説明

吸・放熱カプセル及び吸・放熱カプセル分散液

【課題】吸・放熱カプセルの吸・放熱に伴う相転移物質の膨張・収縮に対してマイクロカプセル化壁の破壊が少なく、安全性の高いフッ素系溶媒中で分散安定性の高い吸・放熱カプセル及び吸・放熱カプセル分散液とその製造方法を提供する。
【解決手段】内部に密閉空間を形成する膜状のカプセル壁体として水硬化性のウレタンモノマー又はウレタンプレポリマーと分子内に水酸基を有するフッ素系ポリマーとを含有し、該カプセル壁体の該密閉空間に封入される物質として、糖アルコール、尿素及びチオ尿素の少なくとも1つを含有する吸・放熱カプセル。また、1段目マイクロカプセル化として硬化速度の速いウレタンモノマー又はウレタンプレポリマーにより界面活性剤の共存下でカプセル化壁を形成した後に、2段目マイクロカプセル化としてウレタンモノマー又はウレタンプレポリマーにより更なるカプセル化壁を形成することにより、上記の吸・放熱カプセルを製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸・放熱カプセル及び吸・放熱カプセル分散液とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
溶媒水に溶解する相転移物質のマイクロカプセルは、特開2001−181612公報(特許文献1)に記載されている。この特許文献では、相転移物質として硫酸ナトリウム10水和物や塩化カルシウム6水和物等の無機塩水和物を、カプセル壁形成物質であるビニルモノマー、重合開始剤、分散剤を含む溶液中に分散させ、カプセル壁形成物質溶液に溶媒水に溶解する相転移物質が分散したW/Oエマルションを得て、前記W/Oエマルションを、分散剤を含有する水溶液中に分散させ、W/O/W系エマルションを調製し、カプセル壁形成物質を重合させることにより、カプセル壁形成物質に点在した相転移物質を備えた吸・放熱カプセル及び吸・放熱カプセル分散液を得ている。
【0003】
特開2007−031597公報(特許文献2)では、相転移物質として水酸化バリウム8水和物(融点78℃)、フッ素系溶媒としてパーフルオロカーボン(商品名「フロリナートFC3255」、住友スリーエム社製)及びフッ素系界面活性剤(商品名「フタージェント150」、ネオス社製)を相転移物質の融点以上の温度(85℃)で、高圧乳化機を用いて乳化分散液を調製した後に、マイクロカプセル化剤であるスチレンモノマー、ジビニルベンゼンモノマー及び重合開始剤である4,4−アゾビス−4−シアノバレリック酸(商品名「AVCC」、大塚化学社製)を分散液の攪拌下に添加し、相転移物質粒子の界面でビニルモノマーを重合させ、内部に密閉空間を形成する膜状のカプセル壁体と、該カプセル壁体の該密閉空間に封入された相転移物質を備えた吸・放熱カプセル及び吸・放熱カプセル分散液を得ている。
【0004】
特開2005−203148公報(特許文献3)では、相転移物質として水酸化バリウム8水和物(融点78℃)粒子をフッ素オイル(パーフルオロカーボン)に分散させて、分散液にシランカップリング剤を添加し、シランカップリング剤を無機粒子である相転移物質の水酸化バリウム8水和物粒子の界面に吸着させた後に、分散液の温度を55℃程度の温度にすることにより、相転移物質粒子界面でのシランカップリング剤を重合させ、フッ素系溶媒中で吸・放熱カプセル及び吸・放熱カプセル分散液を得ている。
【0005】
特開2007−330872公報(特許文献4)では、相転移物質として無機塩水和物(水酸化バリウム8水和物、酢酸ナトリウム3水和物)を用いて、無機塩水和物に添加した水を開始剤として、水硬化性のウレタンモノマー又はウレタンプレポリマーで相転移物質としての無機塩水和物の界面にマイクロカプセル壁を形成し、吸・放熱カプセル及び非水溶性溶媒に該吸・放熱カプセルを分散した吸・放熱カプセル分散液を得ている。
【0006】
特開2007−244935公報(特許文献5)では、相転移物質(潜熱蓄熱材)としての水に不溶性なパラフィンワックス、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸を水中に分散させ、アミン系重合性反応性物質を含むアルカリ水溶液を添加し、相転移物質粒子界面でナイロン膜を形成させ、その後に、イソシアネート基や二重結合を有する重合性反応物質を含む数nm〜10μmの分散液よりなるO/Wエマルションを添加して界面重合あるいはラジカル重合反応を行わせることにより、ナイロン膜表面に重合膜を形成し、吸・放熱カプセルを得ている。
【0007】
特開2008−221046公報(特許文献6)では、相転移物質(相変化物質)としての水に不溶性なヘキサデカンを、メラミン粉末のホルムアルデヒド水溶液に加熱分散することにより、メラミン樹脂からなる外郭(151nm〜300nm厚み)を形成させ、その後に、ポリビニルアルコールなどの反応性物質にて被覆し、吸・放熱カプセルを得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−181612公報
【特許文献2】特開2007−031597公報
【特許文献3】特開2005−203148公報
【特許文献4】特開2007−330876公報
【特許文献5】特開2007−244935公報
【特許文献6】特開2008−221046公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記特許文献1に記載した特徴を有する吸・放熱カプセルは、カプセル化剤もモノマー等で構成される油中に、溶媒水に溶解する相転移物質の液滴を分散させ、O/Wエマルションを形成させてから、溶媒水にO/Wエマルションを分散させているため、カプセル全体における相転移物質の体積分率を相転移物質の液滴の最密充填状態以上にすることができず、カプセル全体の体積に対する相転移物質の体積分率の割合を実質的に60体積%以上とすることは困難である。
【0010】
また、一度O/Wエマルションを形成させてから、溶媒水にO/Wエマルションを分散させているため、カプセルの粒子径は相転移物質の液滴の粒子径より大きくなる問題を有している。
【0011】
前記特許文献2に記載した特徴を有する吸・放熱カプセルは、相転移物質として無機塩水和物である水酸化バリウム8水和物や水酸化ストロンチウム8水和物を用いており、吸・放熱カプセルのカプセル壁が破壊された場合には、劇物である水酸化バリウムや水酸化ストロンチウムが溶出してしまう問題を有している。また、相転移物質としての無機塩水和物は、融解・凝固の繰返しにより水和水が脱離してしまい、融解・凝固を安定的に行なうことができないという問題を有している。
【0012】
また、相転移物質として無機塩水和物の粒子を得た後に、カプセル化剤としてのビニルモノマー及びラジカル重合開始剤を添加し、前記無機水和物粒子と分散媒体の界面でカプセル化剤の重合反応を進行させているが、前記無機水和物粒子と分散媒体の界面以外でもカプセル化剤の重合反応が生じる可能性があり、相転移物質を含まないカプセル粒子が生成してしまうという問題を有している。
【0013】
前記特許文献3に記載した特徴を有する吸・放熱カプセルは、相転移物質として無機塩水和物である水酸化バリウム8水和物を用い、シランカップリング剤により、相転移物質内に含まれる水を用いて重合しているため、前記無機水和物粒子と分散媒体の界面のみでカプセル化剤の重合反応を進行させることができるが、シランカップリング剤の重合によりエタノール等のアルコールが生成するため、生成したアルコールの作用で、吸・放熱カプセルの分散性が著しく低下する問題を有している。
【0014】
前記特許文献4に記載した特徴を有する吸・放熱カプセルは、前記特許文献1〜3の問題点を改善しているが、水硬化性のウレタンモノマー又はウレタンプレポリマーで相転移物質としての無機塩水和物の界面にマイクロカプセル壁を形成した場合、マイクロカプセル化壁に弾力性がなく、相転移物質の吸・放熱に伴う相転移物質の膨張・収縮により、マイクロカプセル化壁が破けてしまうという欠点を有している。
【0015】
また、水硬化性のウレタンモノマー又はウレタンプレポリマーで形成したマイクロカプセル化粒子は壁面が有機性であるので、有機溶媒に分散させ吸・放熱カプセル分散液を得る場合は問題がないが、引火性がないフッ素系溶媒に分散させる場合は、マイクロカプセル化壁とフッ素系溶媒の親和性が弱く、吸・放熱カプセル分散液の安定性が悪くなるという問題を有している。
【0016】
前記特許文献5及び6に記載した特徴を有する吸・放熱カプセルの製造方法は、水溶性溶媒中で、非水溶性相転移物質をその周囲において2段階でマイクロカプセル化する方法であるが、相転移物質が糖アルコール、尿素、チオ尿素等の水溶性物質である場合には、上記の方法ではマイクロカプセル化壁を形成することはできない。
【0017】
