説明

含フッ素グラフト共重合体、含フッ素グラフト共重合体の製造方法、および該含フッ素グラフト共重合体を用いた組成物

【課題】機械物性に優れ、樹脂の特性である溶融成型が可能で、ゴムの特性である柔軟性を兼ね備え、架橋しやすい含フッ素グラフト共重合体を提供する。
【解決手段】(I)含フッ素オレフィンを含む樹脂性含フッ素セグメント形成用モノマー(a1)およびヨウ素または臭素末端モノマー(a2)をラジカル重合開始剤の存在下に重合して初期重合体(A1)を得る工程、および(II)工程(I)で得られたヨウ素原子または臭素原子含有初期重合体(A1)に対し、ラジカル重合開始剤の存在下で、少なくとも1種の含フッ素オレフィンを含むエラストマー性含フッ素セグメント(B)形成用のモノマー(b1)を重合に供して、初期重合体(A1)のヨウ素原子または臭素原子を重合開始点とするグラフト鎖を初期重合体(A1)に形成する工程を含む製造方法で得られる含フッ素グラフト共重合体(A−B)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素グラフト共重合体およびその製造方法、ならびに該含フッ素グラフト共重合体を用いた組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヨウ素移動重合技術を用いることにより、エラストマー性セグメントに樹脂性セグメントをブロック/グラフト共重合して共重合体(マルチセグメントポリマー)を比較的容易に得られるといわれており(たとえば、特許文献1または2参照)、かかる製法の展開が種々検討されてきている。
【0003】
しかしこの製法の問題点としては、(1)水素の引き抜きなどにより、重合反応が停止する系(一般的な非フッ素ポリマーの系、非フッ素ポリマーと炭化水素系連鎖移動剤との併用系など)へは適用困難であること、(2)分子量の大きい結晶性ポリマーを得ることが困難である(分子量の小さい結晶性ポリマーや非結晶性ポリマーであれば重合可能)こと、(3)一段階目でエラストマー性含フッ素セグメントを重合により形成後、二段階目で樹脂性含フッ素セグメントの形成用としてパーフルオロモノマーを共重合する場合(たとえば、特許文献3参照)、エラストマー性含フッ素セグメントのヨウ素末端からの樹脂性含フッ素セグメントは効率よく成長しないことなどがあげられる。
【0004】
(2)の原因は、結晶性の高いポリマーでは重合と同時に結晶化が起こり、ヨウ素末端が結晶中に埋め込まれてしまうため分子量の大きな共重合体(マルチセグメントポリマー)が生じにくいからであり、(3)の原因は、一段階目で得られたエラストマー性含フッ素セグメントの末端が主として−CH2Iとなっており、−CF2Iに比べ相対的に反応性が低く、効率よく重合反応が進行しないためであると考えられている。
【0005】
このように、高分子量の樹脂性含フッ素セグメントを有するマルチセグメントポリマーや、樹脂性含フッ素セグメントにパーフルオロポリマーセグメントを用いたマルチセグメントポリマーを得るための効果的な製造法はなく、新たな手法を開発する必要がある。
【0006】
【特許文献1】特開昭53−3495号公報
【特許文献2】特開昭53−86788号公報
【特許文献3】特開平7−316246号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、機械物性に優れ、樹脂の特性である溶融成形が可能で、ゴムの特性である柔軟性をも兼ね備え、エラストマー性含フッ素セグメントの末端にヨウ素原子や臭素原子が導入されているために容易にパーオキサイド架橋することができ、さらに、樹脂性含フッ素セグメントとしてパーフルオロポリマーセグメントを用いた場合にも効率よく含フッ素グラフト共重合体(グラフト型マルチセグメントポリマー)、その製造方法、さらには含フッ素グラフト共重合体を含む組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
樹脂性含フッ素セグメント(A)を幹ポリマーとし、グラフト鎖末端にヨウ素原子または臭素原子を有するエラストマー性含フッ素セグメント(B)をグラフト鎖として含む含フッ素グラフト共重合体(A−B)であって、
(I)少なくとも1種の含フッ素オレフィンを含む樹脂性含フッ素セグメント(A)形成用モノマー(a1)、および式(1):
CX12=CX3−Y1 (1)
(式中、X1、X2およびX3は同じかまたは異なり、いずれも水素原子、フッ素原子または−CH3を表し、Y1はヨウ素原子または臭素原子を表す)
または式(2):
CX45=CX6−Rf1−CX78−Y2 (2)
(式中、X4、X5、X6、X7およびX8は同じかまたは異なり、いずれも水素原子、フッ素原子または−CH3を表し、Y2はヨウ素原子または臭素原子を表し、Rf1は、少なくとも1つのエーテル結合の酸素原子を有してもよい直鎖状または分岐鎖状の含フッ素アルキレン基を表す)
で示されるヨウ素または臭素末端モノマー(a2)をラジカル重合開始剤の存在下に重合してヨウ素原子または臭素原子含有初期重合体(A1)を得る工程、ならびに
(II)工程(I)で得られたヨウ素原子または臭素原子含有初期重合体(A1)に対し、ラジカル重合開始剤の存在下で、少なくとも1種の含フッ素オレフィンを含むエラストマー性含フッ素セグメント(B)形成用のモノマー(b1)を重合に供して、初期重合体(A1)のヨウ素原子または臭素原子を重合開始点とするグラフト鎖を初期重合体(A1)に形成する工程
を含む製造方法によって得られる含フッ素グラフト共重合体に関する。
【0009】
前記樹脂性含フッ素セグメント(A)形成用モノマー(a1)としては、テトラフルオロエチレン(以下、「TFE」という)、フッ化ビニリデン(以下、「VdF」という)、クロロトリフルオロエチレン(以下、「CTFE」という)および式(3):
CF2=CF−Rf2 (3)
(式中、Rf2は−CF3または−ORf3を表し、Rf3は炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表す)
で示されるパーフルオロエチレン性不飽和化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0010】
また、前記樹脂性含フッ素セグメント(A)形成用モノマー(a1)としては、(a1−1)TFEと式(3)で示されるパーフルオロエチレン性不飽和化合物の少なくとも1種との組み合わせ、(a1−2)TFE、(a1−3)TFEとエチレンとの組み合わせ、(a1−4)VdF、および(a1−5)CTFEとTFEとの組み合わせよりなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーであることが好ましい。
【0011】
さらにまた、前記樹脂性含フッ素セグメント(A)形成用モノマー(a1)としては、TFEとヘキサフルオロプロピレン(以下、「HFP」という)との組み合わせ、またはTFEとHFPとパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(以下、「PAVE」という)との組み合わせであることが好ましい。
【0012】
前記エラストマー性含フッ素セグメント(B)形成用モノマー(b1)としては、(b1−1)VdFとHFPとの組み合わせ、(b1−2)VdFとTFEとHFPとの組み合わせ、(b1−3)TFEとプロピレンとの組み合わせ、(b1−4)VdFとTFEとPAVEとの組み合わせ、(b1−5)TFEとPAVEとの組み合わせ、および(b1−6)VdFとCTFEとの組み合わせよりなる群から選ばれたモノマーであることが好ましい。
【0013】
ヨウ素または臭素末端モノマー(a2)としては、CF2=CFOCF2CF2CH2
またはCH2=CHCF2CF2Iであることが好ましい。
【0014】
また、本発明は、上記の工程(I)および工程(II)を含む含フッ素グラフト共重合体(A−B)の製造方法にも関する。
【0015】
また、本発明は、上記の含フッ素グラフト共重合体(A−B)、要すればさらに架橋剤を含む架橋性組成物に関する。
【0016】
さらに本発明は、フッ素樹脂10〜95質量%、フッ素ゴム90〜5質量%および上記の含フッ素グラフト共重合体(A−B)0.1〜20質量%を含む熱可塑性重合体組成物に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、機械物性に優れ、樹脂の特性である溶融成形が可能で、ゴムの特性である柔軟性を兼ね備え、エラストマー性含フッ素セグメントの末端にヨウ素や臭素などが導入されているため容易にパーオキサイド架橋することができ、さらに、樹脂性含フッ素セグメントとしてパーフルオロポリマーセグメントを用いた場合にも効率よく含フッ素グラフト共重合体(A−B)を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の樹脂性含フッ素セグメント(A)を幹ポリマーとし、グラフト鎖末端にヨウ素原子または臭素原子を有するエラストマー性含フッ素セグメント(B)をグラフト鎖として含む含フッ素グラフト共重合体(A−B)は、
(I)少なくとも1種の含フッ素オレフィンを含む樹脂性含フッ素セグメント(A)形成用モノマー(a1)、および前記式(1)で示されるヨウ素または臭素末端モノマー(a2)をラジカル重合開始剤の存在下に重合してヨウ素原子または臭素原子含有初期重合体(A1)を得る工程、ならびに
(II)工程(I)で得られたヨウ素原子または臭素原子含有初期重合体(A1)に対し、ラジカル重合開始剤の存在下で、少なくとも1種の含フッ素オレフィンを含むエラストマー性含フッ素セグメント(B)形成用のモノマー(b1)を重合に供して、初期重合体(A1)のヨウ素原子または臭素原子を重合開始点とするグラフト鎖を初期重合体(A1)に形成する工程
を含む製造方法によって得られる。
【0019】
工程(I)では、含フッ素オレフィンを含む樹脂性含フッ素セグメント(A)形成用モノマー(a1)およびヨウ素または臭素末端モノマー(a2)をラジカル重合開始剤の存在下に重合して樹脂性含フッ素セグメント(A)を構成する初期重合体(A1)を製造する。
【0020】
樹脂性含フッ素セグメント(A)形成用モノマー(a1)に使用される含フッ素オレフィンは、特に限定されるものではないが、TFE、VdF、CTFEおよび式(3):
