮像装置33が出力する画像データをもとに制御して、検査対象物32に照射される光の輝度を安定化することも好ましい。これにより、例えば、大気中の水分や酸素などの影響を受けて有機エレクトロルミネッセンス素子の発光輝度が徐々に低下した場合であっても検査対象物32に照射される光の輝度が安定化されるため、検査対象物を安定に検査することができる。
【0054】
図4は、本発明の第二の構成の同軸落射装置の一例を示す断面図である。図4の同軸落射照明装置40は、上下方向に伸びる筒体41、この筒体41の内部に筒体41の長さ方向に沿って互いに同軸に配置された一対の光学レンズ12a、12b、上記筒体41の下側端部に固定された、前記のレンズの軸に沿って上下に開口45a、45bが形成された筐体46、この筐体46内に上記レンズの軸に対して表面を傾斜させて配置されたハーフミラー13、そして上記筐体46に収容され、前記のハーフミラー13の表面での反射を介してレンズの軸と同軸に且つ筐体46の下側方向に伝わる光を発する光源14から構成されている。そして図4の同軸落射照明装置40の光源14には、直流電圧の印加により発光する有機エレクトロルミネッセンス素子15が一個備えられている。
【0055】
図4の同軸落射照明装置40の構成は、一対の光学レンズ12a、12bを収容する筒体41の下側端部に、有機エレクトロルミネッセンス素子15及びハーフミラー13を収容する筐体46が固定されていること以外は図1の同軸落射照明装置10と同様である。
【0056】
同軸落射照明装置10の場合と同様に、同軸落射照明装置40のハーフミラー13の表面とレンズの軸とのなす角度は45度であることが好ましい。
【0057】
同軸落射照明装置40の筒体41と筐体46とは脱着可能とされていることが好ましい。これにより、上下に開口45a、45bが形成された筐体46、この筐体46の上下の開口45a、45bの間に上下方向に対して表面を傾斜させて配置されたハーフミラー13、そして上記筐体46に収容され、前記のハーフミラー13の表面での反射を介して筐体46の下側方向に伝わる光を発する有機エレクトロルミネッセンス素子15を備えた光源14からなる発光装置を、各種の倍率の光学レンズを収容する筒体と組み合わせて使用することが可能となる。
【0058】
同軸落射照明装置40の光は、照明装置40と照明対象の物品とを用意する工程、この照明装置40を照明対象の物品の上方に配置する工程、そして上記照明装置40の有機エレクトロルミネッセンス素子15に直流電圧を印加することにより生じた発光を、照明装置40のハーフミラー13の表面での反射を介して照明対象の物品に照射する工程を含む同軸落射照明方法によって、照明対象の物品に照射される。
【0059】
図4の同軸落射照明装置40を検査装置に用いることにより、図1の同軸落射照明装置10の場合と同様に、検査対象物に均一に光を照射することができ、且つその光の色を検査対象物に応じた色に設定することができるため、各種の検査対象物の外観を精度良く検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の第一の構成の同軸落射照明装置の一例を示す断面図である。
【図2】図1の同軸落射照明装置が備える有機エレクトロルミネッセンス素子の構成を示す断面図である。
【図3】本発明の同軸落射照明装置を用いた検査装置の構成例と、その使用の態様とを示す図である。
【図4】本発明の第二の構成の同軸落射照明装置の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0061】
10 同軸落射照明装置
11 筒体
12a、12b 光学レンズ
13 ハーフミラー
14 光源
15 有機エレクトロルミネッセンス素子
21 透明基板
22 透明陽電極層
23 正孔輸送層
24 有機発光材料層
25 陰電極層
26 有機エレクトロルミネッセンス素子の発光の取り出し方向を示す矢印
27a、27b 電気的接続端子
28 ガラス板
29 接着剤層
30 検査装置
31 支持台
32 検査対象物
33 撮像装置
34 画像処理装置
35 直流電源
36 表示装置
40 同軸落射照明装置
41 筒体
45a、45b 開口
46 筐体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に伸びる筒体、該筒体内部に筒体の長さ方向に沿って互いに同軸に配置された一対の光学レンズ、該一対の光学レンズの間にレンズの軸に対して表面を傾斜させて配置されたハーフミラー、そして上記筒体の側部に備えられ、該ハーフミラー表面での反射を介してレンズの軸と同軸に且つ筒体の下側方向に伝わる光を発する光源からなり、該光源が、直流電圧の印加により発光する有機エレクトロルミネッセンス素子を少なくとも一個備えていることを特徴とする同軸落射照明装置。
【請求項2】
ハーフミラー表面とレンズの軸とのなす角度が45度である請求項1に記載の同軸落射照明装置。
【請求項3】
請求項1もしくは2に記載の同軸落射照明装置と照明対象の物品とを用意する工程、該照明装置を照明対象の物品の上方に配置する工程、そして該照明装置の有機エレクトロルミネッセンス素子に直流電圧を印加することにより生じた発光を、該照明装置のハーフミラー表面での反射を介して照明対象の物品に照射する工程を含む同軸落射照明方法。
【請求項4】
上下方向に伸びる筒体、該筒体内部に筒体の長さ方向に沿って互いに同軸に配置された一対の光学レンズ、上記筒体の下側端部に固定された、該レンズの軸に沿って上下に開口が形成された筐体、該筐体内に上記レンズの軸に対して表面を傾斜させて配置されたハーフミラー、そして上記筐体に収容され、該ハーフミラー表面での反射を介してレンズの軸と同軸に且つ筐体の下側方向に伝わる光を発する光源からなり、該光源が、直流電圧の印加により発光する有機エレクトロルミネッセンス素子を少なくとも一個備えていることを特徴とする同軸落射照明装置。
【請求項5】
ハーフミラー表面とレンズの軸とのなす角度が45度である請求項4に記載の同軸落射照明装置。
【請求項6】
筒体と筐体とが脱着可能とされている請求項4もしくは5に記載の同軸落射照明装置。
【請求項7】
請求項4乃至6のうちのいずれかの項に記載の同軸落射照明装置と照明対象の物品とを用意する工程、該照明装置を照明対象の物品の上方に配置する工程、そして該照明装置の有機エレクトロルミネッセンス素子に直流電圧を印加することにより生じた発光を、該照明装置のハーフミラー表面での反射を介して照明対象の物品に照射する工程を含む同軸落射照明方法。
【請求項8】
上下に開口が形成された筐体、該筐体の上下の開口の間に上下方向に対して表面を傾斜させて配置されたハーフミラー、そして上記筐体に収容され、該ハーフミラー表面での反射を介して筐体の下側方向に伝わる光を発する光源からなり、該光源が、直流電圧の印加により発光する有機エレクトロルミネッセンス素子を少なくとも一個備えていることを特徴とする互いに同軸に配置された一対の光学レンズが収容された筒体と組み合わせて使用するための発光装置。
【請求項9】
ハーフミラー表面と筐体の上下方向とのなす角度が45度である請求項8に記載の発光装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−46946(P2006−46946A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−224253(P2004−224253)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(504180239)国立大学法人信州大学 (759)
【出願人】(500184626)株式会社アルゴル (5)
【Fターム(参考)】