説明

含水性眼用レンズ

【課題】脂質や蛋白質の付着といった光学的特性に影響を及ぼすような現象がなく、また、イオン濃度等環境変化への対応性が高い、含水性、伸縮性、透明性、酸素透過性に優れた眼用レンズを提供する。
【解決手段】シリコーンハイドロゲル製眼用レンズにおいて、重合成分としてベタイン基含有(メタ)アクリレートを全重合成分中0.1〜8重量%用いることを特徴とする含水性眼用レンズ、並びに、ベタイン基含有(メタ)アクリレート、ポリシロキサンマクロモノマーおよびシリコン含有(メタ)アクリレートの一方または両方、親水性モノマーおよびウレタン(メタ)アクリレートを共重合して成り、該ベタイン基含有(メタ)アクリレートを全重合成分中0.1〜8重量%用いることを特徴とする含水性眼用レンズ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐汚染性に優れた含水性眼用レンズに関する。詳しくはレンズの耐汚染性、酸素透過性、含水性、伸縮性、透明性、形状安定性に優れた特徴を有する高酸素透過性の含水性眼用レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の含水性ソフトコンタクトレンズとしては、2−ヒドロキシエチルメタクリレートやビニルピロリドン等の親水性モノマーを主成分としたものがあり、その材料のしなやかさにより装用感がよいことが知られている。一般的に含水性ソフトコンタクトレンズの酸素透過性はレンズの含水率に依存するが、高含水性ソフトコンタクトレンズ材料であるビニルピロリドンを主成分とした重合体の場合でも、含水率80%に対して、酸素透過係数は約50×10-11(cm/sec)・(mLO/mL×mmHg)程度であり、角膜への酸素供給量には限界があった。イオン性の(メタ)アクリレートを用いれば含水率を高めて、酸素透過性を向上できるが、蛋白質や脂質等の汚れが付着しやすく、長時間の装用では装用感や視野の低下が発生する。また、イオン性を示すが故にイオン濃度などの環境変化に影響を受けやすいため、保存液中でのレンズ形状の安定性に課題がある。
【0003】
この課題に対して、耐汚染性と高い親水性を有するベタイン型モノマーを主成分とした眼用レンズ材料が開示されている(特許文献1参照)。しかしながら、この材料で角膜へ十分に酸素供給するには、さらに高い含水率が必要となり、機械的強度とのバランスの点で課題を有する。このように、従来の含水性ソフトコンタクトレンズでは、十分な酸素透過性付与に限界があり、長時間の装用の場合に課題を有していた。
【0004】
最近はコンタクトレンズの連続的な装用が主流であり、高い酸素透過性は必要不可欠な要素となっている。それ故、十分な酸素透過性と含水性を有する、シリコン含有含水性コンタクトレンズ材料が種々提案されている。しかしレンズ素材にシリコン含有モノマーを用いることによる、装用感の低下や脂質や蛋白質等の汚れの付着が指摘されている。
【0005】
一方、装用感向上のために高酸素透過性とレンズ表面の親水性とを付与する技術として、双性イオン性基含有化合物を眼用レンズ材料の表面にグラフト重合させることを特徴とする眼用レンズ材料が開示されている(特許文献2参照)。しかしながら、レンズ表面の保水性、耐汚染性は向上するものの、レンズ材料内部に脂質、蛋白質等の汚れが蓄積される可能性があり、レンズの白化等による光学的特性への悪影響が予測される。
【特許文献1】特開平6−67122号公報
【特許文献2】特開2001−337298号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明ではシリコン含有モノマーを主成分とした場合でも、脂質や蛋白質の付着といった光学的特性に悪影響を及ぼすことがなく、また、酸素透過性、含水性、伸縮性、透明性、イオン濃度等環境変化への適応性が高いため形状安定性に優れた、コンタクトレンズや眼内レンズなどの眼用レンズを提供することにある。
【0007】
具体的には、含水率が30〜60%程度にも関わらず、酸素透過性が80〜100×10-11(cm/sec)・(mLO/mL×mmHg)程度を示し、柔軟性と機械的強度、耐汚染性に優れ、さらに、コンタクトレンズ用保存液などのケア溶液のイオン濃度等の変化においてもレンズ形状が変化することのない眼用レンズの提供である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明は、シリコーンハイドロゲル製眼用レンズにおいて、重合成分としてベタイン基含有(メタ)アクリレートを全重合成分中0.1〜8重量%用いることを特徴とする含水性眼用レンズである。
【0009】
(2)また、ベタイン基含有(メタ)アクリレート、ポリシロキサンマクロモノマーおよびシリコン含有(メタ)アクリレートの一方または両方、親水性モノマーおよびウレタン(メタ)アクリレートを共重合して成り、該ベタイン基含有(メタ)アクリレートを全重合成分中0.1〜8重量%用いることを特徴とする含水性眼用レンズである。
【0010】
(3)さらに前記ベタイン基含有(メタ)アクリレートが下記一般式(1)で示される(1)または(2)の含水性眼用レンズである。
一般式(1):
【0011】
【化2】

(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rはメチル基またはエチル基を示し、XはOまたはNHを示し、Yは−SOまたは−COOを示す。また、mは1〜3の整数であり、nは1〜6の整数である。)
