説明

吐出部構造

【課題】接着剤や修正液等の粘性が高い液体であっても、ノズル内で当該液体が残留したり、ノズルから洩れ出すことがない吐出部構造を提供する。
【解決手段】ノズル2と該ノズル2に冠着されるキャップ4からなる吐出部構造1であって、ノズル2は、先端側に設けられた吐出管部2aと、根元側に設けられた拡径管部2bからなり、キャップ4は少なくとも前記ノズル2の拡径管部2bに外嵌可能な嵌合筒部4aと、該嵌合筒部4aの上端側を塞ぐ天板部4bを有しており、拡径管部2bの外周上端付近及び/又は嵌合筒部4aの内周下端付近にシール用突条5aが周設されていることを特徴とする吐出部構造1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤や修正液などの粘調な液体を滴下するのに適した吐出部構造に関し、更に詳しくは、ノズル内に粘調液が残留するのを防ぎ、ノズルの詰りや液ダレ、気泡の混入を防ぐことができる吐出部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、液体を少量づつ取り出すための容器としては、例えば、特許文献1の図1に記載されているような、容器本体と、液体を注ぎ出すためのノズル体と、ノズル体の先端を塞ぐためのキャップ体からなる液体注出容器が用いられている。この種の容器は一度に使用する液体の量や粘度などに応じて、径が異なるノズルが使い分けられ、例えば、液体の使用量が少ないときや液体の粘度が低い場合には口径が小さなノズルが使用され、液体の使用量が多いときや液体の粘度が高い場合には口径が大きなノズルが使用される。
【0003】
しかしながら、接着剤や修正液など、粘度が大きい液体をほんの少量だけ滴下して使用するような場合、適切なノズルの選択が困難になる。即ち、口径が大きなノズルを使用すると、所望の量をはるかに超える液体が飛び出るなど、使用量の調節が困難になる場合がある。逆に、口径が小さなノズルを使用すると、液体がノズルの中に残留しやすくなり、残留した液体が不意に流れ出して液ダレが生じたり、ノズル内で固化して詰まってしまうことがある。また、ノズル内で空気をかんで気泡が生じてしまい、接着剤の接着力が落ちたり、修正液で修正した面に凹凸が生じたりするなど、適切な使用ができなくなる場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−210351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はかかる実情に鑑み、上記従来技術の問題点を解消し、粘調な液体を少量使用する場合でも適量の液体を吐出させることができ、且つノズル内に液体が残留せず、ノズルの詰まりや液ダレがなく、気泡の混入もない吐出部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するためになされたもので、本発明の請求項1は、ノズルと該ノズルに冠着されるキャップからなる吐出部構造であって、ノズルは、先端側に設けられた吐出管部と、該吐出管部の下方に設けられた拡径管部からなり、キャップは少なくとも前記ノズルの拡径管部に外嵌可能な嵌合筒部と、該嵌合筒部の上端側を塞ぐ天板部を有しており、拡径管部の外周及び/又は嵌合筒部の内周にシール用突条が周設されていることを特徴とする吐出部構造を内容とする。
【0007】
本発明の請求項2は、拡径管部の外径は吐出管部の内径の2倍以上であり、冠着時における拡径管部と嵌合筒部の重複部分の長さは吐出管部よりも長いことを特徴とする請求項1に記載の吐出部構造を内容とする。
【0008】
本発明の請求項3は、ノズルが容器本体の開口部に取り付けられるノズルチップであり、ノズルチップは容器本体の開口部内に嵌入される嵌入部と、該開口部の上端と当接して該ノズルチップを支持するためのフランジを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の吐出部構造を内容とする。
【0009】
本発明の請求項4は、キャップは天板部から延設された外冠部を有し、容器本体の開口部に固着する手段を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の吐出部構造を内容とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の吐出部構造は、拡径管部の外周及び/又は嵌合筒部の内周にシール用突条が周設されているため、キャップをノズルに冠着する際に、キャップの嵌合筒部内の空気がノズルの拡径管部に押されて吐出管部から容器本体側に流入するので、吐出管部に液体が残留したり洩れ出そうとしても、流入する空気に押し戻されて容器本体内に落ち、ノズルの詰まりや液ダレ、気泡の混入が防止される。
【0011】
拡径管部の内断面の面積を吐出管部の内断面の面積の2倍以上とし、冠着時における拡径管部と嵌合筒部の重複部分の長さを吐出管部よりも長くすれば、キャップをノズルに冠着する際に吐出管部から流入する空気の圧力が大きくなるため、吐出管部に残留したり洩れ出す液体が接着剤のような粘調液だったとしても、確実に容器本体内に押し戻すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は本発明の吐出部構造を有する液体容器のノズル付近の構造を示す部分断面図である。