CF2=CF−Rf2 (3)
(式中、Rf2は−CF3または−ORf3を表し、Rf3は炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表す)
で表されるパーフルオロエチレン性不飽和化合物などのパーフルオロオレフィンのほか、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロイソブテン、フッ化ビニル、式(4):
CH2=CX9(CF2n10 (4)
(式中、X9は、水素原子またはフッ素原子を表し、X10は、水素原子、フッ素原子または塩素原子を表し、nは、1〜10の整数を表す)
などのフルオロオレフィン、ポリフルオロジエン類などをあげることができる。ポリフルオロジエン類としては、CF2=CFCF=CF2、CF2=CF(CF24CF=CF2、CF2=CFCF2OCF=CF2、CH2=CH(CF26CH=CH2などをあげることができる。
【0021】
また、樹脂性含フッ素セグメント(A)形成用モノマー(a1)には、さらに含フッ素オレフィンと共重合可能な非フッ素エチレン性単量体を併用してもよい。非フッ素エチレン性単量体としては、特に限定されないが、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテンなどの炭素数2〜10のα−オレフィンモノマー;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテルなどの炭素数1〜20のアルキル基を有するアルキルビニルエーテルなどがあげられる。
【0022】
樹脂性含フッ素セグメント(A)形成用モノマー(a1)としては、含フッ素グラフト共重合体(A−B)の耐熱性、耐薬品性、耐油性が向上する点から、さらには、含フッ素グラフト共重合体(A−B)を含む熱可塑性重合体組成物の耐熱性、耐薬品性、耐油性が向上し、かつ成形加工が容易になる点から、(a1−1)TFEと式(3)で示されるパーフルオロエチレン性不飽和化合物の少なくとも1種との組み合わせ、(a1−2)TFE、(a1−3)TFEとエチレンとの組み合わせ、(a1−4)VdF、および(a1−5)CTFEとTFEとの組み合わせよりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、特に(a1−1)の組み合わせであるTFEとHFPとの組み合わせ、またはTFEとHFPとPAVEとの組み合わせがより好ましい。
【0023】
次に(a1−1)〜(a1−5)の組み合わせから構成される好ましい含フッ素エチレン性重合体について説明する。
【0024】
(a1−1)TFEと式(3)で示されるパーフルオロエチレン性不飽和化合物との組み合わせで得られる樹脂性含フッ素エチレン性重合体
式(3)で示されるパーフルオロエチレン性不飽和化合物には、Rf2が−CF3であるHFP、Rf2が−ORf3であるPAVEが含まれる。TFEとHFPの樹脂性共重合体はFEPと称され、またTFEとPAVE、さらにはHFPとの樹脂性共重合体はPFAと称されている。
【0025】
これらPFAまたはFEPの場合、上述の作用効果において、含フッ素グラフト共重合体(A−B)では耐熱性、耐薬品性および耐油性に優れたものとなり、熱可塑性重合体組成物ではとりわけ耐熱性が優れたものとなり、加えて低燃料透過性が発現する点で好ましい。TFE単位は90〜99モル%が好ましく、式(3)で表されるパーフルオロエチレン性不飽和化合物単位は1〜10モル%であることが好ましい。また、TFEおよび式(3)で表されるパーフルオロエチレン性不飽和化合物からなる含フッ素エチレン性重合体は、第3成分を含有していてもよく、第3成分としてはTFEおよび式(3)で示されるパーフルオロエチレン性不飽和化合物と共重合可能なものであり、かつ得られる重合体が樹脂性を呈するものであればその種類は限定されない。
【0026】
(a1−2)TFEの単独重合体(以下、「PTFE」という)
PTFEの場合、上述の作用効果において、含フッ素グラフト共重合体(A−B)では耐熱性および耐薬品性に優れたものとなり、熱可塑性重合体組成物ではとりわけ耐熱性が優れたものとなる。PTFEは第2成分で変性されていてもよく、変性用の第2成分としてはTFEと共重合可能なものであればその種類は限定されない。
【0027】
(a1−3)TFEとエチレンとの組み合わせで得られる樹脂性含フッ素エチレン性重合体(以下、「ETFE」という)
ETFEの場合、含フッ素グラフト共重合体(A−B)では耐熱性および機械物性に優れたものとなり、熱可塑性重合体組成物では上述の作用効果に加えて、低燃料透過性および柔軟性が向上する点で好ましい。TFE単位とエチレン単位との含有モル比は20/80〜90/10が好ましく、30/70〜90/10がより好ましく、37/63〜80/20が特に好ましい。また、第3成分を含有していてもよく、第3成分としてはTFEおよびエチレンと共重合可能なもので、あればその種類は限定されない。そうした第3成分としては、通常、式:
CH2=CXRf4、CF2=CFRf4、CF2=CFORf4、CH2=C(Rf42
(式中、Xは水素原子またはフッ素原子、Rf4はフルオロアルキル基を表す)
で示される含フッ素ビニルモノマーが用いられ、これらの中でも、CH2=CXRf4で示される含フッ素ビニルモノマーがより好ましく、Rf4の炭素数が1〜8の含フッ素ビニルモノマーが特に好ましい。
【0028】
前記式で示される含フッ素ビニルモノマーの具体例としては、1,1−ジヒドロパーフルオロプロペン−1、1,1−ジヒドロパーフルオロブテン−1、1,1,5−トリヒドロパーフルオロペンテン−1、1,1,7−トリヒドロパーフルオロへプテン−1、1,1,2−トリヒドロパーフルオロヘキセン−1、1,1,2−トリヒドロパーフルオロオクテン−1、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチルビニルエーテル、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)、ヘキサフルオロプロペン、パーフルオロブテン−1、3,3,3−トリフルオロ−2−トリフルオロメチルプロペン−1、2,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロ−1−ペンテン(CH2=CFCF2CF2CF2H)があげられる。
【0029】
第3成分の含有量は、TFEとエチレンの合計に対して0.1〜10モル%が好ましく、0.1〜5モル%がより好ましく、0.2〜4モル%が特に好ましい。
【0030】
(a1−4)VdFの単独重合体(以下、「PVDF」という)
PVDFの場合、含フッ素グラフト共重合体(A−B)では機械物性に優れたものとなり、熱可塑性重合体組成物では上述の作用効果に加えて、優れた柔軟性および優れた力学物性の点で好ましい。PVDFは、第2成分で変性されていてもよく、変性用の第2成分としてはVdFと共重合可能なものであればその種類は限定されない。
【0031】
(a1−5)CTFEとTFEとの組み合わせで得られる樹脂性含フッ素エチレン性重合体(以下、「CTFE−TFE共重合体」という)
CTFE−TFE共重合体の場合、CTFE単位とTFE単位の含有モル比は、CTFE:TFE=2/98〜98/2であることが好ましく、5/95〜90/10であることが、含フッ素グラフト共重合体(A−B)では耐熱性、耐薬品性および耐油性に優れたものとなり、熱可塑性重合体組成物では薬液透過性が良好となる点で好ましい。また、式(3)で示されるパーフルオロエチレン性不飽和化合物を共重合することが好ましく、CTFE単位とTFE単位の合計に対して、パーフルオロエチレン性不飽和化合物単位は0.1〜10モル%であり、CTFE単位およびTFE単位は合計で90〜99.9モル%であることが好ましい。
【0032】
ヨウ素原子または臭素原子含有初期重合体(A1)の構成単位を与えるヨウ素または臭素末端モノマー(a2)とは、式(1):
CX12=CX3−Y1 (1)
(式中、X1、X2およびX3は同じかまたは異なり、いずれも水素原子、フッ素原子または−CH3を表し、Y1はヨウ素原子または臭素原子を表す)
または式(2):
CX45=CX6−Rf1−CX78−Y2 (2)
(式中、X4、X5、X6、X7およびX8は同じかまたは異なり、いずれも水素原子、フッ素原子または−CH3を表し、Y2はヨウ素原子または臭素原子を表し、Rf1は、少なくとも1つのエーテル結合の酸素原子を有してもよい直鎖状または分岐鎖状の含フッ素アルキレン基を表す)
で示されるものである。
【0033】
式(1)中、Y1はヨウ素原子または臭素原子を表し、容易にパーオキサイド架橋できる点から、ヨウ素原子が好ましい。同様に、式(2)中、Y2はヨウ素原子または臭素原子を表し、ヨウ素原子が好ましい。
【0034】
式(1)で示されるヨウ素または臭素末端モノマー(a2)としては、たとえばCF2=CFI、CF2=CFBrなどがあげられ、なかでもパーオキサイド架橋時の反応性が良好な点からCF2=CFIが好ましい。
【0035】
式(2)で示されるヨウ素または臭素末端モノマー(a2)としては、たとえばつぎの式(5)〜(23)で示されるヨウ素または臭素末端モノマーの1種または2種以上が挙げられる。
【0036】
式(5):
CX45=CX6−Rf1−CHR1−Y2 (5)
(式中、X4、X5、X6およびY2は前記同様であり、Rf1は、少なくとも1つのエーテル結合の酸素原子を有してもよい直鎖状または分岐鎖状の含フッ素アルキレン基、R1は水素原子またはメチル基を表す)
で示されるヨウ素または臭素末端モノマー。
【0037】
式(6):
CX45=CX6−(CF2n−Y2 (6)
(式中、X4、X5、X6は水素原子またはフッ素原子、nは1〜8の整数)
で示されるヨウ素または臭素末端モノマー。
【0038】
式(7):
CF2=CFCF2f5−Y2 (7)
(式中、Rf5
【化1】

であり、nは0〜5の整数)
で示されるヨウ素または臭素末端モノマー。
【0039】
式(8):
CF2=CFCF2(OCF(CF3)CF2m
(OCH2CF2CF2nOCH2CF2−Y2 (8)