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、光学的特性に影響を及ぼす脂質や蛋白質等の汚れ付着がなく、酸素透過性、含水性、伸縮性、透明性且つ、イオン濃度等環境変化への適応性に優れるので、含水性コンタクトレンズや眼内レンズなどに好適な眼用レンズが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に使用するベタイン基含有(メタ)アクリレートとは、単量体中にアニオン性であるスルホン酸基あるいはカルボキシル基またはその塩とカチオン性基の両者を有するものであり、カチオン性基としてはアミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、4級アンモニウム基等を例示することができ、好ましくは一般式(1)で示される化合物である。
一般式(1):
【0014】
【化3】

(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rはメチル基またはエチル基を示し、XはOまたはNHを示し、Yは−SOまたは−COOを示す。また、mは1〜3の整数であり、nは1〜6の整数である。)
【0015】
具体的には、N,N−ジメチル−N−(メタ)アクリロイルオキシメチル−N−スルホメチル−アンモニウムベタイン、N,N−ジメチル−N−(メタ)アクリロイルオキシエチル−N−スルホメチル−アンモニウムベタイン、N,N−ジメチル−N−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−N−スルホメチル−アンモニウムベタイン、N,N−ジメチル−N−(メタ)アクリロイルオキシメチル−N−スルホプロピル−アンモニウムベタイン、N,N−ジメチル−N−(メタ)アクリロイルオキシエチル−N−スルホプロピル−アンモニウムベタイン、N,N−ジメチル−N−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−N−スルホプロピル−アンモニウムベタイン、N,N−ジエチル−N−(メタ)アクリロイルオキシメチル−N−スルホメチル−アンモニウムベタイン、N,N−ジエチル−N−(メタ)アクリロイルオキシエチル−N−スルホメチル−アンモニウムベタイン、N,N−ジエチル−N−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−N−スルホメチル−アンモニウムベタイン、N,N−ジエチル−N−(メタ)アクリロイルオキシメチル−N−スルホプロピル−アンモニウムベタイン、N,N−ジエチル−N−(メタ)アクリロイルオキシエチル−N−スルホプロピル−アンモニウムベタイン、N,N−ジエチル−N−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−N−スルホプロピル−アンモニウムベタイン、N,N−ジメチル−N−(メタ)アクリルアミドプロピル−N−スルホメチル−アンモニウムベタイン、N,N−ジメチル−N−(メタ)アクリルアミドプロピル−N−スルホプロピル−アンモニウムベタイン、N,N−ジエチル−N−(メタ)アクリルアミドプロピル−N−スルホメチル−アンモニウムベタイン、N,N−ジエチル−N−(メタ)アクリルアミドプロピル−N−スルホプロピル−アンモニウムベタイン、N,N−ジメチル−N−(メタ)アクリルアミドプロピル−N−カルボキシメチル−アンモニウムベタイン、N,N−ジメチル−N−(メタ)アクリルアミドプロピル−N−カルボキシエチル−アンモニウムベタイン、N,N−ジエチル−N−(メタ)アクリルアミドプロピル−N−カルボキシメチル−アンモニウムベタイン、N,N−ジエチル−N−(メタ)アクリルアミドプロピル−N−カルボキシエチル−アンモニウムベタインが挙げられるが、本発明において特に好ましく用いられるのは、カルボキシベタイン(メタ)アクリレートである。具体的には、N,N−ジメチル−N−(メタ)アクリロイルオキシメチル−N−カルボキシメチル−アンモニウムベタイン、N,N−ジメチル−N−(メタ)アクリロイルオキシエチル−N−カルボキシメチル−アンモニウムベタイン、N,N−ジメチル−N−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−N−カルボキシメチル−アンモニウムベタイン、N,N−ジメチル−N−(メタ)アクリロイルオキシメチル−N−カルボキシエチル−アンモニウムベタイン、N,N−ジメチル−N−(メタ)アクリロイルオキシエチル−N−カルボキシエチル−アンモニウムベタイン、N,N−ジメチル−N−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−N−カルボキシエチル−アンモニウムベタイン、N,N−ジエチル−N−(メタ)アクリロイルオキシメチル−N−カルボキシメチル−アンモニウムベタイン、N,N−ジエチル−N−(メタ)アクリロイルオキシエチル−N−カルボキシメチル−アンモニウムベタイン、N,N−ジエチル−N−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−N−カルボキシメチル−アンモニウムベタイン、N,N−ジエチル−N−(メタ)アクリロイルオキシメチル−N−カルボキシエチル−アンモニウムベタイン、N,N−ジエチル−N−(メタ)アクリロイルオキシエチル−N−カルボキシエチル−アンモニウムベタイン、N,N−ジエチル−N−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−N−カルボキシエチル−アンモニウムベタインが挙げられる。
