説明

吸入用カプセル

【課題】有効成分が充分に安定であることを保証する、チオトロピウムを含有する吸入可能な粉末を含有する吸入用カプセルを提供すること。
【解決手段】本発明は、有効成分チオトロピウムを粉末製剤の形態で含有し、安定性を向上させたことを特徴とする、湿分を低減した特定のカプセル材料から製造される吸入用カプセル(インハレット)に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿分含有量を減少させた特定のカプセル材料から構成される吸入用カプセル(インハレット(inhalettes))であって、有効成分チオトロピウムを粉末化製剤の形態で含有し、安定性を増大させたことを特徴とする前記吸入用カプセルに関する。
【背景技術】
【0002】
チオトロピウムブロミドは、欧州特許出願EP 418 716 A1から公知であり、以下の化学構造を有する:
【0003】
【化1】

【0004】
チオトロピウムブロミドは、非常に効果的な持続性抗コリン剤であり、呼吸器系疾患、特にCOPD(慢性閉塞性肺疾患)及び喘息の治療に使用することが出来る。チオトロピウムとは、遊離のアンモニウムカチオンを意味する。
上述の疾患を治療するとき、有効成分を吸入により投与するのが便利である。計量化エアゾール及び溶液の形態で気管支を介して吸入することにより有効成分の化合物を投与することに加えて、これらの薬剤もまた有効成分を含有する吸入可能な粉末の形態で投与することもできる。
特に効力の高い有効成分の場合、治療上所望の効果を達成するには単回投与あたり必要とされる有効成分の量は少量である。そのような場合、有効成分は適当な賦形剤で希釈して吸入可能な製剤を調製すべきである。特に効力の高いことを特徴とする有効成分の場合、投与される量が再現可能に一定であることを確実にするよう、安定性の高いことを特徴とする形態で医薬組成物を製造することが重要である。高度の安定性が達成されないと、有効成分の均一な投与を保証できない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、有効成分が充分に安定であることを保証する、チオトロピウムを含有する吸入可能な粉末を含有する吸入用カプセルを提供することである。
本発明の目的はまた、安定性により、非常に正確に計量された(製造業者により各カプセルに充填された有効成分及び粉末混合物の量及び吸入過程及び肺への送達において各カプセルにより放出される有効成分の量に関する)有効成分が確実に放出される吸入用カプセルを提供することである。
本発明の目的はまた、カプセルを完全に空にしながら有効成分を確実に投与する吸入用カプセルを提供することである。
本発明の目的はまた、安定性が良好で脆性の低い、良好な穿孔(perforation)特性を有する吸入用カプセルであって、それ故、インハレットを投与するために設計された吸入器で、いかなる問題もなく使用できる吸入用カプセルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
驚くべきことに、上述の問題は、以下に説明する本発明の吸入用カプセル(インハレット)により解決できることを見出した。
本発明の吸入用カプセルは、吸入可能な粉末として、医薬的に許容できる賦形剤と混合したチオトロピウムを含有するカプセルであって、カプセル材料の湿分含有率を低減したことを特徴とするカプセルである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の範囲において、“湿分含有率(moisture content)を低減させた”とは、15%未満のTEWS湿分レベルと同等であることを意味する。
本発明の範囲において、用語“TEWS湿分レベル”は、TEWS製MW2200湿分測定装置を使用して測定することのできる湿分レベルを意味する。使用する測定方法は、間接的な方法である。水分含有率(water content)に由来する活性度(製品に含まれる水によるマイクロ波吸収)を測定し、マイクロ波値として示す。水分含有率を重量%で測定するのに、較正サンプルを使用して装置を較正しなければならない。得られる較正曲線を、計算のための、次の測定において装置で使用する。湿分レベルは%で得られ、メモリー中に保存される。
【0008】
例えば、ハロゲンドライヤー(halogen drier)を使用して本発明の範囲内でTEWS装置を較正することができる。TEWS装置は、本発明の範囲内でハロゲンドライヤーを使用して較正するため、TEWS湿分レベルの概念は、ハロゲンドライヤー湿分レベルの概念と同等とみなすことができる。例えば、本発明の範囲内で、15% TEWS湿分含有率は、15%のハロゲンドライヤー湿分含有率に相当する。TEWS装置が水分含有率を測定する相対的な方法を示すのに対し、その操作の態様により、ハロゲンドライヤーは、カプセル湿分含有率の絶対値を与える。水分含有率は、ハロゲンドライヤーにおける重量損失により測定される。水を逃がしながら、カプセルを加熱する。重量が一定になるまでカプセルを乾燥し、結果を読み取る。出発重量と最終重量との質量差(g)が、カプセルの水分含有率を示し、重量%に変換することができる。水分含有率を測定するとき、TEWS装置は単に、実際のカプセルの測定曲線と内部較正曲線とを比較しているにすぎない。これらの較正曲線は、ハロゲンドライヤー法を使用して予め絶対水分含有率を測定した、規定量の水分含有率を有するカプセルを使用して記録する。このようにして、ハロゲンドライヤー法の助けを借り、TEWS相対法に関し絶対水分含有率との相関を確立する。