(式中、mは0〜5の整数、nは0〜5の整数)
で示されるヨウ素または臭素末端モノマー。
【0040】
式(9):
CF2=CFCF2(OCH2CF2CF2m
(OCF(CF3)CF2nOCF(CF3)−Y2 (9)
(式中、mは0〜5の整数、nは0〜5の整数)
で示されるヨウ素または臭素末端モノマー。
【0041】
式(10):
CF2=CF(OCF2CF(CF3))mO(CF2n−Y2 (10)
(式中、mは0〜5の整数、nは1〜8の整数)
で示されるヨウ素または臭素末端モノマー。
【0042】
式(11):
CF2=CF(OCF2CF(CF3))m−Y2 (11)
(式中、mは1〜5の整数)
で示されるヨウ素または臭素末端モノマー。
【0043】
式(12):
CF2=CFOCF2(CF(CF3)OCF2nCF(−Y2)CF3 (12)
(式中、nは1〜4の整数)
で示されるヨウ素または臭素末端モノマー。
【0044】
式(13):
CF2=CFO(CF2nOCF(CF3)−Y2 (13)
(式中、nは2〜5の整数)
で示されるヨウ素または臭素末端モノマー。
【0045】
式(14):
CF2=CFO(CF2n−(C64)−Y2 (14)
(式中、nは1〜6の整数)
で示されるヨウ素または臭素末端モノマー。
【0046】
式(15):
CF2=CF(OCF2CF(CF3))nOCF2CF(CF3)−Y2 (15)
(式中、nは1〜2の整数)
で示されるヨウ素または臭素末端モノマー。
【0047】
式(16):
CH2=CFCF2O(CF(CF3)CF2O)nCF(CF3)−Y2 (16)
(式中、nは0〜5の整数)、
で示されるヨウ素または臭素末端モノマー。
【0048】
式(17):
CF2=CFO(CF2CF(CF3)O)m(CF2n−Y2 (17)
(式中、mは0〜5の整数、nは1〜3の整数)
で示されるヨウ素または臭素末端モノマー。
【0049】
式(18):
CH2=CFCF2OCF(CF3)OCF(CF3)−Y2 (18)
で示されるヨウ素または臭素末端モノマー。
【0050】
式(19):
CH2=CFCF2OCH2CF2−Y2 (19)
で示されるヨウ素または臭素末端モノマー。
【0051】
式(20):
CF2=CFO(CF2CF(CF3)O)mCF2CF(CF3)−Y2 (20)
(式中、mは0以上の整数)
で示されるヨウ素または臭素末端モノマー。
【0052】
式(21):
CF2=CFOCF(CF3)CF2O(CF2n−Y2 (21)
(式中、nは1以上の整数)
で示されるヨウ素または臭素末端モノマー。
【0053】
式(22):
CF2=CFOCF2OCF2CF(CF3)OCF2−Y2 (22)
で示されるヨウ素または臭素末端モノマー。
【0054】
式(23):
CH2=CH−(CF2n2 (23)
(式中、nは2〜8の整数)
(式(5)〜(23)中、Y2は、前記同様にヨウ素原子または臭素原子である)
【0055】
式(5)で示されるヨウ素または臭素末端モノマーとしては、式(24):
I(CH2CF2CF2O)m(CF(CF3)CF2O)nCF=CF2 (24)
(式中、mは1〜5の整数、nは0〜3の整数)
で表されるヨウ素含有含フッ素化ビニルエーテルが好ましくあげられ、より具体的には、
【化2】

などがあげられるが、これらの中でも、CF2=CF−OCF2CF2−CH2−Iが好ましい。
【0056】
式(6)で示されるヨウ素または臭素末端モノマーとしてより具体的には、ICF2CF2CF=CH2、I(CF2CF22CF=CH2が好ましくあげられる。
【0057】
式(10)で示されるヨウ素または臭素末端モノマーとしてより具体的には、I(CF2CF22OCF=CF2が好ましくあげられる。
【0058】
式(23)で示されるヨウ素または臭素末端モノマーとしてより具体的には、CH2=CHCF2CF2I、I(CF2CF22CH=CH2が好ましくあげられる。
【0059】
これらの中でも含フッ素オレフィンを含むモノマー(a1)との共重合性が良好な点から、CF2=CF−OCF2CF2−CH2−IまたはCH2=CHCF2CF2Iで示されるヨウ素末端モノマーが好ましい。
【0060】
工程(I)において、ヨウ素または臭素末端モノマー(a2)の仕込み量は、全モノマーの0.03〜10.0モル%が好ましく、0.05〜8.0モル%がより好ましい。ヨウ素または臭素末端モノマー(a2)の仕込み量が0.03モル%未満では、樹脂性含フッ素セグメント(A)を幹ポリマーとしエラストマー性含フッ素セグメント(B)をグラフト鎖として含む含フッ素グラフト共重合体(A−B)を製造する際、工程(II)の反応基点であるヨウ素原子または臭素原子を有する樹脂性含フッ素セグメント(A)の割合が少なくなり、最終的に得られた含フッ素グラフト共重合体(A−B)の組成が不均一になる傾向があり、10.0モル%を超えると、ヨウ素または臭素末端モノマー(a2)が比較的高価であることから経済的に不利になる傾向がある。
【0061】
ヨウ素または臭素末端モノマー(a2)の添加方法としては、特に限定されるものではなく、一括添加、二分割、三分割、四分割など複数回に分けて添加してもよく、連続的に添加してもよいが、樹脂性含フッ素セグメント(A)に均一にヨウ素原子または臭素原子を導入することが容易な点から、二分割以上に分けて添加することが望ましく、さらに三分割以上に分けて添加することが望ましく、さらに四分割以上に分けて添加することが望ましい。
【0062】
樹脂性含フッ素セグメント(A)の融点は、110〜340℃であることが好ましく、120〜330℃であることがより好ましく、125〜320℃であることがさらに好ましい。樹脂性含フッ素セグメント(A)の融点が、110℃未満であると、含フッ素グラフト共重合体(A−B)の耐熱性が低下し、ひいては熱可塑性重合体組成物の耐熱性が低下する傾向があり、340℃を超えると、含フッ素グラフト共重合体(A−B)の溶融成形時に含フッ素グラフト共重合体(A−B)が熱劣化し機械物性が低下する傾向がある。
【0063】
工程(I)の樹脂性含フッ素セグメント(A)の製造方法としては、特に限定されるものではないが、特開2005−298702号公報、国際公開第2005/100420号パンフレットなどに記載の方法をあげることができる。なかでも、工程(I)と工程(II)とで同様の重合系を用いることができることから、乳化重合法が好ましい。重合時の温度、時間などの重合条件としては、モノマーの種類などにより適宜決定すればよい。限定されない重合条件としては、重合温度10〜140℃、重合圧力としては、0.1〜15MPaなどが例示できる。
【0064】
工程(I)で使用するラジカル重合開始剤は、従来から含フッ素ポリマーの重合に使用されているものと同じものが使用できる。
【0065】
本発明で用いる油溶性ラジカル重合開始剤としては、通常周知の油溶性の過酸化物が用いられ、たとえばジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネートなどのジアルキルパーオキシカーボネート類、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシピバレートなどのパーオキシエステル類、ジ−t−ブチルパーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイド類などが、また、ジ(ω−ハイドロ−ドデカフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ(ω−ハイドロ−テトラデカフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ジ(ω−ハイドロ−ヘキサデカフルオロノナノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロブチリル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロバレリル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロノナノイル)パーオキサイド、ジ(ω−クロロ−ヘキサフルオロブチリル)パーオキサイド、ジ(ω−クロロ−デカフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(ω−クロロ−テトラデカフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ω−ハイドロ−ドデカフルオロヘプタノイル−ω−ハイドロヘキサデカフルオロノナノイル−パーオキサイド、ω−クロロ−ヘキサフルオロブチリル−ω−クロロ−デカフルオロヘキサノイル−パーオキサイド、ω−ハイドロドデカフルオロヘプタノイル−パーフルオロブチリル−パーオキサイド、ジ(ジクロロペンタフルオロブタノイル)パーオキサイド、ジ(トリクロロオクタフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(テトラクロロウンデカフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ジ(ペンタクロロテトラデカフルオロデカノイル)パーオキサイド、ジ(ウンデカクロロドトリアコンタフルオロドコサノイル)パーオキサイドなどのジ[パーフルオロ(またはフルオロクロロ)アシル]パーオキサイド類などが代表的なものとしてあげられる。
【0066】
しかし、代表的な油溶性開始剤である、ジ−イソプロピルパーオキシカーボネイト(IPP)やジ−n−プロピルパーオキシカーボネイト(NPP)などのパーオキシカーボネイト類は爆発の危険性があるうえ高価であり、しかも重合反応中に重合槽の壁面などのスケールの付着が生じやすいという問題があるので、水溶性ラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。
【0067】
水溶性ラジカル重合性開始剤としては、通常周知の水溶性の過酸化物が用いられ、たとえば、過硫酸、過ホウ酸、過塩素酸、過リン酸、過炭酸などのアンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、t−ブチルパーマレエート、t−ブチルハイドロパーオキサイドなどがあげられる。