本発明は以上のような事情に鑑みてなされたものであり、安全性の高い相転移物質を使用し、融解・凝固の繰返し時において、水溶性相転移物質の膨張・収縮に十分耐えうるマイクロカプセル化壁を有する吸・放熱カプセル、及びフッ素系溶媒に分散させた場合に、分散安定性の高い吸・放熱カプセル分散液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者等は、前記目的を達成するために鋭意検討した。その結果、本発明者は、従来技術の現状に留意しつつ鋭意研究を重ねた結果、内部に密閉空間を形成する膜状のカプセル壁体と、該カプセル壁体の該密閉空間に封入された封入物質としての、水又は水混和性有機溶媒に溶解する相転移物質とを備えた吸・放熱カプセルであって、前記封入物質として、糖アルコール、尿素及びチオ尿素の少なくとも1つからなる相転移物質を含有することにより、安全性の高い相転移物質を使用し、前記カプセル壁体として水硬化性のウレタンモノマー又はウレタンプレポリマーと分子内に水酸基を有するフッ素系ポリマーとを含有することにより、相転移物質の膨張・収縮に十分耐えうるマイクロカプセル化壁を有する吸・放熱カプセル、及びフッ素系溶媒に分散させた場合に、分散安定性の高い吸・放熱カプセル分散液を見出し、また、1段目マイクロカプセル化として硬化速度の速いウレタンモノマー又はウレタンプレポリマーにより界面活性剤の共存下でカプセル化壁を形成した後に、2段目マイクロカプセル化としてウレタンモノマー又はウレタンプレポリマーにより更なるカプセル化壁を形成することにより、上記の吸・放熱カプセルを製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0019】
すなわち、本発明は下記の吸・放熱カプセル及び吸・放熱カプセル分散液とその製造方法に関するものである。
(1)内部に密閉空間を形成する膜状のカプセル壁体と、該カプセル壁体の該密閉空間に封入された封入物質としての、水又は水混和性有機溶媒に溶解する相転移物質とを備えた吸・放熱カプセルであって、かつ、前記封入物質として、糖アルコール、尿素及びチオ尿素の少なくとも1つからなる相転移物質を含有する吸・放熱カプセルにおいて、前記カプセル壁体として、水硬化性のウレタンモノマー又はウレタンプレポリマーと分子内に水酸基を有するフッ素系ポリマーとを含有することを特徴とする吸・放熱カプセル。
(2)前記カプセル壁体の水硬化性のウレタンモノマー又はウレタンプレポリマーと分子内に水酸基を有するフッ素系ポリマーとの質量比率が40/60から60/40であることを特徴とする前記(1)に記載の吸・放熱カプセル。
(3)前記封入物質として水又は多価アルコール類を含有することを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の吸・放熱カプセル。
(4)前記多価アルコール類がエチレングリコール、ジエチレングリコール及びグリセリンの少なくとも1つからなることを特徴とする前記(3)に記載の吸・放熱カプセル。
(5)前記吸・放熱カプセルの粒子径が10〜50μmであり、かつ、吸・放熱カプセルの粒子径に対するカプセル壁体の厚みの比率が2〜10%であることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の吸・放熱カプセル。
(6)フッ素系分散媒体と、該分散媒体に分散された前記(1)〜(5)のいずれかに記載の吸・放熱カプセルを含むことを特徴とする吸・放熱カプセル分散液。
(7)前記(6)に記載の吸・放熱カプセル分散液であって、相転移物質を分散液に対して10〜40質量%、かつ、フッ素系界面活性剤を相転移物質に対して2〜30質量%、グリコール系流動促進剤を相転移物質に対して10〜100質量%含有することを特徴とする上記吸・放熱カプセル分散液。
(8)前記(1)〜(5)のいずれかに記載の吸・放熱カプセルの製造方法であって、1段目マイクロカプセル化として硬化速度の速いウレタンモノマー又はウレタンプレポリマーにより界面活性剤の共存下でカプセル化壁を形成した後に、2段目マイクロカプセル化としてウレタンモノマー又はウレタンプレポリマーにより更なるカプセル化壁を形成することを特徴とする上記方法。
(9)前記1段目マイクロカプセル化として硬化速度の速いウレタンモノマー又はウレタンプレポリマーによりカプセル化壁を形成する際に、相転移物質に対して2〜50質量%の界面活性剤を含有させることを特徴する前記(8)に記載の吸・放熱カプセルの製造方法。
【0020】
前記(1)に記載の吸・放熱カプセルは、相転移物質として水酸化バリウム8水和物や水酸化ストロンチウム8水和物のような強塩基性の劇物を用いておらず、吸・放熱カプセルが破壊された場合に、分散液に劇物が溶出しない特徴を有している。また、水和水の脱離により融解・凝固の繰返し安定性の低い無機塩水和物を相転移物質として用いていないため、融解・凝固の繰返し耐久性に高い吸・放熱カプセルを得ることができる。更に、前記カプセル壁体として水硬化性のウレタンモノマー又はウレタンプレポリマーと分子内に水酸基を有するフッ素系ポリマーとを含有することにより、マイクロカプセル化壁に弾力性が生じ、マイクロカプセル化壁内の相転移物質の吸・放熱に伴う相転移物質の膨張・収縮に耐え、マイクロカプセル化壁の破壊が少ない吸・放熱カプセルを得ることができる。
【0021】
前記(2)に記載の吸・放熱カプセルによれば、水硬化性のウレタンモノマー又はウレタンプレポリマーと分子内に水酸基を有するフッ素系ポリマーとの質量比率を40/60から60/40に制御することで、より弾力の高いマイクロカプセル化壁とすることができる、また、マイクロカプセル化壁にフッ素系ポリマーを含有しているため、マイクロカプセル化壁とフッ素系溶媒の親和性が向上する。
【0022】
前記(3)に記載の吸・放熱カプセルによれば、封入物質として、水又は多価アルコール類を含有することにより、相転移物質と該相転移物質を分散するウレタンモノマー又はウレタンポリマー溶液の界面で重合反応が継続するため、確実にマイクロカプセル化した吸・放熱カプセルを得ることができる。封入物質として水を含有する場合は、相転移物質と該相転移物質を分散するウレタンモノマー又はウレタンポリマー溶液の界面で、水とイソシアネート基を有するウレタンモノマー又はウレタンポリマーが反応し、該ウレタンモノマー又はウレタンポリマーの末端がアミンとなり、該末端が別のウレタンモノマー又はウレタンポリマーと反応するため、該界面で重合反応が継続する。また、分子量が小さい水は重合反応中に速やかに該相転移物質の内部から該界面に移動できるため、該界面で重合反応が継続し、確実にマイクロカプセル化した吸・放熱カプセルを得ることができる。封入物質として多価アルコール類を含有する場合は、相転移物質と該相転移物質を分散するウレタンモノマー又はウレタンポリマー溶液の界面で、アルコール基とイソシアネート基を有するウレタンモノマー又はウレタンポリマーが反応し、該ウレタンモノマー又はウレタンポリマーの末端が水酸基となり、該末端が別のウレタンモノマー又はウレタンポリマーと反応するため、該界面で重合反応が継続する。
【0023】
前記(4)に記載の吸・放熱カプセルによれば、封入物質として、多価アルコール類であって分子量が小さいエチレングリコール、ジエチレングリコール又はグリセリンを含有することにより、これらは重合反応中に速やかに該相転移物質の内部から該界面に移動できるため、該界面で重合反応が継続し、確実にマイクロカプセル化した吸・放熱カプセルを得ることができる。
【0024】
前記(5)に記載の吸・放熱カプセルによれば、吸・放熱カプセルの粒子径が10〜50μmであるために、吸・放熱カプセル分散液を移送するポンプのメカニカルシールの隙間に侵入することのない吸・放熱カプセルを得ることができる。また吸・放熱カプセルの粒子径に対するカプセル壁体の厚みの比率が2〜10%であるために、マイクロカプセル化壁内の相転移物質の吸・放熱に伴う相転移物質の膨張・収縮に耐え、マイクロカプセル化壁の破壊が少ない吸・放熱カプセルを得ることができる。
【0025】
前記(6)に記載の吸・放熱カプセル分散液によれば、分散媒体に引火性のないフッ素系分散媒体を用いているので、引火性のない吸・放熱カプセル分散液を得ることができる。また、マイクロカプセル化壁にフッ素系ポリマーを含有しているため、マイクロカプセル化壁とフッ素系溶媒の親和性が向上し、フッ素系溶媒中で分散安定性の高い吸・放熱カプセル分散液を得ることができる。
【0026】
前記(7)に記載の吸・放熱カプセル分散液によれば、吸・放熱カプセル中に相転移物質を分散液に対して10〜40質量%、かつ、フッ素系界面活性剤を相転移物質に対して2〜30質量%、グリコール系流動促進剤を相転移物質に対して10〜100質量%含有することにより、マイクロカプセル化水溶性相転移物質粒子の凝集を防止し、水溶性相転移物質粒子の沈降が少なく安定化されたマイクロカプセル化水溶性相転移物質のフッ素系溶媒の分散液を得ることができる。
【0027】
前記(8)に記載の吸・放熱カプセルの製造方法によれば、吸・放熱カプセルの粒子径に対するカプセル壁体の厚みの比率を2〜10%とすることができるために、マイクロカプセル化壁内の相転移物質の吸・放熱に伴う相転移物質の膨張・収縮に耐え、マイクロカプセル化壁の破壊が少ない吸・放熱カプセルを提供することができる。
【0028】
前記(9)に記載の吸・放熱カプセルの製造方法によれば、硬化速度の速いウレタンモノマー又はウレタンプレポリマーによりカプセル化壁を形成する際に、相転移物質に対して2〜50質量%の界面活性剤を含有させているために、吸・放熱カプセルの合一が少ない吸・放熱カプセルを提供することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、吸・放熱カプセルの吸・放熱に伴う相転移物質の膨張・収縮に対してマイクロカプセル化壁の破壊が少なく、安全性の高いフッ素系溶媒中で分散安定性の高い吸・放熱カプセル及び吸・放熱カプセル分散液とその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施例7で得られた吸・放熱カプセルの光学顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の一実施形態について、以下のとおり説明する。