【図2】図2は本発明の吐出部構造を有する別の液体容器のノズル付近の構造を示す部分断面図である。
【図3】図3は本発明の吐出部構造の機能を説明するための断面図である。
【図4】図4はシール用突条がない吐出部構造における空気の流れを説明するための断面図である。
【図5】図5は本発明の吐出部構造で使用されるノズルを示す断面図であり、(a)は図1に示す吐出部構造におけるノズルであり、(b)は図2に示す吐出部構造におけるノズル(ノズルチップ)である。
【図6】図6は本発明の吐出部構造で使用されるキャップを示す断面図であり、(a)は図1に示す吐出部構造におけるキャップであり、(b)は図2に示す吐出部構造におけるキャップである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の吐出部構造は、ノズルと該ノズルに冠着されるキャップからなり、例えば図1に示したように、ノズル2は、先端側に設けられた吐出管部2aと、該吐出管部2aの下方に設けられた拡径管部2bからなり、キャップ4は少なくとも前記ノズル2の拡径管部2bに外嵌可能な嵌合筒部4aと、該嵌合筒部4aの上端側を塞ぐ天板部4bを有しており、拡径管部2bの外周及び/又は嵌合筒部4aの内周にシール用突条5aが周設されていることを特徴とする。
【0014】
本発明の吐出部構造1は、図1及び図2に示すように、ノズル2と該ノズル2に冠着されるキャップ4からなり、必要に応じキャップ4をノズル2から着脱して使用する。
本発明は、図3に示すように、ノズル2とキャップ4の間にシール用突条5aが設けられていることを特徴とし、これにより、キャップ4をノズル2に冠着する際にキャップ4とノズル2の間の空気をノズル2内に流入させ、ノズル2内に残留する液体7を容器本体内に押し込むことができる。なお、シール用突条5aはノズル2側、キャップ4側のいずれに設けてもよく(図3の例ではキャップ4側)、また両方に設けてもよい。
一方、シール用突条5aを設けない場合は、残留する液体7の粘性及び容器本体内の空気圧に負けてしまい、図4に示すように、キャップ4とノズル2の隙間から空気が抜けるため、本発明の目的とする効果を得ることができない。
【0015】
本発明におけるノズル2は、図5に示したように、先端側に設けられた吐出管部2aと、該吐出管部2aの下方に設けられた拡径管部2bからなり、容器本体に貯蔵された液体が拡径管部2bを通って吐出管部2aから吐出されるように構成されている。なお図5(a)は図1に示した吐出部構造のノズル部分であり、図5(b)は図2に示した吐出部構造のノズルチップである。
本発明において、ノズル2は図1に示した例のように容器本体と一体化されていてもよいし、図2に示した例のように容器本体とは別体のノズルチップ3とされていてもよいが、容器本体内に液体を充填する作業性を考慮すれば、ノズルチップ3を取り外して広目の開口部から液体を充填できるのでノズルチップ3としたほうが好ましい。また、ノズルチップが損傷したり不具合が生じた場合には、新しいノズルチップに取り替えることができる利点もある。ノズルチップ3とする場合は、吐出管部2a及び拡径管部2bからなるノズル2の拡径管部2bに、容器本体6の開口部内に嵌入される嵌入部3aと、該開口部の上端と当接して該ノズルチップ3を支持するためのフランジ3bを設ける。
【0016】
本発明におけるノズル2の形状については、図5(a)に示したように、吐出管部2aと拡径管部2bを直接接続してもよいが、図5(b)に示したように吐出管部2aと拡径管部2bの間にテーパ部2cを設けて、キャップ4の嵌合筒部4aにノズル2を挿入しやすくしてもよい。
本発明において、吐出管部2aの径及び長さは、吐出する液体の粘度や吐出量に応じて適宜設計することができ、拡径管部2bの径及び長さについては、吐出管部2aの径及び長さに応じて適当な範囲で定めることができる。
即ち、本発明においては拡径管部2bで押し退けた嵌合筒部4a内の空気を吐出管部2aに流入させるので、吐出管部2aに流入させる空気の量を大きくするため、拡径管部2bの外径R1は吐出管部2aの内径R2に対してできるだけ大きいほうが好ましく(図5)、またキャップ4の冠着時における拡径管部2bと嵌合筒部4aの重複部分の長さL1は吐出管部2aの長さL2に対してできるだけ大きいほうが好ましい(図1、図2)。具体的な大きさは使用する液体の粘度によっても異なるが、例えば接着剤のように粘度が大きな液体の場合は、拡径管部2bの外径R1は吐出管部2aの内径R2の2倍以上が好ましく、4倍以上がさらに好ましい。また、拡径管部2bと嵌合筒部4aの重複部分の長さL1は吐出管部の長さL2の1倍以上が好ましく、2倍以上がさらに好ましい。
【0017】
本発明において使用されるキャップ4の具体例を図6に示す。図6(a)に示したように本発明のキャップ4は嵌合筒部4aと天板部4bからなるが、図6(b)に示したように、キャップ4の天板部4bに、嵌合筒部4aの外側に別途容器本体と固着するための外冠部4cを設けてもよい。特に、図5(b)に示したようなノズルチップ3を使用する場合、ノズル2の拡径管部2bとキャップ4の嵌合筒部4aを強固に嵌合すればキャップ4を取り外す際にノズルチップ3まで外れてしまう恐れがあるため、図6(b)のように、キャップ2の天板部4bに外冠部4cを延設して容器本体に対する、螺着等の固着手段(図6(b)では螺着)を設け、一方、キャップ4の嵌合筒部4aとノズル2の拡径管部2bとの嵌合を緩く嵌合することにより、キャップ4を取り外す際にノズルチップ3も取り外すといったトラブルは防止される。