【0009】
本発明の吸入用カプセルは、TEWS又はハロゲンドライヤー湿分含有率が12%未満、特に10%以下であるのが好ましい。
“カプセル材料”とは、本発明の範囲内で、吸入用カプセルシェルを製造し得る材料を意味する。本発明のカプセル材料は、ゼラチン、セルロース誘導体、スターチ、スターチ誘導体、キトサン及び合成プラスチックから選ばれる。
カプセル材料としてゼラチンを使用する場合、以下から選ばれる他の添加剤との混合物の形態で使用することができる:ポリエチレングリコール(PEG)、好ましくはPEG 3350、グリセロール、ソルビトール、プロピレングリコール、PEO-PPOブロックコポリマー及び他の多価アルコール及びポリエーテル。本発明の範囲内において、ゼラチンを、PEG、好ましくはPEG 3350との混合物の形態で使用するのが特に好ましい。本発明のゼラチンカプセルは、PEGを1-10% (wt.-%)、好ましくは3-8 %の量で含有するのが好ましい。特に、ゼラチンカプセルが、PEGを4-6%の量で含有するのが好ましく、PEG含有量が約5%であるのが最も好ましい。
ゼラチン含有カプセル材料の場合、本発明のカプセルは、12%未満のTEWS又はハロゲンドライヤー湿分含有率を有するのが好ましく、10%以下のTEWS又はハロゲンドライヤー湿分含有率を有するのが特に好ましい。
【0010】
カプセル材料としてセルロース誘導体を使用する場合、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース又はヒドロキシエチルセルロースを使用するのが好ましい。この場合、ヒドロキシプロピルメチルセルロース (HPMC)、特にHPMC 2910 をカプセル材料として使用するのが好ましい。セルロース誘導体をカプセル材料として使用するとき、TEWS又はハロゲンドライヤー湿分含有率のレベルは、8%未満であるのが好ましく、5%未満であるのが特に好ましい。チオトロピウムを含有する吸入可能な粉末で充填する前に、セルロース誘導体を含有する吸入用カプセルを乾燥して、TEWS又はハロゲンドライヤー湿分含有率を4%未満、特に好ましくは2%未満にしたものが最も好ましい。
カプセル材料として合成プラスチックを使用する場合、合成プラスチックは、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリプロピレン及びポリエチレンテレフタレートから選ばれるのが好ましい。本発明の吸入用カプセルとして特に好ましい合成プラスチックは、ポリエチレン、ポリカーボネート又はポリエチレンテレフタレートである。ポリエチレンを本発明の特に好ましい吸入用カプセルの一つとして使用する場合、密度900〜1000 kg/m3、好ましくは940〜980 kg/m3、特に好ましくは960 kg/m3のポリエチレン(高密度ポリエチレン)を使用するのが好ましい。合成プラスチックをカプセル材料として使用する場合、TEWS又はハロゲンドライヤー湿分含有率のレベルは、3%未満であってよく、1%未満であってもよい。
【0011】
既述の態様の一つにおいて空のカプセルを準備した後、本発明の吸入用カプセルを、チオトロピウムを含有する吸入可能な粉末で充填する。これは、当業界で公知の方法により行うことができる。充填するのに使用できる空の吸入用カプセルはまた、先行技術から公知の方法により製造することもできる。例えば、可能な製法としては、浸漬法、ブラストプレッシャー法、注入式塑造法、押出法及び深絞り法(deep drawing)があげられる。これらはいずれも当業界で公知である。
本発明の吸入用カプセルを製造するとき、有効成分を含有する吸入可能な粉末を充填する前、カプセルを貯蔵又は製造した結果、カプセル材料の湿分含有率がまだ適当な範囲に減少していない場合、空のカプセルを乾燥するのが必須である。この乾燥は、湿分レベルが、本発明で規定する15%TEWS又はハロゲンドライヤー湿分含有率以下の規格に対応する値に達するまで行う。
本発明の範囲内で、吸入用カプセルなる用語は、インハレットなる語の同意語とみなすことができる。
【0012】
別の観点において、本発明は、TEWS又はハロゲンドライヤー湿分含有率が15%未満であり、既述のカプセル材料から構成し得ることを特徴とするカプセルの、チオトロピウムを含有する吸入可能な粉末を含有するインハレット(吸入用カプセル)を製造するための使用に関する。本発明の範囲内において、カプセルなる用語は、吸入用の空のカプセル、すなわち、いかなる吸入可能な粉末もまだ含有していないカプセルを言うものとする。
本発明により、チオトロピウム含量が0.001〜2%の吸入可能な粉末を含有する吸入用カプセルが好ましい。チオトロピウム含量が0.04〜0.8%であるのがより好ましく、更に好ましくは0.08〜0.64%、特に好ましくは0.16〜0.4%の吸入可能な粉末を含有する吸入用カプセルが特に好ましい。本発明の範囲内においてチオトロピウムの含量に関して規定したパーセンテージは、吸入可能な粉末の全質量を基準とした、重量%に対応する。
チオトロピウムは、遊離のアンモニウムカチオンを意味する。対イオン(アニオン)は、クロリド、ブロミド、ヨージド、メタンスルホネート、パラトルエンスルホネート又はメチルサルフェートであり得る。これらのアニオンのうち、ブロミドが好ましい。従って、本発明は、特に、チオトロピウムブロミド含量が0.0012〜2.41%であることを特徴とする吸入可能な粉末を含有するインハレットに関する。