【0068】
水溶性ラジカル開始剤の添加量は、特に限定はないが、重合速度が著しく低下しない程度の量(たとえば、数ppm対水濃度)以上を重合の初期に一括して、または逐次的に、または連続して添加すればよい。上限は、装置面から重合反応熱を除熱できる範囲である。
【0069】
本発明において、さらに乳化剤、分子量調整剤、pH調整剤などを添加してもよい。分子量調整剤は、初期に一括して添加してもよいし、連続的または分割して添加してもよい。
【0070】
乳化剤としては、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤などが使用でき、とくにアニオン系界面活性剤の例として、パーフルオロオクタン酸(CF3(CF26COOH)、パーフルオロヘキサン酸(CF3(CF24COOH)、1,1,2,2−テトラハイドロパーフルオロヘキサンスルフォン酸(CF3(CF23CH2CH2SO3H)、1,1,2,2−テトラハイドロパーフルオロオクタンスルフォン酸(CF3(CF25CH2CH2SO3H)または、そのアンモニウム塩、あるいはアルカリ金属塩などが好ましい。
【0071】
分子量調整剤としては、たとえばマロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、コハク酸ジメチルなどのエステル類のほか、イソペンタン、イソプロパノール、アセトン、各種メルカプタン、四塩化炭素、シクロヘキサン、モノヨードメタン、1−ヨードエタン、1−ヨード−n−プロパン、ヨウ化イソプロピル、ジヨードメタン、1,2−ジヨードエタン、1,3−ジヨード−n−プロパンなどがあげられる。
【0072】
そのほかpH調整剤や緩衝剤などを適宜添加してもよいが、それらの量は本発明の効果を損なわない範囲とする。
【0073】
工程(II)では、ラジカル重合開始剤の存在下で工程(I)で得られたヨウ素原子または臭素原子含有初期重合体(A1)に、含フッ素オレフィンを含むエラストマー性含フッ素セグメント(B)形成用モノマー(b1)を重合に供して、初期重合体(A1)のヨウ素原子または臭素原子をグラフト重合開始点としてエラストマー性含フッ素セグメント(B)からなるグラフト鎖を形成する。
【0074】
エラストマー性含フッ素セグメント(B)形成用モノマー(b1)に使用される含フッ素オレフィンの種類としては、エラストマー性を示す含フッ素ポリマー鎖を形成できるものであればとくに制限されず、例えば樹脂性含フッ素セグメント(A)形成用モノマー(a1)で例示したものと同様の含フッ素オレフィンを使用することができる。なお、樹脂性含フッ素セグメント(A)形成用モノマー(a1)と同様に、含フッ素オレフィンと共重合可能なモノマーを併用してもよく、含フッ素オレフィンと共重合可能なモノマーとしても、樹脂性含フッ素セグメント(A)形成用モノマー(a1)で例示したものを同様にあげることができる。
【0075】
これらのモノマーの組み合わせの中でも、経済性と含フッ素グラフト共重合体(A−B)の特性のバランスの観点から(b1−1)VdFとHFPとの組み合わせ、(b1−2)VdFとTFEとHFPとの組み合わせ、(b1−3)TFEとプロピレンとの組み合わせ、(b1−4)VdFとTFEとPAVEとの組み合わせ、(b1−5)TFEとPAVEとの組み合わせ、および(b1−6)VdFとCTFEとの組み合わせよりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、特に(b1−1)VdFとHFPとの組み合わせおよび(b1−2)VdFとTFEとHFPとの組み合わせが好ましい。
【0076】
(b1−1)VdF/HFP共重合体は、VdF/HFPの組成が45〜85/55〜15(モル%)であるときにエラストマー性を示し、より好ましくは、50〜80/50〜20(モル%)であり、さらに好ましくは、60〜80/40〜80(モル%)である。
【0077】
(b1−2)VdF/TFE/HFP共重合体は、VdF/TFE/HFPの組成が40〜80/10〜25/10〜35(モル%)であるときにエラストマー性を示す。
【0078】
また、エラストマー性含フッ素セグメント(B)形成用モノマー(b1)に加えて、樹脂性含フッ素セグメント(A)の説明で例示したヨウ素または臭素末端モノマー(a2)を用いてもよい。また、ヨウ素または臭素末端モノマー(a2)のグラフト鎖への導入により、得られた含フッ素グラフト共重合体(A−B)をパーオキサイド架橋する際、さらに容易に架橋密度を向上させることができ好ましい。
【0079】
また、エラストマー性含フッ素セグメント(B)にヨウ素原子および臭素原子以外の架橋部位を導入してもよい。他の架橋部位を導入するためのモノマーとしては、たとえば式(25):
CX45=CX6−Rf1−CX78−Y3 (25)
(式中、X4、X5、X6、X7およびX8は同じかまたは異なり、いずれも水素原子、フッ素原子または−CH3を表し、Y3はシアノ基(−CN基)、カルボキシル基(−COOH基)またはアルコキシカルボニル基(−COOR基、Rは炭素数1〜10のフッ素原子を含んでいてもよいアルキル基)を表し、Rf1は、少なくとも1つのエーテル結合の酸素原子を有してもよい直鎖状または分岐鎖状の含フッ素アルキレン基を表す)
であるモノマーなどが例示できる。
【0080】
工程(II)の製造条件は基本的に工程(I)と同じ条件を用いることができる。重合方法としては、製造工程がスムーズに行える点から乳化重合が特に好ましい。
【0081】
工程(I)で得られた初期重合体(A1)において、炭素−ハロゲン(ヨウ素または臭素)結合は比較的弱い結合であり、ラジカル発生源の存在下に開裂してラジカルを発生する。生じたラジカルの反応性が高いために、モノマーが付加成長反応を起こし、その後ハロゲン原子を引き抜くことにより反応を停止する。このようなメカニズムに基づく重合反応をヨウ素原子末端の場合に代表させてヨウ素移動重合と呼ぶ。工程(II)では、このように、樹脂性含フッ素セグメント(A)を構成する初期重合体(A1)を、ヨウ素移動重合に供して、エラストマー性含フッ素セグメント(B)からなるグラフト鎖を形成することが好ましい。
【0082】
本発明の工程(I)と工程(II)を含む製造方法で得られる(A−B)としては、樹脂性含フッ素セグメント(A)とエラストマー性含フッ素セグメント(B)の質量比(樹脂性含フッ素セグメント(A)/エラストマー性含フッ素セグメント(B))は特に制限されず、例えば、樹脂性の高い含フッ素グラフト共重合体(A−B)を製造したい場合、あるいはエラストマー性の高い含フッ素グラフト共重合体(A−B)を製造したい場合など含フッ素グラフト共重合体(A−B)の使用目的によって自由に変えることができる。
【0083】
ヨウ素原子または臭素原子含有初期重合体(A1)、すなわち樹脂性含フッ素セグメント(A)の数平均分子量は、500〜3000000、さらには1000〜2500000であることが好ましい。
【0084】
グラフト鎖、すなわちエラストマー性含フッ素セグメント(B)の数平均分子量は、500〜1000000、さらには1000〜700000であることが好ましい。
【0085】
また、本発明は、樹脂性含フッ素セグメント(A)とエラストマー性含フッ素セグメント(B)という2種類のセグメントより構成される共重合体に限定されず、セグメント(A)および(B)以外のセグメントを含む3種類以上のセグメントから構成されていてもよい。
【0086】
本発明の含フッ素グラフト共重合体(A−B)は、樹脂性含フッ素セグメント(A)を有しているため、樹脂性含フッ素セグメント(A)とエラストマー性含フッ素セグメント(B)の質量比にもよるが、比較的良好な機械物性を発現することができる。含フッ素グラフト共重合体(A−B)はその融点(樹脂性含フッ素セグメント(A)の融点に相当)以上において、一般の溶融樹脂の成形加工方法や成形加工装置などを用いて成形加工することができる。成形加工方法としては、例えば、射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形、カレンダー成形、真空成形などの任意の方法を採用でき、使用目的に応じて任意の形状の成形体に成形され得る。
【0087】
本発明の含フッ素グラフト共重合体(A−B)は、エラストマー性の含フッ素グラフト鎖の末端にヨウ素原子または臭素原子が導入されているため、これを架橋点とするパーオキサイド架橋により架橋することができ、架橋性組成物を与えることができる。
【0088】
パーオキサイド架橋用の架橋剤としては、熱や酸化還元系の存在下で容易にパーオキシラジカルを発生し得るパーオキサイドであればよく、具体的には、たとえば1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α−ビス(t−ブチルパーオキシ)−p−ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−ヘキシン−3、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゼン、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートなどをあげることができる。これらの中でも、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンが好ましい。
【0089】
パーオキサイド架橋促進剤としては、たとえば、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート(以下、TAICとする)、トリアクリルホルマール、トリアリルトリメリテート、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、ジプロパルギルテレフタレート、ジアリルフタレート、テトラアリルテレフタレートアミド、トリアリルホスフェート、ビスマレイミド、フッ素化トリアリルイソシアヌレート(1,3,5−トリス(2,3,3−トリフルオロ−2−プロペニル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリオン)、トリス(ジアリルアミン)−S−トリアジン、亜リン酸トリアリル、N,N−ジアリルアクリルアミド、1,6−ジビニルドデカフルオロヘキサン、ヘキサアリルホスホルアミド、N,N,N’,N’−テトラアリルフタルアミド、N,N,N’,N’−テトラアリルマロンアミド、トリビニルイソシアヌレート、2,4,6−トリビニルメチルトリシロキサン、トリ(5−ノルボルネン−2−メチレン)シアヌレート、トリアリルホスファイトなどがあげられる。これらの中でも、架橋性、架橋物の物性の点から、TAICが好ましい。