【0018】
本発明ではノズル2の拡径管部2bとキャップ4の嵌合筒部4aの間にシール用突条5aが周設される。シール用突条5aはノズル2の拡径管部2bの外周又はキャップ4の嵌合筒部4aの内周のいずれに設けてもよく、両方に設けてもよい。但し、拡径管部2bと嵌合筒部4aの隙間から漏れる空気の量を減らすため、シール用突条5aをノズル2の拡径管部2b側に設ける場合は、図5(a)に示したように外周上端付近に設け、キャップ4の嵌合筒部4a側に設ける場合は、図6(b)に示したように内周下端付近に設けるのが好ましい。
【0019】
また、キャップ4が冠着された時にシール用突条5aが当接する位置に、受け溝5bを設けてもよい。なお、図6(a)のキャップ4には図5(a)のノズル2の突条5aと対応する受け溝5bが設けられており、図5(b)のノズルチップ3には図6(b)のキャップ4の突条5aと対応する受け溝5bが設けられている。この受け溝5bは突条5aと係合してキャップ4が不意に外れにくくする機能を有する。
なお、キャップ4をノズル2に冠着することによりキャップ4内の空気をノズル2内に押し込めば、容器本体内の気圧は外気圧よりも若干高くなるが、受け溝5bの深さをシール用突条5aの突出高さよりも深くして両者間に小さな隙間を形成すれば、シール用突条5aが受け溝に入り込んだときにシール機能が解除され、キャップ4とノズル2の隙間から容器本体内の空気が少しづつ抜け、容器本体内の気圧と外気圧が等しくなるので、キャップ4をノズル2から取り外す際、気圧の差により容器内の液体が噴き出す危険性が減少する。
【0020】
本発明の吐出部構造で使用するノズル2及びキャップ4の材質は特に限定されないが、成形がしやすく、軽量である点で合成樹脂が好ましく、例えば、例えば、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン- スチレン共重合樹脂)、AAS樹脂(アクリロニトリル/アクリルゴム/スチレン樹脂)、AES樹脂(アクリロニトリル/エチレンプロピレンゴム/スチレン樹脂)、AS樹脂(アクリロニトリル/スチレン樹脂)、PS樹脂(ポリスチレン樹脂)、PMMA樹脂(ポリメチルメタクリレート樹脂)、PVC樹脂(ポリ塩化ビニリデン樹脂)、MS樹脂(メチルメタクリレート/スチレン樹脂)、PP樹脂(ポリプロピレン樹脂)、PE樹脂(ポリエチレン樹脂)、PBT樹脂(ポリブチレンテレフタレート樹脂)およびPC樹脂(ポリカーボネート樹脂)等が使用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0021】
上記したとおり、本発明の吐出部構造は、ノズルにキャップを冠着する際に、空気圧を利用してノズル内に残留する液体を容器内に押し戻して、ノズルの詰まりや液ダレ、気泡の混入を防ぐことができるので、接着剤や修正液のように、ノズルから容器内に自重では落下しないような粘性が高い液体を吐出するための吐出部構造として、極めて有用性の高いものである。
【符号の説明】
【0022】
1 吐出部構造
2 ノズル
2a 吐出管部
2b 拡径管部
2c テーパ部
3 ノズルチップ
3a 嵌入部
3b フランジ
4 キャップ
4a 嵌合筒部
4b 天板部
4c 外冠部
5a シール用突条
5b 受け溝
6 容器本体
7 液体
R1 拡径管部の外径
R2 吐出管部の内径
L1 拡径管部と嵌合筒部の重複部分の長さ
L2 吐出管部の長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルと該ノズルに冠着されるキャップからなる吐出部構造であって、
ノズルは、先端側に設けられた吐出管部と、該吐出管部の下方に設けられた拡径管部からなり、
キャップは少なくとも前記ノズルの拡径管部に外嵌可能な嵌合筒部と、該嵌合筒部の上端側を塞ぐ天板部を有しており、
拡径管部の外周及び/又は嵌合筒部の内周にシール用突条が周設されていることを特徴とする吐出部構造。
【請求項2】
拡径管部の外径は吐出管部の内径の2倍以上であり、
冠着時における拡径管部と嵌合筒部の重複部分の長さは吐出管部よりも長いことを特徴とする請求項1に記載の吐出部構造。
【請求項3】
ノズルが容器本体の開口部に取り付けられるノズルチップであり、
ノズルチップは容器本体の開口部内に嵌入される嵌入部と、該開口部の上端と当接して該ノズルチップを支持するためのフランジを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の吐出部構造。
【請求項4】
キャップは天板部から延設された外冠部を有し、容器本体の開口部に固着する手段を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の吐出部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−201577(P2011−201577A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−71581(P2010−71581)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(393030958)村角株式会社 (18)
【Fターム(参考)】