本発明により、0.048〜0.96%、特に0.096〜0.77%、特に好ましくは0.19〜0.48%のチオトロピウムブロミドを含有する吸入可能な粉末を使用するのが特に有利である。
【0013】
本発明のインハレットに含まれる吸入可能な粉末は、チオトロピウムブロミドを、好ましくはその水和物の形態で含むことができる。結晶性チオトロピウムブロミド一水和物を使用するのが最も好ましい。従って、本発明は、0.0012〜2.5%の結晶性チオトロピウムブロミド一水和物を含有する吸入用粉末を含有するインハレットに関する。なかでも、結晶性チオトロピウムブロミド一水和物を0.05〜1%、好ましくは0.1〜0.8%、特に好ましくは0.2〜0.5%の量で含有する吸入可能な粉末を含有するインハレットが特に好ましい。
本発明の範囲内で、結晶性チオトロピウムブロミド一水和物なる用語に関するあらゆる言及は、実験欄に詳細に説明した合成法により得ることができる特定の結晶性チオトロピウムブロミド一水和物をいうと理解すべきであるのが好ましい。
有効成分に加え、少なくとも賦形剤を含有する本発明の吸入用カプセル(インハレット)に吸入可能な粉末を入れる。これは、賦形剤の平均粒径に関して均一である賦形剤画分(例えば、15〜80μm)を含有することができるし、平均粒径が15〜80μmの粗賦形剤(coarser excipient)と平均粒径が1〜9μmの細賦形剤(finer excipient)との混合物を示すこともある。粗賦形剤と細賦形剤との賦形剤混合物を使用するとき、賦形剤の全量中の細賦形剤の割合は1〜20%であるのが好ましい。
【0014】
本発明の吸入用カプセルが、粗賦形剤画分と細賦形剤画分との混合物を含有する場合、好ましくは平均粒径が17〜50μm、最も好ましくは20〜30μmの粗賦形剤と、平均粒径2〜8μm、最も好ましくは3〜7μmの細賦形剤とを含有するのが最も好ましい。本発明において使用する層平均粒径は、乾燥分散法を使用するレーザー回折計で測定される体積分布から50%値を示す。本発明のインハレットを製造するための吸入可能な粉末としては、賦形剤の全量中の細賦形剤の割合が3〜15%、最も好ましくは5〜10%であるものを使用するのが好ましい。本発明の範囲内において、%は、常に重量%である。
本発明の範囲内で混合物について言及するとき、明瞭に規定された成分を一緒に混合することにより得られる混合物を常に意味する。従って、粗賦形剤と細賦形剤の賦形剤混合物について言及する場合、粗賦形剤成分と細賦形剤成分とを混合することにより得られる混合物をのみ意味することができる。
賦形剤画分は、化学的に同一か又は化学的に異なる物質を含有することができるが、賦形剤画分が同じ化学物質を含有する吸入可能な粉末が好ましい。
粗及び細賦形剤画分の混合物を賦形剤として使用する場合、化学的に同一であるか又は化学的に異なる物質を含有することができるが、粗賦形剤画分及び細賦形剤画分が同じ化学化合物を含有する吸入可能な粉末であるのが好ましい。
【0015】
本発明のインハレットで使用される吸入可能な粉末を製造するのに使用できる医薬的に許容できる賦形剤の例としては、例えば、単糖類(例えば、グルコース又はアラビノース)、二糖類(例えば、ラクトース、サッカロース、マルトース)、オリゴ糖類及び多糖類(例えば、デキストラン)、多価アルコール(例えば、ソルビトール、マンニトール、キシリトール)、塩類(例えば、塩化ナトリウム、炭酸カルシウム)又はこれらの賦形剤同士の混合物があげられる。単糖類又は二糖類を使用するのが好ましく、ラクトース又はグルコースを使用するのが特に好ましく、それらの水和物の形態を使用するのが非常に好ましい。本発明の目的のため、ラクトースが特に好ましい賦形剤であるが、ラクトース一水和物が最も特に好ましい。
本発明の吸入用カプセルは、例えば、WO 94/28958に記載吸入器を使用して投与することができる。本発明のインハレットを使用するのに特に好ましい吸入器は、図1の分解組立図に示されている。
【0016】
カプセルから粉末化医薬組成物を吸入するためのこの吸入器(ハンディヘイラー(Handihaler))は、ハウジング1が、2つのウインドウ2、空気インレットポートが存在し、カプセルチャンバー6に連結しているデッキ3を含むことを特徴とする。該チャンバー6には、2本の鋭利なピン7と、スプリング8まで移動可能なカウンタを備えた押しボタン9、及びマウスピース12が備えられている。マウスピース12は、ハウジング1、デッキ3及びスピンドル10を介してカバー11に連結し、はじかれて開くか又は閉じることができるようにする。カプセルチャンバーは、フィルター5により閉じられる。フィルターは、マウスピース12に固定したフィルターホルダにより運ばれる。
本発明の吸入用カプセルは、2〜50mg、好ましくは4〜25mgの量の吸入可能な粉末を、吸入用カプセル当たり含有することができる。本発明の吸入用カプセルは、1.2〜80μgのチオトロピウムを含有する。各吸入用カプセルが、4〜6 mgの吸入可能な粉末を含有するのが好ましいとき、各カプセルは1.6〜48μg、好ましくは3.2〜38.4μg、特に好ましくは6.4〜24μgのチオトロピウムを含有する。例えば、チオトロピウムの含有量が18μgの場合は、チオトロピウムブロミドの含有量が約21.7μgに対応する。
【0017】