【0090】
また、架橋部位を有するモノマー、たとえば前記式(25)に示すモノマーをエラストマー性含フッ素セグメントに導入した場合、ヨウ素原子および臭素原子以外の架橋部位を有することになるので、架橋部位に応じ、得られる成形品などの用途により適宜選択された架橋系により架橋することができる。架橋系としては、ポリオール架橋系、ポリアミン架橋系などのいずれも採用でき、パーオキサイド架橋系も採用できる。なお、架橋剤を含まない場合でも放射線や電子線などの高エネルギー線照射架橋系での架橋も可能である。
【0091】
パーオキサイド架橋系により架橋する場合は、架橋点に炭素−炭素結合を有しているので、架橋点に炭素−酸素結合を有するポリオール架橋系および炭素−窒素二重結合を有するポリアミン架橋系に比べて、耐薬品性および耐スチーム性に優れているという特徴がある。
【0092】
ポリオール架橋系により架橋する場合は、架橋点に炭素−酸素結合を有しており、圧縮永久歪みが小さく、成形性に優れているという特徴がある点で好適である。
【0093】
ポリオール架橋系に用いる架橋剤としては、従来、フッ素ゴムの架橋剤として知られている化合物を用いることができ、たとえば、ポリヒドロキシ化合物、特に、耐熱性に優れる点からポリヒドロキシ芳香族化合物が好適に用いられる。
【0094】
ポリヒドロキシ芳香族化合物としては、特に限定されず、たとえば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、ビスフェノールAという)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)パーフルオロプロパン(以下、ビスフェノールAFという)、レゾルシン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、4,4’−ジヒドロキシスチルベン、2,6−ジヒドロキシアントラセン、ヒドロキノン、カテコール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン(以下、ビスフェノールBという)、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)吉草酸、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)テトラフルオロジクロロプロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、トリ(4−ヒドロキシフェニル)メタン、3,3’,5,5’−テトラクロロビスフェノールA、3,3’,5,5’−テトラブロモビスフェノールAなどがあげられる。これらの中でも、得られる成形品などの圧縮永久歪みが小さく、成形性も良く、耐熱性も優れることから、ビスフェノールAFが好ましい。これらのポリヒドロキシ芳香族化合物は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩などであってもよいが、酸を用いて共重合体を凝析した場合は、上記金属塩は用いないことが好ましい。
【0095】
また、ポリオール架橋系においては、ポリオール系架橋剤と併用して、通常、架橋促進剤を用いる。架橋促進剤を用いると、エラストマー性含フッ素セグメント(B)のグラフト鎖の脱フッ酸反応における分子内二重結合の形成を促進することにより架橋反応を促進することができる。
【0096】
ポリオール架橋系の架橋促進剤としては、一般にオニウム化合物が用いられる。オニウム化合物としては特に限定されず、たとえば、第4級アンモニウム塩等のアンモニウム化合物、第4級ホスホニウム塩等のホスホニウム化合物、オキソニウム化合物、スルホニウム化合物、環状アミン、1官能性アミン化合物などがあげられ、これらの中でも第4級アンモニウム塩、第4級ホスホニウム塩が好ましい。
【0097】
第4級アンモニウム塩としては特に限定されず、たとえば、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロリド、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムアイオダイド、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムハイドロキサイド、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムメチルスルフェート、8−エチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムブロミド、8−プロピル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムブロミド、8−ドデシル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロリド、8−ドデシル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムハイドロキサイド、8−エイコシル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロリド、8−テトラコシル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロリド、8−ベンジル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロリド(以下、DBU−Bとする)、8−ベンジル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムハイドロキサイド、8−フェネチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロリド、8−(3−フェニルプロピル)−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロリドなどがあげられる。これらの中でも、架橋性、架橋物の物性の点から、DBU−Bが好ましい。
【0098】
また、第4級ホスホニウム塩としては特に限定されず、たとえば、テトラブチルホスホニウムクロリド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロリド(以下、BTPPCとする)、ベンジルトリメチルホスホニウムクロリド、ベンジルトリブチルホスホニウムクロリド、トリブチルアリルホスホニウムクロリド、トリブチル−2−メトキシプロピルホスホニウムクロリド、ベンジルフェニル(ジメチルアミノ)ホスホニウムクロリドなどをあげることができ、これらの中でも、架橋性、架橋物の物性の点から、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロリド(BTPPC)が好ましい。
【0099】
また、架橋促進剤として、第4級アンモニウム塩、第4級ホスホニウム塩とビスフェノールAFの固溶体、特開平11−147891号公報に開示されている塩素フリー架橋促進剤を用いることもできる。
【0100】
ポリアミン架橋により架橋する場合は、架橋点に炭素−窒素二重結合を有しているものであり、動的機械特性に優れているという特徴がある。しかし、ポリオール架橋系またはパーオキサイド架橋系架橋剤を用いて架橋する場合に比べて、圧縮永久歪みが大きくなる傾向がある。
【0101】
ポリアミン架橋に用いる架橋剤としては、たとえば、ヘキサメチレンジアミンカーバメート、N,N’−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサメチレンジアミン、4,4’−ビス(アミノシクロヘキシル)メタンカルバメートなどのポリアミン化合物があげられる。これらの中でも、N,N’−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサメチレンジアミンが好ましい。
【0102】
これら架橋剤の配合量はエラストマー性含フッ素セグメント(B)100質量部に対して0.01〜10質量部であることが好ましく、0.1〜5質量部であることがより好ましい。架橋剤が、0.01質量部より少ないと、架橋度が不足するため、含フッ素グラフト共重合体(A−B)成形品の性能が損なわれる傾向があり、10質量部をこえると、架橋密度が高くなりすぎるため架橋時間が長くなることに加え、経済的にも好ましくない傾向がある。
【0103】
このように本発明の含フッ素グラフト共重合体(A−B)は架橋剤を配合した架橋性組成物、または架橋剤を配合しないで高エネルギー線照射架橋性組成物とすることができる。
【0104】
架橋促進剤の配合量は、エラストマー性含フッ素セグメント(B)100質量部に対して0.01〜10質量部であることが好ましく、0.1〜5.0質量部であることがより好ましい。架橋助剤が、0.01質量部より少ないと、架橋時間が実用に耐えないほど長くなる傾向があり、10質量部をこえると、架橋時間が極端に短くなることに加え、成形品の圧縮永久歪も低下する傾向がある。
【0105】
高エネルギー線照射架橋系により架橋する場合は、エラストマー性含フッ素セグメント(B)に架橋部位を導入する必要がなく、架橋剤も必要ではない。より少ない照射量で効率よく架橋させるためには、パーフロ構造よりも非パーフロ構造の方が架橋しやすいことから、樹脂性含フッ素セグメント(A)あるいはエラストマー性含フッ素セグメント(B)が非パーフロポリマーであることが好ましい。同様に、含フッ素グラフト共重合体(A−B)にポリオレフィン化合物が含まれている場合、より少ない照射量で架橋できることからより好ましい。ポリオレフィン化合物としては特に制限されるものではないが、パーオキサイド架橋系で用いる促進剤として例示したTAICなどがあげられる。