水硬化性のウレタンモノマー又はウレタンプレポリマーは、末端にイソシアネート基を有して、水と反応して重合反応を起こすものであれば特に限定されないが、トリレンジイソシナート(TDI)系のモノマーあるいはプレポリマー、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)系のモノマーあるいはプレポリマー、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)系のモノマーあるいはプレポリマー、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(HXDI)系のモノマーあるいはプレポリマーを例示できる。これらは単独で又は組み合わせて用いることができる。
【0032】
市販の水硬化型のウレタンのモノマーとしては、三井化学ポリウレタン製のコスモネートT65、T80、T100(TDI系)、コスモネートPH、M50、100、200、300(MDI系)、タケネート700(HDI系)、タケネート500(XDI系)、タケネート600(HXDI系)を例示できる。
【0033】
市販の水硬化型のウレタンのプレポリマーとしては、三井化学ポリウレタン製のオレスターM83−42MBP、M37−33J、M37−50SS、M75−50SS、タケネートM−417BA、M−408、M−402(TDI系)、タケネートM405−BA(MDI系)、タケネートM−631N(HDI系)、タケネートM−605N(HXDI系)を例示できる。
【0034】
上記のうち、1段目マイクロカプセル化に用いる硬化速度の速いウレタンモノマー又はウレタンプレポリマーとしては、室温(25℃)湿度60%雰囲気で2時間以下の硬化時間を有するウレタンのモノマー又はプレポリマーが好ましく、市販の水硬化型のウレタンのプレポリマーとしては、オレスターM83−42MBP、M37−33J、M37−50SS、M75−50SS、タケネートM−417BA、M−408を例示できる。
【0035】
上記のうち、2段目マイクロカプセル化に用いるウレタンモノマー又はウレタンプレポリマーとしては、その硬化速度は特に制限されないが、一般的には室温(25℃)湿度60%雰囲気で3時間以下の硬化時間を有するウレタンのモノマー又はプレポリマーが好ましく、市販の水硬化型のウレタンのプレポリマーとしては、タケネートM−402、M−405−BA、M−631N、M−605Nを例示できる。
【0036】
本発明におけるカプセル壁体を構成するマイクロカプセル化剤として使用するフッ素系ポリマーは、分子内に水酸基を有しており、炭素骨格に少なくとも1つのフッ素原子が結合しているポリマーであれば特に限定はされない。
【0037】
本発明で使用する分子内に水酸基を有するフッ素系ポリマーは、例えば、水酸基を有するフッ素系ビニルモノマーと水酸基を有さないビニルモノマーとを用いて共重合することによって製造することができる。
【0038】
水酸基を有するフッ素系ビニルモノマーとしては、CX2=CX1−Rf−CH2OHを挙げることができる。式中X、X1は同一又は異なり、水素原子又はフッ素原子、Rfは炭素数1〜40の2価の含フッ素アルキレン基、炭素数1〜40の含フッ素オキシアルキレン基、炭素数1〜40のエーテル結合を含む含フッ素アルキレン基又は炭素数1〜40のエーテル結合を含む含フッ素オキシアルキレン基を表す。
【0039】
水酸基を有するフッ素系ビニルモノマーとしては、より具体的には
CF2=CF−Rf1−CH2OH
を挙げることができる。式中、Rf1は炭素数1〜40の2価の含フッ素アルキレン基又はORf2、ただし、Rf2は炭素数1〜40の2価の含フッ素アルキレン基又は炭素数1〜40のエーテル結合を含む2価の含フッ素アルキレン基である。
【0040】
また、CF2=CFCF2−ORf3−CH2OH
を挙げることができる。式中、−Rf3は炭素数1〜39の2価の含フッ素アルキレン基又は炭素数1〜39のエーテル結合を含む2価の含フッ素アルキレン基を表わす。
【0041】
また、CH2=CFCF2−Rf4−CH2OH
を挙げることができる。式中、−Rf4は炭素数1〜39の2価の含フッ素アルキレン基、又はORf5(Rf5は炭素数1〜39の2価の含フッ素アルキレン基又は炭素数1〜39のエーテル結合を含む2価の含フッ素アルキレン基)を表わす。
【0042】
また、CH2=CH−Rf6−CH2OH
を挙げることができる。式中、Rf6は炭素数1〜40の2価の含フッ素アルキレン基である。
【0043】
一方、水酸基を有さないビニルモノマーとしては、フッ素系ビニルモノマー、例えばテトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニル、ビニリデンフルオライド、ヘキサフルオロプロピレン、ヘキサフルオロイソブテン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)類、CH2=CF−(CF2n−X、CH2=CH−(CF2n−X、(ただし、Xはいずれも水素原子、塩素原子又はフッ素原子、nは、いずれも1〜5の整数)が挙げられる。
【0044】
分子内に水酸基を有するフッ素系ポリマーとしては、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体が好ましい。
【0045】
本発明で使用する分子内に水酸基を有するフッ素系ポリマーは、過半量の水酸基を有さないフッ素系ビニルモノマーと少量の水酸基を有するビニルモノマーとを用いて共重合することによって製造することもできる。
【0046】
水酸基を有さないフッ素系ビニルモノマーとしては、フルオロオレフィン、例えばテトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン及びクロロトリフルオロエチレンが挙げられる。
【0047】
水酸基を有するビニルモノマーとしては、ヒドロキシアルキルビニルエーテルが挙げられる。ヒドロキシアルキルビニルエーテルは、アルキル鎖上に置換水酸基を含有するアルキルビニルエーテルである。アルキルビニルエーテルとしては、炭素数3〜8の直鎖状又は分岐状の脂肪族アルキルビニルエーテル、例えばメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル及び類似の低級アルキルビニルエーテルが挙げられる。
【0048】
分子内に水酸基を有するフッ素系ポリマーとしては、ヒドロキシアルキルビニルエーテルとフルオロオレフィンとの共重合体が好ましい。同様に、アルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、及びフルオロオレフィンエーテルの三元共重合体を含むフッ素系ポリマーも好ましい。フッ素系共重合体又は三元共重合体は、モル%基準で、フルオロオレフィン30%ないし70%と、ヒドロキシアルキルビニルエーテル単位を含むビニルエーテル単位30ないし70%を含み得る。ヒドロキシアルキルビニルエーテル単位は、通常、分子内に水酸基を有するフッ素系ポリマーの1モル%ないし30モル%を構成する。該分子内に水酸基を有するフッ素系ポリマーの水酸基価は通常2ないし200であり、好ましくは5ないし150である。適当な分子内に水酸基を有するフッ素系ポリマーは、アルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル及びトリフルオロエチレンの三元共重合体及びルミフロン(Lumiflon)ポリマー類として公知の市販されている共重合体である。
【0049】
米国特許第4,916,188号は、分子内に水酸基を有するフッ素系ポリマーが、モル%基準で45%ないし48%のフッ素系モノマー、1%ないし30%、好ましくは2%ないし5%のヒドロキシアルキルビニルエーテルモノマー、残量のアルキルビニルエーテルモノマーを含むものが好ましいことを述べている。このフッ素系ポリマーは、周囲温度で固体であり、約35℃よりも高い、好ましくは35℃ないし50℃の軟化点又はTg を有し、ASTM D 3016、D 3536−76及びD 3593−80によるGPC(ゲル浸透クロマトグラフィ)により測定される8,000ないし16,000、好ましくは10,000ないし14,000の数平均分子量を有する。そのような種類のフッ素系ポリマーも本発明に用いるのに適している。そのようなポリマーはルミフロンLF−200Dと称され、旭硝子株式会社より販売されている。
【0050】
分子内に水酸基を有するフッ素系ポリマーは、通常約8,000ないし約16,000、好ましくは約9,000ないし約13,000、更に好ましくは約10,000ないし約11,000の数平均分子量を有する。
【0051】
本発明に用いられる好ましい分子内に水酸基を有するフッ素系ポリマーは、旭硝子株式会社により製造されたルミフロンLF−710Fである。ルミフロンLF−710Fは水酸基価46±5、Tg 55、平均分子量10,000及び融点100℃を有する。ルミフロンLF−710Fは炭素及びフッ素の交互配列を有し、優れた耐候性能を示す。そのようなポリマーは水酸基及びカルボキシル基の両方を有する。
【0052】
前記フッ素系ポリマーは単独で又は組み合わせて用いることができるが、フッ素系界面活性剤の添加効果を高めるために、カプセル壁体を構成するマイクロカプセル化剤のうち、前記フッ素系ポリマーの配合量を10質量%〜90質量%とすることが好ましく、質量30%〜70質量%とすることがさらに好ましい。水硬化性のウレタンモノマー又はウレタンプレポリマーと分子内に水酸基を有するフッ素系ポリマーとの質量比率が40/60から60/40であることが好ましく、45/55から55/45であることがさらに好ましい。