結果的に、3〜10mgの吸入可能な粉末を含有する本発明の吸入用カプセルは、1.4〜96.3μgのチオトロピウムブロミドを含有する。各吸入用カプセル中の吸入可能な粉末の含有量が4〜6mgであるのが好ましく、各カプセル中のチオトロピウムブロミドの含有量が1.9〜57.8μg、好ましくは3.9〜46.2μg、特に好ましくは7.7〜28.9μgであるのが好ましい。21.7μgのチオトロピウムブロミドの含有量のチオトロピウムブロミドは、例えば、約22.5μgのチオトロピウムブロミド一水和物に対応する。
結果的に、3〜10mgの吸入可能な粉末を含有する吸入用カプセルは、1.5〜100μgのチオトロピウムブロミド一水和物を含有する。各吸入用カプセル中の吸入可能な粉末の含有量が4〜6mgであるのが好ましく、各カプセル中のチオトロピウムブロミド一水和物の含有量が2〜60μg、好ましくは4〜48μg、特に好ましくは8〜30μgであるのが好ましい。
本発明の吸入用カプセルは、本発明の目的により、単回投与あたりの投与量精度が非常高度に均一化されていることを特徴とする。この精度は8%未満の範囲にあり、好ましくは6%未満、特に好ましくは4%未満である。
【0018】
本発明の吸入用カプセルを充填するのに好ましく使用される吸入可能な粉末は、以下に記載した方法により得ることができる。
出発原料を秤量した後、次の工程は、使用する賦形剤が粗及び細画分の混合物である場合、賦形剤の混合物を準備することである。使用する賦形剤がその平均粒径に関し単一の画分である場合(例えば、15〜80μm)、この第一工程は省略できる。
次いで、吸入可能な粉末を、賦形剤から、可能ならば賦形剤の混合物と、有効成分から製造する。本発明の吸入用カプセルは、チオトロピウムを含有する吸入可能な粉末を充填する前、本発明のTEWS又はハロゲンドライヤー湿分含有率の最大限許容できるレベルに達するまで乾燥する。次いで粉末を充填した吸入用カプセルを、当業界で公知の方法により製造する。
以下に記載する製造工程において、既述の成分を、既述の吸入可能な粉末の組成について記載した重量の量で使用する。
【0019】
粗及び細賦形剤画分の混合物を賦形剤として使用する場合、粗及び細賦形剤画分を、適当な混合容器に入れる。メッシュサイズ0.1〜2mm、好ましくは0.3〜1mm、最も好ましくは0.3〜0.6mmのグラニュールシーブを用いて2つの成分を添加するのが好ましい。粗賦形剤を最初に、次いで細賦形剤画分を混合容器に入れるのが好ましい。この混合工程の間、2つの成分をバッチで添加するのが好ましく、粗賦形剤の幾らかを最初に、次いで細及び粗賦形剤混合物を交互に入れるのが好ましい。2つの成分を交互層でシーブして賦形剤混合物を製造するのが場合が特に好ましい。2つの成分はそれぞれ15〜45層、最も好ましくは20〜40層で交互にシーブするのが好ましい。2つの賦形剤は、該2つの成分を添加しながらでも混合することが出来る。しかしながら、混合は1回だけ行い、2つの成分が層状にふるいにかけられるのが好ましい。
もちろん、この工程は、均一粒径の賦形剤画分を使用する場合(例えば、平均粒径15〜80μm)、省略する。
【0020】
次いで、賦形剤(賦形剤混合物でもよい)及び有効成分を、適当な混合容器に入れる。使用する有効成分の平均粒径は、0.5〜10μm、好ましくは1〜6μm、最も好ましくは2〜5μmである。2つの成分は、メッシュサイズ0.1〜2 mm、好ましくは0.3〜1 mm、最も好ましくは0.3〜0.6 mmのグラニュールシーブを使用して添加するのが好ましい。賦形剤混合物を最初に入れ、次いで有効成分を混合容器に加えるのが好ましい。この混合工程の間、2つの成分をバッチで添加するのが好ましい。2つの成分が交互の層になるようにふるいにかけて賦形剤混合物を製造するのが特に好ましい。2つの成分をふるいにかけて、25〜65層、最も好ましくは30〜60層に交互にするのが好ましい。賦形剤混合物と有効成分との混合は、2つの成分を添加しながらでも行うことができる。しかしながら、混合は1回だけ行い、2つの成分を層状にふるいにかけるのが好ましい。
このようにして得られた粉末混合物は、グラニュールシーブを用いて一度に又は繰り返して添加し、次いで別の混合工程に供してもよい。
【0021】
本発明の別の好ましい態様において、吸入用カプセルは、上述の方法により得られるチオトロピウムブロミドを含有する吸入可能な粉末で充填し、次いで以下に記載する乾燥工程に供する。
充填したカプセルを、第一相(乾燥相)に、0.5〜10時間、好ましくは1.5〜7時間、好ましくは2〜5.5時間、特に好ましくは約2.5〜4.5時間、温度約10〜50℃、好ましくは20〜40℃、特に好ましくは約25〜35℃で、相対湿度30%r.h.以下、好ましくは20%r.h.以下、特に好ましくは約5〜15%r.h.に供する。相対湿度(r.h.)なる用語は、本発明の範囲内において、水蒸気分圧及びその温度での水蒸気圧の商を意味する。続く第二相(平衡相)において、カプセルを、相対湿度35% r.h.以下、好ましくは25%r.h.以下、特に好ましくは約10~20%r.h.に、0.5〜10時間、好ましくは1.5〜7時間、好ましくは2〜5.5時間、特に好ましくは約2.5〜4.5時間、約10〜50℃、好ましくは20〜40℃、特に好ましくは約25〜35℃の温度でさらす。この後、前述の相での温度を室温(即ち、23℃)より高い温度に調節した場合、冷却相を行っても良い。この冷却相の間、カプセルを、相対湿度が高くても35% r.h.、好ましくは高くても25% r.h.、特に好ましくは約10〜20% r.h.に、0.1〜6時間、好ましくは0.5〜4時間、好ましくは0.75〜2.5時間、特に好ましくは約1〜2時間、約23℃の温度にさらす。特に好ましい態様において、平衡相と冷却相での相対湿度の設定値は同じである。