【0016】
ベタイン基含有(メタ)アクリレートは優れた耐汚染性を付与でき、かつイオン濃度などの環境変化に対しても優れた適応性を発揮するが、極めて高い親水性を示す構成成分であるため疎水性構成成分との相溶性が低く、両成分を均一に混合して用いることが難しい。そのため、他の諸物性への影響を考慮した配合量にて用いることに本発明の特徴がある。ベタイン基含有(メタ)アクリレートは配合量が多すぎる場合、他の構成成分である疎水性モノマーとの相溶性が低下し均一溶液を得ることができない。また、添加量が不足すると、得られる重合体の耐汚染性、イオン濃度等環境変化への適応性が低くその特徴を有意に発現することができない。配合量は、全重合成分中0.1〜8重量%であり、好ましくは0.1〜3重量%である。
【0017】
また、ポリシロキサンマクロモノマーは、一般式(2)で示される化合物であることが好ましい。具体的には、α−モノ(メタクリロキシメチル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ジ(メタクリロキシメチル)ポリジメチルシロキサン、α−モノ(3−メタクリロキシプロピル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ジ(3−メタクリロキシプロピル)ポリジメチルシロキサン、α−モノ(3−メタクリロキシブチル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ジ(3−メタクリロキシブチル)ポリジメチルシロキサン、α−モノビニルポリジメチルシロキサン、α,ω−ジビニルポリジメチルシロキサンが挙げられるが、特に好ましくは、α,ω−ジ(3−メタクリロキシプロピル)ポリジメチルシロキサンである。
一般式(2):
【0018】
【化4】

(式中、Xは独立して、水素原子、水酸基、メチル基、CH=CH−、または下記一般式(3)のエチレン性不飽和の重合性基を示す。ただし、両方のXが水素原子、水酸基またはメチル基であることはない。R、R、RおよびRは同一または異なってメチル基またはトリメチルシロキシ基を示し、mは10〜150の整数である。下記一般式(3)のRは水素原子またはメチル基を示し、nは2〜5の整数である。)
一般式(3):
【0019】
【化5】

【0020】
また、シリコン含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリメチルシロキシジメチルシリルメチル(メタ)アクリレート、トリメチルシロキシジメチルシリルプロピル(メタ)アクリレート、メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル(メタ)アクリレート、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル(メタ)アクリレート、モノ[メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル(メタ)アクリレート]、トリス[メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル(メタ)アクリレート]、メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルグリセリル(メタ)アクリレート、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルグリセリル(メタ)アクリレート、モノ[メチルビス(トリメチルシロキシ)シロキシ]ビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルグリセリル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルエチルテトラメチルジシロキシプロピルグリセリル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルメチル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルプロピル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルプロピルグリセリル(メタ)アクリレート、トリメチルシロキシジメチルシリルプロピルグリセリル(メタ)アクリレート、メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルエチルテトラメチルジシロキシメチル(メタ)アクリレート、テトラメチルトリイソプロピルシクロテトラシロキサニルプロピル(メタ)アクリレート、テトラメチルトリイソプロピルシクロテトラシロキシビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシプロピルジメチルメトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシプロピルジメチルエトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシエチルメチルジメトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシエチルメチルジエトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルメトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルエトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシメチルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシメチルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシメチルメチルジメトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシメチルメチルジエトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシメチルジメチルメトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシメチルジメチルエトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリス(メトキシエトキシ)シラン等の直鎖状、分岐状または環状のアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0021】
本発明ではポリシロキサンマクロモノマー、シリコン含有(メタ)アクリレートのいずれか一方、または両方を混合して全重合成分中20〜70重量%の範囲内で用いることが好ましい。より好ましくは30〜60重量%の範囲である。ポリシロキサンマクロモノマーおよび/あるいはシリコン含有(メタ)アクリレート含有量が20重量%未満であると、得られた重合体を眼用レンズとして用いた場合、十分な酸素透過性が発揮できず、また70重量%を超えると親水性構成成分との相溶性が低下し好ましくない。
【0022】
本発明に用いる親水性構成成分(親水性モノマー)としては、親水性を有する(メタ)アクリル含有モノマー、ビニル含有モノマーが挙げられる。具体的に親水性(メタ)アクリルモノマーとして、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMAA)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、(メタ)アクリル酸、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、グリセロールメタクリレートが挙げられる。親水性ビニル含有モノマーとしては、N−ビニルピロリドン(NVP)、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、N−ビニル−N−エチルアセトアミド、N−ビニル−N−エチルホルムアミド、N−ビニルホルムアミドが挙げられる。
【0023】
親水性モノマーの好ましい配合量は全重合成分中20〜70重量%であり、より好ましくは30〜50重量%である。親水性モノマー含有量が20重量%未満であると柔軟性や含水率が不十分であり、また、70重量%を超えると疎水性構成成分との相溶性、酸素透過性が低下し好ましくない。
【0024】
本発明で用いるウレタン(メタ)アクリレートとしては、以下の一般式(4)で示されるウレタン基含有ジ(メタ)アクリレートであることが好ましい。具体的には、新中村化学工業社製 UA-160TM(ポリテトラメチレングリコール骨格 分子量1600)、UA−6100(ポリエステル骨格 分子量2300)、UA−6200(ポリエーテル骨格 分子量3300)、U−412A(ポリプロリレングリコール骨格 分子量4700)、UA−340P(ポリプロピレングリコール骨格 分子量 13000)が挙げられる。
一般式(4):
R−R−R−R−R
(式中Rは(メタ)アクリル基を示し、Rはイソシアネート基を示し、Rはポリオールを示す。)
【0025】
ウレタン(メタ)アクリレートの好ましい配合量は全重合成分中1〜20重量%であり、より好ましくは3〜10重量%である。ウレタン(メタ)アクリレート含有量が1重量%未満であると得られた重合体の伸縮性、形状保持性が低下し、20重量%を超えると眼用レンズとしての柔軟性、含水性が低下し好ましくない。
【0026】
本発明ではその他共重合可能な単量体として、レンズ自体の強度、形状安定性、柔軟性などの向上の目的で、アルキル(メタ)アクリレート を共重合することができる。アルキル(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、3−メチルトリデシル(メタ)アクリレート、6−メチルトリデシル(メタ)アクリレート、7−メチルトリデシル(メタ)アクリレート、2,11−ジメチルドデシル(メタ)アクリレート、2,7−ジメチル−4,5−ジエチルオクチル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、i−ステアリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート等の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0027】