【0053】
本発明の吸・放熱カプセル分散液においてフッ素系分散媒体として用いるフッ素系溶媒としては、炭素骨格に少なくとも1つのフッ素原子が結合している溶媒であれば特に限定されない。パーフルオロポリエーテル、パーフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテルなどを例示できる。これらのフッ素系溶媒は単独で使用しても差し支えないし、混合して使用しても差し支えない。フッ素系溶媒は、水又は水混和性有機溶媒に溶解する相転移物質の融解温度の低下も引き起こさず、吸・放熱カプセル分散液も引火性を有しない特徴を有しているため、吸・放熱カプセル分散液として好ましい。
【0054】
本発明における水又は水混和性有機溶媒に溶解する相転移物質(以下「水溶性相転移物質」という。)は、糖アルコール、尿素、チオ尿素のいずれかであれば特に限定されず、糖アルコールとしては、エリスリトール、スレイトール、キシリトール、ソルビトール、マルチトールなどの糖アルコール類を例示できる。
【0055】
相転移物質を溶解する水混和性有機溶媒としては、相転移物質である糖アルコール、尿素、チオ尿素を溶解する溶媒であれば特に限定されず、1価アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなど)、多価アルコール類(エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリンなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトンなど)及びエステル類(酢酸メチル、酢酸エチルなど)を例示できる。
【0056】
これらの水溶性相転移物質は、単独で使用しても差し支えないし、混合して使用しても差し支えない。また、融解点を調節するために、水又は相転移物質に溶解する物質を含んでも差し支えない。相転移物質に溶解する物質としては、相転移物質よりも融解温度が低く、相転移物質に相転移温度以上で溶解するものであれば特に限定されないが、1価アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなど)、多価アルコール類(エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリンなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトンなど)及びエステル類(酢酸メチル、酢酸エチルなど)を例示できる。
【0057】
マイクロカプセル化反応の開始剤となる封入物質として水又は多価アルコール類を水溶性相転移物質に添加することが好ましい。多価アルコール類としては、2価以上のアルコールであり、相転移物質に相転移温度以上で溶解するものであれば特に限定されないが、相転移物質中に拡散してマイクロカプセル化表面で、ウレタンモノマー又はプレポリマーと反応するために、分子量は大きくないほうが好ましく、エチレングリコール、ジエチレングリコール及びグリセリンを例示できる。
【0058】
水溶性相転移物質に添加するマイクロカプセル化反応の開始剤となる水又は多価アルコール類の量は、相転移物質に対して、1質量%〜20質量%が好ましく、5質量%〜15質量%がさらに好ましい。1質量%未満の場合は、融解温度調節の効果や重合開始剤の効果が発揮されず、20質量%を超える場合は、吸・放熱の有効物質である相転移物質の含有量が低下し好ましくない。
【0059】
相転移物質の相転移温度を調節する物質である相転移物質の凝固温度を調整する過冷却防止剤としては、相転移物質の融解温度より高融解温度を有し、相転移物質の凝固の際の種結晶となり得る物質であれば特に限定されない。
【0060】
過冷却防止剤としては、無機塩類、金属酸化物、金属、有機物などを例示し得る。
【0061】
無機塩類としては、相転移物質の融解温度より高融解温度を有する物質であれば特に限定されず、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、塩化マグネシウム、炭酸ナトリウム、ホウ砂などを例示できる。
【0062】
金属酸化物としては、酸化銅、酸化銀、酸化亜鉛、酸化ニッケル、アルミナ、チタニア、シリカ、ジルコニアなどの微細粒子を例示できる。
【0063】
金属としては、白金、金、銀、パラジウム、イリジウム、ルテニウム、ニッケルなどの微細粒子を例示できる。
【0064】
有機物としては、マンニトール、ペンタエリスリトールなどを例示できる。
【0065】
これらの過冷却防止剤は、単独で用いても良く、複数種類を併用してもかまわない。また、相転移物質の過冷却が大きくない場合は用いなくてもかまわない。過冷却防止剤の相転移物質に対する含有量は、0.1質量%〜10質量%が好ましい。0.1質量%未満の場合は、過冷却防止の効果が発揮されず、10質量%を超える場合は、吸・放熱の有効物質である相転移物質の含有量が低下し好ましくない。
【0066】
分散媒体には、吸・放熱カプセルの分散性を向上させるため、界面活性剤を含んでも構わない。本発明における界面活性剤は、特に限定されないが、各種公知の非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤を例示しうる。また、使用する界面活性剤は、1種類又は2種類以上の併用のいずれでもかまわない。
【0067】
非イオン性界面活性剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー等を例示できる。
【0068】
また、陰イオン性界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、ロジン石鹸、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテルのスルホコハク酸塩等を例示できる。
【0069】
また、陽イオン性界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、逆性石鹸等を例示できる。
【0070】
フッ素系媒体に分散させる界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤では、ヘキサフルオロプロペンオリゴマーのポリオキシエチレンエーテル、陰イオン性界面活性剤では、ヘキサフルオロプロペンオリゴマーのスルホン酸塩、ホスホン酸塩、カルボン酸塩、陽イオン性界面活性剤では、ヘキサフルオロプロペンオリゴマーが好ましい。
【0071】
本発明に用いられる好ましいフッ素系界面活性剤は、株式会社ネオス製のKB−L110、KB−L109及びKB−L115である。
【0072】
吸・放熱カプセル分散液の安全性の観点から、フッ素系溶媒分散液の安全性の観点から、添加するグリコール系流動促進剤は、引火点は高いほうが好ましく、その観点からは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールのエーテル又はエステルが好ましい。
【0073】
吸・放熱カプセル分散液の安定性の観点から、添加するグリコール系流動促進剤は、両末端水酸基がエーテル又はエステル結合した、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(DEG−MEEA)、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(DEG−MBuEA)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(TEG−DME)が特に好ましい。
【0074】
相転移物質粒子の表面にマイクロカプセル壁を形成する際の、水硬化性のウレタンモノマー又はウレタンプレポリマーを含有する溶媒に溶融した相転移物質を分散させる方法は、相転移物質のマイクロ粒子を形成できるものであれば特に限定されないが、微細な相転移物質粒子を得るために、ホモミキサーや高圧乳化機による乳化分散や膜乳化装置による分散方法が好ましい。
【0075】
ウレタンモノマー又はウレタンプレポリマーを溶解する溶媒は、ウレタンモノマー又はプレポリマーを溶解し、相転移物質をほとんど溶解しない溶媒であり、相転移物質の融点以上の沸点を有する溶媒であれば特に限定されないが、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ノナン、デカン、ドデカンなどの炭化水素溶媒を例示できる。
【0076】
相転移物質を水硬化性のウレタンモノマー又はウレタンプレポリマーを含有する溶媒に分散する場合に、相転移物質界面の界面張力を低下させ、相転移物質粒子を安定化させる界面活性剤を添加する必要は必ずしもないが、相転移物質粒子の合一、相転移物質粒子の粒子径を小さくするためには、相転移物質に対して、好ましくは2〜50質量%、さらに好ましくは5〜20質量%の界面活性剤を1段目のマイクロカプセル化時に含有させる。
【0077】
吸・放熱カプセルの粒子径は、分散液の安定性の観点からは小さく、吸・放熱カプセル分散液を移送するポンプのメカニカルシールの隙間に入り込まない観点からは、数10μm以上であることが好ましく、両方の観点から、好ましくは10〜50μm、さらに好ましくは15〜30μmの吸・放熱カプセルの粒子径が選択される。
【0078】