【0022】
有効成分なる用語を本発明の範囲内で使用するとき、これはチオトロピウムについて言及していることを意図する。本発明により、遊離アンモニウムカチオンであるチオトロピウムに関するあらゆる記述は、対イオンとしてアニオンを含有する塩(チオトロピウム塩)の形態のチオトロピウムへの言及に対応する。本発明の範囲内で使用できるチオトロピウム塩としては、チオトロピウムに加え対イオン(アニオン)として、クロリド、ブロミド、ヨージド、メタンスルホネート、パラトルエンスルホネート又はメチルサルフェートを含有する化合物があげられる。本発明の範囲内において、あらゆるチオトロピウム塩の中でチオトロピウムブロミドが好ましい。本発明の範囲内においてチオトロピウムブロミドに関する言及は、常に、あらゆる可能性のあるチオトロピウムブロミドのアモルファス及び結晶変態(crystal modification)についての言及であると解釈するべきである。例えば、結晶性構造で溶媒の分子を含むことができる。本発明では、チオトロピウムブロミドのあらゆる結晶変態の中で、水を含むもの(水和物)が好ましい。本発明の範囲内では、以下に詳述する方法を使用して得ることができるチオトロピウムブロミド一水和物を使用するのが特に好ましい。
【0023】
本発明のチオトロピウム含有吸入用カプセルを製造するのに、まずチオトロピウムを、医薬目的で使用できる形態で製造しなければならない。このため、EP 418 716 A1に開示されているようにして製造できるチオトロピウムブロミドを、別の結晶工程に供するのが好ましい。使用する反応条件及び溶媒に依存し、異なる結晶変態が得られる。本発明の吸入用カプセルを製造する目的のためには、結晶性チオトロピウムブロミド一水和物を使用するのが特に適していることが分かった。
以下の実施例により、本発明をさらに詳細に具体的に説明するが、例として以下に記載した態様に本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0024】
出発物質
以下の実施例において、ラクトース一水和物(200M)を、賦形剤として使用する。例えば、Messrs DMV International, 5460 Veghel/NLから、商品名Pharmatose 200Mで販売されているものを使用することが出来る。
以下の実施例において、賦形剤混合物を使用するとき、ラクトース一水和物(200M)を、粗賦形剤としても使用することができる。例えば、Messrs DMV International, 5460 Veghel/NLから、商品名Pharmatose 200Mで販売されているものを使用することが出来る。
以下の実施例において、賦形剤混合物を使用するとき、ラクトース一水和物(5μm)を細賦形剤として使用する。慣用の方法(微粉化(micronising))により、ラクトース一水和物200Mから得ることができる。ラクトース一水和物200Mは、例えば、Messrs DMV International, 5460 Veghel/NLから商品名Pharmatose 200Mで販売されているものを使用することができる。
【0025】
結晶性チオトロピウムブロミド一水和物の製造:
15.0 kgのチオトロピウムブロミドを、適当な反応容器に入れた25.7 kgの水に添加する。該混合物を80-90℃に加温し、一定温度で、透明溶液が得られるまで攪拌する。活性炭(0.8kg)を水で湿らせ、4.4kgの水に懸濁させ、この混合物を、チオトロピウムブロミド含有溶液に添加し、4.3kgの水ですすぐ。このようにして得られた混合物を、少なくとも15分間80〜90℃において攪拌し、次いで、加熱したフィルターを通して濾過し、外温70℃に予熱した装置に入れる。フィルターを8.6 kgの水ですすぐ。装置の内容物を20分毎3〜5℃ずつ20〜25℃まで冷却する。冷水を使用して装置をさらに10〜15℃に冷却し、少なくとも1時間攪拌することにより結晶化する。吸引ドライヤーにより結晶を単離し、単離した結晶スラリーを9Lの冷水(10〜15℃)及び冷アセトン(10〜15℃)で洗浄する。得られた結晶を、25℃で2時間にわたり窒素流で乾燥する。
収量:13.4 kgのチオトロピウムブロミド一水和物(理論の86%)
【0026】
上述の方法により得ることができる結晶性チオトロピウムブロミド一水和物を、DSC(示差走査熱量計)で測定した。DSCダイアグラムには、2つの特徴的なシグナルが示されている。最初の、比較的広い、50〜120℃の吸熱シグナルは、チオトロピウムブロミド一水和物から無水物形態への脱水に帰することができる。2番目の、比較的シャープな、230±5℃の吸熱ピ−クは、物質の溶解に帰することができる。このデータは、DSC 821を使用して得たものであり、Mettler STARソフトウェアパッケージを使用して評価した。データは、加熱速度10 K/minで記録した。
本発明の結晶性チオトロピウムブロミド一水和物を、IRスペクトルにより特徴付けた。データは、Nicolet FTIR 分光器を使用して得たものであり、Nicolet OMNICソフトウェアパッケージ、バージョン3.1を使用して評価した。測定は、300 mg KBr中2.5μmolのチオトロピウムブロミド一水和物で行った。
以下の表に、IRスペクトルの本質的なバンドの幾つかを示す。