【0106】
また、本発明の含フッ素グラフト共重合体(A−B)および架橋性組成物には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタンなどの他の非フッ素重合体;含フッ素重合体;炭酸カルシウム、タルク、クレー、酸化チタン、カーボンブラック、硫酸バリウムなどの無機充填材;顔料、難燃剤、滑剤、光安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、離型剤、発泡剤、香料、オイル、柔軟化剤などの各種添加剤を、本発明の効果に影響を及ぼさない範囲で添加することができる。
【0107】
また本発明の含フッ素グラフト共重合体(A−B)は、フッ素樹脂とフッ素ゴムからなる熱可塑性重合体組成物の相溶化剤、フッ素樹脂の改質剤などとして使用することができる。特に、樹脂性含フッ素セグメント(A)とエラストマー性含フッ素セグメント(B)からなることから、フッ素樹脂とフッ素ゴムからなる熱可塑性重合体組成物の相溶化剤として好ましい。
【0108】
すなわち本発明は、フッ素樹脂10〜95質量%、フッ素ゴム90〜5質量%、本発明の含フッ素グラフト共重合体(A−B)0.1〜20質量%を含む熱可塑性重合体組成物にも関する。
【0109】
フッ素樹脂としては、たとえばFEP、PFA、ETFE、PVDF、およびCTFE−TFE共重合体などの熱可塑性フッ素樹脂があげられ、組成物の使用目的、フッ素ゴムの種類などによって適宜選定すればよい。
【0110】
フッ素ゴムとしては、たとえばVdFとHFPからなるゴム、VdFとTFEとHFPからなるゴム、TFEとプロピレンからなるゴム、VdFとTFEとPAVEからなるゴム、TFEとPAVEからなるゴム、およびVdFとCTFEからなるゴムなどのフッ素ゴムがあげられ、組成物の使用目的、フッ素樹脂の種類などによって適宜選定すればよい。
【0111】
また、フッ素樹脂を構成するモノマーが樹脂性含フッ素セグメント(A)形成用モノマー(a1)と、フッ素ゴムを構成するモノマーがモノマー(b1)と同じまたは類似するときに、特に優れた相溶化効果が奏される。
【0112】
前記組成物において、フッ素樹脂とフッ素ゴムとの質量比は、10/90〜95/5の範囲内であることが好ましく、より好ましくは20/80〜80/20の範囲内である。フッ素ゴムが、5質量%未満であると得られる熱可塑性重合体組成物の柔軟性が低下する傾向があり、好ましくは7質量%以上、さらには10質量%以上が好ましい。また90質量%をこえると、得られる熱可塑性重合体組成物の流動性が悪化し、成形加工性が低下する傾向があり、好ましくは85質量%以下、さらには82質量%以下が好ましい。
【0113】
熱可塑性重合体組成物において、含フッ素グラフト共重合体(A−B)の含有率は0.1〜20質量%であり、0.2〜15質量%が好ましく、さらには0.3〜12質量%が好ましい。含フッ素グラフト共重合体(A−B)の含有率が0.1質量%未満では、相溶化剤としての効果が充分に発揮できず機械物性が低下する傾向があり、20質量%をこえると経済的に好ましくない。
【0114】
本発明の熱可塑性重合体組成物には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタンなどの他の非フッ素重合体;炭酸カルシウム、タルク、クレー、酸化チタン、カーボンブラック、硫酸バリウムなどの無機充填材;顔料、難燃剤、滑剤、光安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、離型剤、発泡剤、香料、オイル、柔軟化剤などの各種添加剤を、本発明の効果に影響を及ぼさない範囲で添加することができる。
【0115】
本発明の熱可塑性重合体組成物は、一般の成形加工方法や成形加工装置などを用いて成形加工することができる。成形加工方法としては、例えば、射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形、カレンダー成形、真空成形などの任意の方法を採用することができ、本発明の熱可塑性重合体組成物は使用目的に応じて任意の形状の成形体に成形される。
【0116】
本発明の含フッ素グラフト共重合体(A−B)を含む架橋性組成物または熱可塑性重合体組成物を用いた成形品は、例えば、半導体製造装置、液晶パネル製造装置、プラズマパネル製造装置、プラズマアドレス液晶パネル、フィールドエミッションディスプレイパネル、太陽電池基板等の半導体関連分野;自動車分野;航空機分野;ロケット分野;船舶分野;化学プラント等の化学品分野;医薬品等の薬品分野;現像機等の写真分野;印刷機械等の印刷分野;塗装設備等の塗装分野;分析・理化学機分野;食品プラント機器分野;原子力プラント機器分野;鉄板加工設備等の鉄鋼分野;一般工業分野;電気分野;燃料電池分野などの分野で好適に用いることができるが、これらのなかでも自動車分野でより好適に用いることができる。
【0117】
自動車分野では、ガスケット、シャフトシール、バルブステムシール、シール材およびホースはエンジンならびに周辺装置に用いることができ、ホースおよびシール材はAT装置に用いることができ、O(角)リング、チューブ、パッキン、バルブ芯材、ホース、シール材およびダイアフラムは燃料系統ならびに周辺装置に用いることができる。具体的には、エンジンヘッドガスケット、メタルガスケット、オイルパンガスケット、クランクシャフトシール、カムシャフトシール、バルブステムシール、マニホールドパッキン、オイルホース、酸素センサー用シール、ATFホース、インジェクターOリング、インジェクターパッキン、燃料ポンプOリング、ダイアフラム、燃料ホース、クランクシャフトシール、ギアボックスシール、パワーピストンパッキン、シリンダーライナーのシール、バルブステムのシール、自動変速機のフロントポンプシール、リアーアクスルピニオンシール、ユニバーサルジョイントのガスケット、スピードメーターのピニオンシール、フートブレーキのピストンカップ、トルク伝達のO−リング、オイルシール、排ガス再燃焼装置のシール、ベアリングシール、EGRチューブ、ツインキャブチューブ、キャブレターのセンサー用ダイアフラム、防振ゴム(エンジンマウント、排気部等)、再燃焼装置用ホース、酸素センサーブッシュ等として用いることができる。本発明の組成物はこれらの各種用途に好適に用いることができ、特に工業用ホース、工業用チューブ、燃料用ホース、燃料チューブとして好適である。
【実施例】
【0118】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例のみに限定されるものではない。
【0119】
なお、本発明で使用した分析法および測定法は以下の方法である。
【0120】
NMR分析
BRUKER社製のAC−300を用いた。
1H−NMR測定条件:300MHz(テトラメチルシラン=0ppm)
19F−NMR測定条件:282MHz(トリクロロフルオロメタン=0ppm)
【0121】
元素分析
横河ヒューレットパッカード社G2350A型を用いて測定した。
【0122】
熱分析(融点測定)
セイコー型示差走査熱量計を用いた。10℃/分の速度で昇温したときの融解ピークを記録し、極大値に対応する温度を融点とした。
【0123】
抽出試験
アセトン乾留条件下で、ソックスレー抽出を行い、含フッ素グラフト共重合体(A−B)のアセトン溶融成分の割合を計測した。
【0124】
メルトフローレート(MFR)の測定
メルトインデクサー((株)東洋精機製作所製)を用い、297℃において、5kg荷重下で直径2mm、長さ8mmのノズルから単位時間(10分間)あたりに流出するポリマーの質量(g)を測定した。
【0125】
プレスシート成形(溶融樹脂成形)
含フッ素グラフト共重合体(A−B)および含フッ素グラフト共重合体(A−B)を相溶化剤として添加した熱可塑性重合体組成物を金型にセットし、ヒートプレス機により、290℃にて15〜30分保持し、動的架橋組成物を溶融状態にした後、3MPaの負荷を1分間与え圧縮成形し、所定の厚さのシート状試験片を作製する。
プレスシート成形(ゴム成形)
含フッ素グラフト共重合体(A−B)架橋性組成物を金型にセットし、ヒートプレス機により、160℃にて10分プレス加硫を行った。プレス加硫後、電気オーブンにて180℃の条件下で4時間保持し、所定の厚さのシート状試験片を作製する。
【0126】
圧縮永久歪み測定
含フッ素グラフト共重合体(A−B)架橋性組成物を金型にセットし、ヒートプレス機により、160℃にて10分プレス加硫を行った。プレス加硫後、電気オーブンにて180℃の条件下で4時間保持し、0−リング(P−24)を作製し、JIS−K6301に準じて、オーブン加硫後の圧縮永久歪みを測定する(25%加圧圧縮下に200℃で72時間保持したのち25℃の恒温室内に30分間放置した試料を測定)
【0127】
引張り試験
厚さ2mmのシート状試験片を作製し、ASTM V型ダンベルを用いて標線間距離3.18mmのダンベル状試験片を打ち抜いた。得られたダンベル状試験片を用いて、オートグラフ((株)島津製作所製 AGS−J 5kN)を使用して、ASTM D638に準じて、50mm/分の条件下で、25℃にて引張破断強度、引張弾性率および引張破断伸びを測定した。
【0128】
燃料透過性
上記方法で厚さ0.5mmのシート状試験片を作製した。20mLの容積を有するSUS製容器(開放部面積1.26×10-32)に模擬燃料であるCE10(トルエン/イソオクタン/エタノール=45/45/10容量%)を18mL入れて、前記シート状試験片を容器開放部にセットして密閉することで、試験体とする。該試験体を恒温装置(60℃)に入れ、試験体の重量を測定し、単位時間あたりの重量減少が一定となったところでつぎの式により燃料透過係数を求めた。
【0129】
【数1】

【0130】
製造例1(含フッ素グラフト共重合体(A−B−1)の製造)
工程(I)(初期重合体(A1−1)の製造)