吸・放熱カプセルのカプセル壁体の厚みは、吸・放熱カプセルの強度の観点からは、厚いほうが好ましく、相転移物質をカプセル内に多く含む観点からは、薄いほうが好ましい。その両方の観点から、吸・放熱カプセル径に対するカプセル壁体の厚みの比率は、好ましくは2〜10%、さらに好ましくは5〜10%である。
【0079】
吸・放熱カプセル径に対するカプセル壁体の厚みの比率が2〜10%である吸・放熱カプセルを製造するには、相転移物質の融点以上の温度(スレイトールの場合は90℃)とした水硬化性のウレタンモノマー又はウレタンプレポリマーを含有する溶媒が温度維持され攪拌されている状態のところへ、溶融した相転移物質を添加することにより、相転移物質の分散と同時に、相転移物質の界面でウレタン化反応を促進する水又は多価アルコール類とウレタンモノマー又はウレタンプレポリマーを反応させてマイクロカプセル壁を形成させる。
【0080】
この1段目マイクロカプセル化のウレタンモノマー又はウレタンプレポリマーの溶媒中の濃度としては、ウレタンモノマー又はウレタンプレポリマーが溶媒に溶解していれば特に限定されないが、3〜30質量%の間で選択される。ウレタンモノマー又はウレタンプレポリマー濃度が低いとカプセル化壁の形成が十分でなく、濃度が高いとウレタンモノマー又はウレタンプレポリマーを含む溶媒全体がゲル化してしまう。吸・放熱カプセル径の合一を防ぎつつ、比較的短時間にマイクロカプセル化反応を行うには、溶媒中のウレタンモノマー又はウレタンプレポリマー濃度が10〜20質量%であることが特に好ましい。
【0081】
1段目マイクロカプセル化に使用するウレタンモノマー又はウレタンプレポリマーの硬化速度は速いので、1段目マイクロカプセル化反応時間は、10〜30分であることが好ましく、15〜25分であることがさらに好ましい。10分より反応時間が短いとカプセル化壁体の形成が十分でなく、30分より長いと時間を無駄に使用するだけでなく、未反応のウレタンモノマー又はウレタンプレポリマーが溶媒に溶解してきた水又は多価アルコール類により反応促進され、相転移物質界面以外で反応するため好ましくない。
【0082】
1段目マイクロカプセル化における吸・放熱カプセル径に対するカプセル壁体の厚みの比率は、2%以下であるが、2段目のマイクロカプセル化工程において、相転移物質粒子の合一を防止するには十分な厚みである。
【0083】
1段目マイクロカプセル化には、分散した相転移物質粒子を安定化させ、粒子の合一を防止するために、相転移物質に対して好ましくは2〜50質量%、さらに好ましくは5〜20質量%の界面活性剤を含む。
【0084】
2段目マイクロカプセル化に移行する前には、吸・放熱カプセルを濾過し、未反応のウレタンモノマー又はウレタンプレポリマーを分離し、新しく調製したウレタンモノマー又はウレタンプレポリマーを含む溶媒を1段目のマイクロカプセル化と同様に準備し、濾別した吸・放熱カプセルを溶媒中に再分散することが好ましい。
【0085】
この2段目マイクロカプセル化のウレタンモノマー又はウレタンプレポリマーの溶媒中の濃度としては、ウレタンモノマー又はウレタンプレポリマーが溶媒に溶解していれば特に限定されないが、好ましくは3〜15質量%、さらに好ましくは5〜12質量%の間で選択される。
【0086】
2段目マイクロカプセル化に使用するウレタンモノマー又はウレタンプレポリマーの2段目マイクロカプセル化反応時間は、30〜90分であることが好ましく、35〜45分であることがさらに好ましい。30分より反応時間が短いとカプセル化壁体の形成が十分でなく、90分より長いと時間を無駄に使用するだけでなく、未反応のウレタンモノマー又はウレタンプレポリマーが溶媒に溶解してきた水又は多価アルコール類により反応促進され、相転移物質界面以外で反応するため好ましくない。
【0087】
2段目マイクロカプセル化を行うことにより、吸・放熱カプセル径に対するカプセル壁体の厚みの比率が2%〜10%、好ましくは5%〜10%に増加し、マイクロカプセル化壁内の相転移物質の吸・放熱に伴う相転移物質の膨張・収縮に耐え得るようになる。
【0088】
2段目マイクロカプセル化には、粒子の合一を防止するために、相転移物質に対して2〜50質量%、好ましくは5〜20質量%の界面活性剤を含んでもよい。
【0089】
2段目マイクロカプセル化終了後に、吸・放熱カプセルを濾過し、未反応のウレタンモノマー又はウレタンプレポリマーを分離する。
【0090】
吸・放熱カプセルを分散媒体へ分散する場合、吸・放熱カプセル分散液に対する吸・放熱カプセル体積分率は、10体積%〜50体積%であることが好ましく、15体積%〜30体積%であることがさらに好ましい。10体積%未満の場合は、吸・放熱の有効物質である相転移物質の含有量が少なく、蓄熱媒体としての効果が小さく好ましくない。50体積%を超える場合は、吸・放熱カプセル分散液の粘度が著しく増加して好ましくない。
【0091】
吸・放熱カプセルをフッ素系溶媒に分散する場合、相転移物質を吸・放熱カプセル分散液に対して好ましくは10〜40質量%、さらに好ましくは15〜30質量%含有させる。10質量%未満の場合は、吸・放熱の有効物質である相転移物質の含有量が少なく、蓄熱媒体としての効果が小さく好ましくない。40質量%を超える場合は、吸・放熱カプセル分散液の粘度が著しく増加して好ましくない。
【0092】
吸・放熱カプセルをフッ素系溶媒に分散する場合、吸・放熱カプセルを安定化させるために、フッ素系界面活性剤を、相転移物質に対して好ましくは2〜30質量%、さらに好ましくは5〜20質量%含有させる。2質量%未満のフッ素系界面活性剤の添加量では、分散液の安定性が十分ではなく、30質量%を超えると、分散液に粘度が増大し好ましくない。
【0093】
吸・放熱カプセルのフッ素系溶媒の分散に、グリコール系流動促進剤を含有させても良い。グリコール系流動促進剤の添加量としては、相転移物質に対して、好ましくは10〜100質量%、さらに好ましくは20〜80質量%である。10質量%未満のグリコール系流動促進剤の添加量では、流動性の改善が十分ではなく、100質量%を超えると、分散液中の相転移物質の割合が低下し好ましくない。
【0094】
前記によれば、吸・放熱カプセルの吸・放熱に伴う相転移物質の膨張・収縮に対してマイクロカプセル化壁の破壊が少なく、安全性の高いフッ素系溶媒中で分散安定性の高い吸・放熱カプセル及び吸・放熱カプセル分散液とその製造方法を提供することができる。
【実施例】
【0095】
1.1段階カプセル化反応による吸・放熱カプセル及び吸・放熱カプセル分散液の製造
(実施例1)
モレキュラシーブ3A(ナカライテスク株式会社製)で脱水したトルエン(ナカライテスク株式会社製、試薬特級)に、トリレンジイソシアネート系のプレポリマーであるタケネートM−408(三井武田ケミカル株式会社製)及びフッ素系ポリマーであるルミフロンLF−710F(旭硝子株式会社製)を60質量%となるように調製したトルエン溶液90mlをホモジナイザーにて16000rpmで回転しつつ、90℃まで加熱し、マイクロカプセル化剤溶液容器に準備した。ここで、タケネートM−408とルミフロンLF−710Fの樹脂比率は50/50質量%とした。更に、フッ素系界面活性剤KB−L110(株式会社ネオス製)を50質量%となるように調製したトルエン溶液を調製し、6mlを樹脂トルエン溶液に添加した。一方、スレイトール(エーピーアイ・コーポレーション社製)にイオン交換水を10質量%となるように添加したもの10mlを、90℃まで加熱し、スレイトール溶融液を調製し、16000rpmで撹拌されている90℃に攪拌下で維持されたタケネートM−408、ルミフロンLF−710F、ならびにKB−L110が溶解しているトルエン溶液中に、スレイトール溶融液を約3分で流し入れた。スレイトール溶融液を流し入れた後も、タケネートM−408、ルミフロンLF−710F、ならびにKB−L110が溶解しているトルエン溶液は90℃に保ちつつ30分攪拌を継続し、マイクロカプセル化反応を完結させた。その後、マイクロカプセル化分散液を室温まで冷却し、パーフルオロカーボン(商品名「フロリナートFC3283」、住友スリーエム社製)を40ml添加し、2分間マグネチックスターラーで均一攪拌した。攪拌終了後、室温で30分静置して、上層にトルエン、下層にマイクロカプセル化された水溶性相転移物質の分散液63gを得た。このマイクロカプセル化水溶性相転移物質粒子のフッ素系溶媒分散液63g中には、パーフルオロカーボン39.6g、スレイトール13g、マイクロカプセル6.5g、フッ素系界面活性剤(KB−L110)3.9gを含有している。フッ素系溶媒に分散されたマイクロカプセル化された水溶性相転移物質粒子をレーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA−910(株式会社堀場製作所製)により測定し、体積平均径が5μmであることを確認した。吸・放熱カプセル粒子中に含有されるスレイトール量は、示差熱分析計DSC3100(株式会社マックサイエンス社製)により、加熱冷却を同一サンプルにて10回繰り返した融解潜熱量の変化をスレイトールの文献値と比較することにより求めた。吸・放熱カプセル粒子中には84質量%のスレイトールを含有し、10回加熱冷却を繰り返した後も82質量%のスレイトール含有率を示した。また、示差熱分析計DSC3100の測定結果より、吸・放熱カプセル中のスレイトールの融解温度は、70℃〜75℃と測定された。この吸・放熱カプセル分散液を、室温で24時間静置後に上層に分離したマイクロカプセル化粒子分散液を分離し、下層のフッ素系溶媒(パーフルオロカーボン)の質量を測定したところ10gであった。すなわち、分散液質量の16質量%が分離したことになる。