フッ素原子含有アルキル(メタ)アクリレートも所望に応じて用いることができる。フッ素原子含有アルキル(メタ)アクリレートとしては、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、テトラフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロヘキシル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロビス(トリフルオロメチル)ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート、ヘプタフルオロブチル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ノナフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ドデカフルオロヘプチル(メタ)アクリレート、ドデカフルオロオクチル(メタ)アクリレート、トリデカフルオロオクチル(メタ)アクリレート、トリデカフルオロヘプチル(メタ)アクリレート、ヘキサデカフルオロデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレート、オクタデカフルオロウンデシル(メタ)アクリレート、ノナデカフルオロウンデシル(メタ)アクリレート、エイコサフルオロドデシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−オクタフルオロ−6−トリフルオロメチルヘプチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−ドデカフルオロ−8−トリフルオロメチルノニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−ヘキサデカフルオロ−10−トリフルオロメチルウンデシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0028】
その他共重合可能な単量体の配合量は、本発明の効果を阻害しない範囲で用いることができ、好ましくは全重合成分中1〜20重量%であり、より好ましくは5〜15重量%である。
【0029】
更に本発明では、多官能性の架橋成分も用いることができる。架橋成分としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエリチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリレート系架橋剤、アリルメタクリレート、ジアリルマレエート、ジアリルフマレート、ジアリルサクシネート、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、トリアリルホスフェート、トリアリルトリメリテート、ジアリルエーテル、N,N−ジアリルメラミン、ジビニルベンゼン等のビニル系架橋剤が挙げられる。
【0030】
好ましい配合量は全重合成分中0.1〜5重量%で、より好ましくは0.1〜3重量%である。
【0031】
本発明では、熱重合や光重合を行う場合に用いる一般的なラジカル重合開始剤や光増感剤などを添加して重合を行う。ラジカル重合開始剤としては、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス酪酸ジメチル、2,2'−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)などのアゾ系重合開始剤、ジイソブチリールパーオキサイド、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、ジステアロイルパーオキサイド、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(4−ターシャリーブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、ターシャリーヘキシルパーオキシネオデカノエート、ターシャリーブチルパーオキシネオデカノエート、ターシャリーヘキシルパーオキシピバレート、ターシャリーブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−ヘキサノイル)パーオキシヘキサン、ターシャリーヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ターシャリーブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ターシャリーブチルパーオキシイソブチレート、ターシャリーヘキシルパーオキシイソプロピルカーボネート、ターシャリーブチルパーオキシマレイン酸、ターシャリーブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、ターシャリーブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(3−メチルベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ターシャリーブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ターシャリーブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、ターシャリーヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ターシャリーブチルパーオキシ酢酸、ターシャリーブチルパーオキシベンゾエート等の有機過酸化物系重合開始剤が挙げられる。