【0027】

【0028】
上述の方法により得ることが出来る結晶性チオトロピウムブロミド一水和物は、単結晶X-線構造分析により、以下のディメンションを有する単純単斜晶系セルを有する:a = 18.0774A, b = 11.9711A, c = 9.9321A, β = 102.691°, V = 2096.96 A3。これらのデータは、単色銅Kαラジエーションを使用する、AFC7R-4-回路回折計(リガク)で集めた。結晶構造の精製及び構造溶液は、直接法及び(SHELXS86 Program)及びFMLQ-精製(TeXsan Program)により得た。
このようにして得られた結晶性チオトロピウムブロミド一水和物を、公知の方法により微粉化し、本発明での規定に対応する平均粒径の形態の有効成分を得る。
本発明の組成物の種々の成分の平均粒径を測定する方法を以下に示す。
【0029】
A) 微細に分割したラクトースの粒径測定:
測定装置及び設定:
製造業者の指示に従い、装置を操作する。
測定装置: HELOS レーザー回折分光器, (SympaTec)
分散ユニット: 吸引漏斗付きRODOS乾燥分散機, (SympaTec)
サンプル量: 100 mgから
生成物供給: Vibri振動チャンネル, Messrs. Sympatec
振動チャンネルの振動数: 40から100 %へ上昇
サンプル供給時間: 1〜15秒(100 mgの場合)
焦点距離: 100 mm (測定範囲: 0.9 - 175 μm)
測定時間: 約15秒 (100 mgの場合)
サイクル時間: 20 ms
スタート/ストップ: チャンネル28で1 %
分散ガス: 圧縮空気
圧力: 3バール
真空度: 最大
評価法: HRLD
【0030】
サンプル調製/生成物供給:
少なくとも100 mgの試験物質を、カード片上に秤量する。
別のカード片を使用して、大きな塊を全て砕く。次いで粉末を、振動チャンネルの前半分に細かくふりかける(前端から約1cmで出発)。測定開始後、振動チャンネルの振動数を、約40%〜100%まで(測定の終わりに向けて)変更する。サンプル全てを供給するのに要する時間は10〜15秒である。
【0031】
B) 微粉砕したチオトロピウムブロミド一水和物の粒径測定:
測定装置及び設定:
製造業者の指示に従い、装置を操作する。
測定装置: レーザー回折分光器 (HELOS), Sympatec
分散ユニット: 吸引漏斗付きRODOS乾燥分散機, Sympatec
サンプル量: 50 mg - 400 mg
生成物供給: Vibri 振動チャンネル, Messrs. Sympatec
振動チャンネルの振動数: 40から100 %へ上昇
サンプル供給時間: 15〜25秒 (200 mgの場合)
焦点距離: 100 mm (測定範囲: 0.9 - 175 μm)
測定時間: 約15秒 (200 mgの場合)
サイクル時間: 20 ms
スタート/ストップ: チャンネル28で1 %
分散ガス: 圧縮空気
圧力: 3バール
真空度: 最大
評価法: HRLD
【0032】
サンプル調製/生成物供給:
約200 mgの試験物質をカードの上に秤量する。別のカードを使用して、より大きな塊を砕く。次いで粉末を、振動チャンネルの前半分に細かくふりかける(前端から約1cmで出発)。測定開始後、振動チャンネルの振動数を、約40%〜100%まで(測定の終わりに向けて)変更する。サンプルは、可能な限り連続して供給すべきである。しかしながら、生成物の量は、適当に分散できない程度に多くはない。サンプル全てを供給するのに要する時間は、例えば、200mgの場合約15〜25秒である。
【0033】
C) ラクトース200Mの粒径測定 :
測定装置及び設定:
製造業者の指示に従い、装置を操作する。
測定装置: レーザー回折分光器 (HELOS), Sympatec
分散ユニット: 吸引漏斗付きRODOS 乾燥分散機, Sympatec
サンプル量: 500 mg
生成物供給: VIBRI振動チャンネル, Messrs. Sympatec
振動チャンネルの振動数: 18から100 %へ上昇
焦点距離(1): 200 mm (測定範囲: 1.8 - 350 μm)
焦点距離(2): 500 mm (測定範囲: 4.5 - 875 μm)
測定時間: 10 秒
サイクル時間: 10 ms
スタート/ストップ: チャンネル19で1 %
圧力: 3バール
真空度: 最大
評価法: HRLD
【0034】
サンプル調製/生成物供給:
約500 mgの試験物質をカードの上に秤量する。別のカードを使用して、より大きな塊を砕く。次いで粉末を、振動チャンネルの漏斗に移す。振動チャンネルと漏斗との間のギャップを1.2〜1.4mmに設定する。測定開始後、振動チャンネルの振幅を、生成物が連続して流れるまで0%〜40%まで大きくする。次いで、振幅を約18%に小さくする。測定の終わりに向けて、振幅を100%まで大きくする。
装置
例えば以下の機械及び装置を使用して吸入可能な粉末を製造することができる。
混合容器又は粉末混合機:
Gyrowheel mixer 200 L; タイプ: DFW80N-4; Messrs Engelsmann, D-67059 Ludwigshafen製
グラニュールシーブ:
Quadro Comil; タイプ: 197-S; Messrs Joisten & Kettenbaum, D-51429 Bergisch-Gladbach製
TEWS湿分レベルを測定するために、製造業者の指示に従い、以下の装置を使用する。
TEWS湿分レベルを測定するための装置:
製造業者: Messrs TEWS Elektronik, Hamburg
タイプ: MW 2200
測定範囲: 1〜85%湿分
測定の精度: 選択した測定範囲の最終の値の1%
主要接続: 220V +/- 10%, 50〜60Hz
【0035】
ハロゲンドライヤー湿分含有率を測定し、TEWS装置に適合させるために、製造業者の指示に従い、以下の装置を使用する。
ハロゲンドライヤー湿分含有率レベルを測定するための装置:
Mettler halogen drier HR 73; 製造業者: Messrs Mettler-Toledo, D-35396 Giessen;
以下の装置を使用して、空のカプセルに、チオトロピウムを含有する吸入用粉末を充填する。
カプセル充填機:
MG2、タイプG100、製造業者:MG2 S.r.l、I-40065 Pian di Macina di Pianoro (BO)、イタリア
【0036】
実施例 1:
1.1: 賦形剤混合物:
吸入用のラクトース一水和物(200M)31.82 kgを、粗賦形剤成分として使用する。ラクトース一水和物(5μm)1.68 kgを、細賦形剤成分として使用する。得られる33.5 kgの賦形剤混合物中で、細賦形剤成分の割合は5%である。
吸入用のラクトース一水和物(200M)約0.8〜1.2 kgを、メッシュサイズ0.5mmの適当なグラニュールシーブを通して、適当な混合容器に入れる。次いで、ラクトース一水和物(5μm)をバッチで約0.05〜0.07 kg及び吸入用のラクトース一水和物(200M)をバッチで0.8〜1.2 kg入れた交互の層をふるい入れる。吸入用ラクトース一水和物(200M)及びラクトース一水和物(5μm)を、31及び30層それぞれ添加する(許容度:±6層)。
次いで、ふるいにかけた成分を一緒に混合する(900 rpmで混合)。
【0037】
1.2: 最終混合物:
最終混合物を製造するため、32.87 kgの賦形剤混合物(1.1)及び0.13 kgの微粉砕したチオトロピウムブロミド一水和物を使用する。得られる33.0 kgの吸入可能な粉末中の有効成分の含有量は0.4%である。
均一平均粒径の賦形剤画分を賦形剤として使用する場合、32.87 kgのラクトース一水和物(200 M)のみを使用して同じ方法を繰り返す。この場合、工程1.1は当然省略する。
約1.1〜1.7kgの賦形剤又は賦形剤混合物(1.1)を、メッシュサイズ0.5mmの適当なグラニュールシーブを通して適当な混合容器に加える。次いで、チオトロピウムブロミド一水和物をバッチで約0.003kg及び賦形剤又は賦形剤混合物(1.1)をバッチで0.6〜0.8 kg入れた交互の層をふるい入れる。賦形剤又は賦形剤混合物と有効成分を、47及び45層それぞれ添加する(許容度:±9層)。
次いで、ふるいにかけた成分を一緒に混合する(900 rpmで混合)。最終混合物を、グラニュールシーブに2回以上通し、混合する(900 rpmで混合)。
【0038】
実施例 2:
以下の組成を有する吸入カプセル(インハレット)を、実施例1で得られた混合物を使用して製造した。