【0096】
(実施例2)
タケネートM−408とルミフロンLF−710Fの樹脂比率は40/60質量%とした以外は、実施例1の方法で、フッ素系溶媒分散液63gを得た。フッ素系溶媒に分散されたマイクロカプセル化された水溶性相転移物質粒子をレーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA−910(株式会社堀場製作所製)により測定し、体積平均径が5.5μmであることを確認した。吸・放熱カプセル粒子中に含有されるスレイトール量は、示差熱分析計DSC3100(株式会社マックサイエンス社製)により、加熱冷却を同一サンプルにて10回繰り返した融解潜熱量の変化をスレイトールの文献値と比較することにより求めた。吸・放熱カプセル粒子中には80質量%のスレイトールを含有し、10回加熱冷却を繰り返した後も79質量%のスレイトール含有率を示した。また、示差熱分析計DSC3100の測定結果より、吸・放熱カプセル中のスレイトールの融解温度は、70℃〜75℃と測定された。この吸・放熱カプセル分散液を、室温で24時間静置後に上層に分離したマイクロカプセル化粒子分散液を分離し、下層のフッ素系溶媒(パーフルオロカーボン)の質量を測定したところ7gであった。すなわち、分散液質量の11質量%が分離したことになる。
【0097】
(実施例3)
タケネートM−408とルミフロンLF−710Fの樹脂比率は60/40質量%とした以外は、実施例1の方法で、フッ素系溶媒分散液63gを得た。フッ素系溶媒に分散されたマイクロカプセル化された水溶性相転移物質粒子をレーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA−910(株式会社堀場製作所製)により測定し、体積平均径が5μmであることを確認した。吸・放熱カプセル粒子中に含有されるスレイトール量は、示差熱分析計DSC3100(株式会社マックサイエンス社製)により、加熱冷却を同一サンプルにて10回繰り返した融解潜熱量の変化をスレイトールの文献値と比較することにより求めた。吸・放熱カプセル粒子中には85質量%のスレイトールを含有し、10回加熱冷却を繰り返した後も83質量%のスレイトール含有率を示した。また、示差熱分析計DSC3100の測定結果より、吸・放熱カプセル中のスレイトールの融解温度は、70℃〜75℃と測定された。この吸・放熱カプセル分散液を、室温で24時間静置後に上層に分離したマイクロカプセル化粒子分散液を分離し、下層のフッ素系溶媒(パーフルオロカーボン)の質量を測定したところ16gであった。すなわち、分散液質量の25質量%が分離したことになる。
【0098】
(実施例4)
タケネートM−408とルミフロンLF−710Fの樹脂比率は20/80質量%とした以外は、実施例1の方法で、フッ素系溶媒分散液63gを得た。フッ素系溶媒に分散されたマイクロカプセル化された水溶性相転移物質粒子をレーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA−910(株式会社堀場製作所製)により測定し、体積平均径が5μmであることを確認した。吸・放熱カプセル粒子中に含有されるスレイトール量は、示差熱分析計DSC3100(株式会社マックサイエンス社製)により、加熱冷却を同一サンプルにて10回繰り返した融解潜熱量の変化をスレイトールの文献値と比較することにより求めた。吸・放熱カプセル粒子中には60質量%のスレイトールを含有し、10回加熱冷却を繰り返した後も50質量%のスレイトール含有率を示した。また、示差熱分析計DSC3100の測定結果より、吸・放熱カプセル中のスレイトールの融解温度は、70℃〜75℃と測定された。この吸・放熱カプセル分散液を、室温で24時間静置後に上層に分離したマイクロカプセル化粒子分散液を分離し、下層のフッ素系溶媒(パーフルオロカーボン)の質量を測定したところ5gであった。すなわち、分散液質量の8質量%が分離したことになる。
【0099】
(実施例5)
タケネートM−408とルミフロンLF−710Fの樹脂比率は80/20質量%とした以外は、実施例1の方法で、フッ素系溶媒分散液63gを得た。フッ素系溶媒に分散されたマイクロカプセル化された水溶性相転移物質粒子をレーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA−910(株式会社堀場製作所製)により測定し、体積平均径が5μmであることを確認した。吸・放熱カプセル粒子中に含有されるスレイトール量は、示差熱分析計DSC3100(株式会社マックサイエンス社製)により、加熱冷却を同一サンプルにて10回繰り返した融解潜熱量の変化をスレイトールの文献値と比較することにより求めた。吸・放熱カプセル粒子中には82質量%のスレイトールを含有し、10回加熱冷却を繰り返した後も77質量%のスレイトール含有率を示した。また、示差熱分析計DSC3100の測定結果より、吸・放熱カプセル中のスレイトールの融解温度は、70℃〜75℃と測定された。この吸・放熱カプセル分散液を、室温で24時間静置後に上層に分離したマイクロカプセル化粒子分散液を分離し、下層のフッ素系溶媒(パーフルオロカーボン)の質量を測定したところ25gであった。すなわち、分散液質量の40質量%が分離したことになる。
【0100】
(実施例6)
相転移物質として、スレイトール(エーピーアイ・コーポレーション社製)10gを使用した。1段目マイクロカプセル化反応には、スレイトールに対し60質量%のマイクロカプセル化剤6g(トリレンジイソシアネート系のプレポリマーであるタケネートM−408(三井武田ケミカル株式会社製)3g、フッ素系ポリマーであるルミフロンLF−710F(旭硝子株式会社製)3g)、スレイトールに対し5質量%のフッ素系界面活性剤KB−L110(株式会社ネオス製)0.5gをマイクロカプセル化剤の濃度が16質量%となるようにモレキュラシーブ3A(ナカライテスク株式会社製)で脱水したトルエン(ナカライテスク株式会社製、試薬特級)31.5gに溶解したトルエン溶液38gを、ホモジナイザーにて16000rpmで回転しつつ、90℃まで加熱した。一方、スレイトール10gにイオン交換水1g(10質量%)を添加したもの11gを、90℃まで加熱し、スレイトール溶融液を調製し、16000rpmで撹拌されている90℃に攪拌下で維持された上記トルエン溶液38g中に添加した。トルエン溶液は90℃に保ちつつ20分攪拌を継続し、1段目のマイクロカプセル化反応を完結させた。反応終了後、反応液を室温まで急冷し、デカンテーションにて吸・放熱カプセルから未反応のマイクロカプセル化剤を含むトルエン溶液を分離した。
【0101】
乾燥した吸・放熱カプセルは、光学顕微鏡で観察し、粒子径が20μm程度の球形粒子であることを確認した。吸・放熱カプセル粒子中に含有される相転移物質のスレイトール量は、示差熱分析計DSC3100(株式会社マックサイエンス社製)により、融解潜熱量及び融解温度を測定した。吸・放熱カプセルの融解潜熱量からカプセル中に97質量%のスレイトールが含有され、カプセル壁体厚みは0.15μmと計算され、吸・放熱カプセル径20μm(半径10μm)に対し、1.5%のカプセル壁体の厚み比率となった。2回の吸・放熱サイクルの繰返し後、吸・放熱カプセルの一部が、合一しており、十分にカプセル壁が形成できていないと推察された。また、示差熱分析計DSC3100の測定結果より、吸・放熱カプセル中のスレイトールの融解温度は、87℃と測定された。
【0102】
(比較例1)
タケネートM−408とルミフロンLF−710Fの樹脂比率は0/100質量%とした以外は、実施例1の方法で、フッ素系溶媒分散液63gを得ようと試みたが、フッ素系溶媒に分散されたマイクロカプセル化された水溶性相転移物質粒子を得ることはできず、マイクロカプセル化剤、水溶性相転移物質が合一した塊を得た。
【0103】
(比較例2)
タケネートM−408とルミフロンLF−710Fの樹脂比率は100/0質量%とした以外は、実施例1の方法で、フッ素系溶媒分散液63gを得た。フッ素系溶媒に分散されたマイクロカプセル化された水溶性相転移物質粒子をレーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA−910(株式会社堀場製作所製)により測定し、体積平均径が4μmであることを確認した。吸・放熱カプセル粒子中に含有されるスレイトール量は、示差熱分析計DSC3100(株式会社マックサイエンス社製)により、加熱冷却を同一サンプルにて10回繰り返した融解潜熱量の変化をスレイトールの文献値と比較することにより求めた。吸・放熱カプセル粒子中には80質量%のスレイトールを含有し、10回加熱冷却を繰り返した後も75質量%のスレイトール含有率を示した。また、示差熱分析計DSC3100の測定結果より、吸・放熱カプセル中のスレイトールの融解温度は、70℃〜75℃と測定された。この吸・放熱カプセル分散液を、室温で24時間静置後に上層に分離したマイクロカプセル化粒子分散液を分離し、下層のフッ素系溶媒(パーフルオロカーボン)の質量を測定したところ32gであった。すなわち、分散液質量の51質量%が分離したことになる。
【0104】
これらの実施例1〜5及び比較例1〜2の結果を表1にまとめるが、内部に水溶性相転移物質を含有する吸・放熱カプセルにおいて、カプセル壁体として、水硬化性のウレタンモノマー又はウレタンプレポリマーと分子内に水酸基を有するフッ素系ポリマーとを含有する場合、吸・放熱カプセルの吸・放熱に伴う相転移物質の膨張・収縮に対して、吸・放熱カプセル内の水溶性相転移物質の減少量が少なく、安全性の高いフッ素系溶媒中でフッ素系溶媒の分離量が減少した。