内容積3LのSUS製オートクレーブに、脱イオン水1820g、パーフルオロオクタン酸アンモニウム水溶液(固形分濃度:20.0%)70.3g、パラフィン70.3gを仕込み、内部空間を窒素ガスで十分に置換し真空状態にした後、HFPを80℃で5.02kg/cm2になるように圧入し、その後、TFEを8.00kg/cm2まで圧入した。水10gにAPS0.9375gを溶解させた重合開始剤水溶液をオートクレーブ内に圧入し、重合槽内の攪拌翼を500rpmで回転させ、重合反応を開始させた。重合反応の進行に伴い、重合槽内の圧力が低下するので、TFEとHFPからなる混合モノマー(TFE/HFP=92/8(モル比))を圧入して圧力を8.00kg/cm2に保ちながら、19回に分けてヨウ素末端モノマーCF2=CF−OCF2CF2CH2Iをそれぞれ0.35gずつ仕込んだ。重合反応開始から、6.5時間後、混合モノマーの消費重量が222gになったときにガスを放圧して重合反応を停止させ、初期重合体(A1−1)の乳化液(固形分濃度:10.5質量%、固形分得量:220g)を得た。
【0131】
初期重合体(A1−1)の乳化液に硫酸アルミニウム水溶液を加えて重合体を凝固させ、水洗後、得られた生成物を120℃の条件下で、12時間電気炉で乾燥させた。得られた初期重合体(A1−1)は、NMR分析および元素分析より、TFE/HFP/CF2=CF−OCF2CF2CH2I=91.92/7.40/0.68(モル比)の共重合体であることがわかった。また、熱分析より初期重合体(A1−1)の融点が249.9℃であることがわかった。ソックスレー抽出より初期重合体(A1−1)のアセトン溶解分は0.5質量%未満であった。初期重合体(A1−1)のMFRは1.1g/10min.であった。
【0132】
工程(II)(含フッ素グラフト共重合体(A−B−1)の製造)
内容積3LのSUS製オートクレーブに、初期重合体(A1−1)の乳化液(固形分濃度:10.5質量%、固形分量:75g)717g、脱イオン水783gを仕込み、内部空間を窒素ガスで充分に置換した後、90℃にて3時間加熱した。つぎに、オートクレーブを室温まで冷却し、HFPを3.85kg/cm2まで圧入し、80℃まで昇温した。VdFとHFPからなる混合モノマー(VdF/HFP=78/22(モル比))を15kg/cm2まで圧入した。水5gにAPS0.030gを溶解させた重合開始剤水溶液をオートクレーブ内に圧入し、重合槽内の攪拌翼を500rpmで回転させ、重合反応を開始させた。重合反応の進行に伴い、重合槽内の圧力が低下するので、VdFとHFPからなる混合モノマー(VdF/HFP=78/22(モル比))を圧入して圧力を15kg/cm2に保ちながら、重合反応を進行させた。重合反応開始から、3.5時間後、混合モノマーの消費重量が58gになったときにガスを放圧して重合反応を停止させ、含フッ素グラフト共重合体(A−B−1)の乳化液(固形分濃度:8.7質量%、固形分得量:133g)を得た。
【0133】
含フッ素グラフト共重合体(A−B−1)の乳化液に硫酸アルミニウム水溶液を加えて重合体を凝固させ、水洗後、得られた生成物を120℃の条件下で、12時間電気炉で乾燥させた。得られた含フッ素グラフト共重合体(A−B−1)は、NMR分析および元素分析より、VdF/TFE/HFP=41.2/42.9/15.9(モル比)の共重合体であること、すなわち、エラストマー性含フッ素セグメント(B−1)がVdF/HFP=78/22(モル比)であり、樹脂性含フッ素セグメント(A−1)/エラストマー性含フッ素セグメント(B−1)=46/54(モル比)であることがわかった。元素分析より、含フッ素グラフト共重合体(A−B−1)は0.40質量%のヨウ素原子を含むことがわかった。また、熱分析より含フッ素グラフト共重合体(A−B−1)の融点が250.0℃であることがわかった。ソックスレー抽出より含フッ素グラフト共重合体(A−B−1)のアセトン溶解分は0.5質量%未満であった。含フッ素グラフト共重合体(A−B−1)のMFRは1.1g/10minであった。
【0134】
製造例2(含フッ素グラフト共重合体(A−B−2)の製造)
工程(I)(初期重合体(A1−2)の製造)
製造例1の初期重合体(A1−1)と同一の方法により製造した。
【0135】
工程(II)(含フッ素グラフト共重合体(A−B−2)の製造)
内容積3LのSUS製オートクレーブに、初期重合体(A1−2)の乳化液(固形分濃度:10.5質量%、固形分量:75g)717g、脱イオン水783gを仕込み、内部空間を窒素ガスで充分に置換した後、90℃にて3時間加熱した。つぎに、オートクレーブを室温まで冷却し、HFPを3.85kg/cm2まで圧入し、80℃まで昇温した。VdFとHFPからなる混合モノマー(VdF/HFP=78/22(モル比))を15kg/cm2まで圧入した。水5gにAPS0.030gを溶解させた重合開始剤水溶液をオートクレーブ内に圧入し、重合槽内の攪拌翼を500rpmで回転させ、重合反応を開始させた。重合反応の進行に伴い、重合槽内の圧力が低下するので、VdFとHFPからなる混合モノマー(VdF/HFP=78/22(モル比))を圧入して圧力を15kg/cm2に保ちながら、重合反応を進行させた。重合反応開始から、7.5時間後、混合モノマーの消費重量が120gになったときにガスを放圧して重合反応を停止させ、含フッ素グラフト共重合体(A−B−2)の乳化液(固形分濃度:12.0質量%、固形分得量:195g)を得た。
【0136】
含フッ素グラフト共重合体(A−B−2)の乳化液に硫酸アルミニウム水溶液を加えて重合体を凝固させ、水洗後、得られた生成物を120℃の条件下で、12時間電気炉で乾燥させた。得られた含フッ素グラフト共重合体(A−B−2)は、NMR分析および元素分析より、VdF/TFE/HFP=52.1/29.1/18.8(モル比)の共重合体であること、すなわち、エラストマー性含フッ素セグメント(B−2)がVdF/HFP=78/22(モル比)であり、樹脂性含フッ素セグメント(A−2)/エラストマー性含フッ素セグメント(B−2)=31/69(モル比)であることがわかった。元素分析より、含フッ素グラフト共重合体(A−B−2)は0.28質量%のヨウ素原子を含むことがわかった。また、熱分析より含フッ素グラフト共重合体(A−B−2)の融点が250.1℃であることがわかった。ソックスレー抽出より含フッ素グラフト共重合体(A−B−2)のアセトン溶解分は0.5質量%未満であった。含フッ素グラフト共重合体(A−B−2)のMFRは1.2g/10minであった。
【0137】
実施例1
上記の各方法によりそれぞれ含フッ素グラフト共重合体(A−B−1)を含む組成物のシート状試験片を作製した。その機械物性を表1に示す。
【0138】
実施例2
上記の各方法により含フッ素グラフト共重合体(A−B−2)のシート状試験片を作製した。その機械物性を表1に示す。
【0139】
実施例3
8インチオープンロールにて、含フッ素グラフト共重合体(A−B−1)100質量部に対して、TAIC(パーオキサイド架橋助剤:4質量部)、パーヘキサ25B(パーオキサイド架橋剤:1.5質量部)、カーボンブラックMT−C(20質量部)を配合し、含フッ素グラフト共重合体(A−B−1)架橋性組成物を作製した。得られた架橋性組成物を、上記の各方法により架橋成形を行い、そのシート状試験片を作製した。その機械物性を表1に示す。
【0140】
実施例4
8インチオープンロールにて、含フッ素グラフト共重合体(A−B−2)100質量部に対して、TAIC(4質量部)、パーヘキサ25B(1.5質量部)、カーボンブラックMT−C(20質量部)を配合し、含フッ素グラフト共重合体(A−B−2)架橋性組成物を作製した。得られた架橋性組成物を、上記の各方法により架橋成形を行い、そのシート状試験片を作製した。その機械物性を表1に示す。
【0141】
【表1】

【0142】
表1に示すとおり、本発明の含フッ素グラフト共重合体は単独および架橋させることにより良好な物性を示すことがわかった。
【0143】
実施例5
8インチオープンロールにて、フッ素ゴム(VdF/HFP=78/22(モル比))100質量部に対して、ビスフェノールAF(ポリオール系架橋剤:2.0質量部)、BTPPC(架橋促進剤:1.0質量部)、酸化マグネシウム(3.0質量部)を配合し、フッ素ゴム組成物を作製し、得られたフッ素ゴム組成物24g、フッ素樹脂(TFE/HFP/パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)=90.5/9.1/0.4(モル比)、融点255℃)56g、含フッ素グラフト共重合体(A−B−1)8gをラボプラストミル((株)東洋精機製作所製)を用いて混練した。混練するフッ素樹脂およびフッ素ゴムは、それらの合計体積が、ラボプラストミルの混練部全容積の77体積%となるように全量を調整し、ラボプラストミルの温度は300℃に設定した。ラボプラストミルの温度が安定した後、フッ素樹脂、含フッ素グラフト共重合体、フッ素ゴム組成物の順番でラボプラストミルに添加し、添加後即、攪拌数を100rpmに上昇させた。トルクが最大の値を示した時点から、10分後まで攪拌し、熱可塑性重合体組成物を得た。上記方法により得られた熱可塑性重合体組成物のシート状試験片を作製した。その機械物性を表2に示す。
【0144】
実施例6
8インチオープンロールにて、フッ素ゴム(VdF/HFP=78/22(モル比))100質量部に対して、ビスフェノールAF(2.0質量部)、BTPPC(1.0質量部)、酸化マグネシウム(3.0質量部)を配合した。得られたフッ素ゴム組成物24g、フッ素樹脂(TFE/HFP/パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)=90.5/9.1/0.4(モル比)、融点255℃)56g、含フッ素グラフト共重合体(A−B−2)8gをラボプラストミル((株)東洋精機製作所製)を用いて混練した。混練するフッ素樹脂およびフッ素ゴムは、それらの合計体積が、ラボプラストミルの混練部全容積の77体積%となるように全量を調整し、ラボプラストミルの温度は300℃に設定した。ラボプラストミルの温度が安定した後、フッ素樹脂、含フッ素グラフト共重合体、フッ素ゴム組成物の順番でラボプラストミルに添加し、添加後即、攪拌数を100rpmに上昇させた。トルクが最大の値を示した時点から、10分後まで攪拌し、熱可塑性重合体組成物を得た。上記の各方法により得られた熱可塑性重合体組成物のシート状試験片を作製した。その機械物性を表2に示す。
【0145】
比較例1