【0032】
本発明の組成の場合、比較的低温、具体的には30〜60℃程度で重合反応を開始させることができるパーオキシエステル系が好ましく用いられる。比較的低温で開始することで、各成分間の反応が均一に進行し、本発明の優れた特徴が発揮できる。その中で、ターシャリーヘキシルパーオキシネオデカノエート、ターシャリーブチルパーオキシネオデカノエート、ターシャリーヘキシルパーオキシピバレート、ターシャリーブチルパーオキシピバレートなどのターシャリーパーオキシエステル系が特に好ましく用いられる。
【0033】
重合開始剤の量は、共重合体成分100重量部に対して0.001〜1.0重量部が好ましく、より好ましくは0.05〜1.0重量部である。
【0034】
本発明の眼用レンズに紫外線吸収効果を付与する場合には、一般的に用いられる紫外線吸収剤を材料中に添加することもできる。紫外線吸収剤の具体例としては、2−ヒドロキシ−4−(メタ)アクリロイルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(メタ)アクリロイルオキシ−5−t−ブチルベンゾフェノン、2−(2‘−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2‘−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−メタクリロイルオキシメチル安息香酸フェニル等が挙げられる。
【0035】
本発明の眼用レンズの製造方法としては、レンズ形状の成形型を用いて重合する方法や、チューブ状の容器中で重合した後にレンズ形状に切削、研磨する方法など公知の方法が採用できる。また、本発明の材料を眼内レンズとして利用する場合には、レンズ形成後にレンズ部にレンズ支持部を取り付けることも可能であるし、レンズ部と支持部を一体的に形成することも可能である。
【実施例】
【0036】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0037】
≪評価方法≫
実施例および比較例における膨潤状態のコンタクトレンズでの評価方法として、以下の試験、評価基準を採用した。
【0038】
≪蛋白質吸着量≫
得られたコンタクトレンズ成形体の蛋白質吸着量を以下に示す方法により測定した。
【0039】
[人工蛋白質溶液の調製]
卵白由来リゾチーム0.5gをBBS(NaCl0.85%、ホウ酸0.46%、ホウ砂0.04%水溶液)に混合し調製した。
【0040】
[蛋白質吸着試験]
上記人工蛋白質溶液中37℃±2℃にて24時間インキュベートしたコンタクトレンズ成形体を生理食塩水にて濯いだ後、ラウリル硫酸ナトリウム1%−炭酸水素ナトリウム1%水溶液にて抽出を行った。コンタクトレンズ成形体を除去後、その抽出液中の蛋白質をMicroBCA法(PIERICE社製)にて測定した。
【0041】
≪脂質吸着量≫
得られたコンタクトレンズ成形体の脂質吸着量を以下に示す方法により測定した。
【0042】
[人工脂質溶液の調製]
オレイン酸0.06g、リノール酸0.06g、トリパルミチン0.81g、セチルアルコール0.20g、パルミチン酸0.06g、スパームアセチ0.81g、コレステロール0.08g、パルミチン酸コレステロール0.08g、卵黄レシチン2.83gを純水100(mL)に混合し、50℃にて60分攪拌後、ガラスフィルターにて加圧濾過し、人工脂質溶液を調製した。
【0043】
[脂質吸着試験]
上記人工脂質溶液中37℃±2℃にて24時間インキュベートしたコンタクトレンズ成形体を生理食塩水にて濯ぎ、40℃真空にて乾燥を行った後、エタノール:ジエチルエーテル=3:1溶液にて抽出した。コンタクトレンズ成形体を除去後80℃にて溶媒を気化、乾固して得られた脂質を硫酸・リン酸・バニリン法にて測定した。
【0044】
≪酸素透過係数≫
コンタクトレンズ成形体の酸素透過量の評価として、コンタクトレンズ製造・輸入承認申請マニュアル(日本コンタクトレンズ協会)に記載の「改良電極法によるDk値測定作業手順書」に基づき酸素透過係数(Dk値)を測定した。
【0045】
≪含水率≫
コンタクトレンズ成形体の含水率の評価として、「ハイドロゲルレンズの含水率測定(ISO10339:1997)」に基づき含水率を測定した。
【0046】
≪レンズ伸縮性および強度≫
「プラスチックの引っ張り試験法(JIS K 7113)」に基づき試験片を作製し、膨潤したものをサンプルとして伸縮性および強度を測定した。
【0047】
≪レンズ透明性および形状保持性≫
コンタクトレンズ成形体の形状保持性と透明性を、目視にて評価した。
【0048】
[レンズ透明性評価基準]
○:完全透明。△:一部白濁(乳白色)あり。×:50%以上白濁
[レンズ形状評価基準]
コンタクトレンズ成形体のレンズ前面側を下に向けて、手指に載せて横から確認した時に、
○:お椀形状を保持している。△:お椀形状がやや開いた状態である。×:お椀形状が保持できない。
【0049】
≪イオン濃度変化安定性≫
得られたコンタクトレンズ成形体のイオン濃度変化に対する安定性を以下に示す方法により確認した。
【0050】
[イオン濃度変化安定性試験]