【0105】
【表1】

【0106】
2.2段階カプセル化反応による吸・放熱カプセル及び吸・放熱カプセル分散液の製造
吸・放熱カプセルの製造
(実施例7)
<1段目マイクロカプセル化反応>
1回の吸・放熱カプセルの調製に、相転移物質として、スレイトール(エーピーアイ・コーポレーション社製)10gを使用した。1段目マイクロカプセル化反応には、スレイトールに対し60質量%のマイクロカプセル化剤6g(トリレンジイソシアネート系のプレポリマーであるタケネートM−408(三井武田ケミカル株式会社製)3g、フッ素系ポリマーであるルミフロンLF−710F(旭硝子株式会社製)3g)、スレイトールに対し5質量%のフッ素系界面活性剤KB−L110(株式会社ネオス製)0.5gをマイクロカプセル化剤の濃度が16質量%となるようにモレキュラシーブ3A(ナカライテスク株式会社製)で脱水したトルエン(ナカライテスク株式会社製、試薬特級)31.5gに溶解したトルエン溶液38gを、ホモジナイザーにて16000rpmで回転しつつ、90℃まで加熱した。一方、スレイトール10gにイオン交換水1g(10質量%)を添加したもの11gを、90℃まで加熱し、スレイトール溶融液を調製し、16000rpmで撹拌されている90℃に攪拌下で維持された上記トルエン溶液38g中に添加した。トルエン溶液は90℃に保ちつつ20分攪拌を継続し、1段目のマイクロカプセル化反応を完結させた。反応終了後、反応液を室温まで急冷し、デカンテーションにて吸・放熱カプセルから未反応のマイクロカプセル化剤を含むトルエン溶液を分離した。
【0107】
<2段目マイクロカプセル化反応>
2段目マイクロカプセル化反応には、スレイトールに対し60質量%のマイクロカプセル化剤6g(1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン系のプレポリマーであるタケネートM−605Nを3g、ルミフロンLF−710Fを3g)、スレイトールに対し5質量%のフッ素系界面活性剤(KB−L110)0.5gをマイクロカプセル化剤の濃度が10質量%となるようにモレキュラシーブ3Aで脱水したトルエン54gに溶解したトルエン溶液60.5gを、ホモジナイザーにて16000rpmで回転しつつ、90℃まで加熱した。一方、1段目マイクロカプセル化で得られた上記吸・放熱カプセルを、16000rpmで撹拌されている90℃に攪拌下で維持された上記トルエン溶液60.5g中に添加した。トルエン溶液は90℃に保ちつつ40分攪拌を継続し、2段目のマイクロカプセル化反応を完結させた。反応終了後、反応液を室温まで急冷し、デカンテーションにて吸・放熱カプセルから未反応のマイクロカプセル化剤を含むトルエン溶液を分離した。分離した吸・放熱カプセルは、モレキュラシーブ3Aで脱水したトルエン50gで洗浄し、未反応のマイクロカプセル化剤を完全に除去し、室温減圧にて溶剤であるトルエンを除去し乾燥した吸・放熱カプセルを得た。
【0108】
乾燥した吸・放熱カプセルは、光学顕微鏡で観察し、図1に示すように、粒子径が20μm程度の球形粒子であることを確認した。吸・放熱カプセル粒子中に含有される相転移物質のスレイトール量は、示差熱分析計DSC3100(株式会社マックサイエンス社製)により、融解潜熱量及び融解温度を測定した。吸・放熱カプセルの融解潜熱量からカプセル中に82質量%のスレイトールが含有され、カプセル壁体厚みは0.92μm、すなわち、吸・放熱カプセル径20μm(半径10μm)に対し、9.2%のカプセル壁体の厚み比率となった。2回の吸・放熱サイクルの繰返し後、吸・放熱カプセルは、球形の形状を維持していた。また、示差熱分析計DSC3100の測定結果より、吸・放熱カプセル中のスレイトールの融解温度は、88℃と測定された。
【0109】
(実施例8)
1段目マイクロカプセル化反応において、スレイトールに対し60質量%のマイクロカプセル化剤6g(タケネートM−408を3g、ルミフロンLF−710Fを3g)、スレイトールに対し5質量%のフッ素系界面活性剤(KB−L110)0.5gをマイクロカプセル化剤の濃度が5質量%となるようにモレキュラシーブ3Aで脱水したトルエン114gに溶解した以外は実施例7と同じ操作を行った。
【0110】
乾燥した吸・放熱カプセルは、光学顕微鏡で観察し、粒子径が20μm程度の球形粒子であることを確認した。吸・放熱カプセル粒子中に含有される相転移物質のスレイトール量は、示差熱分析計DSC3100(株式会社マックサイエンス社製)により、融解潜熱量及び融解温度を測定した。吸・放熱カプセルの融解潜熱量からカプセル中に94質量%のスレイトールが含有され、カプセル壁体厚みは0.27μm、すなわち、吸・放熱カプセル径20μm(半径10μm)に対し、2.7%のカプセル壁体の厚み比率となった。2回の吸・放熱サイクルの繰返し後、吸・放熱カプセルは、球形の形状を維持していた。また、示差熱分析計DSC3100の測定結果より、吸・放熱カプセル中のスレイトールの融解温度は、88℃と測定された。
【0111】
(実施例9)
2段目マイクロカプセル化反応において、スレイトールに対し60質量%のマイクロカプセル化剤6g(タケネートM−605Nを3g、ルミフロンLF−710Fを3g)、スレイトールに対し5質量%のフッ素系界面活性剤(KB−L110)0.5gをマイクロカプセル化剤の濃度が5質量%となるようにモレキュラシーブ3Aで脱水したトルエン114gに溶解した以外は実施例7と同じ操作を行った。
【0112】
乾燥した吸・放熱カプセルは、光学顕微鏡で観察し、粒子径が20μm程度の球形粒子であることを確認した。吸・放熱カプセル粒子中に含有される相転移物質のスレイトール量は、示差熱分析計DSC3100(株式会社マックサイエンス社製)により、融解潜熱量及び融解温度を測定した。吸・放熱カプセルの融解潜熱量からカプセル中に84質量%のスレイトールが含有され、カプセル壁体厚みは0.81μm、すなわち、吸・放熱カプセル径20μm(半径10μm)に対し、8.1%のカプセル壁体の厚み比率となった。2回の吸・放熱サイクルの繰返し後、吸・放熱カプセルは、球形の形状を維持していた。また、示差熱分析計DSC3100の測定結果より、吸・放熱カプセル中のスレイトールの融解温度は、87℃と測定された。
【0113】
(実施例10)
2段目マイクロカプセル化反応において、スレイトールに対し5質量%のフッ素系界面活性剤(KB−L110)0.5gを添加しない以外は、実施例7と同じ操作を行った。
【0114】
乾燥した吸・放熱カプセルは、光学顕微鏡で観察し、粒子径が20μm程度の球形粒子であることを確認した。吸・放熱カプセル粒子中に含有される相転移物質のスレイトール量は、示差熱分析計DSC3100(株式会社マックサイエンス社製)により、融解潜熱量及び融解温度を測定した。吸・放熱カプセルの融解潜熱量からカプセル中に88質量%のスレイトールが含有され、カプセル壁体厚みは0.58μm、すなわち、吸・放熱カプセル径20μm(半径10μm)に対し、5.8%のカプセル壁体の厚み比率となった。2回の吸・放熱サイクルの繰返し後、吸・放熱カプセルは、球形の形状を維持していた。また、示差熱分析計DSC3100の測定結果より、吸・放熱カプセル中のスレイトールの融解温度は、87℃と測定された。
【0115】
(実施例11)
スレイトール10gにカプセル化反応の促進剤として、イオン交換水1g(10質量%)の代わりにジエチレングリコール(DEG)1g(10質量%)とし、1段目マイクロカプセル化反応時間を120分、2段目マイクロカプセル化反応時間を120分に変更した以外は、実施例7と同じ操作を行った。
【0116】
乾燥した吸・放熱カプセルは、光学顕微鏡で観察し、粒子径が20μm程度の球形粒子であることを確認した。吸・放熱カプセル粒子中に含有される相転移物質のスレイトール量は、示差熱分析計DSC3100(株式会社マックサイエンス社製)により、融解潜熱量及び融解温度を測定した。吸・放熱カプセルの融解潜熱量からカプセル中に84質量%のスレイトールが含有され、カプセル壁体厚みは0.80μm、すなわち、吸・放熱カプセル径20μm(半径10μm)に対し、8.0%のカプセル壁体の厚み比率となった。2回の吸・放熱サイクルの繰返し後、吸・放熱カプセルは、球形の形状を維持していた。また、示差熱分析計DSC3100の測定結果より、吸・放熱カプセル中のスレイトールの融解温度は、72℃と測定された。
【0117】
(比較例3)
1段目マイクロカプセル化反応にマイクロカプセル化剤として、フッ素系ポリマーであるルミフロンLF−710Fを含まず、トリレンジイソシアネート系のプレポリマーであるタケネートM−408だけで6g、2段目マイクロカプセル化反応にマイクロカプセル化剤として、フッ素系ポリマーであるルミフロンLF−710Fを含まず、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン系のプレポリマーであるタケネートM605Nだけで6gとした以外は、実施例7と同じ操作を行った。
【0118】
分離した吸・放熱カプセルを、モレキュラシーブ3Aで脱水したトルエン50gで洗浄したところ、吸・放熱カプセルは凝集し、大きな塊となり、粒子径が10〜50μmの吸・放熱カプセルは形成していなかった。
【0119】
(比較例4)
1段目マイクロカプセル化反応において、スレイトールに対し5質量%のフッ素系界面活性剤(KB−L110)0.5gを添加しない以外は、実施例7と同じ操作を行った。
【0120】