8インチオープンロールにて、フッ素ゴム(VdF/HFP=78/22(モル比))100質量部に対して、ビスフェノールAF(2.0質量部)、BTPPC(1.0質量部)、酸化マグネシウム(3.0質量部)を配合し、フッ素ゴム組成物を作製し、得られたフッ素ゴム組成物24g、フッ素樹脂(TFE/HFP/パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)=90.5/9.1/0.4(モル比)、融点255℃)56gをラボプラストミル((株)東洋精機製作所製)を用いて混練した。混練するフッ素樹脂およびフッ素ゴムは、それらの合計体積が、ラボプラストミルの混練部全容積の77体積%となるように全量を調整し、ラボプラストミルの温度は300℃に設定した。ラボプラストミルの温度が安定した後、フッ素樹脂、フッ素ゴム組成物の順番でラボプラストミルに添加し、添加後即、攪拌数を100rpmに上昇させた。トルクが最大の値を示した時点から、10分後まで攪拌し、熱可塑性重合体組成物を得た。上記の各方法により得られた熱可塑性重合体組成物のシート状試験片を作製した。その機械物性を表2に示す。
【0146】
比較例2
8インチオープンロールにて、フッ素ゴム(VdF/HFP=78/22(モル比))100質量部に対して、ビスフェノールAF(2.0質量部)、BTPPC(1.0質量部)、酸化マグネシウム(3.0質量部)を配合し、フッ素ゴム組成物を作製した。得られたフッ素ゴム組成物24g、フッ素樹脂(TFE/HFP/パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)=90.5/9.1/0.4(モル比)、融点255℃)56g、含フッ素グラフト共重合体(ダイネオン社製「THV 500G」、VdF/TFE/HFP=38/52/10、ランダム共重合体)8gをラボプラストミル((株)東洋精機製作所製)を用いて混練した。混練するフッ素樹脂およびフッ素ゴムは、それらの合計体積が、ラボプラストミルの混練部全容積の77体積%となるように全量を調整し、ラボプラストミルの温度は300℃に設定した。ラボプラストミルの温度が安定した後、フッ素樹脂、含フッ素グラフト共重合体、フッ素ゴム組成物の順番でラボプラストミルに添加し、添加後直ちに、攪拌数を100rpmに上昇させた。トルクが最大の値を示した時点から、10分後まで攪拌し、熱可塑性重合体組成物を得た。上記の各方法により得られた熱可塑性重合体組成物のシート状試験片を作製した。その機械物性を表2に示す。
【0147】
【表2】

【0148】
表2に示すとおり、比較例1よりも実施例5および実施例6の方が機械物性に優れることから、本発明の含フッ素グラフト共重合体はフッ素樹脂およびフッ素ゴムからなる熱可塑性重合体組成物の相溶化剤として機能することがわかった。走査型電子顕微鏡(日本電子(株)製)によるモルフォロジー観察により、熱可塑性重合体組成物中の架橋フッ素ゴム粒子の分散径は、比較例1では平均約10μmであったのに対し、実施例5および実施例6では平均約1〜3μmと小さくなっていた。また、その相溶化効果は、同様のモノマー組成を有するランダム共重合体よりも高いことがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂性含フッ素セグメント(A)を幹ポリマーとし、グラフト鎖末端にヨウ素原子または臭素原子を有するエラストマー性含フッ素セグメント(B)をグラフト鎖として含む含フッ素グラフト共重合体(A−B)であって、
(I)少なくとも1種の含フッ素オレフィンを含む樹脂性含フッ素セグメント(A)形成用モノマー(a1)、および式(1):
CX12=CX3−Y1 (1)
(式中、X1、X2およびX3は同じかまたは異なり、いずれも水素原子、フッ素原子または−CH3を表し、Y1はヨウ素原子または臭素原子を表す)
または式(2):
CX45=CX6−Rf1−CX78−Y2 (2)
(式中、X4、X5、X6、X7およびX8は同じかまたは異なり、いずれも水素原子、フッ素原子または−CH3を表し、Y2はヨウ素原子または臭素原子を表し、Rf1は、少なくとも1つのエーテル結合の酸素原子を有してもよい直鎖状または分岐鎖状の含フッ素アルキレン基を表す)
で示されるヨウ素または臭素末端モノマー(a2)をラジカル重合開始剤の存在下に重合してヨウ素原子または臭素原子含有初期重合体(A1)を得る工程、ならびに
(II)工程(I)で得られたヨウ素原子または臭素原子含有初期重合体(A1)に対し、ラジカル重合開始剤の存在下で、少なくとも1種の含フッ素オレフィンを含むエラストマー性含フッ素セグメント(B)形成用のモノマー(b1)を重合に供して、初期重合体(A1)のヨウ素原子または臭素原子を重合開始点とするグラフト鎖を初期重合体(A1)に形成する工程
を含む製造方法によって得られる含フッ素グラフト共重合体。
【請求項2】
樹脂性含フッ素セグメント(A)形成用モノマー(a1)が、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレンおよび式(3):
CF2=CF−Rf2 (3)
(式中、Rf2は−CF3または−ORf3を表し、Rf3は炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表す)
で示されるパーフルオロエチレン性不飽和化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含む請求項1記載の含フッ素グラフト共重合体。
【請求項3】
樹脂性含フッ素セグメント(A)形成用モノマー(a1)が、
(a1−1)テトラフルオロエチレンと式(3)で示されるパーフルオロエチレン性不飽和化合物の少なくとも1種との組み合わせ、
(a1−2)テトラフルオロエチレン、
(a1−3)テトラフルオロエチレンとエチレンとの組み合わせ、
(a1−4)フッ化ビニリデン、および
(a1−5)クロロトリフルオロエチレンとテトラフルオロエチレンとの組み合わせ
よりなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1または2記載の含フッ素グラフト共重合体。
【請求項4】
樹脂性含フッ素セグメント(A)形成用モノマー(a1)が、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの組み合わせ、またはテトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)との組み合わせである請求項1〜3のいずれかに記載の含フッ素グラフト共重合体。
【請求項5】
エラストマー性含フッ素セグメント(B)形成用モノマー(b1)が、
(b1−1)フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの組み合わせ、
(b1−2)フッ化ビニリデンとテトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの組み合わせ、
(b1−3)テトラフルオロエチレンとプロピレンとの組み合わせ、
(b1−4)フッ化ビニリデンとテトラフルオロエチレンとパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)との組み合わせ、
(b1−5)テトラフルオロエチレンとパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)との組み合わせ、および
(b1−6)フッ化ビニリデンとクロロトリフルオロエチレンとの組み合わせ
よりなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜4のいずれかに記載の含フッ素グラフト共重合体。
【請求項6】
ヨウ素または臭素末端モノマー(a2)が、
CF2=CFOCF2CF2CH2
または
CH2=CHCF2CF2
である請求項1〜5のいずれかに記載の含フッ素グラフト共重合体。
【請求項7】
(I)少なくとも1種の含フッ素オレフィンを含む樹脂性含フッ素セグメント(A)形成用モノマー(a1)、および式(1):
CX12=CX3−Y1 (1)
(式中、X1、X2およびX3は同じかまたは異なり、いずれも水素原子、フッ素原子または−CH3を表し、Y1はヨウ素原子または臭素原子を表す)
または式(2):
CX45=CX6−Rf1−CX78−Y2 (2)
(式中、X4、X5、X6、X7およびX8は同じかまたは異なり、いずれも水素原子、フッ素原子または−CH3を表し、Y2はヨウ素原子または臭素原子を表し、Rf1は、少なくとも1つのエーテル結合の酸素原子を有してもよい直鎖状または分岐鎖状の含フッ素アルキレン基を表す)
で示されるヨウ素または臭素末端モノマー(a2)をラジカル重合開始剤の存在下に重合してヨウ素原子または臭素原子含有初期重合体(A1)を得る工程、ならびに
(II)工程(I)で得られたヨウ素原子または臭素原子含有初期重合体(A1)に対し、ラジカル重合開始剤の存在下で、少なくとも1種の含フッ素オレフィンを含むエラストマー性含フッ素セグメント(B)形成用のモノマー(b1)を重合に供して、初期重合体(A1)のヨウ素原子または臭素原子を重合開始点とするグラフト鎖を初期重合体(A1)に形成する工程
を含む樹脂性含フッ素セグメント(A)を幹ポリマーとし、グラフト鎖末端にヨウ素原子または臭素原子を有するエラストマー性含フッ素セグメント(B)をグラフト鎖として含む含フッ素グラフト共重合体(A−B)の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の含フッ素グラフト共重合体(A−B)を含む架橋性組成物。
【請求項9】
さらに架橋剤を含む請求項8記載の架橋性組成物。
【請求項10】
フッ素樹脂10〜95質量%、フッ素ゴム90〜5質量%および請求項1〜6のいずれかに記載の含フッ素グラフト共重合体(A−B)0.1〜20質量%を含む熱可塑性重合体組成物。

【公開番号】特開2009−227780(P2009−227780A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−73610(P2008−73610)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】