チオトロピウムブロミド一水和物: 0.0225 mg
ラクトース一水和物 (200 M): 5.2025 mg
ラクトース一水和物 (5 μm): 0.2750 mg
硬質ゼラチンカプセル(5% PEG 3350; 9% TEWS 湿分): 49.0 mg
合計: 54.5 mg
【0039】
実施例3:
吸入用カプセル

チオトロピウムブロミド一水和物: 0.0225 mg
ラクトース一水和物 (200 M): 4.9275 mg
ラクトース一水和物 (5 μm): 0.5500 mg
硬質ゼラチンカプセル(5% PEG 3350; 9% TEWS湿分): 49.0 mg
合計: 54.5 mg

カプセルを製造するのに必要な吸入可能な粉末は、実施例1と同様にして得た。
【0040】
実施例4:
吸入用カプセル

チオトロピウムブロミド一水和物: 0.0225 mg
ラクトース一水和物 (200 M): 5.2025 mg
ラクトース一水和物 (5 μm): 0.2750 mg
HPMC (<2% TEWS湿分): 49.0 mg
合計: 54.5 mg

カプセルを製造するのに必要な吸入可能な粉末は、実施例1と同様にして得た。
【0041】
実施例5:
吸入用カプセル

チオトロピウムブロミド一水和物: 0.0225 mg
ラクトース一水和物 (200 M): 5.2025 mg
ラクトース一水和物(5 μm): 0.2750 mg
ポリエチレン (<1% TEWS湿分): 100.0 mg
合計: 105.5 mg

カプセルを製造するのに必要な吸入可能な粉末は、実施例1と同様にして得た。
【0042】
実施例6:
吸入用カプセル

チオトロピウムブロミド一水和物: 0.0225 mg
ラクトース一水和物 (200 M): 5.4775 mg
ポリエチレン (<1% TEWS 湿分): 100.0 mg
合計: 105.5 mg

カプセルを製造するのに必要な吸入可能な粉末は、実施例1と同様にして得た。
【0043】
実施例7:
以下の組成を有する吸入用カプセル(インハレット)を、実施例1で得られた混合物を使用して製造した。

チオトロピウムブロミド一水和物: 0.0225 mg
ラクトース一水和物 (200 M): 5.2025 mg
ラクトース一水和物 (5 μm): 0.2750 mg
硬質ゼラチンカプセル (5% PEG 3350): 49.0 mg
合計: 54.5 mg