37℃生理食塩水中にてレンズ径を測定した後、同一のレンズを使用し、37℃pH3.0に調整した塩酸水溶液中、37℃pH9.0に調製した水酸化ナトリウム水溶液中でそれぞれレンズ径を測定し、その変動量を確認した。
【0051】
[レンズ形状安定性評価基準]
○:レンズ径の変動が±0.1mm未満である。×:レンズ径の変動が±0.1mm以上である。
【0052】
(実施例1〜12)
3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルアクリレート(SiA)、α,ω−ジ(3−メタクリロキシプロピル)ポリジメチルシロキサン(FM−7721、n=65、mおよびp=3)、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMAA)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、N−ビニルピロリドン(NVP)、ウレタンジ(メタ)アクリレート(U−412A、UA−6200 新中村化学工業社製)、N,N−ジメチル−N−メタクリロイルオキシエチル−N−カルボキシメチル−アンモニウムベタイン(GLBT 大阪有機化学工業社製)、トリデシルメタクリレート(TDMA)およびエチレングリコールジメタクリレート(ED)を表1に示す配合量(単位:重量%)で混合した後に、重合開始剤として、ターシャリーブチルパーオキシデカノエート(t−BuND)もしくは2,2'−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を全重合成分100重量部に対して各0.5重量部添加した。
【0053】
各成分を均一になるように十分攪拌した後、レンズ形状のポリプロピレン製の成形型内に注入し、窒素雰囲気下、70℃で10時間加温し、レンズ形状の重合体とした。得られた重合体をPBSにて60分間浸漬し膨潤させた後成形体の評価を行った。
【0054】
得られたレンズ成形体の評価結果を表1に示すが、蛋白質、脂質への耐汚染性、適度な酸素透過性、含水率と伸縮性、透明性、形状保持性を有し且つ、イオン濃度等環境変化への適応性にも優れた特徴を示した。
【0055】
(比較例1)
本発明の必須成分であるベタイン基含有(メタ)アクリレートを使用せず、その他成分については実施例1と同様の手順でレンズを作製し評価した。
【0056】
酸素透過性、含水率、破断強度、伸度は優れているものの、耐汚染性、イオン濃度変化への適応性が低く、眼用レンズとしては不向きであった。
【0057】
(比較例2)
本発明の必須成分であるベタイン基含有(メタ)アクリレートを8重量%より多く用いた場合として、表1に示す組成で複数成分を混合した。
【0058】
成分混合時にベタイン基含有(メタ)アクリレートが他成分に溶解せず、眼用レンズを作製するに至らなかった。
【0059】
なお、表1中の略語は、以下の化合物を示す。
【0060】
SiA:3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルアクリレート
FM−7721:式:
【0061】
【化6】

n=65、mおよびp=3、分子量 5000
DMAA :N,N−ジメチルアクリルアミド
HEMA :2−ヒドロキシエチルメタクリレート
NVP :N−ビニルピロリドン
U−412A :ウレタンジメタクリレート
(ポリプロピレングリコール骨格 分子量4700)
UA−6200:ウレタンジアクリレート
(ポリエーテル骨格 分子量3300)
GLBT :N,N−ジメチル−N−メタクリロイルオキシエチル−N−カル ボキシメチル−アンモニウムベタイン
TDMA :トリデシルメタクリレート
ED :エチレングリコールジメタクリレート
p−BuND :ターシャリーブチルパーオキシデカノエート(パーブチルND)
AIBN :2,2'−アゾビスイソブチロニトリル
【0062】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーンハイドロゲル製眼用レンズにおいて、重合成分としてベタイン基含有(メタ)アクリレートを全重合成分中0.1〜8重量%用いることを特徴とする含水性眼用レンズ。
【請求項2】
ベタイン基含有(メタ)アクリレート、ポリシロキサンマクロモノマーおよびシリコン含有(メタ)アクリレートの一方または両方、親水性モノマーおよびウレタン(メタ)アクリレートを共重合して成り、該ベタイン基含有(メタ)アクリレートを全重合成分中0.1〜8重量%用いることを特徴とする含水性眼用レンズ。
【請求項3】
前記ベタイン基含有(メタ)アクリレートが下記一般式(1)で示される請求項1または2に記載の含水性眼用レンズ。
一般式(1):
【化1】

(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rはメチル基またはエチル基を示し、XはOまたはNHを示し、Yは−SOまたは−COOを示す。また、mは1〜3の整数であり、nは1〜6の整数である。)

【公開番号】特開2008−268488(P2008−268488A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−110393(P2007−110393)
【出願日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(000131245)株式会社シード (30)
【Fターム(参考)】