乾燥した吸・放熱カプセルは、光学顕微鏡で観察し、粒子径が20μm程度の球形粒子であることを確認した。吸・放熱カプセル粒子中に含有される相転移物質のスレイトール量は、示差熱分析計DSC3100(株式会社マックサイエンス社製)により、融解潜熱量及び融解温度を測定した。吸・放熱カプセルの融解潜熱量からカプセル中に100質量%のスレイトールが含有され、カプセル壁体厚みは0μmと計算され、吸・放熱カプセル径20μm(半径10μm)に対し、0%のカプセル壁体の厚み比率となった。2回の吸・放熱サイクルの繰返し後、吸・放熱カプセルは、合一して大きな塊となり、十分にカプセル壁が形成できていないと推察された。また、示差熱分析計DSC3100の測定結果より、吸・放熱カプセル中のスレイトールの融解温度は、87℃と測定された。
【0121】
(比較例5)
1段目マイクロカプセル化反応において、マイクロカプセル化剤である硬化時間の速いトリレンジイソシアネート系のプレポリマーであるタケネートM−408に代えて、硬化時間の遅い1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン系のプレポリマーであるタケネートM−605Nを用い、1段目マイクロカプセル化反応時間を20分から60分に延長した以外は、実施例7と同じ操作を行った。
【0122】
2段目マイクロカプセル化反応の終了時点で反応溶液全体にゲル化が見られ、吸・放熱カプセルを得ることはできなかった。
【0123】
以上の実施例7〜11について、相転移物質(PCM)の種、カプセル化反応の促進剤種、添加量、1段目及び2段目のマイクロカプセル化反応におけるカプセル化剤種とフッ素系ポリマー比率、反応温度、反応時間、カプセル化剤添加量、カプセル化剤のトルエン溶液中濃度、界面活性剤の添加量、吸・放熱カプセルの直径、カプセル壁厚み、カプセル壁比率、相転移物質(PCM)の含有率、相転移物資(PCM)の融解温度、2回の吸・放熱サイクル実施後のカプセル壁の維持を表2に示す。同じように、実施例6及び7と比較例3〜5について表3に示す。
【0124】
【表2】

【0125】
【表3】

【0126】
吸・放熱カプセル分散液の製造
(実施例12)
実施例7で調製した吸・放熱カプセル11.9g(相転移物質で10g)にパーフルオロカーボン(フロリナートFC3283、住友スリーエム社製)を56g(相転移物質に対し5.6倍)、フッ素系界面活性剤KB−L110(株式会社ネオス製)を1.25g(相転移物質に対し12.5質量%)、グリコール系流動促進剤として、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(DEG−MBuEA)5g(相転移物質に対し50質量%)を常温にて添加攪拌し、吸・放熱カプセル分散液75.15gを調製した。吸・放熱カプセル分散液に含まれる相転移物質の含有量は13.3質量%となる。分散媒体であるパーフルオロカーボン(フロリナートFC3283)の密度は、1.82g/cmであるので、吸・放熱カプセル分散液に含まれる相転移物質の体積分率はおよそ20体積%となる。
【0127】
このように調製した吸・放熱カプセル分散液を無攪拌条件下で、90℃で30分加熱後に室温まで放置冷却の繰返し吸・放熱サイクルを10回実施した後に、分散状態を確認したところ、比重差が大きいため静置状態では2相分離していたが、攪拌を加えると元の分散状態に復帰した。吸・放熱サイクルを10回実施後の吸・放熱カプセルを示差熱分析計DSC3100により、融解潜熱及び融解温度を測定したところ、吸・放熱カプセルの融解潜熱量からカプセル中に83質量%のスレイトールが含有され、スレイトールの融解温度は88℃と測定され、吸・放熱サイクルを実施する前の値をほぼ維持していた。
【0128】
(実施例13)
フッ素系界面活性剤KB−L110を吸・放熱カプセル11.9g(相転移物質で10g)に対して、0.5g(相転移物質に対し5質量%)とした以外は、実施例12と同じ方法で吸・放熱カプセル分散液を調製し、同様の吸・放熱サイクルを実施した。
【0129】
吸・放熱サイクルを10回実施後において、静置状態では2相分離していたが、攪拌を加えると元の分散状態に復帰した。また、吸・放熱カプセルの融解潜熱量からカプセル中に83質量%のスレイトールが含有され、スレイトールの融解温度は87℃と測定され、吸・放熱サイクルを実施する前の値をほぼ維持していた。
【0130】
(比較例6)
フッ素系界面活性剤KB−L110を吸・放熱カプセル11.9g(相転移物質で10g)に対して、添加しなかった以外は、実施例12と同じ方法で吸・放熱カプセル分散液を調製し、同様の吸・放熱サイクルを実施した。
【0131】
吸・放熱サイクルを10回実施後において、静置状態で2相分離し、攪拌を加えても元の分散状態に戻らなかった。
【0132】
(比較例7)
フッ素系界面活性剤KB−L110を吸・放熱カプセル11.9g(相転移物質で10g)に対して、5g(相転移物質に対し50質量%)とした以外は、実施例12と同じ方法で吸・放熱カプセル分散液を調製したが、非常に高粘度で流動性のない分散液が得られた。
【0133】
(比較例8)
グリコール系流動促進剤として、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(DEG−MBuEA)を吸・放熱カプセル11.9g(相転移物質で10g)に対して、添加しなかった以外は、実施例12と同じ方法で吸・放熱カプセル分散液を調製したが、非常に高粘度で流動性のない分散液が得られた。
【0134】
実施例12、13及び比較例6〜8について、吸・放熱カプセル種及び分散液に対する相転移物質(PCM)の含有量(質量%)、界面活性剤種及び添加量、流動促進剤種及び添加量、10回吸・放熱サイクル後の攪拌時の分散状態、サイクル前後の吸・放熱カプセルの相転移物質含有量を表4に示す。
【0135】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0136】
本発明の吸・放熱カプセル及び吸・放熱カプセル分散液の用途としては、自動車エンジンや燃料電池の冷却液媒体、蓄熱システムの熱移送媒体などの用途が挙げられる。従来の熱移送媒体に比較して、単位体積当りの見掛け比熱が大きいため、媒体の循環流量を小さくすることができ、省エネルギーに貢献できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に密閉空間を形成する膜状のカプセル壁体と、該カプセル壁体の該密閉空間に封入された封入物質としての、水又は水混和性有機溶媒に溶解する相転移物質とを備えた吸・放熱カプセルであって、かつ、前記封入物質として、糖アルコール、尿素及びチオ尿素の少なくとも1つからなる相転移物質を含有する吸・放熱カプセルにおいて、前記カプセル壁体として、水硬化性のウレタンモノマー又はウレタンプレポリマーと分子内に水酸基を有するフッ素系ポリマーとを含有することを特徴とする吸・放熱カプセル。
【請求項2】
前記カプセル壁体の水硬化性のウレタンモノマー又はウレタンプレポリマーと分子内に水酸基を有するフッ素系ポリマーとの質量比率が40/60から60/40であることを特徴とする請求項1に記載の吸・放熱カプセル。
【請求項3】
前記封入物質として水又は多価アルコール類を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の吸・放熱カプセル。
【請求項4】
前記多価アルコール類がエチレングリコール、ジエチレングリコール及びグリセリンの少なくとも1つからなることを特徴とする請求項3に記載の吸・放熱カプセル。
【請求項5】
前記吸・放熱カプセルの粒子径が10〜50μmであり、かつ、吸・放熱カプセルの粒子径に対するカプセル壁体の厚みの比率が2〜10%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の吸・放熱カプセル。
【請求項6】
フッ素系分散媒体と、該分散媒体に分散された請求項1〜5のいずれか1項に記載の吸・放熱カプセルを含むことを特徴とする吸・放熱カプセル分散液。
【請求項7】
請求項6に記載の吸・放熱カプセル分散液であって、相転移物質を分散液に対して10〜40質量%、かつ、フッ素系界面活性剤を相転移物質に対して2〜30質量%、グリコール系流動促進剤を相転移物質に対して10〜100質量%含有することを特徴とする上記吸・放熱カプセル分散液。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の吸・放熱カプセルの製造方法であって、1段目マイクロカプセル化として硬化速度の速いウレタンモノマー又はウレタンプレポリマーにより界面活性剤の共存下でカプセル化壁を形成した後に、2段目マイクロカプセル化としてウレタンモノマー又はウレタンプレポリマーにより更なるカプセル化壁を形成することを特徴とする上記方法。
【請求項9】
前記1段目マイクロカプセル化として硬化速度の速いウレタンモノマー又はウレタンプレポリマーによりカプセル化壁を形成する際に、相転移物質に対して2〜50質量%の界面活性剤を含有させることを特徴する請求項8に記載の吸・放熱カプセルの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−168538(P2010−168538A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−217731(P2009−217731)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】