これらのカプセルは、適当な気候条件下、以下の方法を使用して空調チャンバー中で、水分含有率約8.7%に調節する(TEWSマイクロ波湿分測定装置で測定)。
最初に乾燥相を行い、次いでいわゆる平衡相を行う。最後にカプセルをいわゆる冷却相に供する。このようにして乾燥したカプセルを、次いで対応する貯蔵パッケージング等にその後直接充填する。
【0044】
処理データ
気候条件を以下の値に設定する:
乾燥相: 30℃
10 % r.h. (相対湿度)
3.5時間
平衡相: 30 ℃
16 % r.h.
3.5時間
冷却相: 23℃
16 % r.h.
1.5時間

本発明の範囲内において、相対湿度(r.h.)は、水蒸気分圧とその温度での水の水蒸気圧との商を意味する。
本発明の目的に関し、平均粒径は、体積分布の粒子の50%が規定の値より小さいか又は同じである粒径を有する値(μm)を意味する。レーザー回折/乾燥分散法を、粒度分布の全体の分布を測定するための方法として使用する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入用粉末としてのチオトロピウムを、医薬的に許容できる賦形剤との混合物として含有する吸入用カプセルであって、カプセル材料の湿分含有率が低い(TEWS又はハロゲンドライヤー湿分含有率が15%未満である)ことを特徴とする前記吸入用カプセル。
【請求項2】
カプセル材料が、ゼラチン、セルロース誘導体、スターチ、スターチ誘導体、キトサン及び合成プラスチックから選ばれることを特徴とする請求項1記載の吸入用カプセル。
【請求項3】
カプセル材料が、ゼラチンと、ポリエチレングリコール(PEG)、好ましくはPEG 3350、グリセロール、ソルビトール、プロピレングリコール、PEO-PPOブロックコポリマー及び他の多価アルコール及びポリエーテルから選ばれる他の添加剤との混合物であることを特徴とする請求項2記載の吸入用カプセル。
【請求項4】
カプセル材料が、ゼラチンに加えて、PEGを1-10%(質量%)、好ましくは3〜8%の量で含有することを特徴とする請求項3記載の吸入用カプセル。
【請求項5】
カプセル材料のTEWS又はハロゲンドライヤー湿分含有率が、12%未満、特に好ましくは10%以下であることを特徴とする請求項3又は4記載の吸入用カプセル。
【請求項6】
カプセル材料が、セルロース誘導体ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース及びヒドロキシエチルセルロースから選ばれることを特徴とする請求項2記載の吸入用カプセル。
【請求項7】
カプセル材料のTEWS又はハロゲンドライヤー湿分含有率が、8%未満、特に好ましくは5%以下であることを特徴とする請求項6記載の吸入用カプセル。
【請求項8】
カプセル材料が、合成プラスチックポリエチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリプロピレン及びポリエチレンテレフタレートから選ばれる請求項2記載の吸入用カプセル。
【請求項9】
カプセル材料が、ポリエチレン、ポリカーボネート及びポリエチレンテレフタレートから選ばれる請求項8記載の吸入用カプセル。
【請求項10】
カプセル材料のTEWS又はハロゲンドライヤー湿分含有率が、3%未満、特に好ましくは1%以下であることを特徴とする請求項8又は9記載の吸入用カプセル。
【請求項11】
吸入可能な粉末が、0.001〜2%のチオトロピウムを医薬的に許容できる賦形剤との混合物の形態で含有することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項記載の吸入用カプセル。
【請求項12】
賦形剤が、平均粒径15〜80μmの粗賦形剤と平均粒径1〜9μmの細賦形剤との混合物を、賦形剤の全量中、細賦形剤を1〜20%の割合で含有する請求項11記載の吸入用カプセル。
【請求項13】
チオトロピウムが、クロリド、ブロミド、ヨージド、メタンスルホネート、パラトルエンスルホネート又はメチルサルフェートの形態であることを特徴とする請求項12記載の吸入用カプセル。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項記載の吸入用カプセルの、吸入可能な粉末を投与するのに適している吸入器での使用。
【請求項15】
喘息又はCOPDを治療するための請求項14記載の使用。
【請求項16】
TEWS又はハロゲンドライヤー湿分含有率が15%未満であることを特徴とする空のカプセルの、請求項1〜13のいずれか1項記載のチオトロピウムを含有する吸入用カプセルを製造するための使用。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入用粉末としてのチオトロピウムを、医薬的に許容できる賦形剤との混合物として含有する吸入用カプセルであって、カプセル材料の湿分含有率が低い(TEWS又はハロゲンドライヤー湿分含有率が15%未満である)ことを特徴とする前記吸入用カプセル。
【請求項2】
請求項記載の吸入用カプセルの、吸入可能な粉末を投与するのに適している吸入器での使用。
【請求項3】
TEWS又はハロゲンドライヤー湿分含有率が15%未満であることを特徴とする空のカプセルの、請求項記載のチオトロピウムを含有する吸入用カプセルを製造するための使用。

【公開番号】特開2006−143747(P2006−143747A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−38063(P2006−38063)
【出願日】平成18年2月15日(2006.2.15)
【分割の表示】特願2003−501995(P2003−501995)の分割
【原出願日】平成14年5月27日(2002.5.27)
【出願人】(503137975)ベーリンガー インゲルハイム ファルマ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディトゲゼルシャフト (129)
【Fターム(